韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「甘い誘惑」後編です。
二次小説は、ドラマ最終回16話以降の続きをみつばが、勝手に妄想したお話ですが、
ドラマのネタバレ等も含んでいますので、現在ドラマを見ている方、
これからドラマを見る方はご注意ください。
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この話は、書き下ろしです。
タイトルだけメモってあったのを、
今の気分で一気に妄想書き上げました。甘い誘惑(後編)ヘリの美しい顔に、突如として現れた異物の存在に気づいた
職場の先輩達と後輩は、興味津津でヘリにぶしつけな視線を浴びせていた。
…こういう時は、そっとしておいて欲しいのに。
空気をよんで下さい。空気を。
心の声を言葉に出していたら、
かつて、全く空気を読まない、と後ろ指刺されていた君が言うな、と先輩達に言われそうな事をヘリは考えていた。
その素質を、ヘリを尊敬してやまない、後輩のキム検事が、はからずも濃く受けついでしまっていたようだった。
しばらく無遠慮にヘリの顔を見ていたキム検事だったが、
「そういえば~…」と、思いだしたよう口を開いた。
「にきびの位置には意味があるんですよ」
「どんな意味?」
キム検事の言葉に男性検事達が興味深そうに喰いついた。
キム検事が自分の顔を指さしながら言った。
「ここに出来たら、異性に想われている。ここに出来たら、想っている。
ここなら、ふって、ここなら、ふられている。そんな意味があるんです。
つまり。想い、想われ、ふり、ふられ、です」
「へえ、じゃあ、マ検事のは…」
イ検事がヘリの顔をじろじろ眺めた後、きっぱり言った。
「“ふられ”にきびだな」
「・・・・・・」
ヘリを取り囲む空気が一瞬にして重く暗くなった事に気づいたキム検事が
あわててイ検事の腕を思いっきりたたいた。
「先輩!無神経ですよっ」
「いてっ。そんな事言って、先ににきびの意味を言いだしたのはキム検事だろ?」
「おいおい。二人とも無神経だぞ。本当だったらどうするんだ?マ検事の気持ちも考えろよ」
…チェ先輩が一番無神経よ。
とりなしているようで、全くフォローにも慰めにもならないチェ検事の言葉に、ヘリがますます目つきを剣呑にさせていた。
ヘリは、無言で、クルリと体を反転させると、
3人から離れて、ズンズンと資料室の方に歩きだした。
ほとんど前も見ずに、勢いよく闊歩していたヘリは、ちょうど部屋から出て来て、資料を眺めながら立ち止っていたユン検事にぶつかりそうになった。
とっさに気づいたユン検事が、ぶつかる前にヘリの体を腕で受け止め、
びっくりした目で見降ろしていた。
「大丈夫か?」
ユン検事の気遣う言葉も耳に入っていないかのように、ヘリは、ユン検事をキッと睨みつけた。
「先輩。熊みたいに廊下の真ん中につっ立ってないでください」
そう、ヘリは、ユン検事を尖った口調で一喝すると、「失礼します」と言って、
鼻息を荒くして、脇を通り過ぎていった。
「く、熊?」
その後ろ姿を呆気にとられて見送ったあと、ユン検事は、
後ろに佇んで、こちらを見ている、チェ検事、イ検事、キム検事の3人に目を向けた。
「マ検事。何かあったのか?」
そう不思議そうに問うユン検事に、
ヘリから『無神経3人衆』のレッテルをはられた面々は、「さあ」と一斉に肩をすくめてみせた。
こうして、その日の朝から機嫌の悪さがMAXになっていたヘリだったが、
この1年で社会人として最低限の常識を身につけていた為、それを仕事上表に出すことは無かった。
…あくまで仕事に刺し障りのない程度では。
対面尋問では、冷静で公正な態度こそ崩さなかったヘリだったが、
オフィスの中の空気はどこか殺伐としていた。
とうぜん、同室の捜査官と事務官はそんなヘリに気づいていた。
「…マ・検事、今日は機嫌が悪そうですね」
「“あの日”かもしれないわね」
ひそひそと話をする二人をジロリとヘリが睨んだ。
「私語はやめてください」
チャ捜査官とイ事務官は顔を見合わせて首をすくめた。
「あの、マ検事?少しお疲れじゃありませんか?」
チャ捜査官が言った。
「そうですよ。最近お忙しいから。甘い物でも食べて気分転換しません?
