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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「戸惑いのヴィーナス」(後編)です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。


この話は、「スーパーモデルにご用心」の続きです。



戸惑いのヴィーナス(後編)



綺麗に手入れされたレストランの中庭に、
ライトアップされた噴水が煌びやかに浮かびあがり、

フロアでは、柔らかい室内照明の中、美しい音楽が流れている。

テーブル上のキャンドルライトも仄かに揺らめいて恋人達を照らし、
デートのロマンチックなムードは最高潮になっていた。

最初の頃は、やたらと気前が良く、親切なイヌの言動を
不審に思う気持ちもあったヘリだった。

だが、イヌがヘリの為にオークションで競り落としてくれた、人気デザイナーBBのドレスを着て、お気に入りのレストランで美味しい食事と大好きなお酒を口にしている。

何より

『美しい君の姿に酔ってる』

…という、
いつもの外デートの時は滅多に無い、イヌの甘い囁きと眼差しに、
ヘリは、有頂天になっていた。

そして、酒も入り、上機嫌なヘリは、だんだんと調子にのっていった。

「ねえ、もしかして、イヌ、さっき怒っていたでしょ?」

「さっき怒っていた?いつの話だ?」

「オークション会場の舞台裏よ。
BBに対するあなたの態度、やけに高圧的だったわ」

「ヤツは僕や君より年下のはずだ。なのに、ため口だったぞ」

「ヤツって…BBはすごい人なのよ。
あの若さで、今世界トップクラスに入っている一流デザイナーなんだから」

「あっそう。知らなかったよ」

…年下だって、知ってたくせに。

ヘリは、じとっとイヌを見つめた。
そんなヘリの視線をカウンターで返すようにイヌが見つめ返した。

「君は彼にずいぶん気にいられていたようだな。
専用のオリジナルデザインの服までもらえるくらい」

「そうかしら。彼のイヌを見る目も妖しかったわよ?
何だかイヌを物欲しそうな目で見つめていたけど」

打ち上げも熱心に誘っていたみたいだし。

ヘリの言葉にイヌが本気で嫌そうな顔をした。

「気色悪いことを言うな。
あれは、仕事柄、モデルを見るような目だ。
大方、僕のルックスの良さが目に留まったんだろう。
確かに人を見る目は一流みたいだな」

「その自信過剰はいつもどこからくるの?」

ヘリが吹き出して、楽しげに笑った。

「私も気にいられたんだとしたら、そういう理由ね。
BBの好みのルックスだったってだけよ。
それで、あんな素敵な服を作ってくれたのよ」

「“素敵”な?」

飲んでいた食後のコーヒーカップを持つ手を止めて、
イヌがヘリに怪訝な目を向けた。

「あの服を素敵だって、本気で思ってるのか?」

「うーん・・・」

イヌにそう聞かれて、ヘリは困ったように首をかしげてみせた。

「正直に言うとね。よく分からないの。
皆は、素敵だって、似合うって言ってたけど。
それにBBが私をイメージしてデザインしたって言ってたけど、
発想が奇抜すぎて、どこが、私のイメージなのか全然分からないのよね」

…『奇抜なところ』じゃないのか。

そう出かかった言葉を、イヌは、コーヒーと共に喉の奥に流し込んだ。

そして、空になったカップをソーサーに戻すと、
両腕を組んで背を椅子に逸らし、ヘリを見つめた。

「君は、ああいう衣装を着る事になるかもしれない、と
分かっていて、モデルを引き受けたんじゃないのか?」

「まさか。だから、知らなかったって言ったじゃない。
私の話、聞いていなかったの?」

…やはりな。

結局は、ヘリが、ろくに話を聞かずに、モデルの仕事を引き受けた為に、
起きたアクシデントだった。
己の思慮の浅はかさが引き起こした事態だという事を気づいていない様子のヘリに、
イヌは、思いっきりため息をついた。

