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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「月蝕光」(序章)です。

二次小説を読む注意点、「陳情令」の他の二次小説も ←(以下、必読の注意書きです)
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


コメント記入に関しての説明は、こちらから。

「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

ドラマ「陳情令」、原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。

※この二次小説は、「逢月編」シリーズ、未公開の長編3部作の2つ目の物語の第一話を「お試し版」として序章だけアップしたものです

「続きを読む」からお入りください
(スマホで見ている方は、すでに小説が開いています)



月蝕光(序章)





魏無羨は呆然となって、崖の端に立った藍忘機を見つめた。


藍忘機の抹額が風で翻り、後頭部でたなびいている。

前面を魏無羨の方に向けていても、藍忘機の後方、半歩先は深い谷底へと続いていた。


「藍湛」

魏無羨は、息をのんだ後、絞り出すように名を呼んだ。

「こっちに戻ってこい」

「……」

藍忘機に、魏無羨の声は届いているはずだった。

しかし、藍忘機は魏無羨の方を向いたまま瞼を閉じ、そっと後退った。

「…!!」

魏無羨は、跳ぶように駆けると、
背から崖下に落ちていく藍忘機に手を伸ばした。

間一髪で藍忘機の手首を捕らえた魏無羨は、
崖から身を乗り出し、地に落ちようとしている藍忘機の体を支えた。


暗い影を落とした藍忘機の琥珀の双眸が魏無羨に向けられた。

「魏嬰」

藍忘機が低く言った。

「手を放せ」

魏無羨は、かぶりを振った。

「駄目だ。藍湛。こんなのは嫌だ」


藍忘機の体を引き上げようと腕に力を込めながら、
魏無羨は必至の形相で藍忘機に訴えた。

「これからも、ずっと一緒だ。何があっても共にいると。
俺たちは、そう約束したはずだ」

「……」

一瞬、魏無羨の心からの言葉が藍忘機に届いたように見えた。

しかし、突如吹いた突風に、崖端にいた魏無羨の体が揺らされると、藍忘機は、その振動にハッとなった。

そして。

藍忘機は強い力で、手首を握っていた魏無羨の手を振りほどいた。


「すまない」

藍忘機が囁いた。


「ありがとう」 


すべてを受け入れ、これ以上の助けは必要ないと拒絶するかのように。

藍忘機は、小さな微笑みを浮かべ、瞼を閉じた。


「藍湛っ!!」


魏無羨は、谷底に落ちていく藍忘機の姿を呆然となって見送った。



―――目を開けて。

魏無羨の意識が、そこが崖では無く、静室の寝所の中だということに気づくまで、しばらくの時間を要した。

寝所側の窓を覆った垂れ絹から早朝の光が洩れ出でている。


…今のは、夢か。


魏無羨は吐息をつき、上半身を起こすと傍らを見やった。

いつも隣で寝ている藍忘機の姿はない。

それは、藍忘機が、魏無羨より先に起床していることの多い静室では、別段珍しいことでは無かった。

しかし、藍忘機は今朝だけでなく、昨夜も魏無羨と共寝をしていない。

7日前から藍氏の重役たちと他の仙家の領地に行っている藍忘機は、帰宅予定だった昨夜も静室に帰ってこなかった。

ただ、日程変更は、遠出の出張や闇狩りではよくあることだった。

それに数日前の夜に、魏無羨は藍忘機から思念文を受け取っていた。


『春とはいえ、雲深不知処の夜は冷え込む。暖かくして休みなさい』


…藍湛は、俺の保護者なのか?

苦笑しながら、魏無羨は思念文を読んだ。

それでも、遠い地で自分を想ってくれる藍忘機の気持ちに胸を熱くした魏無羨は、藍忘機への思慕をさらに募らせた。


藍氏の弟子達の指導に、闇狩り。金丹のための修行と。

毎日、忙しく過ごしていた魏無羨だったが、寝る前になると藍忘機がそばにいない喪失感を全身全霊で痛感した。

魏無羨の肉体も精神も藍忘機を求め、日を追うことに、一人寝の寂しさをひしひしと味っていた。


「会いたいよ」

魏無羨がぽつりと呟くと、『私もだ』とでも答えるように、藍忘機が送ってきた思念文が光る青い蝶の形になって飛んだ。

そして、魏無羨の唇に優しく触れると消えていった。


そんな夜から、藍忘機の帰りを指折り数えて待っていた魏無羨は、帰宅が遅れている藍忘機の到着を、ますます待ち遠しく感じていた。


藍忘機が闇狩りに行っていたとしても、魏無羨が心配することは無い。

『含光君』が、闇狩りでヘマをすることなど、あり得ないからだった。

そう信じてはいても、心のどこかに藍忘機のことを案じていたのだろうか?


