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こんにちは。みつばです。

今日からGWに入りますね。

我が家では、今日から親戚たちがGW中ずっと家に滞在。
そして、ほぼ毎日、行楽に出かける予定もあるので、
ブログ「みつばのたまて箱」は、しばらくお休みさせて頂きます。

検事プリンセスの二次小説「招かれるもの」。
またお待たせしますが、休みが終わってから、続きを再開しますね。

休みの間、空き時間が見つかれば、携帯電話で、何か更新します。
雑記とか、感想とか、「嘘つきは恋の始まり」のおまけ話(裏箱じゃなくても大丈夫かな?←今更)とか。

それでは、また。

お休み後に「みつばのたまて箱」でお会いしたいです♪
みなさま、楽しいGW休暇をお過ごしください。


「招かれるもの」の少年ソ・イヌのイラスト。
…ツヤベタ練習用。



少年イヌ


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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「招かれるもの」(3話)-NYへいこう4-です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。

この話は、みつばの検事プリンセス二次小説シリーズの
最新作「NYへいこう」の続編です。




招かれるもの(3話)



恋人と同姓同名の少年、ソ・イヌに案内されて、ヘリは、
待ち合わせ場所のカフェがあるという通りについた。

「お姉さんの言っていた住所はこのあたりだ」

「案内ありがと」

そう礼を言って、ヘリは、イヌからスーツケースを受け取った。


「おかげで助かったわ。ソ・イヌ君」

「どうして、僕の名前を?」

「さっき、他の子たちがそう呼んでいるのを聞いたからよ。
友達と喧嘩ばかりしてちゃダメよ」

「・・・・・・」

イヌが、何か言いたげな顔になった。

ヘリの、“喧嘩ばかりしてちゃダメ”に反論したいのか、
それとも、自分も名前を聞こうか、そう迷っているような顔だった。

しかし、口にしたのは、こんなセリフだった。

「お姉さんも、おひとよしは大概にした方がいいよ。
さっきは、僕らのような子供の悪ふざけだったけど、そうじゃない時もある。
下手に首をつっこめば、ぶつかるのは肩だけじゃすまないよ。
とくに、このへんは治安が良くない場所もあるから気をつけて」

年上に言うには、あまりにも生意気でエラそうな口調にも
ヘリは、にこりと笑いかけて、手を振った。

「ご忠告、ありがと。じゃあ、元気でね。さよなら」

スーツケースを押しながら、歩き始めたヘリの後ろ姿を
イヌは、黙ってしばらくじっと見つめていた。


少年イヌと別れて、大通りの歩道を歩いていたヘリは、
待ち合わせ場所のカフェを探した。

しかし、「セントラル・パーク」というカフェはみつからず、
通りがかりの人に聞いても、首をかしげられるばかりだった。

「そんなカフェの名前はこのあたりでは知らないな」

そんな返事ばかり聞いたヘリは、だんだん不安になってきた。

…名前だけじゃなくて、今度は住所も勘違いしてたのかしら?

歩き疲れて、喉が渇いていた。そして、足もだるい。

ヘリは、とりあえず、いったん休憩することに決めて、
目についたカフェの中に入った。

店内に入って、コートを脱いで、席に座ったヘリは、
ふと、自分の服の胸元を見て、そこにつけていた王冠のブローチが無いことに気づいた。

…え?

ヘリは、勢いよく立ち上がり、自分の周りを見渡した。

しかし、ブローチは、近くには無かった。

「どうされました?」

ヘリのあたふたしている姿に、店員が不思議そうに近寄ってきた。

「落し物をしたみたいなんです。このくらいの大きさの王冠の形のブローチなんですけど」

ヘリの言葉に、店員が、店の入り口からヘリの席までの床を見渡した。

「ここには、ないようですね。店に入られる前に落とされたのでは」

店員の言葉にヘリがハッとなった。

…そうだわ。
さっき、ボブという少年とぶつかって、半身を打った時、
はずみで、ピンが外れて、落ちてしまったのかもしれない。
じゃあ、あの場所にまだあるかも。

ヘリは、あわてて、コートを着なおすと、
店員の不思議そうな眼差しを背に慌ただしく店を出た。

ヘリは、急いで、先ほど、少年のソ・イヌと別れた場所に戻って、
そのあと、地面を舐めるように見つめながら、少年達がいた方向に向かって歩いて行った。

ブローチは小さいものだった。

広い範囲で見つかる可能性は無いと分かっていても、
ヘリは探さずにはいられなかった。


路地裏の薄闇で、けばけばしい電飾の光が、
チカチカと怪しげに瞬いている。

脳裏に、

『そんなものは、ほおっておけ。危ない真似をするな』

そう、叱咤するイヌの姿が浮かんだ。

「でも、なくしたくないんだもの」

ヘリは、心の中の幻のイヌに言い訳するように呟いた。

ヘリが細い路地横の建物の影に入り、
置かれたダストボックスやガラクタの下を
キョロキョロと、腰を屈めて、ブローチを探し続けていた時、


「そこの、お前っ」

と、後ろから、荒い口調で呼び止める男の声がした。

ヘリが振り返ると、通路の後ろをふさぐように、
3人の若い男が立って、ヘリを見下ろしていた。

「ここは、“商売”をしていい場所じゃないぞ」

男たちは、挙動不審なヘリを、訝しんでいる様子だった。

「商売なんてしてないわ。私は、ここで無くしものを探していただけよ」

そう言ったヘリに、男の一人が嘲笑を浮かべた。

「無くしものだって?一体何をなくしたんだ?『クスリ』か?」

…クスリ?

「クスリじゃなくて、ブローチよ。王冠の形のブローチ。
このあたりで落ちているのを見たりしてない?」

「見てないな、観光客か?」

「ええ、そうよ」

3人の男たちは顔を見合わせると、ニヤニヤとヘリに顔を向けた。

「変だな。ここは観光するような場所じゃない」

「不法入国者じゃないのか?」

「このあたりに、届け出も出さずに勝手に“商売”する女がいると聞いたが」

ヘリはようやく、男たちが何を勘違いしているのかを知った。

「不法入国じゃないわ。パスポートも持っているわよ。
それに、私の職業は検事よ」

「検事?」

男たちのニヤニヤ笑いが消えた。

「そう、それに、ここには、道に迷いこんだようなものよ」

「道に迷ったのか」

男の一人が納得したように頷いた。

「じつは、俺たちは警官だ」

「警官?」

男たちの服装はラフなもので、警官には見えなかった。

「覆面だよ」

「不法入国者や無許可で仕事をしている者を取り締まっている」

「道に迷ったのなら、案内するから、こっちに来てくれ」

男がヘリに手招きした。

…警官。良かった。
これで、「セントラル・パーク」まで行けるわ。

ヘリは、ホッとして、男たちの方に行こうと体を向けた。

その時。

「お姉さんっ!何やってる」

ヘリの後方で、怒鳴る声がした。

ヘリが驚いて、振り返ると、先ほど別れた
ソ・イヌという少年が、通路の向こう側に立って叫んでいた。


「逃げろ。
そいつらは、警官なんかじゃない!」

「え…?」

きょとんとしながら、ヘリは、動きを止めた。

そんなヘリにイヌが、切羽詰まった表情で手を差し出していた。

「いいから、こっちに走って!早く」

状況を読み込めず、でも反射的にイヌの方に駈け出したヘリに、
3人の男たちが、チッと舌うちを打った音が聞こえた。

「ガキが余計なことを!」

「ガキはいいから、女を捕まえろ!」

背後から聞こえてきた物騒な怒号と足音に追い立てられるように、
ヘリは、イヌの元まで全速で走った。

「こっちだ!」

イヌは、自分の方に駆けてきたヘリの手をとると、ひきつけ
乱暴に、裏路地の中にヘリの体を押し出した。

そして、後ろから追ってきている男たちに目を向けると、
近くに高く積みあがっていた空のビールケースと段ボール箱を
思いっきり足で蹴り倒し、ヘリの後に続いた。

派手な音を響かせて、ビールケースが地面に崩れ落ち、
段ボール箱にあったものが通路に騒々しく散乱して、男たちの行く手を阻んだ。

音を聞きつけて、建物の中にあった飲食店の裏口から、
店員たちが何事か、と覗いた。

そして、道中に広がったケースや荷物の中身と、
その前にいた3人の男たちを見つけた店員たちは、
怒りをあらわにして外に出てきた。

「おまえらかっ、何してくれるんだ!」

「なおしていけ。弁償しろっ」

包丁を振り回した屈強なガタイの調理人に、
3人の男たちはひるんだように後ずさった。

「これは、あのガキのしわざだ」

「ガキってどのガキだ」

店員たちは男たちの指さした方向を見たが、そこにはもうイヌとヘリの姿はなかった。

再び視線を戻した店員たちは、「…警察をよぶぞ」と言って、
男たちを睨み付けた。

男たちは渋々、散乱したケースや段ボールを片づけ始めた。

その頃、

ヘリは、イヌに誘導されて、かなり離れた距離まで走っていた。

「…ここまで来れば、大丈夫か」

速度を落して、後ろを振り返ったイヌは、立ち止まって息を整え始めた。

「ハアハア…い、一体なんだったの?」

立ち止まったヘリも、荒い息をつきながら、イヌを見た。

訳も分からず、イヌについてきたヘリだったが、
背後から追ってきた男たちが醸し出していた不穏な空気に、
何かやばい、という事だけは分かった。

「あの男たちは、警官じゃない。
ああやって、商売女じゃないか?といちゃもんをつけ、
自分たちは警官だから、と騙して、かどわかすのが手口の連中だよ」

「そんな。じゃあ、かどわかされたら、どうなっていたの?」

「ほんとうに商売をさせられていたかも」

男たちや少年イヌの言っている“商売”という意味が
ようやく理解できたヘリだった。

イヌに連れだされなかったら、このピンチを切り抜けられなかっただろう。

今さらながらそれに気づき、ぞっと背中を伝う冷たい汗のような感覚に、
ヘリは、ほおーっと深く息をついて、胸をなでおろした。

「危なかったのね」

「そうだよ。あんな怪しい人たちに
ノコノコついていこうとするなんて、何考えていたの?」

「だって、警官だって言うんだもの」

「それを信じる?ふつう」

ヘリに、容赦ない言葉を浴びせて、呆れた顔をしているイヌに、
ヘリは反発するように頬を膨らませてみせた。
そして、ふと、あることに気づいて、イヌを見やった。

自分の顔を、まじまじと見つめるヘリの視線に
イヌが、「何?」と眉をしかめた。

「あなたの家はあの近くなの?」

ヘリを案内してから別れたはずなのに、
少年がまだ、あの場所にいたことが不思議だった。

イヌが首をふった。

「違うよ。あそこは、知り合いの所から家に帰る近道なだけ」

「治安が良くないって言っていたのに、危ないじゃない」

「それは、こっちのセリフだよ。
なんで、戻ってきたんだよ。カフェに行くんじゃなかったの?」

「だって、変なんだけどね。カフェがどこにも無かったの。
名前はあっているはずなのに」

「もう1度カフェの名前を言って」

「セントラル・パーク」

「やっぱり、このあたりでは聞いたことないよ。
住所、間違えてるんじゃない?」

「うん…。その可能性も出てきたみたい」

「それで、また道に迷ったの?」

「違うわ。私、探し物をしていたの。
服につけていた王冠の形の小さなブローチなんだけど、
さっきの路地で落としたかもしれなくて」

「だから、変な姿勢で、うろうろしていたんだ」

「そう、だから、変な姿勢でうろうろ…って、
なんで、そんな事知ってるのよ?もしかして、ずっと見ていたの?」

ヘリの言葉に、イヌが、しまった、という顔をした。

「…ねえ、もしかして、私を心配して、店を見つけるまで
つけていてくれていたんじゃないの?」

「つけてなんてない。帰り道に、お姉さんが、
おかしな行動をしているのを、たまたま見つけただけだ」

イヌがむきになって言った。

「それで、たまたま、私がからまれたのも見つけて、助けてくれたわけね」

「同郷の人間をほおっておけないから」

ぶっきらぼうに言っているわりに、
少年の耳元が赤く染まっているのを、ヘリは見逃さなかった。

…さっき、私に、
人のいざこざは、見て見ぬふりするのが常識だよ。とか、
お人よしも大概にしたら。とか言っていたくせに。

ヘリは、やはり“わかりやすい”少年の不器用な親切と優しさに
嬉しくなって微笑んだ。

「ありがとう」

ヘリに面とむかって礼を述べられたイヌは、
照れ隠しのようにそっぽを向いた。

「もう、行こう。さっきの男たちも諦めたと思うから」

そう言って、歩きだそうとしたイヌに、
ヘリが情けない顔で、その場にしゃがみこんだ。

「足が痛いの。もう少し休んでから行きたいわ」

「…お姉さん」

しょうがないな、という風に、少年イヌは、空を仰いで、
ため息をついた後、ポケットからハンカチを出した。
そして、近くに置いてあった木箱の上にひいた。

「ここに座って」

「ありがと。気がきくのね」

「レディ・ファースト。女性には親切にって」

「それ、あなたのお父様に教わったの?
だとしたら、いいお父様ね」

何気なく、そう言ったヘリの言葉に、
イヌの雰囲気が一変した。

…何かまずいこと言ったかしら?

周囲より冷え込んだ空気をまとわせて、
急に黙りこくった少年を、ヘリは心配そうに覗き込んだ。


(「招かれるもの」3終わり 4に続く)


登場人物

マ・ヘリ(マ検事)

ソ・イヌ少年


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「みつばの裏箱」にて、

「検事プリンセス」二次小説「温泉へいこう3話」のイヌ×ヘリ
イメージイラストを更新しました。

「裏箱」に関しての説明はこちらから。
注意事項をよく読んでご覧くださいね。

かなり前に描いていて、表でアップしようかな?と
思っていたのですが、イヌの手が・・・ね(苦笑)

ミニ小説もつけたかったけど、その余力は今
シリーズ話の執筆にまわします。

追記できたら、また、その時にお知らせで♪

「温泉へいこう」はちょうど去年の今ごろに更新した
話でした。あれから、もう1年たつのか~…そう考えると早い。。。


「NYへいこう」話への拍手、拍手コメントありがとうございます!

