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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「秘伝のレシピ-雲夢編-」後編です。

二次小説を読む注意点、コメント記入、「陳情令」の他の二次小説も
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから(名称、説明、更新しました)

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

ドラマ「陳情令」、原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は、今更新中の二次小説シリーズより未来の番外編(忘羨CP以外のはなし)になります。

「続きを読む」からお入りください







秘伝のレシピ-雲夢編-(後編)




魏無羨から、蓮根と排骨の汁物のレシピを聞いた思追は、最初、その通りに作ってみた。

しかし、なぜか違うような気がしたのだ。

遠い昔。1度だけ、食べたことのある味。
それを思追は、おぼろげながら覚えていた。
それは、師姉が温寧に渡し、温寧がそれを思追に食べさせるために、乱葬崗に持ち帰ったものだった。

その時に食べた蓮根スープの記憶の味に近づけるために、思追は、レシピに手を加えていたのだった。

「やはり、お口にあいませんでしたか?」

おずおずと尋ねる藍思追に江澄はかぶりを振った。

「…いや」

むしろ、今まで食べた姉以外が作った汁物の中で、一番姉の味に近いものだった。

口に含んだ瞬間、懐かしさと、切なさが一気にこみあげ、涙するほどに。

そう思った江澄は、深い吐息をついた。

「悪く無かった」

ぼそりと、呟くように言う江澄に思追は嬉しそうな顔をした。

「これのレシピをもらえるか?」

そう問う江澄に藍思追はますます笑みを深くして頷いた。

「先ほど、金公子が所望されたので、今夜作った汁物のレシピを書いてお渡ししました。こちらの料理人の方にもレシピをお教えいたします」

江澄が藍思追の言葉に微かに頷いた。

金凌が金麟台に帰っても、レシピがあれば、あちらの料理人に作ってもらえるだろう。

金凌は、母の味を知らない。
しかし、今まで何度もこの領地で食べていたはずの蓮根と排骨の汁物より、この姑蘇藍氏の弟子が作った物を気にいったようだった。

江澄は、金凌に、これが、お前の母が生前に作っていた味に一番近い、ということを告げるつもりは無かった。言葉ではなくとも伝わるものがある。
そんな考えでいた江澄だったが、これだけは言葉にしなくてはいけない。

