韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「招かれるもの」(1話)-NYへいこう2-です。
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この話は、みつばの検事プリンセス二次小説シリーズの
最新作「NYへいこう」の続編です。招かれるもの(1話)ニューヨーク行きの飛行機に乗ったヘリは、
さっそく酔い止めの薬を飲んで、睡眠をとった。
そして、機内食の時間に起き、食事を済ませたヘリは、
再び寝ようとしたが、興奮状態で目が覚めてしまっていた。
…イヌに会える。
イヌの養父のジョン・リーさんに会える。
ネット友達に会える。
あと、数時間でそれらが叶うという期待感で、
ヘリはそわそわしだした。
飛行機で配信されている映画でも見て時間をつぶそうと思った
ヘリだったが、ふと、横の席にいた客の動向が気になった。
ヘリの横の席に座っていたのは、年配の紳士だった。
ペンを持って、しばし考え込んでは、手元の冊子に何やら書き込んでいる。
…何やっているのかしら?
好奇心旺盛なヘリは、無意識に老紳士の方に身を乗り出していた。
そんなヘリの視線に老紳士が気づいた。
老紳士は、ヘリが興味深々な視線を送っていた
自分の手元を見た。
「ああ、ゲームをしているのですよ」
そう言って、老紳士はヘリに、冊子を見せた。
クロスワードパズルなど、語彙力や記憶力を用いて、
解答する問題が掲載されている雑誌だった。
「すっかりはまっていましてね。でも、ゲーム機やデジタルは合わなくて、
荷物になるのに、この手の雑誌をいつも持ち歩いています。」
「楽しそうですね」
「どうぞ。あなたも良かったら。これ、差し上げます」
老紳士はヘリに雑誌と赤インクのペンを差し出した。
「ありがとうございます」
ヘリは、素直に礼を述べると、老紳士からゲーム雑誌を受け取った。
記憶力を試されるゲームはヘリの得意とするところだった。
「…ほお…」
次々にページをめくって、問題をクリアしていくヘリを
隣の老紳士が感心したように見ていた。
ゲームに夢中になっていたヘリは、ついペンの先を
自分に向けて、考え込んでいた。
そして、
「あっ…いけない」
ヘリは赤色のペン先が服に留めていたブローチについていることに気づいた。
それは、1年以上前、ヘリが賭博の潜入捜査に行く前に、
イヌからもらった王冠の形のブローチだった。
王冠のブローチの表面に小さな赤いしみが出来ていた。
ブローチをひっぱって慌てているヘリに、老紳士が手荷物から
ウエットティッシュを取り出して、差し出した。
「水性のインクですから、大丈夫ですよ」
情けない顔をしているヘリを慰めるように老紳士が優しく言った。
「素敵なブローチですね。もしかして誰かからの贈り物ですか?」
「ええ、付き合う前の恋人にもらったものです」
「大事にされているのですね」
ヘリが頷いた。
「幸運の王冠なんです」
「幸運の王冠?」
興味深そうに首をかしげる老紳士にヘリが言った。
「はい。これをくれた人が、その時に言ったのです。
幸運は人が招く。これは幸運の王冠だって」
「なるほど…幸運は人が招く…ですか」
老紳士は、ヘリの言葉に納得したように頷いた。そして、
「幸運は人が招くもの。そして、人の出会いもまた人が招くもの」
そう独り言のように呟いた老紳士を、ヘリはまじまじと見つめた。
優しげで人好きするような柔和な顔。品良く着こなしている質素な服装。
体つきは小柄で、目立つ外見というわけではないのに、
黙って座っているだけで、どこか不思議な存在感を醸し出していた。
じっと見つめているヘリの視線に老紳士が
にっこりとほほ笑み返した。
「あなたは、ご旅行ですか?」
「はい。ニューヨークで人と会う約束をしています」
「それは、そのブローチを贈った恋人ですね?」
「どうして、分かるんです?」
きょとんとしたヘリに、老人が「この時期ですから」と笑った。
「でも、遠距離恋愛というわけでも無さそうだ」
「ええ、彼は出張でニューヨークに行っています。
それで、ついでに私も行って、クリスマスを向こうで一緒に過ごす予定なのです。
…でも、どうして遠距離恋愛じゃないって思ったのですか?」
「あなたは、恋人と少しでも離れていたくない、という顔に見えるからです」
「そんな、分かりやすい顔をしてますか?私」
イヌだけでなく、こんな会ったばかりの人にまで悟られてしまうなんて。
私って、どれだけ感情が表に出てるのかしら?
