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みつばの「検事プリンセス」二次小説。
書き下ろし短編。

---------
Halloween Night(前編)
---------


「来週末のデートで、あなたとやりたい事があるのよ」

PCの向こう画面にリアルタイムで映っているヘリの表情を見るまでも無い。

ウキウキした声で、テンションが上がっている様子が伝わってくる。

普段なら、そんな彼女を微笑ましく思いながら応対するイヌだったのだが。

「却下」

素っ気なく答えたイヌに、ヘリが唇を尖らせた。

「まだ何も言ってない」

「1ヶ月前から、何度も聞いた案件だろ?」

「じゃあ、話は早いわね」

「ああ、早いな。棄却するよ」

「ちょっと待ってよ。検討の余地もないの?」

「無い」

イヌが肩をすくめた。

「僕は、ハロウィンの仮装パレードには参加しない」

キッパリとした口調で言い切ったイヌに、モニターの向こうのヘリが益々むくれた顔をした。

「あなたは仮装しなくてもいいのよ。私をエスコートして歩くだけでも駄目なの?」

…仮装云々より、イベントそのものに関心が無いんだが。

イヌは小さく溜め息を漏らした。

ハロウィンの日のある週末。
市内の大通りを仮装した人々が、パレードをする。というイベントがあった。

イヌの子供の頃からあった行事だったが、人気が高まり年々参加者も増えているという。

ヘリは、今年、このイベント参加に意欲的で、自前の仮装衣装を手作りしていた。

そんなヘリとイヌとのハロウィンに対する意気込みの違いは、秋の昼夜の温度差より大きいようだった。

「昼のパレードに友達と行くんじゃなかったか?僕のエスコートは必要無いだろ?」

「あなたとは夜のパレードに参加したいのよ。…って聞いてるの?イヌ。あ、今下向いてた。もう。仕事しながら話すなんてひどい」

「仕事はしてない。スケジュールを確認したんだよ。やっぱり、その日は午後からクライアントとの打ち合わせが入ってるな」

「この前予定を聞いた時は、夜から空いてるって言ってた」

「空けてあるとは言ったけど、打ち合わせが何時に終わるか分からないよ。18時からのパレードに間に合わないかもしれない。悪いが1人で参加してくれ」

悪いが、と言いながら、しれっとした態度のイヌに、ヘリが拗ねた素振りを見せた。

「仮装の衣装、昼と夜と違う物を用意してるの」

「ふーん。パレードの後で見せてもらうよ」

尚も関心の薄いイヌに、ヘリが挑むような目つきになった。

「どっちも、スッゴくセクシーな衣装に仕上げたの。もしかしたら本物の狼男から声をかけられちゃうかも」

「……」

ヘリが、イヌの気を引くようにわざと言っている事は分かっていたが、あながち、冗談でも無いかもしれない。

普通に着飾っても、男に声をかけられる容姿のヘリの事だ。

百鬼夜行のような怪しい行列の中で、ドンチャン騒ぎに紛れてヘリにちょっかいをかける輩も現れるかもしれない。

そんな危惧で、夜のパレードに参加するな、とも、セクシー過ぎる仮装はするな、とヘリに言っても無駄だろう。

「…わかった」

溜め息をつき、イヌが渋々の体で言った。

「仕事が終わり次第、合流しよう」

「ええ!じゃあ、間に合ったらパレードのスタート地点、NLスタジオの金の時計台前で待ち合わせね」

途端に、ゲンキンにはしゃいで約束をとりつけるヘリに、イヌは不覚にも釣られて笑みを浮かべていた。

そのイヌの顔を見て安心したのか、いつもは通信画面を切る時に寂しげなヘリが、就寝の挨拶をすると、あっさりとモニター画面から消えた。

ヘリの姿が無くなったPCモニターの電源を落としたイヌは、再び軽い溜め息をつくとデスクの椅子の後ろに背中をもたれた。

無邪気な恋人を増長させるつもりは無かったが、どうしてもいつも甘くなってしまう。

飴とムチを使って、ヘリのわがままを引き締めなくては、と思っても、逆に飴(ヘリの笑顔)と、ムチ(ヘリの悲しそうな顔)を向けられると、結局折れてしまうのはイヌの方だった。

