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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「花燭洞房」です。

二次小説を読む注意点、「陳情令」の他の二次小説も ←(以下、必読の注意書きです)
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


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コメント記入に関しての説明は、こちらから。

「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

ドラマ「陳情令」、原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は、時間軸では「道侶編」(忘羨CPは夫夫関係)シリーズ内の二次小説です。


「続きを読む」からお入りください
(スマホで見ている方は、すでに小説が開いています)




花燭洞房




まだ夜が明けきらない薄暗い『静室』の中。

いつもより早く目覚めた魏無羨が、燭光の方に顔を向けると、
置き鏡の前に座している藍忘機が見えた。

冠も抹額もつけていない内衣姿の藍忘機が、
己の長髪を櫛で梳き、整えている。

大抵、藍忘機より一刻以上、遅く起きる魏無羨は、
藍忘機の朝の身支度姿を見ることは珍しかった。

魏無羨が、寝所から起き上がり、藍忘機の方に足を進めると、
藍忘機が、髪を梳く手を止め、振り返った。

「藍湛、おはよう」

「おはよう、魏嬰」

藍忘機の表情に変化はなかったが、
自分を見つめる視線で、魏無羨は藍忘機の心を読んだように笑った。

「俺だって早起きすることはある」

魏無羨は、藍忘機の傍らに腰をおろすと、手を差し出した。

「藍湛の髪、俺に梳かせてくれ」

髪には、その者の霊気が宿る。

そう信じられていた為、
仙師は己の髪を、他者にむやみに触れさせることは無い。

それゆえ、雲深不知処内では、藍家の規則で禁じているほどの行為だった。
だが、藍忘機はすぐに櫛を魏無羨に預けた。


藍忘機の艶やかな長髪が、魏無羨の手の櫛で優しく梳かれていく。


「青糸」(※綺麗な黒髪の意)

