fc2ブログ
管理人★みつば★の好きな小説、ドラマ、映画等の感想やイラスト、小説などの二次創作物がおかれています。
プロフィール

★みつば★

Author:★みつば★
「みつばのたまて箱」にようこそ。
管理人★みつば★です。
記事の中にお好きな物があれば
是非一緒に楽しみましょう♪

最新記事

カテゴリ
月別アーカイブ

訪問者様♪

更新通知登録ボタン

記事更新を通知します

検索フォーム

QRコード

QR

中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「常春の庭」第2話です。

二次小説を読む注意点、「陳情令」の他の二次小説も ←(以下、必読の注意書きです)
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


コメント記入に関しての説明は、こちらから。

「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

ドラマ「陳情令」、原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


この小説は、時間軸では、みつばの二次小説シリーズ「道侶編」の最新話になります。


「続きを読む」からお入りください
(スマホで見ている方は、すでに小説が開いています)



常春の庭(2話)





藍思追と藍景儀。

まだ少年の面影を残しつつ、体つきは青年へと向かっている若者たち。

無垢さを引き立たせている藍氏の白い衣。
全身みなぎる清らかな生気に満ちた溌剌とした姿。

…若いって、それだけでいいよな。

それは、今の魏無羨の心理状態から発せられた感情だったが、
朝の光を背にした二人の佇まいは、眩しいほど輝いて見えた。


「よぉ」

目を細め、軽く挨拶を返した魏無羨の前に藍思追と藍景儀が立った。

「魏先輩、これからどちらへ?」

「山へ柴刈りに。川に洗濯に行く」

「雲深不知処の山は勝手に柴をかるのも、川に洗濯に行くのも禁止されています」

ふざけて答えた魏無羨だったが、冗談の通じない藍氏の弟子、藍景儀が鼻息荒く注意してきた。

魏無羨は、面倒くさげに頭をかくと、「じゃあ、外に闇狩りに行ってくる」と言った。

もとより、そのつもりだった魏無羨は二人に手を振ると踵をかえした。

しかし、結界門の方に歩き始めた魏無羨の後ろで、藍思追と藍景儀がパタパタとついてくる足音が聞こえた。

「なんだよ?」

振り返らずに尋ねた魏無羨に追いついた二人は、魏無羨の両脇に並ぶと、「われわれも同行します」と、異口同音に答えた。

「いいよ。お前たちには雲深不知処の中で仕事があるだろう?」

「本日の必須業務はありません」

「魏先輩とご一緒させてください」

「修行は?」

「修行は、闇狩りの実践でできます」

「魏先輩から学びたいことが沢山あるので、連れていってください」

あうんの呼吸で、交互に応える二人に魏無羨は「前から思っていたけど…。おまえたち、似ていない双子の兄弟みたいだな」と呆れたように言った。

「よく言われます」

また異口同音に答えた二人に魏無羨は笑った。

「足はひっぱるなよ」

「はい」

魏無羨から同行の許可をもらった、藍思追と藍景儀は嬉しげに顔を見合わせた。
そして、魏無羨と並び歩き、雲深不知処の結界門から外に出た。


「魏先輩、どちらに行くのですか?」

「妖魔が現れると噂されている、姑蘇の西方にある『漉水邑(ルシュイ)』という谷地の山郷だ。知っているか?」

「その話なら知っています。しかし、その地には、噂を確かめるために藍氏の先輩たちがすでに偵察に行っています」

「それで、調べたところ、何もいなかったと報告されています」

「だが、妖魔が出た、という話は消えていないのだろう?」

「ええ。そうみたいです」

魏無羨の確認に、藍思追が真面目な顔で頷いた。

「噂話に恐れた周辺住民からの相談で、他の仙門の方達も探りに行ったそうなのですが、やはり、妖魔が出現している痕跡は見当たらなかったという話です」

「仙師達が探っていたのは、妖魔の気配だけでは無いだろう。おそらく、噂の出どころも調べていたと思うが、それは?」

「不明です」

「妖魔が現れるという噂なのに、誰が目撃したかも分からないのか?」

「はい。おかしな話です」

藍景儀が答えた。

「言い出した者が分からないのに、漠然とした噂話だけが広まっている。
しかも、どこの仙師達も「いない」と話しているのに、しばらくすると、また同じような話が持ち上がる。最近では、妖魔が出たという話で人の不安を煽り、その反応を喜んでいる愚か者の悪戯では無いかとも言われています」

