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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「背馳」(最終話)です。

二次小説を読む注意点、コメント記入、「陳情令」の他の二次小説も
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

「陳情令」は現時点、日本語翻訳未公開のドラマです。(2020年3月より初放送予定)
原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は「邂逅」の続きになります。


背馳(5話)



「話?」

きょとんとしている魏無羨を、さらにジッと見つめた後、藍忘機は踵を返した。

「静室で待っている」

そう言い残すと、藍忘機は去り、姿が見えなくなった。

呆気にとられ、しばし呆然としていた魏無羨だったが、
自分が全裸だということを思い出すと、あわてて、竿にかけていた内衣を取り下腹部を隠した。

しかし、それは、藍忘機が去った後のことだった。

同性で、しかも同じ屋内で暮らしている身。

別段やましいことも、悪いこともしていたわけじゃないのだったが、魏無羨はなぜか気まずい思いになって、手早く洗髪をすませた。

井戸水での行水を終えた魏無羨は、肌に付着している水分を今まで着ていた内衣でふき取り、それで下半身を覆うと、静室の中に入った。

部屋の中で、藍忘機が、いつも、琴を弾いたり、本を読んだりしている座卓の前に座っていた。

瞑想はしていなかったが、伏し目がちの顔で、微動だにしない座姿。

…よく分からないけど、藍湛から何かただならぬ空気を感じる。

魏無羨は、少々気後れしながら、藍忘機の目の前を通り過ぎた。
そして、衣装箪笥を開けると、そこから清潔な衣服を取り出して着込み、藍忘機の座っている座卓の対面に座った。


「藍湛、いつ帰って来ていたんだ?」

「昨夜」

「昨日、帰れたのか。昨晩はよく休めた?」

「・・・・・・」

魏無羨の問いには答えずに、藍忘機が魏無羨の前にすっと風呂敷袋の包みを出した。

「君にだ」

「これ何?俺への土産?」

魏無羨は不思議そうに藍忘機の顔と風呂敷袋を見比べながら、包みを開けた。

中に、天子笑の大甕が1つ。そして、雲深不知処の紋が描かれた布。半手甲帯。折りたたまれた紙が1枚入っていた。


「今日の昼頃に、これを持って雲深不知処を訪ねてきた者がいたそうだ。山で家族が屍に追われ、大怪我をしていたところを助けてもらったと。この布を手掛かりにここを訪ねたそうだ。名前は名乗らなかったが、黒衣の若い男に礼を伝えたい、と。魏嬰、君のことだな?」

「あ、ああ。うん」

「門番がその者は留守だと伝えると、これを渡して、おかげ様で夫の怪我は順調に回復している、と伝えて欲しいと、言付かったそうだ」

布と半手甲帯は、綺麗に洗濯され折りたたまれたものだったが、それが、魏無羨が山で助けた空師の男の怪我の手当に使用したものだと分かった。

魏無羨は、風呂敷の中の手紙を手にとって広げた。

たどたどしい字で、こう書かれてあった。

『おにいちゃん。うさぎ。あめ。おとうさん。けが。ありがとう。』

文の最後に、絵が描かれていた。

丸い大小の団子のような円に、目鼻口。大きな長い耳のようなものが2つついている。

「…可愛いな」

魏無羨が、思わず微笑んで言った。

あの幼女が一生懸命描いてくれたのだろう。

「ほら、藍湛見て。女の子が描いてくれた兎の絵だ」

そう、藍忘機の顔の前に手紙を掲げて見せた魏無羨に、それまで固い表情だった藍忘機の口元が少しだけほころんだ。しかし、すぐに元の顔に戻ると、視線を伏せた。

藍忘機の視線の先に、雲の紋が描かれた布があることに気づいた魏無羨は、幼女の手紙をそっと座卓の上に置くと、布を手に取り藍忘機の方に差し出した。

「藍湛のこの布。洗って干してあったのを、つい持ち出してしまった。ごめん。返すよ」

藍忘機は、黙って魏無羨から布を受け取ると、それを懐の中に入れた。

魏無羨は、自分の半手甲帯を手首に巻きながら、広げた風呂敷袋の上にある「天子笑」の大甕を見つめて嬉しそうに言った。

「奥さんがわざわざ礼を言いに来てくれたんだな。空師の怪我の具合が回復にむかっているようで良かった」

そんな魏無羨の様子をジッと見つめて藍忘機が口を開いた。

「それと、彼らも来た」

「ん?彼らって?」

「思追達」

そう言って、藍忘機は袂から、魏無羨の通行玉礼とズシリと重そうな巾着袋を取り出して、座卓の上に置いた。

「金が必要なら補充する。これからはすぐに言いなさい」

巾着袋の中には、銀が多量に入っているのだろう。
魏無羨は、藍忘機からもらった金をほぼ使い切ってしまった事を言いそびれていたが、
通行玉礼と共に置かれたことで、状況を把握した。

「あ、ああ…ありがと」

…まあ、真面目なあいつらが黙っていられなかったんだろうな。

魏無羨は、心の中でのんびりとそんな風に考えて、
悪びれもせずに鼻のあたまを指で数回こすった。



今より、時をさかのぼること数刻前。


「静室」の門の前で、藍忘機に、魏無羨と昨日の事を問われた弟子達は、
顔を見合わせた後、観念したように項垂れて全てを白状していた。

夷陵の乱葬洞に行き、鬼将軍の慰霊碑建設や、野菜づくりを手伝っていたこと。
藍景儀達が姑蘇藍氏の街で会った魏無羨も合流して、仙剣に乗せて一緒に行ったこと。
帰りに、古代の魔物たちに遭遇し、戦った後、用事があるという魏無羨が、自分たちに通行玉礼を渡して、姑蘇の街に降りて残ったこと。

若い弟子達の話を聞いていた藍忘機の顔は、次第に極寒の氷原のようになっていた。

含光君は、普段から冷えた表情をしてはいるが、態度は決してそうでは無かった。

だが、今は、これまで弟子達が感じた事が無いほど怒っているように見える。

それまでの闇狩りでどんなに凶悪な魔物と対峙しても冷静だった藍忘機が、今は感情を乱れさせている。

藍忘機に、そんな雰囲気を無意識に感じ取った若者たちの間に緊張が走った。

当然、重い罰を言い渡される覚悟をしていた弟子達だったが、藍忘機の口から出たのは「わかった」の一言だった。

さらに、それだけ?という顔を見合わせて、当惑している弟子達に、
「さがりなさい」と冷たく命じた。

…罰は追って沙汰が下るのかもしれない。

その場に居づらくなった弟子たちは、藍忘機に揖礼すると、そそくさと門外の階段を下り始めた。

藍思追だけが去らずに残り、藍忘機の方に向かい合っていた。

「まだ何かあるのか?」

そう問う藍忘機の声は静かだったが、どこか苛立っている気を内包していた。

「含光君、魏先輩を叱らないでください」

藍思追の目は真剣だった。

「先輩のお金が無くなったのは、闇狩りの後で、私たちや他の仙門の弟子達にも食事をご馳走したからです。それに、先日のことは、私たちが、門限に遅れて、さらに、夷陵の温先輩のところに行っていたと知られたら、藍啓仁先生に罰を与えられると思って、先に帰してくださり、用事がある身で、ご自身の通行玉礼を貸してくださいました。魏先輩が昨夜、雲深不知処に帰れなかったのはそのせいです。どうか、寛大なご配慮を」

「わかっている」

藍忘機が言った。

その一言で、藍思追は、藍忘機がほとんど見抜いていたことを察した。

何もかも見透かした上で、それでも、やはり藍忘機が憤然としている理由は別にあるのだろう。

「余計なことを申しました。失礼いたします」

これはもう、藍忘機と魏無羨の問題だということを悟った藍思追はあわてて揖礼すると、同輩たちの後を追って、階段を下っていった。
去っていく藍思追の後ろ姿を見つめながら、藍忘機が深い吐息をもらしていたのを見た者は誰もいなかった。


そして、現在。

藍忘機の目の前に座っている魏無羨が浅い吐息を漏らしていた。

それは、ほぼ無一文でいることが知られたせいでも、正直な弟子達が結局自分たちで藍忘機にすべてを打ち明けてしまったからでも無かった。

「彼らを罰しないでくれ」

魏無羨が言った。

「あいつらは、温寧を気にいっている。温寧も、あいつらと会うと嬉しいみたいだ。それに、当然、思追にも」

黙したままの藍忘機に、魏無羨が続けた。

「啓仁先生の考えも何となく分かる。雲深不知処には雲深不知処の規則があるってことも知ってる。俺がそのことで、どうこう口は出せない」

温寧は雲深不知処を襲撃し、一時期壊滅状態にまでした温氏の一族。
そして、魏無羨の邪道により蘇った屍傀儡。藍啓仁が最も警戒する対象者だった。

「でも、弟子達が、温寧に近づいただけで罰せられるなんて理由は変だ。彼は、ただ友達が必要な優しい男なんだ」

魏無羨は、その昔、藍忘機も、雲深不知処の中で規則を破った者に対して厳しい態度をとっていたことを知っていた。
だが、藍忘機が仙督となった今、弟子達への罰は藍啓仁が決め、その監視には違う者がついていることだろう。
だとすれば、以前より弟子達への罰が重くなる可能性もある。

そんなリスクがありながら、夷陵にいる温寧に会いに行った藍思追と他の弟子達。

彼らが育みつつある友情を雲深不知処の規則で制限させたくなかった。

「温寧は、もう俺の助けは必要ないと言っていた。でも、俺は友人として温寧にしてやりたいことがあるし、時々でも会いたいとも思う。それに、思追や姑蘇の若い弟子達が温寧と会うことも許してほしい」

…藍湛には分かって欲しい。

そんな気持ちを込めた、魏無羨の真剣なまなざしに見つめられた藍忘機は、しばらく無言で魏無羨を見つめ返していたが、そっと目をふせると「分かった」と口にした。

「叔父上には、私から話をしておく」

藍思追や弟子達が温寧に会っても罰せられないように、藍忘機がとりはからってくれるのだろう。

「藍湛」

魏無羨は、顔を輝かせた。

「やっぱり、藍湛に話して良かった」

そう嬉しそうに頷いて見せた魏無羨だったが、藍忘機の顔は晴れていなかった。

「魏嬰、君には、私に話していないことが、まだあるのではないか?」

「ん?藍湛、何のことだ?」

「姑蘇に最近出没している、君の術を真似て復活させられた屍傀儡のことだ」

ハッとなって、魏無羨は藍忘機の顔を見つめた。

「藍湛、知っていたのか?それとも、沢蕪君から聞いた?」

「両方」

藍忘機が言った。

「なぜ私に話さなかった?」

「…藍湛に話す必要が無いことだと思ったからだ」

魏無羨は、藍忘機の顔から目をそらさずに言った。

「俺がすることで、藍湛が知らなくていいこともある」

忙しい藍湛の耳に何もかも入れる必要はない。
ささいなことで、仙督となった藍湛をわずらわせたくない。

そんな思いで魏無羨が発した言葉だったが、藍忘機は違う受け取り方をしたようだった。

いつも感情が分かりにくいと思われている藍忘機だったが、
魏無羨でもわかるほど瞳の色が変わった。

失望。落胆。苛立ち。悲しみ。

そんな感情が渦巻いたような藍忘機の瞳を見て、魏無羨は当惑した。

…この瞳に似たものを見たことがある。

あれは…温晁に復讐し、とどめを刺そうとしたあの夜、
俺を「魏無羨」と呼んだ藍忘機の瞳。

今は、その瞳に、別の感情の揺れも加わっていたが、魏無羨にはそれが何か分からなかった。

藍忘機は、己の感情を封印するかのように目を閉じた。
そして、次に瞼を開けた時、先ほど魏無羨が感じたものは消え去って、
いつもの藍忘機がそこにいた。

雲深不知処の門限を告げる鐘の音が聞こえ始めた。

「…魏嬰、私は、もう行かねばならない」

藍忘機が立ち上がった。

「しばらく留守にする。この話の続きは、次に会った時にしよう」

そう言って、藍忘機は、部屋の外に向かって歩き始めた。

…どうしてだよ。
どうして、藍湛がそんな顔するんだよ。

魏無羨も立ち上がった。

…あの時とは違う。

あの時は、藍湛を遠ざけたくてわざと言ったところもある。
だけど、今は違う。
それに・・・。

去ろうとする藍忘機の背中に、魏無羨はやるせない想いと疑問をぶつけるように言った。

「藍湛に縁談があったという噂話を聞いた」

藍忘機が振り返った。

魏無羨が続けた。

「過去に縁談があった同じ人と、最近もあったって。でも、姑蘇藍氏からの発表も無いし、俺、藍湛からそんな話を1度も聞いたことない。冗談だよな?」


ただの噂だと、藍忘機がそう答えるのを待っていた魏無羨だったが、
藍忘機の口から出たのは意外な言葉だった。

「本当だ」

…!

「それって…」

魏無羨はとっさに出す言葉を失った。

「…昔の話じゃなくて、今の話で?」

藍忘機が小さく頷くのを、魏無羨は見開いた目の視界でとらえた。

…どうして?

魏無羨は、なぜ自分がこんなに混乱しているのか分からないまま、
動揺を必死に抑えようとギュッと両手を握りしめた。

「俺は、闇狩りで、他の仙家の者たちから聞いた。それだけじゃない。姑蘇の街でもだ。
姑蘇藍氏以外の者。いや、姑蘇藍氏の弟子たちや門下生も他から聞いている話を俺は知らなかった。藍湛はどうして、この話を俺に言ってくれなかったんだ?」

…こんなに近くにずっといたのに。

そう感情的に問う魏無羨を藍忘機は、冷静な目で見つめた。

「君に話す必要のないことだからだ」

…話す必要のないこと?

冷たい藍忘機の声色に魏無羨は唇をかみしめ、
心の中で言葉を繰り返した。

自分が先ほど口にした言葉と同じだった。

だが、意味が違う。

「俺が知る必要がない話だと?」

藍忘機が固い表情でうなずいた。

…どうして…。

魏無羨の瞳にも、失望と悲しみと苛立ちを含んだ色が浮かんだ。

「藍湛!どうしてそんなこと言うんだよ?俺は藍湛が婚姻したら誰よりも一番に祝福したいと思ってるのに」

魏無羨の言葉に藍忘機の眉がぴくりと動いた。

…そうだ。
こんな大事なことを教えてくれないなんて。
俺たちは、お互い一番近くにいる盟友だって思っていたのは、俺だけなのか?

魏無羨は、藍忘機をジッと見つめた。

「藍湛、俺は藍湛にとって何なんだ?」

魏無羨が尋ねた。

そんな魏無羨を藍忘機がじっと見つめた。

「…魏嬰、私は君にとって何だ?」

藍忘機が問い返した。

十数年前の前世でも同じやりとりをしたことがあった。

あの時、魏無羨は藍忘機に「ソウルメイトだ」と答えていた。

だが、今、その言葉がなぜか出てこない。

そして、もし、そう答えたとして、藍忘機はあの時と同じ返事をくれるのかも分からなかった。


「・・・・・・」


魏無羨と藍忘機は互いに黙したまま見つめ合った。

藍忘機がそっと魏無羨から視線を外した。
そして、踵を返すと、静室の外の方に歩き始め、そのまま門から出て行った。

魏無羨は、ただ、その背を見つめながら、しばらくその場に立ち尽くしていた。




(終わり)




なんとか、連日更新できました。(更新時間はずれましたが)
この続きはタイトルを変えて次の話になります。
ドラマ「陳情令」での、あの雪の日の静室からの二人の強い絆はどうした?みたいな展開になってますが、二次小説でこうなってしまった背景があったりします(みつばの中では)その詳細は次作品の二次小説の中で語られる予定。

詳しいあとがきは又後日に。
読んで頂きありがとうございました。
現在、周囲だけでなく世界で大変なことになっていますが、皆さまもお体お大事にしてください。

【拍手コメントレス的な話】

「魔道祖師」「陳情令」のファンの方のイラスト、創作動画、どれも素晴らしいですよね。見ていると、1日つぶれます(汗)
ご紹介して頂いた動画見たことあったのに、後半覚えてない?とか思ったら、弁当作りながら流し見していたので、肝心の映像を見逃していたようです。「静室」のあの日に、二人は…~♪という妄想動画ですよね。みつばも、あれ考えました♪もし、ドラマ中、二人が初めて結ばれていたとしたら、あの後かな?って。ドラマ中でも、翌日の二人、お互いに視線をそらし合ってちょっと怪しかったですし(笑)
でも、みつばの二次小説では、「まだ」、という設定です。


みつばの二次小説を読んで頂きありがとうございました。
記事を気にいって頂けたら、
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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「背馳」(4話)です。

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とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

「陳情令」は現時点、日本語翻訳未公開のドラマです。(2020年3月より初放送予定)
原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

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また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は「邂逅」の続きになります。


背馳(4話)




姑蘇の街はずれから、裏街道に向かった魏無羨は、先ほど仙剣の上から見た、屍傀儡らしき姿を探していた。

…たしか、このあたりで見かけたが。

魏無羨は、裏街道につくと、注意深くあたりを見渡した。
先日助けた空師の親子が遭遇したという時刻も場所も似ている。

しかし、裏街道を歩く人影もなく、屍傀儡の気配も無かった。


…まだ、このあたりにいるのかもしれない。

魏無羨は、腰帯の陳情を取り出すと、口にあてて構えた。

そして、笛の音色に念と術を入れて奏でた。
旋律には、屍や幽鬼の類を惹きつける術が込められていた。
噂の屍傀儡が近くにいるのなら、陳情の音色に寄ってくるかもしれない。

魏無羨は、裏街道から林の中に入り、岩場の影に腰を下ろすと、陳情を吹き続けた。

周囲の風が変わっていく。

魏無羨は林の周辺にいた幽鬼たちが集まってくる気配を感じた。

今の時代ではなく、遠い昔に亡くなった者。
旅の途中で行き倒れた者。
戦いのような争いごとで命を落とした者。
中には、幼い姿の者もいた。

人に害を及ぼすまでの力も邪気も持ってはいなかったが、地上を彷徨い歩いている魂たちだった。

魏無羨の陳情の音色に惹かれ、魏無羨の周囲を取り巻くように近づいてくる。

魏無羨は陳情を吹きながら、幽鬼たちを観察したが、その中に、噂の屍傀儡らしき姿は無かった。


『…もっと、聴かせて』

もう外見の原型はとどめていないまでに魂も薄れていたが、何かの未練がこの世につなぎとめているらしい幼子の幽鬼が言った。

魏無羨は、曲名を“鎮魂”に変えた。

幽鬼たちは、目を閉じ、その音色に耳を傾けた。
次第に、魏無羨を取り巻いていた幽鬼たちの姿が消え始めた。

魏無羨の“鎮魂”の効果で、魂が浄化され、成仏していく。

魏無羨は、囁くような声が胸に響いていくのを感じた。

『ありがとう…』


どれくらい時間がたったのだろう。

魏無羨は、自分を取り巻く幽鬼の気配がすべて消えた事を察して、陳情を口から離した。

この周辺にいた幽鬼たちは、魏無羨の音色ですべて成仏したようだった。

すっかり夜更けになった林の中は、暗闇と静寂に覆われていた。
獣たちの寝息や息遣いすら聞こえない。

夜空を見上げると、星は瞬いていたが、月の姿は無い。

魏無羨は、まるで、この世に自分一人残されたような感覚に陥った。
それは、別段、怖いことでは無かった。

暗闇にも、一人でいることにも慣れていたはずだった。

それなのに、なぜか全身大きな寂寥感に蝕まれていた。
孤独という闇に耐えきれない自分がいる。

先日も野宿をしていた魏無羨だったが、その時は温寧が魏無羨のそばにいた。

…そうだ。前世でも、あの日までは温寧がいてくれた。
そして、献舎されて蘇った後、再会してからは藍湛がずっと俺のそばにいてくれた。

魏無羨は胸の内で大きく去来した藍忘機のことを考えた。

…藍湛は、今ごろ、どうしているだろう?

場合によれば、泊りになると言っていた。
どこかの仙家に泊まっているのだろうか。
それとも、どこかに闇狩りの視察に行っているのだろうか。

短い時間だったけど、朝会った時、いつもの覇気のような物が弱かった気がする。
無理をしていないだろうか。

もし、藍湛が、沢蕪君の話していた理由で、飛び回っているのだったら、この屍傀儡の件は、俺が早く片をつけなくては。

藍湛は、今世で再会してから、ずっと俺を助けてくれた。
そんな藍湛に迷惑をかけたくない。


「藍湛…」


魏無羨は小さく藍忘機の名を呼ぶと、再び陳情を口にあてて、藍忘機が玄武洞で口ずさんでいた旋律を奏で始めた。

こうして、

魏無羨は夜通し、陳情を吹き続けたが、結局、日が昇る頃になっても、魏無羨の追っていた屍傀儡が現れることは無かった。


一方。

日が少し高く昇った頃の雲深不知処では。

前の日、魏無羨の通行玉礼を借りて、無事に結界門を通過出来た、姑蘇藍氏の弟子達が、静室を目指して歩いていた。

魏無羨に通行玉礼を返す為だった。

「含光君様も静室にいらっしゃるだろうか?」

「いや、この時間にはもう家にはいらっしゃらないはず」

時刻は巳の刻(9~11時)に入っていた。

「しかし、今朝、雲深不知処の中ではお見掛けしなかったぞ」

「昨日お出かけになられてから戻られていないか、また雲深不知処の外に出られたのでは無いか?」

弟子達は、ひそひそと声をひそめ、そんな会話をしながら、静室の門の前にたどり着いた。

「魏先輩。魏先輩いらっしゃいますか?」

先頭を歩いていた藍思追が静室の門を叩いて言った。

ややって、静室の方から人が出てくる気配がした。
そして、門が開き、中にいた人が現れた。

藍忘機だった。

「!!」

てっきり静室にいるのは魏無羨だと思いこんでいた弟子達は、驚きの表情で固まった。
しかし、すぐに一斉に背筋を伸ばし、慌てて藍忘機に揖礼をした。

「含光君様」

藍忘機は、姑蘇藍氏の若い弟子達を見渡すと、「何事?」と静かに問いかけた。


「あの、用事があって、魏先輩にお会いしたいです」

藍思追が答えた。

「先輩はいらっしゃいますか?」

「いない」

「もう、どこかにお出かけになられましたか?」

「昨夜から戻っていない」と瞬き一つせずに答えた藍忘機に、藍思追は思わず隣にいた藍景儀と顔を見合わせた。

「魏先輩、まだ、あれからあのまま。朝にも帰っていないのか」

戸惑いと動揺が弟子達の間に広がった。

そんな弟子達の様子を見渡し、藍忘機は眉をひそめた。

藍忘機のそんな表情を見逃した弟子達は、勝手にひそひそ話を始めた。

「また鬼将軍と一緒にいるのかな?」

「いや、姑蘇の街で降りたから、夜は宿に泊まったんじゃないか?」

「でも、魏先輩、まったく金を持っていなかったじゃないか。あれじゃ宿には泊まれないよ」

「そうだ。景儀。もしかしたら魏先輩、あの姑蘇の街で会った仙術使いの宿に泊まって、一緒にいるのかも。闇狩りで手助けしてもらったっていう、魏先輩とやけに親し気だった男の人」

