※「検事プリンセス」ファンの方、
「みつばのたまて箱」の「検事プリンセス」二次小説を読んでくださった読者様へお久しぶりです。
しばらく「検事プリンセス」の二次創作は休止状態でした。
その間、いろいろなことがあったのですが、それとは別の理由で、
みつばは、今、このブログ自体を終活に向けて整理させて頂いています。
ずっと二次小説シリーズの続きを楽しみに待ってくださっていた方には、大変申し訳ありません。
今の心残りは、未完や未公開状態の二次小説のプロットを誰にも知られずに消してしまうことです。
休止していた間にもコツコツと書いていた二次小説。
未完なので、公開はしていなかったのですが、残存しているデータを最後の日までに、ちょっとずつでも公開して、いつか訪れるかもしれない、ドラマファンの方に見て頂けたら嬉しいな。という思いです。
「MISS YOU」は、「聖夜の祈り」の後。更新予定だった番外編の物語になります。
ソ・イヌ(ソ弁護士)が13歳(12歳)の時と義父になるジョン・リー(みつばのオリジナル設定)との出会い。
そして、「聖夜の祈り」の裏側の事情や物語も描く予定でした。
その1話(序章部分)をせめて残しておきます。
更新予告とそのイラストは
こちら。
韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「MISS YOU」(1話)です。
二次小説は、ドラマ最終回16話以降の続きをみつばが、勝手に妄想したお話ですが、
ドラマのネタバレ等も含んでいますので、現在ドラマを見ている方、
これからドラマを見る方はご注意ください。
みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
「
検事プリンセス二次小説INDEX」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「
お願い」を一読してください。
MISS YOU(1話)『ジョン・リーさんですか?キム・ミョンスクさんの緊急連絡先にあなたのアドレスがあったのでご連絡いたしました。ミョンスクさんが…』
警察からの電話で、ジョンは上着を着ることも忘れて、車のキーを持つと家から飛び出した。
まだ夜も明けきっていない時刻。
車通りもほとんどない薄暗い道を、ジョンは電話で聞いた警察病院へと車を走らせた。
建物につくと、応対した女性警官に案内されたのは、霊安室だった。
寒さとは違うところから来ている震えを抑えながら、
ジョンは、警官に促されて部屋の中に入った。
目の前に横たわっている人物。
警官が、その上を覆う白い布を取り外した。
「ああ…。」
とっさに手でおさえた口から
呻きのような声がジョンから漏れ出た。
…ミョンスク!
ここにくるまで、横たわっている人物をはっきり確認するまでは
信じられずにいた現実がそこにあった。
電話で、キム・ミョンスクは交通事故にあって、即死状態だったと聞いていた。
しかし、その顔は綺麗だった。
白く生気のない肌と唇。
まつげが凍りついたように動かない閉じた瞳。
まるで眠っているかのような姿。
「おそらく車に接触した時に、頭部を強打し、首の骨も折っています。
頭以外に外傷はほとんどありません。即死で苦しむことも無かったでしょう」
まるで慰めるように伝える女性警官の言葉も、ジョンの耳に入らずにいた。
震える手でそっとミョンスクの頬に触れた。
冷たい肌も、低気温の中上着も着ずにかけつけたジョンの手よりもまだ温かみが残っているようにさえ感じた。
「ジョン・リーさん。キム・ミョンスクさんとはどのような御関係ですか?」
気遣いながらも事務的に聞く警官にジョンは「友人です」と答えていた。
「緊急連絡先にするほどの?」
警官の何か含みのある聞き方に、ジョンは虚ろな表情でうなずいた。
「彼女は、学生の時ニューヨークの大学に留学していました。
その時からの親友です。数か月前に韓国からこっちに移り住みましたが、
知人がほとんどおらず、頼れるのは私ぐらいだったのでしょう」
「なるほど」警官は書類に何か書きこんだ後、
まだボンヤリとミョンスクを見つめて佇んでいるジョンの背をそっと撫でた。
「親しい方を亡くされて、辛いお気持ちをお察しします。
ジョン・リーさん。ところで、ミョンスクさんの息子さんのことはご存じですか?」
ミョンスクの息子と言う言葉でジョンはハッと面を上げた。
「そうだ。ミョンスクの子ども…。知っています。会ったこともあります。
彼は今どこにいますか?」
「彼もここに来ています。ミョンスクさんが事故に合われた時、近くにいたそうです」
「彼が事故現場に?」
「こちらです」
警官がジョンを霊安室から少し離れた部屋に案内した。