魏無羨がうっとりと言った。

「藍湛の髪も綺麗だけど、この櫛も美しいな」

雲と花の透かし彫りが施された木製の櫛。

「これは、母が使用していた櫛だ」

「藍家の紋にも見えるけど、もしかして、藍湛のお父さんが贈ったものか?」

「…ん」

藍忘機が伏目がちに答えた。

昔の『静室』に暮らしていた藍忘機の母と共に、父親も使用していた櫛なのだろう。

そして、おそらく、幼い藍忘機が静室に母を訪ねて来た時も。
藍忘機の母、青蘅夫人が、この櫛で藍忘機の髪の毛を梳いていたのかもしれない。

魏無羨は、藍忘機の髪を梳きながら、そんな光景を想像した。


子どもの藍忘機の傍に、ずっと一緒にいられなかった両親。

櫛で髪を梳く時。
両親の存在を感じているような藍忘機が、魏無羨には、あどけない童のように見えた。

…藍湛は、どんな物も丁寧に扱うけど、
静室内に残っている両親の物を、ことさら大切にしている。
この櫛もきっとそうなんだな。

やわらかに微笑みながら、
藍忘機の髪を梳く魏無羨の顔は、置き鏡には映っていなかった。

魏無羨の手によって、藍忘機の美しい黒髪が、さらに艶やかに伸びた頃。
藍忘機が振り返り、魏無羨を己の前に座らせた。

「次は、私が君の髪を梳く」

そう言って手を差しだした藍忘機に、魏無羨が、嬉しげに自分の櫛を渡した。

藍忘機は、魏無羨の髪を梳こうとし、櫛歯が幾本か折れて無くなっている櫛を見て、手を止めた。

「魏嬰。この櫛はどうした?」

「俺の髪の毛は太くて固くて、寝ぐせがつくと絡まっちまう。それで力任せに梳いていたら、歯が欠けてしまった」

悪びれもせず、肩をすくめて言った魏無羨に、藍忘機は軽い吐息をついた。

そして、魏無羨の櫛を台の上に置くと、雲と花模様が彫られた櫛を手に取った。

藍忘機が、両親の形見の櫛を自分に使用しようとしているのに気づいた魏無羨が慌てた。

「その櫛は使わなくていいよ。俺の剛毛で櫛歯を折っちまうかもしれない」

…藍湛の両親が使っていた大切な櫛なのに。

「折れない」

藍忘機は、にべもなく言うと、魏無羨の髪を梳き始めた。

「梳き方がある。それに、君の櫛は手入れされていない。だから折れた」

…確かに。
安物の櫛ではあるけど、藍湛の言うことは正しい。

魏無羨は、藍忘機に、両親の形見である櫛を自分に使わせてしまったことへの申し訳なさと反省から珍しく恐縮し、大人しい態度で藍忘機に髪を梳かれた。

やがて、藍忘機の髪を梳く優しい手つきに、魏無羨が次第に気持ち良く2度寝をしそうになった時、藍忘機が口を開いた。

「素直だ」

「……うん?」

「芯が太く強情ではあるけれど、まっすぐだ。
正しい梳き方をすれば、無碍に折れることは無い」

「うん…。藍湛。それって、俺の髪の話だよな?」

「ん…」

頷いた後、藍忘機が言った。

「綺麗だ」

鏡の中でも、自分の姿の影になった藍忘機の表情は魏無羨には見えなかった。

だが、それこそ真っすぐに言葉を伝えてきた藍忘機の声に、魏無羨の耳が素直に紅く染まった。

魏無羨は、鏡にいる、ニヤニヤとしまりの無い自身の顔を見ながら、黙ったまま、藍忘機に髪を梳かれた。

この後、静室を出た魏無羨と藍忘機は、それぞれ闇狩りと仙督業の為、3日間は離れ離れとなる予定だった。

「魏嬰、闇狩りは、気をつけて」

「ああ。今朝は、藍湛に髪を梳いてもらったから、守りの力が強そうだ」

静室の門の前で、魏無羨は、いつもより美しく整っている己の髪を満足げに手で撫でた。

「君が早起きすれば、毎朝、梳く」

藍忘機の言葉に、魏無羨はただ無言の苦笑で答えた。

有難い提案ではあったが、魏無羨にとって早起きは、雲深不知処の中の生活で、まだ一番慣れないものだった。

「今度は、寝る前に梳いてくれよ。藍湛」

そう言いながら、魏無羨はすでに足を踏み出していた。

