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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「逢月撤灯」(18話)です。

二次小説を読む注意点、「陳情令」の他の二次小説も ←(以下、必読の注意書きです)
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


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とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

ドラマ「陳情令」、原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この二次小説は、「逢月編」シリーズ「恋教え鳥」の続編となります。

※タイトルの「逢月撤灯」は、「愛月撤灯(あいげつてっとう)」という、熟語をもじった言葉です。

「続きを読む」からお入りください





逢月撤灯(18話)





『天人湯都領』自警団本部、屯所の2階部屋は、さほど広く無かった。

今、その部屋に、天人湯都領の出資者であり、『五大富老』と呼ばれる蘭陵の5名の大富豪商人たちが卓の椅子に座っている。

そして、周囲の壁側に、自警団員達が身を寄せるような形で立つと、屯所にいる者たちが、なんとか収まるほどだった。

階段でたむろしていた団員達も、ぞろぞろと2階の部屋に入り、落ち着いた頃、魏無羨が話し始めた。

「まず、先にご紹介します」と言って、魏無羨は隣に立っていた藍忘機の方を見た。

「彼は、姑蘇藍氏の含光君」

魏無羨の紹介にも、まだ半信半疑な顔で見ている者達に、藍忘機の後方にいた団員達が口をはさんだ。

「その方は、本物の含光君様です。先ほど、我々が警備していた露天風呂近くで魔物が出没した時に助けてくださいました」

「魔物だと?」

一気に青ざめた五富大老たちに、藍忘機が「今はいない」と、端的な言葉を発した。

「そうです。含光君が、退治してくださったので、魔物は消滅しました」

いつのまにか、魏無羨の後ろに立っていた陳昭(チェンジャオ)が言った。

魏無羨には、藍忘機が陳昭達と共に屯所に来た時点で、露天風呂の方で何があったのかを想像できていた。

振り返った魏無羨と目の合った陳昭は、ただ、黙したまま魏無羨を見つめていた。

魏無羨に問いたい事がある、という眼差しを向けていたが、その答えは、これから判明するということも分かっている顔だった。

魏無羨は、フッと口角を上げると、衝撃的な話の連続にざわついている部屋の中で、「陳昭(チェンジャオ)さん」とこっそりと呼びかけた。

「今、屯所の地下牢の中にいる人を、番をしている黄卓統(ファン・ジュオトン)と一緒に、ここに連れてきてください」

「地下牢…?」

「はい」

陳昭は、眉をしかめたが、それ以上魏無羨に問うことも無く、「分かった」と答えると背を向けた。

魏無羨は、下の階に行く陳昭の背を見送った後、再び前を向いた。

卓に座っていた五大富老達は、一番風格のある上座の者以外、落ち着きを失っていた。

蘭陵の商人の元締めで街の創設にかかわった権威者とはいえ、五大富老は、仙術使いでは無く、市井の民だった。

長年、世の中で悪名高い存在だった夷陵老祖がいる。
そして、仙督となった姑蘇藍氏の含光君も、なぜかここにいる。
さらに、先ほど魔物が本当に出て闇狩りされたということを知った。

