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先日、親しくしていた人が突然亡くなりました。

目の前で、心臓マッサージされながら救急車に運ばれましたが、
そのまま還らぬ人になりました。

優しくて穏やかで。
辛い日もその人の笑顔に癒されてきました。

そんな人を突然失って、
日々なんとか耐えていた私もフツリと糸が切れたようです。

いろいろあって、創作が難しくなり、コメントレスやブログの管理も
厳しいとの報告雑記、「ごめんなさい」の記事を書いてから、
ある常連の読者さんからショックな拍手コメントを頂くようになりました。

よくコメントを下さっている常連さんが、私のこと?と思われるかも
しれないので、書きますが、雑記とドラマ感想記事に
「自分勝手だ」とか「好き勝手に」「えらそうに」と書いてくる匿名さんです。

最初は、呆気にとられて、コメントレスしないことに腹がたってるのか、
創作出来ないのに、ドラマ感想や雑記書くのが嫌なのか、みつばが、りあ充しているようで、
妬ましいのか、なんだろう、って思いました。

通りすがりの方ならともかく、よりにもよって創作記事読んでいる常連さんが、
どうしてこんなコメントを何度も何ヶ月も書き込んでくるんだろう。
この5年間1人もいなかったのに。って悲しくて、書かれるたびにへこみました。

でも、これも励ましなんだって、この人もリアルで辛いことがあって、
何度か書き込めば、スッキリするんじゃないかって、そう考えて受け止めてきたんですが。

本当はスッキリしたんでしょうか。

甘ったるいジュース飲み続けたみたいに、
書き込むほどに、喉の渇きを覚えたんじゃないでしょうか。

このブログ、「みつばのたまて箱」は、みつばが、好き勝手に書くために
立ち上げたものなので、「自分勝手」と言われても、その通りなんです。

本当は、このブログを閉鎖するときに書こうと思っていた話を書きますね。

このブログを立ち上げた本当のきっかけ。

もちろん、検事プリンセスのドラマを見て、感動したから、なんですが。
漫画の仕事で挫折してから、ずっと出来なかった創作をふたたび始めた理由は、
あの年に、ネットの友人を失ったからです。

2011年の3月11日に。

みつばのたまて箱を立ち上げる、ずっと前。

それまで、育児の悩みを相談出来る人が近くにいなくて、
ママ友もずっと出来なくて。
せめて、と、記録かわりに立ち上げたサイトに来てくれた人でした。
リアルでは辛い日々だけど、せめてネットでは、面白、おかしく。
楽しいことだけ。そう記録したサイトをリンクしてくれる人が増えてきて
嬉しかったです。でも忙しくて、くるコメントに返事を書くのでせいいっぱい。

リンクしてくれた人のサイトには挨拶にいけず、
「夜中に記事をアップ出来るよゆうはあるんですね」というコメントや、
管理が届かずスパムコメントも増えたので、制限をかけてしまいました。

それでも、リンクやコメントを続けてくれた方の1人で、
先輩ママだった彼女は、よく励ましてくれたり、アドバイスをくれたりしました。

でも、あの日。2011年の3月のあの日から、
彼女のサイトの更新は途絶えたまま。

他にリンクして下さってた人は、皆、みつばより西か南に住んでる方でしたが、
彼女は非公開にしているものの、サイトの記事からみつばより東北に住んでいることが
伺えました。

節電で、みつばの地域も計画停電があった時なので、
きっとサイトもお休みしているだけなんだって思いました。

たまたま休止していて偶然なんだって考えました。

でも、数ヶ月たっても彼女のサイトはとまったままでした。
それまで毎日のように更新してたのに。

メールも出しました。
でも返事はありませんでした。

更新も連絡も途絶えた彼女のサイトを見て、
ずっと足踏みしたままだった自分を振り返って、

後悔したくないって思ったんです。

仕事として創作は出来なくても、
何かを創作したいって気持ちがあるなら、
どんな形でもいい。不完全でも、雑文だろうと、雑絵だろうと、
誰かに見てもらいたいって思いを実現しないまま終わりたくないって。