「じゃあ、行ってくる。含光君も気をつけて行って来いよ」

藍忘機に早起きの誓約を取り付けられる前に、魏無羨は大きく手を振ると、そそくさと静室の階段を先に下っていった。

慌ただしい別れ方ではあったが、魏無羨が早起きしたおかげで、共に朝餉を取り、部屋を出る前には抱き合い、ゆっくりと口づけする時間まで過ごせていた二人だった。

藍忘機は、階段上で小さくなっていく魏無羨の背姿を見送った後、外出前に雲深不知処での業務を終わらせる為、執務室に向かって歩いていった。


その後。

藍忘機の仙督としての外仕事は滞りなく終わり、3日は、あっという間に過ぎた。

しかし、藍忘機にとって、『道侶』と離れている時間の感覚は長い。

魏無羨の存在を感じられなかった過去十数年間と比べれば、3日など短いものだったが、藍忘機は、もう以前の自分の生活には戻れないことを自覚していた。

魏無羨無しの生活には。


雲深不知処に戻った藍忘機は、兄と叔父に挨拶した後、すぐに、私邸『静室』に向かった。

時は、すでに戌の刻(午後8時)を回っている。

藍忘機は、無意識に足早で歩き、静室へと急いだ。

静室の門前の明かりはついていて、庭園の灯篭にも、静室の軒下の釣り灯篭にも灯が入っていた。

灯がついているということは、魏無羨も戻ってきているはずだった。
そして、静室の中に、その気配はある。

だが、母屋の中に明かりは無く、真っ暗な状態だった。

「……」

藍忘機は、扉の開いた静室の上がり口から中に入ると、魏無羨の気配がする方に顔を向けた。

「藍湛」

寝所の方で魏無羨の声がした。

魏無羨は寝台の上にいるようだったが、暗闇の中、垂れ絹で覆われた寝所の中の姿は見えなかった。

闇狩りで疲れて眠っていたのだろうか。
それとも、怪我をして休んでいたのだろうか。

藍忘機が、名を呼ぼうとした刹那、寝所の周囲が明るくなった。

寝所の両脇に置かれた、多数の枝つき燭台。
その上で、沢山の紅い蝋燭が煌々と灯っていた。

魏無羨が術で火をつけた事は明らかだったが、
紅い蝋燭は、今までの静室内には無かったものだった。

しかし、悪戯好きの魏無羨が、藍忘機の帰宅にあわせ、何か仕掛けてくるのは、さほど珍しいことでは無かった。

藍忘機が、その事に対して、毎度、冷静な対応することも変わらなかったが、それでも魏無羨は懲りずに仕掛けては、面白がっているようだった。

魏無羨に何をされても、心底驚かない藍忘機だったが、楽しんでいる魏無羨の顔を見るのを好ましく思っていた。

いつも、悪戯自体には無反応でも、藍忘機なりに魏無羨の悪戯を受け入れていた。

だが、今回の魏無羨が藍忘機に仕掛けたことは、藍忘機を通常より動揺させたようだった。

垂れ絹を手で開いた藍忘機は目を見開いた。

寝台の上に、紅い婚礼衣装を着た『花嫁』姿の魏無羨が座っていた。

立ち止ったまま、無言で魏無羨を見下ろし続けている藍忘機に、魏無羨の方が焦れて、頭にかぶっていた紅蓋頭(花嫁が婚礼の儀にかぶる赤い頭巾)を自らの手で持ち上げ、顔を出した。

「何か言ってくれよ。藍湛」

「何を?」

すでに、表情を元に戻していた藍忘機に、魏無羨がつまらなそうに頬を膨らませた。

「驚いた。とか、綺麗だ。とか」

「この衣装はどうした?」

魏無羨の理想的かつ、願望的提案をサラリとかわして、藍忘機が現実的な質問をした。

「今回の闇狩りの礼替わりにもらった」

魏無羨の返事に、藍忘機はわずかに目を細めた。

魏無羨の着ている婚礼衣装は、特別な式服とはいえ、一般の庶民が入手できるような代物では無かった。

衣装に使用されている布地は一級品。さらに、染め、刺繍に置いても、高度な技を持つ職人の手で施されていることは、藍忘機のように目の肥えた者でなくとも一目で分かるものだった。