新キャラが続々登場の、今回の二次小説シリーズですが、
今後の伏線がいろいろあるので、謎な人物は覚えておいてください♪
…更新が遅すぎて忘れられるかな。ジェームスみたいに(汗)

もうすぐGWに入りますね。
世界1周一人旅に行かれる方も、沢山楽しんでいらしてくださいね!
凄いな~。私が若い時は(笑)人生は放浪してたけど、海外は数えるくらいしか
行ったことないです。

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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「招かれるもの」(2話)-NYへいこう3-です。

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招かれるもの(2話)



…変ね。さっきと全然雰囲気が違うわ。

しばらくして、

ようやく異変に気付いたヘリは、
歩きながら、キョロキョロとあたりを見渡した。

どうやら、友人との待ち合わせ場所に急いでいて、
タクシーを探して歩いているうちに、
賑やかな表通りから外れた所に迷いこんでいたようだった。

通りかかるタクシーは1台も無かった。

タクシーどころか、走っている車も少なく、
人の往来もほとんど無い。

クリスマス仕様のイルミネーションが
ところどころに飾られていたが、周囲はどこか閑散とした印象だった。

携帯電話のナビを使用しようとしたヘリだったが、
やはり電源が入らなかった。

ヘリは、何とか通りがかった人をつかまえて、道を尋ねた。

「セントラル・パーク?公園の?」

「いえ。カフェの「セントラル・パーク」です。
住所は…という所ですが、ここはどこでしょう?」

「住所だと、ここからそんなに離れてはいませんよ。
ここを3ブロックも歩けば、その通りにつくでしょう。
でも、あのあたりに「セントラル・パーク」なんてカフェはあったかしら?」

ヘリに質問された中年の女性は、怪訝な顔で首をかしげた。

「ありがとうございます」

ヘリは、女性にお礼を言うと、指示された方角に歩き出した。

大きな通りに出れば、「セントラル・パーク」を知っている人に会うだろう。
携帯電話が使えなくても、公衆電話はどこかにあるかもしれない。

ヘリは、かなり楽観して、先を急ぐことにした。

そして、ゴロゴロとスーツケースを押して、ひたすら歩いていた時、

「ソ・イヌ」

ふと、聞こえた言葉に、ヘリが反応した。

…ソ・イヌ?

ヘリは声がした方向をとっさに見やった。

横路地の向こう側に、数人の少年たちの姿が見えた。

背格好が高い者もいたが、顔立ちは若く、
年は、中学生か、高校生くらいのようだった。

ヘリは、目を細めて、さらに路地の奥を覗き込んだ。

一人の少年の前を複数の少年たちが立ちふさがっている。
どう見ても、一緒に遊んでいるという雰囲気ではなかった。

とくに、複数いる方の少年達の中央にいた背の高い少年が
目の前の少年に、剣呑な眼差しを向けていた。

「ソ・イヌ。お前のそういう態度が前から気にいらないんだよ」

背の高い少年が言った。

…やっぱり、ソ・イヌって言った。
じゃあ、あの少年が「ソ・イヌ」なのね。
韓国人かしら?

ヘリは、背の高い少年が睨み付けている少年に目をやった。

ソ・イヌと呼ばれた少年は、目の前にいる5人より背が低かった。

どうやら、この「ソ・イヌ」は他の5人より年下のようだった。
しかし、年上を相手に、5対1で、対峙しているというのに、
ソ・イヌという少年に物怖じしている様子は無かった。

ひたと、少年達を見つめる暗い目は、外の気温より冷え込み、
どこか物事を達観したような落ち着き払った表情は、
目の前の5人より大人びたものだった。

「気にいらないのは、僕の態度なのか?トニー・ブライト。
君が、僕を気にいらない理由は別にあるんじゃないのか?」

“ソ・イヌ”が言った。

「どういう意味だ?」

ソ・イヌの言葉にトニー・ブライトと呼ばれた少年がひるんだようだった。

ソ・イヌは、チラリと、トニー・ブライトの取り巻きの少年達を見た。

そして、…ここでは話さない方が君のためじゃないのか?…という目をトニー・ブライトに向けた。

「学校の外でまで、僕に絡んでくるのは止めて欲しい。
君の友達たちには、無関係な事だ。それに、僕にも。
トニー、君が本当に“絡みたい相手”は僕じゃないだろう?」

「なんだって?」

イヌの言葉は、トニーの逆鱗に触れたようだった。

遠目からでも、トニーの顔色がにわかに赤くなったのが分かった。

恋人のソ・イヌと同じ名前の少年が気になって、
つい足を止めて、物陰から、成行きを見守っていたヘリも、
ヒヤリとして、息をひそめた。

…もしかして、いじめられているのかも。
最初はそう思ったヘリだったが、聞こえてくる会話から、
どうやら内情は違うようだった。

トニーという少年は、少年達のリーダー的存在のようだったが、
イヌという少年に敵意を向けているのは彼だけだった。

他の4人の少年たちは、ただ、二人の動向をはたから見守って立っていたようだった。

しかし、攻撃的な態勢になったトニーに、加勢するように
他の少年達も、イヌを一斉に睨みつけた。

「トニー、こいつ、一回痛い目をみないと分からないかもしれないぜ」

「この生意気な態度を改めさせるには、そうした方がいい」

そう言って、図体の大きい少年達が、前に出て、イヌを囲んだ。

イヌは、黙って少年達を睨み付けていた。

「イヌ、トニーに謝れよ」

「どうして、僕が謝る?先に通りすがりで、因縁をつけてきたのはあっちだ」

「こいつっ」

少年の一人が、いきり立って、イヌの胸倉を手で掴んだ。
他の少年達も身構えて、次の瞬間にもイヌに飛びかかりそうな勢いだった。

その時、

「待って」

そう言って、物陰から、飛び出てきたヘリに、
イヌをつかんでいた少年だけでなく、全員が驚いて動きを止めた。

「ちょっと、ちょっと待ちなさい」

ヘリは、そう言って、イヌをつかんだまま固まっている少年の前に
立った。

「暴力はダメよ。暴力は」

「…あんた何?」

少年達は、おかしな闖入者に、呆気にとられていた。

「通りすがりのお姉さんよ。
詳しい事情は知らないけど、大勢で、
一人と喧嘩しようなんてことは、見過ごせないわ。
さっ、この子から手を離してあげてちょうだい」

ヘリが言う前に、少年は、イヌから手を離していた。

なんなんだ。この変な女は。

そんな風に思っているような目で少年達がヘリを見つめる中、
トニーという少年が、「…もう、いい」とぶっきらぼうに言った。

「俺がこいつを相手したせいで、時間をくってしまって悪かったな。みんな。
他のやつらを待たせているから、行こう」

トニーの言葉に、少年達は、当惑したように顔を見合わせた。

「トニーがいいって言うなら」

そう言って頷くと、もう、イヌには目もくれず、
颯爽と歩き出したトニーの後に続いた。

イヌをつかんでいた少年だけが、まだ、物足りないような顔で、
イヌを睨みつけていた。

「ボブっ」

「ちっ…わかったよ」

トニーの呼び声に渋々、イヌから背をむけた少年は、
去り際、腹いせかわりのように、ヘリの肩にわざとぶつかって走って行った。

さほど強くでは無かったが、不意打ちの衝撃によろめいたヘリは、建物の壁にあたって、尻餅をついた。

「いった~い。もう、なんなのよ」

地べたに座り込んで、去って行った少年達の後ろ姿を、
恨めしそうに見つめているヘリにスッと手が差し伸べられた。

ヘリが見上げると、イヌが、
無言で片手を出して、ヘリを見下ろしていた。

少年イヌの手に引き起こされたヘリは、立ち上がると、
目の前のイヌの体をじろじろと見まわした。

「大丈夫?けがはない?」

「僕は何もされてない。
お姉さんの方こそ、大丈夫なの?」

「ええ、ちょっとぶつかっただけよ。
でも、あなたも危なかったわよ。あの人数を相手に挑発しすぎていたんじゃない?」

聞いていたところ、イヌとトニーの話は、他の少年達には無関係のようだったが、
トニーを刺激すれば、仲間たちが加勢するのは目に見えていた。


「お姉さんが止めに入らなくても、友人が僕を殴るのをトニーが止めていたよ」

「そうなの?」

「トニーは、根はいいヤツだ。仲間思いで。だから取り巻きも多い」

「そんないい子に恨まれるって、あなたは彼に何をしたの?」

そう不思議そうに聞くヘリに、イヌは答えずに軽く肩をすくめてみせた。

その人を食ったような仕草が、あまりにもヘリのよく知る人物に似ていた。

「お姉さんこそ、見ず知らずの人間におせっかいを焼こうとすると、
さっきみたいなトバッチリをくうから、気をつけた方がいいよ」

イヌの冷たい言葉に、ヘリは、目を丸くした。

ヘリを見る少年イヌの目は、助けてもらって感謝しているというものではなく、
呆れを含んで、蔑んでいるものだった。

…どこかで似たような目を見たことがあるわね。

ヘリは、チラリと、記憶を呼び起こしながらも、
今目の前にいる不遜な態度の少年にムッとして、頬を膨らませた。

「困っている人を助けるのは、お節介じゃないわ」

「…お姉さん、観光客だろ?」

イヌが、ため息をついた。

「このあたりでは、人のいざこざは、見て見ぬふりするのが常識だよ」

「…見て見ぬふりをする…ね。あなたのような子供にそう言われるなんて」

住んでいる人間にしか分からない常識はあるのかもしれない。
それでも、自分より半分くらいしか生きていなそうな少年の口から聞いて、
切ない気分になったヘリだった。

そんなヘリをイヌがじっと見つめた。

「お姉さん、周りの人にお人よしって、言われない?」

「言われたことはあるわ」

恋人のソ・イヌに。

ヘリは情けない気分になってきた。
同時に、今の会話で、恋人のソ・イヌを思い出して、
早く会いたい気持ちが増していた。

「ねえ、あなたは、「セントラル・パーク」ってカフェを知ってる?」

「セントラル・パーク?知らない」

「住所だと、このあたりのようなんだけど」

ヘリが、イヌに住所を述べた。

「たしかに、住所は、この先の通り沿いだよ。
でも、そこにそんな名前のカフェは無かったと思うよ。
お姉さん、名前を間違えてない?」

「間違えてないわ。さっき聞いたもの。
そうだ。あなたの携帯電話を貸して。友人に連絡を取りたいの。
私のは壊れちゃったみたいで」

ヘリがそう言うと、バッグから携帯電話を取り出してイヌに見せた。

イヌが、怪訝そうに、ヘリの携帯電話を見た。

「これ、何?」

「携帯電話よ」

「ゲーム機じゃないの?」

「違うわ。機種が違うからそう見えるのね。あなたのはどんなの?」

「持ってない」

「持ってないの?今時は、小学生でも持っていると思ったけど、
ここでは子供は持ち歩かないのかしら?」

「子供どころか、そんな形の電話を持っている人を誰も見たことが無いよ」

だんだんと、少年イヌが、胡散臭そうにヘリを見だした。

「お姉さん、どこから来たの?」

「韓国よ」

「韓国…」

ハッとして、イヌの顔つきが変わった。

「あなたも、同郷じゃないの?」

そう聞いて、顔を覗き込んだヘリに、イヌがふいっと背を向けた。

そして、ヘリの質問には答えずに、突然歩き出した。

「ちょっとっ」

慌てて、スーツケースを持ったヘリを、
イヌが感情を隠したような顔で振り返った。

「同郷のよしみで、住所の近くまで案内するからついてきて」

そう言うと、少年イヌは、戻ってきて、ヘリのスーツケースを持つと
再び歩き出した。

無言でどんどん歩きながらも、後ろにいるヘリに意識を向けて、
ヘリの歩調に合わせて、ゆっくり歩いているようだった。


…この男の子、何だか、名前だけじゃなくて、
性格も私のよく知っているソ・イヌに似ているみたい。
性格だけじゃなくて、顔も似ている気がするけど…。


少年の後ろ姿を見ながら、そんな事を考えて、

クールに振る舞う小さなソ・イヌから、見え隠れする優しさに、
ヘリは、思わず微笑んでいた。



(「招かれるもの」2終わり 3に続く)



登場人物

マ・ヘリ(マ検事)

ソ・イヌ少年


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招かれるもの(1話)



ニューヨーク行きの飛行機に乗ったヘリは、
さっそく酔い止めの薬を飲んで、睡眠をとった。

そして、機内食の時間に起き、食事を済ませたヘリは、
再び寝ようとしたが、興奮状態で目が覚めてしまっていた。

…イヌに会える。
イヌの養父のジョン・リーさんに会える。
ネット友達に会える。

あと、数時間でそれらが叶うという期待感で、
ヘリはそわそわしだした。

飛行機で配信されている映画でも見て時間をつぶそうと思った
ヘリだったが、ふと、横の席にいた客の動向が気になった。

ヘリの横の席に座っていたのは、年配の紳士だった。

ペンを持って、しばし考え込んでは、手元の冊子に何やら書き込んでいる。

…何やっているのかしら?

好奇心旺盛なヘリは、無意識に老紳士の方に身を乗り出していた。
そんなヘリの視線に老紳士が気づいた。

老紳士は、ヘリが興味深々な視線を送っていた
自分の手元を見た。

「ああ、ゲームをしているのですよ」

そう言って、老紳士はヘリに、冊子を見せた。

クロスワードパズルなど、語彙力や記憶力を用いて、
解答する問題が掲載されている雑誌だった。

「すっかりはまっていましてね。でも、ゲーム機やデジタルは合わなくて、
荷物になるのに、この手の雑誌をいつも持ち歩いています。」

「楽しそうですね」

「どうぞ。あなたも良かったら。これ、差し上げます」

老紳士はヘリに雑誌と赤インクのペンを差し出した。

「ありがとうございます」

ヘリは、素直に礼を述べると、老紳士からゲーム雑誌を受け取った。

記憶力を試されるゲームはヘリの得意とするところだった。

「…ほお…」

次々にページをめくって、問題をクリアしていくヘリを
隣の老紳士が感心したように見ていた。

ゲームに夢中になっていたヘリは、ついペンの先を
自分に向けて、考え込んでいた。
そして、

「あっ…いけない」

ヘリは赤色のペン先が服に留めていたブローチについていることに気づいた。

それは、1年以上前、ヘリが賭博の潜入捜査に行く前に、
イヌからもらった王冠の形のブローチだった。

王冠のブローチの表面に小さな赤いしみが出来ていた。

ブローチをひっぱって慌てているヘリに、老紳士が手荷物から
ウエットティッシュを取り出して、差し出した。

「水性のインクですから、大丈夫ですよ」

情けない顔をしているヘリを慰めるように老紳士が優しく言った。

「素敵なブローチですね。もしかして誰かからの贈り物ですか?」

「ええ、付き合う前の恋人にもらったものです」

「大事にされているのですね」

ヘリが頷いた。

「幸運の王冠なんです」

「幸運の王冠?」

興味深そうに首をかしげる老紳士にヘリが言った。

「はい。これをくれた人が、その時に言ったのです。
幸運は人が招く。これは幸運の王冠だって」

「なるほど…幸運は人が招く…ですか」

老紳士は、ヘリの言葉に納得したように頷いた。そして、

「幸運は人が招くもの。そして、人の出会いもまた人が招くもの」

そう独り言のように呟いた老紳士を、ヘリはまじまじと見つめた。


優しげで人好きするような柔和な顔。品良く着こなしている質素な服装。
体つきは小柄で、目立つ外見というわけではないのに、
黙って座っているだけで、どこか不思議な存在感を醸し出していた。

じっと見つめているヘリの視線に老紳士が
にっこりとほほ笑み返した。

「あなたは、ご旅行ですか?」

「はい。ニューヨークで人と会う約束をしています」

「それは、そのブローチを贈った恋人ですね?」

「どうして、分かるんです?」

きょとんとしたヘリに、老人が「この時期ですから」と笑った。

「でも、遠距離恋愛というわけでも無さそうだ」

「ええ、彼は出張でニューヨークに行っています。
それで、ついでに私も行って、クリスマスを向こうで一緒に過ごす予定なのです。
…でも、どうして遠距離恋愛じゃないって思ったのですか?」

「あなたは、恋人と少しでも離れていたくない、という顔に見えるからです」

「そんな、分かりやすい顔をしてますか?私」

イヌだけでなく、こんな会ったばかりの人にまで悟られてしまうなんて。
私って、どれだけ感情が表に出てるのかしら?

