韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説「旧正月」です。
おまたせしました。
検事プリンセス、みつばの二次小説の新作短編です。
「聖夜の祈り」の2か月ほど後の話になります。
みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
「
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「
お願い」を一読してください。
旧正月「旧正月の休みだというのに、お前は朝から慌ただしすぎるぞ。エジャ」
ここ最近はずっと尻に敷かれていたようなサンテがつい妻にそう言ってしまったのも無理はない。
旧正月の祝日で、サンテ、エジャの経営しているパン屋も今日は休みになっていた。
一人暮らしのヘリも実家に戻っていて、親子3人水入らずで家でゆっくり過ごそうと思っていたサンテだったのだが、妻のエジャは、何故か朝から家の中を忙しそうに動き回っていた。
座卓の前に座り、茶を飲みながら黙って新聞を眺めていたサンテだったが、エジャがヘリにも昼食の手伝いを頼むのを聞いて、さすがに声をあげた。
「おい、せっかく休日に家にいるヘリに手伝わせることは無いだろう。
普段、検察庁で夜まで働きづめで疲れているんだ。実家でくらい休ませてやったらどうだ?」
「いいのよ。パパ。私、普段の休日はちゃんと休んでいるし、それにママの手伝いをしたいの」
台所で、エジャの料理の手伝いをしていたエプロン姿のヘリが、菜箸を片手に顔をのぞかせて言った。
「特別な物を作らなくても酒のつまみがあればいいんだ。
料理を作ると言っても普段通りでいいし、台所にはママがいれば十分だ。それより、ヘリ、ここに来て私と一緒に酒を飲まないか?」
「…パパは、あなたと一緒にいたいだけなのよ」
台所で、こっそりとエジャがヘリに耳打ちした。
「ちょっと待っていてね。パパ。この盛り付けが終わったら、そっちに行くわ」
ヘリとエジャは顔を見合わせ、こっそり笑って互いにウインクを交わすと、作業を続けた。
「そうか。じゃあ、酒とグラスを用意するか。祝い用グラスはどこに置いたかな?」
そう立ち上がり、いそいそと食器棚に向かうサンテの後ろ姿にヘリが声をかけた。
「パパ、グラスは4つね」
「4つ?」
棚の扉を開けた手を止めて、サンテが振り向いて不思議そうに聞いた。
「どうして4つ必要なんだ?」
サンテ、エジャ、ヘリ。家族は3人しかいないのに。
「だって…」
ヘリが何か言いかけたその時、家のチャイムが鳴った。
「ん?宅配か?こんな祝日に誰だ?」
そう言って、インターフォン画面を確認しようとしたサンテを凄い勢いで台所から出てきたエジャが止めた。
「はいはい。私が出ます」
「ん?」
エジャはヘリの前を通過するとき、「いらしたわよ」とサンテに聞えない声で言った。
そして、訝しげなサンテの眼差しを浴びながら、エジャは何食わぬ顔で玄関を出て、
家の門を開けに行った。
しばらくして、エジャが「お客様よ」と言ってリビングに戻ってきた。
サンテは、エジャの後ろからついてきた人物を見て、呆気にとられた。
そこにいたのはソ・イヌだった。
ヘリと交際中で、さらに一人暮らしのヘリと同じマンションに住んでいる男。
職業弁護士。長身で美形な上、仕事もやり手だと評判だった。
サンテ自身、自分の事件で弁護を引き受けてもらったこともあったのだが…。
驚きのあまり、自分の頭の中でイヌに関する情報を引き出していたサンテだったが、
すぐに、意識を戻すとヘリの方を勢いよく振り返った。
「ヘリ、なぜ彼がここに来ることを私に言わなかった?」
「言ったわ」
サンテの動揺と焦りの眼差しを物ともせず、ヘリがケロリとした顔で言った。
「パパが残業で遅かった時に、ママに伝えたわ。そうしたらママがパパに伝えておくわって言っていたけど」
…エジャめ。わざと私に伝えなかったな?