金糸、銀糸で彩られた美しく精巧な刺繍柄と、小さな宝石が散りばめられた豪華な装飾。

紅蓋頭の下の、魏無羨の頭には、高価な真珠と宝石がはめられた金色の髪飾具もついている。

衣装を金額に換算すれば、おそらく庶民であれば、1年は暮らしていけるほど。
富豪の令嬢か、大きな仙家の女性が、結婚式で用いることしか出来ないような高級品だった。

藍氏の闇狩りで、仙師が、依頼相手からもらう報酬は、規定で決められた額。

さらに、魏無羨が、自らが赴く闇狩りで見返りを要求することは、今まで無く、無報酬で請負うことも多かった。

そんな魏無羨が、今着ているような物を、いくら闇狩りの礼だとしても受け取ることは無いはずだった。

無言で問うような藍忘機の目に、魏無羨は、おどけたように肩をすくめて見せると、事の経緯を軽く説明した。

魏無羨の話を簡単にまとめると、こうだった。

姑蘇の、ある富豪の商家に、蘭陵の裕福な商家の娘が嫁ぐことになった。

だが、蘭陵の娘に懸想していて、勝手な恨みと執着を募らせながら、不慮の事故でこの世を去った男が、娘の周囲で悪事を働く幽鬼となってまとわりついていた。

そして、娘が嫁ぐと知ってからは、姑蘇の商家を呪い、婚姻式を滅茶苦茶にすると告げていたのだった。

退治を依頼された者たちもいたが、やたら知恵がまわり、先の手を読む邪霊に、仙師達は翻弄され、闇狩りをすることが出来ずにいた。

こうした中、婚姻の日も近くなり、商家の主は、姑蘇にいる『夷陵老祖』の評判を聞き、名ざしで魏無羨に闇狩りの依頼をしていたのだった。

この闇狩りは、魏無羨には、けっして対処の難しい案件では無かった。

魏無羨は、結婚式の時に娘が着る予定の婚礼衣装に、娘の気配をいれた人形符をしのばせた。

そして、その婚礼衣装を着けて、花嫁に化けた魏無羨が娘の嫁ぎ先の閨房に忍び込み、現れた幽鬼を迎えうった。

魏無羨の作戦は成功し、幽鬼は魏無羨によって、あっさり闇狩りされた。

両方の商家の者たちは胸をなでおろし、魏無羨に感謝した。

だが、そのまま、婚姻の儀が続行されたわけでは無かった。

姑蘇の商家の、花婿となる男は、一度、他の男が着た衣装を、妻となる女性に着せたくないと言い、花嫁となる娘も、幽鬼の念が触れた婚礼衣装など着たくないと言った。

どんなに高級品であろうとも、ケチのついた物は見たくないということだろう。
親や親族たちも、二人に合意し、豪華な花嫁衣装は、あっさり捨てられることとなった。

それを知った魏無羨が、「捨てるくらいなら、俺にください」と言って、持ち帰ってきた。

「それが、今、静室で、俺がこんな格好になっている理由だよ」

寝台の上の『花嫁』が、あっけらかんと言った。

大体が、藍忘機が想像した通りの内容だった。

「どこかで売るつもりなのか?」

「いや。売ることは考えてなかったな」

藍忘機の問いかけで、魏無羨は初めて「売る」という選択肢もあったことに気づいたようだった。

「藍湛に見せたくて、もらってきた。どう?」

へへへと、笑って魏無羨が言った。
そして、藍忘機に衣装を全て見せるように、両腕を広げた。

藍忘機の前に、紅く輝く、幻想的に美しい花嫁姿の魏無羨がいた。

ジッと見つめ続ける藍忘機の目に、
『花嫁』は、やがて、照れたように目を伏せた。

そして、しおらしく俯くと、ポツポツと話し始めた。

「ちょっと思い出した。昔。師姉の結婚式に参加することが出来なかったけど。
師姉が嫁ぐ前に、婚礼衣装を着て、俺に会いに来てくれたことがあった。
とても、とても綺麗だった。……師姉にも、俺の婚礼衣装姿を見せたかったな」