しかし、ヘリは、嫌な気分にはならなかった。
むしろ、穏やかな物言いながらも、妙に鋭い老紳士に興味を抱いた。
何故か、ただものではないという雰囲気が漂っている。

「あの、もしかして、あなたは占い師ですか?」

いきなり突拍子もない質問をするヘリに老人は、面白そうな顔をした。

「どうして、そう思われましたか?」

「人を見る目がおありのようでしたから、そういう職業の方かと思って」

「なるほど…。あなたはなかなか鋭い直観をお持ちだ。それに発想は飛躍していますが、ユニークですね」

笑顔で、褒められているのか、面白がられているか分からない老紳士のコメントに、
ヘリは、恐縮して曖昧な笑みを返した。

その後、ヘリはしばらく老紳士と話をした。

話をしてみると、老紳士は博学な上に話し方も上手だった。
まるで、大学時代、人気のあった教授の講義を受けている時のように
ヘリは、老紳士の話に聞きほれていた。

そうしているうちに、まもなく、着陸するという
飛行機のアナウンスが流れてきた。

「つい、長話をしてしまって、申し訳ない。
お疲れだったでしょう」

腕時計の時間に目を落とした老紳士が申し訳なさそうにヘリに言った。

「いいえ、とても楽しくて有意義な時間を過ごさせて頂きました。
ありがとうございます」

本心から丁寧にお礼を伝えるヘリを、老紳士が感慨深く見つめた。

「今さらですが、あなたのお名前を窺ってもよろしいですか?」

「マ・ヘリです」

「マ・ヘリさん。私は、キム・ビョンホです」

やがて、飛行場に飛行機が着陸すると、乗客たちは慌ただしく
席を立った。

「キム・ビョンホさんは、これからご旅行ですか?」

「いいえ、今はアメリカを拠点に仕事をしています。NYにも長く住みましたが、
やはり、祖国が恋しい。今の仕事を退職したら韓国に戻るつもりです」

「では、また会えるかもしれませんね」

名残惜しげに、そう言ったヘリに、キム・ビョンホはにっこりと笑った。

「幸運は人が招く。そして、人との出会いも人が招きます。
あなたとの出会いは私にとって幸運でした。また、お会いしましょう。
マ・ヘリさん。恋人と楽しいホリディをお過ごしください」

名前以外、住所も電話番号もメールも交換していない相手なのに、
キム・ビョンホの言葉は、すんなりとヘリの心の中に落ちた。


…人との出会いは人が招く。

不思議ね。キム・ビョンホさんとは、
また、どこかで会える気がするわ。

ヘリは、遠ざかっていくビョンホの後ろ姿を見送りながら思った。

飛行機から降りたヘリは、税関を出ると、早速イヌに電話した。


「イヌ、無事ついたわよ」

『そうか、飛行機は大丈夫だったか?』

飛行機酔いをするヘリを気遣う優しい言葉に、
ヘリは、今すぐにでもイヌに会いたくなった。

「ええ、平気。隣に楽しい男性がいてくれたおかげで、
快適に時間を過ごせたわ」

『…楽しい男性?』

怪訝そうなイヌの声にも、ヘリは気づかずに、
浮かれた調子で話を続けた。

「私はこれからタクシーで、待ち合わせ場所に向かうわね。
イヌは打ち合わせ通りの時間に来てちょうだい。じゃあ、後でね」

『おいっ。ヘリっ。楽しい男性っていうのは一体…』

あわてて、問いかけるイヌの言葉を最後まで聞かずに、
ヘリは、通話を切ったようだった。

携帯電話から聞こえる、ツーツーという、無言の電子音に、
イヌは顔をしかめた。

ヘリには、イヌをあたふたさせてやろう、という意図があって、
『楽しい男』キム・ビョンホの事を言ったわけでは無かった。

しかし、詳細を伝えずに切られたヘリからの電話で、
イヌは疑心暗鬼にかられた。

…楽しい男だって?
機内でナンパでもされたんじゃないだろうな。
ヘリにその気は無くても、男に気があって、
ストーカーでもされたら、どうするつもりだ。

…などと、数年前の自分の所業を棚にあげて、
悶々としていたイヌのことなど、つゆ知らず、
ヘリは、ウキウキした足取りで、空港を出た。

タクシーに乗り込んで、ヘリは、待ち合わせ場所向かった。

やがて、ついたカフェの中に入ったヘリは、さっそく友人の姿を探した。

しかし、込み合った店内の中に、
インターネット電話で会っていた友人の顔は無いようだった。


“ヘリよ。待ち合わせ場所についたのだけど、どこにいるのかしら?”

そう、ヘリの携帯から友人に送ったメールに、すぐに返事が届いた。

『店の入り口から見て、中央くらいにあるソファの席に友人たちと座っているわ』

“ソファ?店にソファ席は無いみたいだけど”

『ソファが無い?ヘリ、今どこにいるの?』

“「セント・レア・パーク」”

『ヘリ、違うわ。待ち合わせ場所の名前は「セントラル・パーク」よ』

「ああ~っ」

友人からのメッセージが届いた携帯電話を見て、
つい大きな声を出したヘリは、店中の人の注目を集めた。

どうやら、タクシーの運転手に伝える時に、言い間違えたようだった。

…やだ、店名を間違えたのね。

“最近できた店で、名前が似ているからよく間違えられるのよ。
私がそっちに向かうわ”

ヘリを慰めて、そうメッセージを送ってきた友人の提案をヘリは断った。

イヌにも、もう「セントラル・パーク」で待っていると打ち合わせしていた。
場所を変えれば、そのわけを聞いたイヌは、これ見よがしに呆れた顔をするだろう。

『やっぱり、君は、何かしら事を起こす名人だな』

そう言った後、
意地悪く笑うイヌの顔も容易に想像できた。

イヌにはすぐに会いたかったが、あえて、いびられるネタを提供するのは、
御免こうむりたいヘリだった。

“また、タクシーを拾ってすぐに向かうから待っててね”

そう友人にメールを打つと、ヘリは、店の外に出た。

…はやく、待ち合わせ場所に向かわなきゃ。

そうあせったヘリは、目の前を走りさったタクシーの空車に
手を振って追いかけるように走った。

目の前のタクシーしか見えてなかったヘリは
街路樹に設置するために用意され、置いてあった電飾の線の束に足をとられた。

「きゃあ」

バランスを崩したヘリは、
後ろにあったクリスマスツリーに勢いよく倒れこんだ。

大きめのクリスマスツリーだったが、
ヘリの体重を支えきれずにヘリと共に転倒し、大きな音をたてた。

バタンっ!!ドーン。

「・・・いたた…」

衝撃が収まった後、うっすらと目を開けたヘリに、
チカチカとした物が見えた。

転倒した時に頭を打ったかと、考えたヘリだったが、
それは、クリスマスツリーの電飾の光だった。

ヘリは、起き上がると、足にからまった電飾の線をはずした。
そして、一緒に倒れていたクリスマスツリーを立て直し、起き上がった。

「もう。こんなところで転んでいる暇は無いのに」

そう、ぶつぶつ言いながら、腕時計を見たヘリは、
時計の針が止まっていることに気づいた。

…今ので、時計が壊れちゃったかしら?

ヘリは、バッグから携帯電話を出して時間を確かめようとした。

しかし、なぜか携帯電話の電源が入っておらず、何度操作しても、
画面が復帰しなかった。

…携帯電話まで壊れちゃったの?

訝しがりながら、ヘリは、今度はあたりを見渡した。

先ほどより空模様が荒れていて、
時間もかなりたったように薄暗くなっていた。

心なしか、周囲の風景も変わっているように見える。

…さっき、あんな所にあんな建物あったかしら?
急いでいて、景色をしっかり見ていなかったから気づかなかったわ。

ヘリは、妙な胸騒ぎを気のせいにして、先を急ぐべく、
服のホコリを払って、スーツケースを転がして歩き出した。

その時、振り返らなかったヘリには、見えていなかった。

ヘリが先ほどまでいたカフェ「セント・レア・パーク」。
その看板の文字が消え、外観もまったく異なった店がそこに建っていたという事を…。

何も知らずに、先を急ぐヘリ。

ただ、ヘリのコートの下で胸元につけていた王冠のブローチが、
ヘリを守るように、淡い光を発して輝いていた。


(「招かれるもの」1終わり2に続く)


登場人物

マ・ヘリ(マ検事)
ソ・イヌ(ソ弁護士)

キム・ビョンホ…ヘリと同じ飛行機に乗り合わせた老紳士


先日の雑記を読んで下さった方、
拍手、拍手コメントを下さった皆様
ありがとうございました!!

今回は、ずっと考えていて、書いた記事だったので、
準備が出来ていました。
ブログ、これからも楽しんで続けていきます♪

…で、ずっと考えていたわりには、「署名活動」を
「著名活動」って書いてますね。これだけは直しておきます。
ご指摘してくださった方、ありがとうございます!
日本語が不自由だって、相方にもよく呆れられます。
これからも、気づいたら、教えてください。


通りすがりさんへ

私も同じこと思いました。
またかよって(笑)
重ね重ね、もっともなご意見。
うん。これからも創作続けます。
すごく励ましてもらった気がする。変かな?(笑)
そして、今までもブログを読みに来てくれていたこと。
嬉しかった。ありがとう。

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「みつばのたまて箱」に来て下さってありがとうございます。
そして検事プリンセスの二次小説を楽しみにして下さっている方。
いつも待って下さってありがとうございます。

今日は、ずっと悩んでいた事があったので、その事について書きます。

制限は設けていません。

でも、なるべくなら、この「みつばのたまて箱」を
今まで1度でも読んだ事のある方に読んで欲しいので、
記事をたたんでいます。よろしくお願いします。

↓(続きを読む)から続きを読んでください
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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「NYへいこう」です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。

この話は、みつばの検事プリンセス二次小説シリーズの
最新作になります。



NYへいこう


その夜、実家に帰っていたヘリは、
遅めの食卓を両親と囲んでいた。

和気あいあいとした一家団欒が進む中、
思い切ったように、エジャが口を開いた。

「今年のクリスマス、ヘリの予定はどうなの?」

昨年は、家族3人でクリスマスディナーを食べていた。
しかし、今年は。

…聞くまでも無い。ヘリは、恋人と一緒に過ごすのだろう。
恋人のソ・イヌと。

サンテにも、ヘリの答えは分かりきっていたようだった。

渋い顔をしながらも、話を聞いていない振りで黙々と食事をする
サンテの顔をチラリと見た後、

「イヌと一緒にアメリカへ行くわ」と、ヘリが答えた。

もともと、エジャから聞かれなくても、クリスマスの予定は
両親に話しておこうと思っていたヘリだった。

ソ・イヌとの交際は、両親の知りうる所だったから、
一緒に過ごすだろうことは悟られている。

それに、隠すこともない事だと思ったから、ありのままに答えたヘリだったが、
単刀直入すぎて、二人には説明不足のようだった。

「ヘリ、それはどういうこと?」

「アメリカに行くだと?」

エジャとサンテの不思議そうな顔に、
ヘリも自分の言葉足らずを認識した。

「だからね、クリスマスはイヌとアメリカのニューヨークで過ごしたいの。
それでね、一緒にあちらに住むイヌのお父様に会いに行くつもりなのよ」

「イヌ君のお父様に会いにいくですって?」

エジャが驚いて、大きな声をあげた。

声こそあげなかったが、サンテもエジャと同じように大きな衝撃をうけたようだった。

「ヘリ、それは、向こうの父親に挨拶に行くということか?」

「ご挨拶っていうのは、つまり、これからの二人の事を報告しに行くってことよね?」

ヘリの言う、イヌのお父様というのが、実父でなく、ニューヨークに住む、
イヌの養父であることは分かっているサンテとエジャだった。

しかし、うろたえている両親に、ヘリは、二人が何を考えたのか察して、
あわてて、首と手を横に振った。

「パパもママも何か勘違いしてるわ。会いに行くって言っても、
ただ、おつきあいしています。っていうご挨拶をするだけよ。」

「それ以上の挨拶じゃなく?…たとえば…結婚の挨拶とか…」

「違うわよ。そんな事になったら、先にパパとママに言っているわ」

ヘリの言葉に、
ほおっ…とエジャとサンテは顔を見合すと同時に溜息をついた。

その溜息の意味は二人とも違うもののようだったが。

エジャは残念そうな、サンテはどこかホッとした顔をしていた。

そんな二人の顔にヘリは苦笑した。

「ちょうどクリスマス前に、イヌが仕事でアメリカに行く予定なの。
それで、私もクリスマス休暇がとれそうだから、行くことにしたわ。
イヌの養父さんにはまだお会いした事がないのだけど、
以前、美味しいワインとご丁寧なお手紙を頂いたことがあって、
そのお礼を直接伝えたいのよ」

「そうだったの」

エジャが頷いた。

「向こうの国で、イヌ君を立派に育てて下さった方だもの。
それに、つきあっているヘリにまでそんなお気遣いをして下さるなんて、
きっと、いい人なんでしょうね。
ヘリ、しっかりご挨拶してくるのよ」

ヘリはサンテを見やった。

サンテは、ヘリと目が合うと、微かに頷いてみせた。

アメリカに行くことも、イヌの養父に会うということも含めて
クリスマスをイヌと一緒に過ごすことを、承諾してくれたようだった。

「くれぐれも気をつけてな」

「はい」

ヘリは、両親の言葉と見守る瞳に感謝しながら、
力強く返事すると、再び、食事の箸を動かした。


ヘリが、イヌから、クリスマスの話を切り出されたのは、
「仲直り記念日」の日だった。

イヌと一緒に泊まったホテルを出て、少し買い物をした後に、
街でランチを食べていた時の事。

気がつけば外の気温は低くなり、寒さも増して、
季節は、秋から冬になっていた。

そして、いつのまにか、街中は、
クリスマスムード一色に染められていた。

街路を歩けば、色とりどりのオーナメントと電飾が飾られ、
繁華街の店からは、クリスマスの音楽が漏れ出でている。
店の中もクリスマス商戦まっただ中で、内装もクリスマス仕様になっていた。

どこもかしこも、クリスマスの楽しそうな空気に包まれている。

イヌと再びいい感じに戻ったヘリも、
ウキウキした予感にときめいていた。

ヘリの中では、当然、今年のクリスマスはイヌと一緒に過ごすつもりだった。

ただ、それをどういう風に過ごすかまでは、決まっていなかった。
それに、イヌにも聞いていなかった。

ここしばらくは、とても、クリスマスをどう過ごすか?
という話を切り出す雰囲気では無かったが、今なら大丈夫だろう。

ヘリは、目の前でランチを食べているイヌをじっと見つめながら考えた。

…どこかの有名レストランでクリスマスディナーを一緒に食べるっていうのは、
定番だけど、憧れだったのよね。
それとも、どちらかの部屋で、ゆっくりと過ごすのもありよね。
いつもとかわらないけど、二人っきりのクリスマスイブ。
部屋中、クリスマスの飾りつけをして、美味しいお酒やご馳走もいっぱい用意して、それから…うん。いいかも♪

そう想像を膨らませながら、
ニンマリと一人笑いを浮かべていたヘリにイヌが声をかけた。

「ヘリ、クリスマスの事だけど」

…きたーっ!