…話を聞いていなかったのはどっちだ。

後悔も反省の色も見当たらない。

空気も言葉も読めないというのなら…。

イヌがボソリと呟くように言った。

「君が気にいっていない服なら、いいよな」

「いいよな?って何が?」

きょとんとしたヘリに、イヌが「焚火にしても」と、
サラッとつけ加えた。

一瞬呆気にとられたヘリだったが、すぐにアハハと笑い始めた。

「もう、まだそんな冗談を言ってるの?」

学生時代のファッションショーの後、
激怒した父サンテに、家の庭で、バッグや靴を燃やされはしたが、
マンションのテラスでは焚火は禁止されている。

いくら、今回のファッションショーの最後に着た服を
気にいらなかったとしても、まさかイヌが本当に
焚火にするとは思っていなかったヘリだった。

「別にいいわよ。焚火とか言って、それも隠語でしょ?
ソ・イヌさんお得意の妖しいジョークの」

へらへらと笑うヘリにイヌも薄く笑った。

…なるほどな。そんな事を考えていたのか。

「君の妄想は、いつも僕の想像の範疇を超えるよ」

「ハハっ。そんなに褒めないでよ」

どう聞けば、イヌの台詞を褒め言葉に受け取れるのか。

双眸を細めたイヌの表情を、しっかりと見ていたら、
もしかすると、何らかのサインに気付けたかもしれない。

しかし、浮かれているヘリは、すっかり怖い物知らずになっていた。

「ごちそう様でした~♪」

食事を終え、イヌがカウンターで支払いを済ませると、
ヘリが礼を言い、はしゃいでイヌの腕にしがみついた。

ほろ酔い気分で、足元もおぼつかない。

それでも、アルコールでほんのりと頬を染めたヘリのドレス姿は、
魅惑的な色香を惜しげもなく周囲に振りまいている。

店内の者たちの視線を一斉にひきつけたヘリは、
まるで、舞台の花道を戻っていくモデルのように、
レストランから退出するまで注目を集めていた。

イヌに優しい力で支えてもらい車までエスコートされたヘリは、
口元に浮かぶ笑みを抑えることが出来なかった。

…すっごく、いい気分。
素敵な服を着て、美味しいものを、好きな人と一緒に食べて、
みんなから、ちやほやされて、今日は、人生で最高の日よね。
こんな日があるなら、またモデルを引き受けてもいいわ♪

そんな事を浮かれた頭で考えていたヘリだったが、
ふと、マンションまで向かうはずのイヌの車が
ひょんな所で停まった時に我に返った。

夜遅くまで営業していた酒屋だった。

「どうしたの?」

「少し買い物をしてくる。君はここで待ってて」

そう言うと、イヌはさっさと車から降りて、酒屋に入って行った。
そして、ほどなく、手に酒瓶の入った袋をぶら下げて戻って来た。

袋から見えるのは、市販でよく流通している焼酎とウォッカだった。

「それ、部屋であなたが飲むの?」

もうすでにレストランで美味しい酒をたっぷりと満喫していたヘリは、
イヌの持っている酒を飲む気にはなれなかった。

「いいや」

イヌが首を振って、車を発進させた後言った。

「知人の手土産にね。このお酒が好きなんだよ」

「これから会うの?どなた?何の用で?」

不思議そうに矢次早に問いかけるヘリに、
イヌは「野暮用だ。すぐに済む」とだけ答えた。

…なんなのかしら?

その後も、ヘリは、車を運転しているイヌと、
後部座席の下に置かれた酒瓶を何度か振り返り、首をかしげていた。

そんなヘリに、

「こんな話を知っているか?」

そう言って、イヌが唐突に語り始めた。

「昔、山仕事をしていた男が、湖で水浴びをしている美しい天女に出くわした。
男は天女が脱いでいた羽衣をこっそり隠してしまう。
その後、何も知らないで、羽衣がなく、天に帰れず困っている天女を
男が素知らぬ顔で親切に慰めて、妻にする。
そして、天女を本気で愛した男は、天女が二度と空に舞い上がれないように、
隠していた羽衣を焼いてしまう、という、話だ」

