韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説「ゲレンデへいこう」(3話)です。
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この二次小説は未完になっている「ゲレンデへいこう」の第3話です。(今までのお話)
「ゲレンデへいこう」1話。「ゲレンデへいこう」2話。ゲレンデへいこう(3話)ヘリが初級者用から中級者用のゲレンデで、スノーボードが出来るようになった頃。
あたりは薄暗くなっており、ゲレンデにもライトがつきはじめた。
ヘリとイヌは、部屋をチェックインする為に予約したホテルにむかった。
二人がホテルのフロントのカウンターの前に立つと、見覚えのあるフロントマンが対応した。
フロントマンもヘリの顔を見ると同じことを思ったようだった。
「お客様は……」
フロントマンが何か言いかける前に「そうです」とヘリが返事をした。
「一昨年の冬に、このホテルに泊まりました」
「そうですね。はい。覚えております」
フロントマンは隣にいるイヌとヘリを目線だけで交互に見比べた。
仕事柄、人の顔を覚えているということもあるかもしれないが、フロントマンにとって、このマ・ヘリという客は、別の意味で印象づけられていた。
予約したのはスイートルーム。
だが、部屋がキャンセルになっていたことを知らず、騒いだあげく、なぜか次に予約をいれた客と相部屋で泊まっていたのだ。
その客というのも今フロントマンの目の前にいる男。
あれから、何がどうなってこうなっているのかは分からなかったが、
あの時相部屋で泊まったいわくつきの客たちが、今日は二人で訪れている。
フロントマンは、にっこりと微笑むとプロフェッショナルな対応で二人を接した。
「バレンタインデーです。どうかこのホテルで楽しい時間をお過ごしください」
「どうも」
ヘリとイヌは顔を見合わすと、くすっと笑った。
ベルボーイがヘリとイヌの荷物を部屋に運び入れた。
イヌからチップを受けとったベルボーイが部屋を去っていくと、ヘリは2年ぶりに目にするホテルの部屋をきょろきょろと見回した。
「変わってない。やっぱり、素敵な部屋ね」
「そうだな。君が溺れかけたバスタブも変わってないか見に行こう」
そう言って、メゾネットタイプの部屋の二階に上がろうとしたイヌをヘリが下から軽く睨みつけた。
「…イヌ、バレンタインデーの記念日を楽しむためにこのホテルを予約したのよね?」
「そうだよ」
「それに、私をからかって楽しむって意図もあった?」
「違うって言っても、信じてくれるか?」
にやにやしているイヌの顔に、ヘリは大げさに吐息をついてみせた。
「そっちがその気なら、私にだって考えがあるわ。
あなたが2年前にした“いじわる”をチクチク蒸し返して、謝罪の代わりに、いろいろしてもらうんだから」
「いいよ。手始めに、一緒に風呂に入るか?ほら、バスタブも2年前と変わらないみたいだ」
バスタブは、寝室の近くにあった。
2年前のあの日。疲れのあまり、入浴中に眠ってしまったヘリは、バスタブの中であやうく溺れかけたのを、様子を見にきたイヌによって助け起こされていた。
助けられたとはいえ、入浴中に部屋に来るなんて。
すっかり、信用を無くしたイヌをヘリは追い出した。
そして、ヘリはイヌを見張るように封鎖したドアの前で眠り、せっかく空いているベッドにも横にならずにいたのだった。
…今日は、ベッドに眠れるかしら?…イヌと一緒に。
そんな事を考えて、チラリとイヌを見やったヘリは、今更のように赤く染まった頬を隠して、イヌから顔をそむけた。
「一緒には入らないけど、私は今風呂に入りたいわ。スノーボードをしたから汗で体がべたべたしてるもの。食事前にさっぱりしたいの」
「わかった。じゃあ、君が先にシャワーと風呂を使うといい。
食事はホテルのレストランを予約しているが、時間まではまだある」
「うん。じゃあ、出てって」
「OK。ただし、ドアは開けておけ。誰かさんがうっかり風呂で寝てしまっても、助けられないからな」
早速、チクチクといじわるを蒸し返してきたのはイヌの方だった。
軽く睨みつけるヘリに、楽し気に笑うと、イヌは下の階に降りていった。
ヘリは、バスタブに湯をはり、泡風呂にして入った。
