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韓国ドラマ「火の女神ジョンイ」の二次小説「永遠の器」の2話です。
最終回のラストからの続き、としてお読みください。

このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。


「火の女神ジョンイ」最終回、ラストの方のあらすじ。

王の次男、光海君と、宮中の陶器製造施設「分院」の女陶工職人、ユ・ジョン。
身分違いでありながら、幼い頃に出会った時から惹かれあい、密かに想いあっていた二人。
倭国との戦の中、光海君は世子となり戦場に赴く。そこで初めて、光海君に自分の想いを伝えるジョンだったが、分院の仲間を救う為に倭国に行くことを決め、一人国を去っていった。ジョンを必死に追った光海君だったが、ジョンはすでに船出した後だった。



永遠の器(2話)



「…なあ、千代さんの新顔を見る様子がおかしくねえか?」

「年はちっとくってるが、いい男だからじゃないか?」

「おい。千代さんが、いい男なんかに目を奪われるわけがねえだろ。
千代さんの心は全部美しい器を作ることだけに占められてるんだからよ。
今更いい男に心を奪われるんだったら、なんで俺じゃねえんだよ」

「お前は、器を作る腕も女を落す手もなまくらだからだよ」

ひそひそと話す職人達をよそに、役人達は男と商人たちを置いて先に集落の外に出て行った。

商人の一人が千代の前に立った。

商人と思しき者たちの行首(ヘンス)のようだった。
その風貌はいかつく、目つきは鷲のようにするどく、周囲を威圧する空気は、ともすれば海賊のようにも見える男だった。

「あなたが千代さんか?」

男が、千代には懐かしい国の言葉を発した。

「そうです」

「向こうの国の分院(プノン)で沙器匠(サギジャン)だった?」

さらに懐かしい響きに千代は目を細めた。

「はい。そうです」

どうして、会ったこともない商人が自分の素性を知っているのか分からなかったが、
国間で陶器を取引している商団の行首ともなれば情報を掴むのはたやすいことなのだろう、と千代は考えた。

商人はチラリと後方にいる男に目をやった。
男は小さく頷いたように見えた。

商人の男も何やら合図のように頷き返すと、千代の方に向き直った。

「あの男は、かの国では陶工では無かった」

「え?」

役人とは違う話に千代は驚いて目を見開いた。

「器を作る技術はほとんどない。
それでも、他のどの職人も持っていない経験や知識がある。
だからこそ、藩主と取引きして、ここに連れてきた。
この集落には必要な人間になるだろう。そう、きっと貴女にも」

…私にも?

千代には、商人の言う事があまり理解できなかった。

職人で無いものをわざわざ他国から、こんなところに連れてきたこと。
そして、どうやら藩主でなく、商人がこの男を何らかの策で引き入れたこと。

藩とどんな取引をしたのかは分からなかったが、
かなりの危険を伴った行為であることは間違いないだろう。
そこまでして、この男をここに連れてくることで、どんな益がこの商人にあるのだろうか。

黙ってはいたが、千代の不思議そうな眼差しに、商人がフッと笑みを浮かべた。


「わしにはあの男に大きな恩があるのだ。一生かけて返さねばならぬ恩がな。
ここに来ることが、そんな男の頼みだったから、わしは命をかけた。それだけの理由だ。
あとは、ゆっくりあの男に話を聞けばいい」