動揺しない方が、不思議なほどだった。

また、含光君の功績は、蘭陵でも有名だった。

さらに、含光君が新しい仙督になったという話も、すでに広く伝わっていた。

そんな含光君が、直々に『命』を下したのなら、蘭陵金氏の重役たちが迅速に動いた理由もわかる。

五大富老達は、目の前にいる含光君が本物だからこそ、自分たちを迅速に招集できたという事に納得し、おずおずと遠慮がちに、部屋の戸口にいる藍忘機の方を見つめた。

普段なら、五大富老が天人湯都領に集まる時の会議は、高級宿の豪華な一室で行っていた。

しかし、今夜は、窮屈な部屋に、多数のむさ苦しい男達と共に押し込められている。

もし、これが、ただの集会であれば、文句と怒りを自警団にぶつけていただろうが、今は、「仙督」となった含光君も同じ部屋にいる。

いくら天人湯都領の権威者とはいえ、仙督の前で贅沢な愚痴は言えない。
五大富老達は、自分たちが座っている目の前に含光君が立っていることに恐縮しているようだった。

居心地が悪そうな五大富老達の顔を見た魏無羨が、藍忘機に、こそっと耳打ちした。

「含光君、座ってくれ。仙督という立場の者がここに立っていると、彼らが落ち着いて話を聞けない」

「…ん」

ようやく、椅子に向かった藍忘機に、五大富老達は、ほっとした表情を浮かべた。

藍忘機が席につくと、魏無羨が再び話を始めた。

「まず、なぜ俺が、この街にいるのかは、先ほど話をした通りです。
天人湯都領の街周辺で起こっていた襲撃事件のことで、姑蘇藍氏に相談にいらしていた自警団の武皓凡(ウー・ハオファン)団長から、夷陵老祖の名が出たことをお聞きしました。
しかし、俺には身に覚えが無い話だったので、この街に来ました。
俺の名を出した者を見つけ無実を証明するため。そして、騒動をおさめるためです。これは、姑蘇藍氏の宗主、沢蕪君もご存じのことです。もちろん、そこにいる含光君も」

魏無羨の話に、小さく相槌をうちながら聞いていた五大富老や自警団の団員たちだったが、心の中にある素朴な疑問は消えていないようだった。

…夷陵老祖が、この街にいた理由は分かったが、なぜ、含光君まで?
仙督が、直々に出てくるほど、大ごとだったのだろうか?

伏し目がちの表情で、椅子に座っている藍忘機の方にチラチラと視線を送りながら、皆同じ事を考えている顔をしていた。

魏無羨は、この場にいる皆の心を読んでいたが、今は、それに対して説明する必要は無いと思っていた。

魏無羨と同じ事を思っていたような、五大富老の長、郭洋(クオ・イアン)が口を開いた。

「では、今夜、わしたちを呼んだということは、その事はすべて解決したということなのですな?」

「はい。そうです」

「では、夷陵老祖。あなたの名を出し、天人湯都領の街周辺で人を襲っていた者の正体は何だったのですかな?」

「人です」

…人?

魏無羨の言葉に、五大富老達の大半は事情が呑み込めずにいた。

「人とは、どういう意味ですか?」

「俺の名を出した者の正体は、魔物のふりをした人間だったのです」

「そう断言するということは、その者がどこの誰かも分かっているということですか?」

「はい」

魏無羨は頷くと、振り向いた。
そして、後方の階段を複数の者達がのぼってくる足音に意識を向けた。

ほどなく、2階の部屋の戸口に、黄卓統(ファン・ジュオトン)、そして、縛られた徐允敏(シュ・インミン)の襟首をつかんだ陳昭(チェンジャオ)が現れた。

徐允敏の青ざめた顔の右頬は紅く腫れ、口元は、切れて血が出ていた。

鼻息荒く、徐允敏を乱暴に掴んでいる陳昭を見て、魏無羨は事情を察した。

おそらく、陳昭が、地下牢の番をしていた黄卓統から、山の上であった事をおおまかに聞いた後、突発的に徐允敏を殴りつけたのだろう。

チラリと目のあった黄卓統に魏無羨は苦笑し、『本当に殴るのを止めなかったのだな』という視線を送った。

黄卓統は、魏無羨の視線の意味を分かったようだったが、小さく鼻を鳴らすと、そっぽを向いた。

「彼は、自警団の団員の一人ではないか。なぜ、拘束されているのだ?」

「彼は、先ほど、山で私を襲い、そして、魏さん達の作業も妨害しようとしたので、こうして拘束させて頂きました」

不思議そうに尋ねた五大富老の揚辰(ヤン・チェン)に武皓凡(ウー・ハオファン)が答えた。

「武団長を襲って、夷陵老祖の作業の妨害?」

…徐允敏が、なぜ、そんなことを?