今度はエジャに向けられたサンテの批難の眼差しに、エジャはとぼけたように首を傾げた。
「あら?ちゃんと伝えたと思いますけど」
「聞いてない」
「おかしいわね。最近、物忘れが増えてきてるから。年をとると嫌ね。
まあ、今日はあなたも用事が無かったのだからいいじゃありませんか。
ソ・イヌ君がせっかくの休みに、旧正月の御挨拶に来てくださったんですから、さ、イヌ君入って、入って」
リビングのドア近くに突っ立っていたサンテを、ホコリのような扱いであしらった後、
エジャは後ろのイヌに部屋の中に入るようにすすめた。
「お邪魔します」
イヌは、固い表情で、佇むサンテに丁寧にお辞儀した後、台所から顔を出しているヘリの方に顔を向けた。
「いらっしゃい」
満面の笑みで小さく手を振っているヘリに、イヌは柔らかい笑みを見せた。
「・・・・・・」
もう夫の存在を無視して動いている妻と、恋人に会えて嬉しそうな娘の姿を見比べたサンテは、小さくため息を漏らした。
そして諦めの境地で黙ってリビングの定位置に腰をおろした。
今から、外出すると言い出しても不自然だった。
事前に知っていれば、何かしら理由を作って、イヌと顔を合わさずに済んだかもしれない。
しかし、サンテがそうするだろうことを見越して、エジャがわざとイヌの来訪を教えなかったのだろう。
これは完全にエジャに嵌めらえたと分かったサンテだった。
だが、イヌの方も実のところサンテには会いたくないはずだった。
恋人の父親というだけでも緊張する存在なのに、亡くなった父親の事件に関わりのある男なのだ。
自分がソ・イヌの立場だったら、旧正月といえども家に挨拶に来なかっただろう。
「イヌ君は立派ね。旧正月にちゃんと交際相手の親にも挨拶に来てくれるなんて。
ご両親と養父さんのしつけが良かったのね」
エジャがまるでサンテの心を読んだかのように話しだした。
「そういえば、あちらのお父様はお元気?クリスマスにはヘリが大変お世話になって。
アメリカから帰ったヘリからとても良い方だ、とお聞きしたわ。それに、かなりのイケメンとも。私も機会があればぜひお会いしたいわ」
「はい。元気です。友人達と一緒にウインタースポーツを盛んにしていると近況を聞いています。父もお母さんにお会いしたいと申していました」
イヌの返事に、エジャが両手を握りしめると満足そうに何度も頷いてみせた。
「そう、頻繁に連絡を取り合っているのね。いい親子だわ」
「エジャ、エジャ」
サンテが、仏頂面で下から声をかけた。
「まず、お茶か酒を持ってきなさい。挨拶や話はそれからだ。
いつまで客人をリビング前に立たせておく気だ?あ~、ヘリ。お前も、もうエプロンを取ってこちらに来なさい。お前の客だろう」
せめて、リビングに二人きりで座っていたくはない。
イヌもそう思っていることだろう。
そんな考えでサンテは、台所のヘリを手招きした。
ヘリとエジャはまた顔を見合すと黙ったまま笑って、サンテの言う通りに動いた。
座卓上に酒と、つまみと、エジャが料理した豪華な料理が並んだ。
そして、その前にエジャ、サンテ。対面にイヌ、ヘリが並んで座った。
イヌは、立ちあがると、再び膝をつき、「ご家族の繁栄とご健康をお祈りします」と言って、
サンテ、エジャの方に深くおじきをした。
エジャは、家で娘以外にこのような挨拶をされることに慣れていなかったため、
くすぐったそうな表情で、イヌの方を見ていた。
サンテは、渋い顔で、しかし、どこかまんざらでも無い表情をつくっていた。
「さあ、顔を上げて。まあ、まず1杯飲みなさい」
一家の長の威厳を見せながら、サンテはイヌの前のグラスに酒を注いだ。
「はい。頂きます」
イヌは、サンテからなみなみと注がれた焼酎を、サンテとエジャの目線から離れて飲み干した。
いい飲みっぷりではあったが、イヌの酒の許容量を知っているヘリは、やや心配そうにイヌの横顔を見つめている。
「…無理しなくていいから」
ボソっと囁くヘリの小声は、娘の恋人来訪で臨戦態勢に入って感覚が研ぎ澄まされたサンテの耳に届いていた。
しかし、聞こえないそぶりで、サンテはまたイヌのグラスに酒を注いだ。
そんなサンテの横暴を止めるようにエジャがわざとらしく明るい声で口をはさんだ。
「そうそう。あなた、イヌ君がお土産を持ってきてくださったのよ。
美味しそうなケーキなの。食べるのは食事の後にする?それとも今少し味見で出しましょうか?」
「ケーキ?」
サンテが怪訝そうな顔をつくった。
「いつもパン屋で似たようなものを沢山作っているから、ケーキは飽きた。
せっかくだが私は食べるのを遠慮する。餅だったら喜んで食べるのだが」
そう言ったサンテに、エジャはイヌから受け取っていた箱を目の前で開けた。
「あら、ちょうど良かった。餅ケーキよ。あなたも食べられそうね。
今、小皿を持ってくるから、いただきましょう」
…何?餅ケーキ?
