fc2ブログ
管理人★みつば★の好きな小説、ドラマ、映画等の感想やイラスト、小説などの二次創作物がおかれています。
プロフィール

★みつば★

Author:★みつば★
「みつばのたまて箱」にようこそ。
管理人★みつば★です。
記事の中にお好きな物があれば
是非一緒に楽しみましょう♪

最新記事

カテゴリ
月別アーカイブ

訪問者様♪

更新通知登録ボタン

記事更新を通知します

検索フォーム

QRコード

QR

韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「温泉へいこう」1話です。

二次小説は、ドラマ最終回16話以降の続きをみつばが、勝手に妄想したお話ですが、
ドラマのネタバレ等も含んでいますので、現在ドラマを見ている方、
これからドラマを見る方はご注意ください。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX」ページからどうぞ。

このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。



この話は、「湯けむりデート」の本編です。
夢桜」より後で、シリーズ話の時間では一番未来の話になります。



温泉へいこう(1話)





日本を旅行していたヘリとイヌは、温泉旅館に泊まることになった。

街の喧騒から離れた、緑豊かで静かな場所にある温泉宿。
観光で歩いていた場所とは違って、
穏やかでゆったりとした時間が流れているようだった。

のんびりと温泉に入るつもりで、ヘリとイヌは
早めに移動して、チェックインの出来る時間に宿についた。

「こちらで少々お待ち下さいませ」

二人は、まず広々としたロビーに案内され、窓側のテーブル席に座った。
天井までの一面ガラスばりの窓から、宿の美しく整えられた庭や遠くの山々が見渡せた。

「ガーデンが素敵ね」

ヘリは、うっとりとした表情で、外を眺めていた。

庭には池もあって、その中に色とりどりの大きな鯉達が泳いでいた。
白い鳥も優雅に庭先で羽を広げている。
宿泊客らしき親子づれが鯉に餌をあげている姿も見えた。

係の仲居さんがお盆に菓子と抹茶をのせて運んできた。

「どうぞ。サービスのお抹茶とお菓子です。お抹茶は大丈夫ですか?」

日本語で話す仲居さんに、イヌとヘリがすぐに返事を出来ずに間をあけた。

「えっと…菓子はわかったのですが、オマッチャってお茶ですよね?」

そう、少しなまりのある日本語で話すヘリに、仲居さんは、
訳を知ったように微笑んで「英語でよろしいですか?」と聞いた。

抜群の記憶力と暗記力を持つ、ヘリは、短期間の日本語の勉強で、
かなり聞きとりも話も出来るようになっていたが、英語の方がコミュニケーションはしやすいようだった。

もちろん、それはイヌも同じだった。

「ええ、お願いします」ヘリが英語で応えた。

仲居さんが流暢な英語で、先ほどと同じ説明をした。

「緑茶もございますので」

そう言う仲居さんにイヌとヘリはお礼を言って、抹茶と菓子を頂く事にした。

「おいし…」

菓子を口に含んだヘリが思わずもらした言葉に仲居さんが嬉しそうな顔をした。

「お菓子はこの旅館内で、地元の特産品である野菜をねりこんだ餡で作られたものです」

ヘリは、菓子がとても気にいって、出来ればサンテやエジャ、ユナにお土産で買って食べさせてあげたいと思った。

「お土産で買うことは出来ますか?」

「購入は売店で可能なのですが、御日持ちが2日しかない生菓子なのです」

「2日…じゃあ、ちょっと無理ね」

ヘリは、残念そうに、菓子を見つめた。
そんなヘリにイヌが慰めるように声をかけた。

「いつか、お父さんとお母さんも一緒に連れてきてあげるといい」

「そうね」

パン屋を営んで、二人で楽しそうに一緒に働いてはいるけど、
なかなかまとまった休みもとれないようなヘリの父母、サンテとエジャ。

でも、いつか、二人を旅行に誘って、こんな温泉旅館に連れて来てあげたい。
そう思ったヘリだった。

そして、ふと前に座っているイヌに目をやった。

