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少し体力的に余裕が出たので、ネットを見ていたら、
偶然、ヘリちゃんらしき画像を発見。

ヘリではなく、ヘリ役のキム・ソヨンさんの最近の画像だったのですが、
これが、一見、ヘリに見えたんですよ。

それで、ついその画像の掲載されていた情報サイトの記事を見たら、
キム・ソヨンさんの出演ドラマの「ロマンスが必要3」の映像の1場面でした。

↓これ
(大きめ画像でご紹介)

ロマンスが必要 3 OST (tvN TVドラマ)(韓国盤)ロマンスが必要 3 OST (tvN TVドラマ)(韓国盤)
(2014/03/27)
Various Artists、イ・ヒョリ 他

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ね?ヘリっぽいでしょ?

読者さんにキム・ソヨンさんが「ロマンスが必要3」に出ているという話は教えて頂いていたのですが、これだったのね。ということで。まだ、新作なので、日本版のDVDは発売されてないみたい。

みつばは、「ロマンスが必要」は1も2も見て無いです。
1、2、3ともキャラクターや設定、ドラマは別物なんですよね。

でも、このキム・ソヨンさんの外見がですね。
みつばがドラマ後の将来妄想した、「検事プリンセス」のヘリ、そのまんまなんです。

少しウエーブのかかった茶色の髪の毛が長くなっている姿。

後ろに髪の毛を結んでいる姿なんて、ヘリちゃんです。

それで、つい、ロマンスが必要3の画像をいくつか見ちゃったのですが・・・

ラブシーン、キスシーンがいっぱい。

えーん。。。←なぜ泣く。

ドラマの相手役さんもかっこよくて素敵な方なんですけど、
画像だけだと、マ・ヘリに見えてしょうがない、みつば。

こういうのを、みつばの妄想の中では果てしなくイヌとしているヘリちゃんだけど、
リアルで、やっぱり見たい気持ちがあったから。

ただ、あらすじとかもチラっと読んだら、「ロマンスが必要3」
純粋に面白そう♪

日本で地上波放送にくるかは分かりませんが、見たくなりました♪

もちろん、余計な妄想とか抜きでも。


ショートカットや、黒髪ロングヘアのヘリ役キム・ソヨンさんも素敵ですが、
この髪型も、やっぱり素敵です。

みつばのたまて箱では、ドラマ2年後くらいのヘリちゃんの未来姿♪
でも、その時期の検事プリンセス二次小説はいつ更新出来るのだろう…はあ~・・・(苦笑)

(追伸)

検事プリンセス二次小説、「Rose day」への感想、コメントありがとうございます!
薔薇風呂セットは、ギフトでも市販でありますが、薔薇ベッドはね。
イヌとヘリのラブイチャ話を書いていると体調も良くなります♪ほんとに。
調子にのっていると、次の日、ほとんど寝込むことになりますが(汗)
先日、動画でイヌの歌(パク・シフさん)を聞きながら、創作してたら、うっかり夜更かしして、次の日、動けなくなった。おそるべしイヌの歌。←違う。

こんな体調なので、リアルではロマンチックな事も出来ませんが、
せめて、私も薔薇風呂に入ろうかな。・・・情緒を楽しむ前に、子供達に薔薇をくちゃくちゃにされそう(笑)

↓イヌがヘリにプレゼントした薔薇風呂って
こんな感じかな♪

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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「Rose day 」後編です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。


この話は、現在シリーズ話で更新中の「聖夜の祈り」より、
半年ほど後の5月14日「ローズ・デー」という恋人記念日のお話です。




Rose day (後編)



ヘリの部屋に入ったイヌは、置いていた段ボール箱の前に腰を落した。
そして、ヘリの方を振り返って聞いた。

「シャワーはもう浴びた?」

「シャワー?」

ヘリは、目をぱちくりさせた。

「いいえ、帰ってきたばかりで、まだだけど」

「じゃあ、バスルームを借りるから、君は少しここで待ってて。
のぞきに来るなよ」

そう言って、イヌは、段ボール箱を両手で抱え上げると、
スタスタと、ヘリの部屋のバスルームの方に歩いて行った。

「誰ものぞかないわよっ。…って、いったい何?
シャワーを借りに来ただけなの?それにどうして荷物まで一緒に持っていくのよ?
私にくれたものじゃなかったの?」

ヘリのボヤキのような呟きに、すでにバスルームに入ったらしいイヌの返答は無かった。

それでも、ヘリは、イヌの言葉に素直に従い、まずは、イヌからもらった一輪の薔薇の花を花瓶に生け、キッチンカウンターの上に置いた。
そして、その後、バスルームの方を気にしながら、モジモジと体をゆすりつつキッチンの椅子に座って、イヌの戻りを待っていた。

しばらくして、バスルームに通じる場所からイヌが顔を出し、ヘリを手招きした。

「もう、いいよ。こっちに来て」

イヌは衣服を着ていた。

ヘリは首をかしげながら、イヌのいる方にトコトコと進んだ。

ヘリがバスルームの脱衣所の所まで来ると、イヌがバスルームの電気をつけ、扉を開けた。

次の瞬間、
バスルームから、白い湯気と共に、濃厚で甘い薔薇の香りが広がり、ヘリを包み込んだ。

「ああっ」

ヘリは、思わず、あわせた両手を口元にあてた。

湯をはったバスタブの中に色とりどりの薔薇の花が浮かんでいる。
それも、湯水を隠すほど沢山。

ヘリは、脱衣所に置いてある開封された段ボールに目を落し、
ようやく合点がいったように言った。

「これって、この為の薔薇が入っていたのね」

「レトルトカレーでも入っていると思ったか?」

ヘリのしそうな行動を先読みしていたようなイヌの、からかうような言葉に
ヘリは、苦笑で応えた。

「もう。電話であんな事言ってたのに、前もって注文していてくれたのね」

イヌが頷いた。

「これなら、どの色の薔薇にしようか迷う手間が省ける。
それに、こうやって、愛でる薔薇もいいかと思ってね。
それとも、やっぱり花束の方が、良かった?」

「ううん。それも素敵だと思うけど、こういうのもすっごく素敵」

ヘリは、バスタブの前にしゃがみこむと、うっとりした表情で、
薔薇が浮かんだ湯の中に手をそっと入れた。

薔薇に触れながら、ヘリの仕草を満足そうな顔で見下ろしているイヌの顔に、
ヘリの胸がきゅん、と切なく痛んだ。

昨夜電話で駄々をこねていた事と、イヌの気持ちを疑った自分が恥ずかしく思えた。

「ごめんね。昨日は電話であんなこと言っちゃって」

ヘリは、素直に心の声を口にした。

「あなたと恋人記念日を一緒に祝いたかっただけなのに、薔薇の花のことばかりにこだわってて、私…」

もういいよ。と言う風に、イヌがヘリの唇に指をあてた。
薔薇の香りと共に、ヘリと同じ目線に腰を落したイヌの優しい眼差しがヘリを包み込んでいる。

「君から欲しかったのは謝罪じゃない」

「うん…」

ヘリは、イヌの目をまっすぐに見つめ返した。

「素敵なローズ・デーの贈り物をありがとう。イヌ。大好きよ」

そう言って、ヘリは、イヌの頬にチュッと軽いキスをした。
イヌがフッと笑った。

「今のがお礼か?」

「これは、さっきの薔薇の花のお礼よ。薔薇風呂のお返しは、入ってからにするわ」

「そうか。じゃあ、楽しんで」

イヌは立ち上がると、段ボール箱を抱えて、バスルームから去っていくようだった。
ヘリがあわてて声をかけた。

「ねえ、一緒にお風呂に入らないの?」

「部屋でシャワーを浴びたから、僕はいいよ」

「でも、私がお風呂から上がるまで部屋にいてくれるんでしょ?」

「いて欲しいのか?」

「恋人記念日だから、一緒に過ごしたいもの。
それに、イヌが帰っちゃったら、ローズ・デーのお返しがしたくても出来ないじゃない」

「お返しって、具体的に何をしてくれるんだ?」

「それは、私が、お風呂から上がってからのお楽しみよ」

もったいぶった口ぶりで、小悪魔的に微笑むヘリに、イヌもつられたような笑みを見せた。

元々、イヌも自室に戻る気は無かったようだった。

「慌てず、ゆっくり風呂に入ってくるんだぞ。この部屋で待ってるから」

「ローズ・デー」を共に祝おう。

薔薇の香りと、これから過ごすイヌとの甘い時間の予感に、
ヘリは、胸をときめかせて、クローゼットから着替えを出すと、バスルームに入った。

ヘリが湯船に入ると、色とりどりの薔薇たちが、
美しいヘリの身体をさらに美しく飾った。

時々、自分一人でも、香りつきの花びらを浮かべたり、薔薇の芳香の入浴剤を入れて、
風呂に入ったりしていたヘリだったが、マンションの風呂でここまで新鮮な薔薇の花をいれた事は無かった。

「いい気分」

ヘリは、陶酔した表情で、湯の中で目を閉じた。

…花はいらないって言ってたけど、私もイヌに薔薇風呂の花をプレゼントすれば良かったかしら。薔薇が沢山浮かんだ湯に入っているイヌ…。

ヘリは、イヌが薔薇風呂に入っている図を想像して、クスクスと一人笑いした。

そして、十分に薔薇風呂を満喫したヘリは、バスルームを後にし、
着替えて、基礎化粧で肌の手入れをした後、部屋の中にイヌの姿を探した。

イヌは、キッチンカウンターの椅子に座って、ファッション雑誌を眺めながら、ヘリを待っていた。

「イヌ、薔薇風呂、すっごく良かったわ。まだ湯をそのままにしてあるから、
あなたも入ってきたらどう?」

「僕はいいよ。君が楽しめたなら、それでいい」

「もしかして、薔薇の香りが嫌い?」

「うーん…嫌いじゃないけど、匂いがうつるほど強烈すぎるのは苦手だ。
それに、僕に言わせれば、薔薇は、少し自己主張が激しい気がする。
人を魅了する外見と香りをまとっているのに、他者を近づけないトゲを持ってる。
一体、どうしたいのか、分からないな」

「トゲを持っているのは、本当は繊細な自分を守っているためよ。
そして、それでも、そんな自分を愛してくれる人を待っているんだわ」

「それで…」

イヌは、話しながら、目の前に立った湯上りのヘリの姿を、
上から下まで、面白そうな顔で眺めていた。

「薔薇風呂に入った君は、すっかり薔薇の化身か?」

薔薇風呂から上がったヘリは、裾に繊細なレースが編み込まれている真紅のマキシワンピースを着ていた。

いつもは、美しい足を見せた、短めの丈の衣服を着ているヘリが、珍しかった。

しかし、フワリとしてやわらかな布地。
ゆったりとした部屋着のような服だったが、胸下の生地がギャザーになっていて、ふくよかなヘリの胸と、細いウエスト、スラリとした長い下肢が逆に強調されて、ヘリの抜群のスタイルを、引き立てている。

さらに、ヘリは、髪の毛を頭上で結いあげ、そこに薔薇の花を飾っていた。

「そうよ。薔薇の香りをまとって、今夜は、身も心も薔薇になっちゃったわ」

ヘリの姿を心の中では賞賛しているような、イヌの眼差しに、ヘリは得意げに言った。

「薔薇のプリンセスから、贈り物をしてくれた人間にお返しがあるのよ」

…なに?