「ああ~…。あの、先輩が仲英って呼んでた、手首に黒数珠をつけた仙術使い」

藍景儀が頷いた。

「あの人、魏先輩に言ってたしな。『一緒に酒を飲もう。“また”俺のいる宿の部屋にも泊りで遊びに来いよ』って」

正確には、仲英はこう言っていた。
『また一緒に酒を飲もう。俺のいる宿の部屋にも泊りで遊びに来いよ』

藍景儀は、話の中で「また」の挿入位置を間違え、仲英が言った本来の文の前後が混ざっていたのだったが、とくに気にするところでは無いと思っていたようだった。

しかし、聞いた者には、そうでは無かった。

藍景儀の言葉の後、弟子達は、なぜか藍忘機の周囲の空気が一気に冷え込むのを感じて、無駄口を止めた。

「昨日、魏嬰と、どこで何をしていた?」

低く、静かな藍忘機の問いかけが逆に弟子達の顔を一斉にこわばらせた。



藍忘機と弟子達の間で、そんなやり取りが繰り広げられているとはつゆ知らず、
魏無羨は、その頃、裏街道脇の林の中で、ぐっすりと眠っていた。

夷陵近くで闇狩りを行い、夜はずっと屍傀儡を誘いだす為に陳情を奏でていた魏無羨。

その前日もあまり休んでいなかったため、さすがに夜が明けた頃には気絶するように入眠していた。

裏街道を通る旅人達が多くなってきた騒めきの気配で、ようやく魏無羨が目覚めたのは、日が真上よりもずっと下方に傾いていた頃だった。

…うーん…。どれくらい寝ていたんだ?俺は。

ぼさついた頭をかき、寝ぼけ眼で、林の中から突如、裏街道に出現した魏無羨に、旅人たちは、ぎょっとしたような顔をした。

「このあたりで怪しい屍を見なかったか?」

魏無羨は、歩いている旅商人たちを捕まえては聞いた。

「…見てねえな」

…屍傀儡とやらより、あんたの方がよっぽど怪しい。

旅商人たちは、皆、そんな不審そうな目で魏無羨を見た後、そそくさと去っていった。

よれよれした出で立ちだけでなく、魏無羨から仄かに悪臭が立ち込めていた。

…一度、雲深不知処に戻ろう。昨日街はずれで別れた、姑蘇藍氏の弟子達も無事に帰れたのか気になるし。

そう考えた魏無羨は、大きなあくびをしながら、フラフラと雲深不知処への帰路についた。



雲深不知処の静室に辿りつき、
門を開けて、敷地内に入った魏無羨は、周囲を見渡した。

藍忘機がいる気配はない。

…藍湛は、まだ帰ってないんだな。

そう思った魏無羨は、静室に入って天子笑の酒を思いっきり飲みたい気持ちを抑え、まず、体を清めることにした。

先日の魔物との闘いや、裏街道探索で、魏無羨の体は全身埃と汗まみれで据えた匂いになっていた。


風呂を準備しようと、風呂桶を納屋から出そうとした魏無羨は、その重さに顔をしかめた。

持ち上げられないことも無かったが、疲れた体には億劫だった。

…藍湛は、こんな重い風呂桶をいつも軽々と持ち上げてたな。

そんな事を、思い出しながら、魏無羨は、風呂湯を沸かすのも面倒になり、行水ですませることにした。

魏無羨は静室の裏手に、まわると、そこで衣服を脱いだ。そして井戸の水を手桶にくむと、頭からかぶった。

「うわっ。つめてーっ!」

思わず魏無羨が叫んで、身震いするほど、水は冷えていた。

…これじゃ、冷泉だ。やっぱり湯くらい沸かせば良かったな。

そんな後悔すらも我慢して魏無羨が井戸の冷水で体を洗っていた時。


「魏嬰」


低いが、静かな敷地内に響いて聞こえた呼び声に、
魏無羨は思わずびくっと体をこわばらせて、振り返った。

静室の家屋の角で、藍忘機が魏無羨を見つめて立っていた。

「藍湛。いつから、そこに?」

藍忘機の突然の出現に驚き、魏無羨は、全身から冷水の雫を滴らせた身体で突っ立った。

目をしばたたかせている魏無羨を見据えたまま藍忘機が言った。


「話がある」



(続く)


【拍手コメントレス的な話】

みつばも中国語分からないのに、パっと見した「陳情令」の映像に惹かれ、公式から配信されていた「陳情令」ドラマを見て、どっぷりとはまりました♪そして、やっぱり中国語も英語も堪能で無いのに、原作「魔道祖師」の小説を読むまでに。…雑記ではしゃいだ記事書いてましたが、おそらく解釈間違っている箇所多数。なのに、勢いで二次小説まで書いているという。萌えパワーがあれば、成せば成ります!(笑)

「魔道祖師」日本版のラジオドラマ、無料部分、ちょっとだけ聴きました♪
江澄、最高!!かっこいい!!ずっと聴いてたい♪(声)…今のところ、感想それだけですが、魔道祖師の内容や詳細を知るには、これを聴くのが一番早そうです。

みつばの二次小説では、江澄の登場はまだです。ある話では沢山登場予定ですが、みつばの「陳情令」二次小説は、最終回間近になります。
…昨年、来年の今頃(12月頃)は、二次小説最終回かも?とか雑記で書いてましたが、「陳情令」の日本語訳のドラマが最終話放送頃に、ようやく今の二次小説シリーズ話が完結していたら御の字かも(汗)←遅筆。

ピンク拍手コメントの方。

もう、大爆笑させて頂きました(笑)うらやましい!そのチャットにみつばも混ぜて欲しかったです。脳内でみつばも一人チャットします。yy×gg×dd妄想で♪♪♪
しかし、何て美しく麗しい3人なんでしょうね。現実の姿が美しすぎて、腐妄想の中でも、何やっても美しい(うっとり)…ちなみにyyも攻めなんですね?萌えすぎて、腹筋がよじれそうです♪

シリアスな雰囲気の二次小説の、あとがき拍手コメントレスで、はしゃいですみません。
今、リアルの世界では、必須業務にてんぱってまして(←そのわりに余裕そうに見える)

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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「背馳」(3話)です。

二次小説を読む注意点、コメント記入、「陳情令」の他の二次小説も
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから(名称、説明、更新しました)

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

「陳情令」は現時点、日本語翻訳未公開のドラマです。(2020年3月より初放送予定)
原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は「邂逅」の続きになります。


背馳(3話)




魏無羨は、温寧に、所有者がいることを知らずに取ってしまった木の件の進捗状況を話すことにした。

「温寧、沢蕪君に木のことを話した。沢蕪君は、名前は伏せて、対処してくださるそうだ。もう、そのことで心配はいらない」

「ありがとうございます。魏公子」

「いや。礼なら、沢蕪君に。ただ、直接伝えられないなら、俺から伝えておく」

…藍啓仁先生が姑蘇藍氏の弟子達に温寧に近づくなと言っている以上、温寧が沢蕪君に直接会うことは難しいだろう。

そう考えた魏無羨が言った。

温寧がこくっと頷いた。

「お願いします。公子」

「うん」

魏無羨は温寧の肩をポンポンと優しく叩くと、温寧と一緒に伏魔洞を出た。

外では、今日は休みだと言っていた姑蘇藍氏の弟子達が、畑仕事に精を出していた。

「もしかして、夢トの栽培か?」

「はい」

鍬を握っていた姑蘇藍氏の弟子の一人が言った。

「もうすでに鬼将軍が栽培されて育っている物もありますが、畑をさらに開墾したいのです」

「お前達は、そんなに夢トが好きなのか?」

休みの日に遠くの夷陵まで来て畑仕事とは。

「そういうわけではありませんが、ただ、鬼将軍の手伝いをしたいのです」

他の弟子も口をはさんだ。

「思追から、鬼将軍がご親族の慰霊碑と祠堂の修復を試みていると聞いて、我々も何か出来ることが無いかと思ったのです」

「慰霊碑と祠堂の為の資材は不足していますが、畑は作れます。それに蓮池も」

「蓮池?」

魏無羨が温寧を振り返った。

「はい。以前、ここにあった蓮池を蘇らせたいです」

温寧が言った。

「…何も昔のままにしなくてもいいんだぞ?」

温寧は、魏無羨の言葉にかぶりを振った。

「蓮の花は美しいです。またここで咲けば、皆喜ぶことでしょう」

温寧の「皆」というのが、姉と祖母、一族の者達を指していることが分かった魏無羨は、「そうか」と呟くように言った。

そして、魏無羨は少し離れた場所で藍景儀と一緒に、朽ち果てた住処のガラクタを整理してる思追の方をチラリと見た。

…あいつにも又見せてやりたいんだな。

魏無羨は温寧の心情を察すると、頷いた。

「俺も手伝いをしていいか?」

魏無羨が温寧に聞いた。

これからは魏無羨の手助け無しでやっていきたい、と言っていた温寧だったが、これは、そういう手助けとは違う。

温寧は魏無羨の言葉に表情をやわらかくした。

「はい。公子」

魏無羨も微笑んだ。

今は、まだ荒れ地だった。
十数年前、初めて魏無羨がこの地を訪れた時のように。

でも、いつか、蓮の花が咲き乱れるような蓮池が出来るだろう。
そして、あの時のように、この地で収穫した蓮の実を温寧と共に食せる日が来るかもしれない。

汗を流しながら、でも、楽しそうに畑仕事や、片付け作業をしている姑蘇藍氏の弟子達を見て、魏無羨はそう思った。

その後、魏無羨も、思追達と一緒に、畑の土を改良する手立てを考えたり、街で聞いた資材の相場から、祠堂や慰霊碑建立の計画をたてたりした。

昼食時には、藍景儀と藍実暈が買ってきた弁当を、温寧も交えて皆で食べた。
魏無羨は闇狩りで会って、危ない所を手助けしてくれた仲英の事を弟子達に打ち明けた。
欧陽氏一門の闇狩りがらみの話は省略したが、弟子達は、魏無羨から聞いた仲英に関心を持ったようだった。

仲英を街で目にしていた藍景儀が、「やはり」と納得するように頷いていた。

「何か只者じゃない雰囲気を持っている方でした。僕の見識は正しかったな」

「…景儀は、身元不明の仙術使いは怪しいとか、そばで言ってなかった?」

呆れたように、藍実暈が横から突っ込んで、皆を笑わせた。


こうして、和やかな雰囲気のまま、時間は過ぎていった。

「そろそろ、雲深不知処に戻らないと…」

未の刻が終わる頃(15時頃)、思追が言った。

夷陵から雲深不知処までは仙剣でも少し時間がかかる。
門限に間に合うには、早めに出た方が良いだろう。

そう考えた思追の言葉に、皆も同意した。

「では、また…」

思追が温寧を見つめて言った。

温寧が黙ったまま頷いた。

「じゃあ、鬼将軍、また来ます」
「それまでお体お大事に」

体を大事に、は、鬼将軍には不要の気遣いかもしれなかったが、姑蘇藍氏の弟子達は礼儀正しかった。

皆は、温寧に丁寧に揖礼すると歩き出した。

魏無羨も無言のまま温寧に頷いてみせると、そっと手を上げた温寧に手を振り返した。
そして、姑蘇藍氏の弟子達と共に乱葬洞を後にした。

魏無羨は、雲深不知処への帰路は、藍思追の仙剣に乗った。

藍景儀の仙剣に乗った行きの時と違い、藍思追の仙剣は、揺れやぐらつきも無く、魏無羨を乗せたまま空を滑るように飛んだ。

…さすが、藍湛の弟子。

魏無羨が心の中で感心しながら、どこか誇らしい気持ちになっていた。
16年間、教育したのも、鍛えたのも藍忘機で、自分では無かったのだったが。

自分の足によくしがみついていた幼子が、今では頼もしい青年になり、自分を乗せて仙剣を操っている。
魏無羨にとっては、不思議な感覚でもあった。

「思追、昔、含光君の仙剣に二人で乗ったことを覚えているか?」

魏無羨が前方の藍思追に声をかけた。

「え?」

突然声をかけられた藍思追は驚いたように後方の魏無羨を見やった。

「私が幼い頃ですか?」

「ああ、含光君に街で会って、おもちゃを買ってもらったことは覚えていたな?それに、一緒に食事したことも。あの後の出来事だ」

「そういえば…、何となくですが、高いところを見下ろして飛んでいた記憶があります。あれは、含光君様の仙剣の上だったのですね?」

「そうだ。温寧に何かあったのを察知して、急いで向かった時のことだ」

「魏先輩が、含光君様に自分が食事をおごるとおっしゃっていたのに、結局、含光君様がお支払いになった後のことですね」

「うん…。お前、そういう余計な所は良く覚えてるな」

「余計な所ですか?」

「いや、別にいい」

魏無羨は、藍思追が藍忘機のいる前で、昔の自分の話を暴露したことを思い出した。
そして、少々気まずさを感じると口を閉じた。

『魏先輩に教えて頂いたことも覚えています。妖艶な女性が描かれた本を見る時の誤魔化し方や、綺麗な女性に会った時ナンパする方法を…』


…いや、余計なことばかり思追に教えていたのは、俺か。

うーん…と鼻の頭を指でかいて、魏無羨は自嘲を浮かべた。

その時。

「あれを見てください!」

前方を仙剣で飛んでいた弟子の一人が、下方を指さして振り返った。


皆が一斉にそこに注意を向け、魏無羨も、その方角に目を凝らした。

ひらけた山道の中で、逃げまどう人々が見えた。

その後ろには、魔物が2体、迫っている。

どちらも、人を襲い、その身体だけでなく魂も傷つける凶悪な魔物の一種だった。


「あれは…姑蘇藍氏の講義で教わったことがあります」

藍思追が言った。

「太古から存在した魔物ですが、でも多くは封印されていて、近年では滅多に現れないと言われている魔物です」

「ああ、俺も以前、古文書で見たことがある」

魏無羨が言った。

稀に古代から存在する魔物が出没することもあった。

しかし、2体とも凶悪な魔物に違いなかったが、種類は異なる物。
それが同時に出現するのは非常に稀有なことだった。


魏無羨の脳裏に、沢蕪君との会話が浮かんだ。

『今まで封じられていた魔性の封印が何者かに解かれたり、塚が壊されたという報告が増えています』

他の弟子達も、魏無羨と似たような事を考えたのだろう。

「なぜ、ここに、あのように珍しい魔物が2体も?」
「多くは封印されて、今はいないはずだぞ」

ざわつく弟子たちに魏無羨が言った。

「検証は後まわしだ。降りて、急ぎ、逃げている人達を助けるぞ」


魏無羨の言葉に思追が頷き、仙剣を急降下させた。

他の弟子達も藍思追の仙剣に続いた。


そこからは、魏無羨の指示に従って、姑蘇藍氏一門で闇狩りを行った。
人々を誘導して逃がす者。魔物に攻撃する者。結界を張る者など。

魏無羨は、陳情の笛の音の術で魔物たちの動きを縛り、弟子達の動きを援護した。

抜群の連携で、2体の魔物たちを封印ではなく、消滅出来たのは、半刻以上後のことだった。

離れた場所から姑蘇藍氏の魔物との戦闘を見守っていた人々が戻ってきて、
姑蘇藍氏一門の弟子達の功労を褒めたたえながら、礼を述べた。

姑蘇藍氏の弟子達は、経験がないほど強い魔物の闇狩りで、疲労困憊していた。
それにも関わらず、姑蘇藍氏一門であるという自尊心で気力を奮い立たせ、人々に何食わぬ顔を見せていた。


逃げていた人々の多くは、家路途中の街の商人たちだった。

「歩いていたら、いきなり、森から飛び出してきて」
「ここいらは、ずっと、魔性が出るという噂も無く平和だったのに」
「最近になって、今まで出なかった魔物がよくあらわれるようになったという話を聞いた」
「新しい仙督になると、世にそういう魔物が出ることがある、という噂は本当だったのだな」


人々の話に、姑蘇藍氏一門の弟子達は顔を見合わせた。

魏無羨と姑蘇藍氏の弟子達は、商人たちの持っていた飲み物をご馳走になった後、仙剣に乗って、再び雲深不知処を目指して飛び立った。

しばらく飛んで、なじみある姑蘇の領地に入った時には、もう雲深不知処の門限の時刻に迫っていた。


「…このままだと門限に間に合わない」

「夷陵に行っていたことが知られてしまう」

せいいっぱい速度を出しながらも、姑蘇藍氏の弟子達の顔は、そんな諦めの想いに支配されていた。

…大丈夫だ。俺が通行玉を持っている。

魏無羨が、皆の落ち込んだような表情に気づき、通行玉礼を見せようと腰帯に目を落とした時。

ふと、一瞬視界に映ったものに魏無羨は気をとられた。

ちょうど飛んでいたのは、姑蘇の裏街道の上だった。
薄暗い視界の中、道のはずれで、フラフラと歩く人影があった。

くすんだ着物の色ではあったが、その者がつけている髪飾りが日没の残り日の光を浴びてキラリと光った。

とりまく空気が生きている人間のそれでは無い。

…噂の屍傀儡!


「思追!止まってくれ!」

魏無羨の声に思追がすぐに仙剣を止めた。

「どうしました?魏先輩」

思追の停止に気づいた、他の弟子達も一斉に仙剣を空で止めた。

仙剣は凄い速度で飛んでいたため、裏街道はとっくに過ぎ去っており、
仙剣の真下は、すでに姑蘇の街近くだった。

「この下に降りてくれ」

魏無羨が言った。

思追は、魏無羨の言う通りに、仙剣を下降させた。

「魏先輩、どうしたんですか?なぜ、ここで降りるのです?」

弟子の一人が尋ねた。

「もう雲深不知処の門限には間に合いませんが、これ以上遅れると…」

…罰が加算される。

魏無羨は、心なしか切羽詰まったような顔の弟子達の顔を見回した。

覚悟していたとはいえ、藍啓仁の厳しい罰を想像すると気が重いのだろう。

魏無羨は、腰帯に下げていた通行玉礼を思追に手渡した。

「俺の通行玉礼だ。これで、お前達は、雲深不知処の結界門を通れる。藍啓仁先生にも夷陵に行っていたことはバレない」

「なぜ、先輩の通行玉礼を私に?一緒に雲深不知処に戻らないのですか?」

手の内の通行玉礼と魏無羨を見比べて藍思追が聞いた。

「俺は、ここで用事がある。さっきの闇狩りの話は、俺が雲深不知処に戻ってから沢蕪君に話しておく。通行玉礼は、明日の昼前にでも、静室に返しに来い」

「用事とは?」

藍思追の問いに、魏無羨は一瞬返答に詰まった。

…今は、こいつらを巻き込めない。
ただでさえ、先ほどの戦闘で体力と霊力を消耗している。
それに、犬の屍傀儡と同じ術がかかった者なら、俺で対処しないと。

「私用だから、気にするな」

魏無羨が答えて、早く行け、という風に、思追達を手で払った。

思追は、いぶかし気に見ている弟子達と顔を見合わせると、魏無羨に軽く礼をした。
そして、他の弟子達と一緒に再び仙剣で雲深不知処に向かって飛び立っていった。

後に残された魏無羨は、思追達の姿が見えなくなると、すぐに裏街道の方に走り出した。



それから、しばらく時が過ぎた雲深不知処では…。


雲深不知処の就寝時刻前、
静室の門を開け、帰宅した藍忘機の姿があった。

藍忘機は周囲を見回した。

静室どころか、敷地内にも灯はついていない。
人の気配も無かった。


真っ暗闇の静室の前で。
藍忘機は、一瞬、幼い頃の記憶を蘇らせた。

幼い藍忘機は、灯のついていない静室の前に座り、ずっと母を待ち続けていた。
母が静室の扉を開けて、自分を出迎えてくれるのを。

家は暗く、閉まったままの扉は、もう永遠に開くことは無いのだと。
この家で、自分を待っていてくれた人は二度と戻ってこないのだと。

藍忘機は、いつ、はっきりと気づけたのか覚えていなかった。


『藍湛、おかえり』

今にも、扉が開いて、中から笑顔の魏無羨が出て来そうだった。

時間がたつにつれ、
そんな幻を心に描いた藍忘機の胸の内が外界の空気より冷え込んでいく。

「…魏嬰」

藍忘機の小さな呼び声が、静まり返った空間で霧散した。



(続く)



誤字、脱字、気付いたらこっそり修正してます。

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背馳(2話)




魏無羨の前にいた一人は、藍景儀。
もう一人は、闇狩りで藍景儀と隊を組むことが多い姑蘇藍氏の弟子の一人。藍実暈(ランシユン)だった。
しかし、藍景儀はいつも藍思追と一緒に行動している印象だったが、今、思追の姿は無い。

…珍しい組み合わせだな。と内心で想いながら魏無羨は二人を観察した。

「驚かさないでくださいよ」

藍景儀が言った。

「そんなに驚くとは、本当にやましいことでもしていたのか?」

「違います。僕たちは今日は非番なので、休みを満喫しているのです」

「そうか。それにしては、その弁当の量、二人で食うには多すぎないか?」

竹の皮で包んだ弁当。それを二人は両手いっぱいに抱えていた。

「これは、夷陵に先に行った他の者たちの分で…」

そこまで言った藍実暈は、しまったという風に口に手をあてた。

「夷陵?」

魏無羨がいぶかし気に眉を上げた。

「なぜ、夷陵に行った者たちがいる?」

「休みの日にどこに行こうと我々の自由です」

そう胸をはって答える藍景儀に「温寧に会いにだな」と魏無羨があっさりと言った。

…おそらく、思追もそこに先に行ったのだろう。

「…分かってるなら聞かないでくださいよ」

唇をとがらせた藍景儀と違って藍実暈は困惑しきった顔をしていた。

「あの、魏先輩。どうか夷陵に行っていることを含光君様にはご内密にしてください」

おずおずと、そう願い出る藍実暈に魏無羨は不思議そうな顔をした。

「なぜだ?確かにお前達が休みの日にどこに行こうか自由だ。雲深不知処の規則にも触れてない。含光君が知っても何の不都合も無いと思うが」

「藍啓仁先生に、厳しく言いつけられているからです」

藍実暈が消え入りそうな声で言った。

「闇狩りの理由以外で夷陵に近づいてはいけない。鬼将軍に会ってはいけない。言いつけを破った者は、厳罰に処すと、そう先生から言われているのです」

魏無羨は目を丸くした。

「あの、おっさん…いや、啓仁先生が、そんなことを?」

藍実暈だけでなく、藍景儀も一緒に頷いた。

「先生は、我々姑蘇藍氏一門の弟子が鬼将軍と交流を持つのを良く思っていらっしゃらないのです」

…そうか。誤解が解けたとはいえ、姑蘇藍氏の若い弟子達が俺の術で蘇った屍傀儡に接触するのは反対なのだろう。

魏無羨は鼻の頭を指で触りながら、そう考えた。


「わかった。先生にも含光君にも黙っておいてやる」

「魏先輩」

「そのかわり、俺も夷陵に連れていけ」

「え?」

「俺も温寧に会いたい。俺を仙剣に一緒に乗せて夷陵に行くくらい、姑蘇藍氏の弟子ならば、たやすいことだろう?」

「それは、まあ、出来ますが…」

「ついでに、俺の分の弁当も1つ追加な」

「後輩にたかるんですか?この前はご馳走してくれたのに」

「この前、おごったから、今の俺の懐は弁当1つ買えない状態なんだよ。金が入ったら代金はすぐ返す。うん、これがいい」

そう言って、魏無羨は店に陳列されていた弁当包みを一つ持つと、藍景儀に渡した。

闇狩りの翌日に、自分たちだけでなく、他の仙家の弟子達全員の食事代も魏無羨が出したことを知っている藍景儀は、しぶしぶ魏無羨の分の弁当も購入した。

「他の者たちがいるのは乱葬洞か?」

「はい」

「よし、じゃあ、夷陵に出発するか。最初は景儀の仙剣に乗っていく。
疲れたら、交代していいから」

「…あの、前から聞こうと思っていたんですが」

藍実暈がおずおずと言った。

「魏先輩は、なぜ、ご自分の仙剣を所持されていらっしゃらないのですか?」

「・・・・・・」

「魏先輩は強い術が使えるからですか?でも、それで仙剣を持てば、さらに鬼に金棒だと思うのですが…」

「実暈(シユン)」

いつもは、不用意な発言で藍思追につっこまれる事の多い藍景儀だったが、さすがに何かを感じ取ったのだろう。藍実暈を窘めるように名前を呼び質問をやめさせようとした。

「俺の仙剣は、今は他の者に預けている。だから所持していない」

魏無羨が答えた。


答えのようで、肝心なところは曖昧な返答だった。

しかし、他の者に預けている。という言葉で、それが魏無羨にとって、昔の因縁に関わることなのだろうと察した藍実暈はそれ以上聞くことをやめたようだった。

…物分かりがいいのは、さすが姑蘇藍氏一門。沢蕪君や先生がよく教育している。

魏無羨は、心の内で感心しながら、「弁当は俺が持つ」と言って、藍景儀と藍実暈から竹包の弁当の山を受け取った。

そして、人通りが少なく、仙剣がすぐに飛び立てる事が出来る場所に、二人の弟子達と一緒に移動しようとした時。


建物と建物の間に、魏無羨は、これまた見知った姿を発見した。

仲英だった。

「仲…」

思わず、声をかけようとした魏無羨は、仲英が一人では無いことに気づいた。

仲英の長身の影になって、はっきりとは見えなかったが、明らかに女人だった。
仲英と何か話をしている。

「魏先輩?どなたかお知り合いでもいましたか?」

足を止めて、仲英の方を注視している魏無羨に、藍景儀と藍実暈が不思議そうに声をかけた。

こちらに気づいていない仲英の邪魔をしないように、魏無羨が弟子達を促した。
そして、声をかけずに去ろうとした時、仲英がこちらの方に顔を向けた。

「よお、魏嬰」

魏無羨に気づいた仲英は、親し気に名を呼び手を上げた。

仲英の影にいた女性は、その声でチラリとこちらの方を気にする素振りを見せた。
そして、仲英に頭を下げると、そそくさとその場を去っていった。
その後ろ姿を一瞬見た魏無羨は、女性が仙剣を手にしていることに気づいた。

…仙女?