昨日のチェ検事のお土産のチョコレートがまだ残ってますから食べませんか?」
イ事務官もチャ捜査官に同調するように言った。
「いいえ」ヘリがきっぱりと言って、手元の資料をバンっと音をたててまとめた。
「私はもう食べたくないので、残りはお二人でどうぞ」
「そうですか…」
―――触らぬ神にたたりなし。
そんな言葉を想い浮かべて、捜査官と事務官は、それ以上ヘリに話しかける事もなく、
自分たちの仕事に没頭するふりをしていた。
…今日は仕事帰りに皮膚科に行っていい薬をもらって帰ろう。
そんな事を考えながら、ヘリももくもくと仕事をこなしていた。
…その日の夕方。
ヘリは、仕事帰りに皮膚科の病院によると、処方してもらった薬をもらって、
マンションに帰った。
暗い夜空にどんよりと垂れこめた雲と、ジトジトと降る雨が、ヘリの気分を一掃沈めてくれるようだった。
俯き加減で、駐車場からマンションのエントランスまで歩いていたヘリは、
後ろで自分を呼ぶ声に顔を上げた。
「ヘリ」
振り向かなくても、誰だかすぐに分かる声。
…だから気づかないふりをしているわけじゃないけど。
「ヘリ?」
呼んでも振り向きも返事もしないヘリに不思議になったような、イヌの声がもう1度した。
ヘリがしぶしぶ振り返って、今気づいた、という風を装った。
「あら、ソ弁護士さん、こんばんは」
「考え事か?それとも地面に君の好きな物でも落ちてる?」
いつものヘリらしくなく、うなだれたように歩く姿を後ろから見られていたようだった。
気遣っているようで、やはりふざけたイヌの物言いに、普段なら失笑するヘリが、
顔をこわばらせたまま、唇をとがらせていた。
瞬時にいつもと違うヘリの様子に気づいたイヌだったが、フッと笑うとヘリの横に並んで歩きだした。
「昨夜は何の用事だったんだ?」
「用事が無ければ電話しちゃいけないの?」
「…どうした?仕事で嫌な事でもあったか?」
「仕事で楽しいことなんてないわよ。こういう仕事なんですからね」
「そうだな」イヌがヘリの言葉に同意するようにうなずいた。
「…あなたは、最近楽しいことでもあった?」
ヘリがチラリとイヌを見上げて言った。
「楽しいこと?僕も仕事では楽しいと思えることはなかったよ」
「ふーん…じゃあ、プライベートではあったのね」
一々つっかかるようなヘリの声色と言葉に、イヌが少し目を細めた。
機嫌が悪い事は、一目瞭然だったが、それよりも目立ったものに、
イヌは、ようやく気付いたという風にヘリの顔を見た。
「その顔の吹き出物、痛そうだな」
イヌの言葉に、ハッとなったヘリは、弾かれたように、イヌから顔をそむけると、
手で頬をおさえて、吹き出物を隠した。
「やだ。見ないで」
「もう見たよ」
とくに何の感慨もないというようなイヌの口調に、ヘリは頬を手で押さえたまま恥ずかしそうに俯いた。
…イヌに見られたくなかったのに。
「それを気にして、落ち込んでいるのか?」
イヌの当たらずとも遠からずな言葉にヘリはさらにうなだれた。
「いいえ。…別に落ち込んでなんていないわ」
…分かりやすいよな。
全身、完全に落ち込んでます。と言っているようなヘリにイヌが苦笑した。
そして、マンションのエレベーターの前でイヌがヘリに言った。
「ソ・イヌカフェに寄って行かないか?体も心も温まるココアを御馳走するよ」
5階のイヌの自室への誘いだった。
それは、今のヘリにとっては、何よりも心惹かれる申し出だった。
だけど…。
ヘリは、昨夜、チョコレート店で見かけたイヌと女性店員の姿を思い出して唇を引き結んだ。
「…この吹き出物に良くないからやめておくわ」
自分の中で、子供っぽい意地をはっていると分かっているヘリだった。
イヌは、昨夜ヘリに目撃されている事を知らないはず。
勝手に、嫉妬して拗ねている理由をわざわざ話するのも嫌だった。
