韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「イヌと猫」です。
二次小説は、ドラマ最終回16話以降の続きをみつばが、勝手に妄想したお話ですが、
ドラマのネタバレ等も含んでいますので、現在ドラマを見ている方、
これからドラマを見る方はご注意ください。
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この話は突発短編です。
ドラマ中16話でイヌがヘリから離れてアメリカにいる時の話です。イヌと猫扉を開けて中に入ったイヌは、
すぐに部屋の様子が変わっている事に気づいて、眉をひそめた。
デスクの上のファイルが落ちていて、書類が床に散乱している。
キッチンカウンターの上のキャニスターもいくつか倒れていた。
…泥棒か?それにしては、雑な荒れ方だが…。
イヌが、あたりを見渡しながら、慎重に部屋の中を歩いていると、
カタンっと洗面所の方で微かな物音がした。
「・・・・・・」
イヌは足音をしのばせて、洗面所の方に近づいて行くと、
そおっと中を覗き込んだ。
そして…。
フウっと息を一つつくと、安心したように脱力した。
洗面所の下に1匹の猫がいた。
猫は、きょとんと丸い目をイヌの方に向けて座っていた。
…どうしてこんな所に猫が…。
そう思ったイヌはふと部屋の窓の方に目を向けた。
窓が数十センチ開いていた。
おそらく、外出する前に換気で開けていた窓を閉め忘れていたのだろう。
そこに、猫が外から入ってきたに違いない。
…入ってきたのが泥棒じゃなくて良かったな。
イヌはそう思うと、猫に手を伸ばした。
「おいで」
猫は、警戒したように体をこわばらせていた。
「何もしない。おいで」
イヌがもう一度猫に言った。
猫は、少し迷ったような目でジッとイヌを見つめたあと、
素直に、イヌの方に近寄って、イヌの手に顔を擦り寄せた。
…人慣れしてるな。飼い猫か。
イヌは、猫をそのまま腕の中に抱いて、手で喉元を優しく撫でた。
猫が気持ちよさそうな顔をしてゴロゴロと喉をならした。
「君はどこから来たんだ?ご主人は誰だ?」
もちろん、猫が答えるわけではないのだったが、イヌは声に出して問いかけていた。
毛並みの良い美しいメス猫。
イヌはあまり猫の事に詳しくは無かったが、おそらく血統書つきの猫だろうと思った。
…どこかの飼い猫が迷い混んできたのかもしれないな。
イヌは、抱いた猫をソファの上に置くと、
猫が歩いて、倒していったものや、散らかったものを片付け始めた。
猫は、そんなイヌを見つめて、大人しくじっとしていた。
「とりあえず、お腹が減ったな…。ご飯にしよう」
イヌはそう言うと、キッチンに行って、
そして、冷蔵庫にある物であり合わせの料理を作った。
イヌは器に猫用に少し取り分けて床の上に置いた。
「ほら、君も食べろよ」
猫は、イヌの置いた器に近づいて、少し匂いを嗅いでいたが、
ツンっと顔をそむけた。
…こんなもの食べられないわ。
まるで、そう言っているような猫のそぶりにイヌが苦笑した。
「…そのプライドの高いところ、誰かさんみたいだな」
つい、そう呟いたイヌは、
自分で言っておきながら辛そうに眉をひそめた。
…『ソ弁護士』
脳裏にもう、二度と会うことの出来ない女性の顔を思い浮かべて、
イヌは耐えがたい苦しみと哀しみが胸に広がるのを感じた。
「わかったよ…」
イヌは、溜息をつくと、しゃがんで、猫の頭を撫でた。
「君の夕飯を買ってくるよ。待っていてくれ」
イヌはそう言うと、車のキーを持って部屋を出て行った。
しばらくして、
猫用のペットフードを買って部屋に戻って来たイヌを、
猫が玄関で見送ったままの状態の時のように待っていた。
不用心だと思いながらも、もしかすると猫が自分の家に戻るかもしれない、と考えたイヌが窓を少しだけ開けていったのだったが、猫は出ていかなかったようだった。
「お腹がすいただろう。これなら食べるか?」
イヌは器にキャットフードをあけた。
猫はまた少し匂いをかぐと、今度は、顔を近づいて勢い良く食べ始めた。
「お腹がすいてたんじゃないか。いじっぱりだな」
イヌは思わず微笑むと、立ちあがって、キッチンカウンターの椅子に座ると、
すっかり冷めてしまった料理を口に運んだ。
食事を終え、シャワーも浴び終えたイヌは、ソファに座りながら、
お腹も満たされて寛いでいる猫を膝の上に乗せて、その体を撫でていた。
猫はすっかりイヌになついたようだった。
…このアパートの住人の猫だろうか?