それで、検事プリンセスのドラマに感動した感想をただ
思うまま書いた「みつばのたまて箱」が生まれました。

そこから、もう、とても仕事してたと言えないボロボロのイラストも
誤字だらけの二次小説も書くようになって。

楽しかった。生きてるのが楽しいって思えました。

読者さんも増えてきて、凄く嬉しかったです。
でも、以前のサイトの件を教訓に、
コミュニケーションは最小限に、非公開で。
忙しく管理が厳しくなった時も考慮して。
二次創作が中心になってきても、
創作が出来なくなる時も考え、副題は、二次創作サイトでなく、
好きなものの、感想やイラスト、小説など、というのは、
ずっと変えず。

だけど、検事プリンセスや、他のドラマ好きな読者さんと
ブログ通じて語るのが楽しくて。
他にもいっぱい仲間がいるんですよって、他の方にも
知って欲しくて、コメントの制限を外してしまったんです。

全然後悔してません。

みつばが、気持ちよくなるコメントだけください、とは
お願いしてませんから。

ただ、このブログの雑記までしっかり見ている常連さんである人が、
今唯一、秘密の憩いの場として作ったみつばの大切な庭に、
故意に石を投げて去って行くのを見るのは辛いです。

今まで、このブログで癒された、というコメントを頂いたこともあり、
全ての苦労やリアルの疲れが消えるほど嬉しかったです。

コメントせず、読み逃げばかりで申し訳ない、というコメントを残してくれた方も、
非公開でも近況報告や挨拶のコメントをよく残してくださる方も、
記事をチェックしたり、時々見ていってくれる常連さんも。

本当にありがとうございます。

好きな時に好きな記事見ていってもらえたら、それだけで、
今のみつばには十分励ましなんです。

プロなら、リアルがどんなに辛かろうと、読者のために
創作するはずです。

げんに、みつばの師匠は昨年大きな手術をして、体に爆弾抱えながらも
今も命削って創作してます。

みつばには、それが出来なかった。
だけど、かわりに、この「みつばのたまて箱」を立ち上げました。


大抵、創作サイトが無期限に休止したり、閉鎖する理由。


題材としてたものに、萌えが無くなった。創作する情熱を無くした。

読者さんからの誹謗、中傷で意欲を無くした。

リアルが忙しくて更新する時間が無い。

以上の3つのようですが、
みつばは、情熱も萌えも失っていないので。


たとえ、「みつばのたまて箱」を失っても、
生きている間は、どこかで違う場を作ると思います。


「ごめんなさい」の記事の裏の背景に何があるのか、
確かに読者さんには関係無いことで、自分勝手なことでしょう。

3月にとうとう、更新の無かった彼女のサイトのアカウントが消され、
本当に失ってしまったと実感して、泣きました。

明日、出棺される知人に、もう二度と会えないのだと思って、
私は、この後また泣くでしょう。

突然なんです。
昨日まで当たり前にいたのに。

ずっと体調が悪かったのですが、今月、精密検査が必要だと申告された
みつばだって、どうなるか分からないんですもの。

「ごめんなさい」は、もう言いません。


だけど、どうか。読者さんにお願いです。
とくに、ずっと、このブログにいらしてくれている読者さん。


生きていて、楽しいって心底思えること見つけて下さい。

みつばや、このブログに執着せず、
見たくない記事や嫌だとおもうことには付き合わず、
他にワクワクすること探してください。

みつばは、これからも、
生きている間にせいいっぱい、感動したことを、
雑記や、感想や、創作で書いていきます。


それで、体調も状況も良くなったら、
このブログの創作を全部完結させて、終わらせたい。

時間がかかっても、時間というものが残されてるなら。
いつか常連さんたちに読んでもらいたいです。

それが、みつばの今生きている目標の一つです。


匿名さんも、きっとみつばが、傷つけていたんですよね。
ごめんね。何度も来てくれて、記事をいっぱい読んでくれてありがとう。
希望に添えなくてごめん。検事プリンセスの二次創作。
良かったらラストシーンをみつばが書けるまで、見守っていてもらえると嬉しいです。





テーマ:心のつぶやき - ジャンル:小説・文学

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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「ハロウィンの約束」です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。

