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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「暗翳(あんえい)の灯」9話です。

二次小説を読む注意点、コメント記入、「陳情令」の他の二次小説も
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

ドラマ「陳情令」、原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この二次小説は、「希望を呼ぶ漆黒」の続編です


「続きを読む」からお入りください






暗翳の灯(9話)





藍忘機は、岩窟の前で手を振っている魏無羨の方にまっすぐに向かってきた。

高い茂みを飛び越え、魏無羨の目の前にふわりと降り立った藍忘機に、姑蘇藍氏の門下生達、
そして、清河聶氏の若者と玉翠花が続いた。

岩窟から藍思追と、温寧も出てきた。

藍忘機は、魏無羨に小さく頷いた後、思追の方を見やった。

「含光君様」

しずしずと前に出た思追が、藍忘機に揖礼した。

「大事ないか?」

そう尋ねた藍忘機に顔を上げた思追が「はい」と答えた。

藍忘機が小さく頷いた。

藍忘機の表情に変化は無かったが、藍忘機をよく知る者たちは、藍忘機が弟子の無事な姿に安堵していることが分かっていた。

姑蘇藍氏の重役を含む門下生達も、後輩の無事を喜び、藍思追をねぎらうように頷いていた。

しかし、そんな師匠と弟子、先輩たちの感動的な再会のそばで、
異なる空気を放っている二人に、魏無羨だけでなく周囲の者たちも気づいた。

温寧の鎖によって縛られている二人の男達ではない。

清河聶氏の若者が、玉翠花の夜露に濡れた髪の毛を手布巾で優しく拭っていた。

それが、ただの護衛がする以上の行為であることは、誰の目にも明らかだった。
しかも、玉翠花が清河聶氏の若者を見つめる熱い眼差しは、はたから見ている者の方が気恥ずかしくなるほどだった。

