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韓国ドラマ「キング~Two Hearts」の
二次小説「華城に降る夢」(前編)です。

このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。


このお話は、「キング~Two Hearts」のウン・シギョンとイ・ジェシン姫が中心の小説です。




華城に降る夢(前編)




その日の夕方近く、公務を終え、王宮の自室に戻ってきていたジェシンの
部屋のドアがノックされた。

「王女様。秘書室の執政補佐官殿がおいでになりました」

外にいる護衛官の声に、ジェシンが車椅子を反転させて、
扉の方に嬉しそうな顔を向けた。

「お通しして」

カチャリとドアが開き、護衛官と共に
黒いスーツを着た男が、ジェシンの部屋の中に入ってきた。

その男を見たジェシンの表情がさらに輝いた。

「失礼します」

男を案内した護衛官は、おじきすると、
楚々と部屋を出ていき、ドアを閉めた。

部屋の中に残された男とジェシンは、
一定の距離を保ったまま、見つめあった。

「今日は、長時間のご公務でしたが、
お疲れではありませんか?」

男がジェシンに聞いた。

「いいえ、平気。私は側に控えているだけだったから。
でも、兄さんと姉さんは大変だったでしょうね。
スピーチに、外交パーティー、公共事業の視察。
1日中、激務をこなしていたのだから。
執政補佐官として一緒に行動していた貴方も疲れているではない?
シギョンさん」

「いいえ。平気です」

ジェシンの気遣いに、男…シギョンが、やわらかい笑みを見せた。

4年前に、銃弾で倒れ、葬儀まであった。
ウン・シギョンという男は、つい、先日までこの世にはいない存在とされていた。

真実は、かろうじて命をつなぎとめており
国王、ジェハの一存で、その生存を秘匿され、体が回復するまで
身を隠していたのだったが、再び、公の場に現れるにもタイミングを必要とした。

長い時間を要して、ようやく王宮に戻ったシギョンは、
ジェハの計らいで、想い合っていたジェシンに再会し、
秘書室長の父親とも会う事が出来た。

こうして、他にも旧知の仲である者と再会を果たしたシギョンだったが、
以前所属していた近衛隊には戻らず、
父、ウン・ギュテの補佐として秘書室に身を置いていた。

しかし、執政補佐官という役職は表向きのもので、
その職務内容は、ほとんど国王の護衛だった。

国王ジェハを守る事。

それは、近衛隊にいた時と、まるで、かわっていなかったのだったが、
それだけは、シギョンがジェハに頼んだ事だった。

執政を裏で支えて欲しい。と言ったジェハに、
シギョンが、今は、その役職についている父ギュテに全権を任して、
自分は、補佐という立場で、国王と王族を守りたいと答えていた。

