fc2ブログ
管理人★みつば★の好きな小説、ドラマ、映画等の感想やイラスト、小説などの二次創作物がおかれています。
プロフィール

★みつば★

Author:★みつば★
「みつばのたまて箱」にようこそ。
管理人★みつば★です。
記事の中にお好きな物があれば
是非一緒に楽しみましょう♪

最新記事

カテゴリ
月別アーカイブ

訪問者様♪

更新通知登録ボタン

記事更新を通知します

検索フォーム

QRコード

QR

中国ドラマ「陳情令」、映画「乱魄」の、みつばの二次小説「天に楼閣を描く鳥」(15話)です。

「陳情令」(魔道祖師)のキャラクター、「聶懐桑」中心の二次小説。
みつばの二次小説シリーズ、番外編。「回家編」のスピンオフ。


二次小説を読む注意点、「陳情令」の他の二次小説も ←(以下、必読の注意書きです)
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


コメント記入に関しての説明は、こちらから。

「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから二次小説をお読みください。

※(注意)ドラマ「陳情令」、原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」
「陳情令」のスピンオフ映画作品「乱魄」のネタバレがあります。
これから見る予定の方はご注意ください。


二次小説のイメージイラスト【裏箱】天に楼閣を描く鳥(イラスト)

「天に楼閣を描く鳥」登場人物紹介(イラストつき)
※未公開(今後更新予定)の二次小説中の登場人物も含まれています。


「続きを読む」からお入りください





天に楼閣を描く鳥(15話)





唇が重なりそうになるほど。

顔を近づけてきた朱鷺の顔が、聶懐桑の黒目いっぱいに映った。


「あなたのこの手には引っかかりません」

聶懐桑が冷静に言った。

「今度は、人相占いが出来るとでも言うのでしょう?」

目をそらさず、まっすぐに朱鷺を睨みつけている聶懐桑に、朱鷺がきょとんと目を丸くした。

そして、次の瞬間、噴き出すと腹を抱え、面白そうに笑いだした。

「ハハハ。絵師さん。あんた、頭で算盤弾いて物を言ってるのか、まじで天然なのか。分からねえけど。いいねえ、そういうところ。危なっかしくて、ほおっておけねえ」


・・・ほおっておいてくれ。

聶懐桑は、ゲラゲラと下品に笑いながら、酒を口にしている朱鷺にげんなりとしていた。

楼主の顔をたてて、貴賓室にも籠って、朱鷺にも、からんできた男からかばわれた礼をした。

…そろそろ妓楼を出ても良いだろう。

そう思った聶懐桑だったが、笑みをおさめた朱鷺が、「世間知らずの絵師さんに、一つ、妓楼の中のことで、真面目な忠告をしておこう」と言った言葉に引き止められた。

「絵師さん。今、この界隈で出回っている、噂のやばい物を知っているか?」

「知らないです」

「魔草の粉末が入った媚薬だよ」

「・・・・・・」

朱鷺の言動の何もかもを信じられなくなっていた聶懐桑は、『また戯言を言ってる』と思い、涼しい顔で「そうですか」と、淡々と答えた。

「そのように危険で邪道な物は、妓楼でも使用を禁じられているはずです」

「表向きはな。でも、ここは治外法権みてえなところだ。裏では見過ごされている。
それに、副作用がほとんど無いと言われている媚薬だ。魔草のように中毒になることはねえ。
まあ、やみつきにはなるけどな」

「それを中毒というのです」

聶懐桑のつっこみに、朱鷺は可笑しそうに「そうだな」と笑った。

朱鷺は、外衣の袂から小袋を出した。
そして、そこから丸く小さな黒い塊を1つ摘まみ上げると、聶懐桑の前でちらつかせた。

「なあ。絵師さん。舐めてみねえか?」

「まさか、これが?」

―――魔草の入った媚薬?

朱鷺が差し出した小さな塊に、聶懐桑が眉をしかめた。

「お断りします」

「そう言うなって。絵師さんも、本当は興味あるんだろ?」

「……」

「魔草の欠片を口にすれば、いろいろなことがぶっとぶぜ。
それまでの、世の中の理がひっくり返るくれえに。
感覚の大きさも半端ねえ。アレをやっている間中、天界にいる気分になる」