慌てたサンテが箱の中を覗き込むと、色とりどりに美しく細工された餅のケーキが並べられていた。
「おいしそう。最近繁華街に出来た新しい餅ケーキのお店ね。デザインが素敵で低カロリーで、若い人にも大人気だって聞いたわ。一度食べてみたかったの。イヌ、ありがとう」
うっとりとした顔で隣の恋人に話す娘に、サンテは気まずさを誤魔化すように咳払いをして見せた。
「うむ。餅ケーキの飾りは、菓子パンの参考になるな」
誰も聞いていないような独り言を呟いて、サンテは自らのグラスに酒を注ぐと、それを飲み干した。
イヌが黙って、焼酎の器を手に取ると、サンテのグラスに注いだ。
「・・・・・・」
「さあ、一緒に食べましょう。イヌ君、たくさん作ってあるから、遠慮しないで召し上がれ」
エジャの声に、皆箸を取った。
黙々と料理を食べている間は十分に間が持つようだった。
エジャは、雰囲気を和ませようとしているのか、天然なのか、
べらべらと賑やかにおしゃべりを続け、ヘリもあいずちを打ったり、時々、イヌの取り皿に料理をとりわけて、料理の説明をしたりしていた。
「私も手伝ったのよ。これなんかママに教わって私が一人で作ったの。味はどう?」
「ん。美味しいよ」
イヌのお墨付きに、ヘリは嬉しそうに頷いた。
「今度、部屋でも作ってあげるわね」
ゴホンっ。
盛大な咳払いがサンテの方から聞こえた。
同じマンションで暮らしている年頃の男女なのだ。
そういう関係だと分かっていても、まだ結婚はしていない。
あからさまに親の前で話されるとどう対処して良いのか分からなくなるサンテだった。
サンテの咳払いに、ヘリは、悪びれもせずにちょっと首をすくめて見せた後、
いそいそとイヌの取り皿にさらに料理をもりつけた。
こうして、エジャの美味しい祝日料理をあらかた、一通り食べた一同は、満足げに寛いだ表情になっていた。
珍しくヘリは酒を最初に1杯だけ飲んだだけでほとんど口にしていなかった。
代わりに、サンテと目の前のイヌは、さしつ、さされつ、お互いに酒を酌み交わしては飲んでいた。
ヘリは、イヌの土産の餅ケーキをつつきながら、その様子を横から眺め、エジャの方に意味ありげな視線を向けた。
エジャは、ヘリの意図していることが分かっている様子で、肩をすくめてみせた。
恋人と妻から見れば、一目瞭然だった。
二人の男たちの酒の許容量はとっくに超えているようだった。
全く飲めないわけでは無いが、飲むペースが早すぎることと、1回で飲み干す量が多すぎるのだ。
しかし、まるで意地になって飲み比べしているかのような男たちを止める事もしなかったヘリとエジャだった。
焼酎の瓶が何本か空いた後、真っ赤な顔になっていたサンテがおもむろに眼鏡を外した。
イヌも眉間に指をあてて、酔いを覚ますように頭を軽くふっていた。
「もう少し飲むかね。私の秘蔵の酒があるのだが」
「いただきます」
ヘリとエジャは、悟ったように目配せして同時に立ちあがると、片づけをするために台所に連れだって行ってしまった。
リビングに残ったサンテとイヌは、しばらく無言で黙々と酒を飲んでいた。
「…アメリカのお父上はおかわりないかね?」
イヌが到着してすぐにエジャが聞いたことを再度口にしたサンテだったが、イヌは、「かわりません」と答えていた。
「ヘリから聞いたよ。とても行動的な方だと。さぞお仕事も出来る男なのだろう」
「はい。仕事は出来ます。それ以外にも特技を沢山もっています。アメリカの父も私が尊敬し目標とする人です」
「そうか…」
サンテが頷いて、残っていた酒を飲み干すとグラスを置いた。
「君の父上も…この国の父だ…。彼も、仕事が出来た。それに特技をいろいろ持っていた。
私に将棋を教えてくれたのも彼だった…」
