韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説「聖夜の誓い」です。
検事プリンセス、みつばの二次小説の最新作です。
「聖夜の祈り」から1年後のクリスマス話。
関連したイメージイラストと、雑記は、こちら。みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
「
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「
お願い」を一読してください。
聖夜の誓いカチャリ…。
ホテルの部屋の窓辺に立ち、夜景を見ていたヘリは、
ドアが開く音で振り返った。
「メリー・クリスマス」
声と共に、部屋に入って来た“サンタクロース”に、ヘリが笑った。
「素敵な正装ね。イヌ」
赤い帽子とサンタ服を着こんだイヌがヘリにウインクして見せた。
「クリスマス仕様だ。似合うか?」
「ええ。パーティーの会場から、その恰好のままで来たの?」
「着替えた後の姿を見せたら、子ども達の夢を壊すかもしれないからな」
「みんな喜んでくれた?」
「ああ。サンタの恰好も、プレゼントも」
「よかったわ」
「うん。待たせて悪かった」
「ううん」
ヘリが首を横に振った。
「サンタさんは、絶対、今日中に私のところに来てくれるって信じてたから。
それに、見て。この部屋、夜景が最高なの。ずっと見飽きないくらい」
ヘリが、イヌのサンタ服の裾をひっぱって、窓の方に連れていった。
「昨年、ニューヨークのホテルで見た時と同じくらい素敵。どう?」
「ああ」
イヌとヘリは、並んでホテルの窓からの夜景を眺めた。
12月24日。クリスマスイブ。
ヘリとイヌには、恋人になってから過ごす二度目のクリスマスイブだった。
昨年は、アメリカに住むイヌの義父に会いに行き、ニューヨークの街で過ごした二人だったが、今年は、ソウルのホテルで過ごすことに決めていた。
しかし、ヘリは、仕事。
イヌの方は、知人の頼みで、急遽、チャリティーパーティーの手伝いをすることになった。
日中のデートは無く、予約していたレストランのディナーはキャンセル。
ホテルの部屋で落ち合う、というクリスマスイブ。
昨年のようなクリスマス休暇と違い、
計画も変更されていたが、ヘリは十分に満足していた。
イヌの予約したホテルは、ヘリ好みの部屋。
夕食には、ホテルのルームサービスで料理と酒が準備されている。
何より、恋人がそばにいるクリスマスイブ。
これ以上、望むことはあるだろうか?
それに・・・。
ヘリは、左手のくすり指につけられた指輪に目を落とした。
記念日にもらった指輪と重ねてつけていた指輪は、
イヌにプロポーズされた時に贈られた婚約の印だった。
明日25日の夜は、親同士の顔合わせディナーも予定されている。
ヘリの父母、マ・サンテとパク・エジャ。
イヌの養父、ジョン・リー。
アメリカに住んでいるジョンは、先日から韓国に訪れていて、
今日は、こちらにいる友人達と過ごすという話だった。
イヌから婚約の話を聞いた養父のジョンは、とても祝福し、
ヘリにも“おめでとう”という、メッセージを送ってきていた。
そして、ヘリの父、マ・サンテも。
イヌとの交際を認めてくれていたサンテではあったが、
この結婚は許してくれるのだろうか?