イヌの興味深げな視線を浴びながら、冷蔵庫から1本の瓶を取り出した。

ヘリが今日、仕事帰りに買ったもの。
それを、ヘリは、「私からのローズ・デーの贈り物よ」と言ってイヌに差し出した。

「あなたは、薔薇の花はいらないって言ってたから。
これは、薔薇の香りがするお酒なの。1度飲んだ事があって、美味しかったと覚えていたから、あなたにもどうかと思って。…これも駄目?」

イヌは飲んだ事の無いものだったが、銘柄は目にした事はあった。
それなりに値もはる高級な酒。

「いや、嬉しいよ。ありがと」

ヘリから受け取った酒瓶をイヌが微笑んで掲げて見せた。

「せっかく冷えているんだ。今、一緒に飲もう」

「うん。あ、でも、待って」

ヘリが、慌てて、もう一度冷蔵庫の扉を開けた。

「んー…このお酒に合う美味しいつまみが全然ないわ」

困惑して固まっているヘリの後ろに立ったイヌが、同じように冷蔵庫の中を見て苦笑した。

「つまみどころか、夕食になりそうな食材も見当たらないな」

「最近、仕事が忙しかったから、料理している時間が無かったのよ」

決して、以前みたいに料理が出来ないから食材を置いてないわけじゃないのよ。
そう、イヌに言いわけするように、ボソボソとヘリが口ごもった。

「僕の部屋の冷蔵庫も今似たような状態だけどな」

ヘリの恥ずかしい思いを払しょくするようにイヌが言って、冷蔵庫を閉めた。

「インスタントラーメンも切らしちゃってて。今からスーパーで何か食べ物を買ってくるわ」

やっぱり、あの時レトルトカレーを買っておけば良かったかしら?と、ずれた事を考えながら、ヘリが、車のキーを探そうとするのを、イヌが手で制した。

「行かなくていいよ。今夜の食事は、もう確保してあるから大丈夫だ」

「確保って?」

ヘリが、キョトンとした顔で動きを止めた、ちょうどその時。
ピンポンとドアチャイムの音がした。

「デリバリーのお届け物です」

来るのが分かっていたようにイヌが、颯爽と玄関に出ると、
宅配員に代金を渡して、品物を受け取っていた。

「君の部屋に来る前に注文しておいた。たぶん、食事もまだだろうと思ってね。
君の好きな店のデリバリーだ。一緒に食べよう」

ヘリが感心したような顔で呻いた。

「さすが、ソ・イヌさん。ぬかりが無いわね」

「当然だ。つきあって1年くらいたつのに、君はまだソ・イヌの事を分かってないな」

「そうね。これから、何十回、何百回って、記念日を過ごせたら、理解できるようになるかも」

「じゃあ、そうしよう」

お互い、わざと澄ました顔で言った後、顔を見合すと、クスクスと笑い合った。

そして、デリバリーで注文した夕食の品をキッチンカウンターに、高級レストランのテーブルのセットのように並べ、二人のお気にいりのクリスタルグラスの中に、適度に冷えた、酒を注ぎこんだ。それから、薔薇を飾った花瓶を中心に据えて、二人は向かい合って、椅子に座った。

「では、ローズ・デーに」
「今日も恋人であることを祝って」

イヌとヘリは、微笑みあって、グラスを合わせると、同時に酒に口をつけた。

ふわりと仄かにする薔薇の香りが、強調しすぎない程度に鼻孔をくすぐり、
喉に広がるすっきりとした辛口の酒の味をひきたてていた。

「うまいな」

「ええ」

イヌの端的な賛辞にヘリが嬉しそうに同意した。

イヌが注文した料理も酒にぴったりと合っていた。

歓談しながら、ゆっくりと夕食を食べ終えた、ヘリとイヌは、
満足げに食後のお茶を飲んだ。

「今日、うちに泊まっていく?」

何の気負いもなく聞いたヘリに、イヌが「そうする」とさらりと答えた。

「まだ、ローズ・デーのイベントが残ってるからな」

ヘリが、失笑した。

「もう。分かってるけど、その言い方はあからさま過ぎない?」

「いや、もう1つ、薔薇風呂以外で、君に堪能して欲しいものがあるんだよ」

そう言って、空のカップをソーサーに戻したイヌが、やおら椅子から立ち上がった。
そして、キッチンの正面の壁の向こうに置かれたヘリのベッドの方に移動した。

「何?」

首をかしげながら、ついてきたヘリを待って、イヌがヘリのベッドカバーを剥いだ。

…!!

薔薇風呂を見た時以上に驚いたヘリは、今度は声も出せずに、目を丸くして突っ立ったままだった。

白いシーツが敷かれたヘリのベッド。

その上に、真紅の薔薇の花が、置いてあった。
それも、1本や2本では無い。
それこそ、100本以上はあるかと思われるような濃い真紅の薔薇が、
シーツを覆い隠すほど無数に散らばされていた。

ヘリが風呂に入っている間に、イヌが、まだこの為に箱の中に残していた薔薇で、
準備したものだった。

「どう?」

イヌの声かけで、ヘリはようやく我にかえって、「凄いわ」と呟くように言った。

「小説の中のシーンで、こういうのがあったのは読んだことあるけど、
こんなに薔薇があるベッドは、実際には初めて見たわ」

「こんなベッドで1度は寝てみたいって言っていただろう?」

ヘリは、驚いて、イヌの方を見やった。

確かに、イヌの前でそんなことを言ったこともあった。
でも、その時はイヌに軽く笑い飛ばされて、ヘリ自身も本気で憧れていた気持ちもあったが、ほとんど冗談で言ったようなものだった。

あんな戯言を覚えていて、そして本当に実行してくれるなんて。

「感動した?」

想いが如実に出るヘリの顔を満足そうに見つめながら、イヌが聞いた。

ヘリは、黙って、返答を行動に移した。

イヌは、ギュッと勢いよく自分の体に抱きついたヘリの身体を、両腕で優しく受け止めた。

「イヌ、あなたと恋人になれて良かった。…プレゼントをもらったから言ってるんじゃないのよ」

ヘリの言葉にイヌがくすっと笑った。

「僕も」

イヌがヘリを抱きしめ返す力を強めた。

「君が恋人で良かったと、今日も思ってる。プレゼントをもらったからじゃないぞ」

「イヌ…あなたは、いつも私の願いをかなえてくれた。
だから、このお願いも聞いてくれる?」

「どんな願いだ?」

「明日も明後日も…この先も思っていて」

ヘリがイヌの肩口に顔をうずめながら掠れた声で言った。

「例え、体が離れた所にあっても、毎日会えなくても、
薔薇が無い記念日でも、記念日に一緒にいられない時があっても、
私を恋人だと、ずっと思っていて欲しいの」

すっかり身に沁み込んだ薔薇の香りよりも、
こうして、抱き合っているイヌの香りに染まるまで、
いつまでも、離れたくない。

それが、無理なことだと分かっていても。


…ヘリ。

イヌは、ヘリへの溢れんばかりの想いに揺れる瞳を閉じて、
しがみついているヘリの頭に頬を摺り寄せた。

「ヘリ。君が、僕を恋人だと思っているかぎり、僕の心はいつも君のそばにいる。
記念日も。これから続く日々も、ずっと」

「イヌ…」

ヘリが顔を上げた。

ヘリの潤んだ瞳と、イヌの切なげな目がかち合った。

――― もう、これ以上は、言葉も約束もいらない。

ヘリとイヌは見つめあった。

そして、

部屋中にひろがった。薔薇の濃厚な香りに包まれて、
そっと同時に目を閉じると、
お互いの身体を引き寄せあい、唇を重ねた。

それから…。


薔薇に覆われたベッドの上で、
お互いを求めあう熱情のままに愛し合ったヘリとイヌは、
手に手をとって、一緒にバスルームに入った。

沸かしなおした湯の中で、
浮かんでいる薔薇の花とイヌの両腕に包まれたヘリ。

ヘリは、イヌの両足の間に割り込むような形で、風呂の中に座っていた。

マンションのバスルームの湯船は広めに設計されていたが、
長身の恋人達が、二人で一緒に入るには、やはり若干狭いようだった。

それでも、始終、笑みを溢して、ヘリとイヌは、
薔薇風呂の中で身を寄せ合って、じゃれ合った。

「やっぱり、あなたは、薔薇がとっても似合う男よ。イヌ」

「薔薇が似合う男って、それは、褒めてる?それとも、からかってるのか?」

「どっちもよ。来年のローズ・デーは私があなたに薔薇風呂をプレゼントするわ」

「薔薇風呂はいいよ。それより、君の方は、また、薔薇のベッドで眠りたいか?」

「んんー…正直言うとね」

ヘリが苦笑した。

「もう十分堪能したわ」

「それは、言葉を返せば、薔薇のベッドは想像していたものと違ったってことかな?」

「ううん。想像以上に素敵だったけど…」

風呂の熱い湯気と恥らいで頬を上気させたヘリが、うつむき加減で言った。

「その…最中は良かったけど、あのベッドでは熟睡できないわ。
素肌に花びらがカサカサあたって、気になっちゃうんだもの」

それに、ベッドの上にあった無数の薔薇の花は、二人の行為の激しさを象徴するように、
さらに乱れ散っていた。

あれを片づけるのは、ちょっと大変かも。

「ロマンチックな事って、現実にすると、結構骨折りなのね」

はあっとため息をついて言ったヘリにイヌが失笑した。

薔薇を買ったのも、用意したのも全部イヌだというのに。

贅沢な “釣った魚”の素直な感想に、「今ごろ気づいたのか」と、
朗らかに笑うと、ヘリの頭上に湯水を含めた薔薇を散らした。

「きゃあっ」

ヘリがごしごしと湯に濡れた顔を手で拭うと、
後ろのイヌにわざと恨めしそうな目を向けた。

だが、

恋人の、我儘も、可愛い悲鳴さえも、愛しい。

そんな目をして自分を見つめているイヌに、ヘリはすぐに口元を緩めた。

…恋人の、意地悪も、からかいさえも、愛しい。

薔薇の花言葉は、恋、そして愛。

「愛してる…」
…今日も明日も明後日も。

ヘリの囁きに、イヌが黙って、ヘリの顔に手をそえ、
己の方に引き寄せた。

恋人になって1年近くたったヘリとイヌの記念日。

――― ずっと、愛してる。

ローズ・デーの薔薇の花に誓うように、
濃密な甘い香りの風呂の中で、
二人は、再び、飽きることなく、幾度も、幾度も、口づけを重ねたのだった。


(終わり)


「キス・デー」から、1年近くたったイヌ×ヘリ。
体の関係が深くなっただけで、基本、全然かわってませんよね(笑)
あいかわらず、軽口叩き合いつつ、ラブラブでいちゃいちゃしている二人♪

でも、「聖夜の祈り」から、この「ローズ・デー」までの間に、
結構、シリアスな話も続くんだけどな。←いつ公開出来るのだろう(汗)

ところで、この話で大幅カットした二人の大人シーン(笑)
当然、おまけ話か、裏箱で更新予定♪←当然って。
その前に、「聖夜の祈り」の13話か、もう1つアップしておきたい短編もあるのですが…。

どれか、構成次第更新ということで。

追伸:ご訪問、拍手、拍手コメントありがとうございます!
1度でも拍手コメント、コメントを書いてくださった方のハンドルネームは、覚えてます。
一応履歴データにも入ってますが、ありがたくも膨大な量なので、内容まで確認するのは難しいのですが、匿名さん以外なら、あ、一度書いてくださった方だなってすぐに分かります♪稀に、似たようなハンドルネームの方もいらっしゃいますが。非公開コメントには、ブログ記事の中でも個々にお礼や返事を書けないので、申し訳ないですが、久しぶりに書いてくださった方がいても、又読みに来てくださったのね♪といつも嬉しく受け取ってます。


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「Rose day 」前編です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
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この話は、現在シリーズ話で更新中の「聖夜の祈り」より、
半年ほど後の5月14日「ローズ・デー」という恋人記念日のお話です。




Rose day (前編)