サンテの口から実の父親の話が出てきたことに驚いたように、イヌがグラスを口に運ぶ手を止めていた。
「君は将棋が出来るか?」
「少し…。子どもの時に父から教わったきりですが。父がいた時、よく相手をさせられました」
「では、私と同じくらいのレベルかもしれない。私も彼とくらいしか将棋をしたことが無かった。負けてばかりだったが。この負けず嫌いの私が。結局1度も彼に勝てないままだった」
遠い目で思い出したように話をしているサンテをイヌはじっと見つめていたが、
「僕もです」と答えた。
イヌと目のあったサンテはうっすらとほほ笑んだ。イヌも口角を上げて目をふせた。
「…今度…」
サンテが言った。
「今度、よかったら一緒に将棋をさしてみないか。酔っていない時に・・・」
場の空気を持たせるための口約束だろうか。
それとも本心でそう望んでいるのだろうか。
サンテの真意は、もうかなり酔っていたイヌの頭では測りきれずにいた。
ただ、体や頭は酔っていて、ほとんど機能しない状態になっていたが、
心の中が、ほんの少し温かい想いで満たされるのを感じたイヌだった。
「はい…」
そう答えて、頷くイヌにサンテは満足そうな笑みを浮かべると、
イヌと同じく酔いでぐらつき始めた頭を手で支えてうつむいた。
やがて・・・。
「あらあら」
台所の片づけを終え、二人の様子を見に戻ったエジャとヘリは、座卓を挟んで対角線で
酔いつぶれて眠っているサンテとイヌを発見した。
エジャは寝室から持って来た掛け布団をサンテとイヌの上にそれぞれかけると、
「起きるまで寝かせておきましょう」とヘリに言って、自分は風呂に入りに行った。
ヘリはそっとイヌの側に座るとイヌの顔を覗き込んだ。
「…ヘリ…」
気配でうっすらと目をあけたイヌが、ボンヤリとした顔でヘリを見つめた。
「イヌ、後でマンションに車で送ってあげるからしばらく眠っていていいわよ」
ヘリが小さな声で言った。
「マ・サンテさんは…?」
「あっちで眠っているわ。パパもそんなに酒に強くないから。きっとこのまま朝まで起きてこないわね。イヌも飲みすぎたでしょ?パパにつきあってくれてありがと」
それに…、とヘリが続けた。
「今日、来てくれたこともありがとう。あなたが旧正月の挨拶に来たいと言ってくれた時はびっくりしたけど、私、本当は来て欲しかったの」
「ああ…わかってた」
旧正月の挨拶の話を持ちかけたのはイヌからだった。
クリスマスが終わって、西暦の年が明け、この国で旧正月を迎えるイヌにも
生まれて初めての事だった。
「新年に、恋人のご両親に挨拶するのは当たり前だ」
「…そう言ってくれて、本当に嬉しい」
うっとりとしたヘリの小声が静まりかえったリビングに響いた。
二人に背を向けて、目を閉じていたサンテだったが、その会話が聞こえていた。
少しの間、会話が止み、ヘリのクスクスと小さく抑えた笑い声が聞こえた。
「…パパの秘蔵のお酒の味がする」
その言葉ですでに酔いで真っ赤になっていたサンテの顔がさらに赤くなったが、
それを見る者は誰もいない。
ヘリが足音を忍ばせて、リビングから去った気配を感じた後、サンテは今度こそ意識を失うように眠ってしまった。
サンテが、次に目覚めた時。
リビングは明るい光で満ちていた。
「…うん…?エジャ。今何時だ?」
まだ酒酔いが残っている頭を押さえながらサンテが起き上がって、エジャの姿を探した。
エジャが台所から出てきた。
「サンテさん。起きました?今は9時ですよ」
「9時って夜のか?」
「何を言ってるんです。朝の9時ですよ。覚えてません?サンテさんは昨日の昼過ぎから飲んでいて、夕方に酔い潰れてここでそのまま寝ていたんです」
「そうか…ん?…おい。彼はどうした?」
サンテはあわてて、テーブルの反対方向に目をやった。
