韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「さめない夢」中編です。
二次小説は、ドラマ最終回16話以降の続きをみつばが、勝手に妄想したお話ですが、
ドラマのネタバレ等も含んでいますので、現在ドラマを見ている方、
これからドラマを見る方はご注意ください。
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この話は書き下ろし中編小説です。さめない夢(中編)…ヘリがいない?
もうどこにも?
「どういうことだ?」
イヌが怪訝な顔でジェニーに聞いた。
「たちの悪い冗談なら、君でも本気で怒るぞ。僕は真面目に聞いている」
イヌの低くなった声色の変わった言葉に、
ジェニーも眉をひそめた。
「私も真面目に話しているのよ。イヌ。あなたの方こそ、どうかしたんじゃない?
しっかりしてよ。昨夜バーで酔って暴れた時に頭を打ったせいじゃない?記憶が混乱しているのね」
「なんだって?」
…僕がバーで酔って暴れただって?
イヌは必至に昨夜の記憶を思い出そうとした。
しかし、何も浮かばなかった。
「覚えてない。一体どうしてそんなことに?」
「…あなたがヘリさんの事で取り乱していたからよ」
「ヘリの事で?」
イヌは、訳が分からないという顔でジェニーを見つめた。
何もかもが、おかしい。
自分が知っている現実じゃないようだ。
イヌは、気を落ち着かせようと、深呼吸を一つすると、
「…話してくれ」
静かな声でジェニーをうながした。
「…きっと、ヘリさんがいなくなった事を受け入れられなかったのよ。
心の奥でね。だから、昨夜は酒に酔って、自分を責め続けてたわ。
あの事件を掘り起こした自分のせいで、ヘリさんの家族を崩壊させて、
そして…ヘリさんを失ってしまったって」
「まってくれ。ジェニー。話が見えない」
イヌは、手で頭を抱えると、ジェニーの言葉を頭の中で整理しようとした。
「ヘリの家族が崩壊?ヘリを失った?何のことだ?
ヘリの家族は健在で、パン屋を営んでいるし、ヘリも…」
…そうだ。あれから1年間は離れたけど、再会して、そして、一緒にいたはずだ。
恋人になって…それはヘリの両親も認めてくれていた。
だから、このジェニーの話は一体何かの間違いだ。
「ヘリは僕とずっと一緒にいた…それに…」
「イヌっ」
声を荒げたジェニーの声がイヌのうろたえた声を阻んだ。
「お願いよ」
いつも気丈なジェニーが涙ぐんで、イヌを見つめていた。
「しっかりして。ヘリさんはもういないの。現実を見て」
「現実?これが現実だっていうのか?君こそどうかしているんじゃないか?
ヘリがいなくなったなんて、どうして僕に信じろと言うんだ?」
イヌの荒げた声に、店内の客や店員の視線が集まって、イヌとジェニーに向けられた。
そんな周囲を見たジェニーがフッと息をつくと、目をふせた。
「現実逃避したい気持ちは分かるわ。…でもね、もう1年になるの。
あなたがいつまでもそんな風だったら、ヘリさんだって悲しむわ」
「ヘリの居場所を知ってるのか?」
イヌの言葉にジェニーがうなずくと、バッグから携帯電話を出して操作した。
そして、メモ用紙に電話番号と住所を書き込むとイヌの目の前に差し出した。
「これは?」
「…ヘリさんの居場所を知っている人の連絡先よ。自分で確かめて」
イヌは、ジェニーからのメモ紙を手にとって見つめたままうなずいた。
そんなイヌにジェニーがソッと溜息をついていた。
その日の仕事が終わったあと、
イヌは、早速、ジェニーから渡されたメモ用紙に書かれた連絡先を訪ねた。
書かれた電話番号には何度かけても通じなかったからだ。
訪ねた先は、街のパン屋だった。
店の扉を開けると、「いらっしゃいませ」という声がかかった。
イヌが店内を見回した。
「何かお探しですか?」
店員の一人がイヌに気づいて声をかけてきた。
「こちらにパク・エジャさんはいらっしゃいますか?」
イヌの言葉に、店員が「はい」と答えると、カウンター奥の厨房に声をかけた。
「パクさん。お客様みたいよ」
「は~い」
聞きなれた声がして、厨房の奥から女性が出て来た。
