韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「黒と白」(6話)です。
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携帯更新していた「黒と白」の続きです。
黒と白(最終話)『やはり、ソ・イヌだ』
モニターから流れてきたハン検事の声を
ヘリは、茫然となって聞いた。
今、目の前のモニター画面に映し出されている事が
現実のものと思えなかった。
「密輸の取引現場に、なぜ、あの人が…?」
思わず、そう呟いたヘリに、イ捜査官は困惑した眼差しを向けた。
ヘリは、イ捜査官に応えを求めたわけでは無かった。
誰も答えてくれなくとも、ただ、問いかけずにはいられなかった。
自分の目さえ信じられなくとも、
ヘリは、イヌを信じたかった。
ガタリっと、席を立って、ドアに向かったヘリを、
イ捜査官が慌てて引き留めた。
「どこに行くのですか!?」
「私を現場に行かせてください」
「それは、できません。ユン検事からも、そう言われているはずです。
それに、今マ検事が行った所で何も出来ることは無いですよ」
「検事としていくのでは無いわ。あの人に聞きたいことがあるの」
ソ・イヌに会って、直接確かめたい。
「そういう事なら、尚更行かせられませんっ」
「行かせてください」
「駄目です」
イ捜査官が、ドアの前に立ちふさがった。
「ここでマ検事に出て行かれたら、お目付け役の僕は停職になります。
絶対、マ検事をここから出しませんよ」
…どうしたら、いいのだろう。
頑として立ちふさがるイ捜査官の前で、ヘリは焦燥感を募らせた。
その時、
デスク上のモニターからの音声が騒がしくなった。
『コンテナから離れろ。全員手をあげて、顔をこちらに向けて立つんだ』
ヘリは、ハッと後ろを振り返った。
どうやら、ハン検事達、現場の捜査官達が、密売人たちを捕えるために、動き始めたようだった。
ヘリは、モニターに駆け寄った。
コンテナを囲んでいた男たちが、両手をあげて、立ち上がり、こちらを見ている。
その中で、一人、黒いスーツの男だけが、手を下げて腰を落したままだった
『手をあげろ』
拳銃を手にした捜査官が、カメラの前に移動した姿が映った。
その時。
パンっ。と乾いた銃声音が響いた。
現場の動揺がこちらにも伝わるような緊張感が走った。
カメラが、拳銃をこちらに向けている男の姿をとらえた。
「コンテナの中の拳銃はおそらく改造銃です。すぐに使用できるような代物じゃない。
最初から拳銃を所持していたのかも」
イ捜査官の説明に、ヘリは心臓がキュっと縮むような思いがした。
拳銃を持ってカメラの方向に身構えているが、周辺には同じく拳銃を所持した捜査官達が取り囲んでいることだろう。
もう逃げ場は無いはず。
他の男たち同様、おとなしく投降した方が、今の安全は保障されるというのに。
…お願い。抵抗しないで。
ヘリは、自分の両手を胸の前で握り合わせた。
ジリジリとした緊迫感の中、ソ・イヌの顔をした男が、ゆっくりと、モニターの方に拳銃を向けた。
そして、
パンっという2度目の銃声音が響くと同時に、
モニターの画面が暗転した。
「…!」
ヘリが、息を飲んだまま、モニターの前に立ちすくんだ。
「…もしかすると、カメラを持っていた捜査官が撃たれたのかもしれません。
他にも、監視カメラを仕掛けているはずですが、今の状況は、ここでは分かりません。現場からの連絡を待ちましょう」
「・・・・・・」
ヘリは、力が抜けたように、ヘタリと椅子に座りこんだ。
頭の中は、ショックと動揺で混乱していたが、
時間がたつにつれ、心の中は不思議と平静になっていった。
…とにかく、無事でいて。
ヘリは、おとなしくデスクに座り、
イヌの顔をした男に、そう祈るばかりだった。
やがて…。
オフィスの外の廊下をカツカツと歩く人の足音に、
ヘリはハッと顔を上げた。
ガチャリっと、ドアのノックもせずに、ヘリのオフィスに勢いよく入ってきたのは、
ハン検事だった。
「マ検事!ソ・イヌはどこにいる!?」
声を荒げた、ハン検事の第一声に、ヘリは、目を見開いた。
「君は、ヤツの居所を知っているんだろう?正直に言うんだ」
「知りません」
ヘリが条件反射的に答えた。
モニターで確認する事も出来なかったヘリは、
あの後現場が、どういう状況になっていたのか分からなった。
しかし、現場にいたハン検事が、ここにいるヘリに、それを聞くということは、
あの場にいた『ソ・イヌ』を捕えられなかったということなのだろう。
ヘリの答えに、ハン検事が、バンっとデスクに両手を叩きつけた。
「マ検事!この後に及んで、君はまだ、ソ・イヌをかばうのか!?