それに、仕事のミスや話をするほどでもない些細な愚痴を沢山言いたくない。
仕事の愚痴は、イヌの方にだってあるはずなのだから。
ヘリの痩せ我慢しているような態度もイヌにはお見通しだった。
エレベーターのドアが開くと、中に乗り込んだイヌは、階数ボタンの5を押した。
そして、階数ボタンにのばしたヘリの手をさえぎると、
驚いた目を向けたヘリに優しく微笑んだ。
「いいから、おいで。君にあげたい物があるんだ」
「なに?」
「部屋についてからのお楽しみだ」
嬉しそうに、イタズラをする前の少年のような顔のイヌにヘリは思わず口元を綻ばせた。
5階のイヌの部屋につくと、
イヌは、ヘリをソファに座らせ、自分はキッチンに行って、珈琲の準備をはじめた。
「ココアじゃなかったの?」
不思議になって、そう問うヘリに、「あげたい物にはこっちの飲み物の方が合うからね」とイヌが答えた。
…なにかしら?
イヌは、キッチンの棚から何か箱を出すと、その中味を小皿にいれて、珈琲と一緒にヘリの前に差し出した。
「これって…」
ヘリが驚いて目を見張った。
小皿の上に置かれていたのはチョコレートだった。
「今度の週末に会った時に渡そうと思ってた物だ」
イヌが言って、自分の分のカップを持って、ヘリの横に座った。
「君のお気に入りの店のチョコだよ」
「…知ってるわ。砂糖不使用で、とっても人気で毎日すぐに完売するって」
ヘリは、小皿の上のチョコレートをまじまじと見つめた。
先日も、これを買いたいと思っていたヘリだったが、いつも仕事終わりの時間には売り切れている事を知っていた。
「君が普段こういう菓子を控えている事は知ってるけど、たまにはいいだろ?」
イヌが言った。
「それを食べて元気だせ」
…イヌ。
愚痴をこぼさなくても、伝えなくても、イヌには分かっていたような言葉だった。
最近ヘリが疲れ気味だということも。
ヘリは、グッとこみ上げてきた泣きたくなるような気持ちを抑えるように、
胸に手をおいた。
「これ…わざわざ買いに行ってくれたの?手に入れるの大変じゃなかった?」
「確かに何度か仕事の合間に店に寄ったけど、買えなかったよ。でも、店のオーナーとたまたま会って、話をしたらとり置きしておいてくれたんだ」
「あの店のオーナーさんと親しいの?」
ヘリが一番先に聞きたかった事を思い切って切りだした。
「オーナーというより、オーナー家族とね」
「え?」
初耳の話にヘリはびっくりしたように目を見開いた。
「あの店のオーナーのご主人はチョコレートを作るパティシエだ。僕は、司法生時代にあの店で同級生達と勉強していた事もある。その時にご主人に頼まれて、息子さんの家庭教師をする事があったんだ。だから、ちょっとした顔見知りなんだよ」
…ちょっとした顔見知りどころじゃないわよ。
ヘリは思った。
「息子さんって何歳?」
「もう今は20歳過ぎてるんじゃないかな」
「ええ?じゃあ、オーナーさんって…」
ヘリは、記憶の中のオーナーの女性の姿を思い浮かべていた。
とてもそんなに大きな息子さんがいる年に見えなかった。
「若く見えるよな」
ヘリの言わんとする事を悟ったイヌがサラリと答えた。
「チョコレートが体型や美容に悪いというのは間違いだろう」
オーナーの女性のあの美貌と体型がチョコレートによるものかは分からないが。
イヌは、それを気にしているヘリを納得させるように言っていた。
…だから、食べろ。
そう促すイヌに、ヘリはそれでもチョコレートを食べるのをためらっていた。
「…でも、これ、チョコレートのせいで出来ちゃったの」
ヘリが自分の頬の吹き出物を指さして、おずおずと言った。
「甘い誘惑に負けて、昨日チョコを食べたら、今朝こんな事に」
「むちゃ食いしたんだろ?」
完全に見透かしたイヌの言葉にヘリが気まずそうに頷いた。
