韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「I love you 」です。
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「検事プリンセス」ソ・イヌ役のパク・シフさんが以前ファンミで歌われた、
尾崎豊さんの「I love you」韓国語バージョンをイメージソングにした二次小説です。
(注意)
この話は、「検事プリンセス」のパラレル二次小説になります。
もし、ドラマ14話~ラストで、ヘリの父親、マ・サンテが過去の罪を自白しない、という選択をしていたら…という「もしも」のその後を妄想した話です。
ドラマ本編とも、みつばの二次小説本編とも違う世界の話ですが、
それでも良いという方だけお読みください。I love you帰り仕度をしていたイヌに、同僚達が声をかけた。
「ソ・イヌ、これから皆で飲みに行こうって話してたんだが、君も一緒にどうだ?」
イヌは、申し訳なさそうに首を振った。
「誘ってもらってすまないが、今夜はまっすぐに帰るよ」
「今夜“も”だろ?」
からかうように言った男の肩をたしなめるように、横にいた同僚が肘でこづいた。
イヌが今まで誘いにのって仕事帰りに飲みに行くことも、遊びに行くことも無かった。
その理由が薄々分かっていても、一緒に仕事をはじめてからずっとその姿勢を崩さないイヌを、ある者は感心し、ある者はあきれていた。
…よっぽど、家にいる妻に頭が上がらないのかもしれない。
仕事に真面目で、そして、優秀な男。
他人への気くばりや優しさもあり、話してみるとユニークなところもあって、
同性から見ても、いい男だった。
最初、ソ・イヌが会社に入社してきた頃、
女性社員達の中に色めき立っている者が何人もいたらしいが、
『妻』がいると知って、かなり落胆していたという噂もあった。
どんな女性か知らないが、ソ・イヌが毎日残業も寄り道もせずに帰途につくのは、その『妻』が家で待っているからだ、と同僚達は勝手に信じ込んでいた。
こちらから聞かないと話してはくれないが、たまに『妻』の話題を振った時のソ・イヌが普段見せないような表情になるのを、同僚達は見逃していなかった。
「愛妻家もそこまでいくと重症だな」
どこか悔し紛れに言った同僚の言葉に、イヌは静かに微笑だけで応えた。
そして、「また、懲りずに誘ってくれ」と言って、同僚達に手を上げると、会社を後にした。
会社のビルを外に出ると、冷たい風がイヌを包んだ。
厚めのコートを着ていても、肌に刺すような冷気。
祖国、韓国より、こちらの晩秋は慣れていたイヌにとってもこたえる冷たさだった。
…今夜あたり雪が降るかもしれない。
彼女はこの寒さには慣れていないから、きっと心細い思いをしているはずだ。
イヌは、アパートで待っているだろう『妻』を思って、足早に帰路を急いだ。
「ただいま」
アパートの扉を開けると、シンっとした部屋の中からいつもの声が返ってこなかった。
『おかえりなさい。イヌ』
いつもなら、明るい声と共に出迎えに出てくるのに。
「…ヘリ?」
部屋の中は冷え切っていて、暖房もついていないようだった。
もう日も暮れて、暗くなっているのに電気もついていない。
不思議になったイヌは、部屋の明りをつけてあたりを見回した。
…出かけているのか?