その場にいた自警団員達がざわめく中、五大富老の郭洋は、いち早く事の次第を理解したようだった。

「もしや、魔物のふりをしていた人間というのも、彼のことか?」

「そうです」

はっきりと頷く魏無羨に、五大富老だけでなく、部屋の中にいた、他の団員たちも驚いたように息をのんだ。

「私は人を襲って怪我をさせたことはない」

小さな声で言った徐允敏に、黄卓統が間髪入れずに「いいかげんにしろ」と鋭い声を上げた。

他の団員達もたまらずに次々と口を開いた。

「徐允敏。自警団員として、俺たちと一緒に襲撃事件を調べているふりをして、裏切っていたということではないかっ」

「必死で俺たちが警備しても、裏をかかれるわけだ」

「山に入った者たちを脅して金品を盗っていた盗賊が、徐允敏だったとは」

思わず声をあげた団員に、徐允敏は「違う」と呻いた。

徐允敏は、顔を上げると、視線を自警団長の武皓凡に向けた。

「武団長、私は、金を盗んだことなどない」

「おいっ。武団長の情けに縋ろうとしても、もう無駄だぞ」

黄卓統が冷たい声で徐允敏に告げた。

「お前がさっき、山で団長や俺達にしたことを忘れたのか?
天人湯都領の周辺で人を襲って金を盗っていたのも、お前だと白状しろ」

「私はしていない」

「まだ言うか」

徐允敏の胸ぐらを掴もうとした黄卓統を魏無羨が止めた。

「彼は、確かにこの騒動の首謀者だが、金品を盗っていたのは別の者たちだ」

「なんだと?」

黄卓統が動きを止め、訝しげな顔で魏無羨を見つめた時。

下の階が騒がしくなり、屯所の番をしていた者をふりきって、3人の男達が、階段を駆けあがってきた。
そして、2階の部屋の扉を開け、部屋に飛び込むように入ってくると、そこにいた全員の注目を浴びながら、ひどく狼狽した様子で周囲を見渡した。