そして、手足を伸ばしてくつろぎながら、スノーボードの練習で少し痛みだした筋肉をほぐすように手でマッサージした。
…スノーボードも出来たし、楽しかったわ。
また、明日帰る前に滑ってみて、イヌと一緒のコースにも行けるかしら。
イヌの指導が上手だったこともあり、ヘリのスノーボードの上達は早かった。
ヘリは、転んで打った腰に痣が出来ていないかを姿鏡で確認すると、バスローブからイブニングドレスに着替えて、下の階にいるイヌのところに戻った。
「そのドレス…。やっぱり、オークションにも行くつもりか?」
そう聞くイヌに「オークションは関係なくて、これはおしゃれ」と答えた。
2年前と違って、ヘリの手持ちのドレスも少なくなっていた。
そして、仕事中にはもちろん着ることは無かったが、機会があれば、素敵な服を着てみたいという欲求は変わっていないヘリだった。
「恋人と記念日を過ごすのだもの。綺麗なところを見て欲しいって思うじゃない?私たちが“まともに”過ごすバレンタイン記念日なんだもの」
「そうだな。強引に相部屋にして居座る客もいない」
「監視も盗みもバスルームを覗くことをする客も無くね」
軽口の応酬の後、ヘリとイヌは笑い合った。
それから、イヌがシャワーを浴びに2階に行くと、ヘリは1階の部屋を降りて、調度品や飾り、サービスとイヌの手配で置かれている品々を眺めてまわった。
テーブルの上に置かれた酒、ランプ、花。美しい器に盛りつけられた菓子。
…全部、あの時と同じね。
ヘリはくすっと笑った。
いじわるを抜きにしてもイヌの演出は変わらなかった。
…でも、今回は全部私にだわ。
ヘリは、テーブルの上に置かれたチョコレートの箱につけられたメッセージカードを手にとった。
『愛しい恋人へ』
…ふふっ。
ヘリは、顔をほころばせると、中のチョコレートを1つ摘まんで口に入れた。
甘い。
これからの時間、恋人と、このチョコレートの味と同じくらい甘い夜が待っている。
そう思うと、チョコに入っていた、ほんの少しのウイスキーで酔ったような気分になった、ヘリだった。
…バレンタインのプレゼントも用意してる。
ヘリは、チラリと、クローゼットの方に目をやった。
初めてのバレンタイン記念日。ずっと何をプレゼントしようと考えていたヘリだった。
クリスマスには、手編みのカーディガンをプレゼントしたから、あのカーディガンに合う服もいいわね。そんな事を思って、男性服を扱っている高級ブティックをのぞいていたヘリだった。
だが、結局、他にイヌにあげたい物を思いついたヘリは、別の物を用意していた。
…イヌは喜んでくれるかしら。
そんなことを考えて、ミネラルウォーターを口にしていたヘリは、ふと何かを思い出して、動きを止めた。
…あれ?そういえば…私とぶつかったあの女性…何か気になると思ったら、あの人…。
記憶力の良いヘリが、何かを思い出し、首をかしげているところに、風呂から出たイヌが2階から降りてきた。
「どうした?記念日の演出の仕掛けでも考えてるのか?」
イヌは、ヘリのドレス姿に合わせてスーツを着込んでいた。
「違うわ。ちょっと気になった事を考えていただけ。たいしたことじゃないの。
うん。人の好みはそれぞれだから」
ぶつぶつと独り言のように言って、何でもないと手を振るヘリにイヌが苦笑した。
「今日は、仕事のことは考えるなよ」
「そうよね。ええ。職業病かしら。ちょっと気になることがあると、何かあるんじゃないかな?って考える癖が出るのかも」
「君の場合、職業病とは関係なく、そんな癖を持っていそうだけど」
そう言って、イヌはヘリの座っている椅子の横に立った。
「今夜、君が気にすることは一つだけだ」
「何?」
「目の前にいる君の恋人のこと」
「…ふふ」
自分の頬に置かれたイヌの手にヘリは自分の手を重ねた。
「もちろん、あなたもね」
イヌが身を屈めて、座っているヘリにキスを落とした。
物足りなさを感じるほど軽いキスだったが、恋人の記念日の夜は始まったばかり。
フルコースを堪能する前の食前酒のような気持ちで、ヘリとイヌは互いの唇を味わった。
「じゃあ、ディナーに行くか。お腹はすいてる?」
顔を離したイヌが聞いた。
「ええ」
ヘリは、イヌが差し伸べた手を取ると、椅子から立ち上がった。
そして、イヌの腕に自分の腕を絡めると、「今夜は、最後までエスコートしてくれる?
