韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「プリンセス・クッキー」です。
みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
「
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「
お願い」を一読してください。
「フォーチュン・クッキー」と、
現在は未公開(序章のみ更新済)の「ゲレンデへいこう」の続編です。
プリンセス・クッキーその夜、イヌの部屋で。
バレンタインデーのプレゼントのお礼だと言って、
イヌがヘリに手作りのディナーをご馳走した後だった。
「ヘリ、これを君に」
そう言って、イヌが、リボンで可愛くラッピングされた袋を、
ヘリに手渡した。
「何?これもバレンタインのお礼なの?」
「そうだ」
イヌったら、太っ腹すぎるんじゃない?
バレンタインの時は、ホテル代も食事代も、出したのはイヌなのに。
それに、スノーボードまでプレゼントしてくれた。
バレンタインのプレゼントも、“お金をかけて無いもの”だったし…。
お礼が倍返しどころか、10倍返しになっているわ。
○沢直○にも負けないわね。
…などと、心の声を口に出して言わなかったヘリだったが、
純粋なヘリの思いは顔にそのまま出ていた。
「君がバレンタインの日にプレゼントしてくれた物が嬉しかったんだよ。
そのお返しだ。金がかかっていない物だから気楽にうけとって」
イヌの言葉に、
…そう言ってもらえるなら。
「ありがと」と、ヘリがラッピングの包みを開け始めた。
カサカサと音がする軽いもの。
「何かしら?」
ヘリがラッピングの袋の中を覗き込むと・・・。
甘い匂いがするお菓子だった。
それも、どこかで見たことがあるような。
「これって…フォーチュン・クッキー?」
二つに折りたたまれた焼き菓子が3つ。
ヘリの母親エジャが作って、パン屋で旧正月に売り出していた
フォーチュン・クッキーに形が似ていた。
だが、エジャの作った物ではない。
クッキーの入っている袋も市販菓子のラッピングでは無いようだった。
「まさか、あなたの手作り?」
ヘリが驚いて、ソファの隣に座っているイヌを見やった。
「そうだ」
ヘリのこんな顔が見たかった、というように、
ニヤリと笑ったイヌの顔は満足げだった。
「初めて作ったけど、形は悪くないだろ?」
「悪くないどころか、すっごく上手に出来ているわよ。
ママの焼いたクッキーみたいに売り出せそう。
あなたって、なんでも、器用に出来ちゃうのね」
ヘリが感心して、クッキーの入った袋を手に取ると眺めまわした。
「食べてみて」
イヌがクッキーを1つ袋から取り出すとヘリに渡して言った。
…何かしかけがあるのかしら?
ヘリの反応を心待ちにしたような、イヌのわくわくした顔に、
促されて、ヘリがクッキーを口にした。
ヘリが歯でクッキーを割ってみると、
中から、折りたたまれた白い紙片が出てきた。
「やっぱり、フォーチュン・クッキーなの?」
ヘリの質問にもイヌはただ微笑を浮かべるだけだった。
首をかしげながら、ヘリが紙片を開いて中を見ると、
そこには…
『このクッキーを食べた者は、
その日のうちに好きな人にキスをすること』
と、英語で書かれていた。
「・・・・・・」
文面を3度ほど読み直して、たっぷり15秒ほど、
費やしたヘリは、呆れ顔で隣を見やった。
そして、そこにいるイヌの、
悪戯が成功して嬉しそうな子供のような表情に
思わずプッと吹き出し苦笑した。
「面白いだろ?」
イヌが言った。
「君がくれたフォーチュン・クッキーで思いついた。
これは、マ・ヘリ専用『プリンセス・クッキー』だ」
イヌが、これを思いついた時の事を想像してみたヘリだった。
きっと、ニンマリとした笑みを浮かべて、
嬉々として、クッキーの材料をそろえ始めたのだろう。
そう、ベランダからバケツで薬を差し入れたり、
時計に声を吹き込むことを考え付いた時のように。
「あなたって、こういう思いつきの天才よね」
模倣や暗記は得意でも、独創性のある発想力は、
自信のないヘリが、どこか羨ましげな思いを滲ませた口調で言った。
…すぐに真似をしたいとまでは思わなかったが。
だが、まるで、最高級の賛辞をもらったとでもいうように
イヌが嬉しそうに笑った。
「気にいった?」
「ええ…うん。味はいいわね。美味しい」
ぽりぽりとクッキーをかじって、
ヘリは、わざとらしく、クッキーの中に入っていた紙の文字に
気付かなかったふりをした。
「クッキーの味が口にあったようで良かったよ。
ところで、紙の文字は読めなかった?韓国語で書けば良かったかな?」
「読めたわよ。語学力は問題ないのだけど、
解読するのに時間がかかっているの。どういう意味なのかしら?」
「さあ?分かったら実行して」
イヌがとぼけたように、肩をすくめてみせた。
「好きな人にキスする?うーん…じゃあ、
後で、パパかママにキスすることにするわ。
他には何て書いてあるのかしら?」
そう言って、ヘリが新しいクッキーをもう一つ取り出した。
「プリンセス・クッキー…ね」
見た目は、かわいいフォーチュン・クッキーに似ていたが、
その中身は似て非なるものだった。
ヘリは、ようやく、このクッキーの意味が分かったように頷いた。
「これって、もしかして、“王様ゲーム”みたいなものね。
王様が命令した事を実行しなくてはいけない。
でも、プリンセス・クッキーは、食べた人が、クッキーを
作った人の命令をきかなくてはいけないみたい」
ヘリの為に作ったプリンセス・クッキーなどと名前がつけられていたが、
とどのつまり、イヌの酔狂につきあわされる遊びなのだろう。
…ソ・イヌという“王子様”の手で作られたクッキー。
「だから『プリンス・ゲーム』って所かしら?