…嫌な夢を見ちまった。


魏無羨は、藍忘機のいない寝台を見下ろしながら、夢見の悪さで、まだ動悸を感じる胸を手で抑えた。

夢の光景には、既視感があった。

それは、魏無羨がかつて不夜天の崖から落ちていった時と酷似した状況だった。

ただ、崖から落ちようとしたのは藍忘機で、その手を掴もうとしたのが魏無羨。
あの現実の記憶とは、立場が逆になっている。


夢の中で。

なぜか、全てを諦めたような藍忘機の瞳が、魏無羨の心に強い印象を残し、目が覚めても映像が脳裏に焼き付いていた。

現実の藍忘機が、あのような眼をして、
あのような言動をすることなど無い。

どんなに困難なことがあろうとも。
どんな障害が立ちふさがっても。

凛と地に立ち、光と希望にむかって力強く生きていく。

それが魏無羨の知る『含光君』の姿だった。

決して、何があっても、藍忘機は夢のようなことはしない。

―――俺を置いて、あんな風に一人でいってしまうなど無いのに。

魏無羨は、妙な胸騒ぎを覚えたが、藍忘機がいないことで、無意識の不安が夢に出ただけだと思うことにした。


…きっと。藍湛は、今夜には帰ってくる。
そうでなくても。また思念文を送ってくれるだろう。


魏無羨は気を取り直すと、朝の支度をして静室を出た。
そして、雲深不知処の食堂で朝食を食べた後は、幽邃境で鍛練にいそしんだ。


その日の魏無羨の鍛練はとても順調だった。

すぐに修行に没頭した魏無羨は、いつしか夢見の悪さをすっかり忘れ去っていた。

不安どころか、魏無羨の心は前向きで、体はいつも以上に軽やかに動けていた。

そして、魏無羨が、体内に違和感を持ったのは、鍛練をはじめてから数刻過ぎた頃だった。

さらに、鍛練用にと、藍忘機が新たに用意してくれた霊剣をふるっていた魏無羨は、霊剣に力が宿る重さを感じた。

それは、魏無羨がかつて仙剣を所持していた時の感覚に似ていた。

魏無羨は、訓練用に立てていた丸太の前に立つと、剣を構え、集中力を高めた。

心身共に高揚していた魏無羨は、なぜか、強く『出来る』と信じられた。

気を溜め、魏無羨は、一息に霊剣をふるった。


ザンっという鋭い音が響き、青白い光が散った。

太い丸太の上部が魏無羨の剣で切り裂かれている。

魏無羨は、地に落ちた丸太の上部を見下ろし、肩で深い息をついた。

剣を持つ手がわずかに震えている。


…これは。・・・今のは…。



魏無羨は、剣を持った己の右手を見つめた後、左手を腹部にあてた。

どくん、どくんと、魏無羨の胸の鼓動が大きくなっている。
血がめぐり、高らかに息づく脈の気配と共に、霊力が体に満ちているのを感じた。

それは、長く失っていた、以前の体の感覚だと、魏無羨が思い出すまで、そう時間はかからなかった。


「俺は。…もしかして。…これは…本当に?」


まだ信じられないように呟く魏無羨の声に応える者は、近くにいなかった。

魏無羨は、再び剣をふるった。
だが、今度は、丸太は切り落とせず、ただ傷をつけただけだった。

しかし、魏無羨の気分が下がることは無かった。

体の中に、懐かしい力がある気配は続いている。



…まだ、力が定着していないだけだ。

このまま鍛練を続ければ、金丹も安定する。
そうしたら、俺は・・・。


―――また仙力が使えるようになる。


「はっ…」

魏無羨は、口元を緩めた。

そして、次の刹那、「アハハハハっ」と大声で笑いだすと両の拳を握りしめた。


「俺はやったぞ!とうとう、やってやった! 藍湛!!」

そばにいないと分かっていながらも、魏無羨は藍忘機の名を呼ばずにいられなかった。

「霊力が戻った!」



魏無羨は、いつのまにか日が傾いていた黄昏の空を、晴れ晴れとした表情で見上げた。

幽邃境を囲む山の境界線。
深い藍色の西空の下で淡い緋色の光が輝いている。


…藍湛が帰ってきたら、話そう。

決して、俺の勘違いじゃないと。
藍湛なら分かるはずだ。


魏無羨は、霊剣を鞘に納めると、幽邃境を出た。
そして、逸る気持ちのまま足を進め、静室への帰路を急いだ。

魏無羨が静室に入ると、母屋は暗く、藍忘機は帰宅していなかった。

…まだ遅れているのか。
でも、今夜は帰ってくるかもしれない。


魏無羨は、納屋から風呂桶を出すと、風呂の準備をはじめた。

いつもは重いと感じていた風呂桶も片手で持ち上げられそうな気分だった。(実際には藍忘機のように軽々と風呂を持ち上げられない魏無羨だったが)

