韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「スイカの思い出」です。
みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
「
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「
お願い」を一読してください。
季節話短編。「海へいこう」あたりの夏のお話です。
スイカの思い出その日、実家に帰ったヘリは、両親と一緒に食卓を囲んでいた。
食事が終わると、「デザートですよ」と言って、
エジャが、切ったスイカを盆に並べて、テーブルに運んできた。
「ほお。スイカか。
もう、出回る時期になったんだな」
「近所の八百屋で特売だったから、丸ごと買っちゃったわ」
「二人には多いじゃないか」
「あら、今夜はヘリもいるじゃないですか。
それに、余ったら、ヘリがマンションに持って帰ればいいわ。
他にも食べてくれる方がいるでしょ?」
エジャのヘリに向けた意味ありげな目配せに気づかないふりをして、
サンテは、スイカを一切れ手に取った。
他の誰かに食わせるくらいなら、全部食いきってやる。
まるで、そんな事を代弁しているように、
ムシャムシャとスイカにむしゃぶりつくサンテを、
エジャとヘリは顔を見合わせて、クスクス笑った。
「暑い日に、こうして涼しい部屋の中で食べるスイカも美味しいけれど、
外で、食べるのもいいわね」
エジャが、スイカを見ながら言った。
「昔ね、ヘリが生まれる前、サンテさんと結婚する前の話だけど、
今頃の時期によく外で、みんなでスイカを食べたものよ」
突然、昔話を語り始めたエジャに、サンテがあわてて、
食べていたスイカにむせ返りそうになった。
「外で皆でって、誰とどんな風に?」
ヘリが聞いた。
「パパはね、その頃まだ現場の仕事をしていたわ。
暑い夏の日、仕事の休憩時間に、私は時々スイカを1玉差し入れていたのよ」
「スイカ1玉?」
「ええ、他の職場の方たちの分も。
それで、水場で冷やしておいたスイカを、
パパも職場の人達も、ズボンの裾を上げて、
桶の中に満たした冷水の中に両足を浸しながら、食べてた。
日に焼けてたくましいパパの足が、とってもセクシーだった」
当時を思い出してか、うっとりとした表情で話すエジャに、
ヘリは「ママったら」と笑い、サンテは、居心地が悪そうな顔で、
ひたすらスイカをほおばっていた。
エジャの話はまだ続くようだった。
「一番の思い出はこれね。
私が職場の人たちの給仕をしていたら、サンテさんが、
声をかけてきたの。『君も足を冷やしてスイカを食べないか』って。
そして、私の前に水が入ったバケツを持ってきて置いて、
強引に椅子に座らせたの。
それから、スイカを一切れ渡してくれた。
『一人でこんな風に食べるのは恥かしい』って、
私がそう言ったら、サンテさんが自分の椅子と桶を前に持って来たのよ。
そして、『一緒に食べよう』って。
そうして、パパと向かい合って食べたスイカの味は、今でも覚えてるわ」
「どうだったの?ママ」
ヘリが聞いた。
「それは、もちろん」
エジャが、「フフ」と一人笑いした。
「恋の味よ」
いや~ね~。恥ずかしいわ~。
と、照れ笑いをするエジャに、赤面したサンテが「…やめないか」と呻くように呟いた。
ヘリは、今、目の前にいるサンテとエジャからは、
想像できない思い出話をほほえましく聞いていた。
エジャの話を
どうしても、現在の二人の姿で置き換えて考えてしまう。
しかし、今、隣り合って、それなりに仲睦まじい様子で
スイカを食べている両親。
…昔とは、違っているように見えても、
そういう過去の思い出を共有して一緒に生きてきた二人なんだ。
そんな事を思って、ヘリは、サンテとエジャの顔を交互に眺めながら、
スイカを食べ続けた。
そんな事があった翌日。
その日は、
体を少し動かしただけで、汗が噴き出すほど、暑い日になった。
さっそく、ヘリは、電話でイヌを部屋に招いて、
冷蔵庫で冷やしていたスイカを出した。