建物の影に入り、すぐに姿が見えなくなった女性にはお構い無しに、仲英が魏無羨に近づいてきた。

「また会ったな。俺に会いに来たのか?」

「いや、今日は、彼らとこれから別の所に行く用事がある」

魏無羨が後方に佇む弟子達二人に目をやって言った。

仲英は弟子達にニッと笑いかけると、二人は、自分たちより目上らしき仙術使いの仲英に慌てて揖礼した。

「そうか。じゃあ、今度また一緒に酒を飲もう。俺のいる宿の部屋にも泊りで遊びに来いよ」

「ああ。…それより、仲英。さっきの女性は良かったのか?もしかして俺、邪魔をしたか?」

「いや。かまわない。話も終わるところだったからな。それも大した話じゃない」

「もしかして、ナンパか?」

「どうかな」

魏無羨の問いに仲英がニヤリと笑った。

「姑蘇は綺麗な女性が多い。魏嬰、今度一緒に街でナンパしないか?」

仲英の軽いノリに、若い弟子達は目を丸くし、魏無羨は苦笑した。

「考えておく」

「前向きにな」

仲英は楽し気に笑うと、魏無羨に手を振って、往来の人込みの中に消えていった。

その後ろ姿を見つめて藍実暈が口を開いた。

「魏先輩のお知り合いの方ですよね?」

「ああ」

「仙術使いとお見受けしましたが、どちらの仙家の方なのですか?」

「属している仙家は無い流浪の仙術使いだそうだ」

「だそうだ、というのは?」

「俺もつい最近会って話したばかりだ」

「身元不明の仙術使いって…怪しくないですか?」

「そうか?」

…身元が分かっていても、怪しい仙術使いは沢山いるけどな。

魏無羨はそう思いながら、「彼は凄い術を会得してるし、剣術の腕も確かだ」と言った。

「手合わせでもしたのですか?」

「いや。実は、この前の闇狩りで手助けしてもらった」

「この前の闇狩りって、最近の、あの屍3体の闇狩りのことですか?でも、あの時、あの方をお見かけした覚えは無いのですが」

そう驚く藍景儀と藍実暈に、魏無羨は、「夷陵で他の者たちと合流したら話す」と言って、再び二人を促すと歩き始めた。


街から出た場所で、魏無羨は藍景儀の仙剣に乗って、夷陵まで飛んだ。

空の上で、何度も大きくぐらつきかけた藍景儀に魏無羨は、「大丈夫なのか?」と後ろから声をかけた。

「話しかけないで下さい。仙剣に他人を乗せて飛ぶなど滅多に無いので、集中しないと」

そう、切羽詰まった声で返す藍景儀。

仙剣を操るのに、全身に力が入っている様子の藍景儀に、魏無羨は内心“やれやれ”と思いながら、のんびりとした構えで藍景儀の仙剣の上に乗っていた。


近くで仙剣に乗って飛んでいた藍実暈が時折心配そうに様子を伺っていたが、魏無羨を乗せた藍景儀の仙剣は、何とか無事に夷陵の乱葬洞近くの荒れ地に到着した。

術より神経を使って疲労したのか、地面に降り立つと、藍景儀がぐったりと座り込んだ。

「お疲れ。ありがとな」

そう、労うように、藍景儀の肩をぽんぽんと叩いた魏無羨に、「不必要に他人の体に触れるのは雲深不知処の規則に反します」と藍景儀が言った。

「ここは雲深不知処じゃない。夷陵だ」

「魏先輩の昔のアジトですね」
「魏先輩が数々の魔道の術を研究されていた場所ですね」

…お前達は、一体どんな認識をしてるんだ?

魏無羨がいない間に人々や説法師の間で広まった夷陵老師の話は、半分伝説で、半分は空想で盛られた物が多かった。

世間の誤解はともかく、これから少しずつでも弟子達の勘違いは解いていこうと思った魏無羨だった。

大きなため息をついた後、魏無羨は、地面にまだへたり込んでいる藍景儀に手を貸して立たせた。
そして、藍実暈の手も借りて藍景儀を歩かせると、乱葬洞に向かった。

3人が乱葬洞につくと、そこに先に来ていた姑蘇藍氏の弟子達がガラクタを片したり、畑を耕したりしている姿が見えた。

若い弟子達ばかりが5人。全員、魏無羨と闇狩りで同行することが多い門下生たちだった。
5人は、3人の姿に気づくと、作業の手を止めた。
そして、そこに魏無羨がいることに驚いた顔をした。

「景儀、どうして、魏先輩を誘ってきたんだ?」

「姑蘇の街で弁当を買っていたら、偶然会ったんだよ。誘ったわけじゃない」

「どうして夷陵じゃなくて姑蘇の街で弁当を買ったんだよ?」

「景儀がどうしても、あの弁当屋がいいって言うから」

藍実暈が言い訳めいた説明をした。

「すごく美味しいんだ、あの店の弁当は。思追も好物だから。…あれ?思追は?」

藍景儀は、姿の見えない思追を探して、キョロキョロと辺りを見回した。


「思追は…」

誰かが言いかけた時、伏魔洞から思追が出てきた。
そして、魏無羨に気づくと、「魏先輩」と駆け寄ってきた。

「いらしたのですね」

「ああ。温寧は中か?」

「はい。今、中の片付けをしています。私も一緒に手伝いをしていて…木の話もお聞きしました」

「…そうか」

思追の魏無羨を見る眼差しで、温寧が思追にすべて打ち明けた事を知った魏無羨だった。

「その件は俺も今朝、沢蕪君と話した。沢蕪君が良い方向に取り計らってくれるだろう」

「そうですか。良かったです」

ほっと笑顔を見せた思追に、魏無羨も微笑んだ。

「思追!」

藍景儀の呼び声に思追は振り向いて藍景儀に手を振った。そして、魏無羨に頭を下げて、藍景儀の所に向かった。

魏無羨は一人、伏魔洞の中に入った。

つい、この前、多数の屍達との死闘を繰り広げ、逃げ込んだ場所ではあったが、それも何故か遠い昔のように感じられた魏無羨だった。

黒い影が岩の台座の前に佇んでいる。

「温寧」

魏無羨が呼びかけると、温寧が振り返った。

「魏公子」

「姑蘇藍氏の弟子達と一緒にアジト作りをしているのか?」

「アジト?」

キョトンとする温寧に魏無羨が苦笑して「冗談だ」と言った。

そして、温寧が見つめていた岩の台座の方に一緒に目を落とした。

「ここに魏公子が寝ていた時がありました。それに、食事をしたり、酒を飲んだり…」

「うん…そうだったな」

魏無羨が頷いた。

再び目にすれば、思い出して辛いだろうと思った。
この前来た時は、少なからず胸に来るものはあった。
しかし、今は、なぜか想像していたより穏やかな気持ちで、ここにいられる事が不思議な魏無羨だった。

「私の一族の者たちもここに眠っています」

温寧が言った。

魏無羨と温寧と共に、乱葬洞で暮らしていた人々。
金氏によって処刑された人達は、その後、この伏魔洞の血の池に沈められていた。
灰にされた温寧の姉、温情と、藍忘機によって助け出された思追以外は。

「祠堂の建て直しをするつもりです。そして、ここにも彼らが安らかに眠れるような場所と慰霊碑を作りたいと考えています」

「…辛くはないか?」

魏無羨の問いに温寧はかぶりを振った。

「思い出すと涙が出なくても、泣きたくなるような気持ちにはなります。でも…私には、この地に皆といた時間の記憶は辛くはありません。…殺されて、あのまま生を終えた記憶より、魏公子に蘇らせていただいたおかげで、再び姉や阿苑に会って、共に暮らせた。その記憶があることが救いでもあります」

それは、短い時間だった。

貧しく、つつましく、そして、世から隠れ住むように生きていたけれど、ここには、確かに人との絆と生活が存在していた。

温寧の姉、温情は、口調はきつくとも、医者という立場からだけではなく、本心から魏無羨の身体を気遣い、酒を少し控えるように進言してくれた。

共に暮らした温氏の一族たち。

『魏公子』

今は、なぜか、泣いている顔より、皆が笑っている顔が浮かぶ。

魏無羨は、生前の温情や温氏一族の者達のそんな顔を思い出し、自分が温寧と同じような気持ちでいることを感じた。

「それで…皆が生きていた時のように作物を育てたいのです。それから、夢ト(大根)も」

「夢ト(大根)?」

「はい。阿苑が考えてくれました。育てた作物を売って、祠堂や慰霊碑を建てる資金をためようと。私もいい考えだと思いました。魏公子は、どう思いますか?」

「ああ、俺もその案に賛成だ。ただ、夢トは…うん。いいんじゃないか」

…正直、夢トは見飽きた。

献舎されても、そんな記憶まで残っていたことに、心の中でため息をつきながらも、賛同を得られて嬉しそうに見える温寧に思わず笑みを浮かべた魏無羨だった。



(続く)


兄様、温寧の登場が藍湛より多いような感じですが、決して、みつばが二人押しだからではありません。←半分はそうだけど。
みつばの「陳情令」二次小説は、「忘羨」(藍湛×魏嬰)妄想小説です。ちょっと今のところ恋愛要素が足りないだけ。。。


【拍手コメントレス】

素敵な動画のご紹介ありがとうございます。
「陳情令」ファンの方のつぶやきや動画、日本でもこれから爆発的に増えそうですね♪

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今後の二次小説更新は予約投稿が多くなるので、
コメント、拍手コメントのお返事には時間差が出ることがあります。ご了承ください。

みつばの二次小説を読んで頂きありがとうございました。
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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「背馳」(1話)です。

二次小説を読む注意点、コメント記入、「陳情令」の他の二次小説も
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから(名称、説明、更新しました)

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

「陳情令」は現時点、日本語翻訳未公開のドラマです。(2020年3月より初放送予定)
原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は「邂逅」の続きになります。


背馳(1話)




魏無羨は、考え事をしながら、雲深不知処の階段を下っていた。
頭の中では、「寒室」で藍曦臣とした話が繰り返されていた。


『忘機を仙督の座から廃しようとしている者たちが動き始めています』


藍曦臣も、藍忘機から特に口留めされていた話では無いのだろう。

しかし、藍忘機から仙督に関する話は聞かされていないと伝えた魏無羨に、伝えることを思案する素振りを見せていた。
藍忘機が伝えていないことを自分が話してよいのか?という風に。
藍忘機の意向を気にしていた。

しかし、話を聞いた以上、藍忘機の思惑や、藍曦臣の気遣いは、二の次になっていた魏無羨だった。

確実な筋からの情報ということは、動きにも確信と証拠があるのだろう。
もしかすると、もう相手の正体も分かっているのかもしれない。

「藍湛を仙督の座から廃しようとしている者たちというのは誰なのですが?それに、動いているとは、具体的に何をしているのですか?」


落ち着いた声ではあったが、全部教えて欲しい。という強い意志を持った魏無羨の問いかけに、藍曦臣も内情を打ち明けた。

「動いている者の正体は、今のところ判明していません。ただ、複数いる、または、組織的なものとも考えられます」

「根拠は?」

「姑蘇の中での報告は今のところありませんが、各地で、今まで封じられていた魔性の封印が何者かに解かれたり、塚が壊されたという報告が増えています。同一犯のように見えますが、離れた場所で同時期にそれは行われています。各領地の仙門の者が調査中ですが、一部では、藍忘機の仙督就任に反対する者が、声明をあげたという情報があります」

「ただ、どこの仙家の者か分からないということですか?」

「ええ。しかし、それは別段問題では無いのです」

「何故ですか?」

仙督就任の妨害活動でなくても、民の生活を脅かすようなことだった。
どこの仙術使いたちかは知らないが、稚拙な言い分の上での悪意ある行動に見えてしまう。
どうして、どこの者かは問題で無いのだろう?

そんな気持ちで藍曦臣に尋ねた魏無羨に藍曦臣は「今までの仙督達の世でも就任後によくあったことなのです」とさらりと答えた。

少なからず驚いた様子の魏無羨に藍曦臣は説明を続けた。

「どこの仙門の方が仙督に就任しても、同じような事がありました。すべての仙家、仙術使いに納得して認められる長は今までいませんでした。何らかの思惑があり、反対する者は必ず出たのです。その意思は強制できません」

岐山温氏の仙督であれ、蘭陵金氏であれ、清河聶氏家であれ。
各仙家の宗主たちが就任式で認めたとしても、その実は違う。

反対する者はいて、それは、どこの仙門で誰なのか特定できないくらい、各地に潜んでいたということなのだろう。


魏無羨自身、そんな権力と欲の陰謀に巻き込まれた当事者だったのだったが、そんな争いや思惑はどうでもいいと思っていた。

だが、今は違う。

仙督となっているのは藍忘機なのだ。

「封印を破っている愚か者たちを捕らえる手伝いを、俺にさせてください」

政治的なことは分からなくても、暴挙は止めなくてはいけない。
それだけは分かる。

そんな思いで魏無羨が、藍曦臣に言った。

すでに見えない敵に挑むような目をしている魏無羨に藍曦臣が微笑んだ。

「各地を治めている宗主にはすでに伝達済みで、動いて頂いています。いずれ魏公子にもお力をお借りする時がくるかもしれません。その時はお願いします」


静かに熱くなっているような魏無羨に、落ち着いた藍曦臣の声が届いた。


藍曦臣は、魏無羨自身に動いてほしいという意味で、この話をしたのでは無い。

ただ、藍忘機の周りで起こっていることを知っていてほしい。本当にその思いだけで打ち明けたという意図を念押ししているような言葉だった。

むしろ、魏無羨には出来るだけ、この件から離れていてほしい。

まるで、そんな風にも取れる藍曦臣の雰囲気に魏無羨は、内心ハッとなって、押し黙った。

その顔で、聡い魏無羨が、自分の話を全て汲み取ったことを藍曦臣も分かったのだろう。


「今、魏公子に私がお願いしたいことは…」

藍曦臣が言った。

「どうか、忘機のそばにいてあげて下さい」

それが、私が魏公子に望むことです。

藍曦臣の言外の言葉も魏無羨に伝わった。

…はい。

しかし、そう思いながらも、何故か、そんな簡単な返事が出てこない。
魏無羨は、ただ、コクリと藍曦臣に頷いてみせた。

藍曦臣は、そんな魏無羨に、また柔らかな笑みを浮かべた。


そんな藍曦臣との対談を終え、「寒室」を後にした魏無羨は、静室への道ではなく、雲深不知処の出口に向かって歩いていた。

「静室」で休んでいたい気分では無かった。

藍曦臣が言っていたように、今までの仙督就任の時にも同じような事があったのなら、その対処法は分かっているのかもしれない。

そして、たとえ、どんな敵であろうと、相手はあの含光君。
それだけでなく、その兄の藍曦臣、さらに後ろ盾の藍啓仁。
守りの固い1枚岩のような、姑蘇藍氏の双璧と言われる兄弟とその師匠。

嫌がらせ程度の妨害をする反対勢力など恐れるに足りないということなのだろう。

藍曦臣も各仙門の宗主たちに連絡はしてあると言っていた。
藍忘機の命が狙われているという所までは危険も迫っていないと想定している。

それにもかかわらず、なぜ、藍曦臣は魏無羨に打ち明けたのか?

藍曦臣が魏無羨に話した真意が、大切な藍忘機を守る為ということと、
魏無羨の助力をやんわりと断る理由が今一つ魏無羨の中で結びつかない。

ただ、藍曦臣には、藍忘機の実兄としての想いと宗主としての立場からの考えがある。

それが分かった魏無羨は納得するしかなかった。

でも、不思議なのは、藍忘機だ。

…どうして、藍湛は、俺に話してくれなかった?

魏無羨は歩きながら腕組みをした。

藍曦臣の話は、藍忘機からは、1度も聞いたことの無い話だった。

…忙しいとはいえ、同じ家「静室」で一緒に暮らしているのだ。
雲深不知処に来てから、藍湛が俺に話す機会が今まで全く無かったわけではないはず。

藍曦臣の言う通り、藍湛は、精神も肉体も鍛え上げられた、比類無き強さを持った仙術使いではあるけど、今は仙界全体の長という重責がある身。

長い年月、あらゆる場所に現れて闇狩りをし、沢山の人達や仙家を助けてきたと聞く。
仙督となった今も、各地に飛び回っているのは、きっとその為だろう。

その上、慣れない執政は、想像以上に藍湛に負荷を与えているのでは無いだろうか?

魏無羨の脳裏に、清室を出て遠ざかっていく藍忘機の白い後ろ姿が浮かんだ。

疲れの色を隠した精悍な顔。
前を向いてまっすぐに歩いていく藍忘機の姿は凛々しく眩しかった。

…藍湛が俺に話さなかった理由はどうあれ、

藍湛が仙督である世を、これ以上混乱させたくない。
今は自分が出来ることをして、藍湛の負担にならないようにしたい。


魏無羨は、そんな気持ちで、思考を切り替えると、
今度は山で遭遇した犬の屍傀儡と、目撃された、老婆の屍傀儡の事を考えた。

自分が編み出した術が半端にほどこされた、犬の屍傀儡。

…もしかして、老婆の方も、誰かに術を施された屍傀儡?

仲英の話の中では、通常の屍と違う動きをしていたという。
空師の親子が会った屍傀儡と同じ可能性が高い。

魏無羨は、そこまで考えると、雲深不知処を出て、新たな情報を得るために姑蘇の街に向かった。

姑蘇の街に入った魏無羨は、ついでに知りたい情報を持っていそうな場所を訪ねた。

建造物の為の材木を扱い、職人たちも出入りしている場所。
それは姑蘇の雲深不知処近郊の街では川岸にある一番大きく、かつ昔からある問屋だった。

魏無羨は、そこで、温氏の祠堂を建て直したいという温寧の為に、建造物の材料になる物の相場の値段を聞いた。

「どこか、資材を安く譲ってくれるような所は無いか?」

魏無羨が問屋の店主に聞いた。

「うーん…端材なら譲ってくれるところはあるだろうが、姑蘇藍氏で扱っている資材の相場は昔から他より高い。姑蘇で仙府のある雲深不知処の施設を建て直す時も入手が難しかったくらいだ」

店主が言った。

「十数年前、雲深不知処の姑蘇藍氏が岐山温氏に襲撃されて、中の建屋がほとんど破壊された事があったんだが、その時、他の仙家からも援助を受けて建て直しをしたのを覚えている。わしも片付けの人足で襲撃後の雲深不知処に行ったが、目も当てられないありさまだった」

「・・・・・・」

昔、玄武洞で藍忘機が話していたことだろう。

「ああなっては、必要な物は資材だけでない。藍家は裕福だが、あの時期は、襲撃された時にほとんど略奪されていた。後に取り返したとは聞いたが、しばらくは、さすがの姑蘇藍氏も厳しかったようだ。その時、今の仙督様の婚姻相手と言われている玉家も多額の援助をしたと聞いたよ」

昔の温氏の襲撃の話から、藍忘機の噂話に出ていた玉家が出たことに、魏無羨は驚いた。

「玉家って…聶家の親戚とかいう仙家のか?」

「ああ、清河聶氏のある不浄世の中でも指折りの富豪の仙家だと聞いた。そういう繋がりもあって、姑蘇藍氏の仙督が玉家と婚姻関係を結ぼうとしているんじゃないかって、わしらの仲間うちは噂してるけどな」

「それは政略結婚ってやつか?」

「いや。そこまでは分からないが、大きな家に生まれた者は、婚姻相手も自分では選べないことも出てくるだろう?仙督ともなれば尚更じゃないのか?」

店主の問いかけに魏無羨は言葉につまった。

魏無羨の師姉、江厭離の婚姻も、親同士が勝手に決めたことではあった。
だからこそ、心の内で反対していた所もあったのだったが、後に当事者たちは、互いに愛し合っていたことも分かって婚姻した。

そんな話ならともかく、中には、金光瑤のような婚姻もあるのだろう。

本来ならば避けなければならない縁談。望まない婚姻。

姑蘇藍氏も、昔、他の仙家たちに援助されたからといって、おそらく、とっくに全額返済しているだろう。
義理や後ろ盾や聶家との親戚関係を結ぶ目的の為に、藍家が政略結婚を進めることはあるのだろうか?
しかし、もし、当人同士、合意の上の縁談だったら…?

「…いや、分かった。ありがとう」

魏無羨は、「今度、また来い。端材を安く譲ってくれる所を聞いとくよ」と、気さくに声をかける店主に別れをつげて、問屋を後にした。

魏無羨は、しばしの間、他の店に立ち寄って話を聞くことも忘れ、ぼんやりとしながら街の往来を歩いていた。

考えていたのは、温寧の為の資材の事ではなく、藍忘機の婚姻話。

他の仙家の者や姑蘇藍氏の弟子達、温寧からも、藍忘機の婚姻の噂話を聞いてはいたが、直接聞くのは初めての魏無羨だった。

しかも、藍家と玉家に、姑蘇藍氏の仙女修行以外につながりがあったことも知った。

…あの襲撃の時、そんなことがあったんだな。

魏無羨は、玄武洞で、目を閉じている藍忘機が見せた涙を思い出した。

…生まれ育った場所が燃えるのを見るのは辛かっただろう。
雲深不知処の中でも、施設から離れた場所にあった藍忘機の母親が住んでいた「静室」は無事で良かったが…。

そこまで考えた魏無羨は、ハッとなった。

肝心なことを問屋の店主から聞きそびれたことを思い出した。

…そうだ。裏街道に出たという老婆の屍傀儡の話を聞くんだった。

魏無羨は、慌てて、裏街道を通る旅商人が立ち寄りそうな店を探した。

「ん?」


周囲を見渡した魏無羨は、弁当屋の露店の前に、見知った者たちがいることに気づいた。

二人とも白装束に銀色の仙剣。頭の抹額。姑蘇藍氏一門の弟子達だった。

しかも…。

魏無羨はこっそりと、二人の背後に近づいた。


「これこれ、これが食べたかったんだ」

「景儀。そんなのあっちの街でも買えたよ」

「いや。姑蘇のこの店が僕は一番美味しいと思う」

「じゃあ、後は、先に行った彼らの分まで買って…」


「ごほん。お前達、雲深不知処の規則を忘れたのか?街での買い食いは禁止されておる」

低い藍啓仁の声に、姑蘇藍氏の弟子達は、ビクっと体を硬直させると、
おそるおそる後ろを振り返った。

「罰として、逆立ちして規則100条まで書写しなさい」

弟子達の後ろに、藍啓仁の声色をまねて話す魏無羨が立っていた。

「魏先輩」

二人の弟子達は、ほっと胸をなでおろすと同時に、楽し気に笑っている魏無羨を恨めしそうに見た。


(続く)



背馳(はいち)…タイトルがもう不穏な…。
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「陳情令」みつばの二次小説シリーズの次作品。
明日、1話を先行更新します。というお知らせです。

もう書き上げているので、先行と書いておいて、続きの更新がかなり空くということはありませんが、連日更新出来るかは分かりません。
更新まで、もうしばらくお待ちください♪



【拍手コメント的な雑記】

白い拍手からのコメントレス。そうです。もう周囲の人は二人のただならぬ関係に気づいているのです。
たとえ、BL要素を抜いたドラマ制作をされていようとBLアンテナを持った乙女だけでなく、一般人でも気づくほどです(笑)

ピンクの拍手でコメントを送ってくださった方、ありがとうございます。

みつばもビリ…見てました♪視聴者の熱いコメントが沢山流れて、面白いのですが、時々、流れ過ぎて画面が見えないので(汗)、「弾」をオフにしてます。
博君一肖の動画も爆発的に増えていて、もう追えません。←追っていると1日それで終わる。
どれも素晴らしいですね♪
コメントで気づきました。楊洋さん!!楊洋さんですね!
あの星光…で、博君一肖の横にいた人!うわっ。勘違い。ブログ記事でも間違って書いてましたね。
あのイケメンさん、どなたですか?って聞いた時、「三生三世」の人だよって教えてもらったから、てっきり「三生三世枕上書」の方かと思ったら、映画版の「三生三世十里桃花」の夜華役。つまり、みつばの好きな楊洋(ヤンヤン)さんだった!!←日本では、映画のタイトル変えられてます。
なぜ、気づかなかったみつば(汗)
ショートカットにされているせいもあったけど、たぶん博君一肖の方にばかり意識をとられて、みつばが中国俳優さんの中で、いや、今までで、一番理想のタイプの美形さんだと思っていた俳優さんを見逃すなんて。(過去記事「四大名捕」参照)

ああ、そうだったんだ。王一博さん。肖戦さん。そして、楊洋さん。みつばの中で奇跡のトリプルショットだったんですね。あの映像。
楊洋さんのドラマを見ていると物語とか、台詞が全く入ってこないんです。楊洋さんに見惚れるあまり(苦笑)「旋風少女」もちゃんと見たいな~と思っていたところだったのですが。

…博君一肖と何かありました?もうこの3人なら妄想だろうと、何だろうと、かまいません。
妄想の中でも、みつばは一番が誰か選べません。

はっ。萌えるあまり、拍手コメントレスから脱線してみつば妄想が駄々洩れました。

それでは、次は「陳情令」の二次小説更新で♪

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中国ドラマ「陳情令」、全50話。

これを、特別編集した、特別編20話。

ネタバレ部分あるので、未視聴の方はご注意ください。


ざっと、全部見られました。
新たに加えられたシーン、主に藍忘機が魏無羨を長く見つめたりしているシーンや冷泉の水浴びシーン等は、目を皿のようにして見ましたが(笑)

個人の感想としては、やっぱり、「忘羨」編集でした。

本編の肝心エピソードや物語の流れが切られているところ多すぎて、
話の流れが途中分からなくなっているところもありました。

本編を全部視聴した人向けですね。

「特別編」だけ視聴すると、藍忘機と魏無羨が絆を深めていく所は分かりやすいですけど。


ざっくり感想2つ。(注)みつば視点で。

やっぱり、藍忘機は、酔っていても意識あるみたいな(笑)

あの、他人の家に不法侵入&その家の鶏を魏無羨にプレゼント♪のエピソード。

「藍湛、どうしたんだよ?何やってるんだよ?」と、勝手に他人の家に入っていった藍忘機に魏無羨がうろたえながら話しかけているシーン。

藍忘機が、唇に指をあてて、「静かに」というジェスチャーをします。

あれ、本編ではカットされてました。
そうですよね。
だって、あのシーン、藍忘機が完全に他人の家だと分かって入っていると自覚しているということになりますから。
なのに、さらに、鶏を取り出して、魏無羨に「あげる♪」と渡す。おいおい。藍湛っ!

