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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「背馳」(3話)です。

二次小説を読む注意点、コメント記入、「陳情令」の他の二次小説も
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから(名称、説明、更新しました)

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

「陳情令」は現時点、日本語翻訳未公開のドラマです。(2020年3月より初放送予定)
原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は「邂逅」の続きになります。


背馳(3話)




魏無羨は、温寧に、所有者がいることを知らずに取ってしまった木の件の進捗状況を話すことにした。

「温寧、沢蕪君に木のことを話した。沢蕪君は、名前は伏せて、対処してくださるそうだ。もう、そのことで心配はいらない」

「ありがとうございます。魏公子」

「いや。礼なら、沢蕪君に。ただ、直接伝えられないなら、俺から伝えておく」

…藍啓仁先生が姑蘇藍氏の弟子達に温寧に近づくなと言っている以上、温寧が沢蕪君に直接会うことは難しいだろう。

そう考えた魏無羨が言った。

温寧がこくっと頷いた。

「お願いします。公子」

「うん」

魏無羨は温寧の肩をポンポンと優しく叩くと、温寧と一緒に伏魔洞を出た。

外では、今日は休みだと言っていた姑蘇藍氏の弟子達が、畑仕事に精を出していた。

「もしかして、夢トの栽培か?」

「はい」

鍬を握っていた姑蘇藍氏の弟子の一人が言った。

「もうすでに鬼将軍が栽培されて育っている物もありますが、畑をさらに開墾したいのです」

「お前達は、そんなに夢トが好きなのか?」

休みの日に遠くの夷陵まで来て畑仕事とは。

「そういうわけではありませんが、ただ、鬼将軍の手伝いをしたいのです」

他の弟子も口をはさんだ。

「思追から、鬼将軍がご親族の慰霊碑と祠堂の修復を試みていると聞いて、我々も何か出来ることが無いかと思ったのです」

「慰霊碑と祠堂の為の資材は不足していますが、畑は作れます。それに蓮池も」

「蓮池?」

魏無羨が温寧を振り返った。

「はい。以前、ここにあった蓮池を蘇らせたいです」

温寧が言った。

「…何も昔のままにしなくてもいいんだぞ?」

温寧は、魏無羨の言葉にかぶりを振った。

「蓮の花は美しいです。またここで咲けば、皆喜ぶことでしょう」

温寧の「皆」というのが、姉と祖母、一族の者達を指していることが分かった魏無羨は、「そうか」と呟くように言った。

そして、魏無羨は少し離れた場所で藍景儀と一緒に、朽ち果てた住処のガラクタを整理してる思追の方をチラリと見た。

…あいつにも又見せてやりたいんだな。

魏無羨は温寧の心情を察すると、頷いた。

「俺も手伝いをしていいか?」

魏無羨が温寧に聞いた。

これからは魏無羨の手助け無しでやっていきたい、と言っていた温寧だったが、これは、そういう手助けとは違う。

温寧は魏無羨の言葉に表情をやわらかくした。

「はい。公子」

魏無羨も微笑んだ。

今は、まだ荒れ地だった。
十数年前、初めて魏無羨がこの地を訪れた時のように。

でも、いつか、蓮の花が咲き乱れるような蓮池が出来るだろう。
そして、あの時のように、この地で収穫した蓮の実を温寧と共に食せる日が来るかもしれない。

汗を流しながら、でも、楽しそうに畑仕事や、片付け作業をしている姑蘇藍氏の弟子達を見て、魏無羨はそう思った。

その後、魏無羨も、思追達と一緒に、畑の土を改良する手立てを考えたり、街で聞いた資材の相場から、祠堂や慰霊碑建立の計画をたてたりした。

昼食時には、藍景儀と藍実暈が買ってきた弁当を、温寧も交えて皆で食べた。
魏無羨は闇狩りで会って、危ない所を手助けしてくれた仲英の事を弟子達に打ち明けた。
欧陽氏一門の闇狩りがらみの話は省略したが、弟子達は、魏無羨から聞いた仲英に関心を持ったようだった。