小躍りしたくなるほど浮かれたヘリだったが、
ウキウキした口調で、わざと、恍けた。

「クリスマス?クリスマスが何?イヌ」

「クリスマスの前後に、仕事と所用があるから、僕はニューヨークに行くよ」

「え…?」

…ニューヨーク?

「ニューヨークって、アメリカのニューヨークよね?」

「ああ、13歳から僕が住んでいた街だ」

「…クリスマスはアメリカで仕事なのね」

がっかりした思いが、すぐに声と顔に出たヘリにイヌが
微笑んで首を横に振った。

「前後って言っただろ?クリスマスは休暇をとってある。
だから、ヘリ」

イヌが、食べ終わったランチの皿を横にどけると、
テーブルの上に両手を組んで、ヘリの方に身をのりだした。

「君も来ないか?僕の養父に君のことを紹介したい。
そして、クリスマスを一緒にニューヨークで過ごそう」

…イヌと、イヌの養父さんに会う?
そして、ニューヨークでクリスマスを過ごす?

イヌの誘いをまだよく呑み込めなかったヘリは、
ぼおっとなってイヌの顔を見つめていた。

「ヘリ?」

店内も、大きめのボリュームでにぎやかなクリスマスソングが流れていた。

「聞えてない?」

返事のないヘリに、イヌが怪訝そうに首をかしげた。

「あ、いいえ、聞いているわ」

ヘリがあわてて答えた。

「その、イヌの養父さんにお会いして、
クリスマスをニューヨークで過ごすってことよね。
ええ、いいわよ」

ヘリには、予想外のクリスマスの過ごし方だったが、
思い描いていたものより、ロマンチックなシチュエーションのようだった。

…ニューヨークで、イヌと一緒に過ごすクリスマス。

それに、イヌの養父さんに会える。…ということは、つまり、
イヌが暮らしていたニューヨークの家に行くってことよね。

再び、ぼおっとなったヘリに、イヌが心配そうな顔になった。

「もしかして、ご両親と先約でもあった?」

そう気遣うように聞くイヌにヘリは「ううん」と首をふった。

「パパとママはクリスマスも仕事みたい。
それに、クリスマスの事はまだ話し合ってなかったわ」

…たぶん、二人ともクリスマスは、
イヌと一緒にいるって思っているみたいだから。

イヌがそっと安堵の息を漏らした。


クリスマスまで、まだ間があるとはいえ、
予定をつけるには、少し遅かったかもしれない。

こんな急にヘリに予定を聞くという、イヌらしくない行動。

そのことにイヌも気づいていたが、先日まで、
クリスマスどころか、恋人として、一緒にいられるかどうかという危機だったのだ。

それで、普段、物事を有利に進めるために先回りで動くイヌも、
ずっと冷静ではいられなかったことが窺えた。

しかし、相変わらず鈍いヘリは、その点に関しては、
全く気付いていないようだった。

ヘリの心と頭は、すでに、イヌと一緒に過ごすクリスマスの楽しい予感に支配され、
余計なことを考える隙間など無くなっていた。


そうして、クリスマスイブの1週間ほど前。

イヌは予定通り、韓国での出張先から、直接、ニューヨークに向かった。

ヘリは、職場にクリスマス休暇をもらい、
イヌの後を追って、アメリカ行の飛行機に乗ることになっていた。

ヘリが飛行機に乗る日の朝、ヘリとイヌは電話で、
向こうで落ち合うための最終的な打ち合わせをした。

用事があって、時間的に空港には迎えに行けない、と申し訳なさそうに言うイヌに、
ヘリは、「大丈夫」ときっぱり答えた。

「私、友達と会う約束をしているの」

『友達?初耳だな。こっちに君の友人がいるのか?』

「ええ、ネットで知り合った女性なのだけど、ニューヨークに住んでいるの。
料理が得意で、動画で作り方をネット配信しているのよ。
半年くらい前に料理のことで私が質問したら、すごく丁寧に教えてくれて。
それから、気が合って、よくメール交換していたの。
今回、ニューヨークに行くって連絡したら、ぜひ向こうで会おうって返事が来たのよ。
待ち合わせ場所も決めたわ」

ヘリは、イヌに友人と会う約束をしたカフェの名前を言った。

『そのカフェなら知っているよ。じゃあ、僕たちの待ち合わせ場所もそこにしよう』

打ち合わせも終わって、
ヘリのすでに浮かれた気分は、電話の向こうのイヌにも伝わっていた。

「ニューヨーク。私は観光で行ったことはあるけど、
にぎやかで楽しい街よね」

そう言ったヘリに釘をさすようにイヌが、「そうかな」と答えた。

『にぎやかで楽しい街か…。観光で来たのなら、そういう感想になるだろうな』

「そっか。イヌは、ずっと住んでいたんだものね」

『どこの国もそうかもしれないが、実際に暮らしてみると違う面を知ることになる』

「そうね…」

以前、イヌが、長年住んでいても、住み慣れた祖国の方に住みたかったから、
韓国の司法試験を受けた、とヘリに話したことがあった。

それは、じつは、父親ソ・ドングンの無実を証明するためだったが、
本心からの言葉だったのだ、とヘリは思っていた。

「イヌは、この国が好きなのね」
…本当は、ずっと、すぐにでも戻りたかったに違いない。

ヘリの優しい声にイヌはヘリが何を考えたのかすぐに悟った。

ヘリの言葉にひきずられて、感傷にふけりそうになる気持ちを
誤魔化すように、イヌがフッと息をついた。

『観光も存分に楽しめばいいが、君の知らないこともある街だ。
調子にのって、一人でどこでも行くなよ』

「わかってるわよ。そうやって子供扱いして心配しないでちょうだい」

『君は時々危なっかしいんだよ。…恋人として心配してる』

恋人として、というイヌの言葉に、ヘリがジンとなった。
体はまだ韓国にあったが、心はすでにニューヨークのイヌの元に飛んでいた。

「1週間くらいしかたってないのに、もうあなたが恋しいみたい」

ヘリの素直な言葉に、イヌがからかうように軽く笑ってみせたが、
心は同じだった。

…僕も君に会いたいよ。

『ニューヨークで会おう。ヘリ。待ってる』

「ええ、後でね。イヌ」

名残惜しい気持ちをふっきるように、
ヘリは、わざと明るい声を出して、イヌとの通話を切った。

そして、ヘリは、手持ちの旅行バッグの中を確認した。

「パスポートに、航空チケット、お金…うん。大丈夫ね」

航空チケットは、イヌが予約して購入してくれていた。
遠慮する素振りを見せたヘリに、『僕が出さなかったら、父が航空券を買ったよ』とイヌが答えた。

『養父は君にとても会いたがっているからね』

そんなイヌの言葉を思い出しながら、
ヘリは、イヌの養父、ジョン・リーからの手紙がしまってある鏡台の引き出しの方を見やった。

13歳からイヌを養って育てたジョン・リーという男性。
ヘリは、イヌの話からしか、想像できなくても、とてもいい人だと信じていた。

すでに前日に空港に送っていた大きめのスーツケースの中には、
クリスマスにイヌに渡すプレゼントと一緒に、
イヌの養父、ジョン・リーに贈る物も入っていた。


…イヌ、そして、ジョン・リーさん。今会いに行きます。


いざ、ニューヨークへ!

そしてヘリは、勇ましく部屋の扉を開けて、
ニューヨークに旅立つべく空港に向かった。

(「NYへいこう」終わり)


登場人物

マ・ヘリ(マ検事)
ソ・イヌ(ソ弁護士)

マ・サンテ(ヘリの父親)
パク・エジャ(ヘリの母親)

ジョン・リー(NYに住むイヌの養父)


お待たせしました。
シリーズ最新作、「NYへいこう」ようやく1話更新。
この季節にクリスマス話(汗)

「NYへいこう」は、短編連作になります。
そして全編完成していないので、すみませんが、休み休み更新になります。
とりあえず、序章の「NYへいこう」でした。

コメントレス的な話。

コメント&応援ありがとうございます。

…映画、全都道府県ではないけど、
一応東京皮ぎりに他県ロードショー&前売発売だと
公式ファンサイトでは見たのですが、変更ありました?

ちょうど私も検プリ14話のイヌのスーツ姿を見て(毎日見てるけど)
再び萌えてました。素敵ですよねー♪


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「検事プリンセス」みつばの二次小説シリーズ最新作

「NYへいこう」

一昨年から、このブログに来て下さっている方には、
大変お待たせしているクリスマス話。

予告イラストから、1年半くらいたっています。
(2012年の春ごろ更新予定とか言ってますよ…自分)
予告漫画からも数か月。

桜が散って、新緑の春の季節にようやく更新スタートします。

スタートといっても、休み休み、ゆるゆる更新予定です。
1話更新しては…休みか、雑記かイラストか…という感じで。
毎日連続更新出来ずに、すみません。

「NYへいこう」は続きものではありますが、
タイトルをかえて短編を重ねる形の更新になります。

とりあえず、序章の「NYへいこう」を
明日更新というお知らせでした。


検事プリンセスINDEX2」に

「スーツ」
「スーツ」(おまけ話)を更新しました。


じつは、こっそり「キング」のカテゴリも作ってました。
「シークレット・ガーデン」カテゴリまで作ったら、
このブログはいよいよ韓国ドラマ創作ブログになっちゃいそう。(今更)


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韓国映画「デュエリスト」みつばの二次創作イラスト。


女刑事ナムスンと刺客の悲しい目。




ナムスンと


「シークレットガーデン」のライム役、ハ・ジウォンさんの
アクションシーンを見たら、「デュエリスト」のDVDを見直したくなった。


コメントレス的な話。

最近いらっしゃって、検事プリンセスの二次小説を読んで
コメントくださった方ありがとうございます!

ここしばらくは更新がゆっくりですが、
続けているので、また読みにきてくださいね。

最初の頃は、「私にHシーン書けるか分からない~」とか
言ってたのに。気づけば大人話多めな二次創作になってました(汗)
でも、イヌ×ヘリはあくまで純愛基盤です←心の中では。

「検事プリンセス」の二次小説もお待たせしてますが、
「デュエリスト」に至っては、なぜか突発的に書いた「キング」より
遅くて、始まってもいません。

読む方がいらっしゃらなくても、
「キング」同様、私の中で、妄想の中だけでも、好きな人物を
生かしておきたいので、映画の続きだけでも書いておきたいです。


私は元気です。
少々寝不足は続いていて、上の子供の行事等もあるので、
日常が慌ただしくなってますが、
空いた時間にゆるゆると検事プリンセスの小説書いたり、
イラスト描いたりしてます。

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「検事プリンセス」みつばの二次創作イラスト。

ソ・イヌと、マ・ヘリ




イヌとヘリクリスマス


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「リッチマン・プアウーマン」の日向徹と真琴を二次創作イラスト。


漫画の髪の毛のツヤベタ練習用に落書きで描いたもの。
(…もっと練習せねば…)

徹と真琴


イラストは役者さん達の写真も画像も見ずに描いたので、
あくまで、みつばの勝手なイメージで描きました。

夜中に赤ちゃんを抱っこしながらもリアルタイムでドラマのスペシャルは見たけど、
妹がとってくれた録画を再度見たら、最初気づかなかった萌えシーンがいっぱい。

でも…みつばは、あの徹の部屋には住めないな~(←住めって言われてない)
何よりベッドが無いないなんて(笑)

「シークレット・ガーデン」のチュウォンの家は結構好きだけど、
そして、「検事プリンセス」のイヌの部屋はもっと好きだけど♪(←はいはい)

徹の部屋で真琴が暮らすのは厳しいような…。

いっそ、部屋が2つある所を借りて、
部屋を別々に同居すればいいんじゃない?