いかつい顔を少し和らげて話す商人の様子に、千代は態度こそ大きくとも男の方が商人より上の立場であることを察した。

命をかけてまで願いをきくほどの。

ますますいぶかりながらも、千代はコクリと頷いた。

そんな千代に商人がますます優しい表情を浮かべた。


「…千代さんは、話に聞いた通りの人のようだ。どうか、“あの方”をよろしく頼みます」


商人の男はそう言って、千代に深く頭を下げた後、振り返った。
そして、男と黙ったまま目で会話をした後、他の商人たちを伴って集落を出ていった。

やり取りを遠目から見守っていた職人達は、商人の頭が千代に頭を下げる様子に一様に驚いていた。

そして、一人残された男に興味深げな眼差しを向けながら取り囲みはじめた。

「ふーむ。おい、この国の言葉は話せるのか?」

問いかけに、男は「すこし」と答えた。

「名はなんていうんだ?」

「あの国の名前は捨てた」

「じゃあ、今の名は?」

男は、黙ったまま首をかしげて見せると、皆のやり取りを少し離れたところから見ていた千代に目をやった。

男と目のあった千代の胸がドクンっと音を立てた。

「先に、あの人と話がしたいのだが、いいか?」

男は千代をまっすぐに見て言った。

男は千代を。
千代も男の方を何やら複雑な面持ちで見つめていることに気付いた仲間達は自然に道を開けた。

「ありがとう。後でゆっくり話をさせてくれ」

「すこし」と言っていたが、男の言葉は流暢だった。

千代と男の間に漂う訳ありな空気に、日頃豪胆で荒っぽい職人達も何かを察して黙っていた。

男は、千代の前に立つと、「少し歩こう」と促すように歩き始めた。

男は集落を出て、林に通じる道に行くようだった。
前を行く男をあわてて追うように、千代がその後について行った。

男と千代が集落から出て行った後、職人達は、もう仕事が手につかない状態で肩を寄せ合って噂話を始めた。

「千代さんと、あいつ。あの雰囲気は、いったいなんだ?知り合いだったのか?」

「なにか、とてもとりつくしまが無かったな」

「あっちの人間だというが、言葉はずいぶん話せていたぞ」

「それに、男になにか品のようなものを感じたんだが、オレの気のせいか?」

「いや。ただの職人や農夫じゃねえな。あれは」

「千代さんと知り合いだったとして…もしかしてあっちの国で一緒に働いていた仲間とか?」

「それか…あの男が、千代さんと生き別れた、という噂の旦那か?」

「まさか・・・」


集落で、そんな会話がくりひろげられているとは知らない千代は
足早で行く男のあとを必死に追っていた。


男は、道をどんどん前に歩いていった。

徐々に集落は遠く離れていく。

千代はあせったように、何度も集落の方を振り返った。

見知らぬ土地に来たばかりのはずの男が、いったいどこまで行くのだろう?

もしかしたら、本来の目的は集落に住むことではなく、どこかに逃げることだったのではないだろうか?

陶工でも職人でも無い。
…自分と他人の命の危険をおかしてまで。
何をしに、何の目的で、この場所に来たがっていたのだろう。

そもそもこの男は一体何者なのか?

…あの人に似た面影を持って、どうして私の前に現れたの?

千代の脳裏に、ずっと心の中に秘めてきた想いが蘇った。

折しも、暮れてきた日が柔らかい光をおとし、
空を夕焼け色に染め、男と千代の影を長く伸ばし始めた。

…この景色は、あの方と見た、あの頃の光景に似ている。

千代がぼんやりとそう思った時、
目の前の男が、歩みをゆっくりと落とした。

男も空に目をやっていた。

そして、「懐かしいな」とポツリと呟くように言った。

「こんな景色を見たような気がする」

「どこで見たのですか?あなたの故郷の景色に似ていますか?」

千代の問いに男は黙ったまま歩みを止めた。
そして、千代が横に並ぶのを待った。

「昔、見たのだ。もうずっと昔のようだ。
見慣れた日常の景色だったのに、その時だけ、とても美しく感じたことがあった」

空を見る男の切なげな表情と、低いその声に、千代はなぜか胸が締め付けられるように感じた。

「私にもあります。そんな景色が。
ここではありませんが、すべてが鮮やかに色づいて、美しくて。
でも目を奪われていたのは、景色では無くて…奪われていたのは私の心だったのと、後になって知りましたが」

「…心が何に奪われていたと?」

男の問いに、千代は長く封じていた心の蓋を開けた。

この国に来て、誰にも話したことの無い想いだった。

「大切な方です」

千代が息を吐くように言った。

「私にはいつも手の届かないところにいる方でした。
手を伸ばせば届きそうな場所でも決して触れることの出来ない人。
そんな方と、一緒に景色を見ているふりをして歩きました。
私は、本当は景色ではなく、ずっとあの方を見ていたかった。
隣で、あの方の気配を感じながら、高鳴る胸の響きが、あの方に悟られないか、
動揺していることが伝わらないか、必死で平静を装って歩いて…。
…あんなに素晴らしい光景はもう二度と見られないかもしれない。
そんな景色でした」