ね、当たりでしょ?」
イヌが薄く笑った。
「どう解釈するかは、ご自由に。
君に楽しんでもらえたらいいさ」
「あなたも楽しんでる」
ヘリはクスっと笑うと、
手の中のクッキーをイヌの方に差し出した。
「これは、あなたが食べて」
「僕が?君にあげたものだぞ」
「もらった物をどうしようと私の勝手でしょ?
あなたに食べて欲しいのよ。さあ、このクッキーには
なんて書いてあるのかしら?食べた人が書いてある事を
実行しなくてはいけないのよね?」
クッキーは3つある。
イヌの事だ。
1つ目のように好きな人にキスをしろ。なんていう、
ロマンチックな文章しか書いていないわけがない。
ヘリが期待に満ちたいたずらっぽい目でイヌを見つめた。
クッキーの中身を当然知っているイヌは、
しばらく口を固く閉ざしたままだった。
だが、ヘリにクッキーで軽く唇をつつかれると、しぶしぶといった態で口を開けた。
そして、クッキーを口に含んで割り、
紙片を指で取り出した後、クッキーをほおばると感心したように頷いた。
「うん。上手いな。このクッキー」
「自画自賛はいいから、早く、そこに書かれている文字を
読んでよ」
ヘリがせっつくと、イヌがもったいぶったように、
目を細めて、紙片を遠ざけた。
「えーっと、なになに?
『このクッキーを食べた者はその日、好きな人の言う事に絶対服従する』」
「策士、策に溺れたわね」
ヘリがはじけるように笑うと、イヌの手の紙をひったくった。
「アイデアは悪くなかったけど、
ソ・イヌさんにもぬかりがあったようね」
「そうかな?」
「このクッキーはあなたが食べたんだから、
あなたが、この命令を聞くのよ。
えーっと、好きな人の言う事に絶対服従ですって。
あなたの好きな人って、今隣にいる人のことでしょ?」
「だれのこと?」
「とぼけないで。あなたが、バレンタインのお礼だって手のこんだクッキーを渡した女性のことよ」
ヘリは、残りの1個のクッキーを袋から出すと、
イヌの顔の前でかざしてみせた。
「この最後の1個は私が頂くわね。
さあ、どんな命令が書いてあるのかしら?」
さっきのクッキーで、イヌはヘリに絶対服従という権限をもらったも同然だった。
あのクッキーの命令文が一番強い事を想定すると、最後のクッキーに何が書かれていても、
取り消すことも可能だ。
そう考えたヘリは、最後の1個をゆっくり味わうつもりだった。
クッキーが割れるカシュっと、微かな音がヘリの歯の間で漏れた。
そして、カリ…っと何か硬いものがひっかかる音も。
「ん…?」
ヘリは、顔をしかめながら、クッキーの中に入っていた物を
手の平に乗せた。
それは、紙片ではなく、小さな銀色の鍵だった。
「これは?」
戸惑っている顔のヘリに、
イヌは、また、悪戯っぽく笑った。
そして、ソファから立ち上がると、ベッドの方に歩いていった。
ヘリの不思議そうな視線を浴びながら、
イヌは、ベッドの影に隠すように置いてあった小さな箱を取り出し、
振り返ると、ヘリを手招きした。
「ここに鍵に合いそうな箱がある。
開けてみて」
金と銀に縁どられた小さな宝箱のような形。
イヌに促されるまま、素直にベッドの端に腰かけたヘリは、
隣に座ったイヌの持っている箱の鍵穴に持っていた鍵を差し込んで回した。
カチリ…と、鍵が開く小さな音が聞こえた。
ヘリが箱の蓋を開けると、中に、綺麗なブレスレットが入っていた。
そして、メッセージカードも。
『マ・ヘリへ。 いつもありがとう。 好きだよ。
これは、社交辞令のお礼だけどね。ハハハ』