「……」

朱鷺の声は、聶懐桑には、天界どころか、魔界から響いているように感じられた。

過去に、知らずに魔草を口にした時の記憶は残っていた。
だからこそ、天界から魔界につき落とされる感覚も覚えている。

「ほら、匂いだけでも嗅いでみな」

聶懐桑は、沸き上がる好奇心に負けた。

…匂いだけなら。

つい、顔を寄せた聶懐桑の口の中に、朱鷺が丸い塊を指で押し入れた。

「…!!なにを・・・!」

聶懐桑は、すぐさま塊を口から吐き出した。

口の中に甘い味が広がっている。

聶懐桑は、口を手で押さえ、薬の成分が喉をつたう前に、水を含んで唾を出そうと周囲を見回した。

「慌てんなよ。絵師さん。これは、ただの飴玉だ」

「私を騙したのですね」

「ああ。からかっただけだよ」


朱鷺は、聶懐桑が座卓の上に吐き出した物に手を伸ばした。

そして、拾った飴をそのまま己の口の中に入れると、美味しそうに舐め始めた。

「これは偽物だ。だが、闇取引されている魔草入りの媚薬は存在している」

唖然となった聶懐桑の前で、朱鷺はチロリと、赤く濡れた舌で唇を舐め上げると言った。

「魔草入りの媚薬のことは、妓女たちの間でも極秘扱いの話だが、本当らしい。俺は、目にしたことも、口にしたことは無いが、無味無臭だそうだ。他の妓楼でも、高値で取引されているって噂も耳にした。おおかた、目当ての妓女に袖にされた金持ちの変態が、女を物にしようと、こっそりと買い、使用しているのだろうよ」

「・・・・・・」

聶懐桑は、嫌う男に、密かに薬を盛られた妓女が閨の中に連れ込まれるところを想像すると気分が悪くなった。

そして、聶懐桑は、媚薬の話と同じくらいに、また朱鷺に騙されたということに気分を害していた。


…こんな調子者に、あっさり手玉に取られているようでは、とても、あの、狡猾な男に太刀打ちなど出来ない。


脳裏に金光瑤を浮かべ、『自分がなぜ、今、ここにいるのか』という本来の目的を思い出した聶懐桑に、追い打ちをかけるように朱鷺が言った。

「あんたのような金持ちの世間知らずは、闇商人の一番のカモだ。気をつけろよ、絵師さん。」

…何に気をつけろというのか。

『買わされないようにしろ』というのか、それとも『盛られないようにしろ』というのか。

どのみち、無味無臭の謎のシロモノを、どうやって見分けろというのか。

それよりも、今は、明確に不必要だと感じているものから離れるのが一番だ。

―――この男は、やっぱり苦手だ。

聶懐桑は、杯の中の酒を飲みほした後、部屋を出ようと決意した。

「そんなに急ぐなよ。絵師さんに、この部屋でご馳走になった礼をさせてくれ」

ぐいっと酒を煽った聶懐桑の心を見透かしてか。
朱鷺は、空になった聶懐桑の杯にすかさず酒を注ぎこんだ。

そして、聶懐桑の睨みも涼しい顔で受け流すと、立ち上がり、部屋の壁に並べられている楽器の方に近寄った。

それらは、特別貴賓室である部屋の中で、妓女が演奏し、客をもてなす為の楽器のようだった。

しかし、中には、装飾が豪華で、過度に宝石がつけられたもの。
ほとんど骨とう品同然で、部屋の調度品として扱われているような楽器も置かれていた。

朱鷺は、その中の1つを手に取ると、聶懐桑のところに戻って来た。

そして、聶懐桑の前に腰をおろすと、やおら、手に持っていた楽器を奏でだした。

驚いた聶懐桑の耳に、聞きなれない音楽、しかし、美しい音色が届いた。

粗暴な言動を見せる男から、想像もつかないほど澄んだ音が生み出されていく。

音楽を聴いていると、なぜか聶懐桑の脳裏に、広い草原の中で楽しく踊る人々の情景が浮かんだ。

聴いたことの無い音だったが、どこか懐かしく郷愁の念すら感じる。

短い曲ではあったが、朱鷺の演奏は聶懐桑の心を揺さぶった。


演奏が終わった後、感嘆し、手を打った聶懐桑に、朱鷺は、柄にもなく照れたような仕草で、指で頬をかいた。

そして、「『熱瓦普(ラワフ)』ですね」と言った聶懐桑に、微笑を浮かべた。

「この楽器を知っているのか」

「書物の絵で見ただけです。実物を見て音を聴くのは初めてでした」

聶懐桑は、朱鷺が慣れた手つきで触れている楽器をまじまじと見つめた。

聶懐桑にも、笛と琴は、たしなみがあった。

さらに、風流を好んでいた聶懐桑は、他の地方の楽器の多くも好んで覚えていた。

旅芸人たちが道芸で奏でる音楽も、お忍びで街に出ていた時によく聞いていた聶懐桑だったが、朱鷺の奏でた楽器は、このあたりでは流通していないものだった。

「妓楼でひき方を覚えたのですか?」

―――なじみの妓女に奏で方を習ったのか?