5月14日は、「ローズデー」

恋人同士が、相手に薔薇を贈りあう日と言われている。

…ちまたでは。

このイベントを、以前から、密かに楽しみにしていたはずのヘリだったが、
その日は、朝からとても不機嫌だった。

「やあ、マ検事。恋人から、もう薔薇の花束はもらったかい?」

職場の廊下で、そう、からかうように声をかけてきた先輩検事達を、
ジロリと恨みがましい目で一瞥したヘリは、無言で脇を通り過ぎていった。

「どうしたんだろう?マ検事、やけに不機嫌だったけど」

「どうしたのか考えなくても分かるよ。きっと彼氏と喧嘩でもしたんだ」

ヘリほど、現状が分かりやすく表に出る人間も珍しい。

さわらぬ神に祟りなし。

そう言うように、先輩検事達は、肩をすくめあうと、
本日、この案件に関しては、差し置いておくことに決めた。

しかし、そんな決定を知らない、呑気な後輩検事が、
皆が集まったランチの場で、ヘリに向かって、案件を差し戻した。

「マ先輩。彼氏さんから、薔薇の花をもらいました?」

…おい、やめておけ。

先輩検事達が、あわてて目配せする中で、
全く気付いていない、ヘリの可愛い後輩、キム検事があっけらかんと話を続けた。

「朝起きたら、枕元にサプライズの薔薇が置いてあったり~とか」

「…今朝はもらっていないわ」

うつむいて、ランチ定食の豆腐チゲの豆腐を箸で小さくつついて、
食べながら、ヘリは答えた。

「え~。じゃあ、仕事から帰ったらもらえるんですよ」

勝手に解釈しているキム検事が続けた。

「マ先輩の彼氏さんって、すっごく気が利く方に見えますもの。
ローズデーの薔薇も凄いでしょうね。きっと年の数とか、
そんなレベルじゃなくて、女子憧れの100本花束とか~。きゃあっ素敵!」

「…なんで、キム検事がはしゃいでいるんだ?関係ないだろ」

イ検事が呆れたように言った。

「だって、恋人達の記念日ですよ。ラブラブのカップルなら、
やって当たり前のイベントじゃないですか。
私は、今年も、誰からももらえそうもないので、マ先輩が羨ましくて仕方ないです」

「そんな風に無神経だと、ローズ・デーどころか、
来年もイエローデーでカレーを食べることになるぞ」

「…チェ先輩に言われたくありません」

「僕は、妻帯者だから、イエローデーは関係ないよ」

「イエローデーの話じゃなくて、無神経の話が関係あるんです」

「さっきから、何の話をしてるんだ?
薔薇色だとか、黄色だとか」

ナ部長が訝しげに聞いた。

「色の話じゃないですよ。部長。
恋人たちの記念日の話をしてるんです」

「5月14日は、恋人に薔薇を贈る日なんですよ。
ちなみに、恋人のいない人は、カレーを食べるイエローデー」

「ああ、そうだったな」

ようやく、何のことかわかったナ部長が自分のランチの禅の中に
目を落した。

「今日のランチは、カレーにすれば良かったな」

「いや~。まだ今日は何時間も残ってますから。
最後まで希望は捨てない方が良いですよ。部長も、キム検事も。マ検事も。なっ?」

「誰も希望を失ってない」

ナ部長とキム検事は、軽い笑いですませていたが、
ヘリは、歯に、豆腐チゲのネギが挟まったような笑みを浮かべていた。

元々、恋人がいなかった二人と一緒にされた事で、
複雑な心境にもなるが、事実、ヘリはまだ、イヌから薔薇の花をもらっていなかった。

それに、確かに、先日の夜までは、キム検事が想像したような、
ロマンチックなサプライズも期待していたヘリだった。

しかし…。


「薔薇の花はいらない」

昨夜、携帯電話から、そうはっきりと聞こえたイヌの言葉に、
ヘリは、一瞬耳を疑った。

イヌに「ローズ・デー」に、
何色の薔薇が欲しいか、電話で聞いた返答がそれだった。

「え?どうして?イヌは薔薇の花が嫌いなの?」

『いや、嫌いじゃないが、とくに欲しくないだけだ』

「でも、1本くらい部屋に飾ってもいいんじゃない?
イヌだったら、白い薔薇とか似合いそう」

…タキシード姿に、バラの花を持ったイヌ。
うん。とってもいいじゃない♪

なぜ、そこで、ヘリの妄想の中でイヌがタキシードを着ているのかは、
ともかく、イヌに是が非でも、薔薇を持たせたいヘリだった。

それでも、「遠慮するよ」と言うイヌに、ヘリが焦れた。

「どうして、そんな事言うの?明日が何の日か知らないの?」

『なんの日だったかな?』

「恍けないで。“ローズデー”。知ってるでしょ?」

『そういう日があるって事は知ってるよ』

「何をする日かってことも知ってるわよね?恋人に薔薇を贈る日よ」

『どうして、薔薇なんだろうな。ひまわりでも、マーガレットでも。
それこそ、フリージアでも良さそうに思えるが』

「そんなことは知らないけど、薔薇の花はロマンチックだからでしょ?
実は、あまり知られていないだけで、ひまわりデーとか、マーガレットデーもあるんじゃないかしら?」

『なるほど』

ヘリの適当な思いつきに、妙に納得したようなイヌが、話を終わりにしそうな事に気付き、
ヘリは、あわてて、軌道修正を図った。

「だからね。私はあなたに薔薇をあげたいの。
なのに、どうして受け取ってくれないの?」

『だから、さっきからいらないって言ってる』

頑ななイヌに、ヘリはだんだん腹が立ってきた。

イヌが、自分の意にそぐわないことを無理する男で無いことは知っていた。
だが、恋人が何を望んでいるか分かっているはずだ。
少しくらい譲渡して、こちらの願望をかなえてくれてもいいのに。

「私の気持ちがいらないって言うの?
それって、私のこと恋人だって思っていないってこと?」

『どうして、そうなるんだ?ただ、花はいらないって言ってるだけなのに。
分からない人だな。君は』

「分からないのは、どっちよ。
いいわ。そっちがその気なら、もうあなたに薔薇はあげないからっ。
後で、マ・ヘリさん、薔薇の花を下さいって泣きついても、知らないからねっ」

そうイヌに言い捨てたヘリは、そのまま通話をオフにして、携帯電話をベッド脇にほおり投げた。

…なんなのよ。ソ・イヌ。
きっと、意地悪しているんだわ。私がローズ・デーを祝いたがってるって知っていて、
わざとからかって、焦らしてるのね。
それとも、本気で、薔薇が欲しくなくて言ってるのかしら。
どっちにしても、ローズ・デーを一緒に祝いたいって気持ちは薄いわけよね。

ヘリとイヌが恋人としてつきあって、初めてのローズ・デー。

それまでも、恋人の記念日だと言われる日は、
なんだかんだ、一緒に過ごしてきたというのに。

…釣った魚に餌は与えないっていうけれど、イヌもそうなったのかしら?

でも、“あの”ユン先輩でさえ、交際期間の時に、チン先輩に薔薇を贈ったと言っていたわ。
要は、物じゃなくて、気持ちだって分かってはいるけど。

もう、つきあい初めのような新鮮さが薄れて、
わざわざ、恋人記念日を祝うのも面倒なのかもしれない。

新鮮さは無くなっても、ときめきは無くしたくない。
そう思うのは、女側だけなのだろうか?

定時過ぎに退庁し、徒歩でマンションの帰路についていたヘリは、
そんな事を考えて、ため息をもらしながら歩いていた。

そして、通りかかったディスカウントショップの店頭で、
レトルトカレーの特売の張り紙を見たヘリは、
「薔薇のかわりにあれを買って、イヌの部屋の前に届けようかしら?」
と、ふてくされた顔で呟いた。

しかし、実際に買い物することなく、ヘリは、その場を足早に通り過ぎた。

そして、しばらくして、通りかかった店の前で足を止めた。

店先で、少しの間、何か考えていたヘリだったが、
意を決したように、店内に入って行った。

やがて…。

バッグと手に荷物を持ったヘリが、マンションの自室に帰ってきた。
荷物の中身を冷蔵庫に入れたヘリは、インターフォンの管理画面で、伝言が入っていることに気付いた。

『管理人室です。マ・ヘリさんに荷物が届いています。冷蔵品だったのですが、宅配ボックスに入れられなかったので、こちらで預かっています。ご自宅にお戻りになられましたら、ご連絡下さい』

ヘリは、早速マンションの管理人室に連絡した。

受付に出た管理人は、「今、お部屋まで荷物をお持ちしますよ」と言った。

「荷物の送り主は誰ですか?」

ヘリの問いに、「えーっと」と管理人が荷物の札を見ている間が空いた。

「ソ・イヌ様です」

…イヌ!?イヌからってことは…!

ヘリは、とたんに、管理人の下の方にあるらしき荷物を、インターフォン画面からでも見る勢いで伸びあがった。

「もしかして、荷物って花束ですか?」

「いえ、違いますね。箱のお荷物です。伝票には、“生もの・壊れ物注意”とはありますが。
さほど重くは無いですが、台車を使ってお持ちしますね」

そう言って、管理人との通話が切れた。

…箱?生もの?一体なんなの?

ヘリは、腕を組んで、玄関近くでうろうろしながら、管理人の到着を待った。

やがて、ピンポンと、ドアチャイムが鳴り、宣告通り、
台車で四角い段ボールの荷物を運んできた管理人が現れた。

「こちらに置きますね」

そう言って、管理人は、ヘリの部屋の中の玄関前に、よっこらしょと、箱を置くと、
ヘリから受け取りの判子をもらって、去って行った。

管理人が去った後も、ヘリは、しばらく突っ立ったまま、箱を見下ろしていた。

伝票の送り主欄には、確かに、ソ・イヌの名前。
冷蔵の生もの…。

何かは分からなったが、ヘリの部屋の大きな冷蔵庫の中にでも
そのままでは入れられないほどの大きさの段ボール箱だった。

ヘリは、うーん…と唸った後、箱の前にしゃがみこんだ。

「冷蔵で、宅配ボックスで預かれないものって言うから、薔薇の花束かと思ったけど、
一体なんなのかしら?もしかして、チルドパックのカレーが入っていたりして」

その昔、イヌに支払う、オークションで競り落とした靴の代金を、
嫌味っぽく、段ボール箱いっぱいに細かい札束で、ヘリが店に持って行ったことがあった。
しかし、ヘリの行動を読んでいたイヌが、計算機を持っていて、あっさりと受け取ったのだが…。

「あの時みたいに、先制防御?こっちのすることを予想して、先に仕掛けてきたとか?
それとも、花をねだったあげく、電話を途中で切っちゃった事に呆れて、変わりのものを送ってきたとか?」

箱を見下ろして、ブツブツと独り言を言っていたヘリだったが、
ふと、伝票に書かれた、イヌの筆跡の伝言メモに気付いた。

『荷物を受け取ったら、開ける前に、即、送り主に要連絡』

「…分かったわよ」

ヘリは、頬を膨らませると、携帯電話を持って操作した。

すぐに、携帯電話から、今日も恋人であるはずの男の応答が聞こえた。

『届いた?』

呆れても、怒ってもいないような声色。
むしろ、機嫌のいい、イヌの声だった。

「届いたわ。一体これの中身は何?冷蔵って書いてあるから、このままほおっておいても良いものじゃないわよね?」

『僕が、行くまでは、そのままにしていても大丈夫だ。今部屋にいるから、すぐにそっちに行く』

そう言って、電話の通話が一方的に切れた。

「なんなの?」

ヘリは、切れた携帯電話を下ろして、ますますむくれた顔で、
玄関先を睨みながら、イヌの到着を待った。

ややあって、玄関チャイムが鳴った。

「もう、今度は、一体何の余興なのよ?」

イヌだと分かって、確認する前に、勢いよくドアを開けながら、言ったヘリは、
はたと動きを止めた。

目の前に、薔薇の花があった。

…え?

「“ローズ・デー”記念に」

そう言って、

目をぱちくりさせたヘリに、
立っていたイヌが、薔薇の花をさらに差し出した。

「あ、ありがと…」

動揺しながらも、とっさに礼を述べたヘリは、
イヌから薔薇を受け取った。

青い葉と茎、トゲもついた、新鮮で、かぐわしい香りを放っている、
艶やかで濃い真紅色をした花弁の美しい薔薇だった。

しかし…。

嬉しさの中にも、ほんの少し、複雑な心境が顔に現れていたヘリだった。

…1本?

