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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「雲山の夜と月」(6話)です。

二次小説を読む注意点、コメント記入、「陳情令」の他の二次小説も
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから(名称、説明、更新しました)

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

ドラマ「陳情令」、原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は「迷い路」の続きになります。


「続きを読む」からお入りください








雲山の夜と月(6話)





藍忘機と魏無羨は、姑蘇藍氏の施設が点在している領地をやや避けるように、雲深不知処の脇道を歩いていた。

前を見て、無言でスタスタと歩いていく藍忘機には何処か目的地があるのだろう。

魏無羨は、最終的に藍忘機が目指している場所も分からずに、藍忘機に連れ添って歩いていた。

やがて、見覚えのある道が魏無羨の前に現れ、魏無羨は、藍忘機がどこに向かって歩いているのか、薄々感づくことが出来た。

魏無羨には、久しぶりの場所で、時間の流れとしても、かなりたっていたはずなのだったが、
魏無羨の昔の記憶の中とほとんど変わっていなかった。

「懐かしいな」

魏無羨が目の前に広がる景色に感嘆の吐息を漏らした。

そこは、昔、魏無羨が姑蘇藍氏の修学に来ていた時に、
他の仙門の門下生たちと共に天灯を作って飛ばした場所だった。

あの時、魏無羨の師姉、江厭離と金子軒が共に天灯を飛ばしていた。
そして、温寧の姉、温情もいた。
魏無羨は、この時の温情の事をほとんど意識せずにいたが、温情は、天灯に弟の温寧の未来を祈っていた。
江晚吟(江澄)が。そして聶懐桑がいた。
魏無羨は、藍忘機をからかったことで、藍忘機に仙剣を抜きかけられ、よけた拍子に聶懐桑の大作の天灯を燃やしてしまっていた。
藍曦臣と藍啓仁も、近くで様子を見守っていた。
皆が天灯を浮かべ、それぞれの祈りや誓いを心の中で呟いていた。



「藍湛、あの時のここでの事、覚えてるだろ?」

そう聞く魏無羨に藍忘機は「ん」と頷いた。

「あれから、毎年ここから天灯を飛ばしてた?」

「おそらく」

「おそらくって?」

「私は、あれから見に来たことがない」

「でも、他の一門の門下生たちの交流会みたいなものだろ?俺たちがやった時みたいに。
藍湛のような指導者は一緒にしないのか?」

「…君はしたいのか?」

藍忘機が魏無羨の問いには答えずにそう聞いてきた。

「うん。また、作ってとばしてみたいな。あれは楽しい」

魏無羨がわくわくしたような面持ちで言った。

「今度、門下生が作る時があったら教えてよ、藍湛。俺も混ざりたい。
もちろん、藍湛も一緒に作ろうな」

そうニカっと笑った魏無羨の顔に藍忘機は微笑を浮かべた。

「藍湛。今、仙督の会議室と執務室を建てる計画があることは沢蕪君から聞いてる。
もしかして、この場所が仙督施設の出来るところなのか?」

魏無羨の問いかけに藍忘機がかぶりを振った。

「この場所では無い。会議室はここに似てひらけた場所になるが、執務室も違う所になる」

「仙督の藍湛専用の執務室ってわけだな。どんな感じになるんだ?建ったら兎と一緒に遊びに行きたい」

あっけらかんと、そう言う魏無羨に、藍忘機は視線を合わせた。

もちろん、仕事場として建てられる部屋に、遊びもへったくれも無い。
藍忘機に「无聊」と昔よく使われた言葉を言われる覚悟で言った魏無羨の冗談だったが、藍忘機は、拒絶しなかった。

「高台の上だ。見晴らしの良い部屋になる」

ただ、そう答える藍忘機に、魏無羨は、未来の執務室を想像し、笑みを浮かべた。

「きっと、素晴らしい部屋になるだろうな。ただ…」

…ただ?