それから、雲深不知処の食堂まで、すっ飛ぶように走ると、二人分の夕食をもらい、それを手持ち重箱に入れて静室に戻った。


魏無羨は、鼻唄を歌いながら、風呂湯を沸かした。

そして、藍忘機がいつ帰ってきてもすぐに休めるように、茶湯をわかし、香炉を焚き、寝所の寝具を整えた。


…俺が幽邃境でのことを話したら藍湛は何と反応するだろう?

いや。待て。まだ早いか?
藍湛に話すのは、金丹が出来たと確実に分かり、安定してからの方がいい。

まず、霊剣を以前のように扱えるようになってから、藍湛に決闘を仕掛けよう。

対等に剣を交える俺に藍湛は、どんな顔をするだろうか?

うーん…。いやいや。

やっぱり話したい。

藍湛は、俺を信じて、応援し、ずっと助けてくれていた。
そんな藍湛には、この事を一番に知ってほしい。

でも、話をする前に、今夜は思いっきりイイコトもしたい。
藍湛は、朝まで俺を離してくれないかも。俺も離さないけどな。……ふふっ。


こうして。

顔をにやつかせ、
魏無羨は、あれやこれやと想像しながら、好きな酒を飲むこともすっかり忘れていた。


しかし、こくこくと時が過ぎ、夜も深まり、
雲深不知処の就寝時間が近づいた頃になっても、藍忘機が戻る気配は無かった。


…今夜も帰ってこないのかな?

魏無羨は、卓上に置いた、蓋をしめたままの重箱を見つめた。

藍忘機が帰ってきたら共に食しようと待っていた魏無羨だったが、1日中鍛練していた体はさすがに強い空腹を覚えはじめていた。

魏無羨は、心が寂しさで満たされる前に、腹を満たそうと、重箱の蓋に手をのばした。


コツ…。

空腹感から、より研ぎ澄まされた魏無羨の聴覚が、静室の門の外で発せられた僅かな音をとらえた。

それは、静室へと続く階段を、人の足が踏みしめた音だった。

…藍湛!!

魏無羨は、弾けるように飛び上がった。

そして、外靴に履き替える時間も惜しみ、露台の欄干を飛び越えて庭を横切ると、勢いよく門の扉を開けた。

しかし、門の前にいたのは、藍忘機では無かった。


「沢蕪君?」

門の前に立ち、吊り灯篭の明りに照らされた藍曦臣の姿に魏無羨はキョトンとなった。

夜遅く、雲深不知処の就寝時間近くに藍曦臣が静室を訪れるのは珍しいことだった。


「藍湛なら、まだ静室に帰っていません」

「存じています」

藍曦臣が頷いた。

「魏公子。話があります。
これから、私と一緒に来てください」

いつも優しい微笑を絶やさない藍曦臣が、深刻な表情を浮かべていた。

これは、合意を必要とする同行ではない、ということを魏無羨はすぐに悟った。

「はい」

魏無羨は神妙に返事すると、すでに階段を下り始めた藍曦臣の後ろについて歩いた。


雲深不知処の道を歩いている間、藍曦臣は一言も発しなかった。

そして、てっきり、藍曦臣の私室に行くと思っていた魏無羨だったが、藍曦臣は、「寒室」に向かう道とは違う方向にむかって歩いていた。

灯の少ない暗い道を、無言で先導する藍曦臣の背に、魏無羨は徐々に落ち着かない気持ちになった。


「沢蕪君。どこに向かっているのですか?」

たまらずに尋ねた魏無羨に、藍曦臣は振り向かずに「冥室です」と答えた。


…冥室?

魏無羨の胸がざわついた。

…なぜ冥室に?
雲深不知処で何かあったのか?


