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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「常春の庭」の第1話です。

二次小説を読む注意点、「陳情令」の他の二次小説も ←(以下、必読の注意書きです)
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


コメント記入に関しての説明は、こちらから。

「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

ドラマ「陳情令」、原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


この小説は、時間軸では、みつばの二次小説シリーズ「道侶編」の最新話になります。


「続きを読む」からお入りください
(スマホで見ている方は、すでに小説が開いています)



常春の庭(1話)





かすかな花の香り。
そして、美しい琴の音の調べが、微睡みの中にいた魏無羨の覚醒を促した。

花香は、控えめに開けられていた寝所近くの窓の外から漂ってきている。

寝台の上の魏無羨は、薄っすらと開けた目を、窓から見える竹林と庭木に向けた。

藍忘機の私邸、「静室」の庭園に植えられている花木たちも、季節の移り変りを告げ始めている。

魏無羨を取り巻く早朝の空気は冷え、くるまっている布団を剥げば、肌寒さを感じることだろう。

だが、日が昇れば気温が上がり、麗らかな陽気が魏無羨を包む予感があった。


「…春だなぁ」

ボソッと呟いた魏無羨の声で、それまで部屋に流れていた琴の音が止まった。

そして、静かな足音と共に、清廉で好ましい白檀の香りが魏無羨に近づいてきた。

目を閉じ、寝所の中で寝たふりを続けた魏無羨の後ろに藍忘機が立った。

「魏嬰。起きたか」

「まだ寝てる」

むにゃむにゃ、とわざとらしい寝言を言ったあと、魏無羨は顔を布団の中に隠すように伏せた。

すでに魏無羨が完全に起きていることを見通していた藍忘機は、寝台に腰を落とすと、目を閉じたままの魏無羨を見下ろした。

「朝餉を食するか?」

「朝餉は夢の中で食うよ。今は別の物を口にしたい」

「なんだ?」

「藍湛の唇」

自分で言っておいて、魏無羨がクスクスと笑った。

「藍湛が、口づけしてくれなきゃ起きない」

悪戯な口調で朝から挑発する道侶の誘いに、『歴代1、聖なる仙督』と、世間で評されている藍忘機がのった。

魏無羨の顔を覆っていた布団が外された。

『甘い白檀の匂いが強くなった』と魏無羨が感じた刹那、唇にやわらかな感触がおりてきた。


塞がれた唇とは逆に、魏無羨の瞼がゆっくりと開いた。

魏無羨のぼやけた視界の中で、藍忘機のまつ毛が至近距離で確認できた。

…藍湛。

数刻前の夜に、魏無羨は藍忘機と、この寝所の中で強く抱き合ったばかりだった。

それにも関わらず、藍忘機との接吻と、朝の生理現象とあいまった魏無羨の体が過敏に反応した。

花の香りよりも甘く。
春の予感よりも華やぐ気持ちが魏無羨の中で高まっていく。

優しい春風のような口づけに物足りなさを覚えた魏無羨は、藍忘機の顔をもっと近くに引き寄せようと、体を浮かせた。

そして、布団から両手を出し、藍忘機の頭をかき抱こうと身を乗り出したとたん、藍忘機がスッと身をひいた。

ドタッ

藍忘機が立ち退いた空間で、勢い余った魏無羨の体が反転し、寝台の下に落ちた。

「…てぇ・・・」

魏無羨は、床の上に転がると、不機嫌な顔をあげた。

