韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「ゲレンデは行こう(廉価版)」の2話です。
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この話は、「
ゲレンデへ行こう(廉価版)」の続きになります。
廉価版、というのは、5年ほど前に執筆が止まったままのため、
まだ全体的に未完、未構成の小説という意味です。
この続きは、すぐにアップできない(早くても来年)のですが、
それでも良ければどうぞ♪
ゲレンデへ行こう(2話)レストランの支払いを済ませて、外に出たヘリとイヌ。
ヘリは、早くスキ―場に行きたくて仕方がないように、小走りで前を歩いていた。
そして、「ねえっ。イヌ、早く、早くっ」と後ろを向いてせかすようにイヌを呼んだ。
「そんなに急がなくても時間はあるぞ、ヘリ。それより、ほらっ。前を見ろっ」
イヌがあわてたように言った時、
ヘリは前から歩いてきた人とぶつかって尻もちをついた。
「きゃっ」
ヘリとぶつかった相手の方は反動で
持っていた荷物を落としてしまったようだった。
「ごめんなさいっ」
ヘリがあわてて謝って、ぶつかった相手の顔を見上げた。
服装から女性のようだったが、帽子を深くかぶりサングラスとマスクをしていて
表情は全く見えなかった。
「こちらこそ」
女性もあせったように掠れた声でヘリに謝ると、少し散らばったバッグの中身を拾い始めた。
ヘリも女性と一緒に地面に落ちた物をひろい始めた。
ふと、女性の手に目が止まったヘリは、思わず手の動きを止めた。
女性の指に大きな宝石がついた指輪が輝いていた。
…綺麗な指輪ね。
自分の右手の薬指の指輪の方が何倍も素敵、と思っていたヘリだったが、
見る物を惹きつけるような指輪にうっとりと目をやっていた。
「すみません。ありがとうございます」
女性の言葉で我にかえったヘリはひろって手に持っていた物を女性に返した。
「失礼します」
女性はバッグを持ちなおすと、そそくさと去って行った。
その後ろ姿をしゃがんだまま見つめていたヘリに、後ろから声がかかった。
「へり」
溜息混じりの呆れた声色に、ヘリは首をすくめたように振り返った。
「…そそっかしいな。君は。気をつけろ、でしょ?」
腰に手をあてたイヌが苦笑してうなずいて、手をのばすとヘリの手をとって立たせた。
「先ほどの女性も前を見ずに走ってはいたけどな。大丈夫か?どこかケガはないか?」
呆れながらも、しっかりとヘリを心配するようなイヌにヘリは微笑んだ。
「ええ、大丈夫」
ヘリはパンパンとお尻の土を払った。
…さっきの人。昔の私みたいな体型だったわね。
あの指輪も小指にはめるなんて…。
そして、自分とぶつかった女性が去っていく後ろ姿をチラリと確認した。
ヘリは、何かひっかかるものを感じていたが、それが何か分からずに首をかしげた。
しかし、イヌが、ヘリの手を自分の腕にからませて
「目が離せないから、君はここにでも捕まっていろ」と言った時、
すっかり、どうでもいいことのように、その事を念頭から消していた。
それから、
スポーツ用品店でヘリ用のスノーボード用品一式とウエアを購入して、
ヘリとイヌはスキ―場に入った。
準備体操をした後、ヘリが言った。
「ねえ、イヌ、先に1度あなたの滑るところを見せてくれない?ほら、私って見た物を模倣するのが得意でしょ?だから、あなたの滑りでイメージトレーニングしておきたいのよ」
ヘリの言葉にイヌがうなずいた。
「いいよ。じゃあ、先に一緒に滑ろう」
「やったっ」
ヘリは、スキ―ボードでイヌはスノーボード。
二人で並んでリフトに乗って、上級者コースの頂上まで来たイヌとヘリは、顔を見合わせた。
「イヌ、念のため言っておくけど」ヘリが言った。
「これは、競争とか、勝負じゃないからね」
「わかってるよ」イヌが答えた。そして、ニヤリと笑うと、
「お先」と言って滑り出した。
「あ~っ」
声を上げて、慌てて、その後を追うようにスタートさせたヘリ。
…楽しい。
真っ白なゲレンデの斜面を滑り下ながら、ヘリは、楽しさと嬉しさからの興奮状態で、
声に出して笑っていた。
そんなヘリを滑りながらチラリと横目で見たイヌも口元に笑みを浮かべていた。
下まで滑り下りたヘリとイヌは、並び立った。
「さすがね。イヌ。綺麗な滑りだったわ」
ヘリの言葉にイヌが笑った。
「見てたのか?スキーを楽しんでいるようにしか見えなかったが」
「もちろん。スキーも楽しんだわよ。でも、後ろからしっかりあなたの姿も見せてもらったわ。これでスノーボードのイメージはバッチリよ」
「言ったな。じゃあ、その言葉の真偽を見せてもらおうか」
その後、イヌにスノーボードのセッティングや滑り方の基礎を教わり始めたヘリ。
初心者のヘリだったが、イヌの丁寧でわかりやすい教え方で、
すぐに会得していった。
「まず、基本の姿勢をマスターしようか。ヘリ。…こう顔をあげて。そう…膝を曲げて、腰をおとして…。うん。上手いじゃないか。さすが優等生」
ヘリは、熱心にイヌに教わって話を聞いていたが、最後の台詞で照れたように頬を膨らませた。
「…その優等生っていうの、やめてくれない?なんだか力が抜けちゃうわ」
…教える時は何でもかんでも、その言葉を言うと私が喜ぶと思ってるんでしょ?