キョトンとした顔で、二人を凝視していたのは温寧だけで、そのことに気付いた藍思追をはじめ、姑蘇藍氏の門下生達も、素知らぬふりで二人から視線を外していた。

仲睦まじい二人の様子に魏無羨も口元を綻ばせたが、藍忘機の方に近寄ると互いに同じ事を考えていることが分かった。

「玉家の主の母親の居場所が分かった」

藍忘機の言葉に魏無羨は、表情を引き締めた。

「問霊に応えた?」

「ん。彼女は、姑蘇の森の中に身を捕らわれている。今そばにいるのは、不浄世で見た事のある仙女だと語っていた」

「仲英と同じ時期に姑蘇に来た清河聶氏の仙女だな」

「ん」と頷いた後、藍忘機は、魏無羨の後方に意識を向けた。

「“彼”はどこにいる?」

「仲英は、逃げた金氏の男を追っている」

眉をひそめた藍忘機に魏無羨は取り繕うように「逃げた男のことは仲英に任せよう」と言うと、懐から巻物と書物を取り出した。

「思追を連れ去ったこいつらが持っていた物だ。魔獣の召喚符だった巻物は封じた。書物は、暗号で書かれている。藍湛には、これが読めるか?」

藍忘機は、魏無羨から手渡された巻物と書物の中身をあらためた。

そして、書物の頁の符号を、霊力を溜めた指先でなぞると、魏無羨に頷いて見せた。

「巻物は、“使い魔”を操る召喚符。こちらは、代々の仙督が引き継いできた書物の1つだ」

藍忘機が、温寧が鎖で縛っていた男達の方に近づいた。
魏無羨の目の合図で、温寧が男達の口元の鎖を緩めると男達は「含光君」と声を発した。

「お前達のことは知っている」

続けて、藍忘機が口にした仙門の名に間違いは無かったのだろう。
男達は、気まずげに顔を見合わせた。

「これらは金光瑤から渡されたものか?」

巻物と書類を手にそう問う含光君に、男達は「そうだ」と開き直った態度を取った。

「金光瑤様が、追われるように金麟台を出る時に、お預かりした物だ。それらを、これからの仙界の為に役立てろとおっしゃられていた」

「魔獣を解き放ち、姑蘇藍氏の者を襲い、玉家のお嬢様やおばあさんを攫うことがか?」

魏無羨が横から口を出した。

後方で、玉嬢と清河聶氏の若者。思追と姑蘇藍氏の門下生達が佇み、藍忘機と魏無羨。男達の会話をじっと聞いていた。

魔獣の出現によって、最初に編成されていた姑蘇藍氏の隊の者達のほとんどは負傷していた。
命は取り留めていたが、重傷を負った者もいた。

自分たちを囲む姑蘇藍氏一門の鋭い眼差しに対抗するように男達が魏無羨をキッと睨みつけた。

「仙督の犬に成り下がった夷陵老祖に答えることなど無い」

・・・い、犬?

話の内容より、犬という言葉に嫌そうに反応した魏無羨に、別の男が続けた。

「夷陵老祖、見損なった。お前は、そんな権力から離れたところにいる者だと思っていた。
それなのに、献舎されてからのお前は、雲深不知処で仙督に大人しく飼われている。
夷陵老祖は、献舎され、体だけでなく、その魂さえも変貌させてしまった、ただの傀儡だ」

魏無羨は、男の悪態に大きくため息をつきたい気持ちになった。

昔から世間に、さまざまな誤解を受けてきた魏無羨だったが、今はそういう風評が立っていることは耳にしていた。
その事自体、魏無羨自身は、全く気にしていなかったが、隣にいた藍忘機の雰囲気が一変した。

藍忘機の空気が急激に冷え込んだのを皆が感じる前に、男達が口を閉じ、目を白黒させながら、一言も発せられない状態になっていた。

男達に藍忘機が禁言の術を発動させたのが分かった魏無羨は、「藍湛」と呼んでかぶりを振った。

「雑音は聞き流せばいい。こいつらに必要な事を聞き出して、早く玉家のおばあさんを助けに行こう」

魏無羨の言葉に、藍忘機が禁言の術を解除した。

しかし、男達の魏無羨を愚弄した言葉に反応したのは藍忘機だけでは無かったようだった。

急に強くなった鎖の縛りに、禁言の術を解かれた男達が今度は、呻き声をあげていた。

「温寧・・・」

魏無羨が吐息交じりに名を呼び、温寧の方に視線を送ると、男達を締め上げていた鎖がようやく緩んだ。

「私の話を聞け。今、この場でお前達の主だった者の話はしない。」

藍忘機の静かな声が岩窟にこだまし、鎖に縛られたまま男達が藍忘機の前に膝を折った。

「“封印の書”を持っている者がいるなら教えろ。あれは扱いを間違えれば、世に大きな災いをもたらす危険があるものだ」

「そんな事は知っている。だから姑蘇にある一番大きな“魔の乱葬塚”の封印を解こうとしたんだ」

もう一人の男が「やめろ」と言う前に、男がそう口走っていた。

…“魔の乱葬塚”?

魏無羨には、昔、古文書で少し読んだだけの知識だった。
だが、男の話が分かった藍忘機の顔が緊迫した色に染まった。

「藍湛、“魔の乱葬塚”というのは、複数の魔物たちを封印した塚のことを差している。だけど、以前、俺が生きていた時は、それがどこにあるのか聞いたことも見たことも無かった。それが姑蘇の中にあるのか?」

