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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「暗翳(あんえい)の灯」11話です。

二次小説を読む注意点、コメント記入、「陳情令」の他の二次小説も
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

ドラマ「陳情令」、原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この二次小説は、「希望を呼ぶ漆黒」の続編です


「続きを読む」からお入りください






暗翳の灯(11話)





魏無羨は、姑蘇の森の中を駆け、藍忘機の示す“五星光芒陣”の交点となる場所に結界石を設置していった。

幸い、魏無羨が5本全ての結界石を置き終わるまで、“供犠の燎火”から放たれた魔物と遭遇することは無かった。

魏無羨は、最後の1つだった結界石を地に埋め込むと、“供犠の燎火”の上で“五星光芒陣”を描いている藍忘機に意識を向けた。

『藍湛、結界石は全部設置した』

藍忘機が、琴“”忘機”をはじく音が、魏無羨の脳裏に響いた。

『了解』という意と、これから行う儀式への合図のようだった。

藍忘機が放った力は、“五星光芒陣”の光の線を通って、真下に位置する魏無羨が5か所に置いた結界石につながった。

魏無羨の近くの結界石が辺り一面を明るくするほど輝いた。

おそらく、他の4つの石も同じ現象になっているのだろう、と魏無羨は思った。

ふと、魏無羨の耳に、琴“忘機”がいつも奏でるのとは違う音色が聴こえた。

それは、かつて魏無羨の住んでいた蓮の湖の水が波打つような響きでもあり、光が雨に反射し、虹色に光っている時に感じるような不可思議な印象の音階だった。

美しく幽玄な音色に魏無羨は全ての感覚を支配されたように、藍忘機の方を見上げたまましばしの間立ち尽くした。

音は次第に大きくなり、同時に、上空に描いていた“五星光芒陣”の図が真下に降りてきた。
そして、“五星光芒陣”の光の点が魏無羨の置いた結界石とぴったりと合わさった時、魏無羨にも見えていた“供犠の燎火”が消えた。


「藍湛」


魏無羨の呼びかけに、頭の中で、藍忘機が答える声がした。

『魏嬰、“五星光芒陣”の儀式は成功した。“供犠の燎火”は消滅し、魔の乱葬塚は完全に封印した』

『良かった・・・』

魏無羨は、ほっと胸をなでおろすと、大きく肩で息をついた。

結界石を置く為に走り続け、その前には、“供犠の燎火”の周囲に結界をはるために力も使っていた。
疲労で、体全体がまるで鉛のように重かったが、魏無羨にはまだやることがあった。

「藍湛、俺はこれから、聶氏の仙女の後を追う。仲英が彼女につけた印の術符を持っている」

魏無羨は、脳裏に藍忘機の制止する気配を感じた。

『君は力を使い過ぎている。一度、こちらに戻って休め』

『いや。藍湛、追跡が遅くなれば彼女は姑蘇から出てしまうかもしれない。彼女は“封印の書”のありかを知っている。早く取り戻さなくては』

『魏嬰』

魏無羨には、藍忘機が小さくため息をついたのが分かった。

魏無羨が自分で言い出したことは、止めても聞かないということは分かっているようだった。

『これから兄上達が、森に逃げた魔物たちの闇狩りに向う。私も“魔の乱葬塚”に念のため多重の結界を施した後、そちらに行く』

…だから、それまで無茶をするな。

そう続く藍忘機の言外の言葉も魏無羨には伝わった。

『ああ、藍湛も』

“供犠の燎火”の元を離れる時に藍曦臣から聞いていた話が魏無羨の頭をよぎっていた。

“五星光芒陣”の術には多大な霊力を消耗すると。
ならば、今の藍忘機もかなり疲労しているはずだった。

しかし、止めても、藍忘機は動くだろう。
同じく、疲労しながらも闇狩りに向う兄や門下生の為にも。
そして、姑蘇のため。これからの世の為に。

そんなことが分かった魏無羨は、

…藍湛こそ、休んで欲しい。という、想いを考えには乗せず、心の中で思った。

これ以上、藍忘機への想いを深くすれば、思念の術から己の気持ちが藍忘機に伝わってしまうかもしれない。

そう思った魏無羨は、想いを振り切るように、仲英から預かった術符を手に駆けだした。

聶氏の仙女のいる場所が術符を通じて魏無羨には見えていた。

やがて、魏無羨は、森の奥深くで、聶氏の仙女の姿を遠くから捕えた。

てっきり、姑蘇の森から離れ、逃亡する為に街の方に向かうと踏んでいた魏無羨は内心で驚いた。

聶氏の仙女の行先は姑蘇の奥地だった。

…なぜ、こんなところを?