千代の話を聞き終えた男は、しばらく黙ったままだった。

そして、静かにため息をつくと目を閉じた。

「…あの時に言ってくれれば良かったのに」

「え・・・?」

男の言葉に、千代がきょとんとなった。

「今の言葉を、あの頃に聞きたかったと言ったんだ。
どうして、そんな風に言ってくれなかったのだと。
もし、言ってくれていたら、私も同じ気持ちだと言えたのに」

「…?。何を言って?」

目をぱちくりさせて、心底分からないという表情の千代を見た
男が苦笑した。


「長い年月かかって、遠い他国の地で、ようやくそなたの本心が聞けるとはな」

「あの…?」

「まだ分からないか?私が誰か」

不敵な笑みを浮かべながらも、呆れたように男が言って千代に一歩近づいた。

「…誰?」

震える声で千代は思わず後ずさりした。

…そんなはずはない。そんな事があるはずはない。

千代は浮かんだ答えを必死に頭で否定した。
心はそのことを望んでいたとしても。

そんな千代を男は、また黙ってじっと見つめた後口を開いた。

「“千代”。それが、今のそなたの名か。私の知っているそなたの名は…」

男が名を紡いだ。

その言葉に、千代が思わず口元を手で押さえた。

「なんて…今、私のことを何と?」

「ジョン。ユ・ジョン」

再び男が名を呼んだ。

懐かしい真名に、千代の身が震えた。

「どうして、その名前を知っているの?あなたは誰なの?」

男が頭にかぶっていた笠を取った。

笠の陰影で隠れていた男の素顔が、夕暮れの光の中に浮かび上がり、
千代は、あっと声をあげた。


最後に見た時より年を経てはいたが、まぎれもない、あの人の姿だった。


「私のかつての名は、ホン…いや。光海君と言ったほうか良いかな?」


男が言った。



(3話に続く)

どうして、倭国(日本)に光海君が?
な、展開ですが…二次創作なので。
出来れば、ドラマラストをこんな感じで
終わって欲しかったという、みつばの最後の願望を
書いてます。

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韓国ドラマ「火の女神ジョンイ」の二次小説「永遠の器」です。
最終回のラストからの続き、としてお読みください。

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「火の女神ジョンイ」最終回、ラストの方のあらすじ。

王の次男、光海君と、宮中の陶器製造施設「分院」の女陶工職人、ユ・ジョン。
身分違いでありながら、幼い頃に出会った時から惹かれあい、密かに想いあっていた二人。
倭国との戦の中、光海君は世子となり戦場に赴く。そこで初めて、光海君に自分の想いを伝えるジョンだったが、分院の仲間を救う為に倭国に行くことを決め、一人国を去っていった。ジョンを必死に追った光海君だったが、ジョンはすでに船出した後だった。



永遠の器(1話)