出かける時は必ず携帯にメールで伝言を残していくのに。
返事の帰ってこない、恐ろしいまでの静寂に包まれた空間に、
イヌは次第に不安になっていった。
「ヘリ?いないのか?」
少し大きな声を出して、イヌは、奥の部屋の寝室の扉を開けた。
自分の心臓の音だけが不気味に響いているような気がして、
イヌは外にいた時よりも体が冷え込んでいく思いになった。
しかし、寝室のベッドの上に、
目を閉じたまま静かに横たわったヘリの姿を見つけたイヌは、
ほおっと長い溜息をついて、部屋の中に入った。
微かな物音と漏れた明りに気づいたヘリがゆっくりと目を開けた。
「…イヌ?…おかえりなさい。今帰ってきたの?」
小さく掠れた声でそう言ったあと、ヘリはベッドから起きあがろうとした。
額に手をおいた弱弱しい様子のヘリに、イヌがあわてて駆け寄った。
「具合が悪かったんだろう?そのまま寝ていろ」
「…ん…。ちょっと眩暈がしたから休んでいただけ。もう大丈夫」
「本当か?」
イヌがヘリの傍らに腰かけると、険しい顔になった。
「無理をするな。…もう君一人の体じゃないんだぞ」
「ええ、分かってる」
真剣に怖い顔と口調になっているイヌが、本心から自分を案じてくれている事は分かっていたヘリは微笑んでみせた。
その儚げで懸命な笑みが、かえって、イヌの心を痛ませた。
暗闇に包まれた寝室の中。
ヘリの顔が青白く浮き上がっている。
確かに今、ここにあるその存在すら冷たい空気の中に消えてしまいそうな気がして、
イヌは座ったままヘリの体を引き寄せていた。
以前よりさらに痩せてしまったようなヘリの細い体を、
壊れ物を扱うように、イヌは優しく抱き包んだ。
「…食べたくないかもしれないが、何か口にいれろ。何でも用意してやるから」
「そうやって、私を甘やかしてばかりいるんだから。我儘が増長しちゃうわ」
イヌの腕の中で、ヘリが苦笑しながら、強がりを吐いた。
イヌがフッと笑った。
「君の我儘の為じゃなくて、君のお腹の中の、僕の子供の為だよ」
「…うん」
おずおずとイヌの背中に細い腕をまわしたヘリが、ギュッと抱きしめ返してきた。
その力のない抱擁を感じて、イヌは目を閉じたままヘリの首元に顔を埋めた。
「…お腹の子も私も、果物いっぱいの生ジュースが飲みたいみたい」
「分かった。用意してここに持ってくるから、それまで横になっていろ」
「ありがと。イヌ」
そっと体を離して、ヘリをベッドに横たえた後、イヌは立ちあがって、部屋の暖房のスイッチを押した。そして寝室を出てキッチンに向かった。
暖房の熱が部屋をようやく暖めてきた頃、イヌは食事の準備を終え、
トレイに料理をのせてヘリのいる寝室に戻った。
寝室の部屋には明りがついていて、そして、ベッドの上でヘリは半身を起こして、編み物をしていた。
「何をやっている?」
横になっていろ、と言ったのに。
「まったく。君は言いつけを守らない子供のようだな」
怒る気も失って、呆れを含んだイヌの溜息に、ヘリがおどけたようにペロっと舌を出した。
「私って聞きわけだけはいい子供だったのよ」
「その反動が今か?お腹の子供には、その性格を遺伝させるなよ」
「あら。意地悪な父親の性格だけは遺伝させたくないわ」
クスクスと笑って、
へらず口を利けるほど元気になったらしいヘリに、イヌは内心胸をなでおろした。
「粥も作ってみた。無理でなければ少し食べてみろ。後で吐いてもいいから」
「ええ、ありがと。頂くわ」
ヘリは嬉しそうに、手に持っていた編み物をサイドボードの上に置くと、
イヌの持って来たトレイを引き寄せた。
「ん…おいし」
ベッドのクッションにもたれたまま、
ひと匙、ひと匙、ゆっくりと粥を口に運ぶヘリを、横の椅子に座って一緒に食事をとりながらイヌがジッと見つめていた。
「…編み物。何を編んでいたんだ?」
サイドボードの上の小さな編みかけの白い毛糸。
生まれてくる子供の為にヘリが編んでいることは分かっていた。
「今は靴下を編んでいるの。あと、ケープにミトン、おくるみも編むつもり。
だって、この子はとっても寒い時期に生まれてくるんだもの。ママお手製の暖かいものでくるんであげたいのよ」
「そうか…」
膨らんだお腹をなでながら、優しい声でそう語るヘリに、
もう、無理するなよ。とイヌは言うつもりは無かった。
今こうしている事が、ヘリの気持ちを安定させていることを知っていたからだった。
来年の2月に、ヘリのお腹の子供が生まれてくる予定だった。
イヌとヘリの子供…。
本当は、誰からも祝福されて生まれてくる子供だった。
きっとヘリは、そう望んでいただろう。
