中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「姑蘇藍氏の月例会」1話です。
二次小説を読む注意点、コメント記入、「陳情令」の他の二次小説も
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とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。
「陳情令」は現時点、日本語翻訳未公開のドラマです。
原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。
二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。※この話は「
帯他回家」の続きになります。
姑蘇藍氏の月例会(1話)朝・・・否、もう太陽が高くのぼり、昼に近い時間。
魏無羨は豪快にうった寝返りで寝台の柵に頭をぶつけて目覚めた。
「…っ。って~」
ぶつけた箇所を手で押さえながら上半身を起こした魏無羨は、ふと自分が今どこにいるのか分からない感覚になってハッと顔を上げた。
寝心地の良い上質の寝台。
寝台横の窓から入ってくる竹林からの爽やかな風。
雲深不知処の山の中の野宿では無い。
魏無羨は今、雲深不知処の姑蘇藍氏の領内、藍忘機の私邸の寝台の上にいた。
数日前から、藍忘機と一緒に住んでいる清室。
ぼーっとした頭をふり、ようやく思考が働くようになった魏無羨は、
顏を覆うように散らばったぼさぼさの長髪を手でかきあげると周囲を見回した。
端から端まで見渡せる造りの家の中。
書斎棚の中には巻物が積まれ、藍忘機の本も整然と並べられている。
座卓の上には香炉。茶を入れるための道具が一式。花瓶に花。筆に硯。
藍忘機の趣味で揃えているのだろうか。それとも、藍忘機の母の形見の物だろうか。
品も質も良い小道具や置物が控えめだが随所に配置されていた。
隅々まで綺麗に整えられた部屋は一片の汚れも無く、美しい空気で満ちている。
ほのかに香る白檀の香りは、姑蘇藍氏の施設内ではどこでも嗅げるものだったが、
それとはどこか違う。
どう違うのか説明はつかなくても、この部屋の香りは藍忘機自身の香りのように感じた魏無羨だった。
しかし、今寝台の上にも部屋の中にも藍忘機の姿はない。
…藍湛は、もう下に降りているのかな?
卯の刻に起きる習慣の藍忘機が、魏無羨同様にこんな時間まで寝ているわけが無いのだったが。
周囲にばかり気をとられていた魏無羨だったが、ふと寝台の下方を見て、足元に畳まれた衣類が置かれていることに気付いた。
新品だったが、それは魏無羨がよく好んで着る赤色の内衣と黒い外衣だった。
しかも上質の布地でつくられた衣服。
書き置きは無かったが、藍忘機が用意してくれたものだろう。
そう思って、魏無羨がその衣服を着替えていた時、「魏先輩起きていますか~?」という声が外から聞こえた。
魏無羨が開いた引き戸から外をのぞくと、静室の門の外に二人の人間が立っている気配がした。
声でその正体が分かった魏無羨は「寝てる」と大きな声で返事した。
「冗談を言ってないで門を開けてください。
含光君様から魏先輩に朝食をお持ちするよう申しつかってまいりました」
呆れを含んだ声色の藍景儀の言葉を聞いた魏無羨は、手早く自分の髪の毛を赤い帯でまとめあげると清室の外に出て門を開けた。
そこに手提げ重箱をそれぞれ持った藍景儀と藍思追が立っていた。
「魏先輩の朝食です。朝食というより食堂では昼食ですが、含光君様から申し付かりました。
魏先輩が清室でそろそろ起きるかもしれないから、こちらを届けるようにと」
藍思追が言った。
「それは、それは。御苦労さん。お前達はいつも含光君にこんな風に食事を運んでいるのか?」
「まさか」
藍景儀が首を振り、藍思追が言った。
「含光君様は、ご自分の事は全部ご自身でされていらっしゃいます。外着の衣服などは弟子達が洗濯することもありますが、静室での事は含光君様がお一人でなさっています。他の者がお世話することはありません。お食事も食堂でされている姿をよくお見かけしています」
