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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「さめない夢」後編です。

二次小説は、ドラマ最終回16話以降の続きをみつばが、勝手に妄想したお話ですが、
ドラマのネタバレ等も含んでいますので、現在ドラマを見ている方、
これからドラマを見る方はご注意ください。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX」ページからどうぞ。

このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。




この話は書き下ろし中編小説です。





さめない夢(後編)






向かった先は、市街地から離れた山の上の墓地だった。



イヌは、そこで、サンテとヘリの名前の刻まれた墓石を見つけた。

その名前を手で触れながらも、一向に現実感はわかなかった。


…君がここに眠っているなんて、僕には信じられないよ。ヘリ。


しばらく墓石の前にたたずんだ後、イヌは、帰途についた。



マンションの4階の部屋に戻って…

ドアを開けると、そこはやはりヘリの住んでいた時のままだった。

ヘリの家具、家電、絵、小物、化粧道具や雑誌までも。
つい昨日までヘリが生活していたみたいに。

ただ、クローゼットの中の衣服は全部イヌの物だった。
置かれたバッグも。

まるで、ヘリがどこかに旅行に行ってしまっているようだった。


イヌは開け放したクローゼットを見ながら、昼間のジェニーの話を思い出していた。


『アメリカで、ヘリさんの訃報を聞いて、あなたはやはりとても取り乱していたわ。
韓国に行って直接確かめるまで信じないって。それで、今の法律事務所で勤める事も決まって帰国したあなたは、ヘリさんが本当にいなくなった事を確認したの。

そして、あなたは、その後、ヘリさんが元いた部屋に住んで、
それも住んでいた時の状態のまま、ずっと暮らしている。
いつか心の傷も癒えると思ってたけど、昨夜の姿で分かったわ。
あなたは今でも彼女の事を忘れられないのよ」


…忘れるとか、忘れないとかじゃない。


「なあ、いるんだろ?」

イヌは部屋にむかって声を出した。


「ヘリ、隠れてないで出てこいよ。僕を驚かせようとしているんだろ?」


シンとして、返事の返って来ない空間に、イヌは尚も話しかけた。


「周りのみんなも巻き込んで、僕を騙そうとしているんだろ?ヘリ。
今日は金曜日だぞ。明日は休みだから、一緒にゆっくりと夕食を食べよう」

イヌはキッチンに向かった。


「何を食べたい?またサラダ?生野菜ばっかり食べてないで、タンパク質もとらないと肌に良くないぞ」

イヌはそう言って、冷蔵庫を開けた。

冷蔵庫の中に、ヘリの好きな生野菜は入っていなかった。


「そうだ。ラーメンにしよう。君も好きだったよな。今日は特別に僕が作ってやるから。
また前みたいに一緒の器で食べようか?」


イヌはキッチンの棚の扉を開けた。
ラーメンのストックもないようだった。

「…君の好きなワインはあるかな?酒だけは…」

イヌは、ワインを1本見つけると、コルクを開け、中味を2つのグラスに注いだ。


「ほら、君の好きな酒だぞ。出てこないと全部飲んでしまうからな。ヘリ」

イヌが、大きな声で言った。

ヘリの姿の現れないキッチンカウンターで、イヌは一人、ワインボトルをあけた。
…最初に注いだグラスは1つ残して。


そして、ベッドの方に移動して、
その上に腰かけた。

ヘリのベッド…。使用していたシーツもそのまま。


…何度もここで君と抱き合ったのに…。この記憶も嘘なのか?
こんなにはっきり覚えているのに。


抱き合ったヘリの肌のぬくもりも香りも、

『イヌ…愛してる』

甘く囁く声さえも。


イヌは、ふと、ベッドの上に置いていた、エジャから渡された風呂敷包みを見た。
そして、中から、自分のかつての衣服一式を取り出した。

ヘリが、時々着ていたという服…。


自分にずっと会いたがっていたというヘリ。


…僕も会いたかったよ。ずっと。
こんなことになるなら、君の側から離れなければ良かった。

イヌは唇をかみしめ、目を閉じた。

たとえ、直接会えなくても、想いを伝えられなくても
影から君を見守っていれば良かった。

僕が君から離れることが、君の幸せだと信じていたから。
…いや、信じようと思いこもうとしていた。

苦しくとも、そうすることが最善だと。


永遠に会わないつもりで離れたけど、
こんな風に永遠に消えてしまうとは思ってなかったから。

君が生きていてくれれば良かった。
たとえ、会えなくても。幸せに生きていてくれたら良かった。
誰か君を心から愛してくれて、心から愛する人と一緒になって、
幸せになってくれていたらって…。