ハロウィンも仮装パーティーも、アメリカにいた時に何度も経験したが、特に心惹かれる物では無かった。

…ヘリにこんな風に強引に誘われなければ、見物だけでよしとする所なのだが…。

そんな事を考えながら、明日の仕事の準備をしていたイヌは、ふと何かを思い出して手を止めた。

『イヌ、今年はハロウィンの仮装パレードに一緒に参加してみないか?』

脳裏に浮かんだのは、あの日の父の声だった。

昔…まだ、父が生きていたころ。
イヌが小学校5年生のハロウィンの月。

仕事から帰った父にそう持ちかけられた時の子供のイヌも、今と同じように全く乗る気の無い返事をしていた。

「毎年仮装パレードは見に行くだけだったのに、どうして今年はそんな事言うの?」

「パレードに父さんの会社の社員で参加する事になったんだよ。家族が一緒でもいい、というから、お前も行くかと思って」

「母さんも行くつもりよ」

イヌの母が横から言った。

「母さんも?」

「ええ。楽しそうじゃない。一度参加してみたかったのよ。みんなでお揃いの衣装を着るのはどう?何かのキャラクターの仮装とか」

「いいね。おとぎ話とか、童話の世界の住人になるのも面白そうだな」

盛り上がる両親を尻目に、イヌはしらけたような苦笑を浮かべていた。

「僕は行かない」

「どうして?イヌ」

「だって、父さんの会社の宣伝みたいなものなんでしょ?だしに使われるのは嫌だ」

「そうだが、衣装に会社名をつけて歩くわけじゃないぞ。それにパレードにはイヌと同じ年頃の社長の娘さんも参加するらしい」

「お嬢さんは、どんな仮装をなさるのかしら?」

「社長の話だと、今年流行ったアニメ映画の中に出てくる雪の王女のドレスを着られるらしいよ」

「まぁ、素敵。きっと凄く可愛いでしょうね。イヌも、王子様の仮装をしてお嬢さんと一緒に歩いたらどう?」

そう言って目を輝かせている母を見て、イヌは…

…そんな格好は絶対しない。

と、心の中でウンザリと思った。

「僕は、仮装にも社長の娘にも興味無いよ」

一番の本音は、万一にでも、パレードを見にきている小学校の同級生達に目撃されて、からかわれたく無かった。

「特別な仮装はしなくていい。実は、イヌがそう言うと思って、用意した物があるんだ」

イヌの父はそう言うと、仕事鞄から、買ったばかりらしい新品のハンカチを取り出した。

黒地の布には、コウモリとカボチャのイラストが総柄で刺繍されていた。

イラストの柄もシックで可愛すぎず、大人の男性が使用してもおかしくないデザインの良質の物。

「あら、素敵だわ」

冷めた目で、父の手の物を見つめるイヌと対照的に、イヌの母は、ハンカチが気にいったようだった。

「デパートのハロウィン関連売り場で見つけて、つい一目惚れして買ってしまったよ。ほら、大判だからバンダナとしても使えるし、こんな風にスカーフにも出来る。ちょっとしたアクセントでいい感じだろう?」