「へえ・・・。で、含光君は、今どこに?」
「啓仁先生のお部屋で、沢蕪君様、重役の皆様と会議をされていらっしゃいます」
「朝から?」
「朝は、ご自身の鍛錬の後、私達の剣術の稽古をつけて下さいました。若い修習生たちに論語と歴史の授業も。その後、食堂から運んだ魏先輩の朝食を私達に託されたのでしょう」
「とてもお忙しい方なのに、お暇な魏先輩の食事にまで気をまわされるなんて、さすが含光君様です。ご自身で持って行こうとなさっていたのを、我々がお声をかけて代りにこちらに伺ったという次第です」
師匠を得意げに、そして、チクリと魏無羨の事を皮肉るような藍景儀の言葉を気づかないふりで無視を決めた魏無羨は、「なるほど」と恍けたように頷いて見せた。
「お前達、朝食は…食べてるな。時間があるなら、昼食はここで俺と一緒に食わないか?」
そう静室内を指さして誘う魏無羨に、藍思追と藍景儀は顔を見合わせた後、「とんでもない」という風に勢いよくかぶりを振った。
「ここは含光君様のご私邸です。我々は含光君様の許可無くして勝手にお邪魔することは出来ません」
「俺がいいと言っている」
「魏先輩は含光君様の御客人です。魏先輩がいいと言っても含光君様のお許しが無ければ駄目です」
「そっか。そうだよな・・・。じゃあ、小林檎がいる丘で一緒に食うか?その重箱、2つとも俺の食事じゃないのだろう?」
魏無羨は藍思追の持っている重箱を指差して見透かしたように言った。
「はい。実は、我々の分の食事も持ってきました。魏無羨先輩、小林檎と兎たちのいる丘で一緒に食べましょう」
…最初からそのつもりだったのだな。
魏無羨は笑って頷くと、静室の門を閉めてから藍思追と藍景儀と連れだって歩き出した。
藍思追が持っていた重箱の中には、魏無羨の驢馬、小林檎の好物の林檎も入っていた。
3人が丘につくと、魏無羨より藍思追の姿を見て、小林檎が飛ぶように駆け寄ってきた。
そして、重箱をひっくり返す勢いで近づける顏を藍思追が手で留めた。
「小林檎・・・お前、この短期間で主人の顔も忘れたのか?」
呆れたようにため息をついた魏無羨に藍思追が苦笑した。
「餌やりで私が林檎を与えたのを覚えていたのでしょう。または、この重箱に林檎が入っていると分かったのかもしれません。頭のいい驢馬です」
…そうかな?
魏無羨はそう思い、隣にいた藍景儀も同じことを考えたような顔をしていた。
魏無羨が藍思追の重箱から林檎を取り出して小林檎に与えると、小林檎はあっという間に林檎を平らげた。そして、もう林檎が無いことを悟ると、興味を失ったように、魏無羨から離れて、兎たちと戯れに行ってしまった。
「俺より雲深不知処に馴染んでる」
そうぼやく魏無羨に「そうでしょう」と藍景儀が言った。
「魏先輩がお留守の間に小林檎は雲深不知処にいたので、すっかりここの住人でした。
餌やりも我々がしていたので、姑蘇藍氏の門下生達にもなついています」
「魏先輩もこちらに馴染んでいらっしゃいます」
藍景儀の言葉をフォローするように藍思追が続けた。
「含光君様と同期でいらっしゃったということで、我々より姑蘇藍氏内にお詳しいかもしれません」
「そうです。魏先輩は我々よりのびのびと自由にされているではありませんか」
そう言って、せっかくのフォローを台無しにするような藍景儀の発言に藍思追が困惑したように含みのある眼差しを向けた。
姑蘇藍氏内で暮らしている時間を考えたら、後輩にあたるのか、先輩にあたるのか分からない藍忘機の弟子達に魏無羨は苦笑した顔を向けると、重箱の中から昼食を取り出し始めた。
姑蘇藍氏名物の苦いスープ他、緑色多めの、実に体に良さそうな料理の数々。
魏無羨の心躍るような料理では無かったが、前世、夷陵で暮らしていた初期の頃より品数も栄養も整った食事に違いなかった。
魏無羨は質素倹約した体験の記憶で、少年期の時のような贅沢は言わず、それらの料理を藍思追と藍景儀と一緒に食した。
四方を山々に囲まれ、緑深い森に美しい水をたたえた湖や滝。