聶氏の仙女の後ろ姿を離れた場所から隠れて観察していた魏無羨は、不思議に思いながら、距離を縮めていった。

出来ることなら戦闘は避けたい。

術と体力を消耗していた魏無羨はそんな考えで、聶氏の仙女に静かに近づいていたが、急変した事態に、気配を露わにした。

聶氏の仙女の前に大きな体の魔獣が立ちはだかった。

一見、巨大な黒い熊のようななりだったが、表皮は強固な鱗で覆われ、角を持ち、鳥のような手足の先には鋭く長いかぎ爪がついている。

魏無羨も見たことが無い古代の魔物だった。

…先ほど、“供犠の燎火”から出た魔獣か。

『藍湛、今、目の前に魔獣がいる。これは、藍湛が、この前話していた闇の四魔獣の1体なのか?』

魏無羨は、魔獣の姿の映像のイメージを藍忘機に送った。

『違う』

藍忘機の返事が返ってきた。

『だが、“供犠の燎火”から出た魔獣なら力は計り知れない。魏嬰、一人で立ち向かうな』

魏無羨も一人だったなら、藍忘機の声に従って行動していただろう。
だが、魔獣は、聶氏の仙女の存在をしっかりと目でとらえ、餌食にしようと身構えていた。

聶氏の仙女も魔獣の力の強さを計り、太刀打ちできない相手だと悟ったようだった。
だが、方向を変えて魔獣から逃げる道を選ばず、仙剣を抜き、逆に魔獣に足を進めていた。

…まずい!

魏無羨は、腰帯から陳情を抜くと、口に構えた。

そして、闇の者を操る音色を奏でようとしたが、仙剣を手に魔獣にむかっていった聶氏の仙女の動きに遅れをとった。

まるで、自ら相手の懐に飛び込むように、聶氏の仙女は魔獣の真正面に突き進んだ。
そして、魏無羨の目の前で、その体を鮮血で染めた。

魏無羨は、衝撃で瞠目し、陳情を一瞬、口元から外したが、倒れた仙女の上に魔獣が、さらにかぎ爪を振りかざす姿に、陳情を構えなおした。

魔の邪気を含んだ陳情の音は、魔獣の動きを縛り付けた。

魏無羨が魔獣と対峙したまま、しばらく陳情を奏で続けていると、魔獣は、ゆっくりと後ずさり始めた。

そして、咆哮をあげると、身を翻し、魏無羨の陳情の音色を避けるように遠ざかっていった。

魏無羨は、魔獣の気配が森の奥に完全に消えたことを確認すると、地面に伏している聶氏の仙女を助け起こした。

首元から前身を、魔獣のかぎ爪で深く切り裂かれた仙女の衣は真っ赤に濡れていた。

仙女の口から浅く苦し気な息が漏れている。

魏無羨は、手持ちの布で仙女の傷口を押えたが、もう手の施しようが無い、ということは一目で分かっていた。

魏無羨には聶氏の仙女が答えられなくなる前に聞かなければならないことがあった。
しかし、魏無羨が話したのは、別のことだった。

「仲英からの伝言だ。自暴自棄になるくらいなら、俺と一緒に旅をしよう。だそうだ」

暗がりの中、仙女の血の気を失った白い顔が浮き上がっていた。
魏無羨の言葉に、聶氏の仙女がうっすらと嘲笑した。

「誰が…あんな人たらしと・・・」

「でも、あいつはいいやつだ。それに、仲英は、君にはいつも甘かった。」

魏無羨は、仙女をじっと見ながら続けた。

「仲英の顔に傷をつくったのは君だろう?そして、さっきも捕えていたのに、薬を浴びるような隙を見せていた。彼の闇狩りの腕を見たことがあるけど、あんなミスを何度もするようなやつじゃない。仲英は君に心を許していたように見えた」

話していることは、魏無羨の勝手な憶測だった。
だが、作り話では無く、魏無羨は本心から想像していたことを仙女に語っていた。

「仲英は、君の動きを読んでいたのに、探るためだけじゃなく、君を止めたくて一緒にいた。君も本当はこうなる前に彼に止めて欲しかったんじゃないのか?だから、仲間達に、仲英に手を出すなと言っていたんだろう?」

