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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「招かれるもの」(2話)-NYへいこう3-です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。

この話は、みつばの検事プリンセス二次小説シリーズの
最新作「NYへいこう」の続編です。




招かれるもの(2話)



…変ね。さっきと全然雰囲気が違うわ。

しばらくして、

ようやく異変に気付いたヘリは、
歩きながら、キョロキョロとあたりを見渡した。

どうやら、友人との待ち合わせ場所に急いでいて、
タクシーを探して歩いているうちに、
賑やかな表通りから外れた所に迷いこんでいたようだった。

通りかかるタクシーは1台も無かった。

タクシーどころか、走っている車も少なく、
人の往来もほとんど無い。

クリスマス仕様のイルミネーションが
ところどころに飾られていたが、周囲はどこか閑散とした印象だった。

携帯電話のナビを使用しようとしたヘリだったが、
やはり電源が入らなかった。

ヘリは、何とか通りがかった人をつかまえて、道を尋ねた。

「セントラル・パーク?公園の?」

「いえ。カフェの「セントラル・パーク」です。
住所は…という所ですが、ここはどこでしょう?」

「住所だと、ここからそんなに離れてはいませんよ。
ここを3ブロックも歩けば、その通りにつくでしょう。
でも、あのあたりに「セントラル・パーク」なんてカフェはあったかしら?」

ヘリに質問された中年の女性は、怪訝な顔で首をかしげた。

「ありがとうございます」

ヘリは、女性にお礼を言うと、指示された方角に歩き出した。

大きな通りに出れば、「セントラル・パーク」を知っている人に会うだろう。
携帯電話が使えなくても、公衆電話はどこかにあるかもしれない。

ヘリは、かなり楽観して、先を急ぐことにした。

そして、ゴロゴロとスーツケースを押して、ひたすら歩いていた時、

「ソ・イヌ」

ふと、聞こえた言葉に、ヘリが反応した。

…ソ・イヌ?

ヘリは声がした方向をとっさに見やった。

横路地の向こう側に、数人の少年たちの姿が見えた。

背格好が高い者もいたが、顔立ちは若く、
年は、中学生か、高校生くらいのようだった。

ヘリは、目を細めて、さらに路地の奥を覗き込んだ。

一人の少年の前を複数の少年たちが立ちふさがっている。
どう見ても、一緒に遊んでいるという雰囲気ではなかった。

とくに、複数いる方の少年達の中央にいた背の高い少年が
目の前の少年に、剣呑な眼差しを向けていた。

「ソ・イヌ。お前のそういう態度が前から気にいらないんだよ」

背の高い少年が言った。

…やっぱり、ソ・イヌって言った。
じゃあ、あの少年が「ソ・イヌ」なのね。
韓国人かしら?

ヘリは、背の高い少年が睨み付けている少年に目をやった。

ソ・イヌと呼ばれた少年は、目の前にいる5人より背が低かった。

どうやら、この「ソ・イヌ」は他の5人より年下のようだった。
しかし、年上を相手に、5対1で、対峙しているというのに、
ソ・イヌという少年に物怖じしている様子は無かった。