「静かに」というシーンが無かったら、まだ泥酔していて、魏無羨にあげたい鶏しか見てなかったことになるけど。


それから、一番気になっていた、ドラマのラストシーン。

こちらも編集されてました。
20話の冒頭で「藍湛、行かないの?(一緒に旅に)」と魏無羨が立ち止っている藍忘機に聞くシーンはありました。

でも、あの、みつばが「ちょっと、待て、まてーいっ」ってなった高原での別離シーンはカット。

それで、二人で、雲深不知処の滝のそばに並んでいるシーンで終わったので。
一緒に旅には出なかったけど、これからも二人で一緒にいる。って、解釈も出来そうに終わっています。

やっぱり、「忘羨」編集でした♪


さて、3月1日の「陳情令」先行日本初放送、1話(おそらく日本語字幕かな?)は、見られないけど、それまでに、みつばの「陳情令」二次小説次作は更新したいところ。

近日中には、次作の1話だけでも先行でアップしたい♪という願望をもちつつ。

…現実の会議で脳みそがウニ状態だけど、しなければいけない事があるので、妄想小説構成は落ち着いたらしたいな。みつばには、ブログの世界の方が現実的なんだけどな。←こらこら。

ちょっと、鬼ヶ島に出張に行ってきます。
戻ってきて、二次小説更新目途がついたら、またお知らせします。
ブログへのご訪問、拍手、拍手コメントありがとうございます♪

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テーマ:中国ドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

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以前ブログで画像をアップしたラテアートとは違うカフェのお店。

そこは、マスターが、お客さんのイメージで、ラテアートを作成してくれるそうです。
なので、お任せで、どんなアートが出てくるのかお楽しみ♪

それで、みつばが作って頂いたのが・・・


画像を見る方は「続きを読む」からどうぞ。

続きを読む

テーマ:中国ドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

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中国ドラマ「陳情令」みつばの二次創作、4コマ漫画です。

この記事でも書きましたが、

「陳情令」の原作「魔道祖師」(作者:墨香銅臭)」の番外編で道侶(恋人関係)の藍忘機×魏無羨、同棲カップル。

・ 一緒に風呂に入っていて、よく風呂を壊す。
・ 時々(よく?)、雲深不知処の森の中で愛を交わす。

という設定を「陳情令」の藍忘機×魏無羨で妄想してみました♪

みつばの二次小説では、寝台の上でも愛を交わしてますが、風呂を壊すくらいだから、ドラマで見えてる木製の寝台も、大の男カップルが激しい事をしたら壊れるんじゃないの?という疑惑が。

しかし、実は、こんな秘密がありました~、な、おバカなみつば妄想漫画です。


二次創作の4コマ漫画を見る注意点は、二次小説の注意点と同じです。「陳情令」二次小説INDEX参照。
また、初めていらした方は、ブログを読む注意点を一読してからお願いします。(ジャンルは違っても内容は同じです)

【警告】今回の漫画はBLの大人向け描写あります。


なので、4コマ漫画を見る方は、そのあたりを了承してから、
「続きを読む」からどうぞ。

裏箱系(大人向け)漫画なので、周囲に人がいないことを確かめてから、お願いします。



続きを読む

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「陳情令」4コマ漫画も、二次小説も創作出来る時間がとれなかったので、間に合わず(涙)関係のない雑記です。


ドラマ「陳情令」から原作の「魔道祖師」(BL小説)にはまったので、
ちょっと、しばらくは男女の恋愛物は萌えられないのかな?って思ってしまいました。


でも、「これ、絶対いつか見たい!」なドラマが。



「愛の不時着」



※CDのパッケージ画像です。
商品ページにリンクしますが、あくまで画像紹介です。


…まだ、DVDは販売されていないのかな?
日本では放送どこかでしているのか?すら知らないみつば。

でも、あらすじと画像、ちら見しただけで、これは、絶対、みつばの好きなやつ!って第6感が。

あ、やっぱり、別にBL限定にはまっているわけじゃなかった。自分。←「陳情令」は一応BLじゃないですね。宣伝では友情押しているのよく見ます。…表むき。

「愛の不時着」出演者を見てみたら、ヒョンビンさんがいらっしゃいました。

やはり。
「シークレットガーデン」では、ヒロイン役の方が好きだったので、見たのもありますが、何故か、惹かれるのですよ。時々、むしょうに。

・・・いつか地上波か機会があれば見たいです。
(基本、みつばは地上波放送頼み)


【拍手コメントレス】

ブログへの拍手、拍手コメントありがとうございました。

「魔道祖師」の藍湛、可愛い面がありますよね?
純情な女の子みたいなそぶりが時々。でも、やることは激しい男だから(笑)そのあたりが萌えなんですよね♪「陳情令」もそういうシーンがありますが、みつばのイメージでは、「魔道祖師」の藍湛より、ツンデレな場面が多い気がします。「魔道祖師」の藍湛もそうですが、「陳情令」の藍湛の酔っててやらかしているのは、確信犯だと思ってます♪

4コマ漫画も少々お待ちください。

以前、雑記でちょっと書いたのですが、これからの数週間はかなり多忙を極めそうなので、毎日更新、連続創作は難しくなります。ブログ更新出来る物があれば、時々でもアップしたいです。

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ちょっと、大人話考察雑記です。
なので、精神的に大人の方だけお読みください。
また、「魔道祖師」のネタバレも含まれます。



「陳情令」の原作「魔道祖師」の番外編では、恋人(道侶)関係の藍忘機と魏無羨のラブラブ生活が描かれています♪
詳しい描写は無くても、会話の中にも、その模様がちりばめられてますが。

みつばは、ちょっと疑問に思ったところがいくつか。

まず、風呂のこと。

二人で一緒に入ると、イチャイチャしている内に、藍忘機が風呂を壊してしまうっていう話。
しかも何回も。普通2回くらい同じことしたら(本編中に宿屋の風呂でやらかした時は酔っていたから覚えてないにしても)学習しそうな感じです。
しかも、藍忘機って頭がとてもいいってキャラ設定のはず。
13年間(魔道祖師)、魏無羨がいない時期に、体を鍛え続けて、脳筋になったわけじゃなく、おそらく溺愛する魏無羨に誘われたら理性が効かなくなっちゃうのでしょう。
そう考えると、納得します。
魏無羨は天才って(?)キャラ設定だと思っていたけど、やりたい事を素直に行動する人みたいなので、風呂が壊れようがどうしようが気にしないのかも。

それと、愛の営み場所。

二人の会話か魏無羨の心の声だったか分かりませんが、結構、外で“している“ような事。
外…雲深不知処の森の中とかでこっそりと。
二人の初体験場所も外でしたが。小説でこの部分を読んだ時。

さすが、


大陸の漢(おとこ)カップルは、愛の交わし方もダイナミック!


…って思いました。
BL物がそうなのか?それとも、藍忘機×魏無羨のカップルがそうなのか、分かりません。

壮大な自然の中で営むと解放感なのかな?

原作の別の部分で、「静室」でいちゃつこうとした魏無羨に、
「叔父さんが帰ってきているから」とか言っている藍忘機のシーンがあった気がします。
藍忘機の叔父の藍啓仁の私邸は、どうやら「静室」の近くにあるらしいです。
だから、叔父さんが家にいる時は、気を使って、愛を交わさないといけないみたい。

でも、どれだけ普段、大暴れしてるんだろうこの二人。
…いえ、大暴れしているのは藍忘機で、魏無羨は大声出しているのかな?(笑)

しかし、ドラマ「陳情令」では、藍啓仁の部屋と「静室」はかなり離れているような感じです。心おきなく出来るね♪←あからさま。


「魔道祖師」では、そういう意味もあって、
思いっきりするために雲深不知処の森の中で“してるの”かな?ってことで考えたみつばなのですが。

「陳情令」で藍忘機と魏無羨が恋人になった後を妄想した時。

「魔道祖師」でみつばが不思議に思ったところを、考察して勝手に妄想した話があります。

でも、あまりにもおバカな妄想なので、これは4コマ漫画行きネタで。

コメディが強い妄想創作物は、みつばの場合4コマ漫画にいきます。

そして、4コマ漫画のキャラは二次小説のキャラとは違い、若干、崩壊気味。
とくに藍忘機が。

みつばの二次小説では、普段クールだけど、内心、嫉妬深かったり、激しかったり、ドS的な事もする。でも、魏無羨を溺愛し大切にしている藍忘機♪ってキャラクターなのですが、4コマ漫画では、藍忘機は、おぼっちゃま育ちゆえの大天然ボケがさく裂するネタばかりの予定です。
4コマ漫画の魏無羨は、そんな藍忘機を優しくつっこみ、ときには、大きな包容力で見守るキャラになってます。

二次小説の次作も少しずつ書き進めてますが、長編に時間がかかっている時。
構成に手間取り、このままだとしばらく小説はアップ出来ないなって時は、ブログに4コマ漫画創作物が入るみつばです。←今まさに。

でも、漫画更新も間に合わなかったので、また次回。



【拍手コメントレス】

初めてコメント頂いた魔道祖師ファンの方へ。
コメントありがとうございます。原作と役者さん達の昔からのファンという強者さんに二次小説を読んで頂けて、恐縮です。

原作好きだと、実写化と聞くとドキドキしますよね。まず、自分のイメージと離れてしまうって怖さがあります。でも主役さん達のファンだったら許せるかも。

みつばも、実は、そうなんです!あの紹介して頂いた画像!もう、妄想の中、そのものの藍忘機で感動しました。
ブログでは語ったか忘れましたが、中国の陳情令イベントの中で王一博さんと肖戦さんが逆の役で演じましたことありましたよね?あの抹額のエピソードを。肖戦さんが藍忘機で、王一博さんが魏無羨の役を演じてました。

みつばは、ドラマ見てから原作小説読んだのですが、原作読んだ後、主役のお二人が逆を演じても良かったのかな?って思ったことがありました。藍忘機役の王一博さんのリアルの現代版の姿が、みつばが魔道祖師を読んだ時の魏無羨のイメージにぴったりだったからです。

運動神経良くて、スポーツ何でもできて、色気があって、笑い方もキュートで。やんちゃな美青年。魏無羨がそんなイメージだったからです。

対して、リアルだと背が少し高めの肖戦さんは、可愛い♪面とかっこいい!面がある方だったので、藍忘機を演じても不思議で無い気もしたのです。

ただ…どっちにしても、wyさんが攻めに見えているみつばには、友情物なら良いのですが、この二人をカップル妄想するなら、やっぱり藍忘機はwy、魏無羨はxzさんかもしれません。←ここにきてイニシャルに。

ドラマから入ったみつばは、ドラマ「陳情令」と原作の「魔道祖師」と設定やキャラがちょっと違っても、どっちの藍忘機×魏無羨も好きですが、もし、原作から入っていたら、主役のお二人も知らない状態だったので、違う役者さん達で妄想したかもしれません。やっぱり攻めの方が少し背が高い方がいいかな…な気持ちで。
二次小説、妄想の世界では、身長に関して、同じくらいか藍忘機の方は魔道祖師設定で考えてます(笑)

いつもコメント送ってくださっている方も、ありがとうございます!
みつばは、「魔道祖師」の公式漫画版が好きです!どこまでラブシーンを描いて頂けるか分かりませんが(規制あるかな)これからも楽しみにしています。アニメ版のシーズン3もいつ公開かな~…。

検事プリンセスファンの方へ

コメントありがとうございます!
二次小説更新。本当に長い間お待たせしてすみません。
検事プリンセスの二次小説、今でも読者の方が2名(みつばを含む)は、いるということが分かったので、最後の1人になるまで続ける、公約をまだ継続させられそうです♪
もう、中の役者さん達の情報や出演されている新ドラマの話も全く知らない(←元々)状態のみつばなのですが、きっと10年たった今でも素敵なのでしょうね。
あの頃、10代(中・高生)だったブログの読者さん達も結婚してお母さんの方もいるかしら?
年を取りましたね、私たちも(しんみり)←でも、心はいつまでも乙女ですよね!

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「陳情令」二次小説と4コマ漫画のINDEXを更新しました。

「陳情令」二次小説INDEX

・「藍湛生日快乐」
・「邂逅」1~5話

「陳情令」イラストINDEX

・4コマ漫画「陳情香炉」



それから、この場で、「陳情令」記事内で、思いっきり誤字ってたところをご報告。

藍忘機の私邸。みつばは最初の方の記事ではちゃんと「静室」って書いていたのですが、
途中から「清室」になっています。
二次小説の「闇香炉」のあたりは、「静室」になっているのですが、その後、二次小説だけでなく、雑記も全部「清室」になってます。

みつばが「せいしつ」って打っていたから、いつのまにか誤字って、思いこみでそのままに。
これは、中国語漢字が日本語漢字になっても「静室」が正しいです。

ざっと見直しただけでも、相当量、手直ししないとダメみたい(涙)
一括変換すると、文章内で名称以外のところも変換されてしまうかな…。

今までの二次小説読む方は「清室」は「静室」のことねって、温かい目で見てください。
余裕がある時に、少しずつ直す…かもです。

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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「バレンタイン記念日2020」です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。


検事プリンセスの書き下ろし短編です。

大人向け描写があります。
自分は精神的に大人だと思う方だけお読みください。





バレンタイン記念日2020



「ただいま」

夜遅くに仕事から帰宅したイヌは、
小さな声で言って、自宅のドアを静かに閉めた。

しかし、物音に気付いたらしい妻がリビングから出てきた。

「おかえりなさい。イヌ」

「すまない。遅くなった、ヘリ」

「いいの。寒かったでしょ。早くリビングに入って暖まって」

「ああ、その前にこれを。ハッピーバレンタイン」

そう言って、イヌは手に持っていた花束をヘリに差し出した。

ヘリは、嬉しそうにその花束を受け取った。

「ありがと」

花束の中に、イヌが好きな、そして、ヘリも好きなフリージアの花も入っていた。
いつもの花屋で、購入したのだろう。

「花瓶に飾るわね」

先に歩き始めたヘリがリビングに向かう扉の前で手招きした。

イヌがリビングに入ると、暖房で暖められた空気が体を取り巻いた。
イヌはほっと息をつくと鞄を椅子の上に置いて、周囲を見渡した。

外の空気が冷え込んでいる為だけでなく、部屋の中もやけに静かだった。

「子どもたちは実家に?」

「ええ。今日はあっちでお泊りするんだって。子ども達も喜んで行ったわ」

「そうか…」


バレンタインデーだから、と、ヘリの母親、エジャが気をきかせて、子ども達を預かってくれたのだろう。
それなのに、仕事の都合で帰りが遅くなり、申し訳ないことした、というような表情になったイヌをフォローするように、ヘリがキッチンから言った。

「ママ、今夜は孫たちと一緒に眠れるって、子ども達と同じくらいはしゃいでたわ」

「お母さんに喜んでもらえて良かった」

「ええ。待っていて、すぐに夕飯の用意をするから」

「君の食事もまだか?」

「うん。イヌと一緒に食べようと思って」

「お腹がすいただろう。僕が料理するよ」

「大丈夫。下ごしらえは終わってるの。ほら、海鮮鍋を準備してるわ」

ヘリが、花を生けた花瓶を手にダイニングテーブルの椅子に座っているイヌのところに戻ってきた。
そして、花瓶を置くと、またキッチンの方に戻り、冷蔵庫を開けて、中から下ごしらえした海鮮鍋の材料を取り出し始めた。

イヌは、ダイニングテーブルの上に置かれていた鍋の蓋を開けた。

中に、だし汁が入っている。

材料は食べやすい大きさに綺麗に切り添えられ、皿に盛りつけられていた。

「美味しそうだな」

「海鮮鍋に失敗した時の為にラーメンも用意してるの」

ヘリが悪戯ぽく笑ってラーメンの袋をひらつかせた。

それは、ヘリの冗談で、今のヘリの料理の腕では、海鮮鍋が失敗することなど無かった。

ただ、昔の思い出を含んだヘリの言葉に気づいたイヌも、口元を綻ばせた。

「その時は、僕がラーメンを作るよ」

「キムチも入れてね」

ヘリが言って、イヌが笑った。

そうして、
イヌとヘリは、二人で作った海鮮鍋を堪能した後、キッチンで一緒に片付けをした。

「しかし、静かに感じるな。寝ていても静かだけど、あの子たちが、家の中にいないという事が不思議に感じる」

イヌが言った。

「そうよね。家の中に本当に二人きりっていう感じが久しぶりよね」

「そういえば、君は、今日は酒を飲んでいないな」

「あら、本当だわ。バレンタインデーだからって、奮発して高いシャンパンも買っておいたのに」

「後片付けを終えたら一緒に飲むか?」

「ええ。でも、その前にイヌは風呂に入ってきたら?」

仕事疲れもあって、酒が入れば睡魔が襲うだろう。
ヘリは、そんな気遣いでイヌに風呂を進めた。

「そうだな。じゃあ…」

イヌは、軽くすすいだ最後の皿を食洗器に入れセットした後、ヘリを振り返った。

「一緒に入るか?」

「え?」

ダイニングテーブルを布巾で拭いていたヘリが、顔を上げた。

「久しぶりに。二人きりで風呂に」

微笑んではいるが、真面目な誘い顔のイヌにヘリは無償に照れくさくなった。

もう照れる年でも、付き合いでも、経験でも無いのだったが。

「…いいわよ」

周囲に誰もいない事が分かっていながら、ヘリは、頬を指でかきながら、目を泳がせた。

そんなヘリの顔にイヌが微笑を浮かべると、風呂の準備に向かった。

風呂に湯を入れた後、イヌとヘリは一緒にバスルームに入った。
イヌが先にシャワーを使用している間、ヘリは、花の香りのする泡風呂に入り、泡を手ですくったり、吹き付けたりして戯れていた。

そして、ヘリがシャワーを使用した後、
何とか二人一緒に入れる大きさの風呂の中に半身を沈めた。

「…狭い」

照れ隠しに小さく言ったヘリにイヌが笑った。

「体型も、マ・ヘリ節も変わらないな」

二人の子どもを出産していたが、ヘリの体型は10年前とほとんど変わっていなかった。

「あなたもね」

ヘリは、イヌの脇腹を手でつついた。

イヌの体型も、早朝や休日にジョギングやトレーニングを欠かさなかった成果が表れていた。

夜、ベッドの上で愛を交わしてはいたが、明るいバスルームの中で二人きりで互いの体をまじまじと観察するのは最近では珍しいことだった。


「…傷ももうほとんど目立たない」

ヘリはポツリと呟いて、自分の腹部に手を置いた。

ヘリは二人目の子どもを帝王切開で出産していた。

最初の頃は、ビキニを着ると隠せない手術痕ではあったが、
今では目を凝らさないと分からないくらいに消えかけていた。

泡風呂の中でそれは見えなかったが、イヌがそっとヘリの手に自分の手を重ねた。

傷痕が消えても、体調を崩した時に少し痛みを感じると言っていたヘリ。

命がけの出産で、あの時のことを思い出すたび、イヌは今でも、ここにいるヘリと子どもが無事だったことに感謝するのだった。

イヌは、労りと慈愛の気持ちを込めて、横にいるヘリにキスをした。

軽いキスのつもりだったが、唇を重ねた後、物足りない想いがイヌを支配した。

それは、ヘリも同じだった。

互いの腕を伸ばして、体を絡め合うと、イヌとヘリは抱き合って、今度は深い口づけを繰り返した。

湯で温まった身体が、別の意味で火照りだし、その熱の行き場を探し出した。

「熱いわ…」

ヘリは、囁くと立ち上がって風呂から出た。

その動きに合わせて、キスをしていたイヌも一緒に立ち上がった。
そして、抱き合ったまま、ヘリの体をゆっくり、バスルームの床に押し倒した。

「…こんなところで?」

今は、バスルームだけでなく、家の中に二人きり。
遠慮することなど無いのに、小さな声で囁くヘリにイヌが微笑を浮かべた。

「今しか出来ないところでしよう」

「じゃあ、この後、キッチンに行く?」

おどけて言うヘリに、「それもいいな」とイヌが笑って、ヘリに体をふせた。

床面に背中をつけたヘリが冷えないように、イヌがシャワー栓をひねって、熱い湯を降り注がせた。

「ん…っ」

イヌとヘリは、キスと愛撫を繰り返しながら、狭いバスルームで体を重ね、
ヘリが、ひときわ甘い嬌声を上げ全身を震わせると、イヌがそっと身を離した。

「…イヌ。あなたは、…まだでしょ?」

ヘリが、イヌの顔を手で撫でながら下から言った。

「君もまだ足りないだろ?」

イヌの問いかけに、ヘリが小さく頷いた。

「場所を変えよう」

…もっと思いっきり君を抱ける場所に。ここは狭い。

そう伝えるイヌに、ヘリが「本当にキッチン?」と今度は真面目に聞いて、イヌを笑わせた。

そして、バスローブを羽織り、床に横たわったヘリの身体をもう1つのバスローブで包み抱きかかえると、夫婦の寝室の方に向かった。



「今夜は思いっきり声を上げていいんだ。可愛い声を聞かせろよ」


行為の最中。

そう耳元で囁くイヌの甘い声に煽られて、ヘリはベッドの上で、何度も理性を手放した。


やがて・・・。

ベッドの上で布団にくるまり、くったりと脱力しているヘリの所に、
キッチンに行ったイヌが冷えたシャンパンとグラスを2つ持って戻ってきた。


そして、ベッドに腰掛け、シャンパンをグラスに注いで、1つをヘリに渡した。

ヘリは、身を起こし、ベッドのヘッドボードの枕に背を預けると、シャンパングラスをイヌの方に掲げた。

「私たちの何度目かのバレンタイン記念日に」

「おおざっぱだな。ちゃんと回数くらい覚えておけ。記憶力がいいんだから」

「あなたが今まで何をしてくれたかは、ちゃんと覚えてるわ」

そう言って、ヘリはイヌとグラスを合わせると、美味しそうにシャンパンを口に含んだ。

「あなたへのバレンタインの贈り物。さっき渡しそびれちゃったけど、リビングに置いてあるの。ジョギングする時に着るパーカー。私がデザインしたの。そして、私とお揃い」

「ピンク色じゃないよな?」

「それは、見てのお楽しみ」

そう、悪戯っぽく笑うヘリにつられて、イヌは苦笑を浮かべた。

「僕からは、君の欲しがっていたバッグを。注文していたが、今日に間に合わなかった」

「いいの。待ち遠しく思うわくわく時間が長くなるから。それに、そのバッグで仕事をするのも楽しみ」

「君の新しい相棒と、仕事を一緒に頑張ってくれ」

「ええ」

イヌとヘリは再び、シャンパングラスを合わせると、中身を飲み干した。


「…イヌ、私、もう、眠い…」

あくびをしたヘリは、トロンとなってきた瞼を必死に開けていた。

「眠ればいい」

「でも、シャンパン、まだ1杯しか飲んでない」

「明日、飲めばいい。残しておくから」

イヌより早く帰ってきてはいたが、最近のヘリも仕事が多忙だった。

疲れのたまった週末で、さらに平日の夜より、“ちょっと激しい運動”をしたせいで、
睡魔が早くに襲ってきたのだろう。


「明日は休日だ。ゆっくり休め」

「…イヌは?」

「僕は、少し仕事をしたら寝るよ」

「無理しないで」

「運動した後、体をクールダウンしてから寝る理由もある。そんなに時間はかからない」

「うん…」

「明日は、何時頃に子ども達を迎えに行けばいいのかな?」

「昼頃でいいって、ママが。そして、実家で一緒にランチを食べましょうって」

「お母さんの手作りのご飯か。楽しみだ」

「きっと、ママは、イヌの好物もいっぱい作るから覚悟しておいてね」

ヘリは、ニッコリと笑うと、また、あくびをした。


「…おやすみなさい…イヌ」

シーツの上に沈むように横たわったヘリに、イヌが布団をかけた。

そして、ベッド脇のサイドボードの上のランプの光を常夜灯にした。

ヘリの目はすでに閉じられていた。


「おやすみ。ヘリ」

イヌは、ヘリの額にキスを落とした。

そして、常夜灯の灯に照らされた、ヘリの寝顔を見つめ、優しい微笑みを浮かべた。



「今年も、君と一緒にバレンタインを過ごせて嬉しいよ」


イヌの囁きが夢路に入ったヘリに届いたかのように、ヘリがフフッと小さく笑った。



(終わり)



