韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「聖夜の祈り」2話です。
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この話はシリーズの最新作になります。「NYへいこう」「招かれるもの」の続編。
聖夜の祈り(2話)イヌの養父、ジョン・リーは、スラリとした体つきの、
ハンサムな中年男性だった。
耳に心地よく響く、温かみのある声と、
柔らかく見つめる、ジョン・リーの眼差しに、ヘリは、
先ほどとは違った意味で、ドギマギしだした。
「はじめまして。こんにちは。マ・ヘリです」
ペコリっと、勢いよく頭を深くさげて、挨拶した後、
ヘリは、心の中で、しまった。と思った。
もっと、上品でたおやかな女性らしく、優雅に挨拶するつもりだったのに。
…と、イヌが聞いたら、失笑しそうな事を考えて、
気まずそうに、顔を上げた。
目線のあったヘリに、ジョンは、優しい笑みを浮かべていた。
「遠い所を、よく来てくれましたね。
さあ、中に入って、まずは、暖まって下さい」
そう言うと、ジョンは、入口の空間を大きく開けて、
ヘリを家の中に招いた。
ヘリは、後方を振り返り、頷くイヌの顔を見た後、
「おじゃまします」と言って、ジョンの後に続いた。
赤々と燃える暖炉の火を模した、暖炉型ファンヒーターが暖めるリビングルームに通されたヘリは、ジョンにソファに座るように勧められると、腰を下ろした。
「まずは、温かい飲み物をお出ししたいが、
ヘリさんは、コーヒー、紅茶、どちらが良いかな?
ああ、そうそう、おすすめの美味しい酒もあるのだが、そちらの方がいいかな?」
緊張の色が見えるヘリを労わるような、ジョンの軽めの振りに、
ヘリは、思わず笑顔になった。
「お酒は後の楽しみに。紅茶を頂きたいです」
ノリに合わせたヘリに、ジョンが嬉しそうに頷いた。
「私の一番のおすすめは、紅茶でね。
少し待っていて欲しい。とびきり上手いものを淹れるから」
そう言って、キッチンの方に向かおうとするジョンをイヌが呼びとめた。
「父さん、お茶なら僕が淹れるよ」
「いいから。イヌ。お前も座っていなさい。
お茶くらい私に淹れさせて欲しい。
せっかく、息子の彼女が家に来てくれた最初の日だというのに、
料理でもてなす機会を、お前にゆずったのだから」
…え?
キョトンとした表情で、
ジョンとイヌの顔を見比べるヘリに、ジョンがおどけたように肩をすくめてみせた。
「今日のディナーは、自分が作るから、とイヌが言い張ってね。
イヌは、一度こうと決めたら、頑固で何があってもやる子だから、根負けしたんだよ。
でも、明日のディナーは、私が作るからね。ヘリさん」
イヌを頑固だと言いながらも、
明日の事は、譲れないようなジョンの言葉から、優しい物腰とは別の
意外に負けず嫌いそうな性格が窺い知れた。
そして、肩をすくめてみせた表情も、とてもイヌに似ていると感じたヘリだった。
血はつながっていないのに、
その事を知らなければ、ジョンとイヌは、きっと本当の父子のように見えただろう。
「父さん」
キッチンに向かうジョンを見送るイヌの苦笑する姿に、
ヘリは、今まで知らなかったイヌのポジションを見て、
クスクスと笑った。
こんなイヌは初めてだった。
誰かに頭のあがらないイヌを見ること。
そして、その相手を尊敬している姿を見ることも。
それが、新鮮で、とても嬉しかったヘリだった。
「とっても美味しいです。体も暖まりました」
淹れてきた紅茶を、素直に喜ぶヘリに、
ジョンが嬉しそうに頷いた。
ヘリはカップを皿に戻すと、姿勢を正してジョンに向き合った。
「改めまして、自己紹介させて下さい。
ソ・イヌさんと今、韓国でお付き合いさせて頂いています
マ・ヘリと申します。お招き下さってありがとうございました」
頭を下げたヘリに、ジョンも姿勢を正して頭を下げた。
「イヌの父、ジョン・リーです。ヘリさんとお会い出来て、嬉しいですよ。
イヌから話を伺ってからヘリさんと会える日を楽しみにしていました」
心から歓迎されている事が分かったヘリは、
内心でホッとひとごこちつくと、先にバッグから出しておいていた手土産をジョンに差し出した。
「父母が営んでいる店の甘いラスクです。私も大好きなのですが、パン屋でも人気商品の1つなんです。どうぞ、召し上がってください」
「それは、美味しそうだ。私もラスクは好物です。
食後のお茶と一緒に頂きましょう。どうもありがとう」
ジョンが嬉しそうに、ラスクの入った箱を受け取った。
