韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「黒と白」(5話)です。
みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
「
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「
お願い」を一読してください。
携帯更新していた「黒と白」の続きです。
黒と白(5話)マナーモードで震えている携帯電話を、
ヘリは、グッと握りしめた。
そして、着信画面に指を這わせ、携帯電話を耳にあてた。
「…はい。マ・ヘリです」
『ヘリ』
電話の向こうから聞こえたイヌの声に、ヘリは目を閉じた。
「なに?」
『今、中部地検の近くにいる。少し出て来られないか?話がある』
ハッとヘリが目を開けた。
…中部地検の近くにいるですって?
ヘリは、思わずあたりを見回した後、声を落した。
「話ってなんなの?今話して」
『会って話したい』
「今仕事中なの。夜に会わない?」
『夜は会えない』
イヌが言った。
『急にアメリカに発つことになった。その前に君と話がしたい』
…え…?
ヘリは、驚きのあまり取り落としそうになった携帯電話を、
慌てて、持ち直した。
「一体、どういうこと?仕事なの?」
イヌがヘリの問いかけを遮るように「ヘリ」と呼んだ。
『悪いが時間が無いんだ。検察庁近くのいつもの公園のベンチで待ってる』
そう言って、イヌの電話は一方的に切れた。
「・・・・・・」
ヘリは、茫然となって、
無言になった携帯電話を持つ手を、ブランと力なく落とした。
しかし、すぐに顔を上げると、踵を返して駈け出し、
勢いよく近くの階段を下った。
外に出たヘリは、息を荒くしながら、周囲を見回し、公園の道を足早に歩いた。
ハン検事の話が本当ならば、ヘリの行動も常に監視され、
尾行もされている事だろう。
誰かにつけられているかどうかは確認出来なかった。
ほどなく、いつも待ち合わせしているベンチにイヌの姿を見つけたヘリは、
ホッとしたと同時に、緊張感に襲われた。
ヘリには、今自分のおかれている立場が、奇妙に思えて仕方なかった。
先ほど、ハン検事から、イヌが犯罪者であるような証拠を突きつけられたばかりだった。
それなのに、そのイヌが今、自分の目の前にいて、いつもと変わらない場所に座っている。
検察庁とイヌとの間に佇むヘリは、その先に進むことを躊躇して歩みを止めた。
そんなヘリを振り向いたイヌが見つけて立ち上がった。
「ヘリ」
…イヌ…。
イヌの声が、逆らい難い引力でヘリを引き寄せた。
「こんな急に呼び出すなんて変よ。何かあったの?」
冷静に聞いたつもりだったが、鏡を見なくてもヘリには分かった。
不安な感情がヘリの表情と声にはっきり出ていた。
心なしか、憂いを含んだように見えるイヌの瞳が、
そんなヘリの顔をじっと見つめた後、口を開いた。
「アメリカにいる養父が事故に巻き込まれたという知らせが入った」
「…え…?」
「意識はあるが、容体はあまりよくないらしい。
養父に会いに、僕は今夜の便でアメリカに発つよ」
「そうなの…それは、心配よね」
ヘリは、イヌの話を素直に受け止め、心を痛めた。
事実、イヌの様子はとても辛そうに見えた。
ヘリは、先ほどハン検事から聞かされたICレコーダーの話など
すっかり念頭から消し去っていた。
「大丈夫よ。きっと」
ヘリは、イヌを励ました。
「早く会いに行ってあげて。養父さんもイヌの顔を見たら、
きっと元気になると思うから」
イヌが頷いた後、言った。
「ヘリ、君も一緒に来て欲しい」
「どこに?」
キョトンとしたヘリに、イヌが畳み掛けるように言った。
「アメリカに。養父が君にも会いたがっているんだ。
いつか一緒に会いに行こうと思っていたが、もうその機会を失ってしまうかもしれない。
だが、僕は養父にはヘリと会って欲しい。…両親が出来なかったかわりに」
イヌの最後の台詞は、ヘリの心に響いた。
「頼む」
さらに、懇願するイヌの切なげな眼にヘリの心は動いた。
「分かったわ。一緒に行く」
コクリと頷いて見せたヘリにイヌがホッと表情を和らげた。
そして、上着の内ポケットから、封筒を取り出し、ヘリに差し出した。
「君がそう言ってくれるだろうと思って、もう航空チケットはとっておいた。
今夜、深夜0時の便だ」
ヘリは、封筒から航空チケットを取り出すと、無言で中身を確認した。
そして、出発時刻の印字に目を落した。
『…深夜に飛ぶやつを』
ICレコーダーのイヌの声がよみがえった。
「…私は定時で仕事が終わるわ。急ぐならもっと早い便に乗りましょう」
あの会話とは無関係だと信じたい思いでヘリが言った言葉に、
イヌがかぶりを振った。
「いや、その前に、僕にはやらなければならない仕事があるんだ」
…養父さんの命より大事な仕事?