「分院で私を待っていると…会おうと約束したのに」

…ジョン、お前は私を置いて行ってしまうのだな。

遠ざかっていく祖国の地。

その岸辺に立ち、今にも海に飛び込んで自分を追ってきそうな人物の影を
ジョンは細めた瞳で悲しげに見つめ続けた。

…光海君様。

出来ることなら、今すぐに私が海に飛び込んで、
あなたの所に戻りたいです。
たとえ、あなたの側にいられなくても、
分院で、あなたに差し上げる器を作りたいです。

でも、出来ないのです。

敵が大勢いる場所にまで私を追ってきてくれた。
それがどんなに嬉しかったか。

もうその気持ちを伝えることすら叶いません。

せめて、あなたへの気持ちと共に過ごした思い出を心に抱いて、
私は去ります。
この想いが、これから過ごす遠い異国の地への不安を
和らげてくれることを感謝します。

光海君様。

ありがとうございます。
ごめんなさい。許して下さい。
…愛しています。

遠ざかる人物の表情までは見えなかった。
それでも、最後の最後まで、愛しい人の姿を目に焼きつけておきたい。

「さようなら…」

ジョンは小さく呟くと、
必死に涙をこらえた目で、光海君が見えなくなるまで岸を見つめ続けた。



「世子様。そろそろここを発たないとと敵に見つかってしまいます」

そう護衛が緊迫した面持ちで声をかけても、
光海君も、ジョンの乗った船が見えなくなるまで目を逸らすことは無かった。



そして
ジョンが倭国に連れて行かれた日から
数年がたち・・・。


倭国との戦で、国は守られたが、その傷痕はまだ深かった。
そんな中、光海君は王となった。

孤独な王座に座り、
光海君は寂しげな目を空に向けた。

…元気でいるか?ジョン…。

その想いは、倭国につながる空に駆けて
ゆっくりと流れる時の中に消えていった。


そして、それから、また年月が過ぎた、
倭国の、とある土地の集落。

その集落は、腕の良い陶工職人達が多く住み、
陶磁器は藩の御用達にもなっている、大きな窯の一つだった。

「千代様」

その声に、
窯の前で、焼けた器の出来を調べていた女陶工が振り向いた。

「どうしました?」

「藩の役人から、千代様宛に文が届いています」

集落の外から戻って来た作業人が千代に手紙を渡した。

「なんでしょう?」

「分かりません。でも、急いで中を読めとのことですよ」

「おおかた、先日命じた器は出来たのか?という催促の文だろうな」

千代の側で窯の薪を並べていた男が横から口をはさんだ。

「窯神様に愛されている千代さんなら1日で器が出来るって思われているからねえ」

「そう思われても違いないからな」

窯で働く陶工や作業人達がどっと笑った。
千代も一緒にはにかむような笑みを見せた。


千代は窯の中で1、2を争うほど腕の良い陶工だった。
その昔、異国から連れてこられてから、千代は集落で陶器を作る先駆者の一人となった。
まだ、寄せ集めばかりだった職人たちを集落でまとめていったのも千代だった。

そんな千代は、藩主だけでなく、窯の仲間達からの信望も厚く、皆から尊敬され慕われていた。

陶器にかける情熱は人一倍だということは誰しも分かってはいたが、
ただ1点、謎なことがあった。


創る器だけでなく、容姿も性根も美しい千代が、なぜこの年になってまで独り身でいるのか?ということだった。

千代がこの地に来てからこれまで、幾人も求婚する男がいた。

すべて、千代が断った理由は、国に結婚した夫がいるからだという話。
または、窯神様に、一生独身を貫くという誓いをたてたからだという話。

どれも噂ばかりで、実のところ、誰もその真相を知らなかった。


陶工とはいえ、女性が一人身でいるのは、不都合が多い時代と土地。
それでも千代の作る神秘的なまでに美しい器が、人々を魅了し、惹きつけ、そのようなことは些細な事だと思わせていた。

「千代さん。手紙にはなんて書いてあるんだい?
もし、器の催促なら協力は惜しまないよ」

「そうですね。もし、そうだったらお手伝いをお願いします」

千代は、そう答え、仲間の視線を浴びながら文を開いて目を通した。

千代の少なからず驚いている表情に、皆が興味を示した。

「千代さん?」

「文によると、この窯の集落に新しく外から来た人が住むことになる、とのことです」

「外からというと…千代さんと同じ国の人かい?」

千代がコクリと頷いた。

仲間達は顔を各々見合わせると、不思議そうに首をかしげた。

「珍しいな。よほど腕のいい職人でも見つけてきたんだろうか?」

集落に新しく人が住むことは珍しいことでは無かった。
ただ、それは藩から許された職人たちだった。

窯の職人たちは、技術を他の藩に漏らさないために、
単独で土地を離れることは許されず、また、別の窯の集落に移ることも無かった。
そのため、外から入ってくる人間に対しても厳しい審査があった。