言いかけて辞めた魏無羨に藍忘機が問うような眼差しを向けた。

「ただ、藍湛。それは、執務室兼私邸なのか?建ったら藍湛は執務室の方に住む?」

「いや。私は静室に住む。執務室はあくまで仕事場だ」

「そっか…」

魏無羨がうんうんと頷いた。そして、心の中で何故かほっと安堵の吐息を漏らした。


静室、蘭室、雅室、寒室…。
雲深不知処の中の施設や私室には、それぞれ名前がつけられている。

「仙督執務室や会議室は、何という名前になるんだ?」

「まだ決まっていない。魏嬰、君なら何とつける?」

「え?部屋の名前を俺が考えていいのか?」

小さく頷く藍忘機に魏無羨は「ハハ」と嬉し気に軽い笑い声を上げた。

「じゃあ…。仙督の藍湛の部屋だから…藍湛の好きな物や関わりのある字を入れて、
“月兎室”なんてどう?」

「…月の字は叔父の部屋につけられている」

「そっか~。じゃあ、月は外して、藍湛の好きな茶の字を入れよう。
茶房庵!うーん。結構しっくりくるけど、これじゃ茶屋の名前そのまんまだな。アハハハ」

「…魏嬰」

「あ?気にいらない?じゃあ、藍湛が他に好きそうなものって…」

これ以上不毛な創作をさせるわけにはいかない。

藍忘機はそう思ったのか、吐息をつくと、
「名前は、ゆっくり考えなさい」と口にした。

「うん」

そう頷きながらも、まだ口の中でブツブツと、部屋の名前を創作しているらしい魏無羨に
藍忘機は、また軽い吐息をついた。
だが、魏無羨を見る眼差しはやわらかく、不可思議な色も含まれていた。
そんな藍忘機の顔に魏無羨は気づかないまま、魏無羨は思考を別のところに繋げていた。

…仙督の会議室。執務室。

着々と藍忘機が仙督につく準備がされていても、肝心の就任式が延期されている。

魏無羨は、藍忘機にずっと聞こうと思っていたことを、切り出すことにした。

「藍湛。仙督就任式を延期した理由を聞きたい」

「・・・・・・」

「就任式の延期は、藍湛が決めたんだろ?前に聞いた時、藍湛は準備に時間がかかるって言っていた。何かあったせいじゃないとも。じゃあ、理由は、今世間を騒がしている封印荒らしのせいじゃない。それに、沢蕪君は、仙督の施設建設は姑蘇藍氏が取り仕切っていると言っていた。就任式延期とは関係ないんだろ? いったい、藍湛の言う準備って何なんだ?」

藍忘機をジッと見つめて、応えを待っている魏無羨の顔を見つめ返した後、藍忘機が重い口を開いた。

「今まで仙督についた者のほとんどは宗主の座を経験している者だった」

ぽつぽつと藍忘機が話し始めた。

「だが、私にはその経験が無い」

「藍湛には仙督としての能力が申し分無くある。どの仙師よりも、力も知識も素質も闇狩りの経験もある含光君。他の仙門の宗主達もそれを知っているはずだ」

つい、そう口をはさんだ魏無羨に藍忘機は小さくかぶりを振った。

「宗主は、他の仙門との外交にもたけ、その繋がりにより身についた知識や経験がある。
仙督は、そういう意味での手腕も求められ、必要となる。私は、座に就いてから、そのことを改めて悟った」

魏無羨は、驚きで目を見張った。

藍忘機は、魏無羨がこの世にいない時間も、闇狩りをし、修行をしながら、ずっと考えていたのかもしれない。どうしたら、この世が良くなるか。どんな風に治めれば良いか。

…弱き者たちの味方になれる治世。

きっと、その為に政治的なことも学び、知識も技能も十分に積んでいたことだろう。

しかし、実際に、仙督という座について、自分の力量不足を実感したということなのだろうか。
いや、力量では無い。経験値という、どれだけ多くの知識や技能をもってしても、足りないことがあることを感じ取ったのだ。

