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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「水路の琴、山路が笛」(中編)です。

二次小説を読む注意点、「陳情令」の他の二次小説も ←(以下、必読の注意書きです)
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「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

ドラマ「陳情令」、原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。

※この小説は、「逢月編」シリーズの最終回です。

「続きを読む」からお入りください
(スマホで見ている方は、すでに小説が開いています)



水路の琴、山路が笛(中編)





『寒室』の座卓についた藍曦臣は、丁寧に淹れた茶を、対面に座った藍忘機の前に差し出した。

藍忘機は、藍曦臣が淹れた茶に少し口をつけた後、すぐに茶杯を戻した。

藍忘機には、藍啓仁の部屋に入った魏無羨が、やはり気がかりだった。

「兄上。先ほどの話の続きを」

「わかりました」

藍曦臣も、持っていた茶杯を置くと話し始めた。

「昨日、この部屋で魏公子と話したことです。
彼が、雲深不知処の講義を受けることについて、叔父上とも話をしました」

藍忘機の目がわずかに見開いたが、藍曦臣は話を続けた。

「しかし、藍氏の子弟に混ざって、集団の中では彼も学びづらいでしょう。
ですので、月に何度か、私と叔父上が、対面で講師をすることにします」

「待ってください」

藍忘機がそこで口を挟んだ。

「魏嬰を雲深不知処に連れてきた時。
私は、兄上、叔父上と約束しました」

―――最低限の規則を守る以外、魏嬰に、行動の制約はさせない。
藍氏、藍家の決まり事に縛り付けない。

「覚えています」

「では、なぜ、彼が雲深不知処の講義を受けねばならないのですか?」

「これは、魏公子から持ち掛けられた話です」

「魏嬰が、自ら望み、講義を受けたいと?」

「そう、お聞きしています」

「……」

黙した藍忘機に、藍曦臣が首をかしげた。

「魏公子から、何も聞いていませんか?」

「…存じません」

「忘機」

藍曦臣は、伏し目ぎみに黙した藍忘機を気遣うように名を呼び、藍忘機の視線を己に向けさせた。

「あなたは、魏公子を、このまま、藍氏の『客人』にしておくつもりですか?」

無言で返した藍忘機に、藍曦臣が続けた。

「他の仙家では、魏公子は、藍家の『食客』だと噂されていることはご存じでしょう。過去のことがあり、魏公子の立場を考えると、しばらくはそれでよいかもしれません。ですが、あなたは『仙督』となりました。彼が、あなたのそばで、自由に生きることを望むのであれば、尚更。ここでの立ち位置を、しっかりと他者に示しても良いのではないでしょうか」

「……」

無表情の中でも、僅かに揺れる藍忘機の瞳が、藍曦臣に想いを伝えていた。

「忘機。あなたの心情は察します」

藍曦臣が溜息をついた。

「これは、簡単なことではありません。今の忘機の立場も考えれば、他人が安易に提案できるもので無いことも承知しています。あなたが危惧したように、彼を政治に巻き込みたくないという想いだけでは避けられない事態も出てくることでしょう」