「検事プリンセス」ファンの読者さんへ。

「ゲレンデへいこう」間に合いませんでした。ごめんなさい。
代わりに、2020年のバレンタイン(リアルタイム)のイヌ×ヘリの物語を書き下ろしでお届けします。

もう、4コマ漫画バージョンやパラレル話でほのめかしていたので、未来の話の完全ネタバレになってます。

イヌとヘリは結婚していて、子どもは二人。(みつばの二次小説の世界の設定)
そして、これも、未来話でほのめかしていたので、もう書いてしまいますが、
みつばの二次小説の中で、イヌは仕事を独立しています。
でも、ドラマに出てきた法務法人「ハヌル」には戻っていません…という設定です。

ドラマ本編の16話で就職した事務所をどうして辞めたのか?や、どういうところで働いているかの理由は、二次小説を更新出来ていたら、「ゲレンデへいこう」の後の長編シリーズ3話の中で徐々に出てくる予定でした。

この「バレンタイン記念日2020年」の話は、みつばの「検事プリンセス」二次小説では、最終回直前あたりの話になります。

予定していた二次小説の最終回は、10年後の話だからです。

みつばの二次小説の世界では最終回と最終話があって。
今までに雑記でも書いてましたが、もう。本当にみつばが「検事プリンセス」の話を、これ以上書けません!ってなった時、最終手段で、この2話と結婚式の話は最後に更新したいです。

独身時代のラブラブなイヌ×ヘリとは違う雰囲気です。
10年後…結婚して父母になった中年のイヌ×ヘリではありますが、変わらず絆の強い美形カップルだと思っています。

このイヌ×ヘリになる前にいろんな事があるのですが(みつばの二次創作の世界では)
先に、未来の話のイヌ×ヘリを、ほんの少しお見せしました。

もうシリーズの流れに関係なく、イヌ×ヘリ話は、書けるものをアップするかもしれませんが、「検事プリンセス」、まだ好きな方がいれば読んでくださいね。

それでは、これを読んでいる皆さまも楽しいバレンタインデーをお過ごしください♪

さあ、みつばも今から、家族にばら撒くのと、自分が食べるチョコを買いに行こう(笑)


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次回更新は別の二次創作物の予定なので、
とり急ぎ「陳情令」記事への拍手コメントレスです。

ブログへのご訪問、拍手、拍手コメントありがとうございました。

初めてコメントを送ってくださった方も、ありがとうございました。
wowowは、オンデマンド利用は、ケーブル(ネットテレビ等)を引くのが条件だということで、やはり、テレビは地上波のみの我が家では見られないようです。残念ですが、「陳情令」DVDか、他の放送や動画サイトに来るのを待ちます。
お気遣いありがとうございます♪

有料放送見られないだの、特別版が見られないだの、愚痴をこぼして、ブログの読者さん達にお気遣い頂きすみません。ファンなのに、日本初放送が見られない日本人で、ちょっと残念なみつばです。

江澄と温寧くん・・・リアルバージョンだと…江澄君が受けのイメージです(苦笑)
江澄役さん、リアルの中の方は、すっごく爽やかで優しい感じで、役の江澄と真逆です。
対して、温寧君の中の方は強気で自信のある言動の映像をよく拝見するし、みつばは、リアルでは思追くんの方との触れ合いでドキドキしたりしました。
イベント本番後に落ち込んで泣く思追役くんを励ます温寧役さん。頼りになるお兄さんです。さすが、みつば1押しの温寧くん♪←これが言いたかった(笑)

「魔道祖師」では、献舎された魏嬰の正体が藍湛にバレた後、嫌がる魏嬰を藍湛が無理やり雲深不知処に連れて行きます。
でも、「陳情令」では、魏嬰は気絶している間に雲深不知処の藍湛の家「清室」に連れて行かれ、藍湛の寝台に寝かされてますよね。
後者の方が、何となくいやらしく感じます(笑) 藍湛の行動も。

どうやって、運んだんだろう?とか、気絶している間どうしたんだろう?とか、寝ている間に仮面外して、どうしたんだろう?とかですよね?
たしかに藍湛が気絶している「魏嬰をどうしたんだろう?」が気になります。

アニメ版「魔道祖師」でも、金陵の呪痕を引き継いで、気絶した魏嬰が目覚めたら、宿屋の寝台に寝かされていて、藍湛に浄化の術で治療されているシーンがありますが…、みつばは、まず、どうやって運んだのかを見たかったのに、それが無かった(汗)
想像するしかありませんね。
…「陳情令」もアニメ版の「魔道祖師」もたぶん、魏嬰を抱っこしながら藍湛が仙剣で運んだ説♪

という妄想にふけっていると、切りがないので雑記もここまでで。

「陳情令」二次小説や記事を楽しみにしてくださってありがとうございます。
最初は、本当に、一人でブツブツ言っていたジャンル記事でしたが、ちょっとずつ日本の方にも読んで頂けてるみたいで、嬉しいです。

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「魔道祖師」で出てくる風呂の話。

「陳情令」では風呂シーンは出ていないです。(たぶん)
冷泉入っているシーンはありましたが。

でも、原作の「魔道祖師」で出てくる風呂は、木枠の風呂桶で、そこに湯を入れて使用しているっぽかったです。(アニメ版でいずれ出るかな?)

魔道祖師ファンの方々が作成した素晴らしい3Dアニメやイラストでもそんな感じに描かれてます♪

そこで使用している石鹸、シャンプーの件。

原作「魔道祖師」で、名称が書いてあったような(?)うろ覚え状態で。

でも、よく分からなかったので、二次小説「刻印」では、みつばが調べて、古代の日本で使用されていたらしい方法を参考に創作して書いてました。

その後、いつも情報を教えてくれた中国魔道祖師ファンのrさんが、こんなことを教えてくださいました。



古代中国では髪を洗った時に多用されたものは二つあります。

1.皂荚(トウサイカチ(皀莢))→シャンプー
2. 木槿叶(ムクゲの葉)→コンディショナー



こちらを参考に二次小説「邂逅5」は書いてます。


たしか、サイカチのことは、原作(原文)にあったような…。
風呂の近くに、それが入った箱(?)があるとか、なんとか。←どなたか原文読んだ方、またはお持ちの方、そうですか?

それで、調べてみたら、
サイカチのことは、日本でも洗濯などの使用されていたっぽい記事や情報がありました。

他にも無患子(むくろじ)の実、エゴノキの実も。

無患子の方は、ランドリーナッツ(ソープナッツ)の名称で今も使用されているようです。

↓無患子


ランドリーナッツ↓こんな感じで使用。


エゴノキ↓




(注)クリックすると商品ページにリンクしますが、あくまで画像の紹介です。


昔、見ていた子ども番組でもチラッと出てきた記憶がありました♪シャボン玉のように泡が出るんだよね。それで洗濯が出来る。

ただ、リンスの代理の方は、日本古代ではあまり使用されてなかったのかな?
ネットに上がっている情報も少なくて。

花は有名だし、よく見るのですが。

でも、葉をもみこむとトロミのある液体で、洗髪も出来るという記事がチラリ。

他にも中国語の記事で、「髪を洗うのにも使える…うんぬん」な記述がちらほら。←みつば翻訳のため曖昧。

自然素材ですね。

今度、それらの植物を見つけたら試してみたい思いはあります。

ただ、自然素材の物に関しては、扱いは慎重に。花や実は大丈夫でも葉や根に毒があったりするのもあります。

植物図鑑などで良く調べて、それで、安全と書いてあっても、人によっては、かぶれたり、肌に合わないこともあるので、気をつけましょう。


話を「陳情令」「魔道祖師」に戻して。

「陳情令」「魔道祖師」の世界で想像してみて。

そして、これは、たぶん、そうだと思うのですが、
みつばの妄想の世界なのですが、

藍湛の私邸「清室」の敷地内に、サイカチも無患子もエゴノキの木も植えてあると考えます♪

それで、藍湛が採取した実を洗濯や入浴に使用していたのでは?と。

藍湛が魏嬰と「清室」で暮らし、魏嬰と恋人になってからは、
一緒に風呂に入って、髪の毛や体をそれで洗い合ったりしているはず♪
泡立てた物を相手の体にこすりつけて・・・・・・(裏箱的妄想中)

そんなことをしてるから、行為がヒートアップして、原作「魔道祖師」番外編で藍湛が言っていたみたいに、二人で入浴中に何個も風呂を壊すことになるんですよね。きっと。
壊しているのは、100パーセント、怪力の藍湛のせいだと思われます。

実とか莢とか、変な使い方しないで欲しい。いや、してほしい♪(笑)←あくまでみつばの妄想の中の世界です。

風呂妄想は、「魔道祖師」の藍湛と魏嬰はいいのですが、「陳情令」の藍湛と魏嬰で想像すると、みつばは、バタバタ一人で暴れて、ちゃぶ台ひっくり返すくらい興奮します。←鎮静剤打ってやって下さい。

そんな二次小説書いてみたいな~と思いつつ。
二次小説シリーズ(藍湛と魏嬰がくっつくまでの)完結までまだ先が長いから、いつ書けるのかな?ねがわくば、萌えてる時に書いてしまいたい。

…という雑記を書いているうちに、小説書けばいいんですよね(汗)

さらっと、古代石鹸(風呂)事情を雑記で書くはずが、結局、妄想に溺れて脱線して失礼しました。

藍湛の瞳の目の色「薄い瑠璃色」→古代中国では「薄い琥珀色に該当する」についで、
また、知識が増えました。嬉しいことです♪

みつばは、自国の古代知識もあまり無いので、これを機会に、自分自身でもいろいろ熱心に調べてます。

BL描写の参考に、主に「陰間」(昔の日本の男娼)のことを♪←おいっ!


【拍手コメントレス】

ブログへの拍手、拍手コメント、ありがとうございました。

有料放送…みつばも「陳情令」見たさだけで加入したくなってます(出来ないけど)
有料でも、まだ日本に上陸して良かった。ひそかに、みつばがはまって、中国語字幕で全話見た、中国ドラマたちは、おそらく日本放送の可能性がとても低そうです。
てっきり上陸すると思っていた古代ファンタジー物も、もう4年たってますが、気配無しです(涙)日本放送の選考基準は、視聴率以外でも何かあるのかしら。

中国ドラマ、いろいろ面白いの、他にも沢山ありますよね♪
英語字幕なら、公式でも配信されている動画があるうちなら(期間限定)見られる♪「三生三世枕上書」とか。←昨年末の授賞式に、陳情令CP♪じゃない…王一博さんと肖戦さんの隣に座られていた俳優さんと女優さんのドラマ。


T.U.Bs(陳情少年の略)、みつばも最近毎日、動画聞いて、見てます♪
聞くだけ~と思ってるのに、動画見ちゃいます。みんな好みの美青年だから。
陳情少年のコンサート、ワールドツアーの話、みつばも最近知って。でも、東京も予定に入っていたなんて知りませんでした。
予定されている国は、タイ(すでに始まってる)シンガポール、ベトナム、韓国、フィリピン、マレーシア、アメリカ、カナダ…って文字を見た時。

ちょっと待って。ジャパンは?JAPANは予定してないの?(汗)って、なりました。
日本は未定なんですね。時間たっても、最後に来て頂けるといいなって、みつばも祈ってます。←情報に疎いみつばはコンサート終わった後に知りそうですが。

「刺客列伝」、すっごく面白そうですね!これまた、イケメンだらけ。
CM画像見ただけで、みつばのBL妄想が止まらなくなりそうです。←これこれ。
そうじゃなくても、主従関係など。「三国志」好きなみつばには、こういう内容はとても興味深いです。
やっぱり、ケーブルテレビは、みつばには危険がいっぱい。最近は中国ドラマ自体がみつばにとって刺客かもしれません。黒髪長髪で剣持ったイケメンが多すぎで、夢想するあまり、日常生活に支障をきたすほどです(笑)

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拍手コメントレス的な雑記

みつばのたまて箱におこし頂き、ありがとうございます。

検事プリンセスファンの方にも、「陳情令」の二次小説を読んでもらえたら嬉しいです。(ラストシーン、ネタバレしますが)

そして、ドラマも見てもらえたら♪ジャンル的に全然違うし、原作はBLではあるのですが、攻めの男が密かに相手を深く愛し続けているっていう点は同じで萌えますよ。検事プリンセスもみつばの二次小説読んでからドラマを見た方がいらっしゃっていたようなので、「陳情令」もそういうことがあればいいな。(←原作者さんやドラマ製作者さんとは無関係です)

みつばもw〇w〇w(伏字になってない)は加入してないので、日本で視聴したファンの方が急増加する中、日本語翻訳版、早く見たいな…。ってうずうずしてる頃ですね。

藍湛と魏嬰の初えっち話の件(笑)
「陳情令」妄想で、みつばは、もう二次小説で書いていて、ほぼ完成状態の更新待ちです。

原作「魔道祖師」の藍湛って初めて魏嬰と結ばれた時、何だかやけに手際良くて、『ほんとに初めてなの?』って思いましたよね?まあ、長年、妄想シュミレーションを重ねてきたせいもあると思うのですが(笑)、みつばは、その辺りのことも考察して、「陳情令」初えっち話のおまけ話も書いてます(これも今は未公開)

藍湛には、実は秘密があった…という、大人テイスト満載のラブコメ短編です(藍湛はいたって真面目なんですが(笑))
そして、もちろん、初体験の相手は魏嬰ではあるのですが…、妄想シュミレーション以外に秘密があった。藍湛の秘密っていったい何でしょうね。楽しみ(?)に待っていてください♪

この2つは、かなり前にノリノリで書き上げていたのに、PCが故障した時に、データが失われちゃった?って、焦ったんです。データ無事で良かった。←心配そこ。

でも、これらは、長編シリーズ話が終わったら、更新予定です。

…じれったい展開、好きなんですが、もういっそ、ドラマ最終回後に藍湛が魏嬰を迎えに来た時に、お互い告白させて、あの高原の上で結ばせれば(藍湛が魏嬰を襲えば(笑))、二次小説の展開早かったな…とも思ったりしてます。原作と違ってドラマのキャラや状況的に、それは無さそうに見えたけど。


あと、ショックだったっていうのは、温寧(于斌さん)と、曉星塵(宋繼揚さん)が、日本にいらしていたんですよ。
あの昨年の11月の授賞式で。ちゃんと記事や写真がネットでも掲載されているし。
知らなかった。あの時、みつば何してたんだろう?ってみたら、二次小説を更新していたけど、その直後にPCが故障して、あたふたしていた時期でした。だからネットニュースもしばらく見て無かったの(涙)

ブログで、さんざん、この二人が好き!って書いておいて、お出迎えも出来ずに。。。いえ、空港とかに行けなくても、「日本にいらしてくれてありがとう!」、と、ひっそり記事とか書けたのに。
2か月も知らなかったという話なんです。
3月にw〇w〇wで「陳情令」放送され(←だから伏字になってない)その後に、もし、来日されることがあったら、空港にも沢山の日本ファンのお迎えとかありそうです。

また、ぜひ、日本にいらしてください~!
陳情少年の皆さまも、博君一肖のお二人も(←だから、ユニット名じゃない)ぜひ!!


(ひっそり)



「陳情令」も「検事プリンセス」も、現在、ちょっとやっかいな長編小説書いている最中で、少々息切れしてる中、どっちのファンの方も拍手コメントで背中押して頂き、ありがとうございました!

楽しみながら、二次創作頑張ります!雑記でした。


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中国ドラマ「陳情令」にはまり。
そして、その中の役者さん達で構成されたグループ「陳情少年(TheUntamed BoyS)」も目が離せないみつばです。

【追記修正】 温兆→温晁

陳情少年(敬称略)のメンバー。

于斌(温寧)
紀李(聶懐桑)
曹煜辰(金子軒)
李泊文(宋嵐)
宋繼揚(曉星塵)
鄭繁星(藍思追)

なんて、豪華なメンバー♪

どの方も、スタイルの良い美形で、美声で、歌唱力抜群、ダンスも上手で、演技も素晴らしい。

みつばの大好きな温寧くんに、色気たっぷりの曉星塵様。
かわいいかっこいい思追君。
洋風美形で美声の金若様、さわやか笑顔、美声の宋さま
そして、みつばが本当はリアルで気になる聶懐桑くん。
筋肉体質っぽい体も低めの声も好みなの♪

「陳情令」が終わっても、このグループはこのまま解散はもったいない!って思っていたら、活動続けていたのですね。

嬉しい♪♪♪

コンサートやイベントや、公式動画まである。
MV、きらきら花が飛んでます♪もう美少年、美青年ばかりだから。

バンコクでファンミも開催されて♪聶明玦役さんと金陵役くんもいらっしゃってる。
温晁役(賀鵬さん)も!!凄い。

ドラマでは、古憎たらしいイメージの悪役を演じていた温晁役さんですが、ハンサムな方です♪現代バージョンで見たら、「どなた…?」って一瞬なるのですが、それは、ドラマの演技がとっても素晴らしいから。悪役の薛洋役さんもそうです。化けるくらい演技に入り込んでいる。

ファンの方達。自分の押しCP妄想(←みつばが勝手に想ってる)の二人が接近した時の会場の乙女たちの絶叫ときたら…。

たとえば、思追君役さんと金陵役さん。曉星塵様と宋様。お姫様抱っこしたり、触れあったりしただけで、きゃーっ!ってなる。
わかる、わかります。みつばも現場にいたらきっと叫んじゃうもの。きっと。

温寧くんの舞踏もやっぱり素敵(感涙)

歌に、踊りに、ゲームに…。ああ、盛沢山のファンミ。
しかも好みのルックスの美青年だらけ。みつばがその場にいたら、誰を見ていいか分からない。

うらやましい。。。

それから、え?この授賞式の映像は何?

WEIBO Account Festival in Japan 2019

え?イン ジャパン?

インジャパン・・・。
ジャパンってどこ?←ショックのあまり思考停止。

…この国の話ですよね。


まさか、そんな。

「陳情令」で、みつば一押しのお二人が。
若手俳優賞。

しかも司会されているのは、ディーン様だし。


どうして、こんな話を誰も知らせてくれなかったの?(涙)←自分で情報集めなさい。


動画で、「陳情少年」の6人の歌や踊り。MV。トーク映像など。
盛り沢山で見られます♪




TheUntamedBoyS_Official



6人の(陳情少年)トーク映像も全部ちゃんと見たい。
でも、見ていると、何も手につかないから、少しずつ。

イベントの舞台裏で、あんなに一生懸命練習していたんですね(涙)

于斌(温寧)さんのキレキレのダンスに歌。
宋繼揚(曉星塵)さんの、色気ふりまきまくりな踊りに甘い歌声。

目をひくのは当然なのだけど(みつばも最初からこの二人押しでしたが)みつば的に、もう少し、紀李さん(聶懐桑)もクローズアップして欲しいなって想いが。

そうしたら、紀李さん(聶懐桑)、オンリーの映像があって♪
みつばは、実は密かに応援してるからって気持ちで、真っ先に見ました。

どうか、お元気で活動してください。

ユニットじゃないけど、もちろん、兄様、藍曦臣(劉海寬さん)LOVE♪♪♪、興奮で窒息しそうになるくらい、素敵♪←この方はリアルの方で凄く好き度が増しました。
兄様~。兄様~♪みつばは、やっぱり包容力あって、優しいお兄さんタイプの人に弱いらしい。
…二次小説の世界では弟君の藍湛LOVEな、みつばだけど、リアル脳では兄様押し!