・・・と、どうしても「リッチマン・プアウーマン」のカップルの今後にはらはらして、
下世話な妄想を抱くみつばです。

「うーん…どうして、この二人、とくに徹が真琴に惹かれるのか、
ドラマなんだけど、不思議で」

そう言ったみつばに、妹が、

「遺伝子が違う方が惹かれるからじゃない?」と答え、

「プラチナ・データ」説で、納得。

そうか、チュウォンとライム。
イヌとヘリも、そうかもしれない。
真逆のタイプに惹かれると。

でも、

恋愛ドラマの設定を、DNAでかたずけるなっって感じ。
そして、あくまで遺伝子情報で、性格が真逆とは意味が違うから。

やっぱり、恋を本能や遺伝子で、まとめたくは無いよね。

実際、そういう遺伝子を持っていながら、
まったく遺伝子情報と違う風に生きている人がいるデータもあるから。

ちょっとした落書きから、恋と遺伝子まで話がとんだ、本日は
練習イラストと雑記でした。


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「検事プリンセス」にでていた、
ソ・イヌ(ソ弁護士)の親友、同じく弁護士のジェニー・アンを
二次創作イラストで描いてみました。




ジェニー&J



みつばはジェニーのキャラだけでなく、顔も体もとても好きなので、
いっぱいイラストは描いてみたいとは思ってたのですが、
4コマ漫画は描いたけど、イラストは初。

二次小説「プールへいこう」のイメージ、水着姿ジェニー。
そして、バックに立っているのは、オリジナルキャラクターのジェームスです。


ドラマでは、ソ・イヌをずっとひそかに愛していて、いつもイヌを思い、
イヌのためになるように行動していたという、切ない役だったジェニー。

強気発言や、イヌと一緒にいる所を見ると、
たぶん、年上のよう。

そうでなくても、イヌにとっては、ある意味お姉さん的存在。

ヘリには、口でやり込めることが出来るイヌですが、
ジェニーには、そういう点では頭が上がらなそう。

よく怒られてます(笑)

10話のバーでのシーンもそうですが、
8話。部屋にいたヘリと鉢合わせした後もそう。

「私に隠していたことがいっぱいありそうね」と
じっとりとした目線で睨むジェニーにイヌ、たじたじ。

「住むマンションが同じだったから、たまたま~」なんて、
まるで、浮気現場を見られた男のような、見え見え、の言い訳してます。

住むマンションが同じだったんじゃなくて、
イヌが同じにしたんじゃない。
どうやら、イヌは、引越ししたマンションにヘリもいることを
ジェニーに言ってなかった模様。

そして、部屋に行き来したり、
結構、ヘリと親しくなってきていたことも内緒にしてたみたい。

しかし、「イヌ」とジェニーにぴしゃりっと言われ、
キューンキューンと首をすくめて、気まずそうなイヌ。

ジェニー強し(笑)

でもね、ドラマ見ていて思ったけど、
ジェニーは強そうに見えて、かなり繊細な女性のようです。
それが分かる言動もちらほら。

なので、イヌがヘリにどんどん惹かれていく様子を近くで見ていて、
イヌを諦めることも、簡単には割り切れなかった気がする…。

ドラマでは、あっさり身をひいたみたいに見えるけど。

そのへんも踏まえて、書きたかったジェニーの話。

おととしどころか、去年も二次小説で更新することが出来なかった
ジェニー・アン主役の「弁護士プリンセス」


おととし作ったプロットでは「弁護士プリンセス」は3部構成。

今後の検事プリンセスの二次小説シリーズとリンクする所もあるので、
1部だけでも、「NYへいこう」が終わったら、更新しておかないと、という流れなのですが。

今年こそは~・・・。

このブログのコメントでも、「私もジェニーが好き」という方が多かったし、
ジェニーは本当に素敵な女性なので、私も幸せになってほしいです。


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久しぶりの「みつばの裏箱」更新。

検事プリンセスの二次小説「真夜中の赤ずきん」とは別に
「真夜中の赤ずきん」裏箱バージョンの漫画と小説をアップしました♪

…真夜中にね(笑)

裏箱バージョンって?は、見れば(読めば)わかりますが、
漫画はカラーなので、見る時は十分ご注意を。
小説の方は表でもいけそうな控えめです。

「裏箱」に関しての説明はこちらから。
注意事項をよく読んでご覧くださいね。


裏箱といい、二次小説の大人シーンといい、頻度が多いので、
みつばは背後…が好きなの?と思われそうですが
大人シーンでは描くのが楽しいから。(誰もそんなつっこみしていません)

でも、ストッキングは好き♪


「裏箱」のイラストINDEXについてですが、

もちろん、表のブログには設置してません。というか、
無理です。できません。アレですから・・・

楽しいけど、裏箱の小説やイラストはジャンク物なので、こればかり創作していると、
癖になって、まともな小説や漫画がかけなくなっちゃいそうなのが心配。


「裏箱」の記事が気にいって頂けたら、応援がわりに
普通の【拍手ぼたん】も押してください♪

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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「真夜中の赤ずきん」最終話(3話)です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。

この話は、シリーズの「初めての夜」「優等生」から「カップケーキ」までの間で、
「囚われのプリンセス」や「初めての夜後日談」のラストで
ほのめかされていた空白の部分の話。


【警告】

この話には、大人向けの表現や描写が含まれています。
自分は精神的に大人だと思える方のみお読み下さい。



真夜中の赤ずきん(最終話)



「この服、夜間外に出る時には着ない方がいい」

ヘリのパーカーを脱がせながら、イヌが言った。

「どうして?」

「目立つからだよ」

「でも、目立つから、あなたがさっき私を見つけてくれたんでしょ?」

「僕に見つけて欲しくて着ていた服なのか?」

「違うけど…」

パーカーを脱がせられたヘリは薄いタンクトップ姿になった。

自分の体を見つめる、食い入るようなイヌの視線を感じながら、
ヘリは、こんなことになるなら、もっと可愛い下着を着ていれば良かったと思った。

「偶然、どこかで会えたらいいな~、なんて考えていたわ。
だから、あそこで会えた時、私の頭の中からイヌが出てきたかと、びっくりしちゃった」

「偶然?どこかで?」

イヌのおかしそうな声の響きに、ヘリが気恥ずかしそうに、頬を膨らませた。

「だって、今朝あなたと別れてから、
1日中あなたのことを考えていたから」

イヌに会いたいって。
会うだけじゃなくて、話したいって。
話すだけじゃなくて、抱きしめて欲しいって。
抱きしめてもらうだけじゃなくて…。

「おかしいでしょ?重症だなって、笑っていいわよ」

「…笑わないよ」

そう、言いながらも、イヌ自身気づかないほど、
声に嬉しそうな響きが多分に含まれていた。

…僕もまったく同じ事を考えていたから。
仕事もろくに手がつかないくらいにね。


もちろん、職務は全うにこなしていたが、
ふとした瞬間にさえ、頭も、心もすべてマ・ヘリで占められている事に
気づいたイヌだった。

いつのまにか、携帯電話でマ・ヘリの名前を出して、
かけようとしている手を慌てて止めることもあった。

…だから、本当は、仕事が終わった後、
どうやって君を誘おうか考えていた。

帰宅して、テラスに出て、ヘリの部屋を見下ろしていた時、
ヘリがマンションの外に出る姿を見かけた。

フードをしていても、イヌには一目でヘリだと分かった。

だから、急いで後をつけた。

夜中に一人歩きをしている怖がりのヘリが心配だった、というのは、
その時のイヌの正直な気持ちと理由ではあったが・・・

イヌは、自分の愚かな行動を振り返って自嘲した。

…重症で、おかしいのは僕の方かもしれない。

さしずめ、真夜中におつかいに行く赤ずきんのような恰好の君の後をつけながら、
ずっと、どう家に誘いこんで“食べようか”考えていた狼男だからね。

そう思いながら、
イヌは、きょとんとした顔で見つめているヘリの顔にそっと手を置いて、
頬の輪郭に沿って這わせた。


この愛らしい声も。
この可愛い唇も、
この美しい顔も、体も。

…全部食べたい。

イヌの手が、ヘリの頬から、唇に優しく触れた後、
つつつ…と顎から、首筋の肌をすべって下に降り、鎖骨をなぞるように動いた。
そして、微かに上下しているヘリの胸の膨らみの真上で止まった。

この後の展開は十分予測できていたのに、
イヌの緩和な動作が、むしろ、ヘリの羞恥心を大きくしていった。

「イヌ、私をじらしてるの?」

「じれているのか?そんなに早くしたい?」

「もう、やめて。そんなこと言わないでよ。恥ずかしいの」

こうやって、イヌに向けられた熱い視線と触れられる指先だけで、
じわじわと体中が熱くなっているのに。

「もう何回もしているのに。まだ慣れない?」

「こうしていることに慣れちゃうことの方が恥ずかしいように思えるわ」

ヘリの言葉にイヌがフッと笑った。

「もう言うな。ヘリ」

「何?私、何かおかしいこと言った?
何回しても、あなたにドキドキするのって変なこと?」

「だから、それ以上言うな」

「どうして?」

怪訝な表情でムキになって、イヌに詰め寄ったヘリの顔と腰を手でとらえたイヌは、
ヘリがハッと息をのむ間に唇を重ねた。

そして、

僅かに離した口から、イヌがヘリに言った。

「…これ以上僕を煽るな」
…可愛いことばかり言う、この口を塞ぎたくなるから。

苦笑と冗談交じりの囁きだったが、どこか余裕のないイヌの声に、
ヘリは、イヌの方が焦れているのを感じた。

「じゃあ、もっと言っちゃおうかしら。
…あなたを煽りたいから」

いたずらっぽく言ってみせたヘリだったが、
もう、言葉だけでなく、その唇と顔と体、
すべてでイヌを煽っている事を自覚していないようだった。

「もっと煽ってみろよ。受けて立つから」

挑発するように言いながらも、イヌには
ヘリにそれ以上のセリフを言わせる余裕は無かった。

イヌは、ぐいっと、ヘリの頭を己の方に強く引き寄せると、
さらに深く口づけた。

それから、

ベッドまで待ちきれないように、ヘリとイヌは着ていた衣服を脱いでいった。

自分で脱いでいったのか、脱がせられたのかすら、分からないほど夢中になって、
二人は、衣服を脱ぐ合間にも抱擁とキスを重ねた。

ベッドの中でも、イヌに、唇を荒々しく塞がれて、
体も縛りつけられるように抱きしめられたヘリは、
ようやく、今日1日中焦がれ続けた願いがかなった事に、体中で歓喜した。

素肌をなぞっていく、イヌの柔らかい唇の感触に、
ヘリは身もだえして、思わず喘ぎ声混じりの吐息をもらした。

「…いい声だ」

そう、低く囁いたイヌの声の方が、いい声だ、とヘリは思った。

それでも、ヘリには、まだ余計な事を口にする余裕は無かった。

ときめきのせいなのか、嬉しさのせいなのか、
はたまた、やはり恥ずかしさのせいなのか、
自分の激しくなる胸の動悸を感じながら、イヌの愛撫を受け止めていた。

ただ、最初の日のように、
イヌに、一方的に抱かれていた時とは違って、
自然に動きに合わせたり、声をあげたりするようになっていた。

…肌と肌を合わせていると、
イヌと心まで通じ合っている気がする。

まだ、体の関係をもって、数日しかたっていなくても、
イヌの体や、動きが、行為を重ねるごとに自分に馴染んでいくのを感じたヘリだった。

「…ひゃっん…!」

イヌに、感じやすい所を刺激されて、気持ち良さを感じたヘリが、
つい高めの声をあげた。

その裏返った自分の声に恥じ入った様子のヘリを
イヌは優しい目で見つめて言った。

「可愛いよ」

…ずっと、イヌも、この言葉も欲しかった。

「…もう1度言って」

ヘリが、掠れた声でうっとりと囁いた。

「可愛い」

耳元で甘く囁かれたイヌの一言で、
ヘリは、激しくなっていた鼓動が今度は止まるかとさえ思った。

「ほんとに?」

ヘリの問いかけにイヌが黙って、微笑みながら、ヘリの体に身をふせた。

「…つっ…あっん」

しばらく強い痛みが体を支配する間、ヘリは、わずかに首を逸らせ
こらえる声をもらした。

そんなヘリの一挙一動にイヌは目を離さずに行為を続けた。

…可愛いよ、ヘリ。
声だけでなく、何もかもが。

それから、ヘリは、

行為の間中、イヌから『可愛い』だけでなく、普段めったに言われる事のない言葉を何度も囁かれ続けて、その夜も明け方まで甘い時間を過ごしたのだった。


翌日の朝。

再びイヌの部屋から一度部屋に戻って、出勤したヘリは、
あくびをかみしめた表情で、検察庁のオフィスの椅子に座っていた。

「マ検事、今日も寝不足みたいですけど、大丈夫ですか?」

「徹夜で何か調査されているのですか?お手伝いできることがあったら、言ってください」

ヘリの事務官と捜査官は、うっすらと目の下にクマをつくっているヘリを心配そうに見て言った。

「いいえ、大丈夫です。ちょっと…ゲームに夢中になって、夜更かししちゃったものだから。アハハ」

自分で言っておいて『ゲーム』という隠語におかしくなってヘリは一人笑いをした。

妙にテンションの高いヘリに、事務官と捜査官は怪訝そうに顔を見合わせ、
アイコンタクトで、“そっとしておきましょう”と伝えて、自分たちの仕事に向かった。

その日も、終業時間までせいいっぱい仕事をしたヘリは、
まっすぐにマンションの自室に戻った。

そして、部屋でシャワーを浴びた後、大きめのバッグの中に、クローゼットから出した衣類を何着もつめた。

そのバッグを持ったヘリは足どりも軽く、5階のイヌの部屋に向かった。

チャイムを押すと、すぐにイヌがドアを開けた。

「こんばんは。これ、私の服なんだけど、あなたの部屋に置いていってもいい?」

もう、すっかり開き直ったヘリは、バッグをイヌに向けて差し出した。

「いいよ。自分でクローゼットの中にしまって」

そう言って、ドアを大きく開けてイヌがヘリを部屋に迎えいれた。

「ええ、おじゃまします」

ウキウキした調子のヘリが、部屋に吸い込まれるように入ると、
閉じ込めるように、イヌがドアを閉めて、部屋のロックをかけた。

そして、その夜も
ヘリとイヌは部屋の中で、昨夜と似たような展開を繰り広げた。

…素敵…慣れなくても、癖になっちゃいそう。

「…ずっとこうしていたいな」

イヌと抱き合って、陶酔しきっていたヘリは、ベッドの中でつい無意識に呟いていた。

…なら、一緒に住むか?そうすれば、いつでもこうしていられる。

ついそう言いそうになって、イヌは口をつぐんだ。


こんな関係になって、ヘリを愛しく思う気持ちがますます大きくなっていた。

一緒にいたい。こうして毎日のように君を抱きたい。

でも、だからこそ、ヘリが拒否した同棲話の時の気持ちを尊重したいという思いも強くなっていた。

『一人で生活していくって事も頑張ってみたいの。試してみたいのよ』


…しばらくはこの距離感でいよう。これからも、一緒にいられるように。

僕もずっとこうしていたいから。

イヌは、ヘリと違って言葉に出さずに、ただ、ヘリを抱く手に力を込めた。



その翌朝、

浮かれながらも、ふらつく足取りのヘリは、イヌに車で送られて検察庁に出勤していた。

さすがに寝不足続きで、疲労の色が出ているイヌの顔を見て、
…もう、今夜はイヌの部屋に行くのはやめなきゃ。

そう決意したヘリだったが、検察庁前について、
車から降りた後、

『じゃあ、行ってきます。イヌ、あなたも行ってらっしゃい』

『ああ、仕事がんばれよ。ヘリ』

という、まるで、新婚夫婦の朝のような別れの言葉を交わして、
イヌの車を見送った直後には、すでにイヌに会いたい気持ちになっていた。

何もなければ、ヘリは今夜もイヌの部屋に押しかけようと考えていた。

しかし、“今日はクライアントの打ち合わせが夕方にあるから帰りは遅くなる”と
イヌが言っていた。

…あと、1日の辛抱よ。
金曜日、一緒に夕食を食べようと約束しているから。


その日も、時々テンションが高くなったかと思えば、急に沈み込んだり、
ウトウトと居眠りをしそうになって、あわてて、自分の頬を叩いたりする、
せわしないヘリを、事務官と捜査官が、お茶や休憩をすすめて、なにかと気遣っていた。

仕事が終わり、フラフラした体でマンションの自室に帰ったヘリは、
倒れこむように自分のベッドに横たわった。

…このまま寝て、起きて、あと1日働けば、イヌと一緒にいられるから。

そんなことを考えて、眠りこんだヘリだったが、
しばらくして、ふと、部屋のチャイムの音に目を覚ました。

あまりの眠さに無視して、居留守を使っていたヘリだったが、
何度も鳴るチャイムの音に仕方なく立ち上がった。

…だれ?