「いい感じよ。あなた。ほら、イヌ、ちょっとつけてみましょうよ」

又二人で勝手に盛り上がる両親前に、イヌは、差し出されたハンカチをやんわりと押しやった。

「いらない」

「そうなの?すごく可愛いのに」

…その『可愛い』なんてものになりたくない。

イヌはそんな気持ちで首をふった。

「僕は留守番してる。テストが近いから勉強したいんだ。今度のテストで、ジュンシクよりいい点取るって決めてるから」

嘘では無かったが、どんな言い訳よりも、説得力のあるものを選んだつもりのイヌだった。

「じゃあ、仕方無いな」

イヌの両親は、ようやく納得したようだったが、少しがっかりした顔を見合わせていた。

「今年は、私達だけで参加しよう」

「来年のハロウィンには、イヌも一緒に行きましょうね」

そんな事を話していた、あの日…。


…母の言っていた“来年”は無かった。


イヌはスケジュール帳のカレンダー、“10月31日”の日付に目を落としていた。

翌年のハロウィンには、イヌの父も母も、この世にはいなかった。

父は、次の年、イヌが小学校6年の春に亡くなり、イヌと渡米した母は、ハロウィンを迎える前に亡くなっていた。


あれから17年という月日がたって…

2012年のハロウィンイベントのパレードの日になった。

…結局、あの日、パレードに出かけていった父と母はどんな仮装をしていたんだったかな?


夕暮れ時。ハロウィン仕様に飾り付けられ、いつもと装いを変えている薄闇色の繁華街。

その中を、クライアントとの打ち合わせが終わり、ヘリとの待ち合わせ場所に向かっていたイヌの横を仮装している人々がすれ違っていく。

そんな人達を横目で見ながら、イヌはぼんやりと過去を思い出していた。

イヌの父が、イヌに買っていたハロウィン模様のハンカチも、あの日以来見ていなかった。


『行ってくるわね。イヌ』

部屋でテスト勉強をしていたイヌの背中に、父とハロウィンパレードに行く母の声がかかったが、勉強に集中していたイヌは『うん』と、生返事を返していた。


両親との会話やハンカチの柄はしっかり覚えているのに…。


『どんな仮装衣装かって?それは内緒よ♪会うまで楽しみにしててね。イヌ』

昔の回想から、今度は先日のヘリの会話が蘇った。


パレード参加はともかく、ヘリがどんな仮装をして現れるのかは、確かに楽しみではあった。
『セクシーに仕上げたのよ』

…少々心配な部分もあったが…。

はやる気持ちで、

ヘリとの待ち合わせ場所まで近道をしようと、イヌが細い裏通りに入って、しばらく歩いたところで、ふとイヌは脇道に意識を向けた。

人通りの少ない道の建物の影で、数人の怪しい人影が蠢いていた。

みな、ハロウィンの仮装のような格好をしていた。


声高な会話で、酒に酔っている者もいるような事はわかった。
…盛り上がっているな。


仲間うちでイベントを楽しんでいるのだろう。

最初は、そう思いチラリと目視して通りすぎようとしたイヌだったが、聞こえてきた会話に不穏な空気を感じとって足を止めて振り返った。


「なんだ。これだけかよ」

「今日は持ち合わせが少ないんだ」

怯えたような男の声。

「金は全部出したから、もう勘弁してくれよ」

「待てよ。携帯電話もよこせ」
「いやだ」

「おいおい。その頭から流してる血の演出を本物にしたいか?」

座りこんだ一人の男を数人が取り囲んでいる。

どうやら、仲間で遊んでいるわけでも、ハロウィンイベントを楽しんでいるわけでも無いようだった。

少なくとも一人は。

…ハロウィンの夜に紛れて、妖怪よりたちの悪い奴が出たな。

イヌは小さく溜め息をつくと、トラブルの方角に足を向け歩いていった。



(後編に続く)



ハロウィンイベント話。
携帯電話更新。
書き下ろしですが、久しぶりの本編イヌ×ヘリ。

近況はまだ書けませんが、リアル更新で、みつばは生きてますって報告もかねてアップしました。
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「検事プリンセス」OST(韓国盤)のジャケットについて。


このブログの左帯の「おすすめ♪」でも紹介してますが、
これですね↓






「検事プリンセス」は基本、ラブコメなので、
ドラマのDVDジャケットは、日本盤も韓国盤も明るい感じに仕上がってますが、
CD(OST)ジャケットもそうですよね。

日本盤は、DVDもCDもイヌとヘリの2ショット画像って所で、
もう恋愛の部分が見えてたりしますが(笑)

でも、なんだか不思議じゃないですか?このジャケット。

一体どこが?と思われるかもしれませんが、

韓国盤CDのジャケットの画像って、いったい何をイメージして、
こんな写真にしたのかしらん?