そして、ヘリが、紅茶を飲み終えた頃を見計らって、
ジョンが、イヌに声をかけた。
「ヘリさんの荷物を客室に持っていってあげなさい」
イヌが頷いて、立ちあがり、ヘリのスーツケースとバッグを持った。
そして、振り返ると、「行こう」とヘリを促した。
「君が寝泊まりする部屋に案内するよ。そこに荷物を置いて、
まずは、ゆっくり風呂に入って暖まるといい」
「あの、客室って…」
戸惑ったように、ジョンの顔を見やったヘリに、
ジョンが頷いてみせた。
「普段は使用していない来客用の部屋があってね。
私は今一人暮らしですが、客がよく訪ねてくるのですよ。
そういう時に使ってもらっている部屋だから、ヘリさんも自由に寛いでいって欲しい。
掃除やベッドメイキングはすませているから安心して」
「はい、ありがとうございます」
そう、お礼を言いながら、ヘリは、今度はイヌの顔を見やった。
「イヌの部屋は?」
「僕は、子供の頃からいた部屋を使っている」
「じゃあ、私もそこがいいわ。イヌと一緒の部屋で」
わざわざ、客室用の部屋で、新しくしたシーツを使用しなくてもいいから、という
遠慮から、何気なく出たヘリの言葉だったが、
イヌとジョンは、同じような表情で、目を丸くした。
驚いた顔で、二人に凝視されたヘリは、
ようやく自分の発言が意味深にとられた事を理解した。
「違いますっ!。そういう意味では無くて。
ベッドを新しく使用するより、イヌと同じでも構わないという意味でっ」
…と、取り繕えば、取り繕うほど、ドツボにはまっていきそうな
ヘリの慌てふためきように、ジョンが吹き出して、声をあげて笑った。
「楽しい人だ。ヘリさんは。
また後ほど、ゆっくりお話ししましょう」
笑い終わった後、にこやかにそう言うジョンに、
ヘリは、「はぁ…」と恐縮したように、身を縮こませていた。
「あ~・・・もう、私ったら、やっちゃったみたい。
養父さんに、いい所を見せたかったのに、第一印象から、変な女だと思われたわ」
リビングを、離れてから、
恥ずかしさで、火が出そうになっている顔を手で煽り、
ぶつぶつ言っているヘリを、ヘリの荷物を持って先導していたイヌが面白そうに振り返った。
「君の良さを十分アピールしたと、僕は思うけどな」
「もう、今は、傷口に塩を塗りこむような事言わないで」
ヘリは、イヌの言葉に、拗ねて頬をふくらませて見せた。
「嫌味じゃないよ。
父さんは、君が気にいったみたいだ」
「ほんとにそう見えた?」
「ああ。すくなくとも、悪い印象は与えてない」
「そうなら、いいのだけど…」
ヘリは、まだ心配そうに、背後を振り返っていた。
一人暮らしにしては、広い家だった。
階段を上がり2階につくと、
1つ開け放たれた扉の前でイヌが立ち止まって、
ヘリを中に促した。
部屋は、一人には十分すぎるほどの広さがあり、
クイーンサイズのベッド、テーブルセットや、大きなクローゼット。
大型の液晶テレビ、ミニ冷蔵庫まで備えられ、一流ホテルのエグゼクティブルームと言っていいほどの空間だった。
「君はこの部屋を使って」
イヌが言って、ヘリのスーツケースをクローゼットの脇に置いた。
「他に何か必要なものや欲しい物があったら言ってくれ。
用意するから」
「ええ、ありがと」
ヘリは、部屋の中を見回した。
客室用だと言っていたが、置かれている調度品や内装は、
ジョン・リーがあつらえたものだろう。
シンプルなデザインだったが、上質の物で統一し、
そこに寝泊まりする人間にも配慮した空間になっていた。
「じゃあ、夕食までゆっくりして」
ヘリにトイレやバスルームの場所を案内した後、
部屋から出ていこうとするイヌにヘリはあわてて声をかけた。
「さっき、養父さんが言ってたけど、夕食はあなたが作るの?」
「ああ、今夜は韓国スタイルになるけど、構わないか?」
「それは、全然構わないのだけど、これから準備するのでしょう?
私も作るのを手伝うわ」
「今日はいいよ。下準備は済ましているからね。君は風呂に入って休むといい。
飛行機の長旅は時差もあって、疲れただろう」
「飛行機に乗っている疲れはそうでも無いのよ。
結構眠っていたし、快適に過ごせたから」
…それより、ここに来る前にした不思議な体験に、まだ
落ち着かない気分だけど。あれは一体なんだったのかしら?
落した王冠のブローチ。
イヌと同姓同名のソ・イヌという少年との出会い。
今は1995年と皆が口をそろえていった事。
待ち合わせのカフェの前に起こった出来事を思い出しながら、
ぼんやりとしていたヘリに、イヌが、訝しげに眉をひそめた。
「快適に、誰と過ごしたんだ?