「存在するということは知っていた」

魏無羨の問いに藍忘機が答えた。

「姑蘇だけでは無い。各地のどこかに、“魔の乱葬塚”は存在する。だが正確な位置は、それを記した“封印の書”と共に不明となっていた」

「今、藍湛が持っている書には書いてなかったのか?」

「これは、違う」

…別の者が所持しているというのなら、あの逃亡した男か清河聶氏の仙女か・・・。

魏無羨が考えを巡らせている間、藍忘機は、男達にゆっくり近づいていった。

「“封印の書”はどこだ?」

藍忘機が手にしていた仙剣を抜くと、沈黙していた男達に、その切っ先を向けた。

「言え」

天女のような風貌の藍忘機から、極寒の地底から響くような冷たい声が男達に放たれた。

鎖に縛られた男達だけでなく、姑蘇藍氏の門下生達と清河聶氏の若者、玉翠花まで、その声に緊張を走らせた。

いつも落ち着いている藍忘機の、ここまで切迫した雰囲気は珍しい。
魏無羨は、これが、よほどの事態だということを悟った。

緊迫した空気の中、男達は観念したように口を開いた。

「俺達はそれしか持っていない。“封印の書”は、玉家の屍と一緒にいる、清河聶氏の仙女が持っている」

…藍湛。

魏無羨の眼差しに藍忘機が頷いた。
そして、姑蘇藍氏の門下生4名に男達を雲深不知処に連れていくように指示した。
玉翠花が、懐から眠り薬を出し、男達に吹きかけ、眠らせると、温寧は鎖を外した。

姑蘇藍氏の門下生達が、術で縛りなおした男達を抱え、仙剣で雲深不知処に向って飛び立った後、岩窟にいた者達は、藍忘機と魏無羨を先頭に走りだした。

「魏嬰、“魔の乱葬塚”は、ただの封印塚では無い」

走りながら、藍忘機は隣で駆ける魏無羨に説明した。

「古代に、力が強すぎて滅することが出来なかった魔の者の邪気に引き寄せられた複数の妖魔や魔獣たちも、共に封印した所だ」

「そんな物騒な塚なら、かなり強固な封印をほどこしているはずだ。見つかりにくい結界も張ってあったはず。位置が分かったからといって、それらを簡単に解けるものなのか?」

「“封印の書”があれば可能かもしれない」

魏無羨の疑問に藍忘機自身も確証の無い答えを導きだしていた。
藍忘機自身、失われた“封印の書”の中に記されていた事を全部知っていたわけでは無かった。

「“封印の書”は、各地で封印された魔の者の中でも、とくに強大な力を持つ者達の場所が記されている。それらを封じる方法と解く術も記されている」

「藍湛、俺、嫌な予感がする。 “生贄”は、さっき聞いた “魔の乱葬塚”の封印に関係あるのかもしれない」

強大な魔の者を封印するには、それなりの代償を払う。
おそらくただの封印や結界では無いだろう。

…そんな封印を解くには、時間もかかる。玉翠花と思追の連れ去りを別々に行ったのも、沢蕪君を別の場所の闇狩りに引きつけたのも・・・。

魏無羨は、脳裏に浮かんだ答えに、ハッとして藍忘機の顔を見やった。

「藍湛、玉家のおばあさんが危ない」

魏無羨と同じ考えだというように藍忘機が無言で頷いた。

…どうか。間にあってくれ。

一気に速度を上げた魏無羨と藍忘機に続いて、温寧、藍思追、清河聶氏の若者と玉翠花、そして、姑蘇藍氏の門下生が続いた。

やがて。

目の前の闇の中で、仄かな灯が見えた。
それは、辺りの木々を赤褐色の光で覆い、不気味な色に染め上げていた。

灯の元にいる者には、こちらの動きはすでに伝わっているのだろう。

魏無羨と藍忘機達は、気配を隠さずに、灯の方に近づいていった。

森を抜けた先で、その場所だけが広く平地になっていた。
その中央に、いくつもの大きな岩が、竈のような形で積みあがっていた。
さらにその中心に、20尺ほど(5メートルくらい)の先端の尖った大きな岩が3つ、地面から突き出たように不自然に置かれている。
焚火色の灯りは、3つの岩の間から漏れていた。

岩を取り囲むように、円形に結界陣が書き込まれ、等間隔に、何体もの魔物の屍が地面に横たわっている。もともと張られていた結界とは異なり、これは、作為的に張られた“魔”の要素を含んだ結界だった。