ヘリの中には、そんな気がかりが少なからず残っていた。
だが、ヘリが知らないところで、イヌとサンテが会っていたらしいと、
母のエジャが、後でこっそりとヘリに教えてくれていた。
二人の間にどんな話が交わされたのかの詳細は分からなかったが、
ヘリが婚約を報告した時、サンテは「わかった」と静かに言った。
やわらかな微笑すら浮かべていたサンテの顔に、
ヘリは、サンテが、この結婚を本心から認めてくれたと感じた。
こうして、結婚式の日程と場所も決まり、
ヘリのウエディングドレスは、ヘリ自身がデザインし、
親友のユナをはじめ、デザイン科にいた時の友人達が制作すると言ってくれていた。
二人の結婚に向けて、準備は着々と進められている。
そんな中の、クリスマス休暇。
「“婚約者”と初めて過ごすクリスマスね」
ヘリがウキウキした口調で言った。
「そうだな。そして…」
イヌが、わざと、素っ気ない顔で言った。
「婚約者と過ごす最後のクリスマスだ」
来年の今頃には、恋人でも、婚約者でも無い。
伴侶として、クリスマスを過ごすだろう。
イヌは、そう言っていた。
「独身最後のクリスマスってことね?」
「それは、分からないな」
「何よ。それ。分からないって」
うそぶくイヌに、ヘリが頬を膨らませた。
「はっきり言ってちょうだい。イヌ。
僕にとって、マ・ヘリが、最初で最後の婚約者だって」
「あれ? それ、僕がプロポーズの時に言ったよな?」
「そんな台詞言っていないわよ」
「そうか? 僕は何て言っていた?」
「覚えてないなら、思い出させてあげるわ。
私は、記憶力は、いいんですからね」
ヘリは、フンと鼻を鳴らすと、腰に手をあてた。
「『マ・ヘリ。君は、僕にとって、かけがえのない人だ。だから、この先の僕の未来にも、ずっと君がいて欲しい』って」
「そうだ。それで、君が「OK」すると、『お互い、最初で最後の婚約期間を楽しもう』と、僕が言った」
「あれ?そうだったかしら?」
「やれやれ。数か月前の話なのに。
そして、まだ数か月残っているのに、先が思いやられる」
イヌが、肩をすくめると苦笑した。
「そっか…。“あの日”からもう数か月たったのね」
ヘリが感慨深めに言って婚約指輪を見つめた。
「なんだか、実感が無いわ。
まだまだ時間があるって思っていたのに」
「今年は、いろいろな事があったからな」
イヌの言う、“いろいろな事”の中には、そんな一言で片付かないくらいの出来事も含まれていた。
ヘリが同意するようにコクリと頷いた。
「本当にいろいろな事があった。
仕事で関わった事件だけでなく。人との別れも…」
目の前で助けられなかった人がいた。
そして、過去、時間を共有してきた人と、心が離れるように別れたこともあった。
何かを思い出したように、ヘリの瞳が一瞬、暗い影を落とした。
しかし、すぐに吹っ切ったように、顔をあげるとイヌに微笑んだ。
「でも、新しい出会いも沢山あったわ。
いい出会いもいっぱい。イヌ、あなたもでしょ?」
「ああ。いろいろな事があった。
変わってしまったことも多い。でも、変わらないものもある」
イヌは、ヘリの肩を手で抱き寄せると言った。
「君は変わらない」
「それって…。私の本質が変わらないってこと?
それとも、あなたの中の私の存在が変わっていないってこと?」
「両方だ」
イヌが答えた。
「これから先のことは、分からない。
でも、そこは変わらないと信じている。だから誓うよ」
数奇な運命に導かれるように出会った二人。
でも、どんなに、抗おうとも、惹かれ合ってしまった。
再会して、付き合い、
その間も、困難や危機と遭遇しても。
やはり、離れることは出来ないと確信した。
――― だから、誓う。
「僕は、これからも、君と共にいる。ヘリ」
ヘリには、イヌから聞く二度目のプロポーズの言葉だった。
潤んだヘリの瞳が、婚約指輪の宝石のように輝いていた。
「私も。私も、誓うわ。イヌ」
二人を結び付けた過去の事件は消えなくとも。
会えない時間が長くても。
遠く距離が離れても。
「これからも、ずっと、あなたと一緒にいる」
ヘリは、イヌの体にしがみつくように、両手を回した。
ヘリをふわりと包み込む、赤い布地の洋服。
その感触に、思わず、ヘリは、クスっと笑い声をあげた。
甘くロマンチックな雰囲気を、イヌの着ているサンタクロースの服がやわらげている。