「もし、本当に妖魔がいないのなら、その線はあるかもしれない。または、何らかの考えがあって、あえて噂を流している者がいるか」

「何らかの考えとは?」

魏無羨の言葉に、藍思追と藍景儀は興味深々でくいついた。

若者二人に、キラキラと一種の期待に満ちた瞳で見つめられた魏無羨は、苦笑を浮かべ、「仮の話だ」と答えた。

「とにかく。俺は一度現場に行って、この目で探ってこようと思う。魔にしろ、妖にしろ、怪にしろ、愉快犯にしろ。人を困らせていることには変わらないからな」

「はい」

正義心の強さも師匠ゆずりとでもいうような藍思追が力強く頷いていた。

「ところで。お前達は、今、俺が言った、魔、妖、怪の違いは知っているか?」

「もちろんです。啓仁先生から教わっていますから」

魏無羨の問いかけに藍景儀が胸を張って答えた。

「では、藍景儀。妖と怪の違いを説明してみろ」

「・・・・・・」



雲深不知処から『漉水邑』までは距離がある為、3人は仙剣で飛んで向かうことにした。

藍景儀が魏無羨の出した問題に頭を悩ませながら仙剣を飛ばしている間、魏無羨は藍思追の仙剣に同乗し、快適な空の旅をすることが出来た。

藍思追の操る仙剣は、藍忘機と相乗りしている時と同じ安定感があった。


「思追」

仙剣の後ろにのんびりと立っていた魏無羨が藍思追に声をかけていた。

「なんでしょう?魏先輩」

「お前には、さっき俺が出した問題の答えが分かっていたんだろう?」

「はい」

返事をした後、藍思追は、スラスラと模範解答を述べた。

その答え方は、以前、魏無羨が修習生として学んでいた時に、蘭室の中で、門下生の模範となっていた藍忘機とそっくりだった。

魏無羨は、藍忘機の回答を聞いていた、当時の藍啓仁のように、「うんうん」と満足げに頷いていた。

…さすが。思追。

それは、一般に身内びいきと言われるものかもしれなかったが、幼児の折、可愛がっていた(?)藍思追が立派に成長した姿は感慨深く、誇らしいとさえ感じた魏無羨だった。

「景儀に教えてやれ」

魏無羨の言葉に、藍思追はやわらかな微笑を浮かべた。

「景儀は、分からないことは自分で調べるのが好きです。
考えても、答えが出てこないようなら、雲深不知処に戻った後学び直すでしょう」

「そうだな。忘れるたびに人に教えを謂うばかりでは、覚えられない。そして、考える力が養われない」

うんうん。と、藍啓仁の真似をする魏無羨に、前方にいた藍思追は、顔は見えなくとも、言い方に小さく笑っていた。

「魏先輩は、今、啓仁先生から学ばれているのですよね?」

「うん?どうして、それを知ってる?」

「藍氏の門下生はほとんど知っています。
魏先輩が先生の部屋に入っていく姿はよく目撃されていますから。
それで、1刻ほどして出ていかれる。毎回、御叱りを受けているわけでは無く、座学も受けていられることは分かります」