冗談めかしながらも、寂しげな目で語る魏無羨に、藍忘機は言葉をかけるかわりに、手をかけた。

―――私が、師姉殿の分まで、君の美しい姿を目に焼き付ける。

藍忘機の無言の直視は、雄弁だった。

魏無羨は、頬に触れた藍忘機の手に己の手を重ねると、顔を上げ、やわらかな微笑を浮かべた。

「言うのが遅くなったけど。おかえり藍湛」

「ん」

藍忘機は、魏無羨の横に腰をおろすと、袂から取り出した物を魏無羨に差し出した。

縁に花模様が彫られた木製の櫛。

何の説明もなく、無言で差し出された櫛だったが、魏無羨は一目見て、それが自分への贈り物だと分かった。

櫛歯の折れた物のかわりに、今後は、この櫛を使えということだろう。

「いい櫛だ」

魏無羨は、櫛を手の中で眺めまわしながら嬉しそうに言った。

「藍湛は、これをどこで手に入れた?」

「出先で、櫛職人の店を見つけた」

「ふーん。でも、この花の模様は藍湛が彫ったんだろ?」

「……なぜ、分かった?」

ふい打ちで花嫁姿を見せた時より、強めの反応をしめした藍忘機に魏無羨が笑った。

「なんとなく」

それでも、納得していない、という表情の藍忘機に、魏無羨は、鏡台のある方角を一瞥した後言った。

「藍湛が使っている櫛。あの櫛の雲の模様はもともとあったもの。だけど、花模様は、後から加えられたように見えた。藍湛のお父さんが彫ったんじゃないのか?」

「知らない」

『だが、君の推理したことは、私も考えた』

そんな事を思った目で見返す藍忘機に、魏無羨は、心の声を読んだように頷いた。

藍家の模様の櫛に、藍忘機の母が好きだった花を、藍忘機の父が彫って贈ったように。
藍忘機は、魏無羨に贈る櫛に自らの手で模様を施したのだろう。

「これ、芍薬の花?」

「ん…。白い芍薬だ」

「白い芍薬?」

…木の櫛は着色されていなかった。
芍薬の花の形とすぐに分かったが、なぜ色の種類まで決まっているのだろう?