「…私の知っている天女の羽衣伝説とちょっと違うような気がするけど。
その話が何なの?この酒とこれから会うという知人とどういう関係があるわけ?」

「酒と知人には関係ない話だな」

イヌがあっさり言った。

「ただ、君と僕には関係ある話になる」

「謎かけ?今度は一体どんなサプライズを見せてくれるのかしら?
楽しみだわ」

無邪気にわくわくしだしたヘリの純粋な表情を、
水浴している天女を覗き見ていた男のような顔でイヌが一瞥した。

やがて、イヌの車が、街を離れ、
山里に向かう途中の外れの道に入った。

舗装されていない道を徐行運転していたイヌが、「ちょうどいい…」と呟いて、
車を停めた。

まばらに家が建ち、街燈もほとんどついていない村里。

イヌに促されて車を降りたヘリは、訳も分からず、イヌの後に続いた。

イヌの視線の少し先に、畑で焚火をしている老夫婦がいるのが見えた。

「おや、ソ弁護士さんじゃないかい」

老女の方がイヌに気づいて、立ち上がり、嬉しそうに声をかけ、
隣の夫らしき老人を腕でこずいた。

「あんた、ソ弁護士さんだよ」

「ソ弁護士さん。いや、その節は大変お世話になりました」

老人が、頭にかぶっていた帽子をあたふたと取ると、立ち上がり
丁寧にお辞儀した。

「こんばんは。これ、お好きでしたよね?
良かったら、どうぞ」

そう言って、イヌが先ほど酒屋で買った焼酎の入った袋を渡した。

「ああ、これは。大好物です。さんざん世話になった上に、
こんな物まで頂いて、なんて礼をいっていいやら。
さあ、どうぞ、せめて火で暖まっていってください」

老人が恐縮しながらも、舌舐めずりする勢いで、イヌから受け取った焼酎の瓶を腕に抱えた。

そんな、やりとりを少し離れた所で佇み見つめていたヘリに老女が気づき、
つかつか近寄るとヘリの腕を取って強引に引っ張ってきた。

「そこの娘さんも。ソ弁護士のお連れさんだろ?さあさ、焚火で焼いた芋でも食べていっておくれ。うちの畑で今年とれたもんで甘いよ」

「いえ、その…私は…」

お腹がいっぱいだったヘリは、しどろもどろしながらも、
老女の勢いに押されて、焼き芋を手に押し付けられた。

「もう3年前になるね。ソ弁護士さんには、うちの亭主の親戚が土地の事でトラぶった時に、世話になってね。おかげで、みんな今も安穏に暮らせてる。感謝してるよ」

「そうなんですか」

イヌの紹介を聞く前に、老女がべらべらとヘリに話しかけていた。

戸惑っているヘリを横目に、イヌが、男性の方に向き直った。

「頼みがあるのですが」

「なんなりと。わしに出来ることで、ソ弁護士さんのお役に立てることなら」

「簡単なことです」

イヌがそう言って、もう一つ手に持っていた袋を老人にかざして見せた。

「そこの焚火で、これも一緒に燃やして下さい」

「お安いごようですが、これは何です?」

不思議そうに袋を見上げた老人にイヌが微笑して言った。

「必要の無い衣です」

…衣?

耳に入ってきた言葉に、ヘリがイヌの手に注意を向けた。

イヌが持っていた袋には見覚えがあった。

たしか、あの中には、BBからもらった衣装を入れていたはず。
…でも、まさか。

ヘリが、あわてて、イヌの所に駆け寄ろうとしたが、
酔いのせいで、畑のぬかるんだ土におぼつかない足をとられ、転びそうになった。
そんなヘリを、老女がガシっと両腕でつかんで引き留めた。