ヘリが以前、イヌにブレスレットをプレゼントした時に
渡したメッセージと似ている。
その頃の事を思いだした恥ずかしさで、
ヘリは苦笑しながら、イヌを睨むふりをした。
「やだ。真似しないでよ」
「どう?感想くらい言って欲しいな。
気にいらなかったら、交換するけど?」
さらに、ヘリをからかって、当時の真似をするイヌにヘリが
「もうっ」と、腕を軽く叩く真似をした。
「つけてちょうだい」
ヘリがブレスレットを手にとって、イヌに渡した。
「さっそく、服従の命令に従わなくてはいけないのかな」
イヌが笑って、ヘリの右腕にブレスレットをつけた。
ヘリは、それを目の高さまであげて、軽く振りながら、じっと眺めた。
そして、「うん。素敵」と、ニッコリと笑って、ヘリが言った。
「気にいった?」
「ええ。とっても」
結局、お金をかけないプレゼントと言っていたが、
ブレスレットは、ヘリの好きなブランドの物で、高価に売られている品だった。
しかも、ヘリが密かに欲しかった物。
「ありがとう。イヌ」
ヘリがお礼を言った。
「手作りクッキーも、ブレスレットも。とても嬉しかったわ。
あなたの人を驚かすアイデアって、いつも凄いわね」
ヘリの心底嬉しそうな顔。
驚いた顔。
不思議そうな顔。
見たかった、ヘリのそんな表情のすべてが自分に向けられるなら。
アイデアはすぐに湧くし、手間暇も惜しまない。
そう答える代りに、イヌがニヤリと笑った。
「“プリンス・ゲーム”は楽しんでもらえたかな?」
「それは、これから楽しむわ」
ヘリがすまして答えると、ブレスレットをつけた手を
イヌの頬の上に置いた。
「まずは、1つめ」
そう言って、ヘリがイヌの顔を仰ぐと、
伸び上がって、唇をちゅっと重ねた。
「好きな人にキスすること」
「ずいぶんと、軽いキスじゃないか?」
「フレンチキスしろ、とは書かれてないもの」
ヘリが笑って、もう片方の手もイヌの頬において、
顏を挟み込むように両手で包んだ。
「でも、もう1つのクッキーに書かれていた命令は、
私が実行しても良いのかしら?
違うって言われても、実行するけど。
だって、こんなに、素敵なお礼をいっぱいしてくれた男を
自分のものしたいって思っちゃったんだもの」
悪戯っぽく煌めくヘリの瞳は、イヌを誘っているようだった。
イヌの作ったクッキーより甘く。
こうなることを、全部おりこんで、
このプリンセス・クッキーの計画をたてたイヌは、
やはりヘリの上をいく策士なのだろう。
…僕は君のものだ。
そう、ヘリを柔らかく見つめる瞳に想いをこめながら、
「プリンセスの命令なら、仕方ないな」
そう言って、策ではなく、
目の前の愛しいプリンセスとの恋に溺れている男は、
もう一度、甘いキスをするために目を閉じた。
(終わり)
「裏箱」に入っているイラストのお話を
ようやく更新できました。(イラストはいつ更新しましたっけ?汗)
「フォーチュン・クッキー」の続編でもあり、
未公開話の「ゲレンデへいこう」の続編でもあります。
バレンタイン、ヘリがイヌにあげたものは、「ゲレンデいこう」がいつか
更新したら、確認してください♪
このお話の裏箱話が「プリンス・ゲーム」というわけ。
これも追記で更新するときに、又お知らせします。
アップ直後に読まれた方へ…
分からない程度にちょこっと誤字脱字、文章修正しました(笑)
いつも応援ありがとうございます。
小説が気にいって頂けたら、【拍手ぼたん】を押して、
お知らせください♪
にほんブログ村
- 関連記事
-