一瞬、不思議に思った魏無羨だったが、すぐに納得したように頷いた。

「そっか」

「気にいったか?」

「うん。すごく気にいった」

魏無羨が笑って言った。

「白い芍薬。俺、好きだよ。なんだか藍湛に似てる」

「私は、白い芍薬に似ているか?」

「うん。櫛には、求愛の意味がある。『私と結婚して欲しい』って。藍湛は、そういうつもりで、この花を彫って贈ってくれたんじゃなかったのか?」

「……」

無言のまま、耳を紅く染め、薄紅色の芍薬のような風情になった藍忘機を、魏無羨はからかうように至近距離で見つめた。

そして、櫛を藍忘機に差し出すと「梳いて」と、甘えた声でねだった。

藍忘機は、魏無羨がかぶっている紅蓋頭を取り、髪飾具も外すと、それらを丁寧な手つきで寝台脇の台の上に置いた。

それから、魏無羨の傍らに座したまま、受け取った櫛で、魏無羨の髪をゆっくりと撫で梳いていった。

「藍湛とは、すでに道侶の契りを結んでいる仲だ。
だから、今さらではあるけど、今夜、婚礼の儀式もしよう。酒も料理もある」

藍忘機に髪を梳かれながら、魏無羨は言った。

座卓の上に、酒甕と、重ね重箱が置かれていた。

螺鈿細工された豪勢な重箱の中には、仮の婚姻式用に作られた料理が入っている。
闇狩り後に、衣装と共に魏無羨がゆずり受けた祝い膳だった。

「ちょうど、今、婚礼衣装も着ていることだし」

「私が着る衣装は?」

「ああ。そうか。それはもらってこなかった。
だけど、藍湛は、しきたりには従っても、形式には、こだわらないだろ?」

ふざけているのか。本気なのか。

浮かれた口調で話している、楽しそうな様子の魏無羨に、藍忘機は口を綻ばせた。

そして、艶やかに流れる魏無羨の髪を、素手で直に一撫でした後、持っていた櫛を台の上に置いた。

「魏嬰」

「ん?」

「私と、生涯の契りを結ぶ心はあるか?」

振り返った魏無羨の手に手を添えた藍忘機が尋ねた。

いつも通りの無表情で。

しかし、両耳を紅く染めて問う藍忘機の顔に、魏無羨は、思わず噴き出した。

「真面目に」

「わかってるって」

魏無羨は、クスクスとした笑いを止めると、藍忘機を見上げた。

「愚問だよ。藍湛」

魏無羨は、台の上の櫛を手に取ると、3本の指を掲げた。

「俺は藍湛と契りを結ぶ道侶だ。永遠に」

『誓い』の形を示して言った魏無羨に、藍忘機は、「私も」とは口にしなかった。

誓約のかわりに、口づけを落とした藍忘機に、魏無羨は、またクスクスと笑った。

「じゃあ、婚礼の儀の食事と酒を頂こう」

そう言って、立ち上がった魏無羨の腕を藍忘機が掴んで、寝台に引き戻した。
それから、魏無羨の体をかき抱くと、さらに深い口づけを続けた。

厳密には、本当の初夜ではなく。
すでに、身も心も捧げている『花婿』からの行為で、『花嫁』は、その後の展開を全て読んだ。

「藍湛。これは酒の杯を交わした後にするものじゃなかった?」

「形式にはこだわらない」

「さすがだ、藍湛。それでこそ、俺の夫君(旦那さま)」

魏無羨が、朗らかに笑った。

そして、藍忘機の体を抱きしめ返し、その耳に唇を寄せると、
「櫛を、ありがとう」と、甘い声で囁いた。

―――藍湛が、俺の髪一筋まで、大切に扱ってくれるから。
俺も、自分をもっと大事にしようって思えるようになった。

全てを声に出して伝えるには、照れくさい台詞だったが、
魏無羨は、心の声の続きを藍忘機に伝えた。

「ずっと、大切にする」

…櫛も、藍湛も。

「ん」

魏無羨と藍忘機には、それ以上、誓いの言葉は、必要なかった。

この翌朝、魏無羨が新しい櫛で藍忘機に髪を梳かれるのかは不明でも、婚礼初夜をどう過ごせばよいのか。

二人は、十分に理解し合っていた。

閨の中で、唇と体を重ね、互いへの愛を交わす。


こうして。

今夜も、燭台の灯りが消えた静室は、
魏無羨と藍忘機の花燭洞房となった。





(終わり)




【あとがき】

※花燭洞房(新婚初夜の意)

みつばの二次小説「解語の花」の続編のような短編でした。

じつは、この話の裏話として。

二次小説の藍忘機は、魏無羨に贈る櫛の花模様として、「蓮の花」も考えていました。

魏無羨が、花の中で、「蓮の花」が一番好きだと思っていたから。

しかし、魏無羨の過去の幸せの象徴花より、「自分と共に、今の幸せを」と、願った心から、「芍薬」を選んでいます。


これは、まだ、未公開の二次小説ともリンクする内容があるので、詳細に語れない所もありました。

でも、みつばが、今後、「陳情令」の二次小説シリーズの更新を止めたら、永遠に謎のままになるので、裏話の説明だけでも残しておきます。(ぺこり)


「白い芍薬」の花言葉は、『幸せな結婚』
他には、思いやり、はじらい、清純、つつましい、などなど…。

ドラマ「陳情令」の中では、芍薬の花は、あまり表だって出てきませんでしたが、コラボCM映像の中でばっちり映っていました。

(余談ですが、最近、いきつけの園芸店に「白い芍薬」と「紅い芍薬」の花が咲いた鉢があったので、思わず買いそうになりました(笑))

「花燭(華燭)」は、結婚の意味。

この話の他にも「花燭」のタイトルのついた二次小説(未公開)プロットが2つほどあり、みつばの中で、「花燭三部作」と名付けています。

1つは、更新出来るか未定ですが、1つは、「請い歌-君を呼ぶ声-」と同じく、藍忘機視点で語られる短編話なので、「天に楼閣を描く鳥」の間か、「逢月編」の最終話の前くらいには、アップしておきたいな~という希望。←あくまで、希望。。。(汗)

【追記】誤字修正。沢山あったのですが、気づいたところは随時修正しました。

螺旋細工→螺鈿細工 など。

ブログ記事への拍手、コメントを送ってくださった方、ありがとうございます。

コメントのお返事は、頻繁には出来ず、まとめてになりますが、「返信不要」と書かれた方以外には、6月20日までは、コメント欄内でお返事します。

(追伸)「非公開」を選ばなくても、ブログ上では「承認待ち」となり、内容は公開とならないので、ご安心ください。

ブログへのご訪問、ありがとうございました。
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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

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Re: ○本愛さんへ
いつもコメントを送ってくださり、ありがとうございました。
拍手コメントを閉鎖してからも、コメント欄から、いつも励まして頂き、本当に感謝しています。

コメント欄の禁止ワード、自分自身がしていたのを、すっかり外し忘れていたり。
長い間気づかずに、エラーを連発させてご迷惑おかけしました。

みつばのたまて箱。
本来なら、乙姫から受け取らず、海の底に沈めるものだったのかもなのですが、未来が変更されて、結局、みつば浦島太郎は、陸と竜宮城を行き来する生活を選びました。
まだ、たまて箱に残すものがあるのでしょう。
なので、最後の話を入れるまで、おつきあいして頂ければ幸いです。