ひたと、少年達を見つめる暗い目は、外の気温より冷え込み、
どこか物事を達観したような落ち着き払った表情は、
目の前の5人より大人びたものだった。

「気にいらないのは、僕の態度なのか?トニー・ブライト。
君が、僕を気にいらない理由は別にあるんじゃないのか?」

“ソ・イヌ”が言った。

「どういう意味だ?」

ソ・イヌの言葉にトニー・ブライトと呼ばれた少年がひるんだようだった。

ソ・イヌは、チラリと、トニー・ブライトの取り巻きの少年達を見た。

そして、…ここでは話さない方が君のためじゃないのか?…という目をトニー・ブライトに向けた。

「学校の外でまで、僕に絡んでくるのは止めて欲しい。
君の友達たちには、無関係な事だ。それに、僕にも。
トニー、君が本当に“絡みたい相手”は僕じゃないだろう?」

「なんだって?」

イヌの言葉は、トニーの逆鱗に触れたようだった。

遠目からでも、トニーの顔色がにわかに赤くなったのが分かった。

恋人のソ・イヌと同じ名前の少年が気になって、
つい足を止めて、物陰から、成行きを見守っていたヘリも、
ヒヤリとして、息をひそめた。

…もしかして、いじめられているのかも。
最初はそう思ったヘリだったが、聞こえてくる会話から、
どうやら内情は違うようだった。

トニーという少年は、少年達のリーダー的存在のようだったが、
イヌという少年に敵意を向けているのは彼だけだった。

他の4人の少年たちは、ただ、二人の動向をはたから見守って立っていたようだった。

しかし、攻撃的な態勢になったトニーに、加勢するように
他の少年達も、イヌを一斉に睨みつけた。

「トニー、こいつ、一回痛い目をみないと分からないかもしれないぜ」

「この生意気な態度を改めさせるには、そうした方がいい」

そう言って、図体の大きい少年達が、前に出て、イヌを囲んだ。

イヌは、黙って少年達を睨み付けていた。

「イヌ、トニーに謝れよ」

「どうして、僕が謝る?先に通りすがりで、因縁をつけてきたのはあっちだ」

「こいつっ」

少年の一人が、いきり立って、イヌの胸倉を手で掴んだ。
他の少年達も身構えて、次の瞬間にもイヌに飛びかかりそうな勢いだった。

その時、

「待って」

そう言って、物陰から、飛び出てきたヘリに、
イヌをつかんでいた少年だけでなく、全員が驚いて動きを止めた。

「ちょっと、ちょっと待ちなさい」

ヘリは、そう言って、イヌをつかんだまま固まっている少年の前に
立った。

「暴力はダメよ。暴力は」

「…あんた何?」

少年達は、おかしな闖入者に、呆気にとられていた。

「通りすがりのお姉さんよ。
詳しい事情は知らないけど、大勢で、
一人と喧嘩しようなんてことは、見過ごせないわ。
さっ、この子から手を離してあげてちょうだい」

ヘリが言う前に、少年は、イヌから手を離していた。

なんなんだ。この変な女は。

そんな風に思っているような目で少年達がヘリを見つめる中、
トニーという少年が、「…もう、いい」とぶっきらぼうに言った。

「俺がこいつを相手したせいで、時間をくってしまって悪かったな。みんな。
他のやつらを待たせているから、行こう」

トニーの言葉に、少年達は、当惑したように顔を見合わせた。

「トニーがいいって言うなら」

そう言って頷くと、もう、イヌには目もくれず、
颯爽と歩き出したトニーの後に続いた。

イヌをつかんでいた少年だけが、まだ、物足りないような顔で、
イヌを睨みつけていた。

「ボブっ」

「ちっ…わかったよ」

トニーの呼び声に渋々、イヌから背をむけた少年は、
去り際、腹いせかわりのように、ヘリの肩にわざとぶつかって走って行った。

さほど強くでは無かったが、不意打ちの衝撃によろめいたヘリは、建物の壁にあたって、尻餅をついた。

「いった~い。もう、なんなのよ」

地べたに座り込んで、去って行った少年達の後ろ姿を、
恨めしそうに見つめているヘリにスッと手が差し伸べられた。

ヘリが見上げると、イヌが、
無言で片手を出して、ヘリを見下ろしていた。

少年イヌの手に引き起こされたヘリは、立ち上がると、
目の前のイヌの体をじろじろと見まわした。

「大丈夫?けがはない?」

「僕は何もされてない。
お姉さんの方こそ、大丈夫なの?」

「ええ、ちょっとぶつかっただけよ。
でも、あなたも危なかったわよ。あの人数を相手に挑発しすぎていたんじゃない?」

聞いていたところ、イヌとトニーの話は、他の少年達には無関係のようだったが、