たしか電話で、隣に楽しい男性がいたとか言っていたが。
ナンパでもされたのか?」
「あ、気になっちゃった?」
「ここでの君の保護者として心配しただけだ。
君のお母さんにも電話で頼まれている」
ウキウキしたヘリに、イヌが、そっけなく言った。
「あなたもママも、保護者って何よ。
私が、まっすぐお使いにいけないような子供に見えるわけ?」
「見える」とサラリと答えたイヌをヘリが睨み付けた。
そんなヘリの視線も軽くかわし、
イヌは、腰に手をあてて偉そうな態度で言った。
「現に、待ち合わせ場所に行くまでに、トラブったんだろ?
“親切で、優しい少年”に会えたようで良かったよ。
もし、今後会う事があったら、もう1度しっかり礼を言っておくんだな」
イヌは、落とした王冠のブローチの一連の話を
家に来るまでの車の中で、ヘリから聞いていた。
「…親切で優しかったけど、意地悪な皮肉屋さんだったわ。
同姓同名の誰かさんみたいに」
…正直に話をしたら、馬鹿にはしなかったけど、
さんざん嫌味を言ったり、説教したりしたくせに。
とっておきの話をしてやるって言ったのはどうなったのかしら?
ヘリは、ジトっと、目の前のソ・イヌを見つめた。
「飛行機で隣り合わせた紳士は、もっと優しそうな人だったけど」
その、紳士っていうのは何者だ?という
イヌの視線を今度はヘリが軽くかわして、わざと気にさせるような
素振りを見せた。
…もう、教えない。
せいぜい、やきもきするといいわ。
ヘリは、つんっと、澄ました顔をした後、
「夕食、楽しみにしてるわ」と言って、部屋の中に入った。そして
「ヘリ」と、あせったように声をかけたイヌの鼻先でパタンと扉を閉めた。
扉の前で、はあっと軽く息をついて、
リビングに戻ろうと姿勢を変えたイヌは、廊下の向こう側で、
忍び笑いをして立っている養父の姿を発見した。
「父さん」
「すまない。立ち聞きするつもりじゃなかったんだが。
客室に、常夜灯が無かったことに気付いてね。
今は無理なら、あとで、部屋に持っていくといい」
ジョンの手にはスタンドランプが握られていた。
ヘリが、怖がりの性格だと話をしていたことで、
ジョンが気をきかせたのだろう。
そして、今さっきの“痴話げんか”を
聞かれてしまったようだった。
イヌはジョンからスタンドランプを受け取り、一緒に階段を下った。
「彼女とは、いつもあんな会話を?」
面白そうな顔で聞くジョンにイヌが苦笑した。
「そうだよ」
「可愛いな。君たちは」
「僕まで子供扱い?」
「親にとって、子供はいつまでも子供のようだよ。
ヘリさんとイヌは、もう一人暮らしが出来る立派な大人だがね。
それにしてもイヌは、ヘリさんには、ああいう顔をするんだな」
「家に女性を連れてくるのが珍しいからだろ?」
「そうだな。友達はともかく、イヌが家まで連れてきて、
私に恋人として紹介したのはヘリさんが初めてだったな」
ジョンは、チラリと、階段上を見上げて、
また思い出したように、口元に笑みを浮かべた。
「あんなイヌの一面は初めて見たよ。
長い間一緒に暮らしていたが、正直驚いたな」
「あんなって?」
「さっきみたいな“可愛い”一面だよ」
ジョンは、イヌに意味ありげに目配せすると、
軽やかに笑った。
…父さんにはかなわないな。
イヌも、つられて笑うと、階段上を共に見上げた。
階段上の客室に、ヘリがいる。
アメリカにいた頃、長年住んでいた家に、ヘリの存在があることが
不思議で、でも、嬉しく感じたイヌだった。
まるで、止まっていた時間が動き出したような。
そして、自分の重ねた過去と、ヘリがいるこれからの未来が手を携えて、つながっていくような。
そんな、ときめくような感覚に、イヌは、自然と顔をほころばせていた。
(「聖夜の祈り」2終わり 3に続く)
登場人物
マ・ヘリ
ソ・イヌ
ジョン・リー(アメリカに住むイヌの養父)
今回の話を全部書いて構成終わるまで小説をアップしないと、
かなり休止してしまいそうなので、2話も、アップしておきます。
拍手コメントやメッセージ等ありがとうございます。
コメントレスを少し。
モバイルのシフさんのインタビューの話を
コメントやメッセージで教えて下さった方々、
ありがとうございました。
検事プリンセスのソ・イヌ。私もまた見たいです。
ええ、妄想じゃなく、現実で是非見たいです♪
ドラマの続きは無理でも、そういうのを彷彿とさせるような
夢ミニドラマでも、もし今後、演じて下さったら、
もう、末期になっているソビョン病患者としては、
狂喜乱舞じゃ済まないかも♪
この話題で、かなり気分が浮上しました。
ありがとうございます。
…といって、前回の記事の次の日には、
「な~んだ。全然大したことないや」って
なってました。
「ホ・オポノポノ」の効力かな。
次回の更新は未定ですが、クリスマスまでに
…または今年中に←伸びてる。全部更新できたらいいな。
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