…分かっていながら、やってしまった、と後で随分自分を責めただろう。
普段、何よりも自分の体や肌を気にして大切にしているヘリが、
それでもチョコレートを多量摂取するほど、疲労していたのかもしれない。
しかも、それで顔に出来てしまった吹き出物に、今日はさらに落ち込んでいた事だろう。
「ヘリ」
イヌが呼んで、恥じたように俯いているヘリの顔をあげさせた。
そこには呆れているというより、優しい目で見つめているイヌの顔があった。
…イヌ。
イヌが、小皿の上のチョコレートを指でつまむと、それをヘリの口元に持っていった。
「ほら、口を開けて」
尚もためらって口を閉じて、困惑した表情でイヌを見つめているヘリにイヌが言った。
「大丈夫。ゆっくり味わって」
…何が大丈夫なのか。
カロリーの事なのか。砂糖の事なのか。それとも吹き出物の事なのか。
イヌの大丈夫が何を指しているのか分からなかったが、
その言葉はヘリに絶対の安心感を与えた。
ヘリはそっと口を開いて、イヌの指を迎え入れた。
ヘリの口内にチョコレートの味が広がった。
「甘い…」
砂糖不使用と言われているのに、そのチョコレートはとても甘かった。
それにゆっくりと広がっていく甘さの中に、ヘリの中の嫌な感情や気持ちを溶かせる作用もあったようだった。
「…美味しい。こうやって食べたら、本当にチョコレートは癒しの食べ物だって感じるわ」
ヘリの素直な感想にイヌが嬉しそうな顔をした。
「もちろん砂糖の過剰摂取は良く無いが、チョコレートの成分は体や健康にいいって聞くからな。残りも持って帰るといい。もともと君に全部あげるつもりで買ったから」
「ありがと…」
ヘリは、自分の中にゴミ山のように積もっていると思っていた事が、
もう全くどうでも良いものに変わって全部消え去ったのを感じた。
…不思議。あんなに重苦しかった物が無くなったわ。
たった一粒のチョコレートで。
それを優しい恋人の手で食べさせてもらっただけなのに。
ヘリは、感謝の気持ちを素直に表すことにして、
両手を広げて、横に座っているイヌに抱きついた。
「どうした?」
…今日は情熱的だな。
面白そうな頭上のイヌの声にも答えず、ヘリは無言でイヌの体にまわした腕の力を強めた。
仕事着のシャツ越しに、イヌがよくつけているオードトワレの清涼で甘い微かな香りがヘリを包み込んでいる。
その香りを胸いっぱいに吸い込みながら、ヘリは、甘えるようにイヌの肩口に顔をすりよせていた。
「…嬉しかったから」
ヘリはうっとりとした表情で目を閉じていた。
…何も言わないのに、自分を分かっていてくれたことも。
入手困難なチョコレートを忙しいのに何度も店に足を運んで買ってくれていたことも。
…とても愛されていることも。
つまらない事で、嫉妬したり、すねたりする我儘な女なのに、
大事にしてくれてありがとう。ごめんね。
ヘリは、万感の想いをこめて、イヌを抱きしめていた。
そんなヘリの体を腕で包んだイヌは、まるで甘えた子供を落ちつかせるように、
ポンポンと背中を優しく手で叩いていた。
そして、そっと体を離すと、
見つめあって、お互いどちらからともなく、唇を重ねた。
ゆっくりと、口を開いて、深い口づけを交わし、
唇を離した後、二人はつぶやくように言った。
「…確かに砂糖不使用なのに、甘いな」
「…口の中、珈琲味になっちゃったわ」
顔を見合わせて、同時に噴き出してクスクスと笑いあったあと、
イヌが、ヘリの体を強く引き寄せて抱きしめた。
「…僕を誘惑してるのか?」
熱い腕で抱きしめられて、耳元で囁かれる低めの声に、
ヘリの理性がチョコレートのようにとけていくのを感じた。
…ヘリ。君はチョコレートが甘い誘惑だと言うけれど、
僕には、チョコレートより何より、君が甘い誘惑そのものだよ。
いつだって、こうして、会ってしまったら、