それなのに、
祖国を離れた、アメリカで。
誰も知りあいがいないこの土地で、愛する両親や親しい友人や同僚達とも別れて、
仕事も無くして、何もかもを韓国に置き去りにしたまま、ヘリはもうじき出産を迎えようとしている。
あの時・・・。
イヌが、ヘリの父親、マ・サンテに
「過去を選ぶか、娘さんを選ぶか決めて下さい」
15年前の事件の事で、そう決断を迫ったあと、
サンテは、自分の保身のために過去を選んでいた。
キム議員の力も借りて、政治的にも検察庁に圧力をかけたあと、サンテはヘリの縁談も勝手に進めて、ヘリを強引に議員の息子と結婚させようとしていた。
サンテの証言が無ければ過去の真実を暴くことは出来ない。
たとえ、他の証人が口をわったとしても。
イヌはヘリの結婚式1週間前に、ヘリを連れて韓国を出ることを決意した。
ヘリにとって、それはすべてを捨てることだと分かっていた。
親も、家も、財産も、仕事も、友人も、祖国も…。
しかし、ヘリは、「お願い。一緒に連れていって」
そう言って、イヌと共にアメリカに渡る道を選んだ。
母、エジャにも親友にも行き先をつげず、ヘリは韓国を去った。
それから半年ほどの月日が流れて、
アメリカのアパートの1室で、イヌとヘリは新しい生活を送っていた。
イヌは、養父の会社とは違う会計事務所に就職し、ヘリは近所の雑貨屋でアルバイトをした。
韓国での出来事は、まるで遠い日のことか、最初から二人でそこに住んでいたかのように、
イヌとヘリは、はためにも仲むつまじい『夫婦』として暮らしていた。
やがて、ヘリの妊娠が発覚すると、二人はますますその絆を深めたようだった。
だが、しばらくするとヘリが体調を崩しがちになり、次第に寝込むようになった。
はじめは、妊娠初期にありがちな症状だと二人は思っていたが、
お腹の子供の成長と共に、ヘリはだんだんやつれていくようだった。
病院で特に問題は無いと言われていても、ヘリが「大丈夫」と言い張っても、
イヌは、不安を感じずにはいられなかった。
せめて、ヘリの母親エジャだけにも、ヘリの居場所を教えて来てもらおう。そうすれば、ヘリも安心する。そう考えたイヌの思惑はヘリにはお見通しのようだった。
「イヌ。やめて。ママにも知らせないで。ママに知られたら、きっとパパにも知られてしまう。ママはパパには隠し事が出来ない人だから」
…そうなったら、私は絶対韓国に連れ戻されて、二度とイヌに会えなくなってしまう。
だからお願い。
ヘリの必至の形相の頼みに、イヌも黙って頷く他無かった。
ほんの少しでも、サンテに知られるリスクをおかしたくないという思いから、
ヘリは親友のユナとも連絡をとっていなかった。
母親だけでなく、韓国にいる親しい人間すべてとヘリは決別したようだった。
「平気だから。お腹の子も私も元気だから。だって、頼もしいパパがいつも側にいてくれるんだもの。だから大丈夫」
たとえ、本心が入っていたとしても、
笑ってそう言うヘリが痛々しかった。
すべてを捨てさせて、ここまで連れてきてしまった。
それでも、こうして二人で一緒にいることが、過ごす時間が幸せだと思ってしまう。
あの時、例えヘリが嫌だと言っても、自分は無理やりヘリを奪っていただろう。
…そう考えると、イヌは、この選択した道に後悔は無かった。
ヘリも共にいる事を望んでくれた。
そして、何より、もうすぐ自分達に新しい家族が生まれようとしている。
ヘリの中で授かった大切で愛しい命。
それを知った時のイヌの喜びは、誰にも計り知れないものだった。
父親の無罪を晴らすという積年の想いはかなえられなかったが、
こうして、愛しい女性と、新しい家族を得ることが出来た。
…十分だ。
こうして、1つのベッドの中で、ヘリと寄り添って、その温もりを感じながら
毎日眠る幸福は何ものにも代えがたい。
イヌはそう思っていた。
食事を終え、風呂に入って体を温めたあと、
イヌはヘリと一緒にベッドの布団の中に横たわった。
「今夜は冷えるわね」
ヘリの言葉に、イヌは布団をヘリの肩口まで引き上げた。
「毛布をもう一枚出そう」
「ううん。いいの。…こうしてあなたにくっついていたら暖かいから」
ヘリがそう言ってイヌの体に腕をからませた。
そして、しばらくじっとした後、イヌを見上げた。
その瞳が艶やかに濡れて、薄闇の中で煌めいていた。
「…抱いて」
囁くような小さな声で、でも、イヌにははっきりと聞こえていた。
「ヘリ」
…お願い。
懇願するようなヘリの顔を、イヌは黙って見つめ返した。
今の体調のヘリの体を抱く行為をためらっているわけでは無かった。
