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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「君への子守唄」(前編)です。

二次小説を読む注意点、コメント記入、「陳情令」の他の二次小説も
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とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

ドラマ「陳情令」、原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この二次小説は、「雨夜に追思為るは」と対になる藍忘機視点の物語です。

「続きを読む」からお入りください







君への子守唄(前編)





魏無羨が、不夜天の崖から消えてから数年後。


3年間の謹慎を終えた藍忘機は、寒潭洞を出て、雲深不知処での生活に戻っていた。

一見、何も変わらない日常。

藍忘機は、“含光君”の称号に相応しい君子ぶりで闇狩りを続けていた。

さらに、以前よりも増した藍忘機の闇狩りの姿は、
姑蘇だけでなく、他領地でも頻繁に目撃されるほどだった。

藍忘機が受けていた罰を知って、彼が失態を挽回しようとしているのだ、と影で噂する仙師達もいたが、大方の民は、『“逢乱必出”の含光君』と、敬い、崇めはじめた。

だが、そんな他者の称賛も藍忘機にとっては、何の意味も持たないものだった。

ただ、己の信念と欲するものの為。
藍忘機は世を飛び回り、人々を助けた。


これは、そんな、藍忘機の在りし日の出来事---。




長雨が続いている、曇天の下。

笠もつけず、一昼夜、他領地で闇狩りをしていた藍忘機は、
全身を、ずぶ濡れにして、姑蘇藍氏の仙府、雲深不知処に帰ってきた。

そして、冷泉にまっすぐに向かうと、
身を切るような冷たい水の中に入った。

藍忘機は、無数の戒鞭痕のついた背をすべて隠すほど、
冷泉の中に体を沈ませ、腰を落とすと目を閉じた。

冷たい雨にさらされた体を、さらに冷やすような行為。

身を清める為の禊といえども、他の仙師達はしない荒行だった。


しばらくして。


藍忘機は、冷泉に、何者かが近づいてくる足音に気づき、閉じていた瞼を開けた。

気配で、それが誰かも分かっていた藍忘機は、ゆっくりと振り向いた。

冷泉の岸辺に、傘をさした藍忘機の兄、藍曦臣が、立っていた。

「忘機」

藍忘機は、立ち上がると、藍曦臣に揖礼した。

「兄上。戻りました」

「ええ。闇狩り、お疲れ様でした」

藍曦臣は、頷くと、岸にあがる藍忘機の姿をジッと見つめた。

背についた戒鞭痕と、胸の刻印痕。
それ以外、体に目立つ外傷は見受けられない。

弟の体に、怪我が無いことを視認した藍曦臣は、安堵の表情を浮かべた。

そして、衣服を着こんだ藍忘機に、手に持っていた傘を差しだした。

「ありがとうございます。兄上」

冷泉あがりに、雨に濡れた衣服。

今さら、傘をさしても意味のないほどの姿だったが、
藍忘機は、藍曦臣からの傘で、降り続けている雨の冷たさを感じなくなった。

「この度の闇狩りは、どこまで行っていたのですか?」

藍曦臣が尋ねた。

「…窮奇道の近くです」

少しの間の後、伏し目気味に、そう答える藍忘機に、
藍曦臣は、何かを察し、小さな吐息をついた。

「遠くまで行きましたね。疲れたでしょう。
静室に戻ったら、十分に体を暖めてください」

藍忘機は、顔を上げ、藍曦臣の顔を見つめた。

雨の中、冷泉にいる弟を、わざわざ出迎えに来たのは、
労いの言葉をかける為だけでは無いだろう。

藍忘機は、兄の顔にそんな事を悟ると、「何かありましたか?」と尋ねた。

「ええ。忘機に伝えておきたいことがあります」

藍曦臣が言った。

「阿願が、今日の午後から体調を崩して寝込んでいます」

…阿願が?

藍忘機の顔色が変わった。

「容体は?」

緊迫した藍忘機の声色に、藍曦臣は安心させるように、かぶりを振った。

「高熱ですが、重い病というわけではありません。
ただ、外出先で悪天候に見舞われ、体を冷やしました。
その上、舟酔いという精神的な動揺が重なったためでしょう」

「舟酔い?なぜ、彼を舟に乗せたのですか?」

私が留守の間に、阿願に、無茶をさせたのですか?
闇狩りに行くには、まだ幼く、修行の経験も浅いというのに。

そう思ったように。
珍しく、瞳に感情的な色を浮かべた藍忘機に、藍曦臣はフッと口元を緩めた。

「闇狩りではありません。
阿願と街に使いに行った門下生達が、彼が喜ぶと思い、舟に乗せて観光させたのです。
阿願も、最初はとても楽しげな様子だったそうですが、その後、ひどく舟酔いしたようです」

藍曦臣は、共にいた門下生達に非は無い、という釈明も込めて藍忘機に伝えていた。

「彼らは、さらに、雲深不知処への帰路の途中で、急な雨に降られました。
共にいた門下生達の話によると、阿願は、急に何かに怯え、一歩も歩けなくなるほどだったそうです」