そして、江澄役くん(すごい美声と歌唱力)、聶懐桑の兄、聶明玦役さんも金様も、金陵役くんも、藍景儀役くんも、「陳情令」の俳優さん達は、みんなかっこいい♪
また、ドラマや動画などで拝見する機会があれば♪

リアルの追っかけまではしないけど、「陳情少年」の6人と共にこれからもひっそり応援していきたいです。

みつばは、引き続き「陳情令」の主役お二人の、「博君一肖」も応援中です♪←これユニット名じゃないから。



【拍手コメントレス】

ベトナム(?)のBLのMVドラマを紹介してくださった方ありがとうございます!
美しい映像に耽美な世界観。短い動画でも、台詞が無くても、世界中で内容が分かる物語で、思わず魅入っちゃいました。
part2まで見ましたが、あの続きってあるのでしょうか?part2は切なさが更に増し増しで(涙)
銀髪のイケメンさん、すっごくいいお体してますね。腹筋割れてるし。
世界には…アジアには、素敵なドラマが、まだまだいっぱいあり、そして、イケメンさんも沢山いらっしゃるのですね。深いですね。BLドラマの世界。はあ~(感嘆)

…「陳情令」は、BLドラマじゃなかった(一応)

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「陳情令」みつばの二次創作、4コマ漫画です。

原作」「魔道祖師(作者:墨香銅臭)」の本編後の番外編では、主人公の魏無羨と藍忘機は道侶(伴侶)という、完全な恋人関係です。

その番外編で「香炉」という話があります。

その「香炉」編を、もし、ドラマ「陳情令」で、恋人になった後の藍忘機と魏無羨で妄想したら…?な、みつばのおバカな妄想漫画です。

二次創作の4コマ漫画を見る注意点は、二次小説の注意点と同じです。「陳情令」二次小説INDEX参照。
また、初めていらした方は、ブログを読む注意点を一読してからお願いします。(ジャンルは違っても内容は同じです)

【警告】今回のBLの大人向け描写あります。


なので、4コマ漫画を見るからは、そのあたりを了承してから、
「続きを読む」からどうぞ。

裏箱系(大人向け)漫画なので、周囲に人がいないことを確かめてから、お願いします。
続きを読む

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「陳情令」、みつばの二次小説「邂逅」のあとがき雑記です。

ようやく藍忘機が再登場。みつばも会いたかったよ。藍忘機(涙)

魏無羨が仲英と仲良さげに酒を飲みかわしている現場に遭遇してます。

仲英に肩を抱かれて座っている魏無羨。

原作「魔道祖師」の藍忘機と魏無羨は、本編ラストで、完全に道侶(恋人)となっているので(本編の途中、途中で、際どいラブシーンも入ってる)、あんな現場に遭遇したら、命まではとられなくても、魏無羨の肩を抱いている仲英の腕は藍忘機に仙剣で切られるかもしれません(汗)

でも、「陳情令」の藍忘機と魏無羨は、本編中(ドラマ中の物語)には、そういう関係になっていない上に、藍忘機が最後までいろいろ秘めているっぽいので、二次小説はあんな感じに。

二次小説「邂逅」2話での、魏無羨をはさんだ藍忘機と仲英の会話。

藍忘機は仲英に、会話の中で、ある牽制をかましているのですが、それに気づいた仲英も挑発めいた応酬をしています。そんな二人のやり取りに魏無羨くんは全く気付いてません。

ドラマ本編を見ていて思ったのですが、「陳情令」魏無羨のそういう所の鈍さが可愛いのですが、そういう目線(BL目線)で見ると、わざとか?ってくらい、藍忘機が時々可哀そうになってしまいました。

仲英は、みつばオリジナルの人物ですが、みつばの好みを総動員して作り上げたキャラクターなので、思い入れは深いです♪

イラストで、外見などを紹介出来たら♪←いらない?(笑)

みつばは、主人公、魏無羨という男は、もてもてキャラだと思ってます。
(中の人、肖戦さんも大人気です♪)

前世で誤解などが生じて、あんなことになりましたが、本来ならば、男も女もほおっておかない人。外見もかっこいいし、正義感強くて、頭もいい。腕っぷしも強いし、明るいし、優しいし、でも可愛いところもあって、母性本能くすぐられるタイプで、恋愛感情じゃなくても、一緒にいたいって思わせる人です。

そんな魏無羨を世に放そうものなら……、まあ、考えるまでも無いでしょう。

二次小説「邂逅」で、酒家の邂逅シーンは、シリアス展開ではあるのですが、現在、シリアスになっているのは、おそらく藍忘機だけです(笑)

みつばの中で魏無羨は、他の事には聡いのに、そういう面ではド天然に鈍い、というキャラになっています。

…この物語、二人が恋愛関係に発展するまで先が長いな…って思いながら、二次小説シリーズ執筆完結まで楽しみながら頑張ります。

話は変わって。

みつばが大好き、温寧くん、登場♪

「陳情令」番外編の映画「生魂」の温寧は、抜群にかっこ良すぎます。
本当に温寧?…キャラ変してませんか?くらいに思いました。

そして。あの服装…。

あれ?もう囚われの身じゃないのに、まだ鎖つけてるの?って思って。
ん?服の装飾の一部かな?とか見ていたら、武器にしてました。

そういう使い方…。

かっこいいけど・・・あれ・・・あれに見えてしまった、みつば。

日本の有名な少年漫画の…聖ナントカの、某キャラの、「ネ〇〇〇チェーン」って技。
日本の有名な少女漫画の…セーラーナントカの、某キャラの「ラブ〇―チェーン」って技。

某少女漫画の方は、かつてブログでも熱く語るほど、漫画もアニメもほとんど網羅していたほどはまっていた物。

ただ、某少年漫画は、爆発的人気の作品のようなのですが、実は漫画を読んだこともアニメで見たこともほとんど無いほど、さっぱりなみつば。

でも、なぜ知っているかというと、みつばが10代の時、同級生たちから初めて見せてもらった、同人誌のBL漫画のジャンルだったから。
みつばは、その時、初めて同人という存在もBLという言葉も知りました。
衝撃でしたね。。。いろいろ。

初めてBL創作を目にした時は、

「あははははは」(乾いた笑い)…だったみつばが、今では、
「あははははは♪」(頭上に花が飛んでいる笑い)になってますが(笑)

その時、同級生から見せてもらった同人BL漫画も、すごく面白かった記憶があります。

後に、商業誌でもみつばのはまった小説の挿絵や漫画を描いていらした同人作家さん。
本作品は設定もキャラも知らないのに、どぎついラブシーン描写も無く、ほのぼのと優しい感じで仲が良いカップル漫画に、萌え萌えした記憶。
一番最初に見たBL同人漫画が、この作品だったから、今のみつば(BLも受け入れOK)がいるのかな~?と考えたり。
…でも、今だに、本当の作品のこの二人のことがよく分かりません。主人公より上のゴールドナントカを身につけていた人達だったらしいけど。

チェーン…の技の人も同人ではよく「受け」で描かれていたような記憶…。


…という、きわどい話は置いておいて、温寧のことに話を戻します。

みつばの今の二次小説の「温寧」は、まだ「生魂」の温寧に結びついてません。
もう少し時間がたつと、あんな感じに♪とは思ってます。

次に、藍曦臣のこと。

今のところ、藍忘機より藍曦臣の登場シーンも会話も多いです。
…みつばが兄様好きだから♪(笑)というのは置いておいて、今は仕方ないのです。

藍忘機は仙督仕事で飛び回ってますし、雲深不知処にいて闇狩りをしている魏無羨は、藍宗主である藍曦臣に報告義務があるかな?って考えで。原作の「魔道祖師」とは違う設定になっています。
普通…一番えらいはずの仙督自身が飛び回る必要無いと考えるのですが、みつばの二次小説の藍忘機には、いろいろ思うところがあるらしいので、好きにさせてます。

それから、二次小説で使っている設定、名称のこと。

みつばの二次小説は「陳情令」の二次小説で、古代中国舞台なのですが、名称や設定で、古代日本を参照にしているところがあります。(時刻のことや、ことわざ、古文なども日本設定にしている)

理由。みつばが日本人だから。←下調べが足りないから。
中国ドラマや韓国ドラマの二次小説書いていても、言語もそうですが、文化や歴史を知らないこともあり。リアリティに欠けていてすみません。

「魔道祖師」のラジオドラマ、まだ聞けてません(汗)
日本版も、楽しみにしていた中国版(字幕入り)もです。
スマホの調子が悪くて、PCの二の舞になる前に新しい物を購入してからアプリをダウンロードしたいと思ってます。

二次小説への感想を拍手コメントで送って頂き、ありがとうございました。

「魔道祖師」をご存じの方は分かりますね。じつは、藍忘機がどれだけ嫉妬深い男かを。
でも、「陳情令」の藍忘機も相当、嫉妬深い素振りしてましたよね?♪

ドラマ中では、藍忘機が久しぶりに登場するシーン。
魏無羨が行方不明になっていた時期。

階段を上がってきて、温氏の配下たちに「ひざまずけ、魏嬰はどこだ?」と言う藍忘機のシーン。
怖いけど、かっこ良かったですよね?
藍忘機~♪(うっとり)となっていたみつば♪

アニメ版(魔道祖師)だと、ドラマとは違う演出になってます。
温晁、温逐流との対決エピソードは、ドラマ版の方が原作に忠実再現でした。

アニメだと、温氏討伐のところで温晁と対峙した藍忘機が「魏嬰はどこだ?」って聞く。

「乱葬洞に落としてやった。あいつなら、今頃、骨になっているだろうよ(みつば意訳)」と言われた、アニメ版の藍忘機の取り乱し方も、萌えシーンではあったのですが…。
藍忘機が取り乱すって、あまり見られないから。

ドラマ版では、あの時、魏無羨の仙剣を藍忘機が抜けなかったから、まだ生きているってことになったのかな?あれ、完全に亡くなっていたら、仙剣って他の人にも抜けるものなのかな?でも、どっちにしても、あの魏無羨の仙剣って…。

話がまた脱線しましたが。


二次小説も、今後、藍忘機が沢山現れるシーンになることを励みに、これからも創作続けます♪


(追伸)

現在、「検事プリンセス」の二次創作、他の関連記事を読んでくださっている方、ありがとうございます。「検事プリンセス」の続きは、少しずつ書き進めてますが、いつ更新出来るか、はっきりわからないので、目途がつき次第お知らせしますね。
と、この雑記は目にしていないかもしれませんが、お礼まで。


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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「邂逅」(5話)です。

二次小説を読む注意点、コメント記入、「陳情令」の他の二次小説も
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから(名称、説明、更新しました)

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

「陳情令」は現時点、日本語翻訳未公開のドラマです。
原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は「」の続きになります。


邂逅(5話)




清室の門から、魏無羨は藍忘機のそばまで歩いて行った。

近くに寄ると、いつもと違う藍忘機の様子がはっきりと感じ取れた。

それは、他の者には分かりにくい、いつもそばにいた魏無羨だからこそ気づいた変貌だった。

藍忘機の顔はいつも以上に白かった。
そして、琥珀色の瞳を取り囲む、いつもは澄んだ白眼は血走ったように濁っている。
目の淵はうっすらと朱に染まり、赤い唇の艶は、ややくすんで見えた。

長いまつげの陰影に伏せられた目。
かたくなに感情を隠している顔は、いつも以上に何を考えているのか分からない。

一見、普段と変わらないように見える氷山。
しかし、いつ雪崩を起こすか分からない危険を孕んでいる。

静かに立って魏無羨を見ている藍忘機の目に、何故かそんな雰囲気を感じた魏無羨は、
無意識に自分が狼狽する意味も分からずに、おずおずと藍忘機の顔色を伺った。

…俺が門限に遅れたことを怒っているのだろうか。

魏無羨がそう考えた時、藍忘機が再び口を開いた。

「一晩中、どこにいたのだ?」

「え?」

魏無羨は、昨晩、空師の家で藍忘機に思念話を込めた人形符を伝達符にして送っていた。

「俺の伝達符を見てない?」

「私が伝達符を受け取ったのは、昨晩の子の刻(23時~1時)だ。それから何をしていた?」

確かに送ったのは子の刻ではあったが、いつもなら、藍忘機は必ず就寝している時間だった。てっきり朝起きた時に伝達符を目にするとばかり思っていた魏無羨は驚いた。

「伝達符の気配で起こしちゃった?」

「…送った親子の家は遠いところだったのか?」

魏無羨の問いには答えず、藍忘機がさらに尋ねた。

「ああ、まあ、ここからだと徒歩で1刻(2時間)以上はかかる場所だったかな」

魏無羨は少し考えた後答えた。

仙剣移動であれば、おそらくすぐの場所だっただろう。
しかし、魏無羨は今仙剣を所持していない。

「裏街道で屍に追われた親子は逃げているうちに道に迷って、家からかなり離れてしまったらしい。父親の方は足を怪我していたから帰宅に時間がかかった。応急処置をして足の治療は家についてから行ったよ」

「怪我の具合は大丈夫なのか?」

「ああ、傷は深めだったが、闇で出来た怪我じゃない。適切な処置をして、姑蘇藍氏の軟膏薬も渡してきたから、すぐに回復するだろう」

そう説明しながら、魏無羨は、長時間歩いたせいで汗ばんだ頭を手でかきながら言った。

「魏嬰、君も怪我をしている」

藍忘機が手に持っていた仙剣の柄先を魏無羨の腕の方に向けて言った。

「ん?」

藍忘機が示した方を魏無羨が見ると、上げていた腕に切り傷があるのが見えた。

手首と腕に巻いていた半手甲帯は、空師の男の手当に使うために取っていた。
傷は、むき出しになっていた魏無羨の腕に、屍傀儡の犬がとびかかってきた時に出来たものだった。

かすり傷だと気にしていなかった魏無羨だったが、藍忘機は目の色を変えると、つかつかと魏無羨に近寄った。そして、魏無羨の腕を手に取ると、真剣なまなざしで傷を見つめた。

「何で出来た傷だ?」

「屍に引っかかれただけだ。邪気も触れてない。こんな傷、舐めとけば治る」

何でもないという風に、袖口を下ろそうとした魏無羨だったが、藍忘機の手が離さなかった。

藍忘機は仙剣を後ろ背に差すと、空いた手で懐から小さな器を取り出した。

それは、弟子達が闇狩りに出かける時に持たされる姑蘇藍氏の軟膏薬に似ていた。
魏無羨も今回の闇狩りに行く前に支給され持っていたのだったが、怪我をした空師に器ごと渡していた。

藍忘機は器から軟膏薬を指ですくうと、魏無羨の傷をそっと撫でた。

軟膏薬が触れた箇所から、すでに傷が癒えていく。
魏無羨はそれを信じられないような目で見つめた。

「すごい。藍湛」

薬の効き目に感動した魏無羨は、自分の腕の傷を何度も別角度から眺めた。

「これも姑蘇藍氏の秘薬か?いつもの軟膏薬より効き目がもっといい気がする」

魏無羨の感嘆に、「これは私が調合した」と藍忘機が言った。

「藍湛が?」

「ん。君が腹に傷を負った時も使用した」

藍忘機が言ったのは、魏無羨が金麟台で金陵に剣で刺された時の話だった。

…あの深い傷の治りが早かったのは、そういうわけだったのか。
さすが含光君。薬を作る腕も超一流だな。

納得しつつ、尊敬の眼差しで見つめる魏無羨に藍忘機が伏し目がちになって、器の蓋を閉めると、魏無羨に手渡した。

「持っていなさい」

「え?俺にくれるのか?」

頷く藍忘機に、魏無羨は「ありがとう」と喜び勇んだ礼を言うと軟膏薬の器を自分の懐に入れた。
そんな魏無羨を一瞥した後、藍忘機は、今度は己の外衣の前身頃を開いた。

「君に渡すものが他にもある」

そう言って藍忘機は腰帯に下げていた2つの通行玉礼の内の1つを取って、魏無羨に差し出した。

「これを」

通行玉礼。
これさえあれば、たとえ雲深不知処の門に結界があっても、門限を過ぎても、自由な時間に雲深不知処内外を行き来出来た。
雲深不知処の中で、藍忘機、藍曦臣、藍啓仁、そして一部の重役だけが持つことを許されている霊玉。

「いいのか?」…俺が持っていて。

手にする前に、真面目な顔でそう問う魏無羨に藍忘機は頷いた。

「君の物だ」

「俺の、通行玉…」

魏無羨は、藍忘機から通行玉礼を受け取ると、不思議な力を感じる玉をギュッと握りしめた。

「うん。これから使わせてもらう」

そう言って、魏無羨が自分の腰帯に通行玉礼を下げ終えるのを見守った後、
藍忘機は、背に差していた仙剣を再び手に戻した。

「君は、今日は闇狩りの予定もない。家でゆっくり休むといい」

藍忘機が言った。

「藍湛は?」

「私は、これから所用で雲深不知処の外に出かける」

「泊りで?」

「場合によれば、そうなる」

「そっか…」

「魏嬰、私に何か話したいことがあるのでは無いか?」

思案したように俯き加減になった魏無羨に藍忘機が尋ねた。

…本当は、藍湛に話したいことや聞きたいことがある。

魏無羨は、藍忘機の顔を見ながら思った。

夷陵老祖の術が不完全に施された犬の屍傀儡のこと。温寧のこと。…噂になっている婚姻話のこと。

しかし、温寧のことは藍宗主に相談すれば解決するとして、犬の屍傀儡のことを藍忘機の耳に入れるかどうかを躊躇していた魏無羨だった。

…普段から自己管理にも厳しい藍湛の具合が悪く見えるのは、さすがに疲れが出ているからだ。
よほど多忙なのだろう。仕方ない。藍湛は仙督についたばかりなんだ。
しなければいけない事や考えなければいけないことも沢山抱えていることだろう。些末なことで手や頭を患わせてはいけない。

…それに、これは、俺が解決しなければいけないことだ。

そう考えた魏無羨は、「俺が言いたいのは…藍湛もちゃんと休んでくれってこと。少し顔色が悪いぞ」と言った。

魏無羨の言葉に藍忘機は、何か言いたげな目で口を開きかけた。
だが、思い直したように目を伏せると「…行ってくる」と言って、魏無羨に背を向けた。

その背が何故か寂し気に見えた魏無羨は思わず「藍湛!」と大声で声をかけた。

「門限までに帰れなくて、昨日の約束を守れなくて、ごめん」

魏無羨の声に、藍忘機は足を止め、少しだけ振り返った。

「…謝罪は昨晩も聞いた。君が無事だったのならそれでいい」

そう言うと、藍忘機は再び足を進め、清門から出て行った。

藍忘機の背を見送った魏無羨は、藍忘機の姿が見えなくなると、清室の方に足を向けた。

ほぼ一晩中、歩いていたため、全身が汗ばんでいた。
着替えをする為、清室に入ろうとした魏無羨は、濡れ縁に風呂桶が出ていることに気づいた。
濡れ縁に上がり、魏無羨は風呂桶を覗き込んだ。
はられていた湯に手を入れると、少しぬるく感じるが温かい。

…藍湛が朝に風呂に入っていたのかな?

そう考えながら、魏無羨は衣服を脱ぎ捨てると、風呂の中に入った。

風呂桶の近くに置いてあった皀莢の莢(さや)(西海子:サイカチ※古代で石鹸、シャンプー代わりに使用されていた)を泡立て、髪の毛を洗い、体も清めると魏無羨はさっぱりした気分で清室に入った。

衣の替えを取るために衣裳箪笥に行こうとした魏無羨は、ふと何かの違和感に気づいて足を止めた。

…え?

目の端でとらえた光景を確かめる為、魏無羨が振りかえると、いつも藍忘機が座って茶を入れている座卓の上に、天子笑の甕が2つ置いてあるのが見えた。
藍忘機は酒を飲まない。

魏無羨は座卓に近づくと天子笑の甕を持ち上げた。
2つとも未開封の状態で、中には酒が満たされている。

「これって…」

魏無羨は、呆然と呟いた。

そして、ある事に思い至って、もう1度、手に持った天子笑の甕を驚きの目で見つめた。

昨日の夕方、魏無羨が仲英と酒を飲んでいた時に偶然会った藍忘機は「用事がある」と言っていた。

その用事というのは仕事の一環で、だから、藍忘機は雲深不知処に戻るには遠回りになる街に来たのだと魏無羨は思い込んでいたのだったが。

…用事って、まさか、藍湛は、この天子笑を買う為に街に寄っていたのか?俺のために?
だから、金麟台に一緒に行った共の者たちは先に帰して、一人で街に来ていたのか?
もし、そうだったら藍湛が一人で街にいたことも合点がいく。
しかし、本当にそんな理由だったのなら…。

『藍湛!明日帰ったら、夜には一緒に酒と茶を飲もう』

そんな、たわいもなく自分が言った約束の為に、藍忘機がしてくれた事を想うと、魏無羨は、胸の奥がジンっと熱くなるのを感じた。

更に、魏無羨は、ハッとなって濡れ縁に置かれた風呂桶の方を見た。

…もしかして、藍湛は、俺が伝達符を送った時もまだ起きていて俺の帰りを待っていた?
そして、伝達符の思念話を読んだ後も心配してずっと起きていたのか?
俺がいつ戻っても入れるように、風呂湯も、何度も沸かして入れなおして…。

そんな事を想像した魏無羨は、いたたまれない想いになって俯いた。

それらは魏無羨の勝手な想像ではあったが、目の前にある天子笑の甕だけは、まぎれもない事実を物語っていた。

『君が無事だったのならそれでいい』

去る前、謝罪を述べた魏無羨にそう言っていた藍忘機。

「…ありがと。藍湛」

…藍湛に次に会ったら面と向ってそう伝えよう。

そんな事を思いながら、魏無羨は、天子笑の甕にむかって小さく囁いた。

そして、天子笑の甕をそっと座卓の上に戻した魏無羨は、
休む前に、取り急ぎやらなければならない事を先に済ませることにした。

温寧の件だった。

知らなかったとはいえ、所有者のいる山から木を持って行ってしまった。
温寧の“鬼将軍”という称号は夷陵老祖の屍傀儡として世間では認識されている。今は魏無羨から離れて一人立ちをしている温寧ではあったが、今回の件は自分にも責があると感じていた魏無羨だった。

温寧は生前、姉の温情に守られるように生きていた。
そして、魏無羨が屍傀儡として復活させた後、共に暮らしていた時に様々な事を教えてはいたが、世情から離れた乱葬洞の村にいたため、まだ世間慣れしていない部分もあったのかもしれない。

そして、この件が大ごとになって、闇狩りの依頼にまで発展する前に藍宗主には知らせるべきだと魏無羨は考えていた。

魏無羨は、衣服を着こむと清室を出て、藍宗主である藍曦臣の元を訪ねた。

藍曦臣は、雲深不知処内の修行場で門下生に剣術の指南中だった。
しばらくして、近くで待っていた魏無羨に、指導を終えた藍曦臣がにこやかな笑みを浮かべて近づいてきた。

「魏公子。お待たせしました」

藍曦臣に稽古をつけてもらっていた門下生たちが魏無羨の横を汗だくでよろよろと通りすぎる中、藍曦臣は通常と何一つ変わらない、爽やかな、いでだちだった。

藍曦臣は、魏無羨の腰帯に下げられた通行玉礼を一瞥すると、またにっこりと微笑んだ。

「忘機がお渡ししたのですね。魏公子に通行玉を差し上げるのが遅くなって申し訳ありませんでした。それまでご不自由されていたのでは無いですか?」

「いえ、不自由なことはありませんでした」

…昨夜までは。と、心の声は出さずに魏無羨が答えた。

「お心づかいありがとうございます。沢蕪君」

藍曦臣は頷くと、「お話は部屋で聞きましょう」と魏無羨を促して歩き始めた。

藍曦臣の自室「寒室」に入ると、魏無羨は昨日の闇狩りの報告の時と同じように座卓の前で藍曦臣と対面で座って、昨夜の温寧の件の話を切り出した。

そして、他にも起こったことを一通りと、温寧がしたことに対する釈明も含めて説明し終えた魏無羨が言った。

「温寧が持っていった木の代金は、俺が次回支給される闇狩り報酬から引いてください」

「え?」

驚きの表情を浮かべた藍曦臣に魏無羨が気まずげに続けた。

「すみません。実は今、金をほとんど持っていないのです。藍湛からもらった銀を最近、全部使ってしまっていて…」

温寧の取った木を弁償するつもりでいた魏無羨だったが、財布がわりの巾着の中には銀どころか、銭すらほとんど残っていない状態だった。

「それは、さぞお困りでしょう。どうぞ、魏公子の当面の資金にこちらをお使いください。これで不足でしたら、また欲しい分をおっしゃってください」

藍曦臣がそう言って、自分の財布を差し出すのを魏無羨は慌てて辞退した。

「大丈夫です。大丈夫です。俺のこずかいのことは藍湛に話して、また貸してもらいます。とりあえず、温寧が損害を与えた分は姑蘇藍氏で…沢蕪君にたてかえて頂き、先方への説明と支払いをお願いすることは出来ますか?」

「ええ。その件はご安心ください。山の所有者の方には、私の方で対応しておきます。もちろん、温公子のことも他の者には伝えずに対処します」

「ありがとうございます」

魏無羨は、ほっと内心で息をつくと、藍曦臣に感謝の意を示すように揖礼した。

「それにしても、魏公子には大変な夜でしたね。通りがかりで屍に追われた人をお助け出来たのは良かったですが」

そう労いの言葉をかける藍曦臣に、魏無羨は、懐から犬の屍傀儡がはめていた首輪を出して見せた。

「あの後、親子が会ったという老婆の屍には遭遇しませんでしたが、これは、犬の屍傀儡がしていた首輪です。この飾りの図は、どこかの家紋のように見えるのですが、沢蕪君に覚えはありませんか?」

藍曦臣は、魏無羨から首輪を受け取ると、飾りに刻まれた図をしげしげと眺めた。
そして、少し眉をひそめた。

「これは…」

「知っていますか?」

「…いえ」

藍曦臣が固い表情で答えた。

「確信はありません。少し調べておきますので、魏公子、この首輪をしばらくお借りしてもよろしいですか?」

「はい」

藍曦臣君は、部屋にあった封印術が施された箱の中に首輪を仕舞った。

魏無羨は、藍曦臣のそんな姿を眺めながら、犬の屍傀儡の首輪の図に沢蕪君が何らかの心あたりがあることを察した。

作業を終え、席に戻った藍曦臣は、「他にも魏公子からお話はありますか?」と聞いた。

「いえ、報告と相談は以上になります」

そう答えた魏無羨を藍曦臣はジッと見つめた。

「魏公子が今朝、雲深不知処に戻られた時、忘機と話をしましたか?」

藍曦臣が尋ねた。

「少しだけ。屍に追われて怪我をした人を家まで送ったという話くらいです」

温寧と犬の屍傀儡の話はしなかった。

それに、昨日、藍曦臣と話をしていた、なぜ藍忘機が仙督就任式を延期したのか?や、なぜ魏無羨をすぐに迎えに行ったのか?という理由もまだ聞いてはいなかった。

「忘機から仙督に関わることで何か聞いていませんか?」

「仙督のこと?いえ、藍湛はとくに何も言ってませんでした」

きょとんとする魏無羨に藍曦臣は、「忘機は話していないのですね」と、固い表情で頷いた。

「では、私から魏公子のお耳に入れたいことがあります。忘機が魏公子に話をしなくても魏公子には知っておいて頂きたいのです。」

「…はい」

急に深刻な雰囲気になった藍曦臣に魏無羨は内心驚きつつ、神妙な面持ちで身構え耳を傾けた。

それからの藍曦臣の話は魏無羨の想像を絶する物だった。

「実は、忘機を仙督の座から廃しようとしている者たちが動き始めています」

…え?