しかし、ヘリは、嫌な気分にはならなかった。
むしろ、穏やかな物言いながらも、妙に鋭い老紳士に興味を抱いた。
何故か、ただものではないという雰囲気が漂っている。
「あの、もしかして、あなたは占い師ですか?」
いきなり突拍子もない質問をするヘリに老人は、面白そうな顔をした。
「どうして、そう思われましたか?」
「人を見る目がおありのようでしたから、そういう職業の方かと思って」
「なるほど…。あなたはなかなか鋭い直観をお持ちだ。それに発想は飛躍していますが、ユニークですね」
笑顔で、褒められているのか、面白がられているか分からない老紳士のコメントに、
ヘリは、恐縮して曖昧な笑みを返した。
その後、ヘリはしばらく老紳士と話をした。
話をしてみると、老紳士は博学な上に話し方も上手だった。
まるで、大学時代、人気のあった教授の講義を受けている時のように
ヘリは、老紳士の話に聞きほれていた。
そうしているうちに、まもなく、着陸するという
飛行機のアナウンスが流れてきた。
「つい、長話をしてしまって、申し訳ない。
お疲れだったでしょう」
腕時計の時間に目を落とした老紳士が申し訳なさそうにヘリに言った。
「いいえ、とても楽しくて有意義な時間を過ごさせて頂きました。
ありがとうございます」
本心から丁寧にお礼を伝えるヘリを、老紳士が感慨深く見つめた。
「今さらですが、あなたのお名前を窺ってもよろしいですか?」
「マ・ヘリです」
「マ・ヘリさん。私は、キム・ビョンホです」
やがて、飛行場に飛行機が着陸すると、乗客たちは慌ただしく
席を立った。
「キム・ビョンホさんは、これからご旅行ですか?」
「いいえ、今はアメリカを拠点に仕事をしています。NYにも長く住みましたが、
やはり、祖国が恋しい。今の仕事を退職したら韓国に戻るつもりです」
「では、また会えるかもしれませんね」
名残惜しげに、そう言ったヘリに、キム・ビョンホはにっこりと笑った。
「幸運は人が招く。そして、人との出会いも人が招きます。
あなたとの出会いは私にとって幸運でした。また、お会いしましょう。
マ・ヘリさん。恋人と楽しいホリディをお過ごしください」
名前以外、住所も電話番号もメールも交換していない相手なのに、
キム・ビョンホの言葉は、すんなりとヘリの心の中に落ちた。
…人との出会いは人が招く。
不思議ね。キム・ビョンホさんとは、
また、どこかで会える気がするわ。
ヘリは、遠ざかっていくビョンホの後ろ姿を見送りながら思った。
飛行機から降りたヘリは、税関を出ると、早速イヌに電話した。
「イヌ、無事ついたわよ」
『そうか、飛行機は大丈夫だったか?』
飛行機酔いをするヘリを気遣う優しい言葉に、
ヘリは、今すぐにでもイヌに会いたくなった。
「ええ、平気。隣に楽しい男性がいてくれたおかげで、
快適に時間を過ごせたわ」
『…楽しい男性?』
怪訝そうなイヌの声にも、ヘリは気づかずに、
浮かれた調子で話を続けた。
「私はこれからタクシーで、待ち合わせ場所に向かうわね。
イヌは打ち合わせ通りの時間に来てちょうだい。じゃあ、後でね」
『おいっ。ヘリっ。楽しい男性っていうのは一体…』
あわてて、問いかけるイヌの言葉を最後まで聞かずに、
ヘリは、通話を切ったようだった。
携帯電話から聞こえる、ツーツーという、無言の電子音に、
イヌは顔をしかめた。
ヘリには、イヌをあたふたさせてやろう、という意図があって、
『楽しい男』キム・ビョンホの事を言ったわけでは無かった。
しかし、詳細を伝えずに切られたヘリからの電話で、
イヌは疑心暗鬼にかられた。
…楽しい男だって?
機内でナンパでもされたんじゃないだろうな。
ヘリにその気は無くても、男に気があって、
ストーカーでもされたら、どうするつもりだ。
…などと、数年前の自分の所業を棚にあげて、
悶々としていたイヌのことなど、つゆ知らず、
ヘリは、ウキウキした足取りで、空港を出た。
タクシーに乗り込んで、ヘリは、待ち合わせ場所向かった。
やがて、ついたカフェの中に入ったヘリは、さっそく友人の姿を探した。
しかし、込み合った店内の中に、
インターネット電話で会っていた友人の顔は無いようだった。
“ヘリよ。待ち合わせ場所についたのだけど、どこにいるのかしら?”