目の前を無言で歩く藍曦臣は、今はそれ以上の質問を受け付けないという雰囲気を醸し出していた。

魏無羨は、空気を察すると、それ以降は黙って藍曦臣の後に続いた。


「冥室」につくと、扉から中の灯りがぼんやりと見えた。

部屋の中に誰かいるようだ、と思った魏無羨の勘はあたった。

藍曦臣が扉を開けると、「冥室」の中に藍啓仁の姿があった。


「叔父上。魏公子をおよびしました」

藍啓仁は、魏無羨と一緒に入ってきた藍曦臣の方を見ると、重々しく頷いて見せた。

藍啓仁も藍曦臣と同じような、重苦しい表情を浮かべている。


「先生もいらっしゃるとは。何かあったのですか?」

めいいっぱい真面目な声色で尋ねた魏無羨だったが、何も知らずに連れてこられた魏無羨の空気感は、二人と比較すると軽やかなものだった。

「曦臣、彼に話していないのか?」

「はい。直接会ったほうが良いと考えました」

「うむ…」

同意するように頷くと藍啓仁は魏無羨を見た。

「魏嬰。こちらに来なさい」

魏無羨は藍啓仁に招かれるまま、帷帳で覆われた台の前に立った。

薄青色の絹布の仕切りの中。
台の上に誰かが横たわっている。

藍啓仁と藍曦臣に無言で促された魏無羨は、帷帳を手で引いて台の上を見た。


そこに、目を閉じた藍忘機が、静かに横たわっていた。


身につけている衣服は、いつも通り染み一つない純白だった。

冠も抹額もつけたまま。
長く艶やかな髪は、台の上に綺麗に流れ落ちている。

白磁の肌。形の良い赤い唇。
目が閉じられていても整っていると分かる、まっすぐに鼻筋が通った美しい顔。

数日会っていなかった間に募らせた恋慕からか、
藍忘機の相貌は、魏無羨の目に、より麗しく映った。

両手を胸の上で組み、まっすぐに仰向けになった姿は、
藍忘機が寝る前にする体勢だった。

固く目を閉じ、微動だにしない藍忘機の身体。


魏無羨には、藍忘機が台の上で寝ているように見えた。

しかし、すぐに、そうでは無いことを知った魏無羨は、愕然となって立ち尽くした。


藍忘機は、ただ眠っているわけでは無かった。


「藍湛…?」


思わず唇から漏れ出た魏無羨の呼び声に、
藍忘機が答える声は返ってこなかった。





(「月蝕光」(序章)終わり)






「道侶編」シリーズ。現在、未公開の長編3部作の2つ目。
「月蝕光」の1話を序章としてアップしました。

「みつばの二次小説シリーズについて」の記事の中で「タイトル秘密♪」←シリーズ中、一番シリアスな話と書かれている物語がこれです。

タイトル秘密♪と書いておいて、長編3部作のうち2つのタイトルは公開しちゃいました。

1つ目が、イラストで紹介していた「常春の庭」(未公開)となり、「月蝕光」は、その後の物語です。


みつばは、「月」は陳情令の重要アイテムだと思っていて、陳情令二次小説シリーズの中でも、実は、はじめから月の満ち欠けの計算をし、時間軸とリンクさせていました。

今までそれに気づいた読者さんはいなかったと思われるので、今回、自分から明かしました。(そうなの?となった方は、良かったら「回家編」シリーズから読んでみてね)

ブログ更新が滞ったり、過去と未来が繋がる時に、月の計算と時の流れにズレが生じ始めたので、途中からリンクはずして創作しています。

先日、現実世界で皆既月食を見ましたが、「月蝕光」は、まさにああいうイメージでした。

「月蝕光」は、遅くても昨年の今ごろにはブログで更新終えているつもりでしたが、月の満ち欠け同様、計算ずれまくったところが、実にみつばらしい(笑)←毎度笑いごとじゃない。

5か月ぶりに「みつばのたまて箱」で更新した「忘羨」二次小説。
いかがだったでしょう?

久しぶりなのに、「序章」なんて中途半端な上にシリアスな話を出すな~って感じでしょうか。

「常春の庭」の直接の続編というわけでは無いのですが、「月蝕光」の前に、やはり「常春の庭」を先に読んでほしいな。と思ってしまいます。

一度消え、再び姿を現す皆既月食の月のように。

「みつばのたまて箱」で、陳情令の二次小説シリーズが再開できて、完結出来るといいな。と、昨夜の満月に祈ったみつばでした。


「月蝕光」の続きが読みたいと思った方。
「常春の庭」が気になるという方も。

みつばの二次小説が気にいってくださった方は、「白い拍手ぼたん」を押してお知らせください。

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

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