「それは…仙督の藍湛を害しようと画策している者がいるということですか?」

魏無羨の脳裏に、雲深不知処で会った聶懐桑の話がよみがえった。

“組織の上に立つ者は、胸に誰かの仙剣が突き刺さるかもしれない、という事態が起こる確率がただの仙人でいる時より高いゆえ”

藍曦臣がかぶりを振った。

「いえ、そこまでのことは起こさないかもしれません。
ただ、この話は単なる噂ではなく、確実な筋から得ている情報です。
忘機が仙督についてから、もちろん、そういうことは忘機も私も想定していました。
なので、心づもりも出来ています。ただ、忘機のそばにいる魏公子にも、私は知っていて欲しかったのでお話しました」

無言で頷く魏無羨に藍曦臣が続けた。

「忘機は仙督ではありますが、姑蘇藍氏の含光君であり、藍家の次男で、私の弟です。私は藍氏の宗主としてだけでなく、大切な彼を守りたいという気持ちからも、この件を魏公子にお伝えしました。
気にしすぎることはありません。忘機はあの通り、精神も肉体もとても強い仙術使いです。ただ、忘機に関すること、魏公子には、心にとめて頂けたら、と私は考えます」

「…はい」


魏無羨は、再び、藍曦臣に静かに頷き返しながらも、
膝に置いていた両手を無意識に強く握りしめていた。



(終わり)





タイトルは変わりますが、シリーズ話は、まだ続きます。
「邂逅」のあとがきは又後日に。

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中国ドラマ、男女ロマンス物も他にも気になっているドラマがいっぱいあります♪
余裕がある時に視聴します。万一はまると大変だから、今はちょっと自制中。
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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「邂逅」(4話)です。

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とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

「陳情令」は現時点、日本語翻訳未公開のドラマです。
原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は「」の続きになります。


邂逅(4話)





「魏公子、なぜ、ここに?」

首をかしげる温寧に、魏無羨がまた溜息をついた。
そして、温寧のいる方に歩いて近づいて行った。

「それは、こっちの台詞だ。温寧、ここで何をしているんだ?」

「材木にする木を探しています」

「材木って、何をする為の材木だ?」

「…温氏の…私の一族の祠堂を修復する為の材木です」

温寧が小さな声で答えた。

「公子もご存じですよね。今、私の先祖の祠堂はほとんど朽ちた状態になっています。私はそれを建て直したいのです」

「うん…その気持ちは分かるけど。温寧」

魏無羨は、切り株になっている箇所に目を落として言った。

「この山の木には所有者がいることは知っているか?」

「え?…そうなんですか?」

温寧は、目をぱちくりさせた。

「知らなかったか?」

「はい…」

「そこの木は温寧が切って持っていったのか?」

「はい。1本だけ。丈夫な木を探していて、この山を見つけました。まさか、所有者がいらっしゃるとは知らなくて…」

温寧は、「…良くないですよね」と言ってうなだれた。

「うん…まあ、知らなかったのなら仕方ない」

気の毒なほどしょげているように見える温寧を慰めるように、魏無羨が温寧の肩を優しく叩いた。

「公子…どうしたらいいでしょう?」

そう問う温寧に魏無羨は、うーんと唸って、鼻の頭を指でかいた。

「姑蘇藍氏の宗主、沢蕪君に相談してみるよ。きっと事情を話せば、うまく取り持ってくれるはずだ」

「藍宗主に…。公子、よろしくお願いします」

「うん。任せろ」

そう答える魏無羨に温寧がほっと安堵したような顔(魏無羨にはそう見える)になった。

「じゃあ、温寧。この山から出よう。私有地だからな。所有者の許可なく長居は出来ない」

そう言って歩きだす魏無羨に、温寧もちょこちょことついてきた。

「魏公子は許可をもらって来たのでは無いのですか?もしかして、私の闇狩りの依頼を受けているのですか?」

「俺は、別件で近くまで来たから、ついでに噂の木を盗む屍の正体を探りに来たんだよ。命拾いしたな、温寧。知らずに木を盗り続けていたら、たしかに、今に姑蘇藍氏に正式に闇狩りの依頼が来ていたかもしれない」

「そんなことになったら、阿苑に顔向け出来ません」

温寧が気まずげに俯いた。

「この件も知られれば、彼がどう思うか…」

藍願という名になり、藍思追という字で姑蘇藍氏一門にいる、温寧のいとこの子どもである阿苑。
藍思追は、幼い頃の記憶を思い出し、自分の血族が温氏であることも、もう分かっていた。

住処は違えども、藍思追は温寧と連絡を取り合い、時々会ってもいるようだった。

温寧が、一族の祠堂の為に盗みをした事を優しい藍思追が知れば、ひそかに苦しむのではないかと、温寧は心配したようだった。

「思追は大丈夫だ」

魏無羨が言った。

「温寧。あいつなら、お前の気持ちもしたことも全部分かってくれるはずだ。それに、藍宗主は、きっとこの件を穏便に運んでくれる。信じていい」

魏無羨の言葉に温寧がこくりと頷いた。

魏無羨と温寧。二人が、私有地の山を出た後、「魏公子は雲深不知処に戻られますか?」と温寧が魏無羨に尋ねた。

「いや…俺は朝まで雲深不知処には戻れない」

「…?」

不思議そうな温寧に、魏無羨は、ここまでの経緯をおおまかに説明した。

雲深不知処への帰り道で屍に追われた親子を助けて家まで届けたこと。
雲深不知処の就寝時間が過ぎてしまったこと。
街で聞いた木を盗む屍の噂話を確かめに山まで来たこと。

「通行玉礼を今は持っていない。それに、宿場に泊まれるほどの金もないから、今夜はひさしぶりに野宿だな…」

ふう、と吐息をつく魏無羨に、温寧が「朝までおつきあいします」と申し出た。

「お疲れでしょう。私が火の番と闇の者を警戒しているので、公子はどうかお休みください」

屍傀儡に休息は必要無かった。

正直なところ、疲労を感じていた魏無羨は、温寧の言葉に甘えることにした。

誰の私有地でも無い山に入ると、魏無羨は大きな木の下を今夜の野宿に決めた。

魏無羨が木にもたれて休んでいる間、温寧が集めてきた枯葉や薪を起こした火にくべていた。

体中、疲れを感じているというのに、魏無羨の頭はなぜか冴えていた。

魏無羨は、火と温寧の姿をぼんやりと見つめながら、先ほど目にした犬の屍傀儡の事を考えていた。

「温寧…」

「はい?公子」

「さっき、犬の屍傀儡に遭遇した」

「犬の…屍傀儡ですか?」

「何の目的で、誰に傀儡にされたかは分からないが、とても中途半端な術を施されていた」

「それは…」

温寧が、戸惑いながらも必死で考えをまとめようとしていた。
しかし、答えに行きつかず、魏無羨に困惑した顔を向けた。

「…どういうことですか?」

「うん…つまり、意思を持っているわけでも、操られているわけでも無く、心は少しある。でも、魂もほとんど抜けた状態で、思うように出来ない体でこの世につなぎとめられた存在になってたってことだ」

「それは…心を持っているのなら、つらいですね」

「温寧もそう思うか?」

そう問う魏無羨に温寧が頷いた。

「あれは…俺の編み出した術だ」

魏無羨がぽつりと言った。

「公子が私に施した術と同じ物ということですか?」

「いや…。同じようで異なるもの。術も技も欠けた不完全な物だった。
だから、あんな状態になった。俺にはそう見えた」

温寧に語りながらも、魏無羨は自分の思考を整理していた。

「誰かが、俺の真似をして術を施した。しかも、飼い犬の亡骸に。
何のつもりでそうしたか分からない。情があって、復活させるつもりだったか、あるいは、違う理由か。どちらにしても…」

魏無羨は、懐から、犬の屍傀儡が残した首輪を取り出して眺めた。

…術者は、屍傀儡にすることに失敗したことを知っていたはずだ。それなのに、どうしてあんな状態で世に離したのだろう。

しばらく見つめていた首輪を、魏無羨は再び懐の中に仕舞った。

術を生み出したのは自分のはずなのに、一度世を去ってから長い年月がたっていた。
そして術だけは魏無羨のいない世で勝手に一人歩きしていた。

姑蘇藍氏が闇狩りに使用している召陰符のような物もあれば、適当な知識と技で試せば、取り返しのつかないことになる術もある。

魏無羨には、一夜の夢のような時間だったが、16年という歳月は長かった。
生まれたばかりと聞いていた金陵は少年になり、幼子だった阿苑も立派な青年に成長していた。

「…“うらしま太郎物語”という異国の話を知ってるか?」

突然話題を変えた魏無羨に温寧がキョトンとした。

「知りません。どんな話ですか?」

「俺が子どもの頃、師姉が聞かせてくれたおとぎ話だ」

魏無羨が遠い目をして語りだした。

「うらしま太郎(※日本の昔話)という男が、海辺で、子ども達にいじめられているところを助けた亀にお礼として竜宮城という海の屋敷に連れて行ってもらった。そこには乙姫という美しい仙子みたいな女性がいた。彼女にもてなされた、うらしま太郎だったが、陸の自分の家に帰ることにした。そして、乙姫から土産に決して開けてはいけないという玉手箱をもらって、うらしま太郎が家に帰ると、陸では100年以上時間がたっていた。若い青年のままだったうらしま太郎だけど、たまて箱を開けると、白髪の老人になってしまった…って話だ」

「はあ…」

温寧は感慨深げに首をかしげていた。

「うらしま太郎がもらった、たまて箱は、外側だけ価値のある物だったんでしょうか?たとえば銀で出来た物とか」

「この話で、温寧がくいつくところは、そこか?」

魏無羨が軽い笑い声をあげた。

「俺は、師姉から初めてこの話を聞いた時思ったのは、俺だったら、帰らずに竜宮城に残って乙姫と結婚してそこで暮らすっていうことだったな」

本当は、魏無羨がこの話を思い出したのは、自分の今の状況が、おとぎ話のうらしま太郎に似ていると考えたからだった。
目が覚めたら16年たっていた。献舎された肉体はあの頃のまま。
でも、実は、どこかに、置き忘れた、たまて箱があるんじゃないだろうか。
そんな気持ちになっていた魏無羨だった。

だが、温寧との会話ですっかり話も思考も脱線してしまったようだった。

「結婚といえば…藍二公子…仙督の婚姻話はどうなったのですか?」

ふいに尋ねてきた温寧の言葉に、魏無羨はガバっと身を起こした。

「温寧。その話、誰から聞いた?思追か?」

…藍湛の婚姻の噂話をまさか温寧まで知っているとは!
そんな驚愕の表情で凝視する魏無羨に、温寧がたじたじとなった。

「違います。阿苑からは何も…。私は街で聞きました」

「街の誰が言っていたんだ?」

「いろんな人です。商人や旅人。街を歩いていた時、ちょうど噂している人々がいたので、近寄って少しだけ話を聞いてみました」

「それで?」

「藍二公子のお相手が、玉家の20歳前後の娘さんで、姑蘇藍氏に修行に行っていたことがあって、その時から藍二公子に好意を持たれていたとか。過去に何度か婚姻話が持ち上がっていたとか。ある宴会で、藍二公子も娘さんをまんざらでも無い態度で見ていらしたこともあったとか。それで、藍二公子が仙督となられた今、今度こそ婚姻が成立するのでは?と、それくらいのお話を教えて頂きました」

そう淡々と語った温寧に魏無羨は苦笑した。

…それくらいって、闇狩りの前に俺が宿屋で聞いた話より詳しいぞ。温寧。
そんな噂話を人に聞けるくらいなら、山の所有者がいるかどうかを先に確かめてから木を伐りに行け。

そう思いながらも、過去に、所有者がいる鳥や魚を取ったり、蓮の実を食していた自分が言えることでは無かった為、温寧に言ってやりたいことを心の中で留めた魏無羨だった。

「いや。その噂話の真偽は俺にも分からない」

そう答える魏無羨に温寧が目を丸くした。

「藍二公子からお聞きしていないのですか?」

「うん…まったく」

「じゃあ、デマですね」

あっさりと決めつける温寧に、魏無羨は、一瞬、温寧の純粋さと素直さがうらやましいと感じた。

魏無羨は、ごろりと横になった。

「温寧…俺はちょっとだけ寝るよ。卯の刻(5~7時)の鐘の音が聞こえたら起こしてくれ。
もし、鐘が聞こえなかったら、日の出頃でいいから」

「わかりました」

魏無羨は温寧の返事の後、目を閉じるとすぐに夢路に入っていった。


わずかな仮眠の後、魏無羨は、約束通りの刻に温寧から起こしてもらった。
そして、温寧に、改めて木の件のことは自分に任せるように伝えると、別れをつげ雲深不知処への帰路に向かった。

魏無羨が雲深不知処についた時には、辰の刻(7~9時)になっていた。
魏無羨は開門していた雲深不知処に入ると、階段を上って、清室にむかった。

…藍湛は、もう仕事か鍛練に出かけてしまっただろうか。

そんなことを考えながら、魏無羨は清室の門を開けて中に入った。

…!

魏無羨は思わず足を止めた。
清室の建物の前に藍忘機が背を向けて立っていた。

微動だにしない、その後ろ姿。

まるで、一晩中、その場にいたかのような藍忘機の佇まいに魏無羨は驚いて、すぐに声を発することが出来なかった。

そんな魏無羨の気配を察したかのように、藍忘機が振り返ると魏無羨を見た。

魏無羨の姿をジッと見つめた後、藍忘機が口を開いた。


「魏嬰…帰ってきたのだな」


静かに響く藍忘機の声に、魏無羨は、ただ藍忘機の顔を見つめて、コクリと頷いた。



(続く)


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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「邂逅」(3話)です。

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※この話は「」の続きになります。


邂逅(3話)




林道を外れた場所は手入れされていない雑草が高く伸びはびこっていた。

雑木林の中は、日が沈んだばかりで暗く視界は悪くなっている。
だが、闇夜に慣れている魏無羨は、障害物を除けながら、助けを呼ぶ人の方に全速力で向っていた。

「助けて」

助けを呼ぶ声は、次第に掠れ、かぼそくなっていく。

よろめいた足音が止まった。

魏無羨は、高く跳躍すると、林の太い枝をバネにして、木々を渡り、足音が途絶えた先に急いだ。

ようやく、遠目から、高い雑草の中でうずくまった人影を発見した魏無羨は、木から着地した。

魏無羨は人影に駆け寄りながら周囲を注意深く探ったが、今のところ近くに何かがいる気配は無かった。


「大丈夫か?」

魏無羨が声をかけて近づくと人影が動いた。
人影は一人では無かった。

うつぶせで幼女を守るように抱きしめた若い男が、ガタガタと震えながら、魏無羨の方を振り向いた。

「…た、助けてください」

男は息も絶え絶えの様子で荒い息をしていた。
助けを呼びながらずいぶん、走っていたのだろう。

しかし、それだけでは無い。

濃厚な血の匂いがする。

魏無羨が護符の明かりをかざすと、
男の左足のズボンが裂けていて、太ももの周囲が血で染まっているのが見えた。

傷は少し深かった。

…止血が必要だ。

そう判断した魏無羨は、自分の両手首に巻いていた半手甲の帯(※手首、腕を保護する物)をほどくと、男の太ももの付け根をきつく縛り上げた。

男は、時折痛みでうめき声をあげ、男の傍らで幼女が男の腕にきつくしがみつき、小さく震えながら座っていた。

「何があった?」

傷の応急処置をしながら魏無羨が聞いた。

「ば、化け物…。獣の化け物が襲ってきて…。その前に屍が…老婆の屍が…」

「落ち着け。ゆっくりでいい」

魏無羨は男をなだめながら、男の脚の具合を診断していた。

「この傷は獣の化け物に襲われて出来たものか?」

「い、いえ。…怪我は、逃げている途中で尖った木の枝で切りました」

…確かに傷に闇の気配はない。裂傷ではあるが、ただの怪我だ。

魏無羨は、ほっと小さく吐息をついた。

これが、闇の者に襲われてつけられた物ならば、傷の治癒に浄化の術と手間が必要だった。
藍忘機は、そういう技に長けていたが、魏無羨は、あまり得意としないところだった。

しかし、ただの怪我であるならば、魏無羨でも治療は可能だった。

魏無羨は、男の脚が折れていないことと、止血が出来てきたことを確認した。

…あとは、清潔な物で傷を覆えば…。

魏無羨はふと思い当たり、己の懐に手を入れた。
雲の図が描かれた藍忘機の布。清室の外に干してあった物だった。

魏無羨は、その布を男の脚の怪我を覆うように巻き付けると、もう1本の半手甲帯で固定し結び付けた。

「応急処置はしたが、なるべく早く治療が必要だ。家はこの近くか?そこで怪我の手当をしよう」

そう聞く魏無羨に、男は泣きそうな顔になった。

「家はこのあたりではありません。多分2つほど山の向こうになります」

「多分というのは?」

「屍に追いかけられて、やみくもに逃げていたので、方向が分からなくなったのです」

つまりは、道にはぐれたようだった。

「獣の化け物から逃げていたんじゃなかったのか?」

「はい。そうです。でも、最初に追いかけてきたのは人間の屍でした」

ようやく、落ち着いてきたらしい男が語りだした。

「私は、空師(高い木の枝を伐採する職業)です。今日は娘が私の仕事を見たいというので、仕事場の山に一緒におりました。それで帰り道は、娘に駄菓子でも買おうと旅商人たちが時々露店をひらいている裏街道を通ったのです。もう時間が遅かったせいか裏街道に商人はおらず、帰ろうとした矢先に老婆の屍が現れ、追いかけられました」

…老婆の屍…。

魏無羨は、仲英から聞いていた裏街道に出た屍の話を思い出した。

…その話も年配の女性だと言っていた。

「何か変わった点は無かったか?」

「変わっているところだらけです。屍なんぞは、噂で聞くばかりで初めて目にしましたが、生きている人間とは違う。亡くなった体があんな風に動くなんて…」

動く屍を見たのが初めてなら、他とどう違うのか分からないだろう。

「では、服装は?どんな感じだった?たとえば、職業や身元が分かりそうな物を身につけていたか?」

魏無羨が改めて男に特徴を聞き直した。

「そういえば…かなり高級そうな着物を身につけていました。髪は乱れてはいましたが、豪勢な飾りもつけて。元はどこかの金持ちのような老婆でした」

空師の男は、思い出したように話し始めた。

「老婆は林の中からふらりと現れて、この娘の方に近づいてきました。怖くなって娘が走り出すと、老婆も娘を追いかけて。私は慌てて、娘に追いつくと、抱き上げて逃げました。
ただ、老婆の足が速くて。私は裏街道から外れて、林の中に逃げ込んで走りまどう内に、知らない山の中に入り込んでました。屍はいつのまにか追ってきてなかったので、何とか家に帰ろうとしたら道に迷い、そして、今度は犬の化物が現れて追いかけられました」

「犬…」

その言葉だけで魏無羨の背中に悪寒が走った。

犬は、魏無羨の一番の弱点だった。
どんなに凶悪な妖魔だろうと、邪悪な幽鬼だろうと。
その力の強弱は多少変わっても、対峙してまったく臆しない魏無羨も、犬のことになると話は別だった。

可愛い子犬でさえも、見れば震えあがるほど苦手な存在。

「…それで犬の化物は?」

「逃げ回っているうちに、ついてこなくなりました。
でも、道に迷い、脚も動かなくなってきたので、助けを呼びながら隠れました。…あの、お見受けしたところ、仙術使いの方のようですが…」

魏無羨が頷いた。

「安心しろ。俺があなた達を家まで送ろう」

男は、大きく安堵の吐息をつくと、魏無羨の手を両手で握りしめて「ありがとうございます!」と涙ぐんで礼を述べた。

その時、男の傍らにいて、それまで黙っていた幼女が「うわーっ」と大声で泣き始めた。

「お家にかえりたいよ~。お腹がすいたよ~」

「これ、阿樹」

父親の怪我が応急手当され、頼りになりそうな仙術使いが現れたという安心感で、幼女のそれまでの緊張と恐怖心が一気に解けたのだろう。

わーわー泣く娘に父親の男はただ困惑して、なだめるように幼女の頭を手で撫でていた。

…そうだ。

魏無羨は懐を探ると、笹の葉で包まれた飴を取り出し、それを幼女に差し出した。

「ほらほら。これを見て」

幼女がしゃくりあげながら、魏無羨の手を見つめた。

魏無羨が笹の葉を取り除くと、中から棒についた兎の形をした飴が現れた。

「これをあげる」

魏無羨が幼女に微笑みながら飴を差し出した。

「お父さんは足を怪我しているからお兄さんが手を貸して歩くよ。でも、君が歩けば、早く家につくことが出来る。この兎さんと一緒に頑張れるかな?」

幼女がコクリと頷き、魏無羨から飴の棒を受け取った。
そして、涙を袖で拭うと、顔を輝かせて兎の飴を舐め始めた。

「あの…よろしいのですか?どなたかへの土産物だったのじゃありませんか?」

恐縮して、おずおずと尋ねる男に魏無羨は、気にするな、と言う風に小さく首を振った。

「行こう。俺があなたに肩を貸す。家のある村か地名を教えてくれ」

魏無羨は、男から聞いた地名で、行くべき方向が分かった。

逃げまどっていたため、かなり離れた場所まで来ていたようだった。

…大人の足で歩いても1時間。
子どもとけが人の足ならば、倍ほどかかるだろう。

魏無羨は、夜目が効く術符を使用し、男に肩を貸すと、反対方向で幼女の手をひいて暗闇の中を歩き始めた。

兎の飴を舐めながら、幼女は健気についてきていた。

半刻ほど歩いた頃。

魏無羨は、周囲の風に不穏な匂いが混ざったのを感じた。

…魔の気配。

魏無羨は立ち止ると、幼女の手を離した。
そして、幼女を不安そうな面持ちで魏無羨の動向を気にする男のそばに寄せると、懐から護符を取り出して、灯をかざした。

闇の中で低いうなり声が聞こえる。

魏無羨の背筋がぞくりと震え、体が固まった。

…まさか、犬?

魏無羨が声のする方に目をこらすと、茂みの中から大きな黒い犬の屍が現れとびかかってきた。
とっさに体の前で交差させた魏無羨の腕を犬の爪がひっかいて着地した。

…!!

魏無羨は、背後で抱き合いながら震えている親子を見ると、無意識に後ずさっていた足を必死にとどめた。

そして、すぐに幼女と男の周囲に術符で結界を張ると、犬の屍に対峙した。

魏無羨の背中に冷や汗がつたっていく。
恐怖で全身が凍り付きそうになり、逃げだしてしまいたい気持ちを魏無羨は懸命にこらえた。

犬の屍は、口から垂らした舌から涎を滴らせていた。
瞳の色は白。生きているものでは無いと一目で分かるものだったが、ただの屍とも違うことに気づいた魏無羨だった。

魏無羨にとって、犬は生きていようが、いまいが、動いていれば怖いものに違いは無かったのだったが。

魏無羨は震える手で腰帯の陳情を引き抜くと、口にあてて笛をふいた。
いつもより乱れた音程ではあったが、術の効き目はあった。

うなり声をあげていた犬の屍がおとなしくなり、その場に腰を落とした。

そして、どこか悲し気に見える瞳で魏無羨を見上げると、何か訴えかけるように頭を下げた。

魏無羨は陳情を奏でながら、おそるおそる犬に近づいた。

よく見ると犬の首に首輪がかかっていた。その飾りに紋のような図が彫られていた。

…飼い犬?しかも、これは…誰かが意図的に術を施して復活させた屍傀儡!