実際、イヌに褒めてもらうと内心嬉しくなって浮かれてしまうヘリだった。
そんなヘリにもイヌは真面目な顔で微笑んだ。
「力が入るより、抜けていた方がいい。さあ、じゃあ、次は転び方だ。滑る前にマスターしておかないとケガをするからな。しっかり覚えるんだぞ」
「わかったわ」
こうして、イヌから基本を一通り教えてもらったヘリは、
初心者用のコースで、何度か滑ると、初級者用コースに入った。
…やはり飲み込みがいいな。上達が早い。
ヘリの滑りを見ていたイヌは、感心したようにうなずいた。
「ねっ。イヌ。どうだった?」
息を切らして降りてくるヘリに、イヌが「まあまあだな」と淡々と答えた。
内心では、かなり賞賛していたイヌだったのだが、褒めすぎるとヘリが調子に乗りすぎる事も知っていたので、わざとそっけない調子で言っていた。
「そう」
それでも、ヘリは、かなり慣れてきて楽しんでいたので、全く気にしてないようだった。
「イヌ、私はこのコースで滑っているから、あなたは上級者コースで滑って来て」
「大丈夫か?」
初心者のヘリを一人にすることに戸惑っているようなイヌにヘリが「平気よ」と自信たっぷりに応えた。
「見てたでしょ?もうコツはつかんだから、一人で滑って練習したいの」
…それに、私につきあってたら、イヌが楽しめないわ。
…『大丈夫か?』の意味はそういうこともあるが…。
イヌはまだ迷っている風だったが、うなずくと、
「無理をする滑りはするなよ。あと、何かあったら携帯に電話しろよ」
と言って、上級者用のコースの方に去って行った。
やがて、滑り下りたイヌが、ヘリのいる初級者用コースに戻ってくると…。
誰かと話をしている様子のヘリを見つけた。
ヘリと話をしているのは、若い男のようだった。
「・・・・・・」
イヌは二人の会話が聞きとれるところまで近づいて行った。
「そう、もっとこう回りたい方向に体を向けるんだよ」
「こう?」
どうやら、男がイヌにボードの滑り方をレクチャーしていて
ヘリは、男の言葉を素直に聞いているようだった。
イヌは、心の中で舌うちをした。
…まったく。少し目を離すと…。
「うん。そうそう。そうしたらもっと楽に滑れるよ。それに肩の力を抜いて…」
男が何気なく、ヘリの体に触れようとした時、
「ヘリ」
イヌが声をかけて、ヘリと男の視線を向けさせた。
「イヌ、戻って来たの?」
イヌが無言でうなずいて、ジッとヘリの隣の男にサングラス越しに目を向けた。
…誰だ?こいつは。
そんなイヌの目に男がひるんだように、後づさった。
「さっきね。私が派手に転んだ時に起こしてくれた方よ。今、他にもいろいろ教えてくれて」
男とイヌの間でかもし出された不穏な空気にも全く気づかない様子のヘリに、イヌが心の中で溜息をついた。
そして、男の方に向き直ると、ニッコリと、穏やかで柔らかで、
それでいて、底なしに冷たい笑みを浮かべた。
「“連れ”がお世話になりました。お時間を取らせてしまって申し訳ありません。後は僕が面倒を見ますので、どうぞ、コースの方に御戻り下さい」
丁寧で、優しい口調のイヌの眼差しにブリザードのようなものが含まれているのを、感じとった男は、あわてて、「じゃあ…」と答えると、ヘリの方も見ずにあたふたと去って行った。
そんな男の後ろ姿を見送りながらヘリが、呑気そうに言った。
「今の人もインストラクターの資格を持ってるいんだって。このスキー場でも教えているから、ここにいる間に良かったら連絡してって携帯電話の番号も教えてくれたの。親切な人よね」
「…それ本気で言ってる?」
…聞くまでもなく、ヘリなら本気で信じてるのだろう。
案の定、
「何が?」と、きょとんとするヘリにイヌが今度こそ、口から深い溜息をもらした。
ナンパの常套句。そんな事も気づかないなんて。
「君は携帯電話番号を教えたのか?」
「いいえ。教えてないわよ」首を振るヘリに、イヌが、「だったらいい」と答えたあと、
もう一度フッと息をついた。
「ヘリ、転んだら自分で起き上がらないと練習にならないぞ。…それにケガは無かったか?」
派手に転んだと言っていたが。
「ええ。最初に教えてくれたいい『コーチ』から、転び方を教えてもらっていたから、平気よ。でも、今日は打ち身と打撲で、体が痛みそう」
そう言って、肘や膝をさするヘリにイヌが、今度は柔らかい笑みを浮かべた。
ヘリが、芯が強くて、真面目で、やる気になった事には一生懸命だという事を知っているイヌだった。
「随分がんばったんだな。ほら。じゃあ、上達の成果を見せて」
「いいの?もっと滑ってきたら?」
ヘリの気遣いにイヌが首をふった。
「もう、十分今日は滑ったよ。それに…」
…もう二度とこの危なっかしい恋人から目を離したくないからな。
「君が上達すれば、明日には一緒のコースで滑られる」
イヌの言葉にヘリが嬉しそうな顔をしてうなずいた。
「うん」
…そうしたい。
ヘリの純粋で綺麗な笑顔に、
イヌは、先ほどの「ナンパ男」へのいら立ちもすっかり消え失せていた。
(3話に続く)
しつこいですが、続きは無いです。
「聖夜の祈り」「MISS YOU」他、
旧正月話や、ヘリちゃんの誕生日話をアップ後になります。
でも、大人イヌっ、大人イヌっ!
5年前のみつば、ありがとうーっ!←やばいテンション(笑)
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