ドラマの二人の関係とか、確かにそんなところを表しているようにも見えますが、
それにしても、おかしい。

場面を想像すると、

検察のヘリのオフィスにきたイヌが検事のヘリにびっくり!とか、

弁護士のイヌが自分のオフィスに戻ってきたら、
デスクに派手な格好をしたヘリが座っていて、心底びっくりした~…みたいな場面。

もちろん、ドラマ中にはありません。

ヘリの突拍子もない行動や性格に、翻弄される男、ソ弁護士。
みたいな感じはありますが、「検事プリンセス」というイメージではありません。

主人公のヘリの職業を意識するなら、検事のオフィスのはず。
でも、ここ、検察庁ってかんじじゃないですよね。

ドラマを見て無い人で、さらに、役者さんも知らない人は、
このジャケット見ても内容が想像できないと思う。

みつばは、このCDジャケットの撮影風景の動画を見たことがあるのですが、
かなり時間をかけてカットも何枚も、撮影されてます。
ヘリ役さんの衣装も他のものに変えてたりもしてます。


どんなシーンにもちゃんと物語があるはず。

OSTジャケットになるくらいだから、このシーンにも意味があったはずなんですよ。

もしかすると、検事プリンセスか、役者さんのインタビュー記事とかに
過去に答えがあったのかもしれませんが、みつばは知らないので、勝手に想像しました。


これは、やはりイヌとヘリのドラマ後…未来の話なんじゃないかな?


見たままで、やはり、イヌの働く事務所のオフィスで、
自分のデスクに座っているヘリに気付き驚くイヌ。

でも、このオフィスもデスクもドラマ中のイヌの働く事務所では無いですよね。
「ハヌル」でも、1年後にやとわれた事務所でも無い。

じゃあ、どこか?

それでですね…、ちょっと結びつけちゃいますが、

みつばのたまて箱の検事プリンセスの二次小説では、じつは現段階で、
一番未来の話は、「温泉へいこう」なんですけど、

(…これ、更新したの2年くらい前でしたっけ?←聞いてどうする?(汗))

この時、寄せられた拍手コメントとか読むと、
薄々気づいた読者さん達もいらっしゃったみたいですが、
今更新中の「聖夜の祈り」付近のイヌとヘリと、少々状況が変わっているんですよ。

私も未来の話のプロットをもちろん踏まえ、
その辺りをほのめかして書いたので、
感のいい読者さんは気づいた様子。

でも、話の中でたぶんはっきり分かるのは、

・まだ恋人関係であり、結婚していない。
・二人で旅行中。子連れではない。
・いろいろあったっぽいけど、ラブラブなこと。
・イヌの仕事が多忙らしいこと…。


そんな未来で、CDジャケットから浮かんだ妄想シーンの話も、
今後の二次小説のプロット(脚本、あらすじ)にあったりします。

・・・が、その「温泉へいこう」の前にも、
少なくとも「聖夜の祈り」から「夢桜」までにもいっぱいプロットがあって、
「夢桜」から「温泉へいこう」の間にもいろいろ話があるんだけど・・・(汗)。

「検事プリンセス」の二次小説完結って、
みつばの、死ぬまでにしたい33のリストの上位の1つですが、

いつか、このCDジャケットの妄想物語も更新出来ますようにーっ。
↑ここまで来ると、なんだか、もう祈りの段階にはいってるな。(苦笑)