雄大な自然の景色を眺めながら、食不言の規則の元、無言でいる藍思追と藍景儀と共に、魏無羨は穏やかな気分で食事をすすめていた。
「魏先輩はこれからもずっと雲深不知処にお住まいになるのですか?」
食事を終えた後、空になった皿を重箱に仕舞いながら藍景儀が聞いた。
「ああ、うん。そのつもりだ」
食事後に近くで流れていた小川の水を口に含んでいた魏無羨が答えた。
「お住まいはどうされるのですか?」
「どうって?静室で含光君と一緒に住む」
「それは含光君様がそうおっしゃっていたのですか?」
「そうだが?」
当然という風に藍景儀を仰ぎ見た魏無羨だったが、そこに藍景儀だけでなく、少し考え込むような顔をして兎を抱いている藍思追を見て首をかしげた。
「どうした?思追。俺の滞在に何か不都合なことがある?」
「違います」
そう問う魏無羨に慌てて藍思追が首を振った後、しかし、戸惑いながら口を開いた。
「含光君様が、仙督になられるというお話をお聞きしました。まだ正式に発表はされていませんが、姑蘇藍氏内だけでなく、闇狩りに出て他の仙門の方々にお会いした時も、その話でもちきりでした。近々、重大な話があると先生からもお聞きしています。魏先輩はご存じでしたか?」
そう、問う藍思追に魏無羨は頷いた。
「ああ、聞いてる。含光君は仙督になる」
魏無羨は藍忘機本人からそう聞いていた。
だから、姑蘇藍氏に戻るのだと。
“藍湛・・・もしかして一緒に来ないのか?”
観音堂からの帰り路。旅を続けようとした魏無羨の後方で歩みを止めていた藍忘機が振り返り、微かに頷いた。
あの時に、いや、その前から決めていたのかもしれない。
――― 弱き者を守る人でありたい。
その信念を貫く為に。
大きな組織から小規模まで、すべて数えると100ほどもある仙家。
その仙家を束ね、長にあたる仙督。
最初に聞いた時は驚きの気持ちが大きかった。
だが藍忘機が仙督になる道を選んだことを応援しようと決めた。
献舎されて復活した後、ずっと側にいてくれた藍忘機。
そして、近くでその姿を見ていたからこそ、仙督の座につくのが相応しいとさえ思えた。
魏無羨の記憶の回想にまるで同意するように、藍景儀がしたり顔で頷いていた。
「含光君様こそ仙督にふさわしいお方です。僕はずっとそう思っていました。むしろ他にいらっしゃると思いますか?魏先輩」
「・・・なぜ俺に聞く?」
「魏先輩だって当然そう思っていらっしゃったのでは無いですか?含光君様とずっと一緒にいらっしゃったのですから」
「景儀」
たしなめるように声をかける藍思追に藍景儀は「思追だってそう考えていただろう?」と同調を求めた。
「私は・・・」
藍思追は戸惑ったように口を濁した。
「私は、…とくに何も考えていなかった。含光君様は、何であろうと含光君様だから・・・」
「そうだ。含光君は、これからも含光君だ。仙督であっても無くてもきっと変らない」
魏無羨がコクコクと頷くとそう言った。
…だが、弟子達は誇らしいだろう。自分の師匠が仙督になるのだから。
魏無羨は藍景儀と藍思追の顔を見ながら、昔の自分とかつての江氏の宗主であった江楓眠
を思い出していた。
…俺には、仙督じゃなくても、誰よりも誇らしく素晴らしい師匠だった・・・。
しばし過去を思いだし、節目がちで無言になった魏無羨に、藍思追と藍景儀は顔を見合わせた。
「魏先輩がこれからも姑蘇藍氏に滞在して頂けるなら心強いです」
藍思追が魏無羨の意識を戻すかのように言った。
「どうぞ、今後ともご指導よろしくお願いいたします」
藍思追が拝礼して、習うように藍景儀も一緒に拝礼するのを、
魏無羨は「やめろよ」とめんどくさそうな体で止めた。
「むしろ、これからいろいろ世話になるのは俺だ。二人とも頼んだぞ。もし俺が啓仁先生に姑蘇藍氏から追い出されそうになったら、少しはかばってくれるだろう?」
「啓仁先生のお言葉には逆らえませんが、万一、そんな事になったら、含光君様にすぐに御助力をお願いします。仙督となられる含光君様の御意見なら、先生もお聞き届けになることでしょう」
…ああ、そうか。
今さらながら魏無羨は気づいた。