ヘリの言葉は、ただ肉体的な快楽を求めての事ではないと分かったイヌだった。
心細さと寂しさ、不安、葛藤、暗闇に引きずり込まれそうなすべての感情から、
ほんのひとときでも、解き放たれたい。そんなヘリの想いがそこにあった。
「イヌ…」
イヌを見つめるヘリの双眸から涙が流れた。
「…ごめんね」
…泣いてしまって。泣かないって、決めたのに。
あの日。韓国を出てイヌと一緒に行くと決めた日に、イヌの前で涙は見せないってそう自分に誓ったのに。
何の後悔もないのに。
イヌがあまりにも優しいから。お父さんの無罪を証明することが出来なかったのに。
こうして、アメリカに来てからも、今の状態の私にも。ずっと。
毎日、泣きたくなるくらい、優しくしてくれるから。余計切なくなってしまって。
涙をこらえるように手で顔を覆ってうつむくヘリの頭を、イヌはかき抱くように引き寄せた。
「泣け。泣いていいんだ。ヘリ」
ヘリの頭を胸に抱いて、イヌはヘリに言った。
…我慢しなくていい。せめて泣くことは。
「僕の前で強がるな」
ヘリが嗚咽しながらコクリと頷いた。
「ごめんなさい」
「…それも、言わない約束だっただろう?」
…謝るのはむしろ僕の方だ。
だけど、お互いに「すまない」と思う気持ちを持ったままでは、
一緒にいる事が辛くなる。
…だからあの日。このアパートに住み始めた日。
『ごめん』と言うかわりに相手に伝える相言葉を約束した。
「うん…愛してる」
ヘリが言った。
「愛してる。イヌ。愛してるわ」
ごめんなさい。…『愛してる』
泣きながら、そう言って、きつく抱きついてきたヘリの体も心も受け止めて、
イヌは膨らんだお腹を気遣いながらも、ヘリを強く抱きしめた。
暗闇と冷たさを壁と窓で隔てた部屋の中、温まった空気が窓ガラスを曇らせていた。
その向こうに目を凝らすと、白く小さな物が舞っているのが見えた。
雪が降っている。
はらはらと。静かに、そして儚げに。まるで、ヘリのこぼした涙のように。
その景色に目をやった後、イヌは瞼を閉じた。
…韓国にいた頃の君の、向日葵のような明るい笑顔を、この雪のように変えてしまったのは僕だ。
それでもその手を離すことなど出来なかった。
君が辛い思いをすると分かっていても。
ごめん、ごめん、ヘリ。
すべて受け止めるから。君の想いも。寂しさも、心細さも。不安も。
その人生も。全部。ここで絶対に守るから。
君も、お腹の子供も。
僕がずっと大切に守るから。
だから、僕の側にいてくれ。
この先何があっても。ずっと――。
「愛してるよ。ヘリ」
何度でも、言い聞かせるように、誓うように、
初雪が舞っていたその夜。
イヌは、泣き続けるヘリを抱きしめながら、囁き続けていた。
-I love you、Heri…-
(終わり)
「みつばのたまて箱」復活、第一弾が、こんな暗めのイヌ×ヘリ話ですみません。
あの~、パク・シフさんの「Shampoo」聞いて、小説書いたら、
みつばの好きなシフさんの「I love you」を聞きたくなって。
聞いたら、どうしても小説が書きたくなって書いてしまいました。
小説書いている間中、エンドレスに聞いてました♪
パク・シフさんが3年くらい前の日本のファンミで歌った歌らしいです。
この時のシフさんの外見は完全に「ソ・イヌ」だから、みつばの頭の中では
イヌの歌になってます(笑)
シフさんの歌はちょっと…と思われている方も、「I love you」は本当に素敵なので、機会があれば是非聞いてみてください!(・・・って誰もちょっと…なんて思ってません?(汗))
あのせつない歌詞が、切なげなシフさんの目と美声にぴったりなんですよ~!
イヌの手製の果物ジュースやお粥を食べたらツワリなんていっぺんに治りそうです。
でも、みつばも、相方に大好きなコロッケをいっぱい作ってもらいましたけどね。えへへ♪←結局のろけ(笑)
二次小説。パラレル(異世界)舞台で、暗めの話ではありましたが、
イヌとヘリがラブラブな事はかわりませんよ!
イヌとヘリの子供…いつか本編シリーズの二次小説でお目にかけられる日まで♪←いつかな…?(汗)
拍手、拍手コメント、コメントありがとうございました!
二次小説のヘリじゃないけど、私もこんな感じなので、今しかリアルに書けない小説書いてみました。文章見て頂くと分かると思うのですが、今は結構元気です♪
「王女の男」ドラマコンサートに行かれた方、皆さん楽しまれたようですね♪
私もいつかイヌに会いたいです(笑)
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