韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「埋もれた約束」第14話です。
二次小説は、ドラマ最終回16話以降の続きをみつばが、勝手に妄想したお話ですが、
ドラマのネタバレ等も含んでいますので、現在ドラマを見ている方、
これからドラマを見る方はご注意ください。
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この話はみつばの「検事プリンセス」二次小説シリーズ最新作です。時間の流れでは、「
恋人に望むこと」の続きになります。
小説の最後に登場人物紹介があります。
埋もれた約束(14話)『イヌ?』
イヌの耳に、明るいヘリの声が響いた。
「ああ、どうした?」
イヌは、少し息をついた後、何気ない調子で応えた。
ごく普通にいつもの感じで。
先ほどまでの自分の心境は声色には、出なかったようだった。
『ごめんね。こんな時間に。もう寝てた?』
「いや、…まだこれからシャワーを浴びるところだ。君は、今日もこんな時間まで残業か?」
『ええ、そうなの』
ヘリのそっと洩らしたような溜息が聞こえた。
「平気か?随分と手ごわい案件にでもあたっているのか?」
『ええ…、今、あの例の検死の事件を担当しているの』
「相談にのろうか?」
『ううん。いいのよ』
ヘリがあわてたように言った。
『あなたに電話したのは相談にのって欲しかったんじゃなくて…ただ声を聞きたかっただけなの』
最後の方は、照れくさそうにぼそぼそと話すヘリに、イヌは思わず微笑んでいた。
「一言オーダーしてくれたら、声だけじゃなくて、今すぐソ・イヌを4階の部屋まで出前してやるけどな」
そう言うイヌに、電話の向こうでヘリがますますアタフタとする気配がした。
『いいのよ。平日は5階の部屋からの“出張サービス”は受けつけない規則をつくってるから』
「さすが、お固い検事さんだ」
電話の向こうで、プウっと頬を膨らませたヘリを想像して、イヌはフッと笑った。
「じゃあ、週末の夜は受付してくれるのかな?」
そう聞くイヌにヘリが、『ごめんなさい』と、気落ちした謝罪を述べた。
『じつは、今の仕事が結構立て込んでいて、金曜日もかなり遅くまで残業になりそうなのよ。だから、夕食を一緒に食べる事は出来ないみたい…ごめんね』
…その電話だったのか。
いつもはっきりと約束はしないけれど、暗黙の了解で、週末の金曜の夜は一緒に夕食を食べるという習慣が出来ていたヘリとイヌだった。
『だから、会えるのは土曜日になるのだけど…土曜日のランチを一緒にどう?』
おずおずとそう聞くヘリにイヌは「いいよ」と返事した。
『じゃあ、土曜日にね』
ヘリがとたんに嬉しそうな声をあげて言うのを、イヌは口元をほころばせながら聞いていた。
「じゃあ、土曜日、行けそうな時間になったら連絡をして。おやすみ」
そう言って電話を切ろうとしたイヌにヘリが『待って』と声をかけた。
「なに?」
『あ、別に対したことじゃないんだけどね・・・』
そう、言葉につまったように間をあけたあと、ヘリは続けた。
『イヌ、…今日、何かあった?』
イヌが目を見開いて、スッと息を吸い込んだ。
「…どうして?」
『ううん。…ただ、ちょっと、元気がないみたいに感じたから、仕事で何かあったかと思って』
ヘリの戸惑ったような、伺うような声に、イヌが少しの間無言になった。
…ヘリ。君って人は。
「…仕事では何も問題は無いよ。ヘリ。心配しなくていい」
『そうよね。あなたは、泣く“検事”も黙る敏腕弁護士、ソ・イヌだものね』
「ああ、その通りだ」
お互いを茶化しあっている言葉に二人は笑い合った。
『じゃあ、遅くに電話してごめんね。お休みなさい、イヌ』
そう言ったヘリに今度はイヌが「待って」と声をかけた。
『なに?』
「電話ありがとう」
イヌが心から言った。
「おやすみ。ヘリ。…土曜日のランチを楽しみにしてる」
『ええ…イヌ、私もよ。おやすみ。』
やわらかなヘリの声を聞いた後、イヌは携帯電話を静かに切った。
先ほどまでの重苦しい想いが消え、心の中が穏やかになっているのを感じた。