イヌ×ヘリ好きの方は、韓国盤OSTジャケット見て、
どんなイヌ×ヘリを想像しますか?♪

日本盤OSTのジャケットは、前にもレビュー書いたけど、
もう完全に「弁護士プリンス」です(笑)



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「検事プリンセス」のソ・イヌ役、
パク・シフさん出演(キム・スンユ役)の韓国ドラマ「王女の男」の二次小説です。

「王女の男」最終話22話、23話の、スンユとセリョンが、
夫婦の契りを交わした夜のシーンから。

ノーカット版も、小説も、録画してあるものも、全部は(今でもまだ)見て無いのですが、
みつばが、勝手に妄想したスンユとセリョンの話です。

ラストのネタバレがあるので、未視聴の方はご注意ください。

このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。

それでも、良いという方のみ、お読みくださいね。



契りの夜



…私の妻になってくれるか?

…私の夫になってください。

そう言って、玉の指輪を交換した後、
スンユとセリョンは、再び固く抱き合って、口づけを交わした。


乗馬での遠出の最中、驟雨から逃れ着いた、空家の中。

それは二人だけの婚姻の儀式だった。

約束は無くとも、どこまでも共にいるつもりだった。

自分の父の命を狙っているスンユの側にいて、
その後何があろうともついていくつもりだったセリョン。

セリョンを連れていることで、より危険にさらされたとしても、
どこまでも側に置いておくつもりだったスンユ。

しかし、セリョンがスヤンの娘であることが周囲に知れてしまった。

キム・ジョンソの息子という立場のスンユといえど、
敵であるスヤンの娘を側に置いている事で不信感を抱く者も多いだろう。

スンユが周囲の反対を押し切って、自分を側に置けば、
スンユの重荷になってしまう。

これから先、自分の父の勢力と、
さらに激しい戦闘の中に身を置くことになるスンユに、
「私は都に残ります」と、
セリョンは、身が引き裂かれるような想いで、スンユに伝えた。