この話は、「聖夜の祈り」後に更新予定の、「聖夜の祈り」の補足&番外編である「MISS YOU」の中の話を抜粋して書き下ろした短編です。

アメリカで母を亡くした少年のイヌが、養父ジョン・リーの元に来て、初めてのハロウィンの日の話。





ハロウィンの約束




「ごちそうさま」

夕食後、テーブルの上の皿をまとめ始めたイヌに気付いて、
家政婦があわててキッチンから出てきた。

「まあまあ、そんなことは私がしますから、出かける準備でもして下さい」

「別に出かける予定は無いし、いつもやっていることだから」

「でも、今日はいつもと違う日ですよ」

家政婦は、同意を求めるように、チラリとイヌの養父ジョン・リーに目をやった。

「そうだね」

ジョンは、にっこりと笑みを浮かべると頷いてみせた。

「イヌ、今日はハロウィンだ。向こうの国では分からないが、ここではお祭りのような日なんだよ。君のスクールでもハロウィンのイベントがあるんだろ?手伝いはいいから、出かける支度をしたらどうかな?私がスクールまで送っていこう」

「いいよ」

イヌはかたくなに首を振った。

学校でハロィンのイベントがあるという話は知っていた。
しかしイヌはそんなものには全く興味が無かった。

…それよりも、僕にはやるべき事が沢山ある。

「強制的なイベントじゃないし、僕は参加しない。
それに誰とも約束をしてないから。それより家で英語の勉強をしたいんだ」

イヌは、会話の中に、ジョンにさりげなく伝わるような言葉を使った。

『まだ、英語がうまく話せない。だから友達もいない。
関心の薄いイベントに行って時間と労力を使うくらいなら、勉強して早くここに慣れたい』

イヌの意志はジョンにちゃんと伝わったようだった。

ジョンは軽い吐息をつくと「そうか」と言った。

「では、また来年参加するといい。楽しいイベントだから、きっと君も気にいると思うよ」

「うん」

イヌは、理解してくれたらしいジョンの返事に密かにほっと安堵のため息をつくと、再び家政婦の手伝いを始めた。

その時、庭のエントランスから来客を知らせる音が鳴った。

「ん?」

ジョンが窓から庭の方を確認したあと、すぐにエントランスのロックを解除し、玄関に向かうと、訪問者と話し始めた。

「イヌ、君にお客さんだ」

そう、ジョンが告げる前に、イヌは誰が来ているか微かに聞こえた話声で分かった。

イヌは、まとめた皿を家政婦に渡すと、気の進まない様子で玄関に向かった。

玄関でジョンの目の前に立っていたのは、
近所に住み、同じスクールに通うジェニー・アンだった。

黒い三角帽子をかぶり、黒いマントの下には、黒いドレスを着ていた。
さらに、手にはホウキを持っている。

その姿を一目見たイヌの反応に、ジェニーが決まり悪そうな顔をした。

「そんな顔しないで。ママがわざわざ作ってくれた衣装だったから、着ないわけにはいかなかったのよ」

「いや、別に。似合ってるけど」

言葉とは裏腹にそっけない態度のイヌにジェニーは、顔をしかめて見せた。

「それで?あなたの方の仮装は、何なの?」

「僕は、仮装してないよ」

「スクールのパーティーに行くんでしょ?」

「行かない。僕達、そんな約束した?」

「…約束はしてないけど」

ジェニーは、仮装の魔女が本物になったような顔つきになっていた。

「誘いに来たのよ。あなたは初めてだから。別に仮装してなくても参加できるから一緒に行きましょう。普段話したことの無い人とも仲良くなれる機会よ」

そう言って、ジェニーは、チラリとジョンの方を見た。

…なるほど。養父か、ジェニーの両親が気遣って、僕を誘えと言ったんだな。

勝手にそう想像したイヌは、心の中で舌打ちすると、首を横に振った。

「せっかく誘いに来てくれたところ悪いけど。今夜は参加しないって決めてる。
『どんちゃんバカ騒ぎ』のパーティーに行きたい気分じゃないんだ。君は楽しんで来て」