――― 彼が生きて、そばにいてくれれば十分だ。
――― 彼には、自由に生きていて欲しい。

それは、とても単純な願いだった。

だが、守ろうとすると、なぜ、こんなにも難しくなるのだろうか。

藍忘機の脳裏に、世俗からも藍氏からも離れ、
一人、修行に籠っていた父のことが浮かんだ。

藍曦臣は、まるで藍忘機の心をそのまま見透かしたように、「あなたは父では無い」と言った。

「そして、魏公子も。
彼は、私たちの母とは違う。隠されて生きねばならない者では無いはずです」

兄弟であれ、父母に対する想いは全く同じとは限らない。

ただ、似たような呪縛に捕らわれている。

だからこそ、藍忘機の母への強い執着を見守っていた藍曦臣は、まるで幼い弟を諭すように言った。

「今、あなたの大切な人は、あなたの側にいることを自ら望み、その為の道を探っています。彼は、あなたとの未来を、真剣に考えているようですよ」

昔、修習生時代の魏無羨は、やる気が無く、不真面目な態度で受講していた座学。
それなのに、なぜ、今さら雲深不知処の講義を受けることを望んでいるのか。

藍忘機は、昨日、『蘭室』にいた魏無羨の姿を思い出し、その理由を悟った。

「彼と話をします」

「ええ」

藍忘機の言葉に藍曦臣が頷いた。

「兄上」

藍忘機は、両手を前に出すと、藍曦臣に揖礼した。

「ありがとうございます」

様々な意味を込め、藍忘機は藍曦臣に感謝の意を伝えた。

そして、一旦は、立ち上がり、寒室を去ろうとした藍忘機が足を止め、振り向いた。

「魏嬰は、なぜ兄上に講義の話を?」

…どうして、私に頼らず、兄上に?