「待っていますから。…どうか、私を忘れないでください」

これが今生の別れでは無いように。
先生が、心を痛めないように。

気丈にふるまって、スンユの目を見て言うつもりだった。

しかし、決意とは裏腹に、セリョンは、
血のような涙を流して震えていた。

今、スンユの顔を見たら、この決意がにぶってしまう。
そんな思いで、セリョンは、涙で濡れた顔をふせていた。

雨に濡れた寒さよりも、この過酷な未来を
自ら選択した事で、心も身体も冷え込むような辛さに
セリョンは必死で耐えていた。

そんなセリョンの気持ちが痛いほど伝わったスンユも又、
断腸の思いで、セリョンを見つめていた。

「…必ず迎えに来る」

スンユは屈みこむと、
小さく震えているセリョンの背中を後ろから抱きしめた。

…かならず迎えに来るから待っていて欲しいと。
本来なら、自分が先に伝えなくてはいけなかったのに。

しかし、今スンユ側にいる己の立場をわきまえ、
自ら身を引くけなげなセリョンの姿に、スンユは、申し訳なさ以上の
感情を高ぶらせていた。

自分より一回り近くも年下の、
一見、庇護を必要とするようなか弱い娘なのに…。


スンユは、そっとセリョンの肩にかけていた衣に手をかけた。

露わになったセリョンの背中の素肌に目を落したスンユは、
そこに、自分をかばった時に出来た矢傷を見つけた。

セリョンの美しい肌に残る痛々しいまでの痕。

スンユには、その痕からもセリョンが血を流しているように見えた。

己を狙って放たれた矢を、自らの体で受け止めた時のセリョンの姿を、
スンユは今も鮮明に覚えていた。

細く小さな体で、精いっぱいスンユを守ろうとしたセリョン。

その内側の強さと勇気に、自分は今までどれほど癒され、
励まされてきたのだろう。

きっと、今も、この体の奥に、痛みをいっぱいにして耐えているのだろう。
自分を守るために。

…そなたは…。

湧き上がるセリョンへの強い想いに突き動かされるように、
スンユは、セリョンの背の傷跡に、口づけし、涙した。

別離の辛さや悲しさ。
自分達の運命の過酷さ。

セリョンに募る愛しさと、感謝。

すべての混沌とした想いをこめて、
スンユは、セリョンの傷跡に唇をあてた。

「生涯、私達はひとつです」

体は離れていても、心はずっとおそばにおります。

…想いと心は、ずっと先生のおそばにいます。

はめられた指輪の片割れをスンユの指に入れたセリョンは、
はっきりとした意志を持って、スンユの顔を見据えた。

そのけなげな強さを秘めたセリョンの瞳に、スンユは応えるように、
セリョンの体を引き寄せ、抱きしめた。

…体は離れても、永遠に一緒だ。

こうして、再び、口づけを交わし、抱き合って。
スンユとセリョンは、お互いに宿る同じ想いを確認し合った。


それから・・・

スンユは、ゆっくりとセリョンの体を下に横たえさせた。

傷痕を気遣い、セリョンの背中をそっと腕で支えながら、
スンユは、セリョンの横顔に頬を寄せて、抱きしめた。

「…寒くはないか?」

聞くまでも無いことをスンユは口にした。

寒くないはずがない。


雨に濡れ、気温も落ちた夜。火を炊いたとはいえ、
家の中に暖をとる為の、厚い布地や衣服は見当たらなかった。

この家に住んでいた者たちは、迫りくる戦の気配に、
あらかたの荷物を持ってどこかに逃れていってしまったのだろう。

それでも、

触れ合っているセリョンの頬も剥き出しの肩も、
濡れたチマの中の身体も心もすべて、

己の体の熱で暖めるように、スンユはセリョンの体を抱き包んでいた。

セリョンが小さく首を横にふった。

「もう、寒くはありません。こうして先生が側にいてくれるから…」

私達は一つなのだから。

耳元で聞こえるセリョンの言葉を噛みしめるように、
スンユは、瞳を閉じて、セリョンの体をさらに強く抱いた。


スンユの手が、セリョンのチマの裾をそっとまくり上げた。

そして、外気にさらされたセリョンの素足を手の平で摩りあげながら、
セリョンに深く口づけていった。

その後のスンユの行動を悟ったセリョンは、
おずおずと、両足をわずかに広げるとスンユの体を迎えた。

外からは、まだ雨の音が聞こえている。

それ以外、

スンユとセリョンの微かに荒くなった吐息だけが、
静かな家の中に響いた。

体の動きに合わせて、少し苦しげに顔を歪ませているセリョンの
頬を、スンユは優しく手で撫でた。

「…辛いか?」

背中の傷だけでなく、
セリョンの初体験を気遣い、動きを止めたスンユに、
セリョンは、首をふって微笑んで見せた。

そして、両手をスンユの首にまわすと、