丁寧に断ったつもりのイヌだったが、言葉の選び方が間違っている事に気付いていないようだった。

ジョンは、やれやれ、と言うように苦笑しながら僅かに両肩をすくめて見せ、
ジェニーの目は今にもイヌに呪いの魔法をかけそうに尖った。

「本当は怖いだけでしょ?本物のお化けが出ると思ってるのね?
あちらの国で育った男の子って意気地がないのね」

ふふん、と挑発するようなジェニーの言葉に、イヌはムッとして目を細めた。

「ハロウィンが怖いわけじゃない。パーティーには行きたくないだけだ」

「じゃあ、スクールのパーティーには行かないけど、街の仮装イベントには行けるってことね。ここで待っていてあげるから早く用意しなさいよ」

「え…。だから、僕は」

とっさにジェニーのペースで言い含められたイヌの困惑した様子に、ジョンが失笑した。

「イヌ。ここまで言う女の子の誘いを断るのは失礼だよ。今夜はジェニーをエスコートして来てあげなさい」

養父のジョンにもここまで言われたら、もうさすがに断れない雰囲気だった。

「…わかったよ」

「ああ、ちょっと待って、イヌ」

渋々ジェニーと一緒に玄関を出て行こうとしたイヌをジョンが引き止めた。

そして、部屋の奥に行って戻ってきたジョンは手にマントや帽子やマスクを持って来た。

「これをつけて行きなさい」

フルスペックで着飾ると、ドラキュラになりそうな衣装だった。

イヌは、ジョンの手のマントだけをひったくるように奪うと、「行ってきます」と言って、
ジェニーを急かすように外に出た。

ジョンの思う仮装は免れたイヌだったが、エントランスでジェニーとの2ショット写真を撮られた。

写真を撮ったジョンは、しごく満足そうにイヌとジェニーを眺めた。

「うん。じゃあ、二人とも気をつけて行ってくるんだよ。
ジェニー、帰りはここに寄りなさい。私が家まで送って行ってあげるからね」

「はい。おじさま」

玄関で、ワンっと鳴く犬の声が聞こえた。
イヌを見送るように、しっぽを激しく振った犬のマリーがニコニコ顔で手を振るジョンの横に立っていた。

…出来ることならお前に僕のかわりに行ってほしいよ。

イヌはうらめしそうに、マリーを見た後、軽い吐息をついて、
手を振るジョンを尻目にジェニーと共に歩き出した。

しばらく無言で歩いた後、イヌは隣のジェニーに思い切って声をかけた。

「本当はスクールのパーティーに行きたいんだろ?」

イヌの問いかけにジェニーは、「べつに」とそっけなく答えた。

冷ややかなジェニーの横顔に、イヌも白けた顔で夜空を仰いだ。

…こんな空気をいつまで続ければいいんだ。

イヌがそう思った時。
ファファーンっと後ろから走ってきた車のクラクションが、イヌとジェニーの注意をひきつけた。

二人の歩みを止めるように車がすぐ前に停まり、イヌとジェニーは警戒から一瞬全身を緊張させた。

助手席のウィンドーが下がり、顔を出した人物に二人はホッと同時に息をついた。

「よお、ソ・イヌ」

「やあ、トニー・ブライト」

トニーは同級生のジェニーではなくイヌに話しかけてきた。

「これからスクールパーティーに行くんだろ?兄貴の運転で俺たちもこれから行くから乗れよ」

「いや、僕は学校のパーティーには行かないから」

「そうなのか?でも、仮装してるじゃないか。別のパーティーにでも呼ばれてるのか?」

ジェニーを完全に無視したように話すトニーだったが、時折無意識にチラチラとジェニーの様子を窺っていた。

「パーティーには呼ばれてないけど、これから街のイベントに行くつもりなんだ」

「街のイベント?」

「僕は、よく知らないのだけど…」

そこで、ジェニーの方を振り返ったイヌの視線を追って、トニーもジェニーをまともに見つめた。

「ジェニー・アン。お前がイヌを街に連れて行くのか?まるで保護者だな。イヌは本当は嫌がっているんじゃないか?田舎街のイベントよりスクールパーティーの方が楽しいぜ。来いよ。お前も一緒に乗せて行ってやるから」