それは、悪戯好きの、イヌのいつもの悪ふざけでは無かったのだったが、ヘリは、いかにもイヌらしい、と感じていた。
「私のサンタさん」
抱きつきながら、クスクスと笑い続けるヘリに、
イヌが苦笑を浮かべて、浅いため息をついた。
考えていることは、ヘリと変わらなかった。
本来なら、正装で、スーツかタキシードでも着て伝えるべき誓いの言葉。
それを、コスプレ姿で言うなんて。
…だが。
イヌは思った。
二人で決めた、結婚式の日に。
今日のように、雪が降りそうな寒い時では無く。
木々の緑が眩しく、花が咲き乱れる季節の日に。
…本当の誓いの儀式は、本番にとっておこう。
その日は、待ち遠しくも、
今日のように、いつか必ず訪れる未来。
「来年のクリスマスには、私がサンタクロースの恰好をするわね」
と、茶目っ気たっぷりに言うヘリの頭に、イヌはキスを落とした。
聖夜の夜。
それは、誓いの証。
イヌは、腕の中のフィアンセに顔を上げさせると、
目を閉じ、口づけを交わしあった。
長いキスの後、イヌが言った。
「Merry Christmas, my fiancee.」
(終わり)
検事プリンセス二次小説の読者さまへ
【大切なお知らせ】ずっとブログをチェックしてくださっている方。
拍手、拍手コメントで励ましてくださった方。
二次小説を楽しみに、待っていてくださった方。
ありがとうございます。
読者さんが、皆いい人ばかりで、みつばは、甘えてばかりでした。
それなのに、復帰後は、違うジャンルの二次創作を始めている事が、申し訳ないと思っていました。
「検事プリンセス」の二次創作をずっと続けられていたら、
二次小説シリーズも、シーズン1、シーズン2、そしてシーズン3と。
時間軸通り、みつばのイヌ×ヘリの二次妄想世界も、
ドラマの時間の流れに合わせて、10年後の2021年で最終回でした。
シーズン2、シーズン3の話もいくつか更新していますが、
肝心のエピソードが沢山抜かされています。
この「聖夜の誓い」の前に、イヌはヘリにプロポーズして、婚約しています。
この2012年というと年には、「
夢桜」(公開済)の前に、未公開の3部作。
「その手をつなぐもの」「花の微笑み」「暗闇の灯」という、
みつばが、「検事プリンセス」の二次小説で最も書きたかった長編の物語が3つ。
この3作品を誰かに読んでもらえるなら、二次創作活動を終えてもいいな。ってくらい、思い入れのあるプロットでした。
その分、すごくシリアスで、技量的にも文字数的にも、創作は難しいと分かっていながらも、途中のエピソードは、書ける時に書いて、メモ書き保存していました。
脳内に鮮やかに浮かんでいた「検事プリンセス」の二次世界。
こんなドラマの続きを見たい、と自分が勝手に思い描いた妄想でしたが、作品として発表し、誰かに共感してもらえる喜びを知った、はじめての二次創作活動でした。
もし、やめてしまえば、作ったプロット全てと、まだ脳内に残っている映像の記憶も、全部、みつばの妄想のまま無かった事になってしまうんだな。と思いながら、宙ぶらりんの創作活動になっていました。
ただ、やっぱり、「検事プリンセス」好きの読者さんが1人でもいらっしゃっている間に、みつばが創った、この物語のラストエピソードを見届けて欲しい。
そんな気持ちで、「検事プリンセス」の次回作は、シーズン1のラストエピソードに、シーズン3のラストエピソードも加えて、最終回の話を更新予定です。
最終回を出してしまえば、物語は1度幕を閉じますが、
みつばの「検事プリンセス」の二次小説は、最終回と最終話が2つ存在しています。
本当に、「検事プリンセス」の二次小説の創作を辞める時は、最終話をブログにアップしますが、それまでは、最終回の話の間にある物語たちも、書けた時に、アップしていけたら、と思います。
公開日は未定ですが、
来年、「みつばのたまて箱」ブログ10周年のどこかで、と、目標を定めています。
検事プリンセスの10年後の世界のイヌ×ヘリ。
そして、みつばの二次創作した、主人公、ヘリのラストエピソードを、見届けてくださる方がいらっしゃったら、嬉しいです。
「検事プリンセス」記事の読者さまには、この記事が今年最後の記事になります。
今年もブログ「みつばのたまて箱」へのご訪問、そして応援、ありがとうございました。
本当に感謝しています。
にほんブログ村