脳裏に浮かんだ、
カップケーキとばなな牛乳を差し出す少女のヘリの姿が今のヘリと重なり、
そして、それが明るく微笑んでいるビジョンにイヌは、微笑んだ。
そして、軽くなった体をベッドから起こすと、イヌはシャワーを浴びるためにバスルームに向かった。
翌日。
検察庁で、ヘリが担当する『山中白骨死体』事件の、被疑者との対面尋問があった。
被疑者の名前はイム・ヒョンウ、年齢は30歳。無職。
被害者とされた、チョ・ドンクとは高校が同じで生前の付き合いも多いようだった。
警察の調べで、チョ・ドンクは、周囲にあまり評判の良くない男だということが分かっていた。高校を中退してから定職につかず、違法な仕事にも手を染めていたという話もあった。そして、その仕事を一緒にしていたという仲間たちの行方を追った先で、ヒョンウの名前が浮かんできた。
チョ・ドンクは、8年前、どうやら昔の仕事仲間たちを、訪ねてまわっては脅迫していたということだった。
違法な仕事をしていた時に、チョ・ドンクは、こっそりと仲間たちを写真で撮ったり、証拠を残しておいて、それをネタに金をゆすっていたようだった。
当然、恨みをかっていたチョ・ドンクだったが、とくに怨恨の線で一番容疑がかけられたのがイム・ヒョンウだった。
ヒョンウには8年前のチョ・ドンクが失踪した時期のアリバイがなく、居酒屋で「あいつを殺してやる」と息巻いていたという証言もあった。さらに、チョ・ドンクの遺体が見つかった山道で当時、白いワゴンの車が停めてあったという証言があって、それがヒョンウの車と同じ機種だったということも警察では決め手となったようだった。
しかし、ヒョンウは、警察に身柄を拘束されてからも、一貫して事件の関与を否認していた。
「だから、俺は無実なんですよ。検事さん」
ヘリの前に座ったヒョンウが、眉を下げた情けない表情で、ヘリに訴えていた。
「確かにやつのことは恨んでたけど、俺は殺してなんていないんですよ」
ヘリは捜査資料の紙をめくった。
「8年前、街の居酒屋で、あなたが『ドンクの奴を殺してやる』と言っていたという目撃証言が多数あるのですが、これは本当ですか?」
「いや…それは、まあ、酒に酔った勢いで言ってたかもしれねえ。でも、言ってただけです。本気で殺そうなんて思ってなかった。むかつく奴だったけど、人殺しなんて俺はしてないです」
ヒョンウが、あわてたように言った。
「車のことは?同じ機種が8年前当時チョ・ドンクさんのご遺体が発見された場所付近で見たという証言があるのですが」
「似た車くらい沢山あるでしょう?それに、俺の乗っていた車は数カ月ほど前に廃棄しちまったが、今でも乗っていたら、ちゃんと調べて違う車だと証明してもらえたはずですよ」
「では、当時のあなたのアリバイを証明出来る方に心あたりはありませんか?」
「…いない。…というか、覚えてないです。その頃、俺は住んでいる所や仕事もその日、その日で変えていたし、深い付き合いの知り合いもいなかったし、家族には見放されていて…知り合った女と少し暮らしてた時もあったけど、もう名前も顔も分かりません」
ヘリは心の中でそっと溜息をついていた。
…ここまでは警察の取り調べの供述と全く一緒だわ。
進展していない。でも、証言も状況証拠もまだ不十分。
これだけで、この被疑者がチョ・ドンク殺しの犯人だと特定することも出来ないし、かといって、無実だと証明する事も出来ない。
「質問をかえますね」
ヘリが言った。
「イム・ヒョンウさん。チョ・ドンクさんとは高校時代の先輩、後輩の仲でしたよね?それから交友関係が続いていて、仕事も紹介された事があったのですね?」
ヒョンウがうなずいた。
「俺はやつの使いっパシリみたいな存在だったけど、そういう腐れ縁はやつが退学してからも続いていて、金に困っていた時、ドンクがいい仕事があるからって時々紹介してくれた時がありました。でも中には…」
「違法な仕事もあったんですね?」
ヘリの詰問にヒョンウが気まずそうな顔で頷いた。