ノックすると中から別の男性警官が顔をだした。
そして、ジョンの顔を見、女性警官から身元を説明されると頷いて、部屋のドアを開けた。
「ソ・イヌ君。お母さんのご友人が来て下さっている」
警官の呼びかけにも返事が無かった。
ジョンはそっと部屋の中に入って、奥に目を凝らした。
パイプ椅子に深くうつむいた少年が座っていた。
目の前のテーブルの上にカップが置いてあった。
手づかずのミルクは冷めているようだった。
「イヌ君?」
ジョンが呼ぶと、少年の肩が少し動いた。
そして、ゆっくりと顔を上げてジョンを見た。
うつろな表情の中で、暗い瞳がジョンを捕えて、ほんの少し揺れ動いた。
「イヌ君。ジョン・リーだ。お母さんと一緒に会ったことがあるね。おじさんのこと覚えているかい?」
イヌが微かに頷いた。
その反応にジョンが内心少し安堵した。
「お母さんのことは……」
そこでジョンは言葉を止めた。
…目の前の少年に何と声をかければよいのだろう。
こんなにショックをうけている様子の彼に。
私は何を言えばいいのだろう。
ジョン自身、まだミョンスクの死を受け入れられずにいた。
ジョンは、言葉を飲み込んだまま、ただそっと目を伏せて、イヌに哀悼の意を示した。
イヌはジョンの顔から目を逸らすと再びうつむいた。
その姿に、ジョンはたまらない気持ちになって、
気付くと、イヌに駆け寄ってその身体を思わずギュッと抱きしめていた。
イヌは、なんの言葉も発せずに、ただジョンの抱擁を受け止めていた。
しばらくそうした後、ジョンはそっとイヌの体から離れた。
イヌは、先ほどより余計に顔をふせ、その表情はうかがいしれなかった。
部屋の中にいた男性警官が、女性警官にアイコンタクトを取ると、
持ち場をまかせて、ジョンを促して部屋の外に出た。
「ジョン・リーさん。キム・ミョンスクさんの古くからの御友人なんですよね?息子さんのことはどこまでご存じですか?」
「彼が生まれた時から、ミョンスクから話を聞いています。と言っても、時々していたメールでですが。イヌ君に実際に会ったのは、ミョンスクと彼がニューヨークに来た数か月前に1度だけです。今小学校6年生で、こちらに来たばかりで英語はまだあまり話せないことは知っています」
「それでは、息子さんとはまだそれほど交流が無かったわけですな」
警官が困ったように頭をかいてため息をついた。そして、「じつは…」と切り出した。
「ミョンスクさんが車に接触した事故の時、目の前に彼がいたそうです。彼は母親が目の前で車にはねられるところを見てしまったのですよ」
「なんですって?」
驚くジョンに警官が続けた。
「今はあんな状態ですが、ここに来る前はもっとひどく取り乱していました。
母親が目の前であんな風になっては仕方が無いことですが、事情を詳しく聞くことも出来ずにいて。目撃者の話を集めて、ようやくこちらも事故の時の様子が分かったんです。
どうやら、ミョンスクさんは、通りの向こうにいた息子の姿に気付いて、急いで道を横切ろうとしたらしいです。それで車が来るのに気づかずに事故にあわれた」
「なんてこと・・・」
ジョンは、震える声を呑み込んだ。
「彼がどうしてあの場所にいたのかは、まだ本人から聞けていないのですが、おそらく、心細くなって母親のいるバイト先を訪ねようとしたのでしょうな。それでバイト帰りの母親をあの場所で待っていた」
「バイト先とは?彼女はどんな仕事を?」
「ご存じないですか?チャイニーズレストランの皿洗いの仕事です」
「え?ミョンスクは、清掃会社の受付事務の仕事をしていたはずですが」
「それは日中の仕事でしょう。それも短時間のアルバイトだったようで、夕方からは違うアルバイトもしていたようですよ?」
…知らなかった。
ニューヨークに来て、ジョンに連絡をとったミョンスクと初めて会った時。
ジョンは、ミョンスクに自分が経営している事務所の仕事を紹介するつもりだった。
ミョンスクが遠慮するだろうことも考えて、それが断られたら、知人の職場を紹介するつもりだった。
しかし、ミョンスクが明るい笑顔で、「仕事はもう決まっている」と言っていた。
…あの言葉をうのみにしたなんて。
ジョンは悔やむように片手で顔を覆った。
…彼女の、どんなに親しい他人にも借りをつくりたくないというプライドが高いところを失念するなんて。
いや、気付けなかった自分が愚かだったのだ。
アルバイトを掛け持ちするなんて、やはり、就職活動は難しかったのだろう。
この不景気にそんな異国から来たばかりの人間を雇うほど、この場所は甘くは無かったのに。
それでも、ミョンスクが私に連絡をとったのは、自分の仕事のためじゃない。
ジョンは顔から手を離すと、閉じた部屋のドアをふりかえった。
部屋の中にいる少年。
息子の今後を案じて、万一の事態に備えていた。