そこには一緒に飲んでいて、一緒に酔い潰れて横になっていたイヌの姿があるはずだったが、今は見えない。
「ああ、ソ・イヌ君なら帰りましたよ。夜中にヘリが車でマンションまで送って行きました」
「そうか…」
リビングにはヘリの姿も無い。
おそらく、イヌを送っていき、そのままマンションの部屋に戻ったのだろう。
または、今ごろ、イヌと一緒にいるか…。
サンテは眠ってしまう前に、聞いたヘリとイヌの会話を思い出していた。
この上なく幸せそうな娘の声だった。
あの声が聞けるのなら、私は父親としてどんなことも我慢できるし、どんなこともしてやりたい。
ソ・イヌの来訪は、歓迎すべきことだった。
そう思いながらも、どこか寂しい気持ちも持て余していたサンテだった。
「結局、娘とは一緒に飲めなかったな」
つい、そう呟いてしまったサンテの言葉に「どうして?」というヘリの声が聞こえた。
驚き、声のする台所に目をやると、そこにエプロン姿のヘリが立っていた。
「パパ。今日も一緒に飲む時間はあるわよ?朝から迎え酒でもする?」
「ヘリ!お前…ソ・イヌと一緒にマンションに帰ったんじゃなかったのか?」
目をしばたたかせて、幻か?という目で娘を見つめるサンテに、
ヘリが朝ごはんをのせたトレーを運んできた。
「夜にイヌを部屋まで送って行ったけど、すぐに帰って来たわ。
だって、今日もパパとママは仕事お休みでしょ?祝日を一緒に祝いたいわ」
「まあ、なんて、親孝行な娘を持ったのかしら。良かったわね。サンテさん」
エジャが言って、ウインクして見せた。
「う…うむ…」
サンテは、気まずそうな顔で座りなおすと、ヘリの持って来た朝食を見下ろした。
皿の上にイヌの土産の餅ケーキが置いてあった。
「将棋か…」
「え?」
餅ケーキを見ながらポツリとつぶやいたサンテに、ヘリとエジャが不思議そうな顔をした。
「いや、後で台を出して久しぶりに打ってみようかと。ヘリ、つきあわないか?」
「ルールくらいしか分からないけど、パパ、いいわよ」
「ヘリは天才だもの。ルールさえ覚えていればパパに勝てるわ」
エジャが言った。
…そういえば、帰りの車の中で、イヌも将棋がどうこう言っていたような…。
ヘリは、そう思い出してクスリと笑った。
冬晴れの美しい祝日だった。
―――いい1年になりますように。
ヘリは、二日酔いでマンションでまだ寝ているだろうイヌを思い、目の前で餅ケーキを美味しそうに頬張る両親を見て、そんな事を心の中で祈りながら、朝食に手をつけたのだった。
(終わり)
「聖夜の祈り」(12月話)より後の2月頃のお話です。
これの前にいくつか話があるのですが、短編のこちらを先に更新しました。
久しぶりの検事プリンセス二次小説更新なのに、ほぼサンテ目線語り(苦笑)
ただ、この話もずーっと、ずーっと、(7年?)プロットが眠っていて、書く予定だった話でした。
ようやく、竜宮城ならぬ、鬼が島に行っていたみつばが戻ってきた感じですが、
勢いあるうちに、「検事プリンセス」でも、「陳情令」でも、「キング」でも、持っているプロットとあらすじだけでも形で残せたらいいな~と思ってます。
それで妄想の中で主人公たちがハッピーエンドになれば♪
検事プリンセスの二次小説は、「聖夜の祈り」の番外編の更新がまだなので、
そちらを完結、構成してからアップになります。
…シリアス過ぎて、手が動かないけど頑張る(汗)
さて、明日は、誰をよぼうかな~。みつば大奥に(笑)
イヌかな?藍忘機かな?「検事プリンセス」はイヌだけだけど、「陳情令」はイケメン君が沢山いて選びきれなくて困ります。←創作の話じゃないの?
ブログの記事が気にいって頂けたら、
下の拍手ボタンか、ランキングボタンを押してお知らせください♪
にほんブログ村