不機嫌な顔で、インターフォン画面を確認したヘリは、
そこにイヌの姿を認めて、強い眠気も吹き飛ばして、玄関に駆け寄った。

そして、
外に立っていたイヌを跳ね飛ばしそうな勢いでドアを開けた。

「遅い時間だけど、眠れないから寝酒をつきあってくれないか?」

そう言って、ヘリにワインのボトルを掲げて見せたイヌは、
仕事帰りのスーツ着姿だった。

思わず、プッと吹き出したヘリに、イヌも相好を崩した。

「ひどい顔ね」

「お互いさまだな」

ヘリもイヌも、もうごまかしがきかないほど、目の下のクマがひどい顔だった。

職場の上司や同僚に心配されるほどの容姿だったが、
普段、自分の顔や体を気遣っていたヘリでさえ、全く気にしていなかった。

「ワイン頂くわ。入ってちょうだい」

そう言って、ヘリがドアを開いて、イヌを部屋の中に入れた。

コトリ、とキッチンカウンターにワインを置いたイヌは、
ヘリと見つめ合った。

相手の瞳を見ただけで、お互い何を考えているのか分かった。

イヌが、ヘリを手で引き寄せ、腕の中に閉じ込めると、
二人の体は、まるで、磁石のNS極のようにくっついた。

「ワイン、飲まないの?」

「ワインを飲むよりしたいことがある。
君はワインを先に飲みたい?」

ヘリが首を横にふった。

「ううん、あとでいいわ」

「寝酒が飲みたい時は、連絡しろ。こうして、持ってきてやるから。
前みたいに夜中に一人で、寝酒替わりの菓子を買いに行くのはやめろ。危ないから」

「心配してくれているのね」

「当たり前だろ。現に君は…」

…あの夜、後をつけていた狼に誘いこまれて、
まんまと食べられたんだから。

「人を信じて、騙されやすい性格だ」

「じゃあ、あなたの“眠れないから、寝酒につきあって”は、嘘?」

ヘリがクスクス笑って言った。

こんな寝不足の顔をしてるのに、眠れないわけがない。

「嘘じゃない」

イヌは、抱きしめているヘリの顔に唇を寄せて、
ペロリと、ヘリの頬を舌で舐めあげた。

「…こうしないと、今夜も眠れないからだ」

言葉巧みに狼に誘いこまれたのは、赤ずきんだったとしても、
最初に誘惑されたのは、狼の方だったのかもしれない。

無意識に、無邪気で美味しそうな香りをふりまいた、

可愛くて、愛しい赤ずきんに。


「今夜もしばらくは眠れないわね」

甘く囁く赤ずきんに、狼が嬉しそうに笑った。


こうして、この日も、朝まで
キッチンカウンターに未開封のワインボトルを置いたまま、
ヘリとイヌは、夜を共に明かした。

そして、翌日の金曜の夜。
約束通り、仕事帰りに一緒に外食したヘリとイヌ。

しかし、せっかく休日に入る週末だというのに、

食事を終えて、イヌの部屋に戻った二人は、
ベッドの上に横たわった瞬間、前後不覚の態で抱き合ったまま眠り込んでいた。


こうして、ハードな1週間を終えて、

“平日の夜はなるべくお互いの部屋に泊まらない”

そう、ヘリとイヌの間で、暗黙の了解が出来たのは、
この休日明けの事だった。


(終わり)




恋人になって、体も結ばれて、
ますます相手にのぼせているヘリ、そしてイヌのラブ話でした。

「初めての夜」後、「初めての夜後日談」「優等生」「真夜中の赤ずきん」、
そして、土曜日の朝にエジャがイヌの部屋を訪ねる「みつばのたまて箱」で初めて書いた
「カップケーキ」…と、こういう流れになってます♪

二次小説のイヌ×ヘリ。
みつばの中では、つきあい初期と、後では、若干変化をつけているつもりなんです。
一応。
でも、こういう風に時間を前後したものを書くと、
あれ?どうだったかな?って、自分でも混同しちゃったりします。
でも、純愛書くのも楽しいです♪…「真夜中の赤ずきん」って純愛話?(苦笑)

これから、「検事プリンセス」シリーズでは、
暖かい季節になるのに、真冬~春の話を書こうとしているみつばですが、
そして、マイペース、不定期更新がしばらく続きますが、よろしくお願いします。

ブログへの拍手、拍手コメントありがとうございます!
イヌ役の俳優さん関連の、明るいニュース情報もありがとうございました。
そのドラマはまだしっかりとは見てないのですが、かっこいいですものね。
でも、やっぱりみつばは今のところイヌが一番好きです。←言わずもがな


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「真夜中の赤ずきん」2話です。

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真夜中の赤ずきん(2話)




「どうかした?」

部屋の中をきょろきょろ見渡しているヘリに、
イヌが不思議そうに背後から声をかけた。


「うん…。すごく素敵な部屋だなって思って」

「そうか?でも、もう何回も入っているのに、初めて入ったみたいな感想だな」

「そんな感じ。昔もそう思っていたけど、今はもっといいなって感じるの。
まるで自分の部屋みたいに親近感が増しているような…」


それまで何度も来たことがあったけれど、急に、
イヌの部屋が、それまでとどこか違う雰囲気に感じられていたヘリだった。

それは、おそらく、イヌの部屋というより、イヌ自身と親密さが増した関係になったからこその変化だったのだろう。

しかし、疎いヘリは、そのことに気づいていなかった。

こんな思いになったのは、何度も部屋を訪れているからだ、とヘリは答えを出したようだった。

「私、この部屋とっても好きよ」

純粋な気質そのままに、何のためらいもなく、素直に思いを口にするヘリに、
ヘリよりも、ヘリの言葉の意味を正確に解釈したイヌの方が、苦笑するほか無かった。

だが、あえて、底抜けに鈍い恋人に、それを指摘するのも逆にきまり悪くて、

「それは、良かった」と、とぼけて言った。

「そんなに、気にいったのなら、あの案件、もう一度考え直す?」

「あの案件ってどの案件?」

不思議そうに首をかしげるヘリに、イヌがニヤリと笑った。

「一緒に暮らすって、件だ。この部屋がそんなに気にいったのなら、
君もここに住めばいい。僕はかまわないよ」

「…それと、これとは話が別よ」

気まずそうに首をすくめてみせたヘリに、
イヌが笑って、ワインラックを指で示した。

今、ヘリの一番の御所望は部屋ではなく、酒だということは聞いていた。

「何が飲みたい?」

「え~っと…」

目を輝かせながら、ヘリがワインラックの中のワインボトルを
吟味しだした。

どのワインを飲もうかな?と、ウキウキした様子のヘリをイヌが後ろでじっと見つめていた。

思い出していたのは、
再会した後に、イヌがヘリに提案した『同棲』の話。

その時、ヘリはそれを断っていて、イヌも、そのヘリの気持ちを尊重して、
棄却案を受理していた。

ヘリが断った理由は、どこの部屋で一緒に住むかという問題では無かった。
それはイヌも十分理解していたはずだった。

…しかし…。

「イヌ。私、これが飲みたいわ。いい?」

選んだボトルを嬉々として持ち上げて、振りかえったヘリに、
イヌは、思案顔を一瞬で元の表情に戻した。

「いいよ。座って。コルクを開けるから」

にっこり笑って見せて、
イヌはヘリからワインを受け取った。

そして、軽い手つきでワインオープナーを回し、
ボトルのコルクを開け、ヘリの前に置いたワイングラスに注いだ。

「いただきます」

嬉しそうに受け取ったヘリに頷くと、
イヌは、スッとキッチンから離れた。

そのまま、クローゼットの方に向かうイヌの後ろ姿を
ヘリが訝しげに見た。

「どこに行くの。一緒に飲まないの?」

「シャワーをあびてくるよ」

「シャワー?どうして?」

「ジョギングで汗をかいたからね。
君はゆっくり飲んでいていいよ」

「ええ。でも、早く出てきてね。
一人で飲むのはつまらないから」

言葉にださなくとも、ヘリのそんな気持ちは素直に顔にでていた。

どこかに置き去りにしたわけではないのに、
縋るような眼差しを向けるヘリの愛らしい顔に
イヌが自然に笑みをこぼした。

「じゃあ、一緒にシャワーを浴びようか?」

からかうように言って、

「もう、からかわないで」

予想通りの答え、そして、

あわてて、ワイングラスを口に持っていくヘリの分かりやすい態度にもイヌは笑って、バスルームに向かった。

やがて、

イヌがバスルームから出て、キッチンカウンターに戻ると、
ヘリがちびちびとワインを飲んでいた。

半分も開いていないワインボトルをイヌが訝しげに持ち上げた。

「これは、2本目か?」

「いいえ、さっき開けてもらったものよ」

「全然減ってないじゃないか」

「減っているわよ」

「好みの味じゃなかった?」

「そんなことないわ」

「酒豪の君が変だな。
それに、寝酒が欲しかったと言っていたのに」

「明日も仕事だから、寝酒でもそんなに飲まないのよ」

問い詰めるように聞くイヌに、
ヘリが気まずそうにワイングラスを手の中でクルクルとまわした。

「…ほんとは何をしに外に出たんだ?」

何かを悟って、

ヘリの向いに座ったイヌから聞こえる面白そうな声の響きに、
ヘリはますます居た堪れない気持ちになった。

「だから、言ったじゃない。
寝酒かわりのお菓子を買いにコンビニに行ったのよ」

「菓子がそんなに欲しかったのか?」

「そういう気分になる時もあるのよ」

「ふーん…なんだ」

イヌが、目を合わさないヘリから目を離さずに、
自分の分のワイングラスを仰いだあと、
チロリと唇を舌でなめた。

「僕に会いに来ようとしていたんじゃないのか」

ズバリ、核心をついたイヌの言葉に、
ヘリがバッと顔を上げた。

その顔には朱が散っていた。

「違うわよっ!さっきも言ったけど、外に出たのは、寝酒変わりのお菓子が欲しくて、コンビニに買いにいっただけなのよ。あなたに会いに行こうなんて、これっぽっちも考えてなかったんだからねっ」

饒舌にまくし立てるヘリをイヌが腕を組んで面白そうに見ていた。

「これっぽっちも?」

「これっぽっちも」

「少しぐらい考えたら、寝酒が僕のところにはあるかもしれないって思いついたんじゃないか?」

「あら、そうね」

澄まして応えながらもヘリは、…その手があったのね…と思っていた。

「薄情だな」

イヌがため息をついた。

「僕は君に会いたかったのに」

…え?…。

寂しそうに目を伏せるイヌに、ヘリがあわてた。

「私だって、もちろん会いたかったわよ。
でも、あなたの仕事が忙しいと思って遠慮していたのよ」

つい、本音をもらしたヘリに、イヌが耐え切れなくなって
失笑した。

「…また、からかったのね」

楽しげに笑うイヌを、ヘリは悔しげに睨み付けた。

…もう、この男は~・・・。
こんな意地悪で陰険な男の事を1日中考えていて、
ずっと会いたいなんて思ってた私がどうかしてたんだわ。

「ごちそうさまでしたっ。もう帰るわ」

憤然として、飲み残しのワインをぐいっと煽ったヘリは、
音をたてて、空になったワイングラスをキッチンカウンターの上に置いた。

そして、立ち上がって

「待って」

そう、呼び止めたイヌを無視して玄関に向かった。

「今夜は泊まっていかないのか?」

「また、からかっているのね」

…もう騙されないわよ。

身構えたヘリだったが、「からかってないよ」という、
きっぱりとしたイヌの声に、驚いて後方を振り返った。

ヘリの後ろにいたイヌの顔にさっきまでのふざけた笑みは無かった。

「今夜は、君が僕の部屋に泊まればいい。
昨夜は、僕が君の部屋に泊まったから」

真面目なイヌの声に、ヘリの胸がドキドキと高鳴ってきた。

それでも、素直にそれに応じるのも、照れくさくて、
ヘリは、せいいっぱい平静を装った。

「これも隣人としてのお気遣いかしら?」

「恋人として誘ってる」

「・・・・・・」

素直に返事が出来ないヘリに、
イヌがなおも誘いかけてきた。

「それに、ここも君の好きな部屋だろ?
ゆっくりくつろいで行けばいい」

僕の部屋のベッドで。
僕の隣で眠ればいい。

誘惑する言葉と、イヌの瞳がヘリをとらえて、
動けなくしていた。

その目で、ヘリは、自分の心が全部イヌに見透かされていると思った。

しかし、イヌの瞳に映っていたのは、ヘリの心情ではなく、
イヌ自身の心だった。

甘い熱にすっかり浮かされていたヘリは、そのことに、
全く気付いていなかった。

「そうするわ」

素直にそう答えたヘリに、イヌが微笑んだ。

今のヘリにとって、イヌの笑顔は、どんなものより
魅惑的だった。

…どうして、私ってば、あんなに意地を張っていたのかしら。
ばかみたい。

そう、不思議にさえ思うほどに。

ヘリは、フラフラとイヌに歩みよると、
そっと腕を伸ばして、自分から抱きついて言った。

「私ね、ほんとは、ずっとあなたに会いたかったの」

からかわれてもいい。
駆け引きが下手だと思われてもいい。

やっぱり、私は、マ・ヘリは、自分に正直に生きたいもの。

そう思いながら、
ヘリは、イヌの体に両腕をまわして、抱きしめた。

ヘリの抱擁を、受け止めて、
イヌがヘリの体に優しく両腕をまわした。

『ほんとは、ずっとあなたに会いたかったの』

そんな告白を自分から素直にしてくる
ヘリが、この上なく可愛かった。

「僕も君に会いたかった。気が合うな、僕たち」

「恋人だもの。当然よね」

イヌの言葉にときめきながらも
ヘリが澄まして答えた。


「じゃあ、この後どうしたいのかも、気があうかな?」

「それは、試してみないと」

イヌが楽しげに笑った。

そして、ヘリが着ていたパーカーのジッパーを指でつまむと、
ゆっくりと下していった。



(「真夜中の赤ずきん」2終わり3に続く)


イヌの言っている同棲の話は二次小説「myroom」で。

「初めての夜」後の話なので、初々しい恋人若葉マークのイヌ×ヘリ。


不定期更新中のブログですが、ご訪問、拍手、コメントありがとうございます♪
風邪で声が出ない状態ですが、元気です。声は小説書きには関係ないですね(笑)

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こんにちは。

実家から戻ってきました、みつばです。

今日から新学期。
新生活にはいる学生さんやお子さんもいらっしゃる方も多いですよね。

春休みを祖父母やいとこ達、叔父、叔母たちにいっぱい遊んでもらった、みつばの子供も、
新しいクラスを楽しみに出かけていきました。

下の子供もいつのまにか大きくなって、笑いかけると笑うようになってきました。
筋肉の反射には見えないんだけど。ずいぶん見えてきたのかな?
起きていて、見つめ合って、笑い合っていると、可愛くて、
いつまでも時間が過ぎていくんですよ♪(親ばか)

ブログお休み中も、ご訪問、拍手、コメントやメッセージ、ありがとうございました。

「嘘つきは恋の始まり」は「夢桜」の前の4月1日の話です。
なので、シリーズだと、今の「NYへいこう」(未公開)より数か月未来の話です。
イヌが意味深な言動してますが、その意味は?は、いつかシリーズで話がおいついたら♪
…たぶん来年…。
それでも、まだ、みつばの検事プリンセスの二次小説は全体(最終回まで)の半分くらいなので、先は長いです。

途中になっている「真夜中の赤ずきん」を完成させてから、
シリーズ話の完成にむけて~…マイペースでいきます。

「嘘つきは恋の始まり」のおまけ話も予定してたのですが(自分の中で)
大人話なので(苦笑)裏箱でもショートショートでも、のんびり書きます。


コメントで、誤字や、リンク間違いの御指摘ありがとうございます!