そんな環境の中で、異国からの職人を新たに集落に加えるとは…。

「この文によると、藩が取引している商団の口利きからの紹介とあります。
私に今後の世話を頼むと。早くて今日、明日には着くから、とも」

千代は困惑した面持ちで、文に何度も目を通した。

…窯の代表の一人とはいえ、なぜ、私を名指しで後見人にするのかしら?
同じ国から来た職人は他にも沢山いるのに。

千代の考えを見透かしたように、仲間達が口ぐちに物言いを始めた。

「何も忙しい千代さんを世話役に命じることは無いのにな」

「同じ国の出身ってだけにしては、なんだか上の人も気をつかってるように感じるが」

「どういう経歴の持ち主なんだろうね。もしかしたら、向こうの国の『将軍様』付の職人だったとか」

「それは、千代さんのような?」

その意見に、皆がハッとなって千代の方に顔を向けた。

千代がこの国に連れて来られた経緯を、集落のほとんどの者は知ってはいたが、
改めて口にすることは暗黙の了解で禁忌とされていた。

口に出した者はしまった、という青ざめた顔で千代の様子を窺っていたが、
千代は別段気にしてはいないようだった。

「とにかく、その人が来たらせいいっぱい歓迎してあげましょう。
きっと遠く国を離れて、心細い思いをしているかもしれないから」

千代の言葉に、皆、あわてて頷きあった。

「そ、そうだな。仕事を早く終わらせて、宴の準備を進めておくか」

「酒はあったかな…」

そう言いながら、めいめい自分の持ち場にあたふたと帰っていく様子を千代は微笑ましい様子で見ていた。

この国の職人と、かの国から来る職人との間で摩擦や衝突が起こることは日常茶飯事だった。文化の違いだけでなく、技術の面に置いてもぶつかることは仕方のないことだった。

だからこそ、長い時間がかかったが、
この窯の集落の職人達がここまで連帯感を持つようになったことは、千代にとって喜ばしいことだった。


ただ、ひたすらに、良い器を作ること。
そして、その環境を作ること。

そんな風に過ぎた日々。

「一体、今度はどんな人が来るのかしら?」

千代は、故郷を懐かしみながら、
新しく出来た器を手に取ると、愛おしげにそっと撫でた。



それから。

集落に新しい住人が現れたのは、その日の夕方のことだった。

商人と思われる男数人と、上級役人の男が二人。
皆上質の着物を着ていた。

そして、農夫のような着物を着、笠をかぶった中年の男が一人。

集落では明らかに目立つ集団に、職人達はそれぞれ作業の手を止めて、
その動向を見守った。

男たちは、集落に入ると、職人達の好奇の眼差しを受けながら、
まっすぐに中央を目指して歩いてきた。

「千代殿はどこにいる?誰かここに呼んでこい」

役人の言葉に、作業人の一人があわてて、小屋で土を検品していた千代を呼びに行った。

「はい。わたくしが千代ですが」

千代は、土で汚れた両手を腰に巻いた布にぬぐいながら小屋から出てきた。

役人の一人は、集落にも時々顔を出す千代のよく知る者だった。

「文は受け取っているか?」

「はい。確かに、拝読いたしました」

「では、話は分かるな?ここにいる者がこの集落にこれから住む男だ。
藩主様もお認めになった腕の立つ職人ということだ。まだこの国に来たばかりだから、
何かと分からないことも多い。いろいろ手を貸してやれとの御命令だ」

「はい」

千代は頭を下げると、役人の横にいる笠をかぶった男に目をやった。
そして、その顔をじっと見たあと、信じられないように瞬きをした。

…似ている…。

確かにどこかで見た面影だった。
それでも、自分の中で覚えている人は、こんな場所にいるはずが無かった。

そう思いながらも、やや混乱した面持ちで、男を凝視したまま千代は突っ立っていた。

男も千代の方をじっと見つめていた.

笠の影の下、その表情は硬く、作ったまま長い年月放置された陶器のように頑なに見えた。

精悍ながらも疲弊したような面持ちが、人生の辛酸を舐めた男の生き様を彷彿とさせた。

…ただの職人じゃない。
この人は、今までただならぬ道を歩いてきた人だ。

そう感じた千代は、それでも男から目を離せずにいた。



(「永遠の器」2話に続く)



予告通り。
「火の女神ジョンイ」の突発二次小説を更新しました。
短編のつもりが、ちょっと続きの中編です。
でも、「キング」と違って、今度こそこれっきりの予定です。

みつばの妄想した「火の女神ジョンイ」のその後。
倭国に連れていかれたジョンと、残され、王となった光海君は…?な
お話です。

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