もうその誘惑から逃れることは出来ない。
逆らい難い魅力の、全身全霊とろけるように甘い、
誘惑そのものの、愛しい女。
イヌが顔をずらして、ヘリの頬に唇を擦り寄せると、
吹き出物を愛しむように、チロリと舌で舐めた。
「…ふっ」
ヘリがヒクンっと体をこわばらせて目を閉じた。
女の部分を刺激される感触を与えられて、ヘリは思わず吐息をついていた。
「甘いな」
イヌが囁いた。
…何もかも甘い。このやわ肌も、眼差しも、耳元をかする吐息すら。
これ以上の誘惑には耐えられそうもない。
「ヘリ…“食べて”いいか?」
イヌが聞いた。
今日は、平日。
明日もお互い朝からハードな仕事を持つ身。
だけど、今夜、もうこの“甘い誘惑”を、このまま味わわずに手放す事なんて出来はしない。
質問のようで、ヘリの気持ちを確認しているようなイヌの言葉に、
ヘリは照れたようにコクリと頷いた。
「…食べていいわよ」
もちろん、チョコレートの事ではなかった。
「ゆっくり味わってね」
頬を上気させながらも、照れ隠しにそう言うヘリにイヌが笑った。
…何度も味わっているのに、飽きない。
1度食べたらやみつきになって中毒になっているくらい。
いつも欲しがっているよ。
…そんな事、決して君には言えないけどな。
イヌはそう思って、ヘリを抱く力を強めた。
抱きしめられたまま、ソファに優しく押し倒されて、
ゆっくりと味わうように、首筋を唇で這われながら、
ヘリは、自分がこれからイヌに“食べられる”予感にうっとりと身をまかせていた。
今、イヌが欲しいのも、ヘリが欲しいのも、同じもの。
それはきっと、先ほど食べたチョコレートよりも甘いもの。
それを手に出来る喜びを分かち合うように、
二人はお互いの体に腕をからめていった。
…翌朝の検察庁。
「おっはようございま~す」
出勤して、元気よく挨拶して周るヘリに、
職場の仲間達は、一瞬ひるんだ顔になった。
真っ先に廊下でヘリに会ったユン検事が、どこか決まりの悪そうな顔をした。
「どうしたんですか?ユン先輩、廊下のそんな隅で書類見ているなんて」
「いや…、熊になりたくないからな」
「熊?何かの冗談ですか?朝から明るいですね~。先輩」
…それは君だろ。
昨日とはうってかわったヘリの態度と雰囲気にユン検事が苦笑して、その後ろ姿を見送った。
「おはよう。マ検事。にきび随分良くなったんじゃないか?」
イ検事の無遠慮な言葉ももう全く気にならない様子で「ありがとうございます」と明るい声で返事したヘリは自分のオフィスに入った。
「さあ、今日もはりきって仕事しましょうねっ」
そう、部屋の中でチャ捜査官とイ事務官に声高々に宣言して、二人を唖然とさせた後、
ヘリは、鼻歌まじりにデスク上の書類の整理を始めた。
一夜にして、普段の(普段以上の)ヘリに戻った姿に、
…何があったか、簡単に想像はつくけど、元気になったようで良かった。
…と、
分かりやすいヘリに、じつは、声をかけずとも、心配して、
影から静かに見守っていた職場の人達は一同皆ほっと息をついていたという。
(「甘い誘惑」終わり)
落ち込んでいる理由はともかく、
結局、妄想イヌに慰めて欲しくて一気に書いた短編です。
読者の方もこの妄想イヌに癒されたと感じてもらえたら嬉しいです。
後編1.5倍の長さになってしまい、こんな事なら前、中、後編にして、
警告マークの1つでもつければ良かったと思いました(笑)
そして、書いていて、やっぱりイヌが好きだ~~~(涙)って思いました。
私にとっては、イヌが甘い誘惑そのものなんです。…何があっても(泣)
ヘリも好きです。検事プリンセスが好きなんです。今さら何度でも言いますが。
たとえ、妄想の産物でも。
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