家から出て、窓づたいに渡ってきて、帰れなくなったのかもしれない。
かといって、毎日窓を開けておくわけにもいかないし…。
イヌはパソコンを起動させると、ペットの情報サイトにアクセスした。
…猫の飼い主が探しているかもしれない。
イヌは、携帯カメラで膝の上の猫の写真を撮ると、画像をアップして、
サイトに登録した。
『迷い猫を預かっています。御心あたりのある方はご連絡ください』
情報掲示板にそう書きこんだイヌは、ちょうど携帯にメールが着信したのに気づいた。
ジェニーだった。
『イヌ。この前の返事をそろそろ欲しいの。連絡して』
「・・・・・・」
イヌは、ジェニーのメッセージを見つめたあと、携帯電話をデスクの上に置いた。
…韓国の法律事務所で弁護士として働く話…。
向こうは、ジェニーと関わりのある人物の紹介してくれた事務所だった。
ジェニーの事を高く評価していて、さらに、イヌの事も知っているという。
アメリカにいて、今は別の仕事についているというのに、
是非にというオファー。条件も待遇も申し分が無かった。
しかし…。
『今度は私のお願いを聞いてもらうわよ。イヌ。一緒に韓国で働いて欲しいの』
イヌはジェニーとの会話を思い出していた。
『あなたも韓国に住みたがっていたじゃない。それに…彼女にも会いたいはずよ』
ジェニーの言う彼女というのが誰の事が言わなくても分かっている。
『ジェニー、駄目だ…会えないんだ』
イヌはそう言った。
ジェニーは訝しげに眉をひそめていた。
『どうして?あなたは今でも彼女のこと…。なのに、なぜ会えないの?彼女がサンテの娘だから?』
イヌは、黙ったままうつむいた。
…二度と娘に会わないと誓ってくれ。娘の前から永久に消えてくれ。
そう、サンテとした約束の事はジェニーには言えなかった。
二人の間に無言で流れる時間に、諦めたようにジェニーが溜息をついた。
『…言ってなかったけど、この前韓国に行った時“偶然”彼女を見かけたわ』
ジェニーの言葉にイヌが驚いたような目をジェニーに向けた。
『彼女、随分やつれていたわ。住む家も先輩検事に借りていて確保してるし、ご両親の方は立ち直って、母親の方が始めたパン屋が順調にいっているみたい。彼女も検察庁をやめてないけど…いろいろ苦労してるのかもしれないわね』
…随分やつれていた…。
イヌの中でジェニーの言葉が重くのしかかってきた。
自分のせいで彼女や家族の生活をどん底に落としてしまったと自責していたイヌにとってジェニーの言葉は容赦のないものだった。
それを分かっていながら、ジェニーがわざと言っている事にも気付く余裕もなかった。
『韓国行きのこと、真剣に考えてみて。先方も返事を待っているから、決まったら連絡して』
…韓国に戻ってどうする…。会う事が出来ないのに、近くにいるなんて。
…この胸の痛みが余計激しくなるだけだ。
イヌは、自分の膝の上で丸くなって眠ってしまった猫の背中を撫でながら、
ソファに背中をあずけて、うつろな目を天井に向けていた。
それでも、手のひらに感じる猫の柔らかな温もりが冷えた心を少しずつ温めていくように、イヌは感じていた。
それからいく日かたったが、猫の飼い主からは連絡が来なかった。
イヌは、仕事から帰って部屋に戻ると
出迎えるように玄関に出てくる猫に愛着を感じるようになっていた。
「ただいま」
イヌは、すり寄って来る猫を腕に抱くと、顔を寄せた。
「“ヘリ”いい子にしてたか?」
イヌは、勝手につけた猫の名前を呼びながら自嘲していた。
そうやって、会うことも出来ないのに、想いを馳せる女性の名前を猫につけて、
カムフラージュのように呼ぶ自分が、救いようもないほど『重症』のように思えた。
だが、こうして名前を呼んで猫を抱いている一時の間は
イヌの心は暖かい気持ちで満たされているようだった。
イヌは、猫を膝の上に抱くと、背中を優しく撫でた。
猫は、気持ち良さそうに、ゴロゴロと喉を鳴らして目を閉じた。
「君は素直だな…僕は正直迷っている」
猫に向けて話ながらも、イヌは自分の中に問いかけていた。
「韓国に戻っていいのかどうか分からないんだよ。
このまま遠く離れた地で会えない方が良いはずなのに…
一目会うだでけも…と願ってしまう。…なさけないだろ?へり」
“ヘリ”は、目を閉じたまま、イヌの膝の上でジッとしていた。
「…このまま、ここで君とずっと暮らしていくのも悪くないかもしれないな」
イヌは、微笑んで猫の体を柔らかく腕に包んで抱きしめた。
そんな日が何日かまた続いた、ある日。
イヌの携帯電話に未登録者からメールが届いた。
『ペットサイトを見ました。私の探している猫かもしれません。お腹に手術の跡がありませんか?』
イヌは、メッセージを確認すると、猫を腕に抱いて、お腹の方をまじまじと見つめた。