君のくだらない恋愛感情で、長年、積み上げた捜査が台無しになるんだぞ!
どう責任をとるつもりだっ」
突然、ヒステリックに激昂したハン検事に、ヘリがビクリっと震えた。
ヘリに対して、いつもトゲや含みのある話し方をするハン検事だったが、常に冷えた印象があった。それが、今感情をむき出しにしている。
そんなに切迫した事態になっているのだろうか?
「落ち着け。ハン検事」
やや遅れて、部屋に入ってきたユン検事がハン検事をとりなすように、
ヘリとの間に割って入ってきた。
「モニター画面が途中から映らなくなったんです。
一体、現場で何があったのか教えてください」
ヘリが、椅子から立ち上がって、ユン検事に聞いた。
ユン検事が、ヘリを振り返った。
先ほどまで荒れた現場にいたためか、ユン検事は全身
汗と汚れにまみれていた。
「拳銃を所持した男が捜査官の包囲網を突破して逃走した。
マ検事、現場にいたその彼の顔は見たか?」
「…見ました」
「君のよく知る男だったか?」
「顔ははっきり見ました。でも…」
ヘリは、そこで、ユン検事をヒタと見据えた。
「私の知っているソ・イヌかどうかは確認できません」
ハアッと、ハン検事がわざとらしく息を吐き捨てた。
「マ検事。君には、心底失望させられたよ。
風変りだが、優等生検事だと噂は聞いていた。父親の事件も知っている。
だから、半信半疑だったが、期待していた。
身内だろうと、罪を告発できる検事だとね。
だが、所詮、ただの女だったわけだ」
ハン検事の嘲罵も、もうヘリの耳には入らなかった。
イヌが、黒だと言われれば、言われるほど、
そして、モニターで、イヌと同じ顔を見たからこそ、
ヘリは、決意を固めていた。
「あの人に会って、直接話を聞きます。
判断はそれからです」
ヘリは、呆れ果てたような顔と唖然とした顔に見つめられたまま
毅然とした顔で立っていた。
「マ検事…」
ユン検事が何か言いかけた時、ユン検事の上着から、携帯電話の着信音が聞こえた。
その聞き覚えのあるメロディにヘリが思わず、ユン検事の胸元を見た。
「それ…」
「ああ、君の携帯だ」
ユン検事が上着から携帯電話を取り出すと、チラリと画面に目を落した。
「ソ・イヌだ」
部屋の中にいた一同が、ハッとなって、ユン検事の手の中の携帯電話に注目した。
「じつは、20分前にも1度かかってきていた」
ユン検事が、着信音が鳴り響く携帯電話をヘリに手渡した。
…いいんですか?
ヘリの眼差しに、ユン検事が頷いた。
「出ろ。スピーカーはオンにするんだ」
『ソ・イヌ』
ヘリは、そっと画面に現れている名前を指でなぞると、
携帯電話を耳にあてた。
「はい。マ・ヘリです」
『ヘリ。まだ仕事中なのか?』
電話の向こうのイヌの声が、少し遠くに聞こえた。
「ええ。そうなの。電話に出られなくてごめんなさい。
あなたの方は、仕事終わったの?」
『ああ、終わった。今空港に向かっている』
息をひそめたユン検事、ハン検事、イ捜査官達に見つめられながら、
ヘリは、イヌと会話を続けた。
「そう。私も、もうじき仕事を終えるわ」
『時間に間に合いそうか?迎えに行ってやりたいが、
僕も、離れた場所にいてね。直接空港に向かっている』
…今、どこ?