「夷陵老祖は?夷陵老祖様はどちらに!?」

尋ねる男たちに、団員の一人が反射的に魏無羨の方を指さした。

3人の男達は、行きおいよく魏無羨の方に駆け寄った。

「助けてくれ。夷陵老祖」

「なんのことだ?」

…ようやく、餌にくいついたようだな。

3人の正体が分かっていながら、冷静に問う魏無羨の前で、男達は全員膝をついた。

「金氏の者に術を浴びせられた者は、発疹がではじめ、次第に体が蝕まれると聞いた」

「ん?だから?」

「だから…っ」

男達は、魏無羨にすがるように手を合わせた。

「俺達は、彼の術をあびてしまった。
夷陵老祖、あなたなら助けることが出来ると聞いた。
手遅れになる前に治して欲しい」

「…というと?」

せっぱつまっている男達に、魏無羨は落ち着いた声でさらに尋ねた。

「なんで、あなた達が金氏の者の術をあびることになったんだ?」

「俺たちだ」

…こんな事を話している間にも、術が効き始め体全体に広がってしまう。

そんな恐怖に、なりふりかまわない体で男達は口走った。

「俺たちが、山の中で蘭陵金氏の仙師を襲ったんだ」

自白した男たちの周りを黄卓統と陳昭をはじめとした自警団員たちが取り囲んだ。

そして、あっという間に縄で体をしばり拘束すると、彼らを見張るように後ろに立った。

すでに、抵抗する気が全くないような男達は、縛られたまま床に膝をつき、おびえた目で、ただ魏無羨を見上げていた。


「お前たちが襲ったのは、金氏の男だけか?」

「他にも、山の中に入ってきた者や、夜に露天風呂に来た観光客を脅した」

魏無羨が腰帯にさしていた笛の『陳情』を見て、男達はびくびくしながら素直に口を割った。

「なんで、そんな真似をした?」

「それは…」

男の一人が、そっと徐允敏の方に顔を向けると指さした。

「俺達は、彼に雇われてそうした。
魔物のふりをして観光客を脅せと命じられていたんだ」

部屋にいた者たち全員に視線を向けられた徐允敏がこわばった表情で俯いた。

知らぬ存ぜぬ、を通そうとしている徐允敏の態度に、男達は業を煮やしたように喚いた。

「金氏の仙術使いを襲った時、金氏の男に力で負けそうになったから、『夷陵老祖』の名を語って逃げたのは、あんたでは無いかっ」

「あんたは、なんの問題もないと言っていたが信じられねえ。
見ろ。俺たちの体には、夷陵老祖が話していたという赤い斑点がいくつか出来てきている」

「そうだ。夷陵老祖のせいにしたのは、俺たちじゃない。
どうか、俺たちに報復などしないでくれ。夷陵老祖!」


「彼らの話は本当ですか?徐允敏」

その場を代表し、静かに問う武皓凡の声に徐允敏はさらに顔をこわばらせた。

しかし、武皓凡から視線をそらせると、「彼らは何か勘違いしている」と言った。

「私には、何の症状も出ていないのが、その証拠だ」

「そんなわけは無い。
あんたも、あの場に一緒にいて、俺たちと一緒に金氏の男の術をあびていたっ」


「術では無い」

それまで、徐允敏や男たちに向けられていた人々の目が、一斉に声を発した主の方にうつった。

発言したのは、藍忘機だった。

小さく低くても、藍忘機の声はその場を一瞬で制した。

「蘭陵金氏の者が、その時放ったのは、ただの水だ」


…え…?

魏無羨の前で跪いている男たちだけでなく、皆が不思議そうな顔で藍忘機を見つめた。

「こいつらに襲われた金氏の男が、術では無く、水を放ったと。
含光君様は、何故、そのような事をご存じなのですか?」

一同を代表した陳昭(チェンジャオ)の問いかけに、藍忘機は、「山で襲われた蘭陵金氏の者と会って、直接、その時の話を聞いた」と答えた。


藍忘機は、魏無羨と同時に、この事件の裏を調べる為に動いていた。

そして、先日。天人湯都領の宿屋で魏無羨と打ち合わせをした後、蘭陵金氏の仙府、金麟台に仙剣で出向いた藍忘機は、金氏の重役たちに、五大富老をすぐに天人湯都領に集めるよう働きかけて欲しい、と伝えた。
その後、自警団の事件簿の供述の裏付けを取るため、山で襲われた金氏の仙師を見つけていたのだった。

「彼は、襲われた時、謎の者たちに、とっさに手に持っていた竹筒の水をかけたと話していた」

「それじゃあ…」

…夷陵老祖の話は一体なんだったんだ?
やっぱり、盗賊をおびき出すための嘘だったのか?

そんな顔で、自警団の団員達が、今度は、魏無羨の方を見た。

「でも…!。俺たちの体には、実際、紅い発疹が出来ている。これは・・・?」

話が見えないという体で、当惑する男達に、魏無羨は肩をすくめてみせた。

「ああ、ただの虫刺されだろう」

「は?」

「山の中や、天人湯都領の露天風呂周辺は、よく蚊が出る。
通りかかる者を闇討ちする為に山の中に潜んでいる時間が長ければ、その蚊に刺されることもあるだろう。その発疹は、単なる虫刺されだ。
でも、搔き壊して化膿すれば全身に広がり、辛く大変なことになる。そういう意味だ。
症状は、俺の持っている軟膏薬で直せるが、普通の虫刺され薬でも十分に効く」

…嘘は言っていない。人々が持つ「夷陵老祖」の印象を逆手にとってカマをかけただけだ。

そう、飄々と語る魏無羨に、3人の男達だけでなく、自警団の団員達も「はぁ~…」と、狐に化かされたのが分かった後のような顔になって脱力した。

「だが、自警団の者たちが、天人湯都領の街内で広めた俺の話を聞いて、心あたりのある者は焦ることだろう。
罠かもしれないと、普通なら警戒するだろうが、本物の夷陵老祖が言っていたとなれば話は別だ。
この3人は、隠れていたくとも、金氏の者から浴びせられたのが水だ、という確信が持てずに不安になったから出てきた。だが、仙師である者には、何も起きないことが分かっていた」