「大丈夫かい?あんた。危ないよ。
ここでコケたら、その綺麗な服が台無しになっちまうよ」

ヘリの脳裏に、先ほど車の中でイヌが話していた
天女の羽衣伝説がよみがえっていた。

…まさか、まさか。

目を見開いたヘリの前で、
イヌは、手にもっていたウォッカを火の中に注ぎ込んだ。
そして、袋から中身を取り出した。

ヘリの悪い予感は当たった。

それは、ヘリがオークションのステージで
最後に着たBBの衣装だった。

イヌは、それを、ヘリが止める隙も与えずに、
勢いを増した火の中に、バッサリと投げ入れた。

薄いヴェールに包まれた布地がひらひらと宙を舞い、
あっというまに、燃えさかる炎の中に呑み込まれるように消えた。

あまりの出来事に、ヘリは、茫然となって、
ただ、突っ立ったまま、「嘘でしょ」と言うのが精いっぱいだった。

その声に気付いた老人がヘリの方に目をやり、
感心したように、ほおーっと息をついた。

「あのえらい別嬪さんは、ソ弁護士さんの恋人ですか?」

「ええ」

イヌがヘリをチラリと見た後、うっすらと笑って言った。

「僕のヴィーナスです」

暗闇の中、赤々と燃える焚火の光に浮かび上がったヘリの姿は、
幻想的な要素も加わって、まさに天女のような神秘的な美しさがあった。

だが、焚火の前に佇むイヌの姿は、
今まさに禁断の呪術を成功し終えた妖術師のように見えた。

世界に二つとない貴重な衣を燃やし、地獄の業火の前で、
満足げな笑みを湛え、何事も無かったかのように立っている男。

ヘリは、ある種の恐怖で、悲鳴と、イヌへの批判の言葉が、
喉元に凍りついているのを感じながら、口をぱくぱくさせていた。

「焚火にしてもいいよな?」と聞かれた時、
「別にいい」とは答えてはいたが、まさか本当にするとは。

ヘリの認識はどこまでも甘かったのだ。

イヌはヘリが想像していた以上に、怒っていた。
ある意味、ヘリの学生時代のファッションショーの時のサンテより。

おそらく、あのランジェリーのような衣装を着たヘリが、
ステージを歩く姿を見た時から、こうすることを決めていたのだろう。

そのことに、ようやくヘリが気付いた時には、
『清純なヴィーナス』と呼ばれた服は、
イヌの手によって天に召されてしまっていた。

「お世話になりました」

イヌは、老夫婦に丁寧に礼を述べると、
まだ放心状態のヘリの手をとって、さっさと車に乗り込んだ。

「お会い出来てうれしかったですよ。夜道気をつけてお帰り」

気のいい老夫婦は、いきなりやって来て、唐突に去っていくイヌに
なんの疑念も持たないようだった。

ショックのあまり思考が一時停止していたヘリだったが、
ほろ酔い気分は、とっくの昔に覚めていた。

「…ファッションショーと焚火もしたから、今度こそ家に帰るのよね?」

こわごわ聞いたヘリに、イヌがフロントを向いたまま頷いた。

「ああ」

そして、素っ気なく言った。

「そうだ。ファッションショーのフィナーレをしないとな」

どういう意味かは、もうこの際どうでも良かった。

ソ・イヌという男は、「やる」と言った事は、必ずやる男だった。

それが、ヘリをうっとりと陶酔させるような事でも、
昏迷状態に貶めるような仕打ちでも。

天に帰るための羽衣を燃やされた哀れな天女は、逃げ場を失い、途方にくれ、
助けを求めるように外の老夫婦を見た。

「仲良くな~」

車の外で何も知らない夫婦がにこやかに手をふって、
ヘリとイヌを見送っている。

…助けて。おじいさん、おばあさ~ん!

だが、ヘリの助けを求める心の叫びは、イヌの車と共に
暗黒の闇の中に消えていった。

こうして、

その日、美しいヴィーナスの目撃者は多数いたが、

天国から、一気に地上に引き戻されたヴィーナスの
その後の運命は、羽衣を燃やした男以外、誰も知らない。


(終わり)


イヌは、天然ヘリに対して、飴とムチの使い方がとても上手♪という話でした。
書きたいエピソードが書き切れなかったので、ちょっとだけおまけ話がつくかな?
あと、裏箱も。イラストだけは用意してあるから(笑)

大変お待たせしちゃってすみません。
1日数行ずつしか創作出来なくて。
以前なら、こんな短編、朝飯前にちゃちゃっと書けたのに。←嘘です。書けていません。

拍手、拍手コメント、コメント、メッセージなど頂きまして、
ありがとうございます!お返事遅くなりますが、ゆっくり読んでお返ししますので、
お待ちくださいね。外国語…英語なら何とか読めてます(汗)

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