ジェニーは、「余計なお世話よ」と冷たく答えた。

車の後部座席で、クスクスとバカにしたように冷笑する女の子達の気配がした。

どうやら、トニーの乗った車には他にも同乗者がいるようだった。

「どうぞ、私達に構わず行って。トニー・ブライト。車の中の“どんちゃんバカ騒ぎ”につきあいたい気分じゃないの」

ジェニーの言葉にトニーの顔が赤くなった。

「ジェニー、お前…」

何か言いかけたトニーに、後部座席の友人達がしびれを切らしたようだった。

「ねえ、トニー。そんな子に構ってる時間ないわよ」

「早くパーティーに行きましょう。ダンスには間に合いたいわ」

「…ああ、そうだな」

トニーは、ウィンドーを上げ「じゃあな。イヌ」と言い捨てると、隣の兄に車を発進させた。

走り去る車が角を曲がり消えるまで見送ったイヌとジェニーは再び歩き出した。

「…あのさ。さっきのトニーに対する言い方はちょっとまずいと思うよ。一応誘ってくれたわけだから」

どんちゃんバカ騒ぎ。

さきほど、自分も発した言葉にもかかわらず、そう忠告するイヌをジェニーはジロリと睨んだ。

「あなた見てたでしょ?あいつのあの態度。わざとらしく私を無視して。
ガールフレンドたちの目の前で私に恥をかかそうとしてたのよ?私のこと嫌っているのは分かっているけど、だったらどうして一々絡んでくるのかしら?理解できないわ」

「…トニーが君に絡んでくる理由、本当に分からないの?」

「嫌いだから嫌がらせしたいんでしょ?幼稚よ。あんなのがスクールで一番もててる男なんて、信じられないわ」


…トニーは、ジェニーを嫌っていない。むしろ…。

そう言おうとしたイヌだったが、つんつんと静かに怒りを見せているジェニーにイヌは口を閉ざしたままでいた。

やがて、街のイベント会場についたイヌとジェニーは、イベントをゲームに参加したり、露店でジュースを飲んだり、もらった菓子をつまんだりして時間を費やした。

嫌々来たなりに、それなりに面白さも感じたイヌだったが、常にびったりと隣にいるジェニーに気遅れも感じていた。

トニーの言っていた通りに、ジェニーはイヌの保護者のつもりでいるようだった。

そんなに年も違わない女の子に、保護者面をされていることに、イヌはだんだん気まずくなってきた。

そして、ジェニーが露店で売っているハンドメイドの髪飾りに目を奪われている間に、イヌはそっとジェニーから離れた。

一人で、イベント会場を歩いていると、まるで本当に異国に一人でいるような感覚に陥っていったイヌだった。

誰も知らない。
言葉もまだあまり分からない。

仮装した人々が余計、イヌと隔たった世界に住んでいるように感じた。

“ハロウィンには亡くなった人も来る”

そう聞いた時。

イヌは、まっ先に両親を想った。

…母さんもここに来ているのかな?
父さんは、遠いところにいるけど、母さんに会えるのかな?
魂だけだと距離は関係ないのかな。僕は、いつあの国に戻れるんだろう。
父さんの眠っているあそこに…。

そう考えながら、フラフラと歩いていたイヌの肩が突然後ろからガッと掴まれた。

振り返ると、長い髪を振り乱しぎみで、凄い形相で息を荒くしたジェニーが立っていた。

「一体何してるの?探したじゃないっ」

イヌはきょとんとなって、ジェニーを見返した。

「君が髪留めに夢中だったから、僕は僕で会場を歩いていただけだ」

「どこへ行こうとしていたのよ?」

「どこって、別に」

「勝手にいなくならないで。あなたがいなくなったら、ジョンおじさんだって心配するじゃない」

「勝手にいなくなってなんていない。君とはぐれただけだろ。
それに、養父には関係ない」

「それが勝手だって言ってるのよ!」

いつもは冷静なジェニーの剣幕に、イヌが気圧され黙った。

そんなイヌにジェニーは罵声を続けた。

「あなたはここに慣れてないんだから、すごく心配したのよ。ジョンおじさんだってそうよ。あなたの事いつも大事に考えてくれてるじゃない。そんな人のこと、どうして何も関係ないみたいに言えるの?」