魏無羨は、ハッとなって懐から霊符を取り出した。
そして、おとなしくしている犬の屍傀儡に霊符を張り付けていった。

犬の屍傀儡は、不完全な状態で復活させられていた。

…魂はほとんど乱れ、微かに体に残っているだけ。意識はほとんど無いのに、もしかしたら生前の記憶は少し残っているのかもしれない。親子を追いかけてきたとしても襲っていたわけではなく助けを求めていた。あるいは、親子二人の『何か』が犬の屍をそうさせたか…。

どちらにしても、残酷な状態だと魏無羨は思った。

このままでは永遠の安らぎも来ず、完全に傀儡として復活させることも出来ない。

…今、楽にしてやる。

魏無羨は、そんな気持ちで、恐怖心を抑えると、犬の屍傀儡を見つめた。
犬の屍傀儡は、魏無羨の心を悟ったかのように目を閉じた。

魏無羨は手の平を犬に向けた。

「安らかに眠れ」

魏無羨はそう言うと、力を発動させた。
魏無羨の力に霊符が反応を起こし、霊炎となって犬の屍の体を包み込み滅していく。

「くうん」

犬の屍は魏無羨に礼を言うように一声鳴くと、消滅していった。

魏無羨は後に残された犬の首輪を拾い上げると、それを懐の中にしまい込んだ。

「もう大丈夫だ」

そう言って、魏無羨が後ろの親子を振り返ると、父親の腕の中で幼女はすっかり熟睡していた。

「はあ、私なぞ、怖くて怪我の痛みすら忘れたのに、この娘ときたら、怖さも忘れて寝てしまいました。将来大物になるかもしれない」
そう苦笑まじりで話す男に魏無羨も笑顔を向けた。

何度も怖い目にあいながらも、幼いながらに、長い道のりを歩いていた。
夜も遅く、幼女の体力も限界だったのだろう。

「俺を支えにしてもいい。一人で歩いていけるか?」

魏無羨の問いに男が頷いた。
魏無羨はまっすぐな木の枝を杖代わりに男に持たせた。
そして、幼女の体を背負うと、脚をひきずりながら歩く男も支えて、再び、男の家にむかって歩き始めた。

それから1刻(2時間)ほどして。

何度か休みを取りながら、魏無羨はようやく男の家にたどり着くことが出来た。

家にいて、夫と娘の帰りを心配しながら待っていた男の妻が、魏無羨に支えられて戸口から入ってきた男に飛びつくように駆け寄った。

そして、魏無羨の背にいた幼女を布団に寝かせると、魏無羨の指示で治療に必要な物を用意した後、魏無羨や夫の為に茶や夜食の準備を始めた。

男の傷口を綺麗にした後、怪我の具合を見た魏無羨は、懐から軟膏薬を取り出し、男の傷に塗った。

「これは?」

不思議そうに聞く男に魏無羨は「姑蘇藍氏の秘薬で、怪我や傷によく効く物だ」と答え、一通り塗り終わったあと、軟膏薬の入った器を男にさしだした。

「今後の治療にはこれを。1日に2度ほど、傷口周りに塗ると治りが速い」

「…たしかに。もう痛みはほとんど消えています。凄い…」

軟膏薬の器を手にした男が感嘆して言った。

「しばらく空師の仕事も出来ないとあきらめてましたが、助かりました。本当に、ありがとうございます」

男はまた魏無羨の手をとって、深い感謝の言葉を述べた。
男の妻も、魏無羨にお茶と夜食を差し出しながら、何度も礼を言った。

魏無羨は、ふと湯気のたつ茶の湯飲みを見て、我にかえった。

「今、何時だ?」

ついそう聞いてしまった魏無羨に男の妻が「少し前に子の刻をつげる鐘の音を聞きました」と答えた。

…門限どころか、雲深不知処の就寝時間(亥の刻)も過ぎてしまっている。

門限に遅れていたことは、親子を連れて歩いていた時に気づいた。

だが、魏無羨は完全に失念していたのだった。
闇狩りの後、魏無羨は雲深不知処の結界門を自由に通行できる通行玉礼を宗主の沢蕪君に返してしまっていたことを。それでも、事情を説明すれば、中から藍忘機が開けてくれる可能性もあったが、もう雲深不知処の就寝時刻も過ぎているとなれば、藍忘機は寝ている頃だろう。

魏無羨の術をもってすれば、姑蘇藍氏の結界門など簡単に開けられるのだったが、結界に誰かが通れば、藍忘機だけでなく、姑蘇藍氏の重役たちにも悟られてしまう。
へたなことをして魏無羨の身元引受人になった藍忘機と藍宗主の顔をつぶすわけにもいかない。

魏無羨は、懐から人形符を取り出すと、そこに思念話を込めて、外に投げた。
人形符は、伝達符となり瞬間移動で雲深不知処に向った。

『藍湛。屍に追われた親子を家まで送っていた。門限と就寝時間までに雲深不知処に戻ることが出来なかった。ごめん』

おそらく、藍忘機はもう眠っているだろうが、朝起きたら、あの伝達符の思念話を読み取ってくれるだろう。

魏無羨は、浅いため息をついた。

「お兄ちゃんの胸っていろんなものが出てくるんだね」

いつの間にか目を覚まして魏無羨を見ていたらしい幼女が、布団から朗らかに言った。

「アハハハハ」

幼女の言葉に魏無羨が楽し気に笑い、幼女の父親と母親もにこやかに幼女の頭を撫でた。


男の妻から出された茶と夜食をご馳走になりながら魏無羨はふと思い出したことを口にした。

「仕事は空師だったな。だと、木を折って盗むという屍傀儡の話を聞いたことは無いか?」

「ああ。あります」

男が頷いた。

「この裏の山が某なにがし様の私有地なのですが、その木を折って持っていった屍のことですね」

…噂話は本当だったのか。

「その話を詳しく教えて欲しい」

魏無羨は身を乗り出して男の話を聞いた。

その後、話を聞き終え、夜食と茶も平らげた後、魏無羨は、宿泊を勧める夫婦の好意を丁寧に辞退した。そして、家の戸口で何度も頭を下げる夫婦に見送られて、空師の家を後にした。


『某なにがし様の山の木は質がとてもいいと私たち職人の間では評判で、高い値で売られます。ただ、最近になって屍のような者が木を折ったのを見た者がいるそうです。しかし、それはアッという間の出来事だったようで。見た者も幻だったかもと言ってるそうです』

話の現場は空師の家から近かった。
魏無羨は、情報を確認するため、山の周辺を探ってみることにした。

…どうせ、今夜は雲深不知処には入れないんだ。噂の真相を確かめてこよう。

そう考えた魏無羨だった。

魏無羨は、話の山につくと、木が折られた場所から少し離れた茂みに身を隠して様子を見ることにした。

半刻ほどの時間が流れた。

…今夜は出ないか?

魏無羨がそう思ったとき、ひゅっと目の前を黒い影が走った。
そして、影は最初に折られた木の近くをうろつき始めた。

魏無羨が息をひそめて観察していると、月明かりで影の姿がくっきりと浮かび上がった。

その姿を見た魏無羨は目を見開いた。
そして、大きなため息を一つつくと、立ち上がった。

「おい」

魏無羨の呼びかけで影が振り向いた。

「何をやってるんだ?」

黒装束。血の気の無い白い顔に、丸い目。
キョトンとして魏無羨を見て立っていたのは、魏無羨のよく知る屍傀儡だった。

「…公子?」

「温寧」

魏無羨が呼んだ。



(続く)

二次小説や記事への拍手、拍手コメントありがとうございます!

「陳情令」記事は、現在読者さんに海外の方もいらっしゃるので、今のうちに説明(言い訳)を。
みつばの二次小説は、日本古代や由来の名称や設定混ざってます。中国舞台なのに。
おや?ってなるところが多いかもしれませんが、ご了承ください。


みつばの二次小説を読んで頂きありがとうございました。
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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「邂逅」(2話)です。

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とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

「陳情令」は現時点、日本語翻訳未公開のドラマです。
原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は「」の続きになります。


邂逅(2話)




…藍湛!

魏無羨の視線が、ジッとこちらを見ている藍忘機の目とかちあった。

いつの間にか魏無羨達が座っていた酒家の卓子に他の客たちの姿は無く、魏無羨と仲英だけが並んで座っていた。
ひらけた視界の中で、藍忘機が魏無羨のいる所にまっすぐに歩いてきた。

先日の朝から金麟台に行くと言っていた藍忘機。
仙督としての用事を終え、姑蘇に戻ってきたのだろう。

しかし、周囲に共の者の姿は見当たらず、藍忘機一人。
そして、仙剣で金麟台(蘭陵金氏の場所)に行ったのなら、雲深不知処への帰り道としては遠回りになるこの街中にいるのは不自然だった。

だが、その時の魏無羨は、偶然にも藍忘機に会えた驚きで、そこまでの考えが及ばずにいた。

笑顔になり、思わず「藍湛」と呼んで立ち上がりそうになった魏無羨だったが、仲英の手が魏無羨の肩を抱いて座っていた為、わずかに腰を上げただけに留まった。

酒家の卓子まで歩み寄った藍忘機は、魏無羨と仲英を見下ろすように対面に立った。
そして、魏無羨の肩に腕をまわしている仲英をチラリと一瞥してから、魏無羨の方に視線を戻した。

「魏嬰、闇狩りは滞りなく終わったのか?」

まるで、魏無羨の隣にいる仲英のことが見えていないかのように藍忘機が口を開いた。

「ああ。依頼されたことは、しっかりやり終え、沢蕪君にも報告した。滞りなくって言いたいところだけど、実は、危ないところを、この人に助けてもらった」

魏無羨は仲英の方を指さしながら言った。

さりげなく、藍忘機に仲英を紹介しようと思った魏無羨だったが、藍忘機は魏無羨の言葉の中で違うところに意識を向けて眉をひそめた。

「危ないところ、とは?何があった?」

「いや。弟子達には何も無かったから心配しないでくれ」

魏無羨は慌てて言った。

「俺が一人で追っていた屍が妖魔に憑依されていて、転んだ隙に襲われただけだ」

藍忘機の眉がますます険しくひそめられた。

「魏嬰、誓約はどうした?」

「あ?誓約って?」

藍忘機が何を言っているのか分からず魏無羨はきょとんとなった。

そんな魏無羨に藍忘機は厳しい表情を崩さなかった。

「昨日の朝、君は家の中で、私の目の前で転び頭を打つところだった。その後君は、あんなうっかりな粗相はしないと私に言っていた」

傍らで、二人の会話を黙って聞いていた仲英の目が僅かに見開いた。
しかし、藍忘機と向き合って話を続けていた魏無羨にその顔は見えていなかった。

「ああ、ああ。うん。そうだった」

昨日の朝の事を思い出した魏無羨がこくこくと頷いた。そして苦笑しながら手で頬をかいた。

「昨晩は“うっかり”転んだわけじゃなくて、“つい”転んだ」

「・・・・・・」

おどけて言い訳をする魏無羨にも藍忘機の表情は変わらなかった。

藍忘機の無言の圧力のような視線に耐えきれなくなった魏無羨は、アハハと自嘲した後、「紹介するよ」と話題を変えて仲英の方を見た。

「彼は、俺が今身を寄せている姑蘇藍氏の藍忘機」

そう言った魏無羨に仲英は、藍忘機の方をジッと見たまま「知っている」と答えた。

そして、魏無羨の肩から腕を離すと、席から立ち上がった。

「含光君…いや、仙督」

そう言って、仲英は姿勢を正すと、藍忘機にむかって深い揖礼をした。

「含光君を知ってるのか?」

魏無羨の問いに仲英は頷いた。

「姑蘇藍氏の藍忘機、含光君の称号は、仙界ではおそらく知らない者などいない。最近仙督になったことも知っている。俺のような流れ者でもな。
逢乱必出。この十数年間、いろんな場所に現れて闇狩りを行っている含光君。昔、俺も実際にお目にかかったこともあった。含光君は俺をご存じないだろうがな。しかし、あいわからず仙子顔負けの “別嬪”ぶりだ」

仲英の話は、仙督に対する態度としては無作法気味だった。
それに加え、男性に向けるには無礼な世辞にも藍忘機は何の反応も示さなかった。

冷たい視線を向けたままの藍忘機に仲英はニッと笑うと「失礼しました」と恭しく再び揖礼した。

「俺の名は仲英。属する仙家も、字も無い。ここにいる魏嬰とは昨日、街と山での闇狩りで知り合い、さらに今日奇遇にも又会ったから、こうして酒を酌み交わしてる」

愛想良く自己紹介した仲英に藍忘機は小さく頷いた。

そして、魏無羨の方を見やると、仲英に向き直って両手を前に出した。

「彼を助けて頂いたこと、感謝します」

そう言って、丁寧に揖礼する姿に仲英だけでなく魏無羨も驚いて目を見張った。

身分の高い仙督が流れ者に揖礼するなどありえない。
仲英は、そんな思いでいたようだったが、魏無羨は別の意味で驚愕していた。

藍忘機が品行方正だということは分かっていたが、自分の為に藍忘機が初めて会った者にこんな風に揖礼するなど思いもしなかった魏無羨だった。

たしかに今、魏無羨は姑蘇藍氏に身を寄せている者に違いは無かったが、
まるで藍忘機の本当の身内のような存在として扱われていると感じた。

仲英は、よしてくれ。という風に首を振った。

「助けたとは大げさで、少し手を貸しただけだ。それに俺が手を貸さなくても一人で闇狩り出来るだけの腕が彼にはある。たとえ魔道の術を使わなくてもな」

魏嬰の正体を知っている。

そんな含みを込めた仲英の言葉に、藍忘機は目を細めた。
微妙な空気が流れかけた時、

「仙督殿もここに座って一杯どうだ?」

仲英が目の前の席に視線を投げながら藍忘機に声をかけた。

「俺たちと一緒に酒を飲まないか?」

仲英の誘いを藍忘機は固い表情のまま、かぶりを振って辞した。

「私は雲深不知処に戻る」

「でも、藍湛。街に立ち寄る理由があったんじゃないのか?」

今さらながら、藍忘機が街にいる理由を変に思った魏無羨が聞いた。

金麟台からだと、仙剣で姑蘇藍氏に帰るには雲深不知処に直接むかった方が早かった。

不思議そうな魏無羨の面持ちを見た後、藍忘機は視線を伏せた。

「…用事をすませたら戻る」

そう言って黙する藍忘機に、魏無羨は、それは、仲英が横にいる場では言えないことなのだろう、と悟ると、「そうか」と頷いて見せた。

…君はこれからどうするのだ?

再び顔を上げて、そんなことを問うているような藍忘機の顔に魏無羨は、チラリと横にいる仲英を見やった。

…藍湛の用事というものが何か分からないけど、俺が一緒に行くと用事の妨げになるかもしれない。

そう考えた魏無羨は「俺は、もう少しこの人と一緒に飲んでから帰るよ」と答えた。

藍忘機が、ジッと魏無羨を見つめた。


「門限までには帰りなさい」

「わかった」

藍忘機の言葉に頷く魏無羨に仲英が横から口をはさんだ。

「門限って何時だ?」

「17時45分」

「早すぎるだろ」

仲英が苦笑した。

「いや。門限が過ぎたら俺がいま滞在している宿の部屋に一緒に泊まればいい。ほら、ここからも見える、あの赤い提灯が3つ門の前にぶら下がっている宿場だ」

そう言って仲英が指を向けて、宿屋の方を示した。

「部屋は狭いが寝台はまずまず広いぞ。魏嬰、あんたくらい華奢な奴なら共寝できる」

「あ?…仲英、お前酔ってるだろ?」

呆れ顔の魏無羨に仲英は豪快に笑った。

「いやいや。本気だ。俺はこう見えて寝相はいいぞ。朝起きたら寝台の方がひっくり返ってることが多いけどな」

そう笑いながら、再び魏無羨の背に腕をまわし肩を抱いて座る仲英に、魏無羨はひきつった笑みを浮かべて対応した。

「この酔っ払い」

「あんたももっと飲め、魏嬰。俺のおごりだって遠慮するな」

二人のやりとりを冷ややかな目で見つめていた藍忘機だったが、そっと踵を変えると、その場から静かに立ち去って行った。

「あ、藍湛!藍湛!」

目の前から藍忘機の姿が消えたことに気づいた魏無羨が、遠ざかる藍忘機の白い背に向って慌てて声をかけた。

「また後で!」

その声が、振り返らない藍忘機に届いたか分からなかったが、魏無羨は、ほっと小さな吐息をついた。

…藍湛が無事、姑蘇に帰ってきた姿が見られた。
この後、「清室」に戻れば、藍湛がいる。

そう思うと、魏無羨の胸には、言いようのない安堵感が広がっていた。

自然に口元をゆるませながら酒を口にしている魏無羨の顔を仲英が覗き込んで見ていた。

そして、すでに姿が見えなくなった藍忘機が去っていった方向に目をやると、魏無羨の肩に回していた手をそっと離した。

「…あれは牽制だな」

そう呟いた仲英に魏無羨が「ん?」といぶかし気に首をかしげた。

「牽制って?」

「さっき仙督が言っていただろ」

「ああ~、門限の話か」

魏無羨は盃の酒を飲み干すと、もう手酌で仲英の酒を自分の盃にあけていた。

「あれは別に牽制じゃない。姑蘇藍氏は規則を重んじる。俺は門下生じゃないが、最低限のルールは守れってことを含光君は言っていただけだ」

「いや。仙督の牽制っていうのは、あんたにじゃなくて、俺にだ」

「は?藍湛が仲英に牽制?何を?何かそんな素振りがあったか?気のせいだろ」

そう言って、すでに天子笑に心を奪われたような顔で盃の酒を全部飲み干す魏無羨に、仲英は呆気にとられた顔をした。

仲英がそんな顔をしたのは、魏無羨の酒を飲む量と勢いが増したせいでは無かった。

「魏嬰…あんた、気づかなかったのか?」

「ん?何に?」

「何って、仙督があんたを…」

仲英は何か言いかけたが、思い直したように首を振ると、苦笑を浮かべて魏無羨から酒甕を奪った。
そして、自分の盃に酒を注ぎ入れると、「何でもない」と言って、それを飲み干した。

「しかし、本当に門限までに帰るのか?」

魏無羨の盃に酒を入れながら仲英が聞いた。

「ああ、そのつもりだ」

「まるで良家の箱入り娘みたいだな。そんなにあの仙督が怖いのか?」

「おれが藍湛を怖がる?まさか」

魏無羨が軽く鼻をならした。

「藍湛は昔からの友人だ。門限を守るのは、ただ、身を寄せているところに最低限敬意をはらおうとしている」

「それで姑蘇藍氏の規則に従ってるのか?ふーん…。俺が感じたあんたの印象と違うな」

「俺の印象って?」

「好きなところに行き、好きな時に好きなようにする。そうやって生きていくように見えた」

「仲英、俺にはお前がそう見える」

魏無羨が笑って、盃を持った手を仲英に向けた。
その魏無羨の盃に仲英が自分の盃を合わせると、微笑み返して酒を口に含んだ。

「そうだ。俺はそういう風に生きてきたし、これからもそうしていく。
お前はどうだ?魏嬰」

「俺?」

「ああ。これからも、制限の多い仙門の中で、お目付けのようなお偉いさんのそばにいるつもりなのか?」

仲英の言う“お目付けのようなお偉いさん”というのが、藍忘機を指していることがすぐに分かった魏無羨は噴き出すと面白そうに笑った。

「仲英、お前もあれか?夷陵老祖が雲深不知処で監視されているように見えるのか?」

「いや…」

仲英は真面目な顔で否定すると、魏無羨の顔から視線を外して、往来の方に目を向けた。

夕暮れ時、街の往来は人の行き交いが多くなっていた。
商いや買い物を終え、家路にむかって帰る人々。夜の街で商売を始める者たちが昼の者と入れ替わりに空いた場所に露店をひらく準備をしている。

魏無羨も酒を飲み切った後、仲英が見ているものと同じ景色に目を向けた。
そんな魏無羨に仲英が話をつづけた。

「あちらさんの思惑はどうでもいい。だが、魏嬰。お前の話だ。この先もずっと、今の環境の中で満足して過ごせるか考えたことはあるのか?」

「ない」

あっさりと答えた魏無羨の横顔を仲英は見つめた。

「なぜ雲深不知処にいるんだ?いなければいけない理由があるのか?」

そう問う仲英に、魏無羨は、目の前を通り過ぎていく人々を眺めながら空の盃を手でまわした。

「俺が雲深不知処で暮らすと決めたのは、そうしたいと思ったからだ。そして、これからのことは分からないが、俺は今の環境を悪いとは思っていない」

「…そうか」

仲英が魏無羨の答えに頷いて見せた。


「仲英、お前は、これからどうするんだ?また旅に出るのか?」

今度は、魏無羨が仲英に問う番だった。
魏無羨は、流れ者だという仲英がこの後どうするのか気になった。

「俺はここでやることがある」

仲英が答えた。

「それに、他に気になることもあるしな…。しばらくは姑蘇に滞在するつもりだ」

「じゃあ、また酒を酌み交わせる機会があるな」

そう嬉しそうに言う魏無羨に仲英が微笑んだ。

「そうだな」

そうして、魏無羨と仲英が酒甕に残った最後の酒を飲み干した時。
折しも、申の刻の終わりを告げる鐘の音が街に響いた。

魏無羨が椅子から立ち上がった。

「じゃあ、俺は行くよ。仲英、酒をありがとう」

「ああ、魏嬰、またな」

「うん。また」

…また。

そう、再会の約束が出来ることを喜ばしく思いながら、魏無羨は晴れ晴れとした顔で仲英に手を振った。そして心なしか足早に雲深不知処に向って歩き始めた。

薄暗くなった街中に灯篭の灯がつき始めていた。
宿場や酒場には提灯の火がともり、街は昼とは違う夜の賑わいを見せ始めている。

酒や夕飯を飲み食いしている仕事帰りの男たち。
派手な衣装に身を包み、おしろいの香りを濃厚にふりまきながら歩いていく妖艶な女たち。
可憐な娘たちが、ある者は魏無羨に色目を使い、ある者は魏無羨の方を振り向きながら通り過ぎていく。
香辛料の強い食べ物や酒の匂いがあたりを漂っていたが、魏無羨の足は立ち止ることなくひたすら雲深不知処を目指していた。

…藍湛は、もう「清室」に戻っているころかな?

魏無羨は、歩きながら、懐から取り出した笹に包まれた兎型の飴を眺めた。

…藍湛はこれを喜んでくれるだろうか。

魏無羨は、兎の飴を見た藍忘機の顔を想像して、思わず顔をほころばせると、ふたたび飴を懐に仕舞った。

次第に夜の顔になり始めた街を出て、魏無羨は人気のない林道に入った。
その道を過ぎれば、雲深不知処へ続く坂道になる。

シンと静まり返った林道を護符で照らしながら歩いていた魏無羨は、ふと、微かに聞こえた人の助けを呼ぶ声に立ち止り、弾かれたようにその方向に目を向けた。

「助けて。助けてくれ」

遠くで聞こえていた声と音がさらに遠ざかっていく。

切羽つまった男の声。草むらを荒く踏みわけて走っている音。
それらと共に別の存在が駆けている音も混ざっている。人では無い何か。

誰かが、闇の者に追われて逃げている。

その方角は雲深不知処へと続く道から外れていた。

「誰か、誰か助けて」

魏無羨は、躊躇せず、助けを呼ぶ声のする方に駆けだした。



(続く)



拍手コメントで「邂逅」1話の感想を送ってくださった方々ありがとうございます♪
皆さんの反応がどれも同じような感じで面白かったです。
原作「魔道祖師」の、本編後に、魏無羨と完全に道侶(伴侶)となっている藍忘機が、今回のような現場を目撃しようものなら、相手の男に命は無かったかもしれません。または、魏無羨が夜に寝所で大変な目にあうかな?想像したら怖いのに、なぜかワクワクします(笑)


みつばの二次小説を読んで頂きありがとうございました。
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