「・・・誰にも止められはしなかった」

仙女が苦しい息の中で言った。

「私達は、皆、幼い頃に身寄りを無くした仙師だ。“供犠の燎火”の種火に飛び込んだ、あの金氏の男も、金光瑤様という、唯一の支えと希望を失って、絶望し、死に場所を求めていた。利用されていたとしても、この世で、私たちを顧みてくれたのはあの方だけだった。私も、もうこの世に未練など無い。最後に姑蘇藍氏の双璧に一矢報いて、含光君を仙督の座から降ろすことが出来るなら、本望だ」

自ら世を去った金氏の男の行為と目の前の仙女に、魏無羨はかつての不夜天の自分を重ねた。
そんなイメージが藍忘機に伝わっていることも忘れ、魏無羨は、一瞬やるせない想いに支配された。

だが、今、仙女に語りたいことはそんなことでは無い。
魏無羨は、ゆっくりと口を開いた。

「君もさっき目にしただろう。“供犠の燎火”は、仙督の術によって完全に消え、魔の乱葬塚も封じられた。君たちのしたことは未遂に終わったんだ。だが、君の想いは仙督に届いている」

魏無羨は、仙女への語らいと想いを、藍忘機にも感じられるように口にした。

「仙督は…含光君は、君たちのような者が苦しまない世の為にこれからも動いていく。“魔の乱葬塚”の前で、彼は君にそう約束した。信じていい」

魏無羨の言葉に聶氏の仙女が眉をしかめた。

「どうして信じていいと?何を根拠に言える?」

「含光君は、“魔の乱葬塚”の封印に生贄を使わない術をつかった。彼は、大きな災いを防ぐためだろうと、一人の犠牲を必要とすることは絶対にしない」

…仙督になっても。これからもそうすると、俺は藍湛を信じてる。

魏無羨の声に、聶氏の仙女だけでなく、思念の術を通じて、魏無羨の考えが伝わっているだろう藍忘機も無言になった。


「・・・だ」

ややあって、苦し気な吐息と共に仙女が口を開いた。

「…崖のそば・・・大きな2本の木の間を小さな滝が落ちている。その滝の内側の石の奥に、封印の書を隠している。他の者と…私が持っていたので2冊。それで金光瑤様からあずかっていたのは全部だ。暗号で書かれていたが、私が不浄世で密偵をしていた時、当時の聶宗主の部屋から暗号の解き方を盗み見て知った。解読を知るのも私だけだ・・・」