気配で、すでに藍忘機の行動の予測がついていた魏無羨は、驚きこそしていなかったが、颯爽と遠ざかっていく藍忘機の背に恨めしげに目をやった。

「なんだよ。もうちょっと余韻を持ってもいいだろ」

不満げにブチブチと愚痴をこぼす魏無羨に、藍忘機は朝の支度を始めながら「私は、もう行かねばならない」と冷静に返した。

「兄が外出する。その前に重役会議がある」

『惜しいが、時間が無い。だから、君とこれ以上、朝の甘い挨拶は続けられない』と、藍忘機が心の中で言い訳していると、勝手に解釈した魏無羨はすぐに機嫌を戻した。

「含光君は、本日も忙しそうだな」

魏無羨はゴロリと床の上で体を半転させると、横たわったまま、頭を縦肘で支え藍忘機を下方から眺めた。

「昨夜も、帰りが遅かったけど、何かあった?」

「君が案じるようなことは何もない」

通常業務だ、とでも言うように藍忘機が淡々と答えた。

「兄が留守の間の引きつぎをしていた」

「ああ~…」

欠伸交じりで相槌をうった魏無羨に、藍忘機は「君は?」と問いかけた。

「昨日、何かあったか?」

「…うん?俺?いや。とくに何も無かったけど。なぜ、そんなことを聞く?」

「昨晩は、様子が違った」

藍忘機の指摘に、魏無羨が即座に「あははは」と空笑いした。
そして、身を起こすと、意味ありげな視線を藍忘機に向けた。

「それって。閨での俺の様子が、いつもより“激しかった”ことを言ってる?」

「……」



―――昨夜。

『おっかえりーっ。藍湛!』

就寝時刻間際に静室に帰ってきた藍忘機を迎えたのは、かなり酔った状態の魏無羨だった。

静室で好きな酒を毎晩のように飲んでいる魏無羨は、大甕を飲んだとしても、せいぜいが、ほろ酔い程度の変化だった。

それほど酒豪の魏無羨が、めずらしく顔を赤らめるほど酔っている。

魏無羨がこのようになるまで酒を飲む時は、何かわけがある。

そう感じた藍忘機は、静室に入るなり、抱きついてきた魏無羨の体をやさしく受け止めると、そのまま寝所に導いた。

「帰ってくるなり、情侶を臥所に引きずり込むなんて、含光君も隅におけねぇな」

寝台に上がった魏無羨は、ニヤニヤして言った。
そして、藍忘機に向かって、酒の臭気が立ち昇る赤ら顔をさらに近づけた。

「含光君。俺が恋しかった?」

「……」

藍忘機は、無言で返すと魏無羨の外衣を脱がせ始めた。

そんな藍忘機に己の就寝身支度を任せたまま、魏無羨は、矢次早に尋ねていた。

「離れていた間も俺に会いたかった?ずっと、イイコトしたいって思ってた?」

藍忘機が魏無羨の衣服を、寝間着の内衣に着替えさせ終わるまで、魏無羨の問いかけは続いた。

「なぁ。こたえてくれよ、藍湛。俺は酔っぱらっていて、何を聞いても明日には忘れるからさぁ」

どこまでが本当で、どこまでが、カマをかけている演技なのか。
藍忘機にも計りかねる魏無羨の言動だった。

だが、藍忘機がはっきりと分かっていることは、魏無羨が、いつも以上にしつこく絡んでいるということだった。

「何かあったのか?」

魏無羨の問いには答えず、静かに尋ね返した藍忘機に、魏無羨がわずかに視線をそらせた。
そして、唇を尖らせると、頬を膨らませて見せた。

「何かないと、積極的にせまっちゃ変なのかよ」

鼻の頭をコシコシと、ひとさし指の腹で摩りながら、魏無羨は拗ねた素振りで言った。

「藍湛の帰りがいつもより遅かったから。でも、心配したわけじゃないからな。早く会って、こうしたかっただけだ。・・・駄目か?」

「……」

無言で見つめ返している藍忘機に、焦れた魏無羨が動いた。

ドンッと、藍忘機の肩を強い力で突いた魏無羨は、そのまま藍忘機の体を寝台の上に押し倒した。

そして、まだ、外衣も脱いでいない藍忘機の上に身を伏せると、いきなり藍忘機の耳を甘噛みした。