イヌにはジェニーを置いて行くつもりも、振り払うつもりも無かった。
本当に、ただ、ぼんやりしているうちにはぐれてしまっただけなのだ。

そう言い訳しようと口を開きかけたイヌは、思い留まって唇を閉じた。

目の前で、顔を真っ赤にし、イヌを睨みつけて立っているジェニーだったが、
その逆立った眉毛の下の瞳は今にも泣きだしそうに潤んでいた。

ホウキを持つ手は小さく震えている。

それは怒りからでも寒さからでも無いようだった。

内心から来る大きな不安と怯えをジェニーは必死に振り切ろうとしているように見えた。

まるで、置いていかれて、迷子になった子供が
知り合いを見つけて安堵のあまり激情にかられたような、ジェニーの風情。

いつもはクールに振る舞っているジェニーが、
か弱く小さな女の子に見えた。

ジェニーはぐいっと拳で目をこすると、何も言えずに黙っているままのイヌを勝気そうな目でキッと睨み付けた。

「約束して。
二度と私を置いていかないって。黙って、勝手に行かないって。そう約束して」

それは、ジェニーの一方的な約束だった。

その約束は、今日だけのことなのか、
それとも今後のことなのかも分からなかった。

だけど、今、ジェニーを安心させてあげられるのは、イヌの約束なのだろう。

イヌは、コクリと頷いた。

「うん…わかった」

イヌの返事に、ジェニーは心から安堵の表情を浮かべた。

「そう…。じゃあ、そろそろ帰りましょう。あまり遅くなると、親が心配するから」

そう言って、クルリと背を向けて、歩き始めたジェニーの背中をイヌはゆっくりと追った。

冷静さを失ったところを見られた照れ隠しなのだろう。

ジェニーは、しばらく後ろからイヌがついてくる気配を察しながらも早足ぎみで前を歩いていた。


やがて、ジェニーの歩調がゆっくりになって、イヌと並んで歩き始めた。

数十分の間、無言で歩きながら、イヌとジェニーは、視線を合わすことは無かった。

ただ、お互いの存在を意識しながらも、だんだんと気まずさが無くなっていくのを感じていた。

ジェニーは、イヌの境遇を知った後、自分も今の両親の養女だと明かしていた。
イヌとは違い、もっと幼い時に養女になったというが、詳しい事はまだ語ってはくれなかった。

それでも、自分の抱えている孤独や闇。その葛藤と悲しみ。
似たようなものを持っていることを、イヌはジェニーに感じ取っていた。
いつのまにか、イヌの方がジェニーを誘導するように歩き、ジェニーの家の前までついた。

「あら、ジェニーを送ってくれたのね。ありがと。イヌ」

家から出てきたジェニーの養母メリッサ・アンは歓迎の素振りでイヌをハグすると、イヌのショルダーバッグに手製のクッキーがはいった袋を入れた。

「お酒を飲んじゃってるから車の運転が出来ないのだけど、一緒に歩いてジョンのところまで送ってあげるわね」

そう言うメリッサの申し出をイヌはやんわりと断った。

「大丈夫。もう道は覚えてますから、一人で帰れます」

そして、イヌはジェニーの方を振り返った。

「ジェニー」

ジェニーが何?と言うように首をかしげた。

「今日は、ありがとう、楽しかった」

そう、柔らかな表情で言ったイヌに、ジェニーは面食らったように目をぱちぱちさせた。

そして、少し顔を赤らめて「それは良かったわ」と答えた。

「また、学校で」

「うん。おやすみ」

イヌは、自分を見送るジェニーとメリッサに手を振った後、ジョギングするように走り出した。

この道は朝、養父と一緒にジョギングする通りだった。
夜道とはいえ、外灯も明るく、迷う心配は無い。

それに、通りはハロウィンの飾りつけで、普段と違う姿を見せていた。
ジャック”にくりぬかれた大きなオレンジ色のかぼちゃ。
ランタンとして、不気味な光があちらこちらの家や庭を照らしている。