小説アップする前に何度も読み直しているつもりなのに、
誤字、脱字や、漢字の間違い、文法等の間違いがとても多いです。←いばって言えることじゃない。

過去の作品にも多いのですが、もし、何か気づかれたら、教えてください。
相方に「日本語が不自由している」とよく言われるみつばですが、
公開で知らずに恥をいっぱいかいています(涙)

それでは、また。

取り急ぎ、帰ってきました。雑記でした。


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「検事プリンセス」みつばの二次小説、携帯更新。

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嘘つきは恋の始まり(後編)
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ヘリが考えていたのは、エープリルフールにイヌにつく嘘だった。

しかし今日が嘘をついても良い日なら、せめて自分の気持ちに正直でいたいと思ったヘリだった。

あの2年ほど前とは違う。

イヌに作ってもらったラーメンを一緒に食べて、
ジェニーがイヌの部屋に来ると聞いて、逃げるように自室に戻った、あの時。

ようやく気づいた。

部屋に行きたかったわけでも、ラーメンを食べたかったわけでもない。

嘘をついたのは、

ただイヌに会いたくて、
一緒にいたかったから。


そんな過去を振り返る内に、ヘリが思いついたのは、
コッソリとイヌの部屋に夜食を作って届けるというもの。

だから、『シャワーを貸して』は部屋の中に入って夜食を置いてくる為の嘘だった。

…少しでも喜んでくれたら。

そんな思いで、ヘリはスーパーマーケットて買った食材をマンションの自室で調理した。

完成した料理を器に盛り付けたヘリは、
時計を見て慌てふためいた。

…もう、こんな時間。
イヌが帰って来るまでに、部屋におきたかったけど。

ヘリは作った夜食を持って、ドキドキしながらイヌの部屋を訪れたが、イヌはまだ帰宅していなかった。

ホッと息をついて、ヘリはイヌの部屋に入り、
キッチンカウンターの上に夜食を置いた。
そして、家主不在の部屋の中を見渡した。

きちんと整頓されたイヌの部屋だったが、
ベッドの縁に脱ぎ捨てられた部屋着がかかっていた。

…朝も慌ただしいのね。

ヘリは、イヌの部屋着を畳んで置き、ベッドカバーを整えると、ついでに軽く掃除を始めた。
そして、掃除が終わった後、そのまま部屋を出て行こうとしたヘリだったが、
肝心な事を思いだして、慌てて引き返した。

…いけない。シャワーを貸して、と言っていたのに。

もう悠長にシャワーを浴びている時間は無さそうだった。

シャワーを借りるのは、この際どうでもいい事なのだったが、イヌにお願いした手前、シャワーを浴びた痕跡が無ければ、変に思われるだろう。

ヘリは急いでバスルームに向かうと、偽装工作で、シャワーを浴びたように見せかける為に、しばらくシャワーの湯を流した。

そして、濡れたバスルームの壁や床を眺めた後、満足げに頷いて、シャワー栓をしめた。

「うん。これでバッチリ。あとは、帰るだけね」と呟いて振り返ったヘリは、次の瞬間、体を硬直させた。

「何やってるんだ?」

後ろに腕組みをしたイヌが立っていた。

面白そうな顔をしている事から、ヘリの不可解な行動の一部始終を黙って見守っていたのだろう。


ヘリは動揺のあまり、バクバクしている胸に手を置いて後ずさった。

「いつ帰って来てたの?」

「ついさっきだ」

「気づかなかったわ。チャイムを鳴らしてくれなきゃ」

「ここは僕の部屋だぞ。」

イヌがおかしそうに言って、洗面台の棚からタオルを1枚とってヘリに渡した。

「服のままシャワーを浴びるつもりだったのか?」

シャワーの跳ね返りで、ヘリの服が少し濡れていた。

「シャワーの調子を見てたのよ」

「浴びてはいかないのか?“後は帰るだけ”と言っていたが?」

「もう、さっき浴びさせてもらったわ」

「そうか?」

イヌが、ヘリの肩を掴んで、引き寄せると、頭に顔を近づけ匂いを嗅いだ。

「うちのシャンプーの香りがしないな」
「……」

イヌとの会話でどんどん袋小路に追い詰められたヘリは、
それ以上の誤魔化しをあきらめて溜息をついた。

「エープリルフールの嘘なの」

「エープリルフール?」
…これが?

あまりにも、ずさんなヘリの嘘にイヌが呆れを含んだような笑みを浮かべた。

しかし、ヘリが向けた視線の先にあるものに気づいて、笑いを引っ込めた。

「あなたを驚かせたかったのよ」

キッチンカウンターに置いた軽食を見ながら、
決まり悪そうにヘリが首をすくめて言った。

エープリルフールも、シャワーの調子がおかしいからという嘘も単なる口実。

…本当はイヌに会いたかった。会って、すぐばれても楽しくなる嘘をつきたかった。
でも会えないなら、せめてイヌを癒やしてあげたかったから。

そんなヘリの気持ちは、語らずとも、イヌにはヘリの手料理で一目瞭然だった。

「惜しかったわ。あと少しでエープリルフールが成功したのに」

自嘲混じりで、悔しがってみせるヘリにイヌは、目を細めた。

「詰めが甘かったな。君は嘘をつく事に慣れてないから」

心の中では全く違う事を思っているのに、
イヌから言葉で出るのは、いつもの憎まれ口だった。

「そうね。嘘の得意な誰かさんと違って」

「誰かさんっていうのが、ソ・イヌの代名詞なら、僕は嘘つきじゃないぞ」

「嘘。それこそ嘘よ」

「嘘じゃない。演技やハッタリは得意だけどね」

…それを嘘つきっていうんじゃない。

イヌの澄ました顔にヘリが吹き出して笑った。

ヘリの楽しそうな笑い顔に、イヌもやわらかい笑顔を向けた。

…会えて嬉しい。

ひとしきり笑いあって、二人は同じ事を思っていた。

それを先に口にしたのは、嘘の得意な嘘つきだった。

「手料理のお礼に、シャワーとベッドを貸すよ」

…このまま一緒にいたい。

それを聞いた嘘が苦手な嘘つきは、わざとらしく躊躇するフリをした。

「シャワーはともかく、ベッドは貸してくれるだけにしてね。疲れちゃうから」

「貸すだけだ。何もしない」

そう言いながらも、イヌはヘリの体を引き寄せて抱きしめていた。

イヌの胸に顔をうずめて、ヘリは目を閉じて深く息を吸い込んだ。

密着したイヌのシャツから、ほのかに、いつもつけている香水と煙の香りがした。

「…煙草くさいわ」

「移り香だ」

煙草を吸わないイヌの、仕事中についた匂いだった。

「あなたから先にシャワーを浴びて来て」

「いや、後で一緒に浴びよう」

そう言って、イヌはヘリの背中にまわしていた手に熱を加えてゆっくりと下に撫で下ろしていった。

「夜食を食べてから?」

今度は惚けているわけでなく、本気で聞いているらしいヘリにイヌが耳元でクスリと笑った。

嘘をついて、手料理を置いていこうとするなんて。

こんなエープリルフールをしかけてきた君を前にして、これ以上、自分の感情には嘘をつけないから。

…君も食べてからだよ。ヘリ。

ヘリの気持ちを全部吸い上げるように、
重ねた唇に想いを込めて、イヌは目を閉じた。


しばらくして。


イヌのベッドの布団の下で、
ヘリは濡れた服を、イヌは煙草の匂いのしみついたシャツを脱いだ状態で抱き合っていた。

「…やっぱり嘘だったじゃない。何が『貸すだけだ。何もしない』よ」

「エープリルフール」

そう言って、ニヤリと笑ったイヌは、
拗ねた素振りで膨らませているヘリの頬を手で愛おしむように撫でた。

結局、あの後、
会いたかった、というお互いの感情の高ぶるままに、ヘリとイヌは激しく体を重ねた。

その甘い余韻は、終わった後も続き、
ヘリとイヌは仕事疲れさえも忘れて、会話を続けていた。

「あーあ。嘘つき名人にはかなわないみたい。イヌ、あなたには毎日がエープリルフールみたいなものよね」

「誰かを喜ばすための嘘なら、ついてもいいな。…君にはかなわないが」

イヌの言葉で、自分のもくろみがイヌにバレていたのを知ったヘリは、照れ隠しに首筋を手でそっとかいた。

「嘘から本当の事を知る事もあるのは本当よ」

「嘘から本当の事を知るのが本当にある?…よく分からない。何かの例えか?」

「ううん。べつにいいの。こっちの話だから」

一人笑いをしているヘリをイヌが微笑ましげに見つめていた。

「嘘つきは泥棒の始まりって諺はあるよな」

「あるわね。それも本当よね。
私は会った事があるもの。彼女を待ってると嘘をついて、ホテルの部屋を横取りした嘘つきさんが、じつは財布と携帯泥棒の黒幕さんだって」

「そうなんだ」

ヘリの嫌みを、サラリと流したイヌは、素知らぬふりをした。

「それでも、そんな泥棒が好きだと言う女性はいるかもしれないな」

「その女性は泥棒に心も盗まれたんじゃないかしら」

「恋泥棒?」

「そ。恋泥棒」

ヘリとイヌはクスクスと顔を寄せ合って笑った。

笑いあった後、自分の手を見たヘリが突然「いけない」と、あわてて、ベッドから出てキッチンに向かった。

そして、ベッドに戻ってくると、不思議そうにヘリの動向を見守っていたイヌに指輪をはめた手を掲げて見せた。

「置き忘れていたの」

掃除や家事を熱心にする時に限って、
ヘリがイヌのあげた指輪を外す事を知っていたイヌは、
ヘリが夜食の他にもしてくれた事に気づいた。


…君はエープリルフールの嘘も、優しいんだな。


「その指輪、気にいってる?」

「ええ。とっても。
例え、あなたがこの指輪は偽物だと言って、それが嘘じゃなくても、私には大切な指輪よ」

ヘリがそう言って撫でた指に、イヌが優しくそっと触れた。

体中を支配するヘリへの想いに突き動かされるままイヌが言った。

「いつか、これより特別な指輪を君にあげるよ」

…特別な指輪って?

しばらく、イヌが何を言っているのが分からなかったヘリは、キョトンと首をかしげていた。

イヌの言う特別という意味が分からなかった。

しかし、一瞬、チェ検事につかれた嘘の話が、脳裏によぎった。

結婚指輪?

…まさかね。
ハハっとヘリは笑い声をあげた。

「エープリルフールネタなのね?
そうでしょ?もう、騙されないんだからね」

黙って微笑んだままヘリを見つめているイヌに、…やっぱり冗談だったのね。と、ヘリは思った。


それから、
嘘ではなかったイヌの言葉通りに、ヘリとイヌは一緒にシャワーを浴び、
再びベッドに戻った時には、ヘリが眠るタイムリミットになっていた。

「おやすみ、ヘリ」

「…イヌはまだ寝ないの?」

「お腹がすいたから、夜食を頂いてから寝るよ」

そう言って、イヌはベッドの中で、もう半分寝かかっているヘリの髪を一撫でした後、額にキスを落とした。

顔を上げて、

「エープリルフール嬉しかったよ。ありがとう」
…夜食も、掃除も。

そう言ったイヌにヘリが、眠そうに細めた目でニコリと笑った。

「うん…」

…嘘をついて、お礼を言われるなんて不思議ね。バレちゃったけど、素敵なエープリルフールだったわ。
結局、疲れるような事をしちゃったけど、イヌが嬉しいと言ってくれたから。

そう思って、

恋人とつかの間でも、逢瀬が出来た事に心底満足したヘリは、
微笑んだままイヌより一足先に眠りについた。

イヌは、ヘリの寝顔をキッチンカウンターから見つめながら、
ヘリの作った夜食をゆっくりと味わった。

…ヘリ。僕は君には嘘をつけないと言っても、信じないだろう。

“あの日”、
君が僕に『私に気がある?』と聞いた時も演技をしていたつもりだった。
僕が君を好きだと思い込んでくれるのは、好都合だと考えたから。

でも、益々君に惹かれていく気持ちに嘘はつけなかった。

それは今も変わらないよ。


イヌの心の呟きは、
この手料理を見た時に、ヘリに言いたかった事だった。

でも、エープリルフールだと言われる日に伝えても、ヘリは本気にしないだろう。
…さっきのように。

『エープリルフールネタなんでしょ』


「美味しかったよ。本当だ」

夜食を食べ終えて、ヘリの元に戻ったイヌが、眠っているヘリに囁いた。

「さっきの話も」

言った時には、日付は変更されていた。

その事にヘリは気づいていなかったが、イヌには分かっていた。

…エープリルフールの戯れ言なんかじゃない。

「約束する」

イヌが、そう言って、
眠っているヘリの左手の指にキスをしたのは、

エープリルフールを数時間過ぎた、真夜中の出来事だった。


(終わり)
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本日は、検事プリンセスの二次小説の更新はお休みです。

以前放送していた時に見ていた連続ドラマ「リッチマン・プアウーマン」のスペシャルを見た感想を雑記で。

私が、録画を倍速で見なかった数少ないドラマの一つだった「リッチマン・プアウーマン」

前にも感想を雑記で書いたのだけど、メインキャラクターが好きというより、設定や周りのキャラが好みでした。


今回は前回の続きの新作という事でとても楽しみに♪

…で、見た感想なのですが


見てない方には、スミマセンな雑記で、見ていて、日向や真琴が好きな方には、さらにスミマセンになるかも…な感想になりますが、それで良かったら。

↓以下



やっぱり、このドラマで、みつばが女性キャラで好きなのは、燿子。好きな男性キャラは朝比奈です。

ただ、今回は特番で、メインが日向徹と真琴の恋愛の行方にスポットが当たっていたので、脇役のキャラクターの存在感がやや薄い感じ。

日向と真琴のカップルを優しく見守るお兄さん、お姉さんになってます。

メインの二人のやり取りの中には恋愛ドラマならではの萌シーンも随所にあったのですが、
私が一番好きだったシーンは、…

(以下ネタバレ注意です)


安岡の結婚式で、一度別れた日向と真琴のシーン。

切なくて、悲しいけど、それまでの流れや「別れよう」と言った日向のセリフ。

…あとで、どうして日向がそう言ったのか?なシーンが出てくるのだけど、私は…。


ここで、エンドロールが流れたら、大人の恋愛ドラマとして、すごく好きかも…と思ってしまいました。

本当は、ハッピーエンド物が大好きなのだけど、この二人なら、こういう結論もありかもと。
好きだけど、傷つけあってしまう。それって辛いよね。

会話を聞いていると、日向の言う事も冷たいけど、真琴が感情的になりすぎてる気がして。

一緒にいるなら、喧嘩しても、「あなたは変われない」とか、「人と住む事に慣れてない」とか、決めつけたり、一番触れて欲しくない事を言ったら駄目のような気がする…。

恋人でも夫婦でも。

日向は天然で、ひどい事を言うけど、真琴は分かってるのに言ってる。

そんな二人が恋人として一緒にいたら、果たして長く保つのかな?って思ってしまって。

…やっぱり日向徹には燿子では…。

とか、思ってしまった(汗)

ただ、二人が言ってたけど、本音を言い合えるからこその喧嘩って意味で、犬も食わないってやつなのかな?