シギョンの「王族」という言葉の中に、
妹ジェシンの存在感が多分に含まれている事が分かったジェハは
苦笑しながら、シギョンの申し出を承諾した。

そして、シギョンは、国王やジェシンが赴く場所で、
その影に立ち、二人を見守り続けていた。

シギョンは、公務の間、国王の傍らで、職務を全うしながらも、
時折、同じ場所にいるジェシンの姿を目の端でとらえていた。

兄夫婦からやや離れた場所で、
車椅子に座りながらも、
凛と背筋をのばし、澄んだ瞳を開けて、
真摯な姿勢で公務にあたっているジェシン。

その気品と美しさは、遠目からでもはっきりと
シギョンの中で光り輝いて見えた。

こうして、愛しい人の側にいられるなら、
自分はどんな仕事でも出来る。疲れなど忘れるくらい。
そう思うのは不謹慎だろうか。

シギョンは、ジェシンを見つめながら、そんな事を考えていた。

ようやく再会出来、想いを通じ合えた恋仲だというのに、
シギョンのジェシンと接する態度は、まだぎこちないものだった。

表向き、王族と、その配下という関係では、いたしかた無いものだったが、
他には誰もいない場所で二人きりになっても、似たようなものだった。

「二人きりの時は、名前で呼んで欲しいって、
言ったのに」

ジェシンが焦れたように言った。

「この王宮にいる時は、公務中です」

シギョンが、しごく真面目な表情で答えた。

ジェシンは、そっと息をつくと、…仕方ないわね…と言う風に微笑んで見せた。

シギョンという男がどういう男なのか、
会えずに4年という月日が流れていても、分かっていた。

「それで?何の御用で私の部屋までいらしたの?
まさか、デートのお誘いでもしてもらえるのかしら?」

冗談で問いかけたジェシンだったが、
驚くことに、シギョンが「そうです」とコクリと頷いた。

「夕食後、1時間ほど私にお時間を頂けませんか?
お連れしたい所があります」

予想もしていなかったシギョンの言葉に、
ジェシンは、目をぱちくりさせた。

「それは、公務の一環なの?」

「いいえ、プライベートな行事です」

「とても魅力的なお誘いだけど…」

ジェシンは、当惑したように、自分の下肢に目を落した。

「私が、夜外出するには、兄さんの許可がいるわ」

もう以前のように自由に飛び回る事は出来ない。

付き添う護衛官か、何か会ったときに守ってくれる近衛隊が必要になる。

こんな急な私事に、兄で国王と言えど、
融通をきかせてもらえるのだろうか。

「ご心配にはおよびません」

シギョンがはっきりと言った。

「ジェハ様には、もう許可を頂いております。
王女様は私が命にかえましても、お守りいたしますので、
ご安心下さい」

シギョンの言葉の裏を察すれば、
ジェシンに同行するのはシギョン一人ということになる。

となれば、これは、正真正銘シギョンからのデートの誘いとなるのだが。

ジェシンは、呆れたように、吐息をついた。

「仕事が早いわね。
デートを申し込む相手の承諾より先に手続きを踏むなんて」

「申し訳ありません」

ジェシンの声に拗ねたような響きを感じ取ったシギョンが
恐縮するように頭を下げた。

どこまでも真面目な男。
だからこそ、信頼しているけど。

ジェシンは、クスリと小さく笑った。

「それで?私をどこに連れていってくれるの?
夕食の後ということは、ディナーのお誘いでもないようだし、
明日の朝まで時間が欲しい、じゃないから、ホテルでもないわね」

急襲された事に対して、ささやかな逆襲のつもりで
からかったジェシンに、シギョンが曖昧な苦笑を浮かべた。

「車で参りますが、そう遠い場所ではありません。
そこから先は、どうか内緒にさせて下さい」

「わかったわ。私、あなたの秘密には、もう慣れっこになってしまっているから、
平気よ。楽しみにしているわ」

「はい、私もです」

硬い物言いだが、口元がやわらかくほころんでいるシギョンに、
ジェシンが明るい笑みを見せた。

そのまま、ジェシンの側にいこうか、と、
一瞬迷った素振りを見せたシギョンだったが、浅くお辞儀すると、
「では、夕食後、お迎えにあがります」と言い置いて、
すたすたと、ジェシンの部屋を出て行った。

シギョンの出て行った後の扉を見つめて、
ジェシンは、「もう、全然変わってないのね」と呟いた。

死んだとばかり思って、ずっと辛い思いをしてきた。
それが、この間、夢のような再会を果たして、
生きたシギョンの口から「愛しています」と言われたはずなのに。

再会する前のようなまるで変わらない態度のシギョンに、
その事さえ夢だったかのような気にもなる。
しかし、シギョンは「デートの誘い?」というジェシンの問いを肯定した。