確かにイヌにとっては見慣れない光景だった。

そんな夜道を、自分は、まっすぐに養父の家に向かっている。

イヌは、走りながら、ジェニーとの会話を思い出していた。

『置いていかないで』

さきほどの、いつもと全く違うジェニーの取り乱し方は、誰かに置き去りにされた記憶の不安から出たものだったのだろうか。

でも、ジェニーにそう言われた時。
イヌは、自分もそう叫びたかったのだと悟った。

父に。母に。

ずっと、異国の地に1人置いて行かれた悲しみをどこに持って行けばいいのか分からずに、
過ごしていた。

だけど、そこに、ほんの少し。

ハロウィンのランタンのように、ぼんやりと、イヌの道の先を照らす何かが心に生まれているのを感じたイヌだった。

そして、その灯りの正体が具現化したように、ジョンが道の先に立っているのにイヌが気づいた。

「やあ。メリッサから連絡をもらってね。君がこっちに向かってると聞いたから」


「…迎えに来てくれたの?」

「うん。私もジョギングがしたかったしね。
どうだった?ハロウィンの夜は楽しかったかい?」

悪びれた様子もなく、軽くウィンクして近づいてくるジョンに、イヌの胸が熱くなった。

やはり、実の父とは違う。
それでも、ジョンに対する想いは、イヌの孤独を和らげはじめていた。

…この気持ちをどう話したらいいのだろう。

そんな内心の混乱の中、イヌはとっさに言った。

「Trick or Treat」

ジョンが笑った。

「さあ、家に帰って、一緒にパンプキンパイを食べよう。
私の自信作なんだ。君の口に合うといいが」

そう言って、ジョンはイヌの肩をそっと抱いて歩き出した。

目の前にジョンの家が見えてきた。

イヌは、心から安堵の吐息を漏らすと、隣を歩くジョンを見上げた。

「…ただいま」

小さなイヌの声に、ジョンが優しく頷いた。

「おかえり。イヌ」


『おかえり』

ジョンの家へと続く庭の道。

置かれたかぼちゃのランタン達が、一斉にイヌを迎えるように笑っていた。


(終わり)


イヌ×ヘリじゃなくて、少年イヌ&少女ジェニー&ジョンのお話です。
「MISS YOU」の中のエピソードを短編として書き下ろし。
以前更新した、二次小説。「Happy Halloween 」「聖夜の祈り(10話)」にも
この話にリンクした部分があります。

久々のイヌ。でも、少年イヌ。
大人イヌに年内に会いたいですが(汗)

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

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本当は先日、検事プリンセスの二次小説、ハロウィンを題材にした小説を1本更新する予定でした。
やらなくてはいけない事が山積みで、構成がかなわずタイムリミットに。
年内には必ず更新します。
私も今年一度もイヌに会えないのは悲しいですから。
そう、今年、検事プリンセスの新作1本しか更新してませんが、まだイヌが出てなかったんですよね。
会えている気がしているのは、みつばの頭の中には一応物語が入っているからで。
創作して世に出ない限り、イヌは妄想のままで無いものも同然なんですよね。

ここしばらくは、深夜、音楽流して、命削って創作している恩師の手伝いしてます。
仕事しながら20代の時大好きだった恋愛の歌を聞いていたら、イヌを想いました。
このブログで創作しているキャラクターは全部好きだけど、
やっぱり、イヌ(検事プリンセス)は特別だなって。やっぱりイヌに恋してるんだな。自分。
イヌがこの歌を歌っている。みつばの好きなグラサンかけて黒スーツ着てって、妄想まで。

イヌ好きは、病気の域ですからね(笑)

検事プリンセスの続き、楽しみにしてくれてるってコメントもありがとうございます!
シフさん(イヌ役さん)のファンミに行かれた方の感想もありがとうございます!!

みつばの中の歌うイヌはちょっとシフさんの歌っているイメージとは違うみたいですけど(汗)
リアルで踊っていた素敵な姿は今も覚えています。

自分もイヌに会えるのを励みに、いろいろ頑張ります!

「イヌ好きだ~!」という呟きも書いたので、
ちょっと元気でました(笑)

ハロウィン短編。
火の女神ジョンイの「永遠の器」完結。

の後に、クリスマス話でイヌに会いに行きます♪


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