ぐっと、体を密着させるようにしがみついた。

「辛いことなどありません。
これで、私達は、夫婦なのですから」

触れ合って、気付いた。

寒いだろう、と、気遣ってくれていたスンユの肌の方が、
セリョンより冷たく、冷え切っていた。

雨に濡れ、暖をとるための物を探していたスンユの方も
寒かったはずなのに。

セリョンの体を抱きながらも、
常に、セリョンの体温を上げるように、四肢で愛撫するスンユ。

その想いが、嬉しくて、切なくて、温かくて、

セリョンは、破瓜の痛みよりも、
スンユへの愛おしさで、涙していた。

そして、心だけでなく、セリョンの体で、
甘い快楽も確実に感じているようなスンユの表情に、
セリョンは密かに体中で歓喜していた。

そんなスンユに自らの体をささげるように、
セリョンは、スンユの頭をかき抱いていた。

…本当なら。

止められない想いと肉体をセリョンにぶつけながら、スンユは思った。

…シン・ミョンとの婚礼からさらった時に着ていたような
美しい結婚衣装とカンザシを身につけて、

こんな粗末な家ではなく、清潔な広い部屋で、
冷たくかたい土間の藁の上でなく、暖かでやわらかな褥で、

セリョンは、誰よりも幸せな花嫁になれたかもしれない。


たとえ、王女ではなくても、
良家の娘でなくても、
少なくとも、こんな風に婚姻を結ぶことなど無かっただろう。

家族に愛され、ずっと何不自由なく、育てられてきただろうに…。

そんな思いで、

「…後悔してないか?」

セリョンの体を抱く行為を続けながら、言うことではないと分かっていて、
それでも、スンユは聞かずにはおられなかった。

「私のせいで、こんなことになって後悔は無いか?」

セリョンは又、すぐに首を横にふった。

「私は、先生と夫婦の契りを交わすことが出来て嬉しいです」

スンユの言外の問いかけも、セリョンには聞こえていた。

この指輪と、スンユとの先ほどの誓いと約束。

そして、こうして結ばれた体。

その記憶があれば、
この先、私は、先生と離れても、ずっと信じて待っていけるから。

「他には何もいりません。望みはただ一つ…」

セリョンが言った。

私の体も心も全部差し上げますから…。
だから…、

「私を忘れないでください。先生」

「…忘れるものか」


約束する。

そなたへの想いも、今、この瞬間の記憶も。

・・・もし、迎えに来ることが出来なくなっても、忘れたりなどしない。
そなたは、この世で唯一の私の妻だ。


「愛している」

スンユがセリョンの耳に囁いた。

「私もです。私も、先生を愛しています」


小さな声でも、十分に届く距離で、
二人は想いを伝え合い、再び、互いの身体を引き寄せあった。

―――私たちは一つです。


二人の行く末さえ見えない
深い闇夜の中で、


人知れず、結んだ愛の契りの証を、さらに深く刻み付けるように、
その後も、スンユとセリョンは、体と想いを強く強く、重ね合っていったのだった。


(終わり)




「王女の男」22、23話の、二人の契りのシーンを二次創作しました。
この話のイメージイラストはこちら

二人の初夜シーンを、みつばにしては(?)軽いタッチで書きましたが、
ドラマ自体、この場面も設定も、まだシリアスなので、純愛重視で。

一区切りついたイヌ×ヘリ(検事プリンセス)の二次小説「初めての夜」みたいな感じには出来ませんでした。←キャラも時代も違うからね(汗)

動画以外、めちゃくちゃカットが多い地上波でしかドラマは見ていませんが、
「先生」のスンユより、セリョンの精神的な強さと勇気が強い印象でした。

時々、セリョンの方が年上に見えました。

そして、セリョンの一途さとけなげさ。

スンユが、セリョンの正体を知った後、素性だけでなく、
会うたびに、セリョンの内面もさらに深く知っていって、やはり愛さずにはいられなくなった気持ちの変化が、ドラマの回を追うごとに現れていたように思います。

…ちょっと、セリョンの演技が、年齢のわりに、
落ち着いているというか、冷たいというか、淡々としすぎている印象もあったのですが…ぼそぼそ。

そして、テレビ放映では、みつばが楽しみにしていた、
スンユがセリョンの肩に頭をコテンっと預けるシーンや、
セリョンの煤がついた顔の箇所を口づけしていった後の、口チューとか、
みつばの大好物の野外での焚火前、バックハグシーンが、丸っとカットされてました(涙)

あとは、「王女の男」。
スンユ役、パク・シフさん繋がりで「検事プリンセス」でも言えることなのですが、ドラマの脚本の中で、場面やセリフがリンクしている所が多い気がしました。