「阿願は、何に怯えたのです?」

「分かりません」

藍曦臣は、小さくかぶりを振った。

「共にいた者達がわけを問うても、阿願は、答えなかったそうです。

彼らが、全く動けなくなった阿願を仙剣に乗せて連れ帰った時には、熱も高く、阿願は、そのまま、救護室に運ばれました。私も彼の様子を見ましたが、闇の者が干渉した痕跡はありません。救護班の者も交代で彼を看ているので、心配はいりません。じき、熱も下がることでしょう」

闇の力や病気が原因で無ければ、落ち着けば体調は安定する。

弟子とはいえ、一晩中、遠地で闇狩りをしていた者に、わざわざ知らせるほどの容体では無かった。

だが、阿願は、ただの弟子では無い。

藍忘機にとって、阿願は、姑蘇藍氏門下の一人である前に、
大切な者の、忘れ形見のように残された特別な存在だった。

そのことを知っている藍曦臣は、
雲深不知処に帰ってきた藍忘機に、阿願の事を真っ先に教えに来たのだった。


「わかりました。兄上」

藍忘機が、藍曦臣に感謝の意で、拱手した。

「阿願のこと、お知らせくださり、ありがとうございました。
後ほど、彼に会います」

「ええ。阿願も、忘機の顔を見たら、もっと落ち着くことでしょう。
雲深不知処に戻った時は、熱にうなされながら、あなたの名を呼んでいましたから」

「……」

藍忘機は、藍曦臣に微かに頭を下げると、踵を返し、足早に冷泉から立ち去った。

それから、私邸の静室に戻った藍忘機は、
乾いた衣服に着替えると、すぐに救護室に向かった。


藍忘機が、救護室の扉を開けると、布団に横たわって眠る阿願の姿があった。

阿願の横に座っていた姑蘇藍氏の門下生は、藍忘機の姿を見ると、立ち上がり揖礼した。

「含光君様」

顔を上げた門下生に、藍忘機は「彼の容体は?」と尋ねた。

「沢蕪君様の治療で良くなっていたのですが、夕刻より、また少し熱が上がりました。
今は、落ち着いて眠っているので、目が覚めたら、食事と薬を与えます」

門下生の報告を受けながら、藍忘機は、阿願の傍らに腰を降ろした。

そして、阿願の腕を取ると、指で、その脈と気の巡りを探った。

…脈は速くなっているが、体内の気に不穏な乱れは無い。

藍忘機は、安堵すると、阿願の腕をそっと布団の中に戻した。
そして、近くに立っていた門下生を見やった。

「彼は私が看ている。君は、戻り、夕食をとりなさい」

「はい。含光君様」


救護係の門下生が部屋を出ていくと、藍忘機は、寝ている阿願の方に向き合った。
そして、寝息が苦しげに荒くなっている阿願の赤い顔を見つめた。

阿願は、姑蘇藍氏の門下生として、雲深不知処で修行していたが、まだ幼い身だった。

その上、元は姑蘇の出身で無いことからか、
姑蘇の風土に、慣れないところもあった。

生まれつき、仙師としての素質を兼ね備えていても、
このように体調を崩すことは、致し方無いことだと、藍忘機は思った。

…それに。


先ほどの藍曦臣の言葉を思い出した、藍忘機は、目を細めた。

『雲深不知処に戻った時は、熱にうなされて、あなたの名を呼んでいましたから』


…体調を悪くして、心細かったことだろう。

藍忘機は、阿願の額に置かれていた布を、そっと取ると、
近くに置かれていた桶の中の冷水に浸し、搾りなおした。

そして、冷えた濡れ布巾を再び、阿願の額に戻すと、
その顔に再び視線を向けた。


眠っている阿願の顔を見つめながら、藍忘機は、過去を思い出した。

温氏宗主なきあと、次に仙督を輩出した金氏の者達によって、
温氏領の人々は、仙術使いだけでなく、一般の民も虐げられていた。

虐殺場のようになっていた場所から、魏無羨に助け出され、
僅かに生き残った一族たちと乱葬崗に隠れ住んでいた阿願。

藍忘機が、初めて出会った頃の阿願は、もっと小さな幼子だった。

夷陵の街を歩いていた時に、突然、足にしがみつき、
そして、視線をあわせると、とたんに顔をゆがめ、大泣きした阿願。

周囲にいた者達は、藍忘機を阿願の父親だと勘違いし、
「早く、子どもを抱っこしてやらないか!」と、口々に責めたてた。

それから…。


『藍湛』


藍忘機を呼ぶ、“彼”の声が聴こえた。

『この子は、俺の子だ』

アハハハと笑って、男は、冗談を言った。

別れた時より、とてもやつれて見えた。
それなのに、以前と変わらない笑顔を、自分に向けていた男。


もう二度と、見ることは出来ないかもしれない。

そう思った笑顔がここにあった。


・・・あの雨の夜。

傘をさし、行く先で待っていた自分の前に、
馬に乗り現れた彼は一人では無かった。


『藍湛、俺を止めにきたのか?』


雨の音に紛れ、
そう問う、夢の中の男の声に、藍忘機はハッとなって意識を戻した。

やはり、闇狩りの疲労のせいだろう。