「---いや」

聶懐桑に感心しきった眼差しを向けられても、朱鷺は得意げな素振りは見せなかった。

「いつ覚えたか分からねえ。だけど、なぜか弾き方を知っている」

また、聶懐桑をからかっているのか。
それとも、誤魔化しているのか。

うすら笑いを浮かべて話している朱鷺だったが、聶懐桑には、その顔が、妙に寂しげに見えた。

「……」

―――これ以上、この男の深層に触れる質問はしないようにしよう。

聶懐桑は、朱鷺の顔から目を逸らすと、黙って杯の中の酒を煽った。

朱鷺に、楽器のたしなみがあったことを新しく知り、その音が好ましいと感じたことは事実だった。

しかし、聶懐桑は、朱鷺とこれ以上深く関わる気は無かった。

妙に勘が鋭く、なぜか、つきまとってくる素性の分からない仙師の男。

春画といい、音楽といい。
たとえ、共通の趣味があろうとも、朱鷺は聶懐桑にとって距離を置きたい人間だった。


聶懐桑は、うつむいたまま、まだ楽器の弦を指ではじいている朱鷺を、冷めた目で一瞥した。

そして、今度こそ、部屋を去ると決意し、聶懐桑が立ち上がりかけた時、部屋の扉が外から叩かれた。


「はい」

思わず返事をしてしまった聶懐桑に、「失礼いたします」という女の声が届いた。

すぐに扉が開き、一人の妓女が聶懐桑と朱鷺のいる特別貴賓室に入ってきた。

部屋の中には、香が炊かれていたが、それよりも、その妓女の体から漂う、かぐわしい風が空間を支配した。

聶懐桑の動きを止めたのは香りだけでは無かった。

視界に入ってきたのは、見目の良い容姿だった。

赤い衣が引き立てる、透き通るように美しい乳白色の肌。
頭上を煌びやかに飾る簪よりも、目をひく艶やかな長髪。
大きな瞳は、蓬莱山でしかとれない、と伝承される黒玉のよう。
紅を引いた、ふっくらとした赤い唇は、愛らしくもあり蠱惑的にも見える。

腰は、小柄な聶懐桑が抱いても腕が余るほど細いように見えたが、胸の膨らみは、男の視線を釘付けにするほど、大きくふくよかな丸みを持っていた。

まるで、聶懐桑が愛読していた春画集の中から抜き出てきたかのような美女。

一見すると、幼さが残った童顔の美貌。

実際、年は若そうだった。

ただ、全身をまとっている雰囲気は、円熟した妓女にも劣らぬほど、堂々としている。


ぽかんと、唇を開き、間抜けな顔で自分の体に見入っている聶懐桑にも、妓女は慣れた様子だった。

「いらっしゃいませ、黒蚕さま」

妓女は、聶懐桑の前に立つと、優美な仕草で揖礼した。
そして、顔を上げると、にっこりと艶やかな笑みを浮かべて言った。


「美梨(メイリー)と申します」





(続く)


昨年、完結出来なかった、番外編シリーズ「天に楼閣を描く鳥」の続きです。
アニメ「魔道祖師」完結編が日本上陸する前には完結している予定でした。←いつも同じようなことを書いてきて、結局間に合ってません。

みつばの二次小説は、ドラマ「陳情令」、映画「「乱魄」を元にしていますが、設定は「魔道祖師」のものとまざっています。

アニメ「魔道祖師」完結編を見ていたとき、映画オリジナルキャラとして登場した「宗輝」(みつば妄想で献舎された)もどこかにいるかも?という妄想もっていました♪。

「天に楼閣を描く鳥」15話にして、ようやく美梨(メイリー)登場。

みつばが描いた「美梨(メイリー)のイメージイラスト」(2022年6月)

「天に楼閣を描く鳥」の、16話以降の更新日時は未定です。


(コメントレス的な雑記)

記事への拍手、コメントを送ってくださった方、ありがとうございます。
アニメは、日本版と本国版で、オープニングとエンディングの歌と映像がそれぞれありますよね。
みつばは、日本版の方はしっかり視聴していないので、あまり覚えていませんでした。
ただ、日本版もいい歌ばかりだったような気がします。
教えてくださり、ありがとうございます。

みつばのオリジナル創作の応援もありがとうございます。

オリジナル作品は、このブログの記事の作風、ジャンルと全く違うので、このブログで、みつばの二次小説を好ましく思ってくださった方なら、なおさら、見ないところだと思います。

恋愛もので無く、BLでも無く、そして、当然、大人話シーンも無い(笑)←大好きなんですけどね。

なので、ひそかに、「がんばれ~」と応援の念をネットにのせて送ってくだされば嬉しいです♪


二次小説を気にいってくださった方は、「白い拍手ぼたん」をポチっと押してください。

ブログのご訪問、ありがとうございました。




関連記事

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

web拍手 by FC2
// ホーム //