こうなることを心配していたのだろう。
「…彼はこれからどうなるのですか?」
ジョンの質問に警官が、ちょっと困った顔をして首をかしげた後、再びため息をついた。
「あちらの国には頼れる親族も知人もいなそうですからね。
すぐに強制送還というわけにもいかないですし、未成年ですから、まず児童相談所に連絡をとって、それからしばらくは養護施設に身を置くことになるでしょう。そこで養子縁組してもらえるかどうか…。まあ、その後の手続きに関しては、ちょっとこちらでは分かりませんが」
そこで警官はチラリとジョンを見た。
「あなたのご家族は?お子さんは?」
「私は、独身です。子どもはいません」
「お仕事は?」
「会計事務所を経営しています」
「うーむ…」警官が唸った。
「なにか?」
「いや…。ソ・イヌ君にとって、この国で唯一頼れそうなのはあなただけのようなので…。失礼。今の質問は忘れてください」
警官という立場でうかつなことも言えないのだろう。
警官は気まずそうな態で頭をかいた。
「ジョン・リーさん。あなたのおかげでミョンスクさんの身元は確認されました。
ありがとうございました。もし、他にミョンスクさんを知っている人がいるようでしたらご連絡先を教えてください」
「ええ・・・」
かつての学友ならミョンスクのことは知っているだろう。
だが、もう長い時間がたっていて、ミョンスクと連絡をとっていたかも分からない。
それに、学友たちのほとんどがニューヨークを離れている。
「あの…、今日のところは私がソ・イヌ君をお預かりしても?」
つい、そう言ってしまったジョンに、警官は驚いた顔をした。
「いや、それは…」
「しばらくイヌ君はどこかに預けられることになるんですよね?
彼はこの国に来たばかりでまだ分からないことだらけです。
それで、お母さんもこんなことになったばかりで、知らない人ばかりの所に行くのは可哀そうです。
今後のことが決まるまで私が彼の身元引受人になってもいいですか?」
ジョンの言葉に警官は当惑して、部屋のドアをノックした。
そして、中から出てきた女性警官と離れた場所でしばらく何やら話をしていた。
やがて、女性警官がジョンの元に戻ってきた。
「すみません。ジョン・リーさん。今日のところは、ソ・イヌ君をこちらで預からせて頂きます。もちろん、もうしばらくしたら休眠の出来るところで寝かせて、食事も提供します。それからは、やはり児童相談所の方に来て頂いて、相談してから今後の事を決めさせて頂きますので」
「私は、ミョンスクの、彼の母親の親しい友人でした。力になりたいのです。それにミョンスクから頼まれていました。自分に何かあったら彼をお願いしたいと」
「そんなお話しをされていらっしゃったのですね。…わかりました。係の者に伝えておきます。
ただ、ジョンさん。あなたと彼のお母様が親しい間柄だったとしても、息子さんとはまだ1度しかお会いしていないでしょう。それに、ソ・イヌ君は今とてもショックを受けている状態です。彼には今第一に休養と専門家のサポートが必要だと考えます。彼のことでお力ぞえをお願いするにしても、また落ち着いてから、ご連絡さしあげたいのですが、よろしいですか?」
くいさがるジョンに、女性警官は労わるような笑みを浮かべながらもきっぱりと言った。
女性警官の言っていることが最なことはジョンにも分かった。
今自分がイヌに出来ることは無い。
そして、ミョンスクにも。
…ミョンスク…。
「分かりました。ただ、検分などがすべて終わったら、ミョンスクの埋葬は私の方でさせて欲しいのです。それは許可して頂けますか?」
「ええ、大丈夫だと思います。ジョン・リーさん。またすぐにご連絡させて頂きます。
ミョンスクさんのことも。イヌ君の件に関しても。御足労ありがとうございました」
「はい」
ジョンは、部屋から離れる前に開いたドアの隙間から、うつむいたまま椅子に座っているイヌの姿を遠目で確認した。
それから、霊安室の方向を仰ぎ見た。
ずっとあの場所に、ミョンスクの側にいたかった。
もう声をかけてくれることは無くても。
夜明け直後の、薄闇に仄かに浮き上がった街の景色が、建物の窓から見えた。
幻想的な景色に、ジョンは、この出来事が夢幻だったら、どんなに良かったのに。と思った。
ジョンは、がっくりと肩を落としながら、ふらつく足どりで建物を出た。
何が起きたかも理解できないほどのショックを受けていたが、
その日もジョンにはやるべきことが山積みだった。
経営している会計事務所は、とても忙しい時期だった。
経営者であるジョンは、いつもどおりに出社すると、仕事の指揮をとった。
(未完)
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