密着した魏無羨の体中から漂う甘ったるく濃厚な酒の香りが、藍忘機の冷静な思考を鈍らせた。

先ほどまで、夜の外気にさらされ冷えていた藍忘機の体が、酒酔いで熱くなった魏無羨の体温によって外衣の上から熱せられていく。

「魏嬰」

それでも、理性の籠った声で名を呼ぶ藍忘機に、魏無羨は小さく舌打ちすると、藍忘機を愛撫する手をさらに進めた。

下方に伸びた魏無羨の手が、藍忘機の下腹部を衣の上から遠慮なく撫でまわし始めた。

相手が魏無羨だからこそ、否が応でも反応していく藍忘機の体。

いつもとはどこか違う雰囲気でせまってきた魏無羨に幾分かの引っかかりはあれど、誘いに抗う気は、もとより無かった。

藍忘機は、そっと吐息をついた。

それから、全身で誘惑してくる魏無羨に体で応え、情欲に身を委ねる前に、心を伝えることにした。


「好(よい)」


藍忘機の耳元で、フッと笑った魏無羨の声には、どこかホッとした安堵のような響きがあった。

動きが止まりかけた魏無羨の体を、すかさず藍忘機が両腕で包み込んだ。

そして、魏無羨を抱いたまま体を反転させた藍忘機は、今度は逆の体位から魏無羨を見下ろした。

藍忘機は、潤んでいた魏無羨の瞳が閉じるのを見計うと、魏無羨に深い口づけを落とした。

それから、魏無羨の体をかき抱いたまま、着せたばかりの魏無羨の内衣を今度は脱がす行為に没頭していった。


―――その後。

二人の営みは、魏無羨が普段より余計に乱れ気味だったという点以外、いつもと変わらない行程で完遂された。

そんな就寝前の出来事の一部始終を、結局、魏無羨は、翌朝になってもしっかり覚えていた。



「…ゆうべは、普段より多めに酒を飲んでいたけど」

魏無羨が藍忘機から視線を外し、気まずげに言った。

「俺、酔ってたから藍湛を襲ったんじゃないからな。
そりゃあ、いつもより昂ってたけど。
そういう気分の時だってある。藍湛も分かるだろ?男なんだから」

「“道侶”限定で」

さらりと口にした藍忘機に魏無羨が顔をあげ、コクコクと同意するように頷いた。

「もちろん。俺には藍湛限定で」

いつのまにか支度の手を止め、ジッと見つめていたらしい藍忘機に気づいた魏無羨は気恥ずかしげな上目遣いになった。

「…昨夜は、よくなかった?」

「いや」

端的ながらも。

言葉の意図を吟味すれば、魏無羨の疑念を否定し、行為を容認する、と答えている藍忘機に魏無羨が、ようやく晴れた笑顔を見せた。

「うん。良かったよな。いろいろな意味で」

すっかり調子を戻した魏無羨が意味ありげに笑った。

いつもと変わらない様子の魏無羨を見つめ返した後、藍忘機は支度を終え、立ち上がった。

「魏嬰、座卓の上に朝餉がある」

「うん」

「今日は、昨日より早く帰る」

「うん」

「今夜は……」

藍忘機が何か言う前に、魏無羨が「今夜は一緒に風呂に入ろう」と答えた。

「飲み過ぎないからさ」

3本の指を掲げて誓う魏無羨に藍忘機が小さく頷いた。
そして、魏無羨の視線に見送られて、静室を後にした。


藍忘機の気配が、静室から完全に無くなると、魏無羨は、ゴロリと床の上に大の字で寝そべった。

そして、「…やっぱり、気づいていたか」と小さく呟いた。

魏無羨の中で、ここ最近、わずかな精神の揺らぎが起きていた。
それは、些細な動揺であり、漠然とした焦りのようなものだった。

―――修行の成果が思った以上に現れない。

修行とは、魏無羨が、体内の金丹を結実させるために始めた鍛練だった。

その鍛練の効果がまったく出ていなかったわけではない。

毎日鍛えていた魏無羨の肉体は強くなり、体力と筋力がつき始めていた。
剣技の方も鍛練するたび勘を取り戻し、かつての動きに近づいている。