トニーを刺激すれば、仲間たちが加勢するのは目に見えていた。


「お姉さんが止めに入らなくても、友人が僕を殴るのをトニーが止めていたよ」

「そうなの?」

「トニーは、根はいいヤツだ。仲間思いで。だから取り巻きも多い」

「そんないい子に恨まれるって、あなたは彼に何をしたの?」

そう不思議そうに聞くヘリに、イヌは答えずに軽く肩をすくめてみせた。

その人を食ったような仕草が、あまりにもヘリのよく知る人物に似ていた。

「お姉さんこそ、見ず知らずの人間におせっかいを焼こうとすると、
さっきみたいなトバッチリをくうから、気をつけた方がいいよ」

イヌの冷たい言葉に、ヘリは、目を丸くした。

ヘリを見る少年イヌの目は、助けてもらって感謝しているというものではなく、
呆れを含んで、蔑んでいるものだった。

…どこかで似たような目を見たことがあるわね。

ヘリは、チラリと、記憶を呼び起こしながらも、
今目の前にいる不遜な態度の少年にムッとして、頬を膨らませた。

「困っている人を助けるのは、お節介じゃないわ」

「…お姉さん、観光客だろ?」

イヌが、ため息をついた。

「このあたりでは、人のいざこざは、見て見ぬふりするのが常識だよ」

「…見て見ぬふりをする…ね。あなたのような子供にそう言われるなんて」

住んでいる人間にしか分からない常識はあるのかもしれない。
それでも、自分より半分くらいしか生きていなそうな少年の口から聞いて、
切ない気分になったヘリだった。

そんなヘリをイヌがじっと見つめた。

「お姉さん、周りの人にお人よしって、言われない?」

「言われたことはあるわ」

恋人のソ・イヌに。

ヘリは情けない気分になってきた。
同時に、今の会話で、恋人のソ・イヌを思い出して、
早く会いたい気持ちが増していた。

「ねえ、あなたは、「セントラル・パーク」ってカフェを知ってる?」

「セントラル・パーク?知らない」

「住所だと、このあたりのようなんだけど」

ヘリが、イヌに住所を述べた。

「たしかに、住所は、この先の通り沿いだよ。
でも、そこにそんな名前のカフェは無かったと思うよ。
お姉さん、名前を間違えてない?」

「間違えてないわ。さっき聞いたもの。
そうだ。あなたの携帯電話を貸して。友人に連絡を取りたいの。
私のは壊れちゃったみたいで」

ヘリがそう言うと、バッグから携帯電話を取り出してイヌに見せた。

イヌが、怪訝そうに、ヘリの携帯電話を見た。

「これ、何?」

「携帯電話よ」

「ゲーム機じゃないの?」

「違うわ。機種が違うからそう見えるのね。あなたのはどんなの?」

「持ってない」

「持ってないの?今時は、小学生でも持っていると思ったけど、
ここでは子供は持ち歩かないのかしら?」

「子供どころか、そんな形の電話を持っている人を誰も見たことが無いよ」

だんだんと、少年イヌが、胡散臭そうにヘリを見だした。

「お姉さん、どこから来たの?」

「韓国よ」

「韓国…」

ハッとして、イヌの顔つきが変わった。

「あなたも、同郷じゃないの?」

そう聞いて、顔を覗き込んだヘリに、イヌがふいっと背を向けた。

そして、ヘリの質問には答えずに、突然歩き出した。

「ちょっとっ」

慌てて、スーツケースを持ったヘリを、
イヌが感情を隠したような顔で振り返った。

「同郷のよしみで、住所の近くまで案内するからついてきて」

そう言うと、少年イヌは、戻ってきて、ヘリのスーツケースを持つと
再び歩き出した。

無言でどんどん歩きながらも、後ろにいるヘリに意識を向けて、
ヘリの歩調に合わせて、ゆっくり歩いているようだった。


…この男の子、何だか、名前だけじゃなくて、
性格も私のよく知っているソ・イヌに似ているみたい。
性格だけじゃなくて、顔も似ている気がするけど…。


少年の後ろ姿を見ながら、そんな事を考えて、

クールに振る舞う小さなソ・イヌから、見え隠れする優しさに、
ヘリは、思わず微笑んでいた。



(「招かれるもの」2終わり 3に続く)



登場人物

マ・ヘリ(マ検事)

ソ・イヌ少年


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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

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