でも、離れても、会いたくなって、好きで一緒にいたいって思う人と、いられるならね♪

ラストシーンは、バカップル全開シーンで終わった、「リッチマン・プアウーマン」

この二人も中学生カップル?(笑)

大人なんだけど、純愛が強い話が(も)好きなみつばのツボでした♪

…という、本日は「リッチマン・プアウーマン」のスペシャルドラマの感想雑記でした。
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「検事プリンセス」みつばの二次小説、携帯更新。

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嘘つきは恋の始まり(前編)
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今日が、その日だとヘリが気づいたのは、検察庁に出勤してからだった。

廊下で出会って、朝の挨拶を終えたチェ検事が、
意味ありげにヘリに耳を貸すようにジェスチャーした。。


「じつはさ…マ検事。ここだけの話だけど。ナ部長が結婚するらしい」

「えっ?ナ部長が?」

「しっ。他の人には黙っていてくれよ。部長が折りを見て自分からみんなに話したいらしいから。よろしく頼むよ」

「わかりました」

チェ検事の念押しに頷いて、ヘリは指で了解ポーズを取って見せた。

…ナ部長が結婚されるのね。
ちょっと驚きだけど、おめでたい事だわ。

ヘリはチェ検事の話を素直に鵜呑みにしていた。

しかし、昼休み時間、
ヘリがいつものように、刑事5部のメンバーとランチを食べていた時の事。

雑談が途切れた頃合いを見て、コホン…。と、おもむろにナ部長が咳払いをして皆の注目を集めた。

「あ~…、じつは、みんなに一つ言っておくことがあったんだ」

「なんですか?」

ナ部長の近くに座っていたイ検事が不思議そうな顔で箸を止めた。

ユン検事とキム検事も、何だろう?という表情で、ナ部長を見つめている中、
ヘリは、これは朝聞いた話かもしれないわ。と、ワクワクしながら、隣に座っていたチェ検事の横顔をチラリと見た。

「じつはな。近々、この部内のメンバーの一人が結婚する事になった」

ほら、マ検事。と言うような、チェ検事の目配せに、ヘリは頷いて、「おめでとうございます!」と勢い良くナ部長に言った。

「え…あ、ああ」

ヘリの勢いにのまれて、戸惑っている様子のナ部長にヘリがたたみかけた。

「それで、お相手はどんな方なんですか?」

「それは、弁護士じゃないのかな」

「弁護士なんですか?部長、いつからお付き合いされてたんですか?」

「いや、それは分からん。」

「分からんって、どうしてですか?」

「詳しい事は聞いてないからだ」

「聞いてないって、ご自分の事なのに?」

「…マ検事。一体誰の話をしている?」

「部長こそ、結婚するのは部長じゃないんですか?」

「私がか?」

話が噛み合わなくなり、お互い怪訝そうに顔を見合わせるナ部長とヘリに、チェ検事の失笑が聞こえた。

部のメンバーの視線をあつめたチェ検事は、息も絶え絶えの調子でひとしきり笑った後、「エープリルフール!!」と言った。

「あ~。エープリルフールですよね」

キム検事が呆れ顔で言って、「なるほど」と、イ検事が納得したように頷いた。
何も言わないユン検事も微かに口元に笑みを浮かべていた。

一人、まだキョトンとしているヘリにチェ検事が「だから、嘘なんだよ。今日はエープリルフールの日だからね」と、楽しげに説明した。

「嘘なんですか?ナ部長が結婚されるという話」

…みんなは知ってたの?

周囲を見渡すヘリに

「この話、真に受けたのはマ検事だけだよ」

と、イ検事が面白そうに言い、

「私も朝チェ検事から聞かされましたけど、嘘だってすぐに分かりましたよ」

と、気の毒そうにキム検事も言った。

…ユン先輩も?というヘリの視線にユン検事が、軽く微笑んだ。

「今日がエープリルフールデーということを朝思い出したよ」

ヘリをフォローするつもりで言ったユン検事の言葉だったが、ナ部長は、
『ブルータス、お前もか』
と言いたげな表情をユン検事に向けた。

「…私の結婚が分かりやすい嘘だという話なのは、よく分かった」

「それで、結局誰が結婚するんですか?」

不穏な空気になりかけたナ部長に取り繕ってイ検事が聞いた。

「どうせ、それも嘘だろう。チェ検事から聞いた話だからな。…マ検事が結婚すると」

「私がですか!?」

ヘリが驚いた声を上げたのを見て、ナ部長がため息をついた。

「…騙されたな」

「騙されても仕方ないですよ。部長」

「そうですよ。マ検事ならあり得る話ですから」

「嘘じゃないかもしれません」
ナ部長を慰めているようで、先ほどのナ部長の結婚話と明らかに違う皆の反応は、ただ余計に墓穴を掘ったようだった。

「…私の結婚話は分かりやすいくらい嘘っぽいからな」

憮然となって、拗ねた口調のナ部長に、一同がチェ検事に責任を取れ。という風に目を向けた。

「すみません、部長。悪かったよ、マ検事。でも、エープリルフールだから、ここは笑って欲しいな」

慌てて言ったチェ検事に、ナ部長はしぶしぶ頷いて、ヘリは苦笑で返した。

「でもさ、エープリルフールって、嘘をつくのは楽しいですよね」

イ検事の言葉にキム検事が「そうですか?」と反論した。

「エープリルフールと言っても、ついていい嘘と悪い嘘はあると思いますよ。相手によってシャレにならない嘘もありますから」

と、再びナ部長の前でシャレにならない会話をぶり返しそうなキム検事に、
ヘリが慌てて「キム検事は今日何か嘘をついたの?」と聞いた。

「私は友人に、恋人を紹介するってメールを送ったのですけど、エープリルフール!!って返信をもらいました。」
と言ったキム検事に、「バレバレの嘘をつくなよ」と、イ検事が、突っ込んだ。

「じゃあ、イ先輩は誰にどんな嘘をついたんですか?」

「僕は、ネットの自分のサイトに分かりやすいエープリルフールネタを書き込んだよ」

「…それ、とても楽しそうですね」

イ検事とキム検事のいつものような掛け合いを微笑ましく見ていたへりに、チェ検事が、「マ検事は?」と聞いた。

「私はまだ、誰にも何も言ってません」

今日がエープリルフールの日であることをすっかり忘れていたへりだった。

…知っていても、誰かを騙せるほど上手く嘘がつけたかしら。

そう思ったへりを茶化すように、チェ検事がニヤニヤした。

「どうせ、マ検事は彼氏に嘘をつくつもりなんだろ?」

「え?」

「“私、他に好きな人が出来たの~”なんて、どう?彼氏の反応が楽しみじゃないか?」

「あっ。それ面白そう!!マ先輩、そうしましょうよ」

へりの意向を無視して、勝手に盛り上がるメンバーに、ヘリは引きつった笑みを浮かべた。

脳裏に、イ検事の提案したエープリルフールネタを恋人…ソ・イヌにした所を一瞬想像しただけでヘリは身震いした。

…反応が楽しみ?…むしろ恐ろしいわ。
面白そう?それって、遊園地のお化け屋敷に入るくらい面白い事でしょうね。

いろんな意味で、それ以上考えたくなくなったヘリは、このネタを頭の中で棄却した。

「ユン検事は?」

ナ部長の言葉に、一同が一斉にユン検事を見やった。

「こういう日だから、特別に何か我々に冗談でも言う気はないか?」

…部長、ムチャぶりを。

皆が息をひそめて見守る中、ユン検事が渋い顔で、ため息をついた後、重々しく口を開いた。

「私は、妻と別居してました」

シーンと、場が凍りついたように静まり返ったが、次の瞬間、笑い声に包まれた。

「ユン検事、それって本当の事だろう」

「真面目な顔で言うから焦っちゃいましたよ」

「そんな顔で言われたら嘘か本当か分からんな」

大笑いする面々に、ユン検事も笑顔を浮かべていた。

「では、せっかくだから、私も一つエープリルフールネタを披露するかな」

そう、ナ部長が言って、すっかりくだけた雰囲気に包まれていた一同は冷やかし半分に拍手した。

「来年度の人事だが、刑事5部の誰かは遠い所にとばされる事になる」

「またまた~。部長」

「エープリルフール!!」

やんや、やんやとはやし立てる部下達と「ハハハ」と一緒に笑ったナ部長は、
「…明日には本当になるかもな」と低い声色で付け足して、

…エープリルフールネタは当分根にもちそうだ。と、
その場にいた全員をシャレにならない雰囲気にさせてランチ会を終了させたのだった。

それからのヘリはというと、

ナ部長のエープリルフールネタも頭から締め出して仕事にうち込んでいた。
そして、就業時間を終える頃、誰にも嘘をつかないまま、エープリルフールの日も残り数時間になっていた。

…イヌも、今日がエープリルフールだって忘れているのかしら?

その日のヘリの携帯電話には、まだイヌからのメールも留守番電話も入っていなかった。

もし、エープリルフールだと気づいていたら、イヌは間違い無く何かしら仕掛けてきそうだった。

しかし、仕事で多忙にしているイヌの様子を知っていたへりは、
知っていても、そんな余裕が無いのだろう、とすぐに察した。

…住んでいるのがあんなに近いのに、会う時間も無いんだもの。

ここ最近の連日、仕事に行ったイヌの帰宅時間は遅かった。
へりが寝る時間になっても、イヌがまだ帰っていない日もあった。
それでもイヌは、1日の終わり、ヘリの就寝前には必ず連絡をくれた。

「お疲れ。おやすみ」

短い会話の後、互いに、携帯電話でそう伝えるのが日課になっていた。

おそらく、今日もイヌはクタクタに疲れて帰宅することだろう。
そんなイヌが、せめて、電話する時、楽しくなるような嘘をつきたいと思ったへりだったが、そんなネタは何も浮かんでこなかった。

…嘘は嘘だもの。

いいことなら嘘と分かれば、がっかりするし、悪いことなら、信じた時嫌な気分になっちゃう。
ついていい嘘なんてあるのかしら?

そんな事を考えながら歩いていたへりは、
ある事を思いついて、検察庁の駐車場に向かっていた足を止めた。

…こんな嘘なら…。

へりは、携帯電話を取り出すとイヌにかけた。

『はい。ソ・イヌです』

数コール後、電話に出たやや固い応答で、イヌがまだ仕事中だと分かったへりだった。

『へり、どうした?もう寝るのか?』

それでも、そう優しく問いかけてくれるイヌの声に、
ヘリの胸がキュウと切なく締め付けられた。

「あのね」

つとめてヘリは明るい調子で言った。

「イヌの部屋のシャワーを貸して欲しいの。実はね、今、私の部屋のシャワーの調子がよくなくて。だから、部屋に行ってもいい?」

もちろん、嘘だった。

イヌに嘘が見破られないか、ドキドキしながらヘリは一気にしゃべった。

ヘリの心配は杞憂に終わったようだった。

『いいよ』

イヌが何の疑いも無く快諾した。

『僕はまだ職場にいるけど、部屋のドアの暗証番号を解除して入って。番号は分かるよな?』

「ええ。ありがと。…あなたの帰りは今日も遅くなりそう?」

『そうだな。まだかかりそうだから、今日中には帰れないだろう』

予想はしていた答えだったが、ヘリは、会えない寂しさより、
激務をこなしているイヌの体を思いやった。

「そう。わかったわ。シャワーを浴びたら部屋のロックをかけて帰るわね。お疲れ様。イヌ。お休みなさい」

『ああ、君も。お休み』


イヌとの通話を切ったヘリは、車に乗り込んだ。

車を走らせて、向かった先はマンションでは無く、繁華街のスーパーマーケットだった。

ヘリはそこで、いくつかの食材を買い物のカートの中に入れていった。


そして、ふと、あるコーナーの一角で山積みになっていた食品に目をとめた。

それは、とくに何の変哲も無い、巷に溢れているインスタントラーメンだった。

しかし、ヘリにとっては、何かと思い出深い物だった。

初めて一人暮らしで、イヌから教わった『料理』であり、自分とイヌの部屋で一緒に食事したラーメン。

『あなたの家にラーメンはある?お腹ペコペコなのに、うちには水しかなくて』

ラーメンを作っておきながら、へりが、イヌに電話をかけて、そう聞いた日。

…思い起こせば、イヌに嘘をついたあの日に気づいたのよね。

自分の本当の気持ちに。

私がソ・イヌを友達以上に好きなっているってことに。

ヘリはラーメンの袋を手に取って感慨深く見つめながら、
しばらくぼんやりと過去を振り返っていた。


(後編に続く)

「夢桜」前後のエープリルフール話です。
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