口には出さなかったが、そう問いかけるヘリの眼差しに、
イヌが目を伏せた。
「…人の人生を左右する仕事だ。ほうりだしてはいけない」
唇を引き締めた、怖いまでに頑ななイヌの表情に、ヘリは何も言えなかった。
「もう行くよ。23時に出発ロビーで待ち合わせしよう。いいか?」
「ええ…了解」
再び頷いたヘリに、イヌは、ようやく笑みを見せた。
「ありがとう。じゃあ、空港で」
そう言って、イヌは、検察庁とは別の方向に去って行った。
ヘリは、白い封筒に入った航空チケットを黒い携帯電話に重ねて手に持つと、
検察庁に戻って行った。
一度、航空チケットを自室のバッグに入れた後、
ヘリは、ナ部長のオフィスに向かった。
部屋でヘリを待っていたのはナ部長だけでは無かった。
ナ部長、ユン検事、そして、ハン検事の3人が、部屋に入ってきたヘリを一斉に注目した。
「ソ・イヌと会っていたな」
ハン検事の問いかけに、ヘリは誤魔化すことなく頷いた。
「そうです」
「ソ・イヌは君に何を話した?」
ユン検事が聞いた。
「プライベートな事なので言えません」
ヘリは、そのまま黙して、3人の刺すような視線に耐えた。
「…分かった」
しばらくの沈黙の後、ナ部長が口を開いた。
「マ検事、これから君を拘束させてもらう」
「拘束?」
信じられない思いで、ヘリは、ナ部長を見つめた。
そんなヘリにハン検事が言った。
「事は重大な局面を迎えている。先ほど話した密輸の取引が、今夜行われる事が分かった。そこで、ソ・イヌは直接“あちら側”の人間との交渉役をすることになっているようだ。こうなった以上、もう、先輩も、上司も君をかばう事は出来ない。ソ・イヌをかばっている君は、我々にとっては脅威の存在だ。取引現場の捜査が終わるまで、検察庁で身柄をあずからせてもらう」
ヘリは、ハン検事の言葉に衝撃を受けた。
「取引は、今夜のいつ、どこでなんですか?その情報はどこから?」
「今夜8時に、仁川港埠頭の倉庫前。どこからの情報かは言えないが、確かだ」
もう、ヘリにすべての情報を教えるつもりは無いのだろう。
ソ・イヌとコンタクトを取っていると誤解されるような行動をとり、
共謀していると、思われても仕方が無かった。
「マ検事、君には、今日、捜査が終わる時間までオフィスにいてもらう。
外出は出来ず、庁内を出歩く時も、監視をつけさせてもらうからな」
厳しい口調で命令しながらも、ナ部長は、ヘリに労わるような眼差しを向けた。
「これは、君の疑いを晴らすためでもある。悪く思うな」
ヘリが二重スパイ出来るような人間で無いと信じているが、
ハン検事をはじめ、周囲を納得させる為だ。
ナ部長に同意したようなユン検事が、ヘリにそっと頷いて見せた。
抵抗も、説得も無駄な事を察したヘリは、素直にナ部長の命令に従う事にした。
ヘリには、ハン検事の言っているソ・イヌが、よく知るソ・イヌと同一人物である事がどうしても、信じられなかった。
…でも、これではっきりする。
今夜0時の便で、イヌはヘリと一緒にアメリカに発つことを約束していた。
もし、今夜8時の取引現場にイヌが現れなかったら…。
「マ検事」
オフィスまで同行していたユン検事が部屋の前でヘリに声をかけた。
「部長も、私も君が犯罪組織の一味だとは疑っていない。
だが、ソ・イヌをかばっているかもしれないと考えている。
君にとっては恋人だ。どうしても冷静な思考で物事を判断するのは難しいだろう」
ヘリは、じっとユン検事の顔を見つめた。
ユン検事は、ソ・イヌを黒にも白にも見えないと言っていた。
だが、本当は…。
「ユン先輩と部長は、…いえ、捜査班は、私を“おとり”にしていたのですね?」
問いではなく、確認。
「…今日すべてが終わるまで謝罪はしない」
ユン検事が答えた。
「この件で犠牲になったのは、先日殺された捜査官だけじゃ無い。
暗躍する犯罪組織の影で一般人が怯えて暮らす社会を無くしたい。そんな思いで長い時間をかけて捜査を続けてきていた。ソ・イヌの疑いを肯定するにも否定するにも、決定的な証拠が必要だった。
だが、もうじきはっきりする。今日の取引は、組織には重要なものだ。必ず、この国に滞在しているブローカーの代表が現場に出る。それが誰なのか、我々の目の前で明らかにしたい」
情報を与えたヘリを利用した。
本来なら、ナ部長とユン検事から話を聞いていた段階で、すぐに理解出来ていたことも分からなかった。やはり、ヘリが、冷静さを失っていたという他ない。
そんなヘリに、自分にかけられた嫌疑を晴らさせ、イヌの無実の証拠を見つける事を期待したわけでは無い。すべて、この日の為に、“被疑者”をたきつけようと画策したこと。