そう聞きたい気持ちを抑えて、ヘリは、「大丈夫よ」と答えた。
こうしていつものように話していると、
まるで違う世界にいるようだった。
ヘリには、先ほど、モニターで見たイヌと、こうして話しているイヌが
同一人物とは思えなかった。
「もう出られるわ。向こうで落ち合いましょう」
ヘリは、背後でアイコンタクトをとっているらしいハン検事とユン検事達の思惑を察して、通話を切ろうとした。
「じゃあ、後で」
『ヘリ』
携帯電話を耳から離しかけたヘリにイヌの呼びかけが聞こえた。
「何?」
『聞きたい事がある。正直に答えてくれ』
「…何かしら?」
考えているような、イヌのわずかな沈黙の間が
恐ろしく長く感じられた。
ややあって、イヌが聞いた。
『僕を…愛してるか?』
イヌだけでなく、部屋の中にいる者たちが全員、
ヘリの答えに耳をすましていた。
「その答えは、後で会った時に言うわ」
ヘリの言葉に、電話の向こうのイヌが、フッと微かに笑った気配がした。
『わかった』
そして、通話が切れた。
「…彼は空港に向かっているんだな?」
ユン検事の問いかけに、ヘリは、無意識にコクリと頷いた。
「アメリカにいる養父さんに一緒に会いに行くと約束したんです」
「前々から計画していたってことだな。
奴はマ検事に正体を知られた事はとっくに気づいていたはずだ。
マ検事を人質にとるつもりか。または、囮として、逃げるつもりか」
前者はリスクが高い。
だとすれば…。
「空港には現れないでしょうか?」
ハン検事の言葉の先を読んで、イ捜査官が口をはさんだ。
「その可能性は高い。だが、いずれ海外に逃亡するはずだ。港には捜査員を配置したが、
すぐに空港にも手配をまわそう」
「はい」
もう、ヘリの存在を忘れたかのように、ハン検事はイ捜査官を伴って、
慌ただしく部屋を出て行った。
ヘリは、デスクにしまっていた白い封筒を取り出した。
「空港まで送ろう」
ユン検事が言った。
「ユン先輩…」
「今度こそ、しっかりと確かめろ。君の恋人が何者かを」
空港に現れるのか、現れないのか。
そして、現れたとしても、それは果たして、『誰』なのかも。
しかし、もし、刑事や捜査官達が、潜んでいる空港に、
イヌが現れたら…。
ヘリは、戸惑いながらも、ユン検事と共に検察庁を出た。
「飛行機は、何時の便だ?」
駐車場に向かいながら、
検察庁前のエントランスの階段で、ユン検事がヘリに聞いた。
「0時の便です」
そう言って、ヘリは、もう1度確認するため、
封筒の中の航空チケットを取り出した。
時間を見て、チケットを封筒に戻そうとしたヘリは、ハッと手を止めた。
封筒の内側に文字が書かれていた。
…イヌ…。
その文字を読んだヘリは時が止まったように、その場に立ち尽くした。
「マ検事?」
足を止めたヘリを、ユン検事が、振り返って、訝しげに見つめた。
ヘリは、白い封筒をギュッと握りしめると、
身をひるがえして、ユン検事とは違う方向に駈け出した。
「マ検事!」
後ろで、ヘリを呼ぶユン検事の声を振り切るように、ヘリは走った。
チケットの入っていた白い封筒に、黒インクで書かれたイヌの文字を見た瞬間、
イヌへの想いが、ヘリのすべてを掌握していた。
“愛してる。心から”
そう書かれた文字。
それは、この前、ヘリがイヌに聞いた答えなのだろうか。
それとも…別れの言葉なのか。
夜に白く浮き上がった検察庁の建物を背に、
ヘリは、黒い闇の中を無我夢中で駆けた。
自分が今どこを走っているのか、分からなかった。
ただ、心が向かう先は、はっきりと自覚していた。
――― ソ・イヌ。
並列した街燈に照らされ、走るヘリの後ろに、
濃いグレーの影が幾つも伸びた。
闇の黒に目を凝らしながら、
ヘリは、白い封筒を胸にしっかりと抱きしめて、
イヌの元へとまっすぐに走って行った。
ヘリのバッグの中で、携帯電話の音が響いている。
その音がだんだん大きくなって、
ヘリを包み込み、暗かった周囲が少しずつ明るくなっていった。
…私の携帯電話の着信音じゃない。
必死に足を動かしながらも、ヘリは、ボンヤリと頭の中で考え、
携帯電話をとろうと手を伸ばした。
すると、着信音が止まり、
ヘリの伸ばした手は、誰かに握られた。
「…?」
「携帯電話のアラームをセットしたままだったよ。
起こして悪かったな」
え…?
イヌの声を、ヘリは夢うつつ状態で聞いた。
「ここは…?…私、イヌに会いに空港にむかってたのに…」
ボソボソと、小さく呟くように話すヘリに、
イヌが笑った。
「空港に行かなくても、会えたな。
眠っている間に、ついたらしいぞ」
まだ、ぼんやりとしているヘリの頬をイヌが軽く撫でた。
「これって…夢?」
ヘリは、イヌの手の感触も、リアルに信じられない思いで聞いた。
「まだ、寝ぼけてるのか?ここは、僕の部屋のベッドだ。
君は、かれこれ10時間近く夢の中にフライトしていたよ。
最近、仕事が忙しかったようだから、疲れが出たんだろうな」
…夢を見ていたの?