「…うん。少し誤解もあるようだが、そうだ」

「もしかして、秘密でしたか?」

「いいや。隠していたわけじゃない」

「では、蘭室で私達門下生と一緒に座学を受けませんか?」

心もち楽しそうに言った藍思追に、魏無羨は、露骨に顔をしかめた。

「思追。今のは、わざと言っただろう?」

魏無羨が大勢の弟子達と一緒に座学を受けるとどうなるのか?
藍忘機とは違う意味で、『優秀』すぎる魏無羨は、集団の中では浮いていた。

幼い頃の記憶があり、昔の魏無羨を知っているはずの藍思追が、からかいの心も込めて誘ったようにしか聞こえなかった。

もちろん、魏無羨が断ると分かっていながら。

「はい」

クスクスと一人笑いしだした藍思追に、魏無羨は苦笑を浮かべた。

「いい性格になったもんだな、阿苑。これは、お前の師匠、含光君に厳重注意しておく。純粋だった阿苑をひねくれさせたって」

「含光君ではありません。魏哥(魏兄さん)から学んだことです」

「俺は、そんなことを教えた覚えはないぞ。阿苑が勝手に俺を手本にしたんだろう。いいから、仙剣飛行に集中しろ。春は突然、上空で気流が乱れる時がある。気をつけろ」

「はい」

思わず、“阿苑”“魏哥”、と呼び合い、先輩風を吹かせて指導した魏無羨に、藍思追は、また微笑を浮かべた。

だが、少し先を仙剣で飛んでいる藍景儀の姿を見た直後、憂いた表情で押し黙った。

藍思追の様子が変わったことに気づいた魏無羨が首をかしげた。

「どうした?」

「・・・・・・」

藍思追の、どこか思いつめた雰囲気は、乱気流を意識し、飛行に集中しているせいだけでは無い。

魏無羨は、藍思追が話す気になるまで、じっと待機した。

ややあって、藍思追が口を開いた。

「景儀は、いい友人です」

「ああ~、うん。そうだな。・・・それで?」

藍思追は、前方を飛んでいる藍景儀の背をジッと見つめながら続けた。

「私は、過去の記憶を思い出しました。
でも、もとは温氏姓で乱葬崗に住んでいたことは、景儀にも話していません」

「話したいのか?」

藍思追は力無くかぶりを振った。

「誰にも打ち明けないつもりでした。
でも、彼の顔を見ると迷いが出る時があります」

「そうか・・・」

藍思追の気持ちが分かった魏無羨は、小さく相槌を打った。

今は姑蘇藍氏の仙府、雲深不知処にいて、藍思追と名乗っていても、本名は、温苑。
素性は、もと、岐山温氏に属した一族。温寧の親戚だった。

藍思追が、以前、雲深不知処を燃やした温氏に連なる子どもであったことは、一部の者しか知らない。

親友にも言えない秘密はある。
それは、魏無羨にもよく分かっていた。

「好きにすればいい」

そう言った魏無羨に、藍思追が勢いよく後ろを振り返っていた。

魏無羨は、藍思追に『前を向け』と指で示した。

あわてて顔を戻した藍思追に魏無羨が話を続けた。

「思追。お前の友人のことは、お前がよく知ってるはずだ。そして、俺の考えは、お前の考えと違うだろう。だから、俺がどうこう言えることじゃない。ただ、黙っていようと、打ち明けようと。お前は、なんの引け目も感じる必要はない。それだけは、はっきり言える」

魏無羨の言葉に藍思追が小さく頷いた。

「含光君にも、以前、似たようなことを言われました。私が、『昔のことを思い出した』と告げた時です」


『魏先輩。私は阿苑です』

藍忘機と温寧の前で、魏無羨に告げた時のことだろう。

あの後、藍忘機と藍思追は、魏無羨と温寧から少し離れて、しばらく二人きりで話をしていた。

藍思追は、記憶を失っていても、長年、自分が、どこの何者であったか知りたいという、漠然とした想いを抱えて生きていたのかもしれない。

船酔いするたび、自分は姑蘇の人間ではないと、薄々気づいてもいただろう。

過去を思い出したことを、すっきりとした面持ちで語り、魏無羨との再会に涙していた藍思追。
あの時の藍思追の中に痛みの感情は、全く無いように見えていた。

長年、思追の秘密を守り、育ててきた藍忘機。

…藍湛は、あの後、思追と、どんな話をしたのだろうか?

おそらく、自分がうっすらと想像していた通りだろうと魏無羨は考えた。


「不思議です」

藍思追がぽつりと言った。

「魏先輩と含光君が、そっくりだと感じることがあります」

「美形だってところがだろ」

本気で言った魏無羨だったが、藍思追には冗談と受け取られたようだった。

藍思追が、フフッと笑った。

「魏先輩と一緒にいる時、なぜか、含光君もいるように感じます。
私が、昔の記憶を失くしていた時。忘れているのに、含光君の中に、ずっと魏先輩を感じていたように。どうしてか分からないけど、安心します」