魏無羨は、徐允敏を睨みつけている黄卓統にチラリと目をやった後、続けた。

「金氏の男が襲われた後、自警団本部で供述を取った団員は彼と知りあいだった。
それで、金氏の者は、尊厳を保つために真実を少し誤魔化した。仙術で対抗したと言ったが、術ではなく、とっさにまいたのは水だ。だから、真相を知るのは、金氏の者以外では、彼を襲った者たちだけというわけだ」

「…そんな話は、私が天人湯都領の周辺で人を襲っていたという証拠にはならない」

往生際悪く否定する徐允敏に、魏無羨は、「証拠はあります」と告げた。

そして懐から布包を取り出すと卓の上で、それを広げた。

布の中にあったのは、小石や糸くず、紙片、そして、薄汚れた枯葉。

魏無羨の出したものを、顔を寄せ合うように、目視した者たちの目には、ただのガラクタに映るものばかりだった。

「これは、何かね?」

訝し気に尋ねた五大富老の一人に、魏無羨は「術符の一種です」と答えた。

「一見、何の変哲もない物ですが、一時的に効果のある法具を作る為に使用されました」

術符と聞いた五大富老たちは、卓上の謎の塵たちを、急に恐れを持つ目で見つめた。

「もうこれらには効力はありません」

魏無羨は、小石や枯葉を一つ一つ、指差して言った。

「こちらは、先ほど、山で武団長が徐允敏に襲われた時に目にしていた、擬態の人型を作れる術符で使用されたもの。こちらは、思念文を無効化する効果を持つ術符。自警団の本部裏に設置されていました。徐允敏さん、全部、あなたが、自警団の仕事を妨害する為につくったものです」

魏無羨の指摘にも徐允敏は黙秘を続けた。

魏無羨には、徐允敏が本気で仙術を駆使すれば、山の中でも、この場からも、逃走が可能なほどの力を持っていることを悟っていた。

しかし、なぜか、それをせずに、ここに大人しく囚われている。

魏無羨は、徐允敏が、時折、卓の椅子に座っている、特定の人物の方に、何度か視線を向けている事にも気づいていた。

彼が、皆の前で、罪が暴露される屈辱よりも、ここに留まることを選択している理由も、分かっていた魏無羨だったが、そしらぬふりで、尋問を続けた。

「徐允敏さん。あなたは、この男たちを金で雇って協力させ、山に入った者たちを闇討ちした。そして、これらの術符をつかって自警団の捜査を攪乱させた。
藍氏へ送るはずだった思念文を消し、武団長の手紙を処分したのもあなたです」

「術符をつくれる仙師は、私だけでは無い」

徐允敏の返答に、今度は、魏無羨の方がかぶりをふると、「他の仙師が自警団に来る以前の時期に仕掛けられたようなものもありました。それに法力の痕跡を深く探れば、作成したあなたに辿りつく」と言った。

往生ぎわ悪く、まだ他人の仕業にしようとする徐允敏に、黄卓統は、はらわたが煮えくり返る心境を通り越したようだった。

「今すぐ、あいつを切り倒したい」と漏らす黄卓統に、隣に立っていた陳昭が「我慢しろ」と拳の指を鳴らしながら言った。「俺が、思いっきりぶちのめした後で好きにやれ」

彼らの物騒な会話を聞いていた他の団員達は顔をひきつらせ、それが、冗談であることを祈りながら、二人からそそと離れた。

魏無羨にも陳昭たちの会話が聞こえていたが、今はまだ徐允敏と話すことがあった。

「徐允敏さん。俺は、これらの他にも、あなたがこの騒動の為にひきおこした事の証拠を持っています」

そう言って、魏無羨は、懐から今度は自警団の保管庫にあった古地図を取りだすと、卓の上に広げた。

古地図を見た、五大富老の郭洋(クオ・イアン)が「ん?」とすぐに反応した。

「これは、わたしの家の祖先から代々所持していた、この地の昔の地図ですな。
天人湯都領の街が出来た時に、先の自警団長に預けたものだ」

「その時と、この地図。どこか変わったところはありませんか?」

「変わったところ?」

魏無羨の問いに、郭洋が地図を覗き込んだ。

「うーむ…。以前、目にした時より、この山の画の上にあった印が、いくつか足りない」

郭洋の指摘に魏無羨が「そうです」と頷いた。

「ここにある古地図は、街が出来てから自警団で保管されていました。しかし、山に祠があることを知っていても、この地図の真の意味を知る者がいなかった。徐允敏さん以外は」