ジェシンの胸はときめき、出来るものなら、嬉しさで飛び跳ねたい思いでいっぱいだった。

ジェシンは、飛び跳ねるかわりに、部屋の中で歌い、
家族のいる食卓でも鼻歌混じりで食事をして、母や兄家族達に
怪訝な目で見守られていた。

やがて、夕食後、
部屋に戻ってきたジェシンをどこかで見ていたかのように、すぐにシギョンが訪ねて来た。

そして、王宮の裏玄関からジェシンを車に乗せて出発した。

車が街の道路に出ると、それまで黙っていたジェシンが
後部座席から、運転席のシギョンの後頭部に
熱い視線を送りながら、口を開いた。

「王宮の外に出たわ。もう公務中じゃないでしょ?
付き合い始めて、熱々の恋人らしい会話をしたいわ」

「熱々の恋人らしい会話とは?」

声色で、シギョンが、誤魔化しているわけではなく、
本気で、問うている事が分かったジェシン。

「恋愛ドラマで、よくあるでしょう?
『ようやく二人きりになったね』『この時間を待ちわびていたよ』って、
こんな感じの会話が。ほら、何か言ってみて」

…恋愛ドラマは見ていないのですが。

そう言いそうになって、

わくわくした面持ちで、後ろから
せっつくジェシンの顔をバックミラーで確認したシギョンは、
小さく息をついた。


そして、ハンドルを握っている手にぐっと力を込めると、口を開いた。

「ようやく二人きりになりましたね。この時間を待ちわびていました」

オウム返しのシギョンの言葉に、ジェシンが失笑した。

「私、リピート、アフター、ミーとは言ってないわ」

ある意味予想通りのシギョンの反応に、
ジェシンは呆れを通り越して愉快になっていた。

コロコロと楽しげに笑い転げるジェシンの鈴のような明るい声が、
車内に響き渡り、シギョンも思わず笑みをこぼしていた。

…あなたのその声だけをずっと聴いていたい。
言ったことも本心です。

そう心で思ったセリフを口に運ぶ前に、喉元で抑え込んでしまう。

シギョンという男の、言葉の入域チェックは、普通の男より厳しいようだった。

シギョンは、歯の浮くような台詞を言うかわりに、
口元にこぶしを置くと、コホンっと小さい咳払いをした。

「あなたから何か話して下さい」

「私にばっかり話させるの?」

ジェシンが楽しげに言った。

「会ってなかった長い間、シギョンさんにもいろいろな事があったでしょ?
その話を聞かせて欲しいわ」

「とてもつまらない話になります」

「つまらないかどうかは、私が判断することよ。
私は、あなたのことをもっとよく知りたいだけ。
なんでもいいから、あなたのことを聞かせて」

…何か話して、と自分で言っておきながら、
なんでもいいから聞かせろとジェシンから言われて、シギョンは、真剣に頭を悩ませた。

「私のプロフィールは、王宮の履歴書ファイルにある通りです」

シギョンは苦し紛れに思いつくまま言った。

「身体の方も4年前とさほど変わっていないはずです。
胸を撃たれたので、手術の跡は残っていますが、それに比べると、他はかすり傷程度のものです。訓練の時についたものもありますが…」

真面目に話続けるシギョンに、突然ジェシンがクスクスと笑いだした。

「どうして、笑うのです?」

「ちょっと想像したものだから」

「何をです?」

シギョンが不思議そうに首をかしげた。

「あなたの体にある傷跡のこと」

「おかしいですか?私は、勲章みたいに思っているのですが」

「もちろんよ。シギョンさん。
あなたは、身体を張って、いつも私達を守ってくれている。
全然おかしく無いわ」

ジェシンが優しい声で言った。

「じゃあ、どうして笑ったんです?」

「それは…」

ジェシンが唇に指をあてて、はにかんだ。

「いつか、その勲章を私に見せてくれるのかしら?って想像してしまったの」

そんな事を考える自分自身がおかしくて、思わず笑ってしまった。

「ごめんなさい。気を悪くした?」

「いいえ」

シギョンが首をふった。

いつも率直に話をするジェシンが眩しかった。

4年たっても変わらない。

「あなたが望むのなら、この車が止まった後、服を脱いで
お見せしてもかまいません」

シギョンの言葉にジェシンが目を丸くした。

「本気?」

この硬派な男が、こんな大胆なことを言うなんて。

うろたえたジェシンに、間髪入れずにシギョンが「冗談です」と答えた。

「今夜はお見せできません」

「そう。びっくりした。
あなたの言っていたユーモア集の例文だったのね」

ジェシンはホッと息をつきながらも、
ドキドキしている事を悟られないように、わざと澄ましてみせた。

「ユーモア集は部屋に置いてきてしまいました。
今夜は他にお見せしたいものがあったので」

シギョンが答えた。

「見せたいもの?」

こんな夜に?

「もう着きます」

シギョンの言葉に、ジェシンが、車窓の外に目をやった。
そして、息をのんだ。

「ここは…」

夜の暗闇の中でも明るくライトアップされている場所で、
そこがどこか分かったジェシンだった。

「華城ね」

ジェシンの独り言のような呟きに「はい」とシギョンが答えた。
そして、車を停めた。

シギョンは車から降りると、トランクから車椅子を出して、
設置した。そして、後部座席のドアを開けると、ジェシンを抱えあげ、
車椅子に乗せた。

華城は、有名な観光地だった。

少し離れた場所に、城壁が見えた。

ジェシンが最近訪れたばかりの場所。

「見合い」に臨む前。
その見合い相手がシギョンだと知る前に、
シギョンに心の中で別れをつげた場所だった。

シギョンとジェシンには思い出深い所ではあったが。

…見せたいものってここ?

振り返ったジェシンは、
背後で、車椅子を押しながら歩くシギョンの顔を不思議そうに見上げていた。


(「後編」に続く)


登場人物


イ・ジェシン(国王の妹。王女)

ウン・シギョン(ドラマ中では近衛隊中隊長)

イ・ジェハ(国王)


前回の二次小説「歌姫の騎士」の続きです。

シギョンは生きていた。

公式に続きがもしあったら、こうなっていて欲しいって
強く思って書いた創作物です。


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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

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