「わかった」

魏無羨は、仙女にうなずくと、優しい顔を向け「ありがとう」と言った。

聶氏の仙女は、魏無羨の礼に驚いたように、わずかに目を見開くと、「私に、ありがとう、と言ったのは、密偵が成功した時の金光瑤様だけだ」と言った。

「ごめん、とありがとう、は、人が生きていく上で大切な言葉だと、俺は大事な人から教わった」

魏無羨の言葉に仙女は小さく頷いたように見えた。
そして、己の懐に手を差し入れると、裂けた犬の首輪を取り出し、魏無羨に差し出した。

「これを玉翠花に・・・すまなかったと。そして、仲英に・・・」

仙女が、微笑した。

それは、あざけるような笑みでも、自嘲した顔でも無かった。

「…ありがとう、と・・・」

そう最後に言った仙女の表情はやわらかかった。
そして、魏無羨の腕の中で絶命した彼女の顔は穏やかだった。

おりしも、天から涙のように落ちて来た雨に、目を閉じた聶氏の仙女と魏無羨の頬が濡れた。

魏無羨は仙女から受け取った、玉家の犬の屍傀儡がしていた首輪を懐の中に仕舞った。

それから魏無羨は、仙女の体を雨の触れない木陰の下に横たえると、周囲に、獣たちに襲われるのを防ぐ術符を施し立ち上がった。

「すべてが終わったら、安らかに眠れる場所に連れていく。それまでここで待っていてくれ」

そう言って、魏無羨は聶氏の仙女が話していた“封印の書”の隠し場所に駆けた。

場所のイメージは藍忘機が伝えてくれていた。

『姑蘇の森で、崖付近にある大きな木の間に滝が流れる場所。おそらく、そこから北西方向に7里ほど離れた所のことだ』

「わかった」

そう答え、走りながらも魏無羨の心の中に、先ほどの仙女の言葉や、“供犠の燎火”を解放した男の最後の声が響いていた。

…暗闇の灯・・・。絶望の中で彼らは死に場所を探していた。

俺が、もっと早く気づいていたら・・・。彼らの目的が復讐よりも、絶望から逃れる場所を探していたことだと分かっていたら。何か出来たかもしれない。

『魏嬰、君のせいでは無い』

己の中の混迷した想いを振り切るように駆けている魏無羨の脳裏に藍忘機の声が届いた。

「藍湛・・・」

『彼らのような人を世から出さない。
その為に、これから出来ることをする』

「うん…」

魏無羨は、微かに頷いた。

魏無羨の脳裏に、金光瑤、そして、薛洋の姿も一瞬浮かんで消えた。

…藍湛なら。・・・含光君なら。

彼らのような境遇の人達を見捨てず、そして、仙督として、皆がそうする世に導いていくことだろう。

俺は、そんな藍湛を・・・。

そう考えかけた魏無羨は、目の前の光景にハッと立ち止った。

森を抜けた先に、少しひらけた場所があった。
見晴らしの良いところだったが、魏無羨には、その先が広く切り立った崖であることが分かった。

右方向に、上部が重なるように生えた大きな木が2本確認できた。
その間を小さな滝が流れている。

…先ほど彼女が言っていた場所だ。

魏無羨は、滝の方に一直線に駆けると、岩山を飛び越え、滝の裏側を覗き込んだ。
明かりの術符をかざすと、濡れる岩壁に一か所、不自然に挟まった石があった。
魏無羨は手を差し入れると、その石をとりのぞいた。

空洞になっていた岩壁に、封印術のかかった袋が置いてあった。

魏無羨は、袋を手に取り、封印を解くと、中をあらためた。

入っていた書物の中は暗号で書かれていて魏無羨には読み解くことが出来なかったが、別に目にしていた仙督預かりの書物と酷似していた。

「藍湛、見つかった。おそらく“封印の書”だ」

魏無羨は藍忘機に語りかけたが、返答が無かった。

…思念話の術の効力が切れたのかな?

魏無羨は、そう考えると、書物を袋に入れ、懐の中にしまった。
そして、折しも、強く降りだしてきた雨をさける場所を探し周囲を見回した。

魏無羨は、岩山の上から見える崖下にそっと目を落とした。
谷間をえぐり取ったような地形。
夜の闇の中で、その高さは分からなかったが、向こう側に底無しの深さを感じた。

…まるで、奈落の底に続く、不夜天のあの断崖のよう。

魏無羨は、ゾクリとした悪寒を感じて身震いした。
一瞬、雨に濡れているせいだと思った魏無羨だったが、違った。

魏無羨の後方に、先ほど遭遇した魔獣が立っていた。

魔獣は、目の前の魏無羨を、己を不愉快にさせた魔笛の持ち主であると認識していた。

敵意と殺気をみなぎらせた魔獣は咆哮すると、魏無羨に向って襲いかかってきた。

魏無羨は、振り向きざまに魔獣に霊符を投げつけたが、強大な妖気に阻まれ、体に触れる前に、粉砕されていた。

魔獣の動きは素早かった。

大きなかぎ爪の手で魏無羨を引き裂こうと、攻撃を避けながら霊符を繰り出す魏無羨を執拗に追った。

降りしきる雨と闇に視界を奪われ、方向感覚の鈍った魏無羨が気づいた時には、その体は、崖のそばまで追い詰められていた。

魏無羨は腰帯から陳情の笛を抜き出すと口にあてた。

だが、陳情は、激しく降る雨のせいで、音もかき消え、その力を半減させていた。

魔獣は、不機嫌さを露わに狂ったように暴れると、魏無羨めがけて突進してきた。

魏無羨の投げた縛りの術符は、魔獣の足の動きを止めてはいたが、魔獣の振り上げたかぎ爪は魏無羨の左腕を掠め、魏無羨はその衝撃で陳情を手放していた。

…しまった!