丁寧にラッピングされ、リボンまで結ばれた薔薇だったが、
たった1本しかなかった。

今までの記念日の経験上、
いつもヘリを驚かせたイヌからのプレゼントと比較すると、
どこか物足りなさを感じてしまったヘリだった。

…いいえ。釣られた魚が今まで餌を与えられすぎて、
贅沢になっちゃっていたのね。

ヘリは、心の中で首を振ると、
薔薇を鼻に近づけて、その甘い香りを嗅いだ。

1本とはいえ、「ローズ・デー」にわざわざ、薔薇を持って来てくれた。
それも、乗る気ではない様子だったのに。
イヌは、気の進まないことに、ほとんど妥協しない人なのに。

「嬉しい。ありがとう」

はにかんだ笑顔で、今度は、本心から礼を言ったヘリに、イヌはふっと笑みを返した。

「お礼は、箱の中の贈り物も見てからにして」

「箱の中って…あれも、記念日の贈り物なの?」

ヘリが、玄関先に置きっぱなしにしていた箱を振りかえった。

イヌは、外から未開封の箱を確認すると、
満足げに頷いて、ヘリの部屋の扉を大きく開けた。

「お邪魔するよ」

ヘリの脇をするりと抜けて、靴を脱ぎ、ルームシューズを履いて、
さっさと部屋に上がり込むイヌの後ろ姿を、ヘリは、1本の薔薇を手に
ぽかんとした顔で見送った。



(後編へ続く)


登場人物

マ・ヘリ(マ検事)
ソ・イヌ(ソ弁護士)

ナ部長…ヘリの職場の上司
ユン検事…ヘリの先輩
チェ検事…ヘリの先輩
イ検事…ヘリの先輩
キム検事…ヘリの後輩


交際1年くらいたったイヌ×ヘリ。
でも、5月といえば、シリーズのプロットでは…うーん。ま、いっか←何が?
イベント短編として楽しんで下さい♪

釣られた後も、餌を与えられすぎて、かなり太った人間がここに♪
相方の手料理の腕がますますあがっているからね。餌の意味、そのまんま←のろけ(笑)



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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

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久しぶりに、イヌ役のパク・シフさんが「I LOVE YOU」を歌う動画(外見ソ・イヌの少し昔の短髪シフさん)を見たんですよ。

それで、思わず号泣しちゃいまして・・・

人生長く生きていれば、いろいろあるんですが、みつばなりに、昨年から最近までも辛い事が重なりまして。精神的に今は立ち直りはしたんだけど、まだ体調が万全で無いからなのか、それとも、久しぶりに見たイヌの姿に(←シフさんだって)張りつめていたものが切れちゃったんですかね。毎日ドラマは少しのシーンでも見ていたはずなのに。
この歌うイヌは(←だから、シフさん)みつばには別格らしい。
恋しても、恋しても、かなわなかった初恋の人に久しぶりに会ったような、そんな気分で。

シフさんファンの方は大勢いて、そして、情報も新しい物が更新されるようだけど、イヌはドラマの世界の人なんだもの…。
妄想の中とはいえ、本気で恋してるのは、はたから見たらバカみたいに見えるのかしら?
…と、創作屋が弱気になっていたらダメなんだけど、こういう体調のせいか、ブログでネットに繋がれない時も多いせいか、時折、リアルでぽつんと取り残された思いになっちゃうのかも。
決して、検事プリンセスファンやイヌ×ヘリ好きさんが減っているわけじゃないのにね。
でも、読者数は減っても、ブログへの総アクセス数が、毎日更新時とあまり変らないのは、リピーターさんやご新規の方に熱心に読んで頂いているからだと思う。


それで。

「みつばのたまて箱」ブログ3周年へのお祝いコメントありがとうございました!
現在更新が不定期なのに、来て頂けて嬉しいです。
もう、なじみのあるハンドルネームの方も、新しくいらっしゃった方も、励まし、応援、ありがとうございます。
こちらも、号泣ではありませんが、じーんとした気持ちで読ませて頂きました。

辛い現実があると、リアルから逃げたくなります。←みつばはかなり凹み屋ちゃん。
でも、ほんの、ちょっと妄想だろうと、創作上の人物だろうと、ときめいている人に会えたなら、また、頑張ろうって思える気がします。

このブログを読んでくださっている方も、きっとリアルでいろいろあると思うけど、
創作を読んでいる時のひとときは忘れて、楽しんでもらえてると私も励みになります。

かなり精神的にまいっているような記事ですが、みつばは、こういう逆境こそ、妄想力が強くなる傾向があるので、今年、出来るかぎり作品を発表していきたいです。

今夜は、久しぶりに寝るまでエンドレスで、歌うイヌ(シフさん…)の動画を見て、小説書こう♪…リミットは、あと30分くらいかな(笑)

次は、検事プリンセスの二次小説の記事でお会いしましょう♪


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テーマ:つぶやき - ジャンル:小説・文学

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こんばんは。みつばです。

ブログ「みつばのたまて箱」を開設してから、今日(6月20日)で3周年を迎えることになりました。

何かにはまっても、ここまで長くもったものは初めてです。
といっても、今年にはいってからブログ更新はかなりペースダウン(汗)
左帯の「最新記事」。最新記事のはずなのに、半年前の記事がありますね。
1週間に1回更新出来たら、いいところなペースで。

辛抱強い昔からの常連の読者さんや、リピーターさん、まだまだ増加中の検事プリンセス好きになるご新規さん達、あと、「キング」「デュエリスト」ファンの読者さんに支えられて、「みつばのたまて箱」も3年間続けることが出来ました。

本当にありがとうございました。

年末年始から体調を崩してましたが、
今は、それとは違う体調の崩し方をしていて、安静状態の日々。
体調が良く時間がある時に、少しでも創作をするのが、今の私の楽しみです。

あとは、録画したドラマを、少しずつでも、早送りでも、ちょこちょこ見るのも楽しみの1つです。

韓国ドラマは、「パスタ~恋ができるまで~」。
みつばのいる地区で見られる地上波放送ですが、来週最終回。
これは、面白かったです♪
イタリア料理店を舞台に、完全に超Sなシェフ男と、かけだしコック女の恋を中心に展開するドラマ。
いつもおいしそうな料理がいっぱい。それに、シェフや主人公の女性の住んでいるマンションの部屋のインテリアがいい…などなど、演出や小物なども良かった。
最終回まで観たら、全体的な感想も書いてみたいかな。

あとは、「アラン使道伝」

これは・・・時代劇アワーという、他の曜日の韓国ドラマや中国ドラマのラインナップと明らかに違う系統のものでした。時代劇って言えば時代物だけど…(汗)
見るまで全然あらすじ知らなかったもので、ここまでファンタジーだとは思わなかったです。
天上界やら、死神やら、幽霊やら、閻魔やらが普通に出てます。
話はさておき・・・←おくの?
みつばが、このドラマを見続けてる理由は、ユン検事様がいるから♪
…じゃなくて、キョンシーメイクのような、ユン検事役のハン・ジョンスさん演じる死神ムヨンが気になったから。

(キョンシー:昔流行した中国ドラマの中に出てくる怨霊)

死神っていうのは、死んで幽霊や怨霊になった人間をあの世に連行する、あの世の警察官みたいな者なのだけど、死神メイクの方がよっぽど怨霊に見える(笑)

拍手コメントの中にも、このユン検事役さんのムヨンの事を書いてくださっている方がいましたけど、今回も渋くて素敵な役です♪

しかし、それよりも…、今みつばが一番期待大なのは…。


「王女の男」


来ました!♪とうとう地上波放送(みつばがいる地域で)

韓国ドラマは、地上波放送でしか基本見られないというみつばにとって朗報です。

こっちが放送駄目だと分かった時は、じゃあ、あっちで「アラン使道伝」の後あたりにやるかな?って密かにチェックしていたのですが、そっちにきましたか。←こっちやら、あっちやら、そっちやら(笑)

黒髪、長髪、黒装束、剣、ダークサイドに堕ち、復讐に燃え、愛してはいけない人への愛に悩む男。
みつばの超好みなキャラ設定♪。
その上、みつばの愛する検事プリンセスのソ・イヌとそっくりの顔というのだから、たまりません。←同一人物の役者さんだって。

イヌ以上にはまっちゃったら、どうしよう~。←どうもしないから。

じつは、あらすじや話、最終回はさらりと知ってたりします。
細かい部分は、しっかり見ていないので、分からないのですけど。

時代劇ものなのでね(汗)
みつばは、時代劇にありがちな、残酷シーンは苦手なんです。
「デュエリスト」は、かなりソフトに演出されていたから、平気だったのですが、
元となった「茶母」…「チェオクの剣」は、吐くかと思った(涙)
今でも、そのシーンを思い出して、辛くなります。
「王女の男」もかなり覚悟しないといけないようで、たぶんみつばは録画したものを、そういうシーンすっ飛ばします。それで、スンユ(イヌ役の方)の出る所だけ抜き出して見ることになるかも。←スンユ見るなら、たぶんそういうシーンも入ると思う。

でも、期待大♪←どっち。


「デュエリスト」の悲しい目君も、可愛くて好きだし、
「キング」のシギョンさんも、誠実な所を尊敬して好きだけど、

今のところ、やっぱり、妄想の中では、「検事プリンセス」のソ・イヌ(ソ弁護士)が一番です♪

3年目の浮気って言葉もありますが、これからも「みつばのたまて箱」は検事プリンセスを中心に二次創作していくつもりです。

もちろん、「デュエリスト」と「キング」(シギョン×ジェシン)もプロットと書きかけの小説は蔵に入っているので、みつばの目の黒いうちに、日の目を見させたいです。


そんな感じで、更新がゆっくりでも、長期で止まっても、みつばが生きているうちは…
「検事プリンセス」のプロットを最後まで消化するまでは、ブログを閉鎖するつもりは無いので、
読みたい作品がある方は、これからもよろしくお願いします♪


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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「Kiss day 」後編です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。


この話は、検事プリンセス二次小説INDEXの中にある「恋のかたち」と「初めての夜」の間頃の話です。
まだ、大人な関係(笑)になる前の、交際はじめた頃のイヌ×ヘリ




Kiss day (後編)




…さあ、イヌの職場の方は何人いるかしら?