「スイカか」
そう言って、感動した面持ちで目を輝かせたイヌに、
ヘリは、スイカをさらに食べやすい大きさの三角の形に切り分けて
皿の上に置き、イヌに差し出した。
「どうぞ」
「いただくよ」
エアコンの効いた涼しい部屋。
キッチンカウンターで向かい合って、
一緒にスイカを食べながら、ヘリは、時折、
目の前のイヌを観察していた。
「どう?」
そう聞いたヘリに、イヌが頷いた。
「ああ、美味しいよ」
スイカの種を口から出して、
皿の上に落としたイヌは、食べ終えたスイカの皮を別の器の上に置いた。
そして、切り分けて、盆に並べてあった
他のスイカに目をやった。
「もう1つ食べていいか?」
「もちろんよ。遠慮しないで。イヌ
ここにあるスイカ、全部食べちゃって構わないからね」
「うん」
イヌの嬉しそうな顔に、ヘリがつられて微笑んだ。
…ほんとにスイカが好きなのね。
以前、イヌから、果物で一番好きなのは
スイカだと聞いていた。
だから、スイカが出回る時期になったら、
イヌと一緒に食べよう、そうひそかに決めていたヘリだった。
それから、ヘリの決意は行動に移されて、
その後も、ヘリとイヌは、スーパーなどで切り売りされている
スイカを購入しては、二人でいる時にデザートとして、部屋で一緒に食べた。
そうしているうちに、うだるような暑さが続く日が続き、
スイカがまさに旬と言われる頃のある休日。
ヘリは、イヌの車に乗って、遠出のドライブデートを楽しんでいた。
田畑が広がった景色の中を走っていた時、
ふと、道端で、スイカを直売している小屋を見かけた。
「ねえ、イヌ、止めて」
ヘリは、イヌに車を停めさせると、車から出て、スイカ売りの小屋に近づいた。
机の上に並べられた大きなスイカを、ヘリは、叩いてみたりして、1つ1つ吟味した後、
「これ、下さい」と、ひときわ大きくて、いい音がしたスイカを指差した。
スイカの代金を払ったヘリは、振り向いて、後方のイヌにスイカを車につけるように頼んだ。
心よく承諾して、車のトランクにスイカを運びながらも、
イヌは不思議そうだった。
「なあ、一体このスイカ、どうするんだ?」
「どうするって、もちろん食べるのよ。私とあなたで」
「二人で食べるのか?食べきれないだろう?」
イヌが手の中の重くて大きなスイカに落としていた目を丸くした。
「食べるわよ。全部」
ムキになって答えたヘリに、イヌは、呆れたような眼差しを向けたが、
次に、何かに気づいて、ふっと柔らかく笑った。
明らかに思い出し笑いをしている様子のイヌに、ヘリは首をかしげた。
「何?」
「少し、昔を思い出したんだよ。子供の頃をね。
夏休みに、両親と田舎の方に旅行に行った時の、スイカの思い出だ」
「良かったら、聞かせて」
…聞きたい。
車中に戻って、
助手席のヘリの優しい眼差しに促されるように、
イヌが、車の運転をしながら、ぽつぽつと語りだした。
「小学校、低学年の頃かな。
両親が遠い親戚のいる、田舎町に連れていってくれた。
山も川も、海もあって、美しい田園風景が印象的な所だった」
懐かしそうに目を細めて、昔を思い出しているようなイヌの顔を
ヘリはじっと見つめて聞いていた。
「一面に広がった畑には夏野菜や果物がつくられていた。
そこで、親戚が、育てて収穫したスイカを切って食べた。
親戚の大人や子供だけでなく、近所の子供達も。
果樹の木陰で、丸太や茣蓙に座ってね。種は畑の土の上にほおりだして。
食べ終えたスイカの皮は、土の肥やしにしたり、
みみずのエサにしたりすると言っていた。
大きな一玉のスイカも、そうやって、皆で食べつくした。
いつも、家で切られて売られているスイカを食べていた僕には新鮮な体験だったよ」
イヌが、田園風景のある所が好きだという話も
聞いた事があったが、こういう経験からかもしれない。
ヘリは、そんな事を考えた。
「あの時食べたスイカがすごく美味しくて、
僕は、両親にせがんで、親戚からスイカを1玉ゆずってもらったんだ。
『食べきれないだろう』という大人たちに、『全部食べるから』と言ってね。
でも、家に戻って、切ったスイカはやはり大きくてさ。