…違う。

それも嘘だ。

本当は、そんな君を想像するだけで胸が苦しかった。

誰かを愛して、その誰かに愛される君を
思い浮かべるだけで、胸が張り裂けそうだった。

その誰かに自分がなれないことが分かっていても。

せめて伝えたかった。


自分の本当の気持ちを。


「…ヘリ」


イヌはつぶやいた。


「ヘリ」

ヘリがずっと大切にしていたという自分の服を抱きしめ、
そして顔をうずめた。

「ヘリ…ヘリ」

何度も名前をよんで。

…君にずっと会いたかった。

会って抱きしめたかった。

伝えたかった。

「ヘリ、ヘリ。ヘリっ…」

イヌの呟きはしだいに大きくなって、慟哭にかわった。


『イヌ』

脳裏に自分を呼ぶ偽りの記憶のヘリを思い浮かべて
イヌは、衣服を抱えたままベッドに倒れ込んだ。

つかのまの夢の中の出来事だったとしても。
偽りの記憶の中でもいい。至福の時に溺れていたかった。


「ヘリ」

溢れる涙をそのままに、イヌは固く目を閉じた。


―――どれだけ時間がたったのか。


イヌは、瞼を開けた。

そこは、変わらないヘリの部屋だった。

「・・・・・・」

やはりベッドの中にヘリの姿はない。

偽りの夢さえ見ずに眠っていたか…。

イヌは自嘲して、そして呟いた。

「ヘリ…」


「え?何?」

その時、聞こえた声に、イヌが弾かれたように後ろを向いた。


「呼んだ?イヌ」

ベッドの後ろのキッチンから、確かにヘリの声がした。

イヌが、驚愕の思いでベッドのある部屋の柱の隙間からキッチンの方を覗き込んだ。

ヘリがキッチンに立っていた。
エプロンをつけて、手にはボールと箸を持って、きょとんとした表情でこちらを見ている。


「へ…り?」

夢や幻でなく、本物のヘリのようだった。

「いたのか?」

なんとか口にしたイヌの言葉に、ヘリが不思議そうに首をかしげた。

「いたわよ?」

「ベッドにいないから…」

「たまたま目が開いたから、朝ご飯でも作って、イヌを驚かせようと思ったの。
びっくりした?」

私が、休日にあなたより早起きして、そして、朝ご飯を作るなんて無いことだものね~。

呑気なヘリの声も、イヌは、まだどこかぼんやりした頭で聞いていた。

「…ああ、びっくりしたよ」

…これも夢か?


「何?ほおけちゃって?そこまで驚くことないじゃない」

ヘリは、自分が期待した『びっくり』の反応とは違う、イヌのなにやら狼狽すらしている姿に、恥ずかしそうに頬を膨らませた。

…たしかに私が休日の朝早くからキッチンに立ってるなんて変かもしれないけど。


イヌは、ベッドから出ると、
ブツブツとつぶやいているヘリの方に足を向けた。


「…何を作るつもりなんだ?」

キッチンのカウンターの所で、ヘリと対面したイヌは、
ヘリの手元をのぞきこんだ。

ボールの中に泡だてた卵らしきものが入っていた。

「オムレツ」

「手伝おうか?」

ヘリがあわてて首をふった。

「いいの。私にやらせて。あなたはコーヒーでも飲んで寛いで待っていてちょうだい」

「分かった」


必死の形相で、卵を泡立てているヘリをジッと見つめるイヌ。


「…イヌ、そんなに見つめられると作りづらいわ」

ヘリは、イヌの食い入るような視線に、気恥かしそうな上目づかいになった。

「気にしないで」

「するわよ」

ぎこちない手つきで、フライパンに卵を流し込んで、
覗き込むように凝視するヘリの姿をイヌは黙って見つめ続けた。

やがて、卵が焼けたらしく、ヘリが皿にフライパンの中味を移し替えた。


「できたわ」

オムレツ一つやくのに、一仕事したように汗の滴を流しているヘリ。

「味見していい?」

イヌが聞いて、ヘリの横に近づいた。

「ちょっとこげちゃったわ」

「ああ、でも、…味はいいよ」
…形は少し崩れているけど。

箸にとって味見をしたイヌがうなずいた。

「ほんと?」

イヌの言葉に不安そうな表情から、とたんに嬉しそうな顔になったヘリ。

その顔を見たイヌは、たまらなくなって、
両手を広げると、ヘリを背後からギュッと抱きしめた。

「イヌ?」

不思議そうなヘリの声。


…そう、これは夢なんかじゃない。
偽りの記憶でもない。

これが現実だ。

腕の中にヘリがいる。
この温もりも声も笑顔も。自分を見つめる瞳も、全部。


もし、これが夢だというのなら。


「ヘリ」

イヌがヘリを抱きしめたまま呼んだ。

そして、

「愛してる」

そう、言った。

…ずっと伝えたかった言葉。

「もう。オムレス1つでそんなに感動したわけ?」

照れ隠しのように、ヘリが苦笑して答えた。

「ああ、夢かと思ったよ」

これが現実じゃないならば、

いっそ、ずっと、永遠にさめない夢であって欲しい―――。


「うーん。じゃあ、私のイヌ驚かせ作戦は成功ね」

おどけたように言って、ヘリは、イヌの腕の中で身をよじると、
後ろのイヌの方に顔を向けた。

そして、輝くような笑顔でこう言った。

「私も愛してるわ、イヌ。おはよう」


そんなヘリに微笑み返して、
ゆっくりと顔を近づけて、唇を重ねるイヌ。


「おはよ。へり」


…君が側にいる。この夢のような現実がずっと続くように―――。


そう、心の中で祈りながら、

イヌは、今日もまた、愛する恋人と共に、素晴らしい朝を迎えるのだった。


(終わり)


「さめない夢」の『さめない』は、
覚めない、醒めない、冷めない 褪めない
いろいろ意味がとれるように平仮名にしました。

暗かったですが、「夢おち」です。
でも、明晰夢にしても鮮明すぎるので、イヌは眠っている間に
「ヘリのいなくなった世界」のパラレルワールドに行ってたのかもしれません。
原作者さんが言っていた「バッドエンド」の可能性もあったという「検事プリンセス」。
一昔前の韓国ドラマならありそうなラストかもしれません…そんなのは嫌ですね(涙)

やっぱり、16話のようにハッピーエンドで終わって、
二人にはその後も幸せになってほしいです♪


拍手、拍手コメントありがとうございます♪

読み逃げでも全然OKです。
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