そう問う藍忘機の顔は、微笑ましいほど、ある種の感情に溢れていた。

藍曦臣は、思わず漏れそうになった笑みを噛み締めた。

「それも、彼から聞いてください」

「……」


藍曦臣は、寒室を立ち去っていく藍忘機の背を見つめた。

大切な者を失いながら。
それでも、まっすぐに志を貫き、かの者を信じ続けて生きていた藍忘機。

昔の藍忘機とは違うように見えて、変わらぬものがある。

そして、藍忘機が仙督となっても、藍曦臣の藍忘機への心もまた変わらなかった。

…あなたは一人では無い。そして、彼も。

『私は、宗主としてだけでなく、兄として、あなたを助けたい。
そして、父とは違う道を進むあなたを、これからも見守っていきます』


藍曦臣の心の声が藍忘機に伝わったのか。

藍忘機は、その後、雲深不知処での業務を普段通り、落ち着いた姿勢でこなした。

そして、仕事が一区切りついた後、藍忘機は、一人、『幽邃境』に向かった。

『幽邃境』。雲深不知処の外れにある秘境の地。
藍忘機が、個人で使用し、藍忘機の他には、魏無羨だけが知る鍛練場だった。

藍忘機が、雲深不知処で、藍家の者と魏無羨が持つ玉礼でしか通れない結界場を抜け、幽邃境に降り立つと、そこに魏無羨の姿があった。

魏無羨は、幽邃境の中で、剣術と体術の鍛練を行なっていた。

魏無羨の体内の金丹を結実させる修行。

これも、魏無羨の他には、藍忘機だけが知る秘密だった。

気配を放ち、幽邃境に入った藍忘機に気づいているようだったが、魏無羨は、行っていた剣技の型を一通り終えてから、動きを止めた。

そして、藍忘機の方に振り向くと、大きく手を振り、にこやかな笑顔を見せた。

「藍湛」

藍忘機は、魏無羨の方に近づき、その前で足を止めた。

「邪魔をしたか?」

「いや。ちょうど、今日の修行は終わった。
藍湛も、鍛練しに来たのか?それとも、俺に会いに来た?」

「君に会いに来た」

からかい半分で尋ねた方が正解と言われた魏無羨は、意外そうに目を丸くした。

「ハハ。昨日、蘭室に行った俺の気持ちが分かった?」

「君が蘭室にいたのは、私だけが目的では無かった」

「うん。そうだ」

額の汗を腕に巻いた半手甲帯で拭いながら、魏無羨が答えた。

「藍湛が弟子たちに教えている講義に関心があった」

「今後は、兄上から学ぶと聞いた」

「うん。そうだ」

悪びれもせず、またも爽やかに答えた魏無羨に、藍忘機がわずかに目を細めた。

「私の講義では不満か?」

「いや。大満足だよ。含光君の講義は、とても良かった」

藍忘機が、どんな顔で、どんな風に弟子達に講義しているのか。
それは、魏無羨が想像した通りの姿だった。

十数年前の蘭室で、藍啓仁の問いに何でも答えられていた藍忘機が、教壇に立ち、そのまま教師になったかのように。

威厳のこもった口調ではあったが、えらぶった所が見えない含光君の講義は、門下生達にも親しみやすい雰囲気に感じられていた。

少なくとも、弟子達には、『仙督』から授業を受けているという緊張感は無かった。

しかし・・・。

「藍湛、俺、藍先生からも作法を学ぶことになった」

「……」

すでに、藍曦臣から講義の話を聞いていた藍忘機は驚かなかった。

そして、魏無羨が、自ら望んだ理由にも薄々気づいていたが、「何故だ?」と、あえて尋ねた。

魏無羨は、足元に目を落とすと、自嘲を浮かべた。

「俺は、16年間、眠っていたようなものだった。その間、流れた時間を知らない。社会情勢や歴史がどう変わったのか、分からないことも多い。俺が会得していない術も知識も。新しいことに切り替わった物も沢山ある。それを知りたかった」

「私が教えられる」

珍しく話の途中で口を挟んだ藍忘機に、魏無羨は「うん、そうだな」と相槌を打った。

「藍湛の講義は分かりやすかった。でも、駄目なんだ」

「なぜ?」

「俺が、集中できないから」

魏無羨が笑った。

「教師が藍湛だと、俺、どうしても、気持ちが浮ついちまう。
現に、昨日も、授業の途中から藍湛の話が頭に入ってこなかった。
ああ~…今夜、家に戻ったら、藍湛と何しようか、とか。そんなこと考えて」

「魏嬰」

『真面目な話の途中で、ふざけてはいけない』と窘めるように名を呼んだ藍忘機に、魏無羨は、笑いながらも、「本当なんだ」と言った。

「分からないことは、藍湛に教えてもらって、この世にもすぐに馴染むと思っていた。だけど、俺には、新しく欲しいものとやりたいことが出来た。そして、その俺に足りないと感じたのは、抜けた時間だけじゃない」

雲深不知処に来て。弟子達と闇狩りをして。
そして、今まで通り、『陳情』の術を使っていた。
わいた発想で新術も開発している。

だけど。真に欲したことに、今のままでは届かない。

「霊力、体力以外で、俺には、他に鍛練したいことが出来た。
昔、半端に終わらせていたことをしっかり学び直したいんだ」

話を黙って聞いている藍忘機に、魏無羨はそっと微笑んだ。

…今まで、どうでも良いことはべらべらと話せたのに、肝心のことは他者に話せず、心の内に閉じ込めていた。

でも、藍湛と向き合ったことで、そんな自分とも向き合い、己を知った。

そして、今まで自分の中だけで出していた答えを、こうして全部藍湛に見せることを恥だと思わない自分に気づいた。

そう心の中で言った後、魏無羨は話を続けた。

「俺は、昔、雲深不知処の修行を途中で辞めた。あの頃、『陰鉄』のことでいろいろあったけど、学びを中途にしたのは、俺自身のことが原因だった。そして、自分一人の力で出来ることには限界があると。献舎され、生きてきて、改めてそう気づいた。闇狩りでも。最近行った天人湯都領でのことも。俺には、まだ知らないことが多い。だから、誰の為でも無い。俺自身の為に学びたい。―――俺が、藍湛のそばにいたいから」

魏無羨の言葉に、藍忘機の瞳の表情が大きく変化した。

「俺は、『仙督』の含光君に守られる存在ではなく。
隣に並び、対等に生き、そして、助けられる者でいたい」

そこまで話した魏無羨は、藍忘機の真っすぐな視線に気づくと、耳を赤くした。
そして、首を手で撫でると、照れくささを誤魔化すように目を逸らせた。

「藍氏にいる限り、正式な作法もちゃんと知っておいた方がいいからな。まあ、実践するかは分からないし、沢蕪君は、ともかく、藍啓仁先生は、どこまでもつか分からないけど。昔みたいに、教習の最中、巻物を投げつけられて、「出ていけっ」って言われるかもしれない。アハハハハ。大丈夫かな?俺」