しかし、霊力が溜まっていく感覚は、今だ皆無だった。

鍛練中、魏無羨は、金丹を意識し、体内をめぐる気を練り、霊力を生み出そうとした。

だが、まるで手で掬った空気が、何の感覚も無いまま、指の隙間から零れ落ちるように。

それは、魏無羨の中に残ることは無かった。

魔道の術を会得した時のような切羽詰まった状態では無くとも、真剣に取り組んでいる。
そして、金丹を得ることは、たやすいことでは無いと頭で分かっていた魏無羨だった。

だが、時間がたつにつれ、内側の空虚と向き合い続けた魏無羨の中で、僅かな揺らぎが生まれていた。

邪気を取り入れ、利用する術とは違う。
まるで無の中から、光を生み出すような修行は、己と限界との闘いだった。

『あせるな』

揺らぎそうになるたび、魏無羨の中で、藍忘機の声が聞こえた。

『核があるなら、かならず結実する』

藍忘機の声は、いつも魏無羨を励ましてくれた。

・・・藍湛の仙督就任式までに、霊剣を扱える体になる。

強い決意のもと、修行に没頭していた魏無羨だったが、その日も一縷の霊力もつかめないまま、鍛練を終えていた。

『大丈夫だ。俺はやれる』と己を鼓舞しながらも、静室に戻った魏無羨は、つい、やるせない気分を晴らすかのように、いつもより多くの酒を煽った。

酒で理性を失くし、自身を誤魔化せても、藍忘機には通用しなかった。

魏無羨のどんなに些細な動揺も、藍忘機は気づいている。

魏無羨の中に生じている小さな焦りも不安も。
全部知った上で口にせず、ただ静かに見守り、助けようとしている。

魏無羨をまっすぐに見つめる藍忘機の眼に、『君を信じている』という絶対的な心がいつも示されていた。

それは、魏無羨の想像の中の話では無い。


魏無羨は、内衣の袖をめくると、左手首の内側にあった赤い印に目を落とした。
昨夜、寝所での行為の最中、藍忘機につけられた口吸いの痕だった。

ーーー君は、私の唯一無二の道侶だ。

口に出さずとも、藍忘機が魏無羨の体に刻んだ誓いの印。


「なさけねぇな」

自嘲し、ポツリと囁いた魏無羨の声は、やはり自分に向けられていた。

…肉体的な交合は受ける立ち位置であろうとも、藍湛とは常に対等でいたい。
それなのに、情侶の関係を利用し、人としての甘えを藍湛に仕向けていた。

己のふがいなさを恥じるように、魏無羨は、グッと手を握りしめた。

そして、藍忘機がつけた痕に、そっと唇を落とした後、勢いよく立ち上がった。


…憂さ晴らしだ。今日は、外に出かけよう。


朝食を食べ終えた魏無羨は、身支度し、すぐに静室を出た。

それから、雲深不知処の結界門までの間、行く先々で、挨拶をしたそうな藍氏の門下生たちとすれ違った魏無羨だったが、足を止めず先を急いだ。

しかし、そんな魏無羨も、聴き慣れた若者たちの呼び声には、つい、足を止めていた。

「魏先輩」

魏無羨が振り向くと、藍思追と藍景儀がこちらに向かって足早に近づいていた。

「おはようございます」

異口同音で発せられた、清く、呑気な挨拶。
春のうららかな陽気を感じさせる声に、魏無羨は思わず微笑を浮かべた。




(続く)



二次小説「道侶編」シリーズ。3部作の1つ「常春の庭」更新スタートしました。
「道侶編」は、忘羨の二人が、伴侶の契りも結んだ道侶になっている話です。

ブログでは、「常春の庭」の次のシリーズ話「月蝕光」の序章(1話)を先にアップしてしまっているため、読んだ方は混乱されるかもですが、時間軸では、こちらの方が「月蝕光」より前の話になります。

2話は、3月1日に更新予定です。
(更新時間は不定期になるかもしれません)

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