魏無羨だけでなく、藍忘機も。そして、そこにいた全員に、これが何かの儀式の準備だということが分かった。

「出てこい」

魏無羨が岩陰に向って言った。

「玉家のおばあさんを連れ、“封印の書”もお前が持っているのは分かっている」


灯に照らされた長い影が蠢いて、岩陰から人が現れた。

あばら家から逃走した金氏の男だった。

玉翠花がハッとなって「おばあさま!」と叫んだ。

金氏の男が歩きながら、羽交い絞めするように体を抑えていたのは、玉翠花の祖母の屍傀儡だった。
意識が混濁している屍傀儡は、鎖で強く縛られながらも、もがくように暴れていた。

「やめて。おばあ様に乱暴なことをしないで」

駆け寄ろうとした玉翠花を清河聶氏の若者が必死にとどめていた。
岩の周囲に張られた魔の結界に不用意に触れるのは危険だった。

金氏の男の手に仙剣が握られ、玉翠花の祖母の首元にあてられている。
すでに失っている命とはいえ、目の前で身内の体をぞんざいに扱われることに耐えられない、という様子で玉翠花は涙目になっていた。

魏無羨は、金氏の男の後ろから出てきたもう一人の影に意識を向けた。
それは、姑蘇の街で仲英と共にいた仙女だった。

仙女の容姿は、以前、魏無羨が街で見かけた時のまま、整った美しさだった。
だが、妖しい灯に背後を照らされ、影になった顔は、鬼女のような気迫と執念に満ち、恐ろしいまでの殺気を醸し出していた。

妖気すら纏った仙女の姿に、仙女を知っていた清河聶氏の若者と玉翠花だけでなく、姑蘇藍氏の門下生達も息をのんだ。

「含光君」

聶氏の仙女は、藍忘機の顔をひたと睨みつけていた。

「“封印の書”はどこにある?」

藍忘機が聶氏の仙女に問うた。

「金光瑤が持っていた、仙督預かりだった古代の書付のことだ。君が持っていることは聞いている」

「あの書物なら、ここには無い」

仙女が、言った。

「“魔の乱葬塚”の封印を解く方法を読み解いた後、別の場所に隠した」

「別の場所とはどこだ?」

「私にしか分からぬところだ」

・・・お前になど渡さない。

聶氏の仙女がそう、口の中で呟くのが、魏無羨には分かった。

仙女が藍忘機を指差した。

「含光君。我らの主を陥れ、その座を奪いしこと。世の者達が何と言おうと、我らは許さない。お前の目の前で、世間で婚約者と噂されている女と弟子を同じ目に合わせてやりたかったが、邪魔が入ることは分かっていた。せめて、そこで“供犠の燎火”が灯るのを見せてやる」

「供犠の燎火(くぎのりょうか)・・・」

藍忘機は、仙女の言葉で、事の真相を完全に理解した顔になった。

「それがどんな物か分かっているのか?」

そう問う藍忘機に聶氏の仙女がせせら笑った。

「魔の乱葬塚の封印を破る、生贄を捧げる儀式の火だ。
封印している魔物を完全に解き放てば、少なくとも姑蘇は壊滅するだろう。
それに、含光君も知っているのであろう?一度、“供犠の燎火”を起こせば、再び封印を施すのに、新たな生贄が必要なことを。あの“封印の書”にもそう書かれてあった」

無言で返す藍忘機の横顔に、魏無羨は聶氏の仙女の言葉が真実であることを悟った。

「なぜ、そこまでする必要がある?仙督に不満があるなら、直談判すれば良かった」

横から、そう言った魏無羨を一瞥した仙女は、「あの男も同じことを言っていた」と小さく口にした。

「だが、我らのような者の話など、含光君は、はなから聞いてはくれないだろう」

「なぜ、そう決めつける?」

辛抱強く問う魏無羨に、聶氏の仙女は周囲を見渡した。

魏無羨、藍忘機、清河聶氏の若者。玉翠花。姑蘇藍氏の門下生達が、仙女を見つめている。

「4大仙家と呼ばれた家に属しているというだけで、世に胡坐をかいている者。裕福な仙家に生まれし者。そんな者たちに、我らがどれだけ虐げられてきたか」

憎々し気に仙女が続けた。

「私は、豊かだと言われている蘭陵の中の貧しい家に生まれた。だが、身よりの無くなった私を金持ちの親戚すら妓楼に売ろうとした。助けてくれたのは、偶然通りかかった金光瑤様だった。金光瑤様は、蘭陵金氏の当時の女好きな宗主の毒牙から私を守ろうと、清河聶氏に預けて下さった。妓楼の前に捨てられていた幼子も同じように他の仙家に養子縁組なさっていた。今、世間で、なんと言われていても、金光瑤様は、私たちのような者を見捨てるお方では無かった」