そんな気持ちで、江澄は、目の前にいる藍思追を見つめて口を開いた。

「礼を言う」

藍思追が目を見開いた。

礼には及びません。そう返そうとした思追だったが、思い直し、江澄の言葉を素直に受け取ることにした。

「はい。金公子と江宗主に食べて頂けて良かったです」

にっこりと微笑む思追の純粋な笑顔に、江澄は、心の中が癒されていくのを感じた。

かつて、姉、江厭離が生きていた時、共にいた時のような安らぎ。
記憶の中の、優しい姉の笑顔と藍思追のそれが江澄の中で重なった。

江澄は、盆の中の料理を食べ終えた後、無意識にふっと吐息を漏らした。
そして、自分の食事につきあうようにそばにいた藍思追についこんな事を聞いた。

「明日は、何時までに姑蘇藍氏に戻らなくてはいけないのだ?仙剣で帰るのだろう?」

「はい。夕方までには姑蘇藍氏に戻る予定です」

「ならば、朝食を食べてから発つといい。
それで、もし帰り支度の時間に余裕があれば…また蓮根の汁物を作ってはくれぬか?」

命令でも指示でも無かった。
優しい口調で問う江澄に、思追は、微笑み返した。


「はい、喜んで」

頷いて、そう答える思追に江澄も笑みを浮かべた。

思追には、初めて見る、江宗主のやわらかな表情だった。
元々端正な顔立ちの江宗主が、微笑みでより美丈夫に見えた。

一瞬、何かが通いあったような、そんな思いになった二人の間に割って入るように、
外から騒がしい声が聞こえ始めた。

「思追は、まだ台所で作業しているのかな?」

「だから、誰か残れば良かったのですよ。思追一人に片付けを任せるなど。きっと大変だったのです」

「そういう君が残れば良かった」

「お前達は、この領地の部屋をいろいろ見たかったからついてきたんだろ?」

「そういう景儀こそ、真っ先に手をあげたじゃないか」

江澄は、心の内で苦笑を浮かべた。

会話を聞いていると、とても、あの規則と躾けが厳しい姑蘇藍氏の門下生達とは思えなかった。
ここの領地にいる若い弟子達とかわらない賑やかな若者たち。

江澄は脳裏に、いつも好んで黒い衣を着ている知古の男を浮かべた。

あんな堅苦しい場所で、あんなに無口で冷たそうな男のそばによくいられるな。と思っていたが、自分の知らないところがあるのかもしれない。そう思いなおした江澄だった。

…あの場所も、あのいつもすました顔をした氷山のような男も、そして…。

江澄は、近くに立ち、外に意識を向けている藍思追に目をやった。

…この若者たちも。今のあいつにとって、かけがえのない大切なものになっているのだろう。

一抹の寂しさのような感情を覚えながらも、江澄は心のどこかでホッと安堵している自分に気づいた。


やがて、台所にがやがやと入ってきた姑蘇藍氏の弟子達は、そこに藍思追だけでなく、江澄もいたことに驚き、一斉に体を硬直させた。

「江宗主」

…いらしたのですね。

当然、外で騒がしく話していたことは聞こえていただろう。
ある意味、雲深不知処の藍啓仁の説教より萎縮しそうな江澄の嫌味を覚悟した姑蘇藍氏の弟子達は気まずげに俯いた。

しかし、江澄は、そんな姑蘇藍氏の弟子達を見回し、「今宵はゆっくりと休まれよ」と一言放つと、台所から出ていった。

江澄が去っていく背中を見送りながら、姑蘇藍氏の弟子達は、一斉に、ぽかんと口を開け、呆けたような出で立ちになった。

そして、江澄の姿が見えなくなると藍思追に駆け寄って、「何か言われたか?大丈夫だったか?江宗主と二人きりとは大変だったな」と、口々に、気遣いとねぎらいの言葉をかけた。

そんな仲間たちに、思追は「いえ」とかぶりを振った。

そして、もう江澄がいなくなった外の方に目をむけ、自然と笑みを浮かべていた。



翌朝。

朝食を食べ終え、帰り支度も終えた姑蘇藍氏の弟子達が、蓮花塢の門の前に集合していた。

姑蘇藍氏の弟子達は、それぞれ手に沢山の蓮根の入った袋をもたされていた。

「わが地の名物だ。土産に持っていくがいい」

そう言って、江澄の指示で召使から渡された重い袋に、姑蘇藍氏の弟子達は、丁寧に礼を述べながらも、『仙剣で遠い地まで帰るのに…これは嫌がらせか?』と内心ため息をついていた。