そう、イヌの車から降りた時から身構えていたヘリ。

だが、ついた店に、イヌの知り合いは来ていないようだった。

それどころか、ヘリが顔見知りの検事達がちらほらと食事している姿が、入口からでも見えた。
店に入ってきたヘリに気付いた年配の検事が軽い会釈をするのを、
ヘリは、恐縮しながら返礼した。

困惑しながら、店の入口で足踏みしているヘリを、
イヌは、素知らぬふりで、店員が案内する席に強引に座らせた。

そして、「ここじゃやだ」と小声で囁いたヘリに、
ニヤリと企むような笑みを見せた。

「後で文句を口にしない約束だったよな?」

そう言って、イヌは、ほとんど満席の店の中央席で、
ヘリの唇にかすめるようなキスを落すと、何事も無かったように自分の椅子に着席した。

「ちょっとっ。ソ弁護士!」

とっさに、声高に抗議するヘリの声は、店内に響き、
店にいた検事達に、キスしていた相手の名前を自ら披露するはめになった。

「いきなり、何するのよっ」

「何って、君がさっき言ったことだけど」

「どこにあなたの同僚の方がいるわけ?」

「あれ?いないな」

イヌがわざとらしく、周囲を見渡した後、
さっさと、テーブル上にあったメニューを開いて見始めた。

「ソ弁護士」

顏を赤らめて、さらに抗議しようとするヘリに、
イヌがすっとメニューを差し出した。

「これなんか、一番人気で、僕のおすすめのコースの1つだ。
ヘルシーだし、味もからすぎない。ニンニクが入っているから、
後で、ちょっと匂うのが欠点だけどね」

「キス・デー」にニンニク入り料理。

普通なら、即、除外する食べ物だったが、
ヘリは、「それにするわ」とそっけなく言った。

「これを食べたら、吸血鬼が所構わず、唇に吸い付くのを
やめてくれるかもしれないから」

「最近の吸血鬼は、ニンニクに耐性が出来ているかもな」

ヘリの嫌味を軽く一蹴した後、イヌは、店員を呼ぶと、
その料理と、違う料理のコースを1品ずつ注文した。

「代行使えば、酒も飲めるけど、どうする?ヘリ」

「今日は飲みたくないわ。あなたが飲みたいなら構わないけど」

「僕も今日は飲みたい気分じゃないよ」

本当は、浴びるほど飲んでしまいたい気分のヘリだったが、
今夜、前後不覚になるまで酒を呑んでしまったら、
目の前にいる男に何をされるか分からない。

そんな疑心暗鬼に駆られたヘリは、
グラスの中のただの水を酒替わりにゴクゴクと飲み干していた。

やがて、テーブルに届けられた料理に
イヌとヘリは、それぞれ口をつけた。

「どう?ここの店は、なかなかの味だと思わないか?」

食事を進めながら、
上機嫌で話しかけてくるイヌに対し、ヘリは、
恋人になった男との、初めての「キス・デー」ショックが大きくて、
正直、料理が美味しいのか、まずいか、など味わう余裕も無くしていた。

もちろん、ヘリは、イヌの思惑など全く知らずにいたのだったが、
いくら「キス・デー」と言えども、大勢の知り合いにキスを見られた事が恥ずかしかった。

まだ、イヌとつきあって日も浅く、まともな恋愛経験も免疫もないヘリは、
ただでさえ、慣れていない行為を人前でしたことに委縮していたのだった。

「ええ」と答えながらも、終始うつむき加減で、料理を食べているヘリを、
イヌは、じっと見つめた。

「その料理、口に合わなかったか?
もし、そうなら、僕のと交換すればいい。こっちの料理もヘルシーで、
君好みの味だ」

そう言ったイヌを、ヘリは、じっとりとした目で見つめた。

…人の好みの味まで知っていて、そして、そんな気遣いまでしてくれるくせに、
どうして、この男は、“ああいうところ”は、いつも人の都合をお構いなしなのかしら。

「どうした?」

箸を止め、黙ったまま自分を見ているヘリに、イヌが訝しげに首をかしげた。

「…あなたって、やっぱりプレイボーイなんでしょ?」

「やっぱりって何だ?」

「最初会った頃は、そう思ってたのよ。やけに慣れ慣れしくて、親切だし、出会ったばかりなのに、好きなそぶりを見せたりしてたから。後で、それは演じてたって分かったけど、でも、本性は、やっぱり女の扱いに慣れた遊び人なんでしょ?」

「いきなり、尋問モードに入ったな。検事さん」

箸を突きつけんばかりに息巻いて質問しているヘリに対して、
イヌはただ、面白そうな顔をしていた。

ヘリは、目を険しくした。

「茶化さないで。真面目に聞いてるんだから」

「ちゃんと聞いてる。僕が遊び人だと思うんだろ?でも、君がそう信じ込む根拠はなんだ?」

ヘリがムキになっているのを楽しんでいる様子のイヌに、
ヘリは、ますます目を吊り上げた。

「キスよ。どうして、あんな風に何でもないように出来るわけ?
アメリカでも特別なものだって言ってたけど、いくら今日がキス・デーだからって、
人前で軽くしちゃうなんて変よ。慣れてなきゃ出来ないものじゃない?」

今までだって、自分にしたように、他の女性にキスをしていたのかもしれない。

「記念日でも、そうじゃない日でも、いっぱいしてたんでしょ?」

無意識に身を乗り出して聞いているヘリに対して、
イヌは、落ち着いた態度だった。

箸をおき、尊大な仕草で腕を組んで、後ろ背にもたれて、
ヘリを見つめ返した。

「なぜ、君がそこまで怒ってるのか、分からないな。
キス・デーにキスをした事がそんなに嫌だったのか?
君の言う、“いっぱい”という数の基準も分からないけど、僕もいい大人だからね。それなりに経験を積んでても、変じゃないだろ?それとも、もしかして、君は、僕とが初めてだったのか?キスをするのが」

この年になって、まさか初めて?

そう逆に聞いてくるイヌに、ヘリは、怒りとは違う意味で顔を赤らめた。

「そんなわけあるわけないじゃない」

ヘリは、そう言って、自分の箸をとりなおすと、目の前の料理を再び口に運びだした。

「キスなんてね。あなた以外とだっていっぱいした事あるんだから」

「へえ…」

目をそらして、猛然と、料理を食べ始めたヘリから、
じっと目を離さずにイヌが聞いた。

「“いっぱい”?」

グッと詰まったヘリは、あせったようにグラスの水を煽ると、口を拭った。

「ふ…普通によ。人並みくらいは、したことあるんだから」

「そう」

何の抑揚もなく相槌を打った後、
同じく料理を再び食べ始めたイヌに、ヘリは不安そうに目をやった。

「…人並みって、あなたの言う“それなり”と同じくらいよね?」

自分で言っておきながら、そうイヌに質問するヘリに、
イヌは、心の中で失笑した。

笑いだしたい気持ちを抑えて、イヌは、食事を進めながら「そうかもな」と冷めた口調で答えた。

そんなイヌの答えに、ヘリは、しばらく戸惑っていたが、
やがて、イヌの動作にそろえるように、黙々と料理を食べ続けていった。

そうして、デートの後半の会話は、とくに盛り上がることも無く、過ぎていき…。

「今日は、ありがと。夕食ごちそうさまでした」


食事を終え、二人の住むマンションに車で戻って来た後、
エントランスに向かう道すがら、ヘリが改めてイヌに礼を言った。

夕食代はイヌが全部当然のように支払っていた。

「恥をかかさないでくれ」と、ヘリに引け目を感じさせる間も与えずに、
イヌが当たり前にようにデート代を出すことに、まだ若干気遅れしても、
ちゃんとお礼を言うことには、慣れてきたヘリだった。

「どういたしまして。言わない約束だったけど、
本当のところはどうだったんだ?美味しくなかった?」

「美味しかったわよ」

イヌがおすすめしただけの事はあって、店の料理は、確かに美味しかった。
しかし、全部残さず食べたわりには、料理をじっくり味わうより、
違うところにヘリの大半の意識向いていたのだったが。

「本当か?」

イヌは、立ち止まると、半信半疑の目でヘリを見た。

「君が何か誤魔化していれば、すぐに分かる。
正直に話せよ」

「正直に話してるわ。私、自分にいつも正直に生きているのよ」

「だから、余計に分かるんだよ。どうして、そんな顔をしてる?
何か言いたいことがあるんじゃないのか?」

…そんな顔ってどんな顔?
私、今どんな顔をしているのかしら?

ヘリは、とっさに自分の頬に置いた手を滑らせると、
気まずげにそのまま指で首筋をかきながら口を開いた。

「…さっきの話なんだけどね。キス・デーにキスしたのが、嫌だったのかって、
あなたが聞いたこと」

イヌが黙って、先を促した。

「嫌じゃなかったのよ。ほんとよ。でも、私、あんな風に人前で唇にキスされたのは初めてだったから…だから」

「少し強引だったことは謝るよ」

きっぱりと言ったイヌにヘリが目を丸くした。

…だが、無神経なことをした、とは反省していない。
ヘリの気持ちも本性も知っていて、それでも周囲に見せつける為にわざとキスしたのだから。でも…。

「僕にとっても、初めてだったから浮かれていたんだよ。
「キス・デー」に恋人にキスするのはね」

イヌの言葉にヘリがますます目を大きくした。

「そう、なの?」

イヌがコクリと頷いた。

「そう…なんだ」

ヘリが、呟くように言った後、仄かな笑みを浮かべた。

じゃあ、お互い、人前で恋人にキスするのは初めてなのね。

そう言おうとして、ヘリは、はたと思い出した事に「あ」と声をあげた。

「違うわ。私、人前でキスされたのは初めてじゃない」

「え?」

本気で怪訝な顔になったイヌを見上げて、ヘリが続けた。

「だって、ほら、この場所。覚えてない?
私、ここで、あなたにキスされたことがあったもの。人が見ている前で」

イヌは、チラリと辺りを見た。

そこは、マンション庭にあるバーゴラのようなオブジェの中だった。

たしかに1年ほど前、ヘリを追いかけてきたユン検事に気付いたイヌが、
その目の前で、ヘリに強引にキスした場所。

「いきなりだったから、びっくりして動けなくなっちゃって。
あの時のあなたも強引だったわよね?謝ってもくれなかったけど」

「計画的だったからね。それに、その後、ちゃんとケガの巧妙もあっただろう?」

…計画的?今、冷静に考えると、突発的な行動にしか思えないけど。

悪びれもせずに、腰に手をあてて、偉そうに言うイヌにヘリがそっと苦笑した。

「ほんと、“注意1秒、ケガ一生”よね。
あの時のことは、謝らなくてもいいけど、約束は守ってもらうから」

「約束って?」

「検察庁の駐車場で言ってたことよ。私の知り合いの前でキスしたんだから、今度はあなたの知り合いの前でキスするって話。お店に、あなたの知人はいなかったから、ここでするっていうのはどう?」

「別に僕は構わないけど、君はいいのか?君の知り合いにも見られるかもしれないぞ」

二人の住んでいるマンションの庭。
顔見知りの住人に見られる可能性は十分にある。

かまをかけただけなら、やめておけ。
そう言っているようなイヌに、ヘリは引き下がる気は無かった。

「あの時の仕返しもしたいの。今度は、私が、あなたが私にやった通りにしてあげるんだから」

一歩前に進み出て、イヌの側に近づいたヘリは、イヌを悪戯っぽく見上げた。

そして、ヘリは、さらにイヌに近づいて、手を伸ばした。

「まずは…あなたを抱きしめる」

そう言って、ヘリは、イヌの背中に両手をまわして、ふんわりとイヌを抱きしめた。

胸に寄り添うヘリのやわらかな体の感触にイヌが目を細めた。
ヘリも、触れたイヌの温もりで、我に返り、
大胆にも自分から抱きついた事が、急に照れくさくなった。

「次は…」

ヘリが、少し体を離すと、イヌを下から見上げた。

高いヒールの靴を履いているヘリは、少し背伸びすれば、
イヌの唇に届きそうだった。

しかし、イヌと見つめ合ったまま、ヘリは、動かなかった。

「…次は?」

催促するように、イヌが聞いた。

困惑しているヘリの心が、その瞳の揺れから手に取るようにわかった。

「…やっぱり、次の機会にするわ」

「どうして?」

「だって、私、さっきニンニク料理を食べたばっかりだもの」

今さら、思い出したように言う理由としては、もっともなものだったが、
本心では、やはりこんな外で、自分から堂々とキスするのが恥ずかしいだけのヘリだった。

「あの時の“ふくしゅう”をするんじゃなかったのか?」

『復讐』と『復習』をかけて言っているイヌの期待に満ちた目を直視できずに、
ヘリは気恥ずかしそうに目をそらした。

「もういいの。気が動転してて、あの時のことは詳しく覚えてないから」

そう嘘ぶくヘリに、イヌが薄く笑った。

そして、

「思い出させてあげるよ」と言って、
ヘリの顔を手で引き寄せると、フッと笑って、「これだ」と、ヘリに口づけた。

あの時のように、イヌのふいうちに、一瞬体をこわばらせたヘリだったが、
すぐにフッと力を抜くと、身体をイヌの腕に預けて、キスを受け入れた。

「思い出した?」

唇を離した後、そう囁くように聞くイヌにヘリが首をゆっくりと横にふった。

「ううん。あの時のキスとは違うわ」

「どう違う?」

「だって、あの時は、私たち、“ただの他人”だったもの。
でも、今のは、恋人のキス。そうでしょ?」

「そうだな」

そう答えながらも、イヌは、心の中で思った。

…僕にとっては、あの時も今も同じだ。

人前で、何でもなくなんてしていない。
ましてや、軽くもなんてしていない。
君にしたキスは、どれも特別なものなんだよ。ヘリ…。

「これからは、私達、恋人のキスが堂々と出来るわね」

続けて、嬉しそうに、そう言うヘリに、イヌの特別な想いはさらに膨らんだ。

「じゃあ、この際、過去に僕達のしたキスを全部恋人のものに書き換えてみないか?
“ただの他人”の時にしたキスが、確かもう1つ残っていた気がするが」

「・・・・・・」

1年ほど前、イヌの部屋で、ヘリが告白した時にしたキス。

あれを、もう一度再現してみよう、と提案するイヌは、
からかっているような口調ではあったが、本気だった。

…今は正々堂々恋人だという実感がもっと欲しい。

だが、声には出さず、
想いだけ込めた瞳でヘリを見下ろすイヌの気持ちは、
ヘリにはまだ全部読み取ることが出来ないようだった。

吸血鬼に、唇だけでなく、体も欲せられていると感じたヘリは、
とたんに、血相を変えて、緊張したように顔をこわばらせた。

「えーっと、ほら、部屋の中のキスだったら、別にキス・デーにする必要ないわよね。
それに、キス・デーのキスは、もう十分したから、それは、またいつかにしましょう。
やりすぎは良くないし」

「キス・デー」の本来の意味の解釈を自分本位に変えている。
さらに、十分したキスの十分って何だ?またいつかっていつだ?キスのやりすぎは何に良くないんだ?