ヘリは、周囲に目を凝らした。
カーテンから漏れる朝の光に包まれた、イヌの部屋。
ベッドの中で、ヘリは、スーツではなく寝間着を着ていた。
隣には、寝間着かわりのラフなシャツを着たイヌがいて、
面白そうにヘリの顔を覗き込んでいる。
サイドボードに置かれた、イヌとヘリの携帯電話。
次第に、イヌの手の暖かい温もりが、
ヘリの思考をクリアにしていった。
今日は、休日。
ヘリは、仕事明けに、昨夜からイヌの部屋に泊まっていた事を思い出してきた。
…ああ、さっきのが夢だったんだわ。
ヘリは、ホッとするあまり、安堵のため息を大きくついた。
「もう少し寝たら?」
イヌの気遣うような優しい声に、ヘリは、うっとりと目を細めた。
「ううん。起きるわ」
「なら、目覚めのコーヒーをいれてあげるよ」
イヌが、ヘリの横髪を一撫ですると、ベッドから降りて、キッチンに向かった。
「私、カフェオレが飲みたいわ」
そう言ったヘリに、イヌが「OK」と答えた。
夢の中のように、ミルクを切らしている事は無いようだった。
香りの良い熱いコーヒーに、たっぷりのミルクを注いで、
ほんの少し砂糖が加えられた、イヌのカフェオレ。
ヘリは、それをキッチンカウンターの前に座って、
大切に、ゆっくりと味わった。
「ん。美味しいわ。ありがと、イヌ。
それから…」
ヘリが、サラリと続けた。
「愛してる」
「それからって何だ?」
自分のコーヒーに口をつけながら、イヌが不思議そうに聞いた。
「夢の中のあなたに聞かれたのよ。僕を愛してるか?って。
今度会った時に答えるって言ったから」
…今こうして会えたもの。
「一体どんな夢を見ていたんだ?さっきは空港に僕がいるとか言っていたが」
イヌの問いに、ヘリは、黙って考え込んだ。
とても、長い夢だった。
そして、重い夢だった。
最近、仕事で、密輸事件の話を聞いたせいかもしれない。
イヌが密輸のブローカーで、犯罪組織の一員などという疑いがかかった夢。
あのまま夢を見ていたら、どんな結末だったのだろうか?
結局、イヌが、何者だったのかはっきりしなかった。
空港にいたのかどうかも。
でも…。
「空港にいたはずなのよ。だって、あなたは約束を絶対守ってくれる人だもの」
独り言のように。
でも、きっぱりと言ったヘリに、イヌはますます怪訝そうに首をかしげていた。
「あなたが、こんな物を持っているから、変な夢を見たのかもしれないわね」
キッチンカウンターに置かれたピストルの形をした、万能ツール。
夢の中と同じように、イヌが嬉々としてヘリに見せた物だった。
ヘリは、本物の拳銃のような手つきで万能ツールを手に取り、握ると、
銃口部分をイヌに向けた。
「私のこと、愛してる?」
「脅されていたら、本当の事は言えないな」
夢のイヌと同じセリフに、ヘリが笑って、
万能ツールをテーブルの上に置いた。
「いいわ。夢の中で、本心を教えてもらったから」
「へえ、夢の中の僕は君になんて答えたんだ?」
「教えない。でも、現実のあなたの答えと同じだって、信じてるの」
ヘリは、椅子から腰を浮かすと、
前に座っていたイヌの方に伸び上がった。
「ね。キスして。夢の中でしたみたいに」
誘うような瞳で、可愛くおねだりするヘリに、
イヌが、苦笑した。
「夢より、うまくしてやるから、
現実の僕の所に戻ってこい」
「あら。夢の中の自分に嫉妬してるの?」
「いいかげん、からかうのを辞めないと、
その口をずっと塞ぐぞ」
そう言うと、イヌも腰を浮かせて、ヘリに顔を近づけた。
「やってごらんなさいよ」
ヘリの挑発に、イヌが薄く笑った。
「…愛してる。心から」
唇が重なる前、
イヌが、囁くように口にした言葉に、ヘリが嬉しそうに微笑んだ。
…私もよ。イヌ、
あなたが、黒でも白でも。
何者であっても。
きっと、愛してる。
そう思いながら、
ブラックコーヒーの香りのするイヌの吐息を吸い込み、
ヘリは、そっと目を閉じた。
(終わり)
えっ!?夢おちー!?
ヤキモキさせて、1か月も時間かけといて~って
思われます?(汗)
ヘリの夢なんですが、実は、みつばが本当に見た夢を小説にしました。
ずいぶん前に見たものなんですけど。
言い訳とか説明は、また「あとがき」で。
ひとまず、ブラックイヌ話完結です(たぶん)
ブログへの拍手、拍手コメントありがとうございます♪
バナナイヌ×ヘリ雑記を楽しんでもらえてよかったです。
次回、もっと可愛くデコできるようリベンジです。
夢で良かった。と思われた方も、
小説が気にいって頂けたら、「拍手ボタン」を押して
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