王子様」と、悪戯っぽく言った。
「もちろん。お姫様」
冗談ぽく言いながらも、イヌが本気なのは、ヘリには分かっていた。
顔を見合わせ、再び笑い合うとヘリとイヌは部屋を出た。
しかし、この先の二人を待ち受けるのは、ヘリが想像していたようなバレンタインの極上フルコースでは無かった。
2年前は、イヌの計画通りのトラブルを経験したヘリだったが、
今回は、イヌも全く予想外の展開が、二人を待ち受けていた。
そのことを。まだ何も知らない恋人達は、すっかり浮かれた気分で、予約したレストランに向かっていた。
(続く…けど、この続きは本当にもう無いです)
【あとがき】
…この後、いろいろ事件が起こるのよね。みつばのプロット上では。
検事、弁護士という仕事忘れて、せっかく休暇で来ているのに。
恋人たちに、思う存分、イチャラブさせてあげればいいのに。
どうも、みつばの二次的妄想世界では、いつも事がすんなり運ばないらしい。
2年前初めて出会った(本当の初めての出会いは小学生時代)いわくつきのホテルで、二人は、ラブラブなバレンタインデーを過ごすことが出来るのか?
そして、ヘリがイヌにバレンタインでプレゼントした物はいったい何なのか?
答えは、別の二次小説のどこかで、いくつか伏線いれていたので、気になる方は探してみてください。←作者がどの話に、伏線入れていたか忘れています(汗)
プレゼントが何か?に関しては、「
優等生3」「
聖夜の祈り」の中にもヒントがあります。
未公開話「花の微笑み」では、ばっちり答えが出てくる予定でした。
…今になって「優等生3」とかって、もう、完全「裏箱」行きの二次小説なのでは?と。
本当にひさしぶりに、過去の自分が書いた「優等生3」を読み直してみたけど、すごく大概なアレの話(苦笑)
若かったな~。自分。
←いや、10年前もそんなにいうほど若い年では無かった。閑話休題。
この「ゲレンデへいこう」は、ドラマ1話とリンクした場面です。
スキー場。フロントマン。ホテルの部屋も。
全部、ドラマ1話で出てきた所なので、ドラマのDVD等をお持ちの方は、見てみてください。
偶然の出会いを装い、計画的にマ・ヘリに近づいたソ・イヌの物語が、ここからスタートするのよね。
マ・ヘリを計画にはめたつもりのソ・イヌだけど、自分が恋の罠にはまるという。
…しかし、彼女は彼が世界で一番愛しちゃいけない人だった。切ない(涙・・・)
それでも、2年後は、きっと、
同じホテルの部屋で(ちょっとアクシデントがあっても)二人は、ハッピーでラブラブのバレンタインを過ごしたはず。という、みつば妄想の二次小説でした。
イヌ×ヘリCPの幸せを、10年たった今でも願っています♪
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