「気をつけて帰れよ。僕は、もう少しここにいることにしたから、見送りもここまでにする」

金凌が言った。

「はい。金公子、こちらに連れてきて頂き、ありがとうございました」

藍思追はそう礼を言うと、江宗主の方に顔を向けた。

藍思追と視線が合った江澄は、思い出したように、袂から両手ほどの大きさの袋を出した。
そして、藍思追の方に歩み寄ると、その袋を差し出した。

―――藍思追は、後で知ったのだったが、藍思追の持たされた蓮根袋は他の者たちよりずっと軽かった。

「これも持っていきなさい」

「これは?」

袋を受け取り、そう問う藍思追に江澄が「姑蘇藍氏の師匠達に食わせてやるといい」と、ぶっきらぼうに言った。

江澄は、“師匠達”と言ったが、その中に、黒衣の男が含まれていること。
いや、むしろ、その人あての贈り物だということに気づいた藍思追が思わず微笑んだ。

そして、「はい」と明るい返事で頷く藍思追に、江澄がフッと口角をあげた。

その様子を、近くにいた金凌が見ていて目を丸くしたが、
目の錯覚だろう。と、すぐに顔を元に戻していた。

「闇狩りなどで、近くに来た際には、またいつでも寄りなさい」

本心かどうか分からなかったが、そう声かけした江澄に、姑蘇藍氏の門下生達は、深い揖礼をした。

「ありがとうございます。江宗主。お世話になりました」

礼を述べた後、姑蘇藍氏の門下生達は、列をなして、蓮花塢の門から出ていった。

最後尾にいた藍思追が、門をくぐる前に、ふと振り返った。

見送っていた金凌が手を振っていた。
そして、その隣に、江澄がじっとこちらを見て佇んでいた。

やや眉をひそめて、仏頂面のように見える顔。
だが、藍思追は、そんな江澄の中に、知らなかった一面を見たような気がしていた。

微かにお辞儀した藍思追に気づいたらしい江澄も小さく頷き返していた。

藍思追は、知らずに微笑んだ顔を前に向けると、蓮花塢の門をくぐり、仲間たちと一緒に雲深不知処への帰路に向かった。


―――そんな翌日の夜。


姑蘇藍氏の領地、雲深不知処。藍忘機の私邸、『静室』で。
闇狩り明けで、酒を飲み、寛いでいた魏無羨のところに、藍忘機が手持ち重箱を持って帰ってきた。

藍忘機が重箱の中から出して、静室の座卓に並べた料理に、魏無羨は、「うわー」と歓声を上げた。

「これ、俺の好きな、蓮根と排骨の汁物。それに、蓮の実粥と、蓮の実の辛煮だ。藍湛が作ったのか?」

目を輝かせている魏無羨に藍忘機が頷いた。

「蓮根は、一昨日、闇狩りの後、蓮花塢に泊めてもらった思追たちが、江宗主から土産に頂いたそうだ」

「江澄が土産にくれた?」

魏無羨が驚いたように、料理に目を落とした。

「蓮の実は、思追が、江宗主から直々に『師匠達に食べてもらいなさい』と受け取ったらしい。実が入っていた袋にこれが入っていた」

藍忘機が懐から紙きれを取り出して、魏無羨に手渡した。

それは、蓮の実を用いた料理のレシピだった。
どれも、魏無羨が蓮花塢に住んでいた時に好んで食べていたものばかり。

レシピの紙を見つめて、魏無羨が、フッと笑った。

「…相変わらず、素直じゃねえな」

魏無羨の呟きが聞こえているはずの藍忘機だったが、無言で、スープや粥を器によそっていた。

そして、それを魏無羨の前に置いた。

「温かいうちに」
…食べなさい。

そう言う藍忘機に魏無羨が明るい笑顔を見せた。

「うん。藍湛も一緒に食べよう。蓮の実粥、藍湛もきっと気にいるはずだ」

蓮の実と蓮根の料理は、魏無羨の中で、懐かしい時代を思い出させた。
ただ、それは、魏無羨にとっては、もう藍忘機の料理の味だった。
・・・愛しい者が、自分のために作ってくれた料理。

それに勝る味はあるだろうか?

魏無羨は、美しい恋人の顔を見つめながら、緩む頬をそのままに、美味しい食事に舌鼓をうった。


同じ刻。


雲深不知処の食堂で、藍思追が雲深不知処の料理人達にレシピを教えた蓮根の汁物が夕食の1品としてふるまわれていた。

汁物には、若い門下生達が雲夢土産として持たせられた蓮根が使われた。

排骨(豚肉)の代わりに、豆が入ったスープだったが、藍景儀と一緒に食堂に来ていた藍思追は、
その汁物を食べながら、心の中で、雲夢で見た大きな蓮湖を思い浮かべていた。

そして、台所で自分の作った汁物を食べて「悪く無かった」と言った江澄を。

「…とても正直なお方だった」

思わずそう呟いた藍思追に藍景儀が「何の話だ?」と不思議そうな顔をした。

藍思追は、ただ、微笑んでかぶりをふった。
そして、箸をとって、蓮根の汁物を食し始めたのだった。




(終わり)



みつばの「陳情令」二次小説の番外編話。
読んで頂き、ありがとうございました。
詳しいあとがきは、また後日に。


江澄が出てくる話を、いずれ二次小説で更新です。と書いてましたが、この話ではありません。
この話は、時間の流れでいうと、今更新中の二次小説の時間軸「雲山の夜と月」より、もっと後の番外編話。
ちらっと登場した忘羨の二人は、恋人関係になっています。


ブログへのご訪問ありがとうございます。
更新中に頂いた拍手コメントレスは、急ぎで無い時は、あとがきで、まとめてさせて頂きます。
よろしくお願いします。



みつばの二次小説を読んで頂きありがとうございました。
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