そう、ヘリの携帯から友人に送ったメールに、すぐに返事が届いた。
『店の入り口から見て、中央くらいにあるソファの席に友人たちと座っているわ』
“ソファ?店にソファ席は無いみたいだけど”
『ソファが無い?ヘリ、今どこにいるの?』
“「セント・レア・パーク」”
『ヘリ、違うわ。待ち合わせ場所の名前は「セントラル・パーク」よ』
「ああ~っ」
友人からのメッセージが届いた携帯電話を見て、
つい大きな声を出したヘリは、店中の人の注目を集めた。
どうやら、タクシーの運転手に伝える時に、言い間違えたようだった。
…やだ、店名を間違えたのね。
“最近できた店で、名前が似ているからよく間違えられるのよ。
私がそっちに向かうわ”
ヘリを慰めて、そうメッセージを送ってきた友人の提案をヘリは断った。
イヌにも、もう「セントラル・パーク」で待っていると打ち合わせしていた。
場所を変えれば、そのわけを聞いたイヌは、これ見よがしに呆れた顔をするだろう。
『やっぱり、君は、何かしら事を起こす名人だな』
そう言った後、
意地悪く笑うイヌの顔も容易に想像できた。
イヌにはすぐに会いたかったが、あえて、いびられるネタを提供するのは、
御免こうむりたいヘリだった。
“また、タクシーを拾ってすぐに向かうから待っててね”
そう友人にメールを打つと、ヘリは、店の外に出た。
…はやく、待ち合わせ場所に向かわなきゃ。
そうあせったヘリは、目の前を走りさったタクシーの空車に
手を振って追いかけるように走った。
目の前のタクシーしか見えてなかったヘリは
街路樹に設置するために用意され、置いてあった電飾の線の束に足をとられた。
「きゃあ」
バランスを崩したヘリは、
後ろにあったクリスマスツリーに勢いよく倒れこんだ。
大きめのクリスマスツリーだったが、
ヘリの体重を支えきれずにヘリと共に転倒し、大きな音をたてた。
バタンっ!!ドーン。
「・・・いたた…」
衝撃が収まった後、うっすらと目を開けたヘリに、
チカチカとした物が見えた。
転倒した時に頭を打ったかと、考えたヘリだったが、
それは、クリスマスツリーの電飾の光だった。
ヘリは、起き上がると、足にからまった電飾の線をはずした。
そして、一緒に倒れていたクリスマスツリーを立て直し、起き上がった。
「もう。こんなところで転んでいる暇は無いのに」
そう、ぶつぶつ言いながら、腕時計を見たヘリは、
時計の針が止まっていることに気づいた。
…今ので、時計が壊れちゃったかしら?
ヘリは、バッグから携帯電話を出して時間を確かめようとした。
しかし、なぜか携帯電話の電源が入っておらず、何度操作しても、
画面が復帰しなかった。
…携帯電話まで壊れちゃったの?
訝しがりながら、ヘリは、今度はあたりを見渡した。
先ほどより空模様が荒れていて、
時間もかなりたったように薄暗くなっていた。
心なしか、周囲の風景も変わっているように見える。
…さっき、あんな所にあんな建物あったかしら?
急いでいて、景色をしっかり見ていなかったから気づかなかったわ。
ヘリは、妙な胸騒ぎを気のせいにして、先を急ぐべく、
服のホコリを払って、スーツケースを転がして歩き出した。
その時、振り返らなかったヘリには、見えていなかった。
ヘリが先ほどまでいたカフェ「セント・レア・パーク」。
その看板の文字が消え、外観もまったく異なった店がそこに建っていたという事を…。
何も知らずに、先を急ぐヘリ。
ただ、ヘリのコートの下で胸元につけていた王冠のブローチが、
ヘリを守るように、淡い光を発して輝いていた。
(「招かれるもの」1終わり2に続く)
登場人物
マ・ヘリ(マ検事)
ソ・イヌ(ソ弁護士)
キム・ビョンホ…ヘリと同じ飛行機に乗り合わせた老紳士
先日の雑記を読んで下さった方、
拍手、拍手コメントを下さった皆様
ありがとうございました!!
今回は、ずっと考えていて、書いた記事だったので、
準備が出来ていました。
ブログ、これからも楽しんで続けていきます♪
…で、ずっと考えていたわりには、「署名活動」を
「著名活動」って書いてますね。これだけは直しておきます。
ご指摘してくださった方、ありがとうございます!
日本語が不自由だって、相方にもよく呆れられます。
これからも、気づいたら、教えてください。
通りすがりさんへ
私も同じこと思いました。
またかよって(笑)
重ね重ね、もっともなご意見。
うん。これからも創作続けます。
すごく励ましてもらった気がする。変かな?(笑)
そして、今までもブログを読みに来てくれていたこと。
嬉しかった。ありがとう。
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