聶氏の仙女は手の仙剣を抜くと、藍忘機の方に向けながら続けた。

「含光君。民をすべる高貴な仙人だと?
金と権力を持ちながら、不遇の者がいることなど、見向きもしない。
生まれた場所や人の身分が低いというだけで、粗暴な扱いを受け、みじめな境遇に貶められている。そんな仙師達がいることなど知らず、安穏と生きている。

下々の民の生活も、そんな不遇の仙師たちがいることも知らない者が、その上に立ち、どうやって世をおさめるつもりだ。
私は、認めない。
そんな者が仙督になるなど。そんな仙督がすべる世など、無くなってしまえばいい」

憎しみの全てをぶつけるように、仙女が藍忘機をはたと睨みつけていた。

藍忘機は、そんな仙女の眼差しを瞬きもせずに受け止めていた。
そして、静かに口を開くと「そんな世を変える」と言った。

「弱き者を助けられる世にする。それが、私が仙督になった理由だ」

顕示欲の為では無い。

「今は信じられなくとも、これからを見ていて欲しい。
その上で、抗議があるのなら、その時は向かい合って話を聞く」

聶氏の仙女を見つめながら、一言、一言、真摯に語る藍忘機に、仙女の心が動いたようだった。
藍忘機に向けていた仙剣の切っ先が下がった。

聶氏の仙女の動揺を察して、玉翠花の祖母をつかんでいた男が「惑わされるな!」と仙女に叫んだ。

「金麟台にいた俺は知っている。あの方を最初に傷つけたのは含光君だと。夷陵老祖を操って、兄と共にあの方を殺めたのだ。すべては、仙督の座を奪うため。今、含光君のそばに夷陵老祖がいるのがいい証拠だ。含光君は、他の2大仙家に縁のある夷陵老祖を使って、権力を姑蘇藍氏に集めるつもりだ」

男の話に、姑蘇藍氏の門下生達と清河聶氏の若者は当惑した顔を見合わせた。

魏無羨には、全く滑稽無糖な話だったが、他の者達が聞けば、ある意味、筋の通った仮説だった。
だが、清河聶氏の若者はともかく、姑蘇藍氏の門下生達は、男の言うことを真に受けてはいなかった。
含光君を尊敬し、どんな人物なのかも知っていたからだった。

含光君は、決して、己の欲の為に他人を貶め、悪事を起こすことなどしない。

そんな含光君への絶対の信頼の元、姑蘇藍氏の門下生達は、次々と仙剣を抜いて、金氏の男の方に向けた。

「玉翠花!ばあさんが生贄になるか、無残な姿になるのを見たくなければ、こっちに来い」

金氏の男の声に、玉翠花がフラりと歩き出した。

「翠花!」思わず名を呼んで、止めようとした清河聶氏の若者を魏無羨が目で制して止めた。

結界に近づいていく玉翠花を、姑蘇藍氏の一行が固唾をのんで見守った。

清河聶氏の仙女が術を唱えると、玉翠花の周辺だけ結界がゆるみ、玉翠花の体だけが内側に入った。

玉翠花が祖母を捕えている金氏男の近くまで来た時。
玉翠花は懐から眠り薬の小瓶を取り出した。
そして、それを男の方に吹きかけようと動いたが、聶氏の仙女が素早く仙術の念糸で、玉翠花から、小瓶を取り上げた。そして、玉翠花の腕を掴むと「こざかしい真似を」と憎々し気に言い捨てた。