イヌは、リラックスした様子で、椅子に深く腰かけて、抹茶を口に含みながら、外の庭を眺めていた。

…イヌのご両親も生きていらしたら、きっとイヌだって、親孝行で連れて来てあげたいって思ったわよね…。

イヌの横顔に、ヘリは、そんな事を考えて、
あわてて、感傷にふけりそうになる気持ちをおさえるように、
口に含んだ、深みのあるほろ苦い抹茶を呑み込んだ。


菓子と抹茶を食べ終えて、一息ついたヘリとイヌが窓の外の風景を眺めていた頃、
先ほどの仲居さんが二人を迎えにやってきた。

「お待たせいたしました。お部屋にご案内いたします」

カートに二人の旅行バッグを乗せた仲居さんに案内されて、
ヘリとイヌは、庭に続く石畳を通って、離れにある客室に向かった

「こちらのお部屋です」

カラカラと木製格子扉を開けて、仲居さんにいざなわれた二人は、靴を脱いで中に入った。

部屋は、ふわっと清涼な香りが立ち込めた一面畳の和室になっていた。
広い和室には低いテーブルと座イスがあり、続き間になっている広縁には外を眺められる長椅子とテーブルが置かれていた。

障子窓を開け放した部屋は、ガラス張りの大きなはきだし窓で、
室内からも、広々としたテラスからも庭が見渡せた。
庭続きの部屋の前には檜で造られた露天風呂もついていて、湯がおしげもなく溢れていた。

「うわあ。素敵ーっ」

おもわず、大きな声をあげて、はしゃいで、露天風呂の庭の方に走り寄るヘリに、
…君は子供か。とイヌが苦笑して、仲居さんがほほえましそうに笑った。

「では、お時間になりましたら、こちらのお部屋でお食事の準備をさせて頂きます。お布団はその後にひかせて頂きます。このお部屋の露天風呂はいつでもお入りになれます。貸し切り露天風呂もございますが、もしご利用されるようでしたら、フロントの方に時間を予約なさって下さい。何か御用がありましたら、そちらにある電話内線05を押して頂ければ、わたくしが伺いますので」

旅館の施設や宿泊の事を一通り説明し終えた仲居さんが、浴衣が男女一式、タンスの中に入っている事をヘリとイヌに伝えた。

「浴衣の帯のつけかた、教えて頂けませんか?」

そう、おずおずと聞いたヘリに仲居さんが、「よろしいですよ」と隣部屋にヘリを案内して、浴衣の着方をレクチャーした。

記憶力の良いヘリは、仲居さんに帯をつけてもらいながら見て、すぐに覚えた。

「どう?」

ふすまを開けて、部屋に戻ったヘリは、得意げにイヌに浴衣姿を見せた。

「どうって何が?」

イヌが、仲居さんから入れてもらっていたお茶を口に含みながら、
そっけなく聞いた。

ヘリの言って欲しい事が分かっていながら、わざと素知らぬふりをしていたイヌだった。

…もう。あいかわらず気のきかない男ね。

ヘリは、唇をとがらせながらも、クルリっとイヌの前で体を回転させてみせた。

「似あう?」

「・・・・・・」

イヌが、無言でフッと口の端で笑った。

薄紅色の花柄の模様の浴衣。

色も似あっていたが、浴衣はヘリの細い長身にもぴったりと合って、
普段の洋装とはまた違った趣で、ヘリの白く綺麗な肌と美しい顔を際立させていた。
ヘリの細い腰に巻かれて結ばれた朱色の帯が、艶めかしくイヌの前でちらついている。

「悪くないんじゃないか」

思いとは裏腹な声色で、言い放つイヌ。
そうして、イヌが、ふつふつと湧き上がった妖しい邪念を抑え込んでいるとも知らずに、
ヘリは、機嫌を損ねたようにプウっと頬を膨らませていた。

鏡で見て、すぐに自分の浴衣姿が気にいったヘリだった。
きっとイヌも「いいな」と言ってくれると思ったのに…。

…もうちょっと褒めてよ。それに…。

付き合いも少し長くなっていたが、相変わらず、イヌの反応を見た目通りに受け取ってしまう素直なヘリだった。

…もっと、喰いつくような目で見てくれてもいいのに。

ちょっぴり可愛い女の欲望も混ざった、淡い期待が裏切られた思いで、シュンとなったヘリは、
内心十分、喰いつきたいと逸る気持ちを表面に出していないだけのイヌに全く気づいてはいなかった。

チラリとヘリが見ると、座って茶を飲んでいるイヌも浴衣を着こんでいた。
ヘリが仲居さんに帯の付け方を教わっている間に、自分で着たようだったが、
帯は適当に結ばれていた。