毛に隠れて気づかなかったが、小さな手術のような跡があった。
イヌは、そっと溜息をつくと、メール相手に返信を返した。
メールに返事をしたあと、30分もしないうちに、
猫の飼い主がイヌの部屋を訪問した。
「ありがとうございました。家の窓を開けていたら出て行ったっきり戻ってこなくて」
猫の飼い主はイヌのアパートの2ブロック横のアパートの住人だった。
「“アリシア”おいで」
飼い主にアリシアと呼ばれた猫は、ニヤーと鳴くと、チラリとイヌの方を見上げた。
イヌがうなずくと、猫は、飼い主の腕に飛び込んで行った。
飼い主は少年だった。
一緒につきそいで来た母親らしき女性が何度もイヌに頭を下げた。
「もう、私は諦めかけていたんです。それでこの子には同じ種類の似たような猫を買ってあげると言ってたのですが、この子がどうしてもこの猫じゃないと嫌だと毎日泣くもので、いろいろな所をあたって探していて…」…そしてサイトの掲示板に猫の情報を見つけた。
「そうですか」
イヌは、猫を抱く少年をジッと見つめた。
「アリシア、もうどこにも行っちゃ駄目だよ。ずっと僕の側にいるんだよ」
猫はゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らして、少年の腕の中に抱かれていた。
…幸せでいるんだよ。
イヌは、少年の腕に抱かれながら、自分を見つめる猫に心の中でそう言った。
そして、少年からも、母親からも何度も礼を言われると、
イヌは、礼かわりに渡された菓子を持って部屋の中に戻った。
猫のいなくなった部屋はガラリとして、恐ろしいほど静かで広く感じられた。
イヌは、フッと溜息をついてソファの上を見た。
…今にも猫の“ヘリ”が飛び降りて、出迎えてくれるような気がした。
猫の毛が少しついたソファにイヌは腰を下ろすと背もたれに深くよりかかった。
そして、目を閉じた。
『この猫じゃないと嫌だと泣くもので…』
先ほどの猫の飼い主の母親の言葉を思い出していた。
…ああ、そうだ。…僕も『君』じゃないと駄目なんだ。…ヘリ。
イヌは、決意したように目を開けた。
そして、デスクにおいた携帯電話を手にとって操作した。
『イヌ?』
親友の女性の声。
「ジェニー…決めたよ」
イヌが言った。
「韓国に行く」
『わかったわ。先方には私から伝えておく』
ジェニーの言葉を聞いて、イヌは「ありがとう」と言って通話を切った。
…たとえ、会えなくても、想いを伝えられなくても。
僕は君のいるところに戻るよ。…ヘリ。
見つめた先は、開け放した窓の向こう。
見える街並みの景観より、海を越えたずっと遠くの故郷の街を思い浮かべたイヌ。
そんなイヌに
ニャア、と小さく返事をするように鳴く猫の声が一瞬聞こえたような気がした。
(終わり)
また、暗めの話(汗)
イヌがヘリと離れてアメリカにいた頃の事を妄想して書いた話です。
そして、イヌ役のパク・シフさんが猫と戯れる動画見て、突発時に書きました♪
パク・シフさんは猫飼ってますが、なんとなくなんですけど、イヌは犬派のような気がします。
でも、あの動画見て、イヌが一人で暮らしている時に猫に「ヘリ」と名前をつけて
可愛がっている姿が浮かんできてしまって(苦笑)
「聖夜の願い」「さめない夢」と同じで、私の書くヘリのいないイヌはどこか『重症』の気配(汗)。ヘリはもちろん離れていた間もイヌのこと想い続けていたと思うのですが、イヌのヘリへの想いって、かなり想像以上に強いのかも…と今さらのように思いました。
それは分かっていて、今後の二次小説のプロットでもそれが出てくる場面とかも作ってたのですが、書き続けていくうちに改めてキャラクターを深く掘り下げていくような気がしました。…二次創作って奥が深い。
拍手、拍手コメントありがとうございます。
ツイッターでアップされていたシフさんの画像で、創作意欲がわきました♪
イヌ×ヘリの結婚の話も…。
じつは私も相方と9年間付き合って、10年記念で結婚しました。周囲には長い春だと言われてました。
でも、さすがに二次小説のイヌとヘリにそこまで長く交際させる気はありませんが(笑)
突発短編が続いてますが、ひきつづき、長編と中編も書き進めてます。
子供へのお気づかいありがとうございます。
薬飲んで休んで、1日で元気になりました♪
(お知らせ)
検事プリンセス漫画INDEX更新しました。
(追伸)
メールの方でファッションショーのレポートを下さった方。ありがとうございました!!
大変詳しい内容で、その場にいるかのような興奮をおすそ分けして頂きとても楽しめました♪
この勢いで今度はファンミを一緒に参戦出来るとよいですよね♪
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