…と、イヌの中で、呆れるほどツッコミどころ満載な言い訳を、あたふたしながら言った後、ヘリは、わざとらしく、クルリと後ろを振り返って、階段のある扉を指差した。

「夕食をいっぱい食べちゃったから、私はお腹ごなしに、部屋まで歩いて帰るわね。
あなたは疲れていると思うからエレベーターで帰ってちょうだい。送らなくてもいいから」

「ヘリ」

「今夜は楽しかったわ。ありがと。おやすみなさい」

指差したままの手を振って、ヘリは、イヌに挨拶すると、
そそくさと、自分の部屋の棟に通じる階段の方に足早に去って行った。

後には、油揚げに逃げられたトンビのような風情のイヌが残された。


こうして、二人の初めてのキス・デー記念日は終わったのだったが・・・。


イヌは、フッと自嘲を浮かべ、ため息をこぼすと、
マンションのヘリの部屋あたりの方を仰いだ。

「記念日でも、そうじゃない日でも、いっぱいしたいんだよ。恋人の君とね。ヘリ。」

イヌの呟きは、当然、ヘリの耳には届かなかった。

だが、部屋に戻ったヘリは、寝る寸前まで、今日のデートの事を、思い出していた。

そして、自分の唇を指でなぞりながら、
ゆるみっぱなしの頬を染めて、ベッドの中でつぶやいた。

「見てなさい。いつか、私からあなたをびっくりさせるようなキスをしてあげるんだからね」

…期待してるよ。

ニヤリと笑った恋人の顔を思い浮かべて、

ヘリは、フフっと微笑むと、目を閉じた。


(終わり)


“ただの他人”から、恋人になったばかりの頃の初々しいイヌとヘリの「キス・デー」記念日の話でした♪

イヌ君の魅惑のアプローチも、ガードの固いヘリちゃんには届いていません(笑)

いいな~。イヌとのキス。切なくて、ほろ苦くて、甘い大人のキス。
ドラマ検事プリンセスのイヌ×ヘリのキスシーンだけで、私、ずっと萌え続けていられそう。創作100話はいけるね♪←じゃあ、書け。

ちなみに。実は、「キス・デー」より先に「ローズ・デー」という5月14日記念日の話の方を書いてました。でも、せっかく6月14日が近かったので、こちらを先にアップ。
「ローズ・デー」は「キス・デー」より1年くらい先の話。

自分で書いていてなんですが、今回の初々しい二人と1年後カップルぶりを比較してみると…(笑)

次回話は、検事プリンセス二次小説「聖夜の夜」か「ローズ・デー」か。書けて、構成が出来た方をアップ予定です。
(注意:最近の「次回」は更新日不確定なので、よろしくお願いします)

追伸:
ブログへのご訪問、拍手、拍手コメントありがとうございます!
検事プリンセスにはまった、という方が増加中♪嬉しいです♪♪♪

「王女の男」の来週からの地上派放送が始まれば、スンユからイヌへ。
「検事プリンセス」の方にも関心が向く方も、また増えるかもですね♪

私の体調への気遣いをして下さる方も多くて、恐縮です。
週一ペースでもブログ更新できるほどには、元気です。
明日は、「みつばのたまて箱」記念日なので、詳細はその時にでも。

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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「Kiss day 」前編です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。


この話は、検事プリンセス二次小説INDEXの中にある「恋のかたち」と「初めての夜」の間頃の話です。
まだ、大人な関係(笑)になる前の、交際はじめた頃のイヌ×ヘリ




Kiss day (前編)




6月14日は「キス・デー」

恋人達の記念日の1つだった。

だから、というわけでも無いが、ヘリは、その日いつもより早い時間に
仕事を終え、イヌとの待ち合わせ場所である検察庁近くの公園に、
うきうきした足取りで向かっていた。

そして、いつも待ち合わせしているベンチに座っていたヘリは、
約束の時間通りに現れたイヌに、嬉しそうに手を振った。

イヌも軽く手を振り返して、ヘリの方に歩いて来た。

「良かった。早かったのね」

「今日は、とくに急ぐ仕事も無かったからな。
君の方こそ、残業をしなくても平気だったのか?」

「ええ、定時にあがれるように頑張ったの」

褒めていいわよ。とでも言ってるような得意げなヘリの顔に、
イヌが微笑んだ。

「まだ、夕食を決めていなかったな。何を食べたい?」

「んー…。今日はお腹がすいているから、何でも食べられそう。
美味しい店ならどこでもいいわ」

「その『美味しい店』って言うのが、一番難しい注文なんだよ」

イヌが軽く唸った。
希望が、料理のジャンルで無いから、余計迷ってしまう。

「じゃあ、あなたが美味しいって思ってる、おすすめのお店に行きたいわ。
それだったら、絶対ハズレは無いはずでしょ?」

「ずいぶん、信用してくれているみたいだけど、任せてもらっていいのか?
後で、食べたいのはこんなんじゃなかった、なんて文句を言うなよ」

「思っても言わないようにするわ」

「なんだよ。それ」

イヌは、失笑すると、ずっと機嫌良く可愛い笑みを浮かべているヘリと、
微笑みあった後、肩を並べて歩き出し、検察庁の駐車場に移動した。

ヘリの今日の出勤はマンションからの徒歩で、
ディナーには、イヌの車で一緒に行くことになっていた。

「君は、ここで待っていてくれ」

駐車場までの公園の出口付近でイヌが言った。

「少し離れた場所にしか停められなかったんだ。
車をとって、ここまで迎えにくるから」

「ええ、わかったわ」

イヌが、駐車場に降りていった後、
ヘリは、近くにあったベンチに座って、イヌを待つことにした。

そして、イヌの姿が、見えなくなって、
ヘリが、何気なく自分の腕時計で時間を確認していた時、
「マ検事」と頭上からヘリを呼ぶ声がした。

イヌでは無い男の声に、ヘリが顔を上げると、
庁内で、時々顔を見た事がある同期の検事が、前に立っていた。

「ああ~…えっと…」
…誰だっけ?

「イム・ドンヒョンだよ。先月、君の案件が僕の担当事件とかかわりがあって
話したばかりだったよね」

「ハハ…そうだった?」

ヘリは、適当にあいずちを打った。

記憶力は抜群にいいヘリだったが、
意識していない人間の顔と名前は覚えていないようだった。

「マ検事は、ここで何しているの?」

イム検事は、駐車場近くの公園ベンチに座っているヘリを
不思議そうに見下ろした。

「ああ、今日は、うちから歩きで来ちゃったの。
だから、迎えの車を待っているところよ」

「そっか。僕も今から帰る所なんだけど、良かったら乗っていく?
マ検事の家まで送ってあげるよ」

「あ、いいの。もうすぐ車も来るから」

へりが、あわててベンチから立ち上がった。

「タクシーでしょ?僕の車は、そこに停めてあるからすぐだよ」

「遠慮じゃなくてね。本当に送ってもらわなくても大丈夫だから。
私に構わず、イム検事はお先にどうぞ」

「いや、でも、君にお礼もしたいし」

「何のお礼?」

「覚えてない?研修時代、時々君からノートを借りたことがあったでしょ?
そのお礼もしたいから、ぜひ送らせてほしい」

…全然、覚えてないわ。

ヘリは、イム検事に、愛想笑いを浮かべると、
「お互い様だったと思うから、お気遣いはしなくても結構よ」と言った。

イム検事の妙なしつこさより、自分が、相手の事をほとんど知らないという事に、
ひけめを感じ始めたヘリは、早くイム検事が去ってくれることを望んだ。

しかし、イム検事は、そんなヘリに間合いを詰めて、近づいてきた。

「遠慮しなくていいから」

…遠慮じゃなくて~。

近づいてくるイム検事に、ヘリは、思わず1歩後ずさった。

「だからね、私、今、待ち合わせしている人がいて…」

その時、「ヘリ」と、ようやく待っていた声が耳に届いた。

ヘリとイム検事が同時に見やった先に、
イヌが公園脇に停めた車の扉を閉めて、こちらに歩いてくる姿があった

「ソ弁護士」

イヌの顔を見たヘリは、ほっと安堵の息をついた。

「またせたな。行こう」

見えているはずなのに、ヘリの前に立っていたイム検事が、
まるで、ただの電柱であるかのように、イヌは無視して、へりの脇に立った。

「じゃあ、私、待ち合わせしてた人と帰るから、
イム検事も気をつけて帰ってね。それと、ノートの件は、もう気にしなくていいから。
さよなら」

ヘリは、そそくさと、イム検事にお辞儀すると、イヌの横に並んだ。

そんなヘリの腰に、イヌがすっと軽く手を添えた。
そして、チラリと、イム検事に社交辞令的に目礼すると、ヘリを促して、車の方に歩き出した。

後には、二人の後ろ姿を目で追い、トンビに油あげをさらわれたような顔のイム検事が、
ぽかんと突っ立ったまま、しばらくその場に残された。


一方、イヌの車に乗り込んだヘリは、
イム検事とのやり取りなど、すでに頭に無かった。

「ねえ、夕食、どこに行くか決めた?」

「いや…まだだ」

浮かれているヘリに対して、イヌは、どこか冷めた態度だった。

「さっきの男は知り合いか?」

「さっきの男?ああ、イム検事ね。ええ、同期の人よ」

「話の途中だったみたいだけど、良かったのか?」

「別にたいした話じゃないの。イム検事は、私がタクシー待ちしてるって思ったらしくて、
送ろうかって言ってくれてたのよ」

「駐車場から見えていたが、それにしては長く話してたな」

「うん。妙に律儀な人だったわ。全然、覚えてないんだけどね。昔、研修時代に私がノートを貸したことがあったらしくて。そのお礼をしたかったんだって」

「そのお礼とやらを受けるのか?」

「いいえ。覚えてないことに、お礼をされるわけにはいかないわ。
今日はあなたと約束もあったし。それにね、本当言うと、イム検事のことほとんど知らないから、話をしているのも困っていたの。タイミングよくあなたが来てくれて良かったわ」

「・・・・・・」

さばさばと話している助手席のヘリに、
イヌが何かに耐えるような表情で目を閉じ、静かに肩で息をついた。

…まったく気づいていない。

イヌはヘリの鈍さに呆れていた。

イム検事という男が、ヘリに色目を使って近づきながら、
口説いていた事が、遠目からでも一目瞭然だったというのに。
あんなに近くにいて、迫られていた事に気付かなかったなんて。