「イヌは浴衣の着方慣れてるのね」

ヘリもイヌの前に座ると、少し冷めてしまったお茶に口をつけた。

「ああ、日本に旅行に来たら、旅館に泊まる事が多かったからな」
…浴衣も着慣れた。

「お父さんと一緒に旅行してたのよね?」

「養父も日本に旅行する時はホテルより旅館の方が好きらしい。
畳の部屋や温泉が好きだから。僕もそうだけど」

「ふーん…」

イヌが、日本の温泉が好きだという話はよく聞いていたヘリだった。
だから、こうして日本に一緒に初めて旅行して、温泉旅館に泊まるのを楽しみにしていたのだったが…。


「ヘリも日本旅行は初めてじゃないだろう?」

イヌが聞いた。

「ええ、学生時代、友人と何度か来たことがあったわ。ユナとね。でも、温泉旅館に泊まるのは、これが初めてだわ。今まではホテルにばかり泊まってたの」

「旅行中は何をしてたんだ?」

「…前にも話したけど、ほとんどショッピング。観光もしたけど、ブティックめぐりしていたわ」
…どこの国に旅行に行ってもショッピングばかりしていたヘリだった。

「韓国にいるのとほとんど変わらないな」

イヌが失笑した。

「その国でしか売ってないデザインの服もあるでしょ?だから研究熱心だったって言って欲しいわ」…一応服飾学科だったし。

言い訳するように言ったヘリだったが、当然、服やデザインの勉強の為にブティックめぐりをしていたわけではなかった。

「ただ、今思えば若気の至りね…」

ヘリは、親のお金で、贅沢三昧買い物をしていた過去の自分を恥じるように溜息をついた。
そんなヘリにイヌが面白そうな顔をした。

「君の若気の至りは、過去形じゃなくて継続中だろ?」

「…ええ、そうね」

慰めるどころか、完全にからかっているイヌに、ヘリがジットリとした目を向けた。

「意地悪な恋人と一緒にこうして外国の宿に泊まってるっていうのも若気の至りよね」

「気にするな。旅の恥はかき捨てっていうだろ?」

「…どういう意味かしら?これから何か恥ずかしい事でもおこるのかしら?」

自分で言っておいて、どこか意味深だったその言葉に
ヘリは恥ずかしくなって、首筋を手でぽりぽりとかいてそっぽを向いた。

そんなヘリの反応にイヌが薄く笑った。
水中にたれていた釣り糸に手ごたえを感じた釣り人のような笑みだった。

「恥ずかしいかどうかの気持ちには個人差があるからな。でも僕の口からそれを聞きたいのか?」

「…あなたと私の感覚の違いは、恥の基準値だけに限った話じゃないでしょ?」

どんどん、深みを増していく妖しい会話の内容に、ヘリがドキドキしはじめて、
持っていた湯のみをもじもじと手の中で弄び始めた。

異国の地で、静かで非日常的で、誰にも邪魔されない二人きりの空間。

普段着ていない浴衣をお互い着込んで向かい合っているだけなのに、
長い時間ずっと会ってなかった想い人に、遠い地で再会したような、戸惑いとトキメキを感じてしまう。

ここしばらく、韓国では、仕事が忙しくて、ゆっくりとした時間が取れなかったせいもあったが、根がロマンチックなヘリだけでなく、イヌもそんな思いでヘリを見つめていた。

まだ明るい時間で、旅館に来たばかり。
これから、温泉に入ったり、食事をしたりと、まだまだ残されたイベント予定は目白押しだというのに。

こんなところで、もうこんな気分になるなんて…。

「じ…じゃあっ。温泉にでも入りに行きましょうかっ」

見つめあったままの、濃く甘い沈黙に耐えられなくなったヘリは、
わざと元気良く立ち上がると、イヌから目線をはずしてそう言った。


「えーっと…バスタオル…バスタオル…は、あ、大浴場に置いてあるって仲居さんが言ってたわよね。でも部屋にも露天風呂があるから…」

そう、あたふたと、一人ごとを言いながら、箪笥の中を覗き込んでいたヘリの背後にイヌが立った。

「へり」

ドクン…☆

振り返らなくても、分かった。
低めのイヌの静かな呼びかけにヘリの甘い胸騒ぎが大きくなっていった。

ソッとイヌの手がヘリの肩におかれた。

「君と僕との相違点は沢山あることは自覚してるけど」

イヌが続けた。