魏無羨は、崖下に投げ出された陳情の笛に手を伸ばしたが、無情にも陳情は暗黒の底に消えていった。

さらに雨でぬかるんでいた地面が、魏無羨の足元から崩れた。

魏無羨の体は、崩れた土砂ごと、崖下にほおり出された。

魏無羨が声にならない叫び声をあげた時、空でもがいた手首が誰かに捕まれた。

藍忘機だった。

藍忘機は、崖端で伸びていた細い木の幹を、仙剣を持つ手で抱え、身を乗り出して、もう片方の手で、魏無羨の右手首を掴んでいた。

「藍湛!」

ほっとした魏無羨だったが、すぐに間近で見た藍忘機の顔色の悪さに動揺した。

藍忘機は、余裕の無い、必死の形相で魏無羨の体を片腕で支えていた。

普段、牛や馬を軽々と抱えられるほど剛腕の藍忘機が、今は魏無羨一人の体重も持ち上げられないようだった。

“供犠の燎火”を封じるために行った“五星光芒陣”の術の儀式で、藍忘機の霊力と体力は、もうすでに限界を超えていることを魏無羨は知った。

…こんな体で、来てくれた。

魏無羨は、胸の内を熱くし、潤んだ目で藍忘機を見上げた。
濡れた頬に伝うのは、雨だけでは無い。

…でも、このままでは、藍湛も危ない。

「藍湛、手を離してくれ」

魏無羨の言葉に、藍忘機が険しい顔でかぶりを振った。

『離さない。・・・今度こそ』

そう頭の中で響く藍忘機の声に魏無羨はハッとなった。

思念話の術が、まだ効いていた。
藍忘機の心の声が、直接、魏無羨の頭に伝わってくる。

『もう二度と離さない』

藍忘機の心の声がまた聞こえた。

脳裏に、藍忘機が思い出している記憶の映像が浮かんだ。
藍忘機の手を振りほどいて、不夜天の絶壁から落ちていく魏無羨の姿が。

…藍湛。

魏無羨が思わず感傷にふけりそうになった時、
藍忘機の後ろに蠢く影が見えた。

先ほどの魔獣だった。

今にも飛びかかり、藍忘機を鋭く長い爪で突き刺そうとしている。

「藍湛、危ない!」

魏無羨の声の前に、気配に気づいていた藍忘機が横目で魔獣を一瞥した。

魔獣の手のかぎ爪が藍忘機の体の上に振り下ろされた。

…!!


次の瞬間、魏無羨の体が落下した。

藍忘機が手を離している。

急速に崖下に落ちていく感覚をとらえながらも、
起きたことが信じられないように魏無羨は目を見開いた。

崖の上で、うなり声をあげ、こちらを見下ろしている魔獣の姿が小さくなっていく。

藍忘機が手を離したのは、左手でつかんでいた崖端の木の幹だった。

魔獣の手がかかる直前、藍忘機は木から手を離し、崖の上から身を投げていた。

魏無羨の右手首を握ったまま、一緒に落下している藍忘機の姿を、魏無羨は呆然と見上げた。

急降下しながら、藍忘機は握っている魏無羨の手首ごと、魏無羨の体を己に引き寄せると、
その体をしっかりと守るように両腕で包んだ。

藍忘機が、魏無羨の体を抱いたまま、崖下を一緒に落ちていく。

驚愕の中、魏無羨は、自分の視界も意識も急速にぼやけていくのが分かった。

…力を使いすぎた。
このままでは二人とも…。

魏無羨は、手に力を集めようとしたが、術が発動できるほどの強さでは無かった。

…藍湛だけでも助かってくれ!

そんな強い想いをいだき、再び必死で術を手に込めた時、
魏無羨の左手首にはめた数珠輪が一瞬光った。

そして、黒玉が空にはじけ飛んだ。

それが、魏無羨が気絶する直前に目にした最後の光景だった。

藍忘機に身を預けた魏無羨の体が一気に脱力した。


…藍湛――― 。


魏無羨の心の声に呼応するように、藍忘機が魏無羨の体をきつく抱きしめた。

その感覚だけを覚えて、魏無羨は、藍忘機の腕の中で意識を失った。





(「暗翳の灯」終わり。シリーズ話の次作品に続く)




「暗翳の灯」は、今回が最終話です。
続編は、タイトルを変えた次作品になります。

(お知らせ)

明日より「みつばのたまて箱」の更新は少しお休みします。
「暗翳の灯」のあとがきや、これまで頂いた拍手コメントのお返事はブログ再開後にさせて頂きます。


ここまで、みつばの二次小説を読んでくださった方、ありがとうございました!

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