―――それは、お前が、俺たち二人を同じように信じているからだよ。

魏無羨は、思ったことを心の中で藍思追に言った。
そして、後ろから藍思追の肩に手を伸ばすと、ポンっと優しく叩いた。

言葉は無くとも、藍思追には、それで魏無羨の心が伝わったようだった。

藍思追は、晴れた表情で笑みを浮かべた。そして、「そろそろ目的地なので、降下します」と言って、仙剣の先を下方に向けると飛行の高度を下げていった。



魏無羨たちが降り立った『漉水邑』(ルシュイ)は、山間の谷にある郷の総称だった。

自然豊かな山と川。肥沃な土壌。
広大ではなかったが、恵みの多い地ゆえに、住人は多く、いくつかの集落も点在していた。

大きな街に出るには、山を越えなくてはいけなかったが、収穫した農作物や山でとった獣を売りに出る者たちの通る道は、丁寧に地ならしされている。

人の行きかいが盛んな場所で、『漉水邑』(ルシュイ)あたりで妖魔が出るという噂は、近隣の街を超え、外の領地の仙門にまで流れていた。

だが、どこの仙師たちが闇狩りに行っても、妖魔はいなかった。
そればかりか、瘴気すら無いという話だった。


「・・・たしかに。何の気配もない」

念のため、持ってきていた風邪盤を手に、魏無羨がいぶかしげに呟いた。

魔の気配に反応する風邪盤にも何の反応も出ていなかった。


「こうなると、悪戯で広まった噂だという線が当たりでは無いですか?」

藍景儀が言った。

「または、さきほど魏先輩がおっしゃっていた、何らかの意図で操作された情報という説」

続けて言った藍思追の言葉に、藍景儀が、うんうんと頷いていた。

「何やら、陰謀の匂いがするな」

「そうだね」

若い二人の弟子達は、真剣に考えこんでいるようだったが、その様子が、魏無羨には妙におかしかった。

「謎のすべてが、何らかの策謀と関わって起きているわけじゃない。お前たち、どこぞの説話師から聞きかじった推理小説の影響でも受けているんじゃないか?」

「受けていませんよ」

藍景儀が反論した。

「この前、夷陵老祖の新伝説を、街の説話師から聞きましたけど、あやしいものでした。
事実は小説より奇なりとはよく言ったものです。そんなうさんくさいものに影響など受けません」

伝説のモデルとなった本人を目の前にして、
自信たっぷりに胸をそらせ、あけすけに語る藍景儀に魏無羨は苦笑を浮かべた。

…思追の言う通り、いいやつなんだがな。

やれやれ。…と、小さく吐息をついた魏無羨は、ふと、何かの気配を感じて顔を上げた。

深い谷間を降り、川辺で調査をしていた3人の周囲には、それまで誰もいなかった。
しかし、魏無羨は、こちらを伺うように見ている何者かの視線に気づいた。

…俺たち以外に、誰かいる。

魏無羨は、注意深く気配を探ると、何気なさを装い後ろを振り返った。

魏無羨が顔を向けた先。

なだらかな山の斜面の上方。
花木の下に一人の幼子が佇み、こちらを見ていた。

生成りの衣に、薄茶色の裘(きゅう:毛皮の外衣)を羽織った、まだ年端もいかなそうな小さな体。

遠目から。それも木立の濃い影に隠れた幼子の容貌までは、視力の良い魏無羨にもはっきりと見えなかった。

幼子は、魏無羨と目が合ったことに気づいても視線を変えなかった。

だが、藍思追と藍景儀が、魏無羨の見ている方向に顔を向けると、幼子は、とたんに木の後ろに隠れ、たちまち姿を消した。

「魏先輩、どうかされましたか?」

幼子がいた方を、ジッと見つめたままの魏無羨に、藍思追と藍景儀が不思議そうに声をかけた。

「あの桜の木の下に小さな子どもがいた」

指をさして言った魏無羨に、藍思追と藍景儀は、すでに誰もいない木の下を見つめた。
藍景儀は、ゴクリと息をのむと、警戒したように仙剣に手をかけていた。

「幽鬼ですか?」

「いや。生きている人間の子だった。妖気も感じなかったから、噂の妖魔でも無さそうだ」

「この近くの里の子かもしれません」

藍思追が言った。

「先ほど、仙剣の上から見えましたが、この上の先にある橋を渡り、しばらく行けば集落があります」

「……そうか」

魏無羨は、桜の木から目を離すと、藍思追と藍景儀に向き合って言った。

「その近くの里に入り、妖魔の目撃情報がないか、住民たちに尋ねるぞ。これまでに他の仙師達が訪ねてきただろうが、聞き方を変えれば新しいことが分かるかもしれない」

「聞き方を変えるとは?」

「『妖魔』以外に、見たものや、気づいたものはないか」

「・・・・・・?」

「いくぞ」

顔を見合わせた二人を促し、魏無羨は、先に跳躍した。

思考より先に体が動いている。

…さきほど子どもがいた場所の先に何かある。

魏無羨は、こういう時の己の直感が当たることを無意識に知っていた。





(続く)



3話は、3月3日に更新予定です。
(更新時間は不定期になるかもしれません)

ブログへご訪問、ありがとうございました。

この二次小説が気にいった方。
次回も楽しみにして下さる方は、応援がわりに「白い拍手ボタン」を押してお知らせください。
関連記事

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

web拍手 by FC2
// ホーム //