「“今の気持ち”は同じじゃないか?」

ヘリは、イヌの言葉にうぶな乙女のように、体を熱くして動けなくなっている自分に内心ジタバタと悶えていた。

「同じって、何が同じ気持ちなの?」

分かっていながら、何気なさをよそおって問いかけるヘリに、
イヌもヘリの気持ちが分かっていながら、クスっと微笑すると、
さらにヘリの背中に体を寄せた。

「…聞きたい?」

「教えて…」

甘さも熱も最高潮に達してきた言葉の応酬だけでなく
体の密着度も最大限になろうとしていたヘリとイヌだった…が、その時。


ブーブーブー…。

「・・・・・・」

ヘリとイヌは同時に、テーブルの上に置いてあったイヌの携帯電話に目をやった。

マナーモードにしてあったが、微かなバイブ音が二人の注意を大きくひきつけていた。

少しの間の後、イヌがフッと息をつくと、テーブルの上の携帯電話をとって画面に目をやった。

「…国際電話だ」

「職場の方ね…出て」

…すまない。

イヌは、チラリと申し訳なさそうな眼差しをヘリに向けたあと、
携帯電話の通話をオンにして耳にあて、ヘリの側から離れた場所に移動しながら、
会話をはじめた。

やはり、イヌの職場の人からのようだった。

隣室に移動して仕事の話をしているイヌの後ろ姿を見守ったあと、尻切れトンボになってしまった気分を一新するために、ヘリはそそくさと、温泉に行く準備を始めた。

バッグに下着の替えや愛用のクレンジングクリームをいれたあと、ヘリは、テーブルに戻って、すっかり冷めてしまったお茶の残りをチビチビと飲んでいた。

やがて、部屋にイヌが戻ってきた。

「職場からだった。少しトラブルがあったらしい」

落ちついたイヌの声だったが、その内容にヘリは想像以上に驚いた。

「トラブル?大丈夫なの?」
…韓国にすぐに戻った方がいい?

「電話で僕の指示がどうしても必要な用件だったが、もう大丈夫だよ」

心配な気持ちと不安がこもったヘリの言葉と眼差しに、イヌが、安心させるように微笑んで言った。

「水を差されたから、熱い湯につかって気分を温め直しにいこうか。
大浴場もいいが、もし貸切露天風呂が空いているなら、入りにいかないか?へり」

「ええ、いいわね」

ヘリもニコリとイヌに微笑み返すと、強くうなずいた。

ヘリがフロントに電話すると、貸切露天風呂は、ちょうど10分後から貸し切り可能だということだった。ヘリは早速予約をいれた。

「露天風呂って私初めてなの。すっごく楽しみだわ」

もう、すっかり気分転換して、ワクワクしているヘリにイヌが笑った。

…僕も楽しみだよ。

旅館に来た二人の時間は始まったばかりだった。

…が、部屋を出る時に、
イヌは迷った末に携帯電話をそっとバスタオルの入ったバッグの中に忍ばせた。

そして、ウキウキしながら前を歩くヘリの後ろ姿を見つめ、
一瞬、心痛な面持ちになって、浅い溜息を1つ静かについてから、歩きだしていた。



(「温泉へいこう」1終わり 2に続く)



前書いた「湯けむりデート」の本編「温泉へいこう」です。
1話と2話の間に前回更新した「湯けむりデート」の話が入ります。

この話は、今連載中のシリーズの「埋もれた約束」より未来の話で、
さらに「夢桜」より後です。
だから、若干、今のシリーズの二人と未来の二人がどこか微妙に違うような同じような…そんな所に注目して読んでみてください♪

シリーズがこの時間軸に追いついたら(いつ追いつくかな?)
二人の日本旅行編も書く予定です。


ブログへの拍手、拍手コメントありがとうございます♪
明日からGW後半戦で、家族と行楽に出かける予定ですが、
予約投稿で小説の続きはアップしておきますね。


ブログの記事が気にいったら
【拍手ボタン】ポチリと押してお知らせください。

↓こちらも参加中♪

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村



関連記事

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

web拍手 by FC2
// ホーム //