そこで魏無羨は、話を止め、うつむいたままの徐允敏に顔を向けた。

「おそらく古地図には最初は、5つの印が描かれていたはず。しかし、今は2つしかない。自警団の中で、黄卓統は地図の存在を知らなかった。知っていた者の中で、古代の仙師が使った文字を読めた徐允敏さんだけが、この古地図に書かれていた事が分かり、他の3つの祠の存在も知っていた。だから、この古地図を細工できたのも徐允敏さんです」

核心をつき、断言している魏無羨の話に間違いは無いようだった。
しかし、部屋にいた人々の大半は、まだ話が見えずに首をかしげていた。

「徐允敏が、古地図を改ざんした犯人だとして、なぜ、彼はそんなことをする必要があったのだ?」

五大富老の一人、金珍然(ジン・ジェンラン)が不思議そうに尋ねた。

「調査を攪乱させる為です」

黙秘している徐允敏のかわりに魏無羨が答えた。

「武団長は、今回の騒動で、姑蘇藍氏に思念文や手紙を出していました。だが、いくら出しても返事が無かった。それが、先ほどの術符で消されていた可能性があるという話です。それで、武団長は直接姑蘇藍氏を訪れて、藍宗主と俺に話をしました。その後、街に戻った武団長は、自警団の者たちに「姑蘇藍氏の者が手をかしてくれることになった」と告げました。それで、徐允敏さんは、姑蘇藍氏の仙師がこの古地図を見たら、その意味に気づくと考えたのでしょう。だから、それまで、本物の魔物出没を利用し、山の封印術と、祠が全部で5つあることを皆に知られたくなかった彼は、ひっそりと古地図の印を消したのです」

魏無羨の話が全部分かったのは、徐允敏以外では藍忘機だけのようだった。

自警団の者達は、今朝、魏無羨に古地図を見せられ、祠のことは説明されていた。
さらに、今までの会話で、朝の時点で、魏無羨が、すでに騒動の真犯人に目星をつけていて、その為に、徐允敏のいる前で、全てを明かさなかったことも理解した。

だが、今の魏無羨の話が分からず、ほとんどの者が、きょとんとなっていた。

…2つが5つだったとして。古地図の祠の数は、そんなに重要なものだったのか?

ざわつく団員よりも、魏無羨と郭洋(クオ・イアン)のやり取りすらも分からない顔をしていたのは、他の五大富老達だった。

「そもそも。この古い地図は、なんなのです?」

「古代にこの近くの山自体にかけられた封印術と、その媒体の意味。
そして、封印術の『中核』の印、石祠がある場所を記した地図」

首をかしげた五大富老の一人、揚辰(ヤン・チェン)の問いかけに、魏無羨ではなく、藍忘機が口を開いた。

…封印術?
…媒体?
…石祠?

「何もかもが初耳の言葉と話題です。
どうか、我々に分かるように、教えてくださいませんか?」

ますます首をかしげている面々を見て、魏無羨は、藍忘機と視線を合わせた。

…ここは、含光君の出番だ。山の封印術と石祠の説明は任せる。

藍忘機は、魏無羨の眼差しの意味に気づき、小さく頷いて見せた。
そして、口を開くと、山にかけられている『五行封印』の説明を始めた。




(続く)



お待たせしました。

「逢月撤灯」更新再開です。
11月中にはアップという公約は守れました♪←ぎりぎり過ぎる。

連日更新は難しそうなのですが、
続きの19話は、今週中のどこかで更新予定です。


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