姑蘇藍氏の中で、宗主である藍曦臣よりもまだ発言力を持っていた藍啓仁。
魏無羨が雲深不知処にとどまることを説得出来たのは、藍忘機が仙督の座につくことになったこともあったのかもしれない。
藍忘機はそんな事をおくびにも出さずにいたけれど・・・。
その後。
魏無羨は、午後からは体術の稽古と闇狩りの為の打ち合わせがあるという藍思追と藍景儀と丘の上で別れると、河のせせらぎを眺めながら一人ボンヤリと丘の上に座り込んでいた。
小林檎は小川に入って、のんびりとした調子でアブと戯れている。
沢山の兎たちが周囲でぴょこぴょこと動き、新参者の魏無羨を遠巻きから警戒しているようだった。
魏無羨は苦笑した。
「小兎子(小うさぎ)、そんな目で俺を見ないでくれ。俺だって、何も考えないでここに来たわけじゃない」
返事のかえってこない兎に魏無羨は話しかけた。
…自分に出来ること。やりたいことをしたい。ただ藍湛の迷惑になるようなことはしたくない。
そんな事を考えていた魏無羨は、ふと、誰かがこちらに近づいてくる気配にハッとなって顔を上げた。
白い衣を着た長身の男が視界に入ると、魏無羨は一瞬嬉しそうに瞳孔を開いた。
だが、すぐにそれが思っていた人物と異なることに気付いた魏無羨は、笑顔を微笑みに変えて立ち上がるとその人物を迎えた。
「沢蕪君」
「魏公子、忘機じゃなくてがっかりしましたか?」
にこやかに、だが、少しからかうような藍曦臣の言葉に魏無羨は苦笑を浮かべると拝礼した。
「沢蕪君は散歩ですか?」
「いいえ、藍忘機の弟子達に、あなたがここにいると聞いて参りました」
「俺に、何かご用件が?」
「ええ」
藍曦臣は、魏無羨と向き合うと改まった顔で言った。
「魏公子。叔父が、あなたと話がしたいそうです。これから私と一緒に叔父のところまでいらしていただけませんか?」
…藍啓仁先生が俺に話。
「分かりました。伺います」
やはり、この時が来たか。という、神妙な面持ちで魏無羨は藍曦臣に頷き返していた。
(続く)
「陳情令」藍湛・・・仙督就任ですよ。知ってました?奥さん。
みつばは知らなかったですよ。←おいおい。
魔道祖師ファンの方に「みつばさん、どうして陳情令の藍湛は、仙督になったと思われます?」って聞かれるまで知らなかったんです。
「え?何の話ですか?仙督?え?原作ではそんなものになってなかったけど」←軽いパニック。
ええ、でも、ドラマ内でしっかりラストエピソードで語ってます。確認しました。みつばがガッツリ見逃しただけ。・・・あのラストはだからか~。と納得半分。余計、納得できない部分も半分。
原作の藍湛×魏嬰とは違う道を歩むことになります。魏嬰はもう原作のように、お気楽な次男坊の「嫁」として姑蘇藍氏内で暮らすことは難しいと考えます。みつばもお気楽な二次小説を書いてられません(苦笑)でも作ったプロットは、ほとんど変わり無かったので、このままシリーズ話をすすめます。
詳しいあとがきは、この話が完結した後に書きます。
【拍手コメントレス】
王一博さん(藍湛)、肖戦さん(魏嬰)。素敵ですよね。王一博さんは、撮影所でもよく笑っている姿をメイキングシーンで見られます♪お二人は本当に仲が良さそうです。あんまり仲が良さそうなので、腐女子の妄想が止まりません(汗)魔道祖師ファンの方に教えて頂きましたが、そういう目線のファンの方は特にお二人をggdd(兄貴×弟)、bjyx(肖戦さん×王一博さん)と呼ばれているようです。そんな二人のファン動画も沢山見られます♪
本筋から離れても大丈夫なので、役者さん情報などもありましたら、ぜひコメントで教えてください♪「陳情令」に関しては、主役のお二人他、リアルの役者さん達にも夢中のみつばです♪
江澄役さん。役ではツンツン怒りんぼさんでしたが、素のお姿はとっても優しい控えめなイケメンお兄さんですよね♪すごく低姿勢な感じで、確かに「受け」っぽい(笑)お声も歌も素敵です♪
「陳情令」「魔道祖師」知ってますよ♪観ましたよ♪
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