もし、ソ・イヌが全くの潔白だった場合は責任をとる。
ヘリに謝罪する事だけでなく、すべてにおいて。
そんな覚悟を秘めたユン検事の言葉に、ヘリも頷いた。
「はい」
ユン検事がヘリに手を差し出した。
「悪いが、君の携帯電話もあずかる」
…イヌと連絡がとれなくなる。
ヘリは、自分の携帯電話をかばうようにギュッと握り締めた。
「…私も今夜の現場に行かせて下さい」
無理だと分かっていながら、ヘリが頼んだ。
「自分の目で確かめたいのです。本当にあの人が罪を犯しているのかを」
ユン検事が首を振った。
「足手まといだ。マ検事にはここにいてもらう」
きっぱりと断ったユン検事にヘリがうなだれた。
そして、力なくユン検事に携帯電話を差し出した。
「オフィスでも現場の映像を受信した物が見られるようにしておく。
君の目で確かめろ」
ユン検事はそう言うと、ヘリの携帯電話を持って去って行った。
それからの数時間。
ヘリにとっては、とてつもなく長く感じた。
夜7時を過ぎた頃から、1秒を刻む秒針さえも重く、低速しているように思えた。
定時を過ぎた頃、ヘリの捜査官と事務官は帰っていったが、
その後、ユン検事付のイ捜査官がヘリの監視について、部屋の中で見守っていた。
ヘリは、黙って、デスクに置かれた小型モニターの画面を食い入るように見つめていた。
モニターには取引現場の映像がリアルで入ってくるはずだった。
重苦しい空気に耐えきれなくなったように、イ捜査官がヘリに声をかけた。
「少し緊張を解かれた方がいいですよ。
コーヒーでもいれますか?」
「ありがとう。お願いします」
ようやく、ニコリと笑ったヘリに、イ捜査官もホッと息をついて立ち上がり、
コーヒーを淹れはじめた。
「砂糖とミルクはどうします?」
「いらないわ。ブラックでー…」
ヘリがそう言いかけた時、モニターの画面に変化が現れた。
「イ係長」
とっさに呼んだヘリの声にイ捜査官がヘリのデスクに駆け寄った。
黒く乱れた画像が映り、ザーっ…という音と共に、
微かに、人の声が聞こえ始めた。
やがて、赤外線スコープが映し出した動画が
鮮明に見え始めた。
岸壁には停泊中の船が見える。いくつも並べられたコンテナ。
その近くに数人の男が立っている。
ヘリとイ捜査官は息をひそめて、モニターを注視した。
やがて、監視カメラが、埠頭先に止まった一台の黒っぽい車の姿をとらえた。
車から、人が降りてきた。
前から一人。後部座席から二人。
ヘリは、その中の黒いスーツを着た男を目で追った。
黒い短髪、スラリと背の高い後ろ姿。
…違う。イヌじゃない。
今日、イヌは仕事だと言っていた。
そして、養父に会うために、一緒に0時発のアメリカ行の飛行機に乗る約束をした。
こんな場所にいて、こんな事をしているはずがない。
夜だというのに、サングラスをかけている、その男の顔は
なかなか確認する事が出来なかった。
カメラを持っている捜査員も、隠れて、
離れた場所からの撮影に最大の注意を払っているようだった。
『もう少し、映像を拡大できるか?』
モニターからハン検事の声が聞こえた。
そして、会合している人物たちの映像が拡大された。
コンテナの前、先に来ていた者たちと握手を交わす黒スーツの男。
一人の男が、コンテナの蓋を開けて、黒スーツの男に示した。
男がコンテナの前にしゃがみこんだ。
そして、サングラスを外した。
「・・・!!」
男がゆっくりとこちらを向いた。
カメラがはっきりととらえた男の顔。
それは―――。
ヘリが、ハッと息をのんだ。
…イヌ!?
闇を背に、こちらを向いた男。
それは、まぎれもなく、ヘリの恋人、ソ・イヌの顔だった。
(「黒と白」5終わり 6に続く)
「検事プリンセス」のイ係長(捜査官)役のイ・ジョンソクさんの事を書いた雑記へのコメントありがとうございます♪
日本でも注目されている俳優さんなんですね。
色気のあるお顔です。
脇役で新人でも、こうして目が離せないって方いらっしゃいますよね。
そこから主役をされる方もいれば、名脇役で引っ張りだこになる方も。
検事プリンセスのヘリ父(サンテ)役の方など、ドラマに出ている時は、
社長とか、政治家とか、金持ちの父親とか。そういう役が多いですが、存在感があり、役もいつもぴったりのように見えます♪
ヘリ役のキム・ソヨンさん出演の新作ドラマも「Two Weeks」気になります。
サスペンス&ハードボイルド?系なのかな?地上波放送を望む♪
記事が気にいって頂けたら、
【拍手ぼたん】を押してください♪
↓参加中。
にほんブログ村