「翠花!」

清河聶氏の若者が駆け寄ろうとしたが、魔の結界の力に阻まれ、はじかれた体が地に打ち付けられた。

助けようにも結界の中に入れない。

このままでは、玉翠花が“供犠の燎火”の生贄になってしまう。
姑蘇藍氏の門下生達はそう思ったが、魏無羨も藍忘機も妙に落ち着いた態度だった。

会話を交わしていてはいなかったが、視線を合わせた二人には何かが通じ合っていた。

魏無羨が腰帯の陳情を抜いて口にあてた。
その素振りに気づいた聶氏の仙女と金氏の男が魏無羨の方に意識を向けた。

その一瞬をついて、結界の中に変化が生じた。

岩場から飛び出してきた第三者の不意打ちによって、玉翠花と玉翠花の祖母を捕えていた仙女と男は後ろから体勢を崩されていた。

それを見た魏無羨が合図のように笛を吹くと、周囲に張られていた結界が、バチっという音と共に一気に消え去った。


その隙に、玉翠花と、玉翠花の祖母の体は、藍忘機によって円陣の外に助け出され、清河聶氏の若者の元に届けられた。
姑蘇藍氏の門下生数名が男に一斉にとびかかり、体を押さえつけて後ろ手に縛り上げていた。

魏無羨は、笛を口元から離すと、数珠輪を巻いた手首を掲げてみせた。

「ここに潜んでいることは、分かっていた。仲英」

「ジッと待っているのは少々退屈だったぞ。魏嬰」

聶氏の仙女を抑えていた仲英が、魏無羨にニヤっと笑って見せた。

「なぜ・・・?どうやって、結界を消した?」

悔しそうに、そう問う金氏の男に、魏無羨は、「温寧」と暗闇に向って声をかけた。

夜と同化した黒装束の温寧が姿を見せた。
温寧の手には、魔物の屍が握られていた。

温寧は、魏無羨の指示で、仙女や男達の注意を魏無羨が引き付けていた間、
魔の結界の要素となっていた“供物”の配置を音もさせずに変えていた。

あとは、綻んだ結界を、魏無羨が陳情の音の術で破ったのだった。

…助かった。

そんな礼を言うような魏無羨の眼差しに温寧が頷いた。
魏無羨は、まだ暴れている玉翠花の祖母の体に近づくと霊符を貼り付け、落ち着かせた。

玉翠花は、静かになった祖母の屍を抱きしめると、「おばあさま」と涙した。
そんな玉翠花の肩を清河聶氏の若者がしっかり抱き寄せ、感動的な所をその場にいた者達に見せていた。

今回の首謀者二人を捕えたことと、微笑ましい場面に、ふと皆の気が少し緩んだ。

後ろ手に縛られていた金氏の男が、そんな一瞬の不意をつき、そばにいた姑蘇藍氏の門下生達を体当たりして突き飛ばしていた。

他の門下生達が駆け寄り、倒れた者達を助け起こした時には、金氏の男は、手を縛られたまま、高く跳躍していた。

3つ岩の間では、まだ小さな篝火のような灯がついている。

…まさか!?

魏無羨がそう思った時には、金氏の男は、岩の上に立っていた。
そして、その場に居合わせた者を見渡した。

「たとえ、あの方が、どんな悪事に染まっていたとしても・・・」

金氏の男は、ほの昏い微笑を浮かべた。

「俺には、たった一つの暗闇の灯だったのだ」

そう言って、男は、岩間に身を投じた。

誰もが目を疑った。

事を起こした当事者が、みずから犠牲になることなど想像してはいなかった。
魏無羨と藍忘機でさえも。

「やめろ!」

魏無羨の制止する声と、藍忘機の助けの手は間に合わなかった。

岩間に男の体が消えた瞬間。
3つの岩の間の火が一気に天高く燃え上がり、不気味な騒音が姑蘇の森中に響き渡った。


魏無羨達の目の前で、
“供犠の燎火”は発動し、魔の乱葬塚の封印は完全に解かれた。





(続く)



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