親子3人には、一度で食べきれなかった。冷蔵庫にいれて、数日かけて食べたけど、
母が、その間、冷蔵庫に他の物が入らない、と笑って愚痴をこぼしていたな」
強情をはった子供のイヌの我儘を聞いて、
スイカを持ち帰ってくれた両親の、自分に向けられた、優しい苦笑いの顔を思い出しているのだろう。
イヌは、微笑みながらも、切なげに目を細めていた。
語り終えたイヌは、ヘリにチラリと顔を向けた。
「いい思い出ね」
ヘリの言葉に、イヌは前を向いてニコリと微かに口の端を上げて見せた。
しばらく、二人の間に静かな沈黙が流れたが、
それは、決して気まずいものではなく、ヘリが、何か考えこんでいたからだった。
そして、「そうだわ」と声をあげて沈黙をやぶった。
「私に、提案があるの」
「提案?」
「そ、スイカの美味しい食べ方」
ヘリは、そう言って、フフフっと一人笑いを浮かべた。
ドライブから、二人が住むマンションに帰ってきたヘリは、
買ったスイカをイヌに運んでもらって、自室に入った。
その後、ヘリが、何やら一人で、せかせかと動き回っている姿を、
ソファに座って待機させられていたイヌは、訳も分からず、面白そうに眺めていた。
やがて、準備が整ったらしく、ヘリがイヌを呼びに来た。
「今日はテラスでスイカを食べましょう」
ヘリに促されて、イヌがテラスに出ると、オーニングの下に、
水を張った桶が置いてあって、その中でスイカが1玉冷やされていた。
さらに、水をはったバケツが2つと椅子が2脚。
イヌは、腰を落として、桶の中の丸いスイカをマジマジと見つめながら、
「これ、二人で食べるのか?」と聞いた。
「これは何だ?」
イヌは、椅子とバケツを指差した。
「水の中に足を浸しながら、スイカを食べるのよ。
こうすると、とっても気持ちいいんだって。
ね、やってみて」
椅子に座って、素足をバケツに入れるふりをするヘリにならって、
イヌは、ズボンをまくりあげて足を出すと、水の中に入れた。
「ああ、なるほど。涼しくていいな。」
イヌが、納得したように頷いた。
「でしょ?」
ヘリは、バケツにつっこんだイヌの両足をまじまじと眺めた。
さほど、日焼けはしていないが、バランスの良い筋肉がついた
引き締まった足。
エジャから聞いた、父サンテの若かりし頃の思い出話を聞いても、
脳裏に浮かぶのは、今のサンテの足だったが、こうして、
恋人の姿を見ると、当時のエジャの気持ちが分かる気がした。
「セクシーな足ね」
そう言って、クスクスと笑うヘリに、イヌが、「なんだよ」とつられて笑った。
ヘリが笑いながら、桶の中のスイカを水から出した。
そして、包丁でスイカを切ろうとしたが、大きなスイカに
想像以上に手こずり始めた。
そんなヘリに、イヌがバケツから足を出して近づいてきた。
「包丁を貸して。なんだか、危なっかしくて見ていられない。
君はスイカを抑えていてくれ。僕が切る」
ヘリは、素直にイヌに包丁を渡して、スイカをおさえた。
イヌが、なめらかな手つきで、スイカを切り分けると、
トレイの上に並べて、椅子と桶の近くのテーブルの上に置いた。
「じゃあ、食べましょう」
そう言って自分のバケツの中に足をいれようとしたヘリを
「待って」とイヌが止めた。
「これは誰かのうけうりか?」
「ええ、こうして恋人とスイカを食べたって言う人の思い出を聞いて、
真似してみたくなったの」
「なるほどな」
イヌは頷くと、2つのバケツの位置を椅子からずらした。
「?」
不思議そうなヘリの視線をあびながら、イヌは、
スイカがはいっていた桶を中央にもってきた。
「これなら、二人一緒に足をいれられる。ほら、入って」
「ええ」
ヘリは、今さらのように照れ笑いをしながら、
おずおずと、桶の水の中に足をつけた。
水の中でヘリとイヌの足先が微かに触れ合っていた。
「涼しくなるどころか、なんだか熱くなってきたみたい」
ヘリが照れ隠しに、手でパタパタと顔を仰いで、
わざとそっけなく言った。
そんなヘリにイヌが笑って、テーブルの上のスイカを一切れ渡した。
「スイカを食べれば、体も冷えるさ」
「ん…、いただきます」