それに、恍けているわけでなく、本心を語っているヘリの無邪気さに、
イヌは、ある種の危惧を感じていた。

抜群のプロポーションと美貌で、
派手ないでだちと振る舞いをしても、ヘリは清純な女性だった。

それも、イヌから見れば、まっさらに。

箱入り娘から、荒波にもまれて、社会人としてかなり成長したけれど、
ヘリの中身は全く変わっていない。

16年前、初めて出会った時の少女のままだと言っても過言で無いほどに。

ヘリに、近づいてくる輩の大半は、ヘリの美しい外見に引き寄せられる男が多かったが、中には、ヘリの本性に気付いている者もいるかもしれない。

実は恋愛べたで、一方的に強引に迫られることに慣れていないことも。

一度断られて、自分には高嶺の花とあきらめてくれれば良いが、
妙に鈍いヤツや、自信を持ったヤツも中にはいるかもしれない。

現に、幾日か前、

イヌは、検察庁内で、ヘリの耳元にキスするというパフォーマンスを、
公衆の面前で、披露したばかりだったというのに。

その後、庁内中に、マ・ヘリ検事は、売約済みという噂が流れたのだったが、
まだ、分からない男が、いや、分からないふりをしたい男たちがいるようだった。

「どうしたの?イヌ。まだ決められない?」

…ここにも、分からない女が一人いたな。

イヌは、目を開けると、隣に座っている呑気そうな恋人を見やった。

今、イヌが何を思い煩っていたのか、全く分かっていない顔。

疑いを知らず、純粋。
そこが、ある意味、マ・ヘリの魅力的な部分でもあるのだけど。

イヌは、軽く吐息をついた。

…『あれくらい』のマーキングじゃ伝わらなかったか。
それなら・・・。

イヌは、チラリと、車のフロントの方に目をやった後、
「いや」とヘリに答えた。

「決めたよ」

「そうなの?どこに行くことにしたの?」

無邪気に夕食の場所を問うているヘリに、イヌは無言で手を伸ばした。

そして、まだシートベルトをしていなかった体をヘリの方に傾けると、
目をぱちくりさせたヘリの顔を至近距離で確認した後、目を閉じて、唇を重ねた。

唇が触れた後、イヌは、ヘリの首を手で引き寄せると、
さらに、深く口づけ始めた。

…イヌ…。

イヌの奇襲に、一瞬身体を固くしたヘリだったが、
やがて、うっとりと、イヌのキスを受けとめていった。

しかし、しばらくして、うっすらと開けた目の視界の端で、駐車場にいる人達が、こちらを見ていることに気付いたヘリが、ハッと我に返って、イヌの体を手で押しやった。

「やだ。こんな所でキスしないでちょうだい」

「どうして?」

「だって、ほら、見られているわよ。私達」

ヘリは、キョロキョロと車の外を見渡した。

ちょうど、検事達が、退庁する時間帯。
駐車場や公園の方を通りかかる人も多かった。

薄暗い時間とはいえ、外灯も多い駐車場と公園。
外灯に照らされたイヌの車内の様子は、外からもバッチリ見えるようだった。

検察庁の駐車場に停車した車の中で
繰り広げられている男女のラブシーンを、
仕事帰りの人間たちが、見逃すわけもない。

面白い余興をやっているぞ、的な好奇心丸出しの顔で、
イヌの車の方を皆、遠慮も無くじろじろと見ている。

中には、「あれ、マ・ヘリ検事じゃない?」と気づいた者もいるようだった。

ヘリは、顔を赤らめると、今更のようにイヌに抗議した。

「前にも言ったけど、こんな風に人が見ているような場所で平然とキスするのは止めてちょうだい。あなたは、アメリカで慣れているかもしれないけど、私はそうじゃないのよ」

「何か勘違いしているようだけど、アメリカでも、キスは特別なものだ。
所構わず、誰彼かまわずキスしたりしない」

そう言って、肩をすくめてみせたイヌをヘリが軽く睨んだ。

「じゃあ、どうして、今、こんな所でしたのよ?」

「知ってるだろ?」

イヌが飄々と答えた。

「今日は、“キス・デー”だからだ」

もちろん、『キス・デー』の事は知っていたヘリだった。
そして、今日のデートにそれを全く意識してなかったと言えば嘘になる。

デートの終わりに、イヌとキスしたいな、とは考えていた。
たとえば、マンションの庭や部屋の前などで。

しかし、恋人が堂々とキスをしていい日、と言われる『キス・デー』といえども、
まさか、ここまで自分の職場の人間が大勢いる所で、イヌがキスするとは思っていなかったヘリだった。

それは、最初はイヌも同じだったのだが。

「僕達は、恋人だよな。だから、今日はどこでキスしてもいい日だ。
違うか?」

「…違わないけど…でも、だからって…」

イヌの問いに否定することが出来ずに、ヘリは、もごもごと口ごもった。

しかし、動揺している自分に対して、平然としているイヌに納得のいかないヘリは、
なんとか知恵を働かせて、反論を再開した。

「じゃあ、私の職場の近くでキスしたんだから、今度は、あなたの職場の近くでキスするのよね?あなたの同僚の方に見られても良いところで」

当然あわてると思ったイヌは、「そうだな」とあっさりとヘリに頷いてみせた。

「じゃあ、夕食はあそこに決まりだな。僕の事務所で働く人達が、よく行く韓国料理の人気店。美味しいから、一度君を連れて行こうと思っていたところだ。ちょうど良かったな」

そう言って、ヘリの返事も待たずに、
シートベルトをしめて、車のエンジンをかけたイヌ。

もう、検察庁の人間たちには、キスシーンを見せつけた。
おそらく、さっき公園にいたイム検事とやらにも、はっきり見られたはず。
明日の朝には、多数の目撃証言と共に、今度こそ、マ・ヘリには恋人がいる、という事実が、ヘリの職場で確定される事だろう。

用事はすんだ、とばかり、颯爽と車を発進させて、
機嫌良く検察庁の駐車場を後にするイヌの隣で、
ヘリはまだ照れ隠しに頬を膨らませて、そっぽを向いていた。

…覚えてなさい。ソ・イヌ。
イヌのおすすめの料理店についたら、
そして、イヌの知り合いがいたら、絶対に、目の前でキスしてやるんだから。

そう、車の中で、堅く決心し、心中で息巻いていたヘリだったのだが…。



(Kiss day 「前編」終わり 「後編」へ続く)


韓国では、毎月14日に何かしら恋人記念日があるという話。
以前にも雑記で書いて、…大変だ。私には無理(笑)と言っていたのだけど。

そのうちの一つ。6月14日の「キス・デー」をテーマにした話。
イヌとヘリが再会したのは5月だって思っているから、
つきあい始めで、初初しい二人♪でも、「初めての夜」少し前かな。

「聖夜の祈り」が気にさせる展開で、まだ途中なのですが、
なんとか、この日にあわせて更新したいな、と思いまして。

拍手、拍手コメント、ありがとうございます!
よく書いて下さる方も、初めての方も。ありがとうございます。
ドラマや役者さんを知らなくても、ブログの二次創作で
知ったという方も時々いらっしゃって下さっていて嬉しいです。
「検事プリンセス」ワールドに、ソビョン病か、マ・ヘリ病になって、
一緒に楽しみましょう♪


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「聖夜の祈り」11話です。

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この話はシリーズの最新作になります。

「NYへいこう」「招かれるもの」の続編。


聖夜の祈り(11話)



ヘリがイヌの養父、ジョンに手渡したクリスマスプレゼント。

綺麗にラッピングされ、リボンがかけられた箱は、
ジョンの手の平におさまるほどの大きさだった。

ジョンは、その箱の包装を丁寧な手つきでほどいていった。
紙製の箱の中に、さらに青いベルベッド生地の宝石箱が入っていた。

ジョンがその宝石箱を取り出して、蓋を開けて、中を見た。
そして、「ほおっ・・・」と感嘆の声を漏らした。

「これをヘリさんが?」

「はい」

ジョンが宝石箱の中におさめられていたプレゼントを取り出した。

それは、二組のカフスボタンだった。

一組は、組紐のカフスボタン。
もう一組は、台座の上に光の加減で色が変わる石のような物を細工したカフスボタンだった。

「素晴らしい。とても素敵だ」

お世辞ではなく、ジョンの心からの賛辞の言葉と表情に、ヘリが顔をほころばせた。

「陶器のカフスボタンの方は、アクセサリーデザイナーの友人に教えてもらって作りました」

初めて会うイヌの養父へのクリスマスプレゼントは、何にしよう。
そう考えたヘリが、真っ先に、浮かんだのは得意な編み物だった。
しかし、ジョンが身につける物を作るには、情報も時間もほとんど無かった。

イヌから、養父がいろんなシャツを好んで着ているという話を聞いた事があったヘリは、
小さく邪魔にならず、でも、気軽につけてもらえるカフスボタンを思いついたのだった。

「さっそく、つけてみたいな。部屋に行ってシャツを着なおしてこよう」

そう言って、立ち上がりかけたジョンに、イヌが「ちょっと待って」と声をかけた。

「父さん。僕からのクリスマスプレゼントも見てからにして欲しい」

イヌが立ち上がると、暖炉の影に置いていたプレゼントを手に持って来た。

「どうもありがとう」

渋めのデザインの包装紙に綺麗にラッピングされたB4サイズほどの箱を、ジョンはイヌからうやうやしく受け取った。

…イヌはお父さんに何をプレゼントするのかしら?

ラッピングをほどくジョンの手元をヘリも興味深々の顔で見守った。

箱を開けると、中には、メンズ物の衣服が入っていた。
上質の布で仕立てられた、今流行のモダンな柄のカフス型Yシャツ。

「私の好みにぴったりのシャツだね。イヌ。こういうのが最近欲しかったんだよ」

ジョンが嬉しそうに言った。

「父さんの好みは分かってるよ。でも、父さんは流行に敏感だから、もうすでに持っているかも、と心配したよ」

「いや、このシャツは、これから私のお気に入りの1着になるよ。
それにしても、カフスシャツに、カフリンクスとは。
もしかして、二人一緒に私へのクリスマスプレゼントを考えてくれていたのかな?」