仲英を街で目にしていた藍景儀が、「やはり」と納得するように頷いていた。

「何か只者じゃない雰囲気を持っている方でした。僕の見識は正しかったな」

「…景儀は、身元不明の仙術使いは怪しいとか、そばで言ってなかった?」

呆れたように、藍実暈が横から突っ込んで、皆を笑わせた。


こうして、和やかな雰囲気のまま、時間は過ぎていった。

「そろそろ、雲深不知処に戻らないと…」

未の刻が終わる頃(15時頃)、思追が言った。

夷陵から雲深不知処までは仙剣でも少し時間がかかる。
門限に間に合うには、早めに出た方が良いだろう。

そう考えた思追の言葉に、皆も同意した。

「では、また…」

思追が温寧を見つめて言った。

温寧が黙ったまま頷いた。

「じゃあ、鬼将軍、また来ます」
「それまでお体お大事に」

体を大事に、は、鬼将軍には不要の気遣いかもしれなかったが、姑蘇藍氏の弟子達は礼儀正しかった。

皆は、温寧に丁寧に揖礼すると歩き出した。

魏無羨も無言のまま温寧に頷いてみせると、そっと手を上げた温寧に手を振り返した。
そして、姑蘇藍氏の弟子達と共に乱葬洞を後にした。

魏無羨は、雲深不知処への帰路は、藍思追の仙剣に乗った。

藍景儀の仙剣に乗った行きの時と違い、藍思追の仙剣は、揺れやぐらつきも無く、魏無羨を乗せたまま空を滑るように飛んだ。

…さすが、藍湛の弟子。

魏無羨が心の中で感心しながら、どこか誇らしい気持ちになっていた。
16年間、教育したのも、鍛えたのも藍忘機で、自分では無かったのだったが。

自分の足によくしがみついていた幼子が、今では頼もしい青年になり、自分を乗せて仙剣を操っている。
魏無羨にとっては、不思議な感覚でもあった。

「思追、昔、含光君の仙剣に二人で乗ったことを覚えているか?」

魏無羨が前方の藍思追に声をかけた。

「え?」

突然声をかけられた藍思追は驚いたように後方の魏無羨を見やった。

「私が幼い頃ですか?」

「ああ、含光君に街で会って、おもちゃを買ってもらったことは覚えていたな?それに、一緒に食事したことも。あの後の出来事だ」

「そういえば…、何となくですが、高いところを見下ろして飛んでいた記憶があります。あれは、含光君様の仙剣の上だったのですね?」

「そうだ。温寧に何かあったのを察知して、急いで向かった時のことだ」

「魏先輩が、含光君様に自分が食事をおごるとおっしゃっていたのに、結局、含光君様がお支払いになった後のことですね」

「うん…。お前、そういう余計な所は良く覚えてるな」

「余計な所ですか?」

「いや、別にいい」

魏無羨は、藍思追が藍忘機のいる前で、昔の自分の話を暴露したことを思い出した。
そして、少々気まずさを感じると口を閉じた。

『魏先輩に教えて頂いたことも覚えています。妖艶な女性が描かれた本を見る時の誤魔化し方や、綺麗な女性に会った時ナンパする方法を…』


…いや、余計なことばかり思追に教えていたのは、俺か。

うーん…と鼻の頭を指でかいて、魏無羨は自嘲を浮かべた。

その時。

「あれを見てください!」

前方を仙剣で飛んでいた弟子の一人が、下方を指さして振り返った。


皆が一斉にそこに注意を向け、魏無羨も、その方角に目を凝らした。

ひらけた山道の中で、逃げまどう人々が見えた。

その後ろには、魔物が2体、迫っている。

どちらも、人を襲い、その身体だけでなく魂も傷つける凶悪な魔物の一種だった。


「あれは…姑蘇藍氏の講義で教わったことがあります」

藍思追が言った。

「太古から存在した魔物ですが、でも多くは封印されていて、近年では滅多に現れないと言われている魔物です」

「ああ、俺も以前、古文書で見たことがある」

魏無羨が言った。

稀に古代から存在する魔物が出没することもあった。

しかし、2体とも凶悪な魔物に違いなかったが、種類は異なる物。
それが同時に出現するのは非常に稀有なことだった。


魏無羨の脳裏に、沢蕪君との会話が浮かんだ。

『今まで封じられていた魔性の封印が何者かに解かれたり、塚が壊されたという報告が増えています』

他の弟子達も、魏無羨と似たような事を考えたのだろう。

「なぜ、ここに、あのように珍しい魔物が2体も?」
「多くは封印されて、今はいないはずだぞ」

ざわつく弟子たちに魏無羨が言った。

「検証は後まわしだ。降りて、急ぎ、逃げている人達を助けるぞ」


魏無羨の言葉に思追が頷き、仙剣を急降下させた。

他の弟子達も藍思追の仙剣に続いた。


そこからは、魏無羨の指示に従って、姑蘇藍氏一門で闇狩りを行った。
人々を誘導して逃がす者。魔物に攻撃する者。結界を張る者など。

魏無羨は、陳情の笛の音の術で魔物たちの動きを縛り、弟子達の動きを援護した。

抜群の連携で、2体の魔物たちを封印ではなく、消滅出来たのは、半刻以上後のことだった。

離れた場所から姑蘇藍氏の魔物との戦闘を見守っていた人々が戻ってきて、
姑蘇藍氏一門の弟子達の功労を褒めたたえながら、礼を述べた。

姑蘇藍氏の弟子達は、経験がないほど強い魔物の闇狩りで、疲労困憊していた。
それにも関わらず、姑蘇藍氏一門であるという自尊心で気力を奮い立たせ、人々に何食わぬ顔を見せていた。