二次小説で浦島太郎の「たまて箱」の話を出した時は、こんなことになるとは夢にも思っていませんでしたけど、今自分で読み直すと、意味深な話になっています。

このブログの二次小説自体が謎に包まれていますが、自分でも理解出来ていません。
最後の話を更新して、その謎を解くところまで、時間がかかってもお付き合いして頂けたら、心強いです。

応援、ありがとうございます。
[2022/06/24 Fri] URL // ★みつば★ #- [ 編集 ]
管理人のみ閲覧できます
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[2022/06/20 Mon] // # [ 編集 ]
Re:  ○魔愛さんへ
コメントありがとうございます。
もう、かなり前に、忘羨の結婚式の二次小説希望のコメントをよくもらっていました。
「魔道祖師」の完結編のアニメで、結婚式衣装着ているような二人を見られましたが。
陳情令の二人で妄想しても、すごく綺麗です。

妄想の中の、ごっこ遊び(?)でも、もっとロマンチックにして欲しかった、と私も思いましたが、櫛の「妻問い」がメインだったので、あんな感じになっています。
私の中で、「陳情令」の藍ちゃんは、「魔道祖師」の藍ちゃんより甘さ控えめ。でも、あっちは同じくらい強め(?)なイメージです(笑)
[2022/05/12 Thu] URL // ★みつば★ #- [ 編集 ]
Re: L○さんへ
コメント、ありがとうございます。
キャラソン。私は、ブルーレイに入っていた、特典映像を持っています。
買ってから、随分たちますが、まだ、未視聴です(汗)
でも、歌はひととおり、全部聴いています。
なんとなく萌え訳で聞いていたので、いつか、しっかり日本語翻訳見てみます。

江澄は、私の中でも、魏無羨は、親友の位置づけになっています。
義理の兄妹として育ち、師弟という立場でもあるけれど。
江澄にとって、「兄弟」であり、「親友」だったのではないかと。
彼の中でも、唯一無二の存在だった気がします。

日本語訳で見ると、「あれ?」ってなる箇所は、原書の言葉を見てみると面白いです。
意味はあっているのですが、ニュアンスが変わります。
[2022/05/12 Thu] URL // ★みつば★ #- [ 編集 ]
Re: 多○さんへ
コメント、ありがとうございます。
新婚ごっこ。「魔道祖師」の藍湛なら、きっと魏嬰につきあってくれるのだろうな~。と思いながら。

みつばの妄想「陳情令」藍湛は、形式より、実技を重んじるようです(笑)

芍薬、今が見頃ですね。園芸店で、まあまあ、いい値段で売られています。
それが、お庭で見られるとは、いいですね♪

コメントレスは、この前から、期間限定で解禁しています。
今までも、沢山送ってくださり、ありがとうございました。

[2022/05/12 Thu] URL // ★みつば★ #- [ 編集 ]
Re:山の○代さんへ
コメントありがとうございます。
そうなのですよ。5歳児は、もう油断出来ないのです。
私もスマホ画面で、うっかりBL系(スマホに勝手におすすめされる(笑))を見ていたら、子どもに「ママが男の人たちが抱き合ってる動画みてた。思わず二度見しちゃったよ~」と他の子たちに暴露され、みんなにゲラゲラ笑われてしまいました(苦笑)

この世界は楽しいのですけど、子や孫にすすめるには、まだ早いですね(汗)
[2022/05/12 Thu] URL // ★みつば★ #- [ 編集 ]
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[2022/05/09 Mon] // # [ 編集 ]
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[2022/05/08 Sun] // # [ 編集 ]
承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
[2022/05/07 Sat] // # [ 編集 ]
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[2022/05/06 Fri] // # [ 編集 ]
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[2022/05/06 Fri] // # [ 編集 ]
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[2022/05/06 Fri] // # [ 編集 ]

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