何気ない台詞や動作なのですが、
後の場面で同じことが繰り返され、意味のある部分。

たとえば、これもテレビ放送ではカットされてましたが、
妓生館で、慣れない仕事で疲れているセリョンの腕を、スンユが手で優しくもみほぐすシーン。
これは、ラスト24話の最後の方のシーンで、
杖をついて歩き、娘と家に戻ってきたスンユの腕を、セリョンが手で揉むシーンがあるんですよね。

「検事プリンセス」でも、ノーカット版だと、こんな脚本の仕掛けがいっぱいありましたけど。
「王女の男」でも、ノーカットを見ていないみつばも気づいた部分がかなりありました。

なので、23話の初夜にセリョンが言った「私を忘れないで」と、24話でひん死の重傷を負ったスンユが「生まれ変わっても、私を忘れないでくれ」もそうですが、

ラストの「後悔してませんか?」のセリョンの問いかけも、スンユが初夜で言っていたのでは?と…。そんな妄想から、この話を書きました。

ドラマでの二人だけの婚姻式。切ないけど、本当にいいシーンでした~。
そして、すごく辛い別れのはずなのに、翌朝、二人が結構晴れ晴れした表情で馬にのっているシーンを見て、ノーカットでもカットされていた二人の時間の間に、本当に心も身体も固く結ばれたんだなって事が想像できました。

「王女の男」最終話頃のみつばの妄想話は「愛惜慕情」で♪

キム・スンユてんてー(先生)、みつばに萌えをありがとう。
ソ・イヌの次に好きです!←やっぱりソビョン重病患者(笑)

みつばの「検事プリンセス」の二次小説シリーズはこちらから。
「王女の男」の検索でいらした方で関心があればどうぞ♪

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現在、更新がか~なり(汗)遅滞している「聖夜の祈り」の番外編の
二次小説「MISS YOU」の予告をイラストでアップ。


MISSYOUイラスト



「MISS YOU」あらすじ


父の死後、母と共にアメリカに渡ったイヌは、
そこで、母からジョン・リーという男性を紹介される。

そして、その数か月後、母が非業の死をとげ、
イヌは、ジョン・リーと再会するのだったが…。



ソ・イヌの実父が亡くなって、イヌが母と共に渡米してから、
養父に出会う16年前から。

イヌの母親が事故死して、養父の元に引き取られてからの生活の始まり。
アメリカでのイヌの日々。
そして、イヌが韓国で実父の無実を証明し、ヘリと別れ、
アメリカに戻ってからの、ドラマでは空白の時間の出来事と、その時のイヌの想い。

「聖夜の祈り」でイヌがヘリを養父に会わせた時の事や、その後日談など。

主に、養父との関係や生活を中心に描かれる
ソ・イヌの過去と現在の物語です。

「聖夜の祈り」では、書かれなかった部分も補足される番外編。

「聖夜の祈り」完結後、更新予定♪

・・・(更新期日未定)
↑2年前頃に更新しているつもりだった(汗)


そして、イラスト予告とうたいながら、
画像は、トーンデータ使用。


創作が停滞してるのは、ネタにつまっているわけでなく、
プロットは、二次小説最終話までほぼ出来ているけど、諸事情で書きあげる余裕が
今は無いだけなのよ(涙)、という、言い訳記事で、
今後の更新予定話を、ほんの少しお見せいたしました。

嘘じゃない証に、最終話までの検事プリンセスの
二次小説の全タイトルとあらすじを予告だしたい所なのだけど、
そうすると、さすがに、新鮮味が無くなるし、それらの小説自体の更新はいつになるんだよ?
って、余計、読者さんをやきもきさせそうですよね。…完結10年くらい?


予告詐欺にならないように、必ずいつかブログに戻ってきますから。
首を長くしてお待ちくださると嬉しいです。

…もし、いらっしゃったら、
3年くらい前からの「みつばのたまて箱」の読者の常連さんは、
ろくろっ首くらいになってますね。(笑)←笑いごとじゃない。


この記事は予約投稿になります。
今年9月から12月までの「みつばのたまて箱」の更新については、
こちらから。



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