「違法って言っても、俺達が直接手を下してわけじゃないんです。いわゆる“運び屋”ってやつで、中味の事は全く知らされてなかった。ドンクがほとんど仲介になって、その上にいる知らない奴らから命令を聞いて、運ぶ俺達はただ、言われたままに動いてただけで…」
「荷物の中身を本当に知らなかったのですか?」
ヘリの言葉にヒョンウは肩をすくめて小さくなった。
「うすうすヤバいものじゃないか?とは思ってました。夜中に、こっそりと倉庫や船から運び出していたし、なんといっても1回の仕事の実入りがかなり良かったから…」
「1回の仕事でいくらくらいもらったんです?」
「普通に日雇いの仕事をする10倍はもらえました」
ブツブツとつぶやくように言うヒョンウにヘリが固い表情で頷くと、メモをとった。
「その時、一緒に仕事をしていたチョ・ドンクさん以外の仲間の事は覚えてますか?」
ヘリの質問にヒョンウはますます情けない顔をした。
「少しなら覚えてます。何人かの顔は。でも、全員の名前は分からないです」
「どうしてです?覚えてないのですか?」
「…覚えてないっていうより、知らないんです。ああいう仕事でしたから。みんな偽名を使ってる。ドンクが高校の時の顔見知りでひっぱってきた奴らのことは知ってるけど、それ以外の奴もいたから…確か小学校、中学時代の知り合いもいたって話は聞いた事があります」
…ドンクの高校時代の知り合いでヒョンウ以外の人物達の名前は上がっていた。
みんなドンクやヒョンウと一緒に仕事をして、後にドンクに脅迫されていた。
しかし、全員、ドンクの失踪した時期のアリバイを持っていた。
「仕事仲間はみんなチョ・ドンクさんの知り合いだったのですか?」
ヒョンウは自信なさげに少し首をかしげた。
「俺と一緒に仕事をした奴らはそうだったと思います。その日によってメンバーがかわっていたから、はっきりと言えねえけど、年齢は俺とあまり大差ない奴らばっかりでした」
ヒョンウの話は警察の調べでも出ていた。
他のメンバー達への取り調べの際に皆ヒョンウと似たような証言をしていた。
『仕事をしている時はお互いの事を話すことは無いし、私語も交わさない。
どういう奴らが一緒に働いていたか、までは分かりません』
ドンクの母親も亡くなって、ドンクの住んでいた団地も取り壊されていた。
ドンクは名簿や証拠を元にかつての仲間たちを脅していたというが、それも無い。
このまま証言だけをとっていても、ヒョンウの無実を証明するのに有利な物は出てきそうになかった。ただ、この昔の仕事を一緒にしたという仲間でまだ名前があがっていない人物達にたどりつくことが出来たら、何か新しい手掛かりが得られるかもしれない。
…10代半ばから後半くらいの若者ばかり。
でも、偽名を使っている以上、全員を上げるのは難しい。
おそらく、名前を知っているのは、取り次いでいたドンクだけだったのだろう。
ならば、高校時代の知り合いだけでなく、もっと他の…。
中学校、小学校時代だけでなく、たとえば、近所の人間にも声をかけていたかもしれない…。
その日の尋問を終え、ヒョンウが部屋を出て行ったあと、
ヘリは捜査官に声をかけた。
「チョ・ドンクさんの中学時代と小学校時代の名簿か写真付きの卒業アルバムをもらってきて下さい。
中学時代は前後3年。小学校時代は前後6年で。それと、チョ・ドンクが以前住んでいた近所で、当時交流のあった人物にもあたって下さい。
警察の調べと重複する所もあるしれませんが、よろしくお願いします」
「了解しました」
チャ捜査官はそう言うと部屋を出て行った。
ヘリは、捜査資料と、チョ・ドンクとの取り調べでメモした物を読みなおした。
…遺体には頭に大きな損傷があった。山の斜面を落ちた事故ともとれるけど、
遺体には土がかぶせられていた。まるで見つからないようにするために。
鈍器のようなもので殴られたかもしれないが、凶器は出てきてはいない。
しかし、現場検証や検死の結果から、どこかで殺害されて運ばれたのではなく、
遺体のあった山で亡くなったのは、間違いないとのこと。
あの山の坂道に街から徒歩で行くには困難だわ。
白いワゴンが山道の途中に停めてあったという証言があるけど、それは犯人のもの?