魏無羨の冗談は、冗談には聞こえなかった。

だが、藍忘機は、小さく頷いた。

「問題ない」

藍忘機が言った。

「魏嬰。君ならやれる」

…私は、そう信じている。

「…うん!そうだな」

藍忘機が一言「信じる」と言えば、たとえ100人から「出来ない」と言われようとも魏無羨に不可能は無かった。

「それにしても…」

魏無羨は、鼻の頭をちょいちょいと撫でながら言った。

「沢蕪君が俺の講師を引き受けてくれたのは、ひいては藍湛の為と考えてのことだと思う。
沢蕪君は、俺と藍湛が、どういう関係になったのか知っているからな。だけど、藍啓仁先生まで引き受けてくれたのは意外だった」


昨日。

蘭室で藍忘機と別れた後の魏無羨は、寒室を訪れ、藍曦臣に報告書を渡し、天人湯都領でのことを話していた。

すでに、午前中会っていた藍忘機からの話で、内容を把握していた藍曦臣だったが、丁寧に魏無羨の報告を聞き、闇狩り旅行を労った。

魏無羨は、報告を終えた後、藍曦臣の顔色を伺うように見つめた。

「沢蕪君は、藍湛から、俺達のことを聞いていますか?」

「なんの話のことですか?」

「藍湛と俺が、『道侶』の関係になったということです」

「はい。聞きました」

…それが?という顔で、ジッと見つめ返す藍曦臣に、魏無羨は、少し俯くと、探るような上目づかいになった。

「率直に、沢蕪君は、そのことをどう思われましたか?」

「無為自然」

(なるべくしてなった)

「私は、藍忘機と魏公子のことを、そう感じています」

にっこりと微笑んで語った藍曦臣に、魏無羨は釣られたように笑みを返した。

その後、二人の会話は、魏無羨の『雲深不知処で講義を受けたい』という話題に移り、何事も無かったかのように『事後報告』を終えていた。


「お兄さんの、あれって、結局、俺達のことを認めているという意味に解釈していいのか?」

…やっぱり、沢蕪君の真意は、時折読めない。

藍曦臣と付き合いが長い実弟の藍忘機に、魏無羨は首をかしげて尋ねた。

「ん」

藍忘機が頷いた。

「兄は知っている。以前から」

…ああ~。そうか。

魏無羨は、昔のことを思い出し、納得した。

…沢蕪君は、昔から、俺たちがこうなることを全部お見通しだった。

軽い吐息をついた魏無羨を藍忘機が見つめた。

「兄は、軽々しく話はしない」

「わかってる。それに、沢蕪君はしないだろうけど、俺は、自分たちの関係を雲深不知処内で吹聴されても構わないと思ってる」

むしろ、世界中に向かって言いたい。
俺は、唯一無二の道侶を得たんだ、と。

だけど、それは、心の内で叫ぶだけにしよう。

魏無羨は、脳裏に、藍忘機の叔父、藍啓仁の姿を思い浮かべた。

…ただでさえ、昔から心象が良くない者に、目をかけて育てた甥がたぶらかされ、純潔を穢された、などと思いこめば、引き受けてくれた教習もしてくれなくなるかもしれない。

さらに、誓約不履行ということで、雲深不知処の滞在許可の約束も反故になるかもしれない。

それに、仙督となったばかりの藍湛には、外交経験豊富なおっさんの力が必要だ。
こんなところで、気まずくさせるわけにはいかないだろう。

そんな事を考えた魏無羨が言った。

「俺達のこと。お兄さんは理解してくれているみたいだけど、藍湛の叔父さんには、折を見て打ち明けよう」

「話した」

「…ん?」

「叔父には、話している」

「・・・・・・あ?」

魏無羨は、衝撃のあまり、藍忘機の言葉の意味を受け止められずにいた。

そして、ごくりと喉を鳴らした後、

「何を叔父さんに話したって?」と、おそるおそる尋ねた。

「『私と魏嬰は“伴侶の契り”を結んだ道侶だ』と、叔父に話した」

「……!」

目を大きく見開いた魏無羨は、とっさに己の口を手で塞いだ。

口を開ければ、幽邃境の外を抜け、雲深不知処にまで響き渡るような大声を発しそうだったからだった。




(続く)




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