そして、ヘリとイヌは、
一つの桶の水の中に両足をつけて、むかい会って、椅子に座って、
一緒にスイカをほおばった。
日は傾いて、座っている場所が影になっていても、
蒸し暑い夏のテラスの上。
スイカはとても甘く、
それを一緒に食べる恋人たちのムードも負けずおとらず甘いものだった。
ヘリは、両親の思い出話を模倣してみて良かったと思った。
ヘリには、エジャやサンテや、イヌのように、大人数で、にぎやかに
スイカを食べた思い出は無かった。
なので、皆の思い出話を聞きながら、少し羨ましいと感じていた。
だけど、今年の夏は、本当に好きな恋人と一緒にこうしてスイカを食べている。
今はそれが、とっても嬉しい。
いつも、ほとんど冷房の効いた涼しい部屋の中で食べていたが、
今日みたいに、こうして、外で食べるのもいいだろう。
それに、今度は、スイカを買ったような外の場所で、
のんびりと、景色を眺めながら、食べるのもいいかもしれない。
そんな事を考えて、目を閉じたヘリの脳裏に、
ある光景が浮かんだ。
BGMに、夏の虫たちの声だけが響く、静かで、のどかな田舎町。
冷たい小川の水で冷やしたスイカをヘリが切り分けている。
そばには、イヌがいて、ヘリの切り分けたスイカを
小川に足を浸して座っているエジャとサンテに渡している。
それから、イヌは、小川に顔を向けて、こう言った。
『おいで。スイカを食べよう』
『は~い』
川で遊んでいた子供達が、ヘリの方に駆け寄ってくる。
子供達にもスイカを配って、最後にイヌにスイカを渡した。
『ありがとう』
イヌがヘリに優しく微笑んでいる。
エジャとサンテも笑っている。
子供達も…。
…子供たちって?
「ヘリ?」
自分を呼ぶ、イヌの声に、
ヘリは、ハッと我に返って、目を開けた。
「どうかしたのか?」
ヘリは、ボンヤリと、夕日の逆光に目を細めて、目の前にいるイヌの顔を見つめた。
…今のは、夢?
それとも私の妄想だったの?
やけにリアルだったけど。
ヘリが、手の中の食べかけのスイカに目を落しながら口を開いた。
「ちょっと決意していたの」
「決意?」
「これからも、いっぱいイヌとスイカの思い出をつくろうって」
「そうか…」
…同じ事を思っているよ。ヘリ。
ヘリの決意表明に対して、イヌが意思表示することにした。
お互い、スイカを持った手がふさがっていた為、
イヌは、そっと、桶の水の中で足を動かして、ヘリの足の上に重ねた。
そして、
「この夏は、もう飽きたって言うくらいスイカを食べようか」と言った。
それから、自分のスイカに再び口をつけた。
「ん、美味しいな。今年のスイカは、格別の味がする。
君とこうして食べているせいかな?」
からかうようなイヌの言葉。
ふざけてはいるけど、イヌの本心かもしれない。
「『恋の味』だからよ」
ヘリが笑って答えた。
スイカの季節が終わるまで、こうやって、
一緒に、いっぱい食べよう。
そして、
そのたびに、一つ、一つ、新しい思い出を重ねていこう。
さっき見た夢のような光景もいつか・・・。
そう、思い描いて、
その日は、マンションのテラスの上で、
ヘリはイヌと一緒に、桶の水に足をつけながら、
満足するまでスイカを食べ続け、また一つ、スイカの思い出をつくったのだった。
(終わり)
昨年、更新できなかった「スイカ」の季節話。
子供のころ、毎年、実家の田舎で、
祖母が畑で育てたスイカをほおばってました。
大きくて、甘くて、毎日、食べきれないくらいあって、
畑や庭や家の中で、家族や親せきや友人や近所の人達と
いつも大勢で食べた思い出があります。
スイカが好きなイヌも、ヘリと一緒に
これから、いっぱい思い出を作って欲しいな~と。
ブログへの拍手、拍手コメントありがとうございます!
私も、コメントがなくても、多分、いつもいらして下さっている方は
見て頂いているんだろうな、って思ってます。
こちらこそ、非公開コメントのお返事は個々にしていないので、
申し訳ないですが、いつも楽しく全部読ませて頂いてます。
ブログの記事が気にいって頂けたら、
【拍手ぼたん】を押してください♪
↓参加中
にほんブログ村 