チョ・ドンクは、他のかつての仕事仲間を脅迫した時同様に、
犯人をあの場所に呼び出してゆすろうとしたんじゃないかしら?
でも、わざわざ街から離れた山の中に、場所を指定したのはチョ・ドンクではなく、犯人?
それにしても、どうして、あの山だったのかしら?
あの山には何があったの?…たしか、チョ・ドンクの遺体が見つかった時、
何かの施設の建設のために工事をしていた最中だったと…。
ヘリは資料をめくって、その項目が書かれているページに目を落とし、
書かれている文字を指でなぞりながらつぶやいた。
「…療養施設…メディカル東南センター…東南大学付属病院」
その頃、
イヌの働く法律事務所のオフィスで、イヌが
自分の担当案件の資料をまとめていた。
ちょうど事務所の方に戻っていたジェニーが、イヌのオフィスを訪ねていた。
ジェニーは、イヌのデスクの上の資料を一つ取ると、目を止めていた。
「どうした?顧問弁護士の仕事じゃなくて、訴訟問題を扱いたくなったのか?」
イヌが、そんなジェニーをチラリと見て言った。
ジェニーが苦笑して、それには答えずにイヌに資料を返した。
「この案件ってあれ?夫が仕事をリストラされて、人が変わったようになってしまって、妻がそれに愛想をつかせて喧嘩になった末に、夫がナイフを持ち出してケガを負わせたっていう…」
「ああ、離婚は成立しているんだが、ケガをした元妻の方が夫を訴えているやつだ」
「慰謝料を増やす算段で?」
「それだけじゃないかもしれないな」
…裁判を起こした背景には、お金では割り切れない気持ちもあったのだろう。
ジェニーが溜息をついた。
「なんだか、こういう事件ってむなしいわ。
人が変わっていくことは当然なのに、いつまでも過去の想い出や相手に固執するなんて」
ジェニーの言葉にイヌは、目を細めた。
そしてジッとジェニーを見つめながら、イヌは言った。
「人が変わるのは当然なのか?」
「だって、そうでしょう?」
ジェニーはさも当たり前だという口調だった。
「環境や状況の変化に対応して人は変わっていくものよ。性格や気持ちもね。それに…」
ジェニーは、イヌから少し目線を離して続けた。
「…そうしないと前に進んで生きていけないこともあるわ」
「……」
ジェニーの言葉にイヌは、無言になって、
自分の両手を組んで、縦肘をついて考え込んだようだった。
そんなイヌをしばらく見つめたあと、ジェニーはフッと溜息をつくと、
静かにイヌのオフィスから出て行った。
(「埋もれた約束」14終わり 15に続く)
パク・シフさん、日本で旅行なさっていたのですね。
情報ありがとうございます!!
全く存じませんでした。ファンミ後も相変わらずリアルではチェックしてなくて、
こうして教えて頂けて本当にありがたいです。
ファンミの時、パク・シフさん「次は札幌に行きたい」とか言ってらしたけど…
間逆の方向行かれちゃってますよね?
でも、やっぱり温泉なんですね。
こういう写真見たかったので、嬉しいです♪
もちろん。パク・シフさんファンの方は当然チェック済と思いますが、
このブログにいらしているイヌファンの皆様も要チェックです。
今回のパク・シフさんのツイッターの写真はイヌっぽいですよ♪
浴衣着て、頭にタオル巻いているので。
パク・シフさんファンの方は軽井沢の温泉に続き、この温泉も行かれるのでしょうか?
…男風呂だから、同じ露天風呂には入れないかもしれませんが(苦笑)
みつばは、頭の中で、露天風呂に一緒に入っているイヌとヘリを妄想してます←相変わらず。
二次小説だと「温泉へいこう」です♪
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桜、綺麗ですね…散る前に二次小説の桜話をアップしたいな…希望的観測のつぶやき。
(お知らせ)
検事プリンセスイラストINDEX更新しました。
桜話もそうですが、「埋もれた約束」もまだ未完(汗)
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