逃げていた人々の多くは、家路途中の街の商人たちだった。

「歩いていたら、いきなり、森から飛び出してきて」
「ここいらは、ずっと、魔性が出るという噂も無く平和だったのに」
「最近になって、今まで出なかった魔物がよくあらわれるようになったという話を聞いた」
「新しい仙督になると、世にそういう魔物が出ることがある、という噂は本当だったのだな」


人々の話に、姑蘇藍氏一門の弟子達は顔を見合わせた。

魏無羨と姑蘇藍氏の弟子達は、商人たちの持っていた飲み物をご馳走になった後、仙剣に乗って、再び雲深不知処を目指して飛び立った。

しばらく飛んで、なじみある姑蘇の領地に入った時には、もう雲深不知処の門限の時刻に迫っていた。


「…このままだと門限に間に合わない」

「夷陵に行っていたことが知られてしまう」

せいいっぱい速度を出しながらも、姑蘇藍氏の弟子達の顔は、そんな諦めの想いに支配されていた。

…大丈夫だ。俺が通行玉を持っている。

魏無羨が、皆の落ち込んだような表情に気づき、通行玉礼を見せようと腰帯に目を落とした時。

ふと、一瞬視界に映ったものに魏無羨は気をとられた。

ちょうど飛んでいたのは、姑蘇の裏街道の上だった。
薄暗い視界の中、道のはずれで、フラフラと歩く人影があった。

くすんだ着物の色ではあったが、その者がつけている髪飾りが日没の残り日の光を浴びてキラリと光った。

とりまく空気が生きている人間のそれでは無い。

…噂の屍傀儡!


「思追!止まってくれ!」

魏無羨の声に思追がすぐに仙剣を止めた。

「どうしました?魏先輩」

思追の停止に気づいた、他の弟子達も一斉に仙剣を空で止めた。

仙剣は凄い速度で飛んでいたため、裏街道はとっくに過ぎ去っており、
仙剣の真下は、すでに姑蘇の街近くだった。

「この下に降りてくれ」

魏無羨が言った。

思追は、魏無羨の言う通りに、仙剣を下降させた。

「魏先輩、どうしたんですか?なぜ、ここで降りるのです?」

弟子の一人が尋ねた。

「もう雲深不知処の門限には間に合いませんが、これ以上遅れると…」

…罰が加算される。

魏無羨は、心なしか切羽詰まったような顔の弟子達の顔を見回した。

覚悟していたとはいえ、藍啓仁の厳しい罰を想像すると気が重いのだろう。

魏無羨は、腰帯に下げていた通行玉礼を思追に手渡した。

「俺の通行玉礼だ。これで、お前達は、雲深不知処の結界門を通れる。藍啓仁先生にも夷陵に行っていたことはバレない」

「なぜ、先輩の通行玉礼を私に?一緒に雲深不知処に戻らないのですか?」

手の内の通行玉礼と魏無羨を見比べて藍思追が聞いた。

「俺は、ここで用事がある。さっきの闇狩りの話は、俺が雲深不知処に戻ってから沢蕪君に話しておく。通行玉礼は、明日の昼前にでも、静室に返しに来い」

「用事とは?」

藍思追の問いに、魏無羨は一瞬返答に詰まった。

…今は、こいつらを巻き込めない。
ただでさえ、先ほどの戦闘で体力と霊力を消耗している。
それに、犬の屍傀儡と同じ術がかかった者なら、俺で対処しないと。

「私用だから、気にするな」

魏無羨が答えて、早く行け、という風に、思追達を手で払った。

思追は、いぶかし気に見ている弟子達と顔を見合わせると、魏無羨に軽く礼をした。
そして、他の弟子達と一緒に再び仙剣で雲深不知処に向かって飛び立っていった。

後に残された魏無羨は、思追達の姿が見えなくなると、すぐに裏街道の方に走り出した。



それから、しばらく時が過ぎた雲深不知処では…。


雲深不知処の就寝時刻前、
静室の門を開け、帰宅した藍忘機の姿があった。

藍忘機は周囲を見回した。

静室どころか、敷地内にも灯はついていない。
人の気配も無かった。


真っ暗闇の静室の前で。
藍忘機は、一瞬、幼い頃の記憶を蘇らせた。

幼い藍忘機は、灯のついていない静室の前に座り、ずっと母を待ち続けていた。
母が静室の扉を開けて、自分を出迎えてくれるのを。

家は暗く、閉まったままの扉は、もう永遠に開くことは無いのだと。
この家で、自分を待っていてくれた人は二度と戻ってこないのだと。

藍忘機は、いつ、はっきりと気づけたのか覚えていなかった。


『藍湛、おかえり』

今にも、扉が開いて、中から笑顔の魏無羨が出て来そうだった。

時間がたつにつれ、
そんな幻を心に描いた藍忘機の胸の内が外界の空気より冷え込んでいく。

「…魏嬰」

藍忘機の小さな呼び声が、静まり返った空間で霧散した。



(続く)



誤字、脱字、気付いたらこっそり修正してます。

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