藍忘機は、阿願の寝顔を見守りながら、回顧しているうちに、
僅かの間、眠りに落ちていたようだった。

しとしとと。
救護室の外では、雨が、まだ降り続いている。


「うーん…ん~・・・」

雨音に混じり、阿願の苦し気な呻き声が聴こえた。
藍忘機は、眠っている阿願の首筋に、そっと手の甲をあてた。

…熱が高い。
治癒の術を施さなければ…。

藍忘機は、阿願の腕をとると、その手首に、己の霊気を注ぎ込み始めた。


「…怖いよ…。嫌だよ」

阿願は、高熱にうなされ、うわ言を発していた。

「阿願」

そばにいる藍忘機の呼びかけも、阿願には届いていない。

「ここにいてよ」

尚も、呟きを漏らす阿願に、
「私は、ここにいる」と藍忘機が答えた。

「さびしいよ」

目を閉じたまま、阿願は、イヤイヤと首を横に振った。
そして、悲しげに名を呼んだ。


「魏哥哥(魏兄ちゃん)」


阿願の口から出た言葉に、藍忘機は、目を見開いた。

過去の記憶を夢で見ているのだろうか。


「そばにいてよ」

阿願が、必死に何かを掴もうとするように、わずかに腕を上げた。

その手が空を掴むと、阿願は、今にも泣き出しそうな顔で言った。

「僕を置いていかないで」

『魏哥哥』

もう声には出なかったが、
阿願の唇が、再び、その名を紡ぐのを藍忘機は見た。


「・・・・・・」

阿願が深い眠りに落ちると、再び静寂が戻った。

藍忘機が注ぎ込んだ霊気が阿願の体に作用してきたのか、
阿願の表情が安らぎ、呼吸も楽になってきている。

それでも、藍忘機は、阿願の腕から手を離さずにいた。

血の通う阿願の温かな肌。

藍忘機は、阿願の腕をそっと手で撫でた。

傷つき、悲しい思いを封印したかのように、
阿願は、過去の記憶を失っている。

誰もいなくなった乱葬崗の住処に一人残されていた阿願。

一族の者達は、決して阿願を見捨てたわけではなく、
阿願と魏無羨を助けたいという想いからとった行動だった。

しかし、幼心に、家族も魏無羨もいなくなり、
自分一人が置いていかれたことが、阿願には分かったのだろう。

本人に自覚はなくとも、
こうして、心は、魏無羨といた時間を覚えている。

そして、記憶を失くしながらも、
潜在意識の中で、彼を求めている。

…それほどまでに、この子は、魏嬰を慕っていた。

藍忘機は、阿願の寝顔を切なげに見つめた。



数年前の窮奇道で。

降りしきる雨の下。
藍忘機は、佇んだまま、魏無羨の背を見送った。

世の情勢に逆らうように、
温氏の民を率いて、藍忘機の前から去っていった魏無羨。

それから。

…もう二度と、彼は、自分のいる場所には、戻ってこないかもしれない。
それでも、生きていれば、いつか巡り合える。

そんな想いで過ごし、
噂をたよりに夷陵の街を歩いていた、あの日。

幻聴でも、幻覚でもなく。
名を呼び、笑顔で現れた魏無羨に、瞠目し、立ちすくんだ。

その姿に、藍忘機は、自分の心が、喜びに打ち震えるのを感じた。

…ああ、私は、本当に彼のことを・・・。

そう実感するほど、胸の高鳴りを自覚していても、
彼の前で、そんな事を口にすることなど、もちろん出来なかった。

どんなに離れていても。今は会えなくても。

彼が無事に生き、その志を貫いているなら。
私は、自分の信じる道を行こう。

そして、いつか。
己の道と、彼の道が交わり、
共に歩ける日に、再びまみえたい。

そう願っていた。

しかし、秘めた想いを伝えることなく、
彼は、いなくなってしまった。

・・・阿願と、私を置いて。


藍忘機は、不夜天の崖の下に消えていった魏無羨の姿を思い出すと、
無意識に顔をゆがめた。

…彼は、この子が生きていることを知らなかったのだ。
もし、知っていれば、あんな行動はとらなかったはず。


『寂しいよ。そばにいてよ。 僕を置いて行かないで』

阿願の言葉が、藍忘機の胸を締め付けた。


―――君は、今、どこにいる?

「魏嬰…」


藍忘機はポツリと呟くと、阿願の手をとったまま、
俯き、目を閉じた。





(続く)



阿願(藍思追:藍願の幼少時の呼び名)。

おそらく、日本語翻訳の名でも、「藍愿」と書かれていることが多いと思います。(「陳情令」ドラマ、「魔道祖師」アニメ、ラジオドラマ等)

「陳情令」名称一覧にも書いたのですが、温氏の時の、思追の名は温「“苑”」。
同じ発音ですが、藍「“愿”」→を、このブログでは「願」の字を使用しています。

拍手コメントなどのお返事やあとがきは、
この二次小説更新が終わった後に書かせて頂きます。


ブログへのご訪問ありがとうございました。

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