「藍湛…」

そう名をつぶやいた魏無羨に、藍忘機は、自分の言葉で、魏無羨が全て悟ってくれたことを分かったようだった。

小さく頷くと、藍忘機は続けた。

「私は、就任式前にそれらを補うつもりだ。それは、私自身の準備の為でもあり、他の仙門の宗主達を十分に納得させる基盤をつくる時間でもある」

だから、就任式を延期した。

「…うん」

魏無羨は、ようやく合点がいった顔で、遠くまで見渡せる景色に目をやった。
薄い雲のかかった雲深不知処の山々やその上に広がる夕暮れ時の宵空。

魏無羨は、その風景を見ながら、
己に足りない物を潔く認め、それに妥協せず、
更に、高みを目指してまっすぐ道を進もうとしている藍忘機に感銘を受けていた。

…とても勇気がいることだ。自分の弱さと向き合い、それに立ち向かうのは。
闇狩りで、強大な魔物と闘うより、ずっと…。

魏無羨は、そっと自分の腹部に手をあてた。

そして、その手を横に這わせ腰帯に差していた、笛の陳情を抜いた。

「藍湛、一緒に1曲演奏しよう」

魏無羨の気持ちを汲んだような藍忘機も、暗器の琴、“忘機”を場に現した。

魏無羨には、藍忘機の決意にかけたい言葉はどれも口にできなかった。

…ただ、この想いを演奏に込めよう。きっと藍湛には伝わるはず。

そんな思いで、魏無羨は、陳情をかまえた。

魏無羨は、藍忘機が玄武洞で口ずさんでいた曲を陳情で奏でた。
藍忘機がその旋律に追随するように、琴の音を響かせた。

言葉を交わさなくても、二人の心がつながった。
その事を魏無羨は笛を演奏しながら感じていた。

高台で、二人の音色がぴったりと寄り添い、美しい旋律で、
山間に響き、流れていく。

演奏を終えると、笛を下ろして魏無羨が言った。

「藍湛。この曲の名前、いつになったら教えてくれるんだ?」

魏無羨は琴を仕舞うと、無言で立ち上がった。

「今度会ったら教えてって言ったのに」

「…それは君が勝手にした約束だ」

「えー?」

抗議するように頬を膨らませて見せる魏無羨を一瞥して藍忘機は目を逸らせた。

「…藍湛。俺たち、もう結構打ち解けた仲だと思ってたのに」

ぶつぶつと魏無羨がこれみよがしに呟いた。

「今度、天灯を飛ばす時が来たら、天灯に書くから。藍湛の曲の名前を知りたいって」

「本当にそんなことを願うのか?」

聞いていないふりで、しっかり耳をこちらに向けている藍忘機に魏無羨は心の中でほくそ笑んでいた。

「願いごとは違う。俺の願いは、前世で、ここで誓ったのと同じだ」

藍忘機が横にいる魏無羨を見た。

“弱き者を助ける人でありたい”

「それから、今の人生分、まだ続きがある」

「続き?」

それは何だ?と問うような藍忘機の目に魏無羨がにっこりと笑って言った。

「藍湛と一緒にそれを行うってこと。
それから、さっきみたいに、笛と琴の演奏を一緒にしたい。これからもずっと」

藍忘機の目が見開いた。

「俺の願いごと、どう?」

そう聞く魏無羨を凝視したまま、藍忘機の口も少し開いていた。
まるで、何かとても言いたいことが喉元まで出ているかのような顔。

「藍湛、何故そんな顔するんだ?感動した?ん?」

魏無羨がからかうようにニヤニヤした。

先ほどの藍忘機の話を聞いた魏無羨の中で、はっきりと自分の行く道が見えてきていた。
そして、自分のやるべきこと、やりたいこと。
それらを、今、明確な指針として、道しるべのような光が照らしている。

魏無羨の光は含光君。藍忘機だった。

魏無羨は、藍色に染まりつつある夕闇の空を仰いだ。

そこに薄い月が出ていた。

今は、まだ細い光でも、いずれ、闇を照らす大きく温かい光となる。

…月は、まるで、藍湛だ。

「藍湛、俺たち、いつか、雲深不知処の夜と月って呼ばれる存在になろう」

魏無羨が無意識に思いのたけを口の端にのせた。

「藍湛と沢蕪君の“姑蘇藍氏の双璧”とは違う。月は昼間も存在する。夜も月が無くてもある。
でも、夜には月がいて欲しい。月も夜があって輝ける。俺が夜で、藍湛は月。
たとえ、一緒にいられなくても、共にある。そんな風に」

言ってから魏無羨は、あまりにもロマンスめいた自分の発言に、思わず笑った。

「あはははは」

…こんな言葉は、江澄あたりには、ふざけた事を言うな、と顔を赤くして殴られそうだし、聶懐桑が好んで読んでいた本にもこんな気障な口説き文句のようなセリフは書いて無いだろう。

―――これより、後に。

魏無羨は、この時のことを思い出し、自分がかなり浮かれていたと自覚することになる。
しかし、浮かれている最中、人はそれに気づかない。

普段は聡い魏無羨も、今この瞬間は、その例に漏れていなかった。


「やっぱり、今日の俺は、二日酔いが続いてるかな」

そう勝手にへらへら笑いながら、ひとりごちている魏無羨を藍忘機がジッと見つめていた。

「魏嬰」

藍忘機が魏無羨の名を呼んだ。

「あ?」

「私は、他の誰のものにもならない」

藍忘機がきっぱりと言った。

「…ん?あ、ああ、…うん」

曖昧に相槌を打ちながらも、魏無羨はきょとんとした顔になっていた。

…???他の誰のものにもならない?

今までの会話と脈絡のないような藍忘機の言葉の意味が分からず、
魏無羨は、小首をかしげた。

そんな魏無羨に藍忘機がすっと手を伸ばした。

藍忘機の手が魏無羨の腕に触れた。


・・・ん?

魏無羨が藍忘機の手に注意を惹きつけられ、藍忘機の方向に顔を向けた時、
目の前が突然影で覆われた。

同時に、フワリと白檀の香りが鼻孔をくすぐり、魏無羨が藍忘機の息遣いを間近に感じた瞬間、唇に何かが触れた。

―――え?

魏無羨の時が止まった。



藍忘機が、魏無羨の唇に己の唇を重ねていた。




(続く)



『うらしま太郎』の所で、「陳情令(魔道祖師)」で、出てくる『日本』の名称をコメントで教えてくださった方、ありがとうございます!知りたいとずっと思っていた名称でした。ドラマ中、(原作でも出てきたかな?)黒幕さんの陰謀に関わる所で出てきて、後に黒幕さんが逃亡しようとしていた先も確か、日本でしたよね?←ドラマ見直ししないと。東ナントカって書いてあって、みつばは、そのナントカの漢字が分からなかったのです。『うらしま太郎』伝説については、今度雑記で書くつもりだったので、その時にまた詳しいことを説明させて頂きます。取り急ぎ、情報ありがとうございました。

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