ジョンの質問に、ヘリとイヌはそろって首を横にふった。

「偶然です」
「偶然だよ」

「まさに、息ぴったりのカップルだね。君たちは」

二人の、そろい過ぎた動作と異口同音に、ジョンが声をあげて笑った。

「さて、じゃあ、二人の贈り物をさっそく着けさせてもらうよ」

ジョンは、ヘリとイヌのプレゼントの箱を抱えて、着替えるためにリビングを出て行った。

その後ろ姿を見送ったヘリは、イヌと顔を合わせた。

「ほんとにすごい偶然よね。
私、あなたに、お父さんへのプレゼントをカフスボタンにするなんて、言ってなかったのに」

「やっぱり、僕には本当に超能力があるのかもしれない。
君の考えている事は、分かってしまうっていう超能力がね」

「そうなの?じゃあ、私のあなたへのクリスマスプレゼントが何か分かる?」

「カフスボタンじゃないのか?」

「ブー。はずれよ」

ヘリが得意そうに、チッチッと人差し指を振って見せた。

そんなヘリの様子を、無言で、微笑ましい余裕の表情で見ているイヌに、
ヘリが「本当は、分かってるんでしょ?」と言った。

「いや、全然分からない。超能力が衰えたのかも」

「ほんと?恍けてるだけじゃなくて?嘘をついていたら、
このヘリジンジャーウーマンが、あなたのお腹の中にはいって、
こらしめちゃうんだからね」

ヘリがイヌの口元にちらつかせた、ピンクのアイシングのドレスを着た
かわいい顔のジンジャーマンクッキーにイヌが失笑した。

「これは、君か?」

「そう。似てるでしょ?」

クッキーと同じ表情でにっこり笑ったヘリから、
イヌは、黙って、クッキーを横取りすると、パクリと己の口の中にほおりこんだ。

「あーっ!ちょっと何するのよ。私のクッキー!」

一瞬の出来事に、目を丸くして、抗議するヘリに、イヌがニヤリと笑った。
そして、クリスマスツリーにぶらさがっていたクッキーを1つ取って、ヘリの前に差し出した。

「かわりに、これを食べれば?『意地悪男クッキー』」

目つきの悪いジンジャーマンクッキー。
ヘリがイヌに似せて顔を描いた事を分かって言っているイヌだった。

「やだ。さっきのクッキー返してよ」

「もう、口の中だ」

「もう、意地悪イヌ。口を開けなさいっ」

アハハハと、ヘリの手をガードしながら、楽しげに笑うイヌに、ヘリがムキになって、
飛びかかった。

ヘリの勢いでソファの座面に倒れかかったイヌが、
とっさに崩れたヘリの身体を両手で受け止めて、一緒に背後に沈んだ。

その時、リビングのドアが開いて、ジョンが現れた。

ジョンは、ソファにもつれあって、倒れ込んでいる養い子とその恋人を見て、面白そうな顔をした。

「着替えついでに、私は、そのまま部屋で就寝すれば良かったかな?」

「ち、違うんです!」

からかうジョンに、ヘリは、真っ赤になって、イヌの体から飛び起きると、
パタパタと手で衣服を整えて、ソファに座りなおした。

「酔ってて、ちょっとバランスを崩しちゃって…。
あ、お父さん。そのシャツとってもいいですね。
形も柄もお父さんにとても似合ってます」

あたふたと言い訳しながら、ヘリは、話を逸らすように、ジョンのYシャツ姿を誉めそやした。

事実、イヌのプレゼントしたシャツは、ジョンにぴったりだった。

「うん。ヘリのカフリンクスも映えてる」

ヘリと違って、何事も無かったように、ゆっくりと体を起こしてソファに座りなおしたイヌもジョンを見て言った。

シャツの袖口に、ヘリがプレゼントした組紐のカフスボタンがつけられていた。

「こちらもつけてみよう」

ジョンが、組紐のカフスボタンをはずすと、
今度はもう1組の陶器のカフスボタンをつけた。

「これも、このシャツによく合うね。シャツもボタンもとても気にいったよ。
ヘリさん、イヌ、ありがとう。さっそく明日職場につけていこう」

ジョンの言葉に、ヘリが、え?という顔をした。

「明日も、お仕事なんですか?」

「事務所の職員のほとんどは休暇をとっているけど、この時期は忙しくてね。
所長の私は、少し顔を出さなければいけないんですよ」

「そうなんですか…」

クリスマスの休日なのに。

気の毒な気持ちが、素直なヘリの顔に出ていた。

「でも、明日の朝食は、ゆっくりと一緒に食べましょう。ヘリさん。
私が事務所に行くのは昼すぎで良いからね。君たちの予定も昼からでいいのかな?」

ジョンがチラリと、イヌに確認を取るように目線を送って聞いた。

明日の24日からは、ジョンの家を出て、
ヘリはイヌと、帰国の日まで街に出かける予定になっていた。

クリスマスに、外国で恋人らしいイベントとして、あんな事や、こんな事をやってみたい。という要望はあったヘリだった。だが、今回の旅は特に観光目的では無かったため、イヌと打ち合わせた滞在スケジュールは、時間にゆとりがあった。

「僕達も昼ごろに家を出るよ」

イヌが言った。

「そうか。ヘリさんをしっかりエスコートするんだよ」

「うん」

ジョンに素直に頷くイヌの様子は、韓国では見ない珍しいものだった。

ヘリは、また嬉しくなって、自然に顔をほころばせた。

今度は、そんなヘリに、ジョンが視線を向けた。

「ヘリさん。私からも、ヘリさんとイヌに渡したいものがあるのです」

そう言って、ジョンは、リビングに置かれたサイドデスクの引き出しを開け、何かを取り出し、ヘリに手渡した。

シンプルだが、梳けた飾り模様の入った美しい封筒。

とっさの事にびっくりしつつも、
ヘリはジョンから受け取った、その封筒の表を不思議そうに眺めた後、
隣のイヌの方に目をやった。

イヌには、封筒の中身が何か分かっているようだった。

落ち着いた態度で、ヘリに、封筒を開けるように、無言で促した。

ヘリが、封筒を開いて、中身を取り出した。

それは、ホテルのパンフレットと、宿泊の予約チケットだった。
ヘリも名前だけは知っている、マンハッタンにある有名な高級ホテル。

「お父さん、これは…」

驚きのあまり言葉が続かない様子のヘリに、「私から、二人へのクリスマスプレゼントだよ」とジョンが言った。

「一度利用した事があるホテルで、とても居心地が良いところでした。25日の宿泊に使って下さい。ヘリさんを、うちにご招待したのに、航空券は自分が出すと、イヌが言い張ったし、せめて、二人が街で遊ぶ日のホテルを予約しようとしたら、それも最初、イヌに断られてしまったけど。せめて、1日だけでも、父からの気持ちとして受け取って欲しくてね」

「当然だ。恋人への最初のクリスマスプレゼントを父親にもらう男はいないよ。父さん」

…恋人への最初のクリスマスプレゼント。

「…とても嬉しいです」

ヘリは、イヌの言葉に、ときめいた胸を押さえ、
感動のあまり言葉を詰まらせながらも、「ありがとうございます」とジョンに丁寧にお礼を述べた。

もう、すでにホテルの件では、ジョンと打ち合わせ済みだったイヌも、
「ありがとう、父さん」と改めて、礼を言った。

「うん。楽しんでおいで」

礼を言った後、イヌとヘリがホテルのチケットを手に、微笑み合う姿に、
ジョンは、にっこりと顔をほころばせた。

そして、若い恋人達に遠慮してか、いつもより早く寝室に向かおうとするジョンに、
ヘリも続くように立ち上がった。

「私も、もう休ませて頂きます」

「ヘリさんは、良かったらイヌとゆっくりしていて下さい。
まだ、飲み足りないんじゃないかな?お酒も好きなだけ飲んで良いからね」

「いえ、それは、又、今度こちらに伺わせて頂いた時に頂きます」

初めで、最後ではない。
きっと、又、この先も、ジョンの家に来ることがあるから。

ヘリの言葉の中に、ジョンに聞かれた問いの答えを、
更に念押しする気持ちがある事が分かったジョンは、優しく微笑んだ。

「ええ、又、一緒に飲みましょう」

「はい。あと、明日は、早く起きますから。
もし、お父さんとイヌが朝ランニングするのでしたら、私も参加させてください」

「いいですよ。じゃあ、また明日。ヘリさん、イヌ、お休み。」

そう言って、ジョンは部屋を出て行く背中を二人で見送った後、

「もう寝るなら、先にシャワーを浴びていいよ」

と、イヌがヘリに言った。

「ええ、ありがと。そうさせてもらうわね。
終わったら、声をかけるから」

「僕もじき部屋に行くよ」

少ない片づけ物を終えたら、2階の寝室に行くつもりらしいイヌが、
庭のイルミネーションと常夜灯を残し、リビングのメイン電源を落した。

薄暗くなった部屋の中で、外の庭のイルミネーションが、
さらに、まばゆい光を放って、イヌとヘリの目を惹きつけた。

お互い無言で、しばらく並んだまま、庭のイルミネーションに魅入っていたヘリとイヌだったが、二人を包むロマンチックな雰囲気の高まりをお互い感じていた。

…二人きりだけど…。

酒にも雰囲気にもいい気分で酔ってはいたが、

イヌの養父の家の中という事もあり、
マンションの部屋で二人きりのように、遠慮無しにいちゃつけるほど、
ヘリは緊張感を失くしてはいなかった。

「じゃあ…また、後でね」

イヌに触れたい思いをふっきるように、ヘリは、身をひるがえすと、
そそくさとリビングを後にして、バスルームに向かった。

そして、シャワーを浴びたヘリが、濡れた髪の毛をタオルドライしながら、
客室に戻ると、部屋の明かりがついていて、テーブルセットのソファにイヌが座っていた。

「待っててくれたの?遅くなっちゃってごめんね。バスルーム空いたわよ」

「いや、いつもより早かったな。もっとゆっくり入ってくれば良かったのに。
遠慮してないか?」

「してないわ」

養父のジョンに遠慮することはあっても、イヌにはしてない。

そんな思いで、ヘリは唇をとがらせて見せると、ベッドの上に腰かけた。

「なら、いいが。君には、ここで、自分の家のようにくつろいでもらいたいんだよ」

イヌが言って、立ちあがると、ベッドまで歩いて、ヘリのすぐ横に腰かけた。
そして、水気でしっとりと、ヘリの横顔にはりついていた髪の一束を指ですくうと、
頬を撫でるように、ヘリの耳の上まで梳き上げた。

…ドキン。

何気ない動作なのに、その感触が、ヘリを煽り、たまらない気持ちにさせた。

…私は、イヌに触れたい気持ちを必死で抑えてるのに!

そんなヘリの心を見透かしているのか、いないのか、
イヌが、そのまま、ヘリの頬の輪郭を指の腹でゆっくりなぞりながら、
「緊張してる?」と聞いた。

「してるわけないじゃない。どうして、私が緊張するのよ?」

半笑いしながら、指でカシカシと首筋をかき、うわずった声で
否定するヘリに、イヌが薄く笑った。

「好きな男と一緒にいるからだろ?親のいる家の中で」

「その理屈で言ったら、あなたは緊張していないの?
好きな女と二人きりでいるのに。さすがにお父様がいらっしゃる家で、
手は出せないんじゃなくて?いくら、厚顔無恥なソ・イヌさんでも」

イヌに完璧に、見破られている事に悔しくなったヘリは、
ムキになって、無意識に挑発めいた言葉を吐いていることに気付いていなかった。

ヘリの言葉に、イヌは、ますます不敵な笑みを広げると、
ヘリの頬を撫でていた指先を滑らせ、今度は、ヘリの唇の上で止めた。

「…そう、思うか?」

小憎たらしいほど、上手をとったようなイヌの顔がヘリの間近にあった。

完全に遊ばれている。

「だって、今まで、実家で女の子といちゃついた事は無いって言ってたじゃない」

イヌは、そんな言い方はしていないのだったが、
ヘリの中では、勝手にそう解釈していた。

事実、実家にいた頃のイヌは、自分の部屋につきあっていた女を招き、
養父に紹介することなど無かった。

いつも心の大半を占めていたのは、父の無実を証明する事だったせいもあるが、
どんな女性にも、それ以上に本気で心を動かされた事は無かったのだろう。

…マ・ヘリのように。

イヌは、静かに自嘲した。

今、自分が、ヘリと全く同じ気持ちと願望を内包している事は、明白だった。

ヘリの肌から立ちのぼる、石鹸の爽やかな香りと甘やかな熱。

化粧をおとしても、美しい素顔を、シャワー上がりと恥らいで上気させ、
拗ねたように、頬を膨らませて睨みつけている様が、たまらなく愛しい。

…今まで、誰にもこんな想いを抱いたことは無い。

「君が、初めてになればいい」

からかっている口調なのに、熱っぽさを増したイヌの眼差しに、
ヘリの胸の鼓動がますます早くなった。

「ヘリ」

なんと、答えて良いか分からずに、身体を硬直させているヘリの名を呼んで、
熱く視線をからませながら、イヌの指が、ヘリの唇をゆっくりとなぞっていく。

そして、低く、囁くようにイヌが言った。

「君のクリスマスプレゼントを、今すぐ欲しい」




(「聖夜の祈り」11終わり、12に続く)


登場人物


マ・ヘリ
ソ・イヌ

ジョン・リー(アメリカに住むイヌの養父)


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基本、お休み中のブログに来て頂いてありがとうございます。
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励ましや感想、ありがとうございます。

意地でも、「聖夜の祈り」は、今年完成させたいつもりでいます。
書きたい話は他にもいっぱい詰まってるからね(涙)

設定の件(イヌの年齢など)は、もう、なんとなくで。
それより、誤字、脱字を減らしたいところ((笑))


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