ヘリの母親、エジャだった。
エジャはイヌの顔を見ると、ハッとしたように立ちつくした。
「ソ君…」
イヌは深く頭を下げた。
「聞きたい事がありまして…お仕事が終わったらお時間を頂けませんか?」
そう言うイヌに、エジャが固い表情でうなずいた。
「…ええ。あと10分ほどで私は上がる予定だから、待っていて」
そう答えると、エジャは厨房に戻って行った。
しばらく店の外で待っていたイヌの所に、仕事を終えたエジャが
店の裏口から出て来た。
「お母さん…」
そう呼ぶイヌにエジャが薄く笑った。
「そう呼ばれるのも久しぶりね。…元気だった?」
「・・・・・」
イヌは何と答えて良いかわからずに黙ってうなずいた。
「立ち話もなんだから、うちにいらっしゃい。この近くのアパートだから」
…アパート。
イヌの記憶の中では、エジャは、夫と一緒に、ヘリの先輩検事の元実家に暮らしているはずだった。
やはり、妙な違和感を覚えながらも、イヌはエジャの後をついていった。
年季のはいった古い団地のアパートの部屋にエジャはイヌを招いた。
「狭いけど、一人で住むには十分広い部屋よね」
おどけたように言いながら、イヌにお茶をいれるエジャ。
「おひとり暮らしなんですか?…ご主人はどうされました?」
そう聞くイヌに、エジャが怪訝な顔になった。
「ソ君?」
「すみません」イヌは素直に謝った。
「昨夜、頭を打ったらしくて、記憶が混乱しているようなのです。
今の僕は、この現実が理解できません。どうか教えて頂けませんか?
一体、1年前何があったのですか?ヘリさんとご主人はどうされたのです?」
「…記憶が混乱…。現実が理解できない。…そうよね。私もずっとそうだったもの」
イヌの言葉に、エジャが独り言のようにつぶやいた。
そして、部屋のタンスの上に目をやった。
イヌもつられてその方向を見た。
そこにはエジャとサンテとヘリが一緒に写った写真があった。
「あれから、会社が倒産して…主人は、仕事の後始末で奔走している最中に、心臓発作をおこして、そのまま帰らない人になった」
…!!
「それから、莫大な借金だけが残って…、ヘリは、検察庁をやめてね。
それで、借金を返すために別の仕事についたの。ユナさんからブティックの店員の仕事を紹介してもらったのだけど、その他にもアルバイトをいくつも掛け持ちしていて…」
…やはり、違う。
自分の記憶の中の現実とはかけ離れている。
イヌはそう心の中で驚愕していたが、黙ってエジャの話を聞くことにした。
「あの子…ほら、何もできない子だったでしょ?バイトなんてもちろんしたこと無かったのに。でも一生懸命働いてたわ。大変なのに、笑ってた。『ママ、楽しい』って」
エジャが思いだしたようにフッと笑った。
しかし、その目には涙が光っていた。
「ある日、明け方近くまで仕事して、帰宅途中にあの子は交通事故にあって…それで」
イヌは、愕然となって、エジャを見つめた。
その先を聞くのが怖かった。
イヌは震える声を絞り出した。
「それで…?」
エジャは、ハンカチで目頭を押さえると、首を振った。
「…あの子、ヘリは、最後まであなたに会いたがってたわ。ずっと、普段はね、全くそんな事言わなかったのに。…最後の最後であの子、『ソ弁護士に会いたい』って言って、そのまま…」
エジャがたまらなくなって、嗚咽する声をイヌは、
どこか遠くで聞いていた。
…ヘリが、交通事故で?
つい「嘘だ」と声にもらしたイヌの言葉に、エジャが目を上げた。
「噓だって私も思いたかった。ずっとね。…でも現実にヘリはもういないの」
写真の中で、笑ってこちらを見ているヘリの顔。
自分が覚えている時よりずっとやつれているようだった。
「そうだ…」
エジャが思いだしたように、腰を浮かすと、立ちあがって、
タンスの引き出しを開けた。
そして何か取り出すとイヌの方に差し出した。
「ソ君、これを」
「なんですか?」
風呂敷袋の包みだった。
「ヘリに、もしあなたに会えたら返してほしいと頼まれていたものよ」
「?」
イヌが風呂敷袋の包みをとくと、中には服一式が入っていた。
男物のようだったが…。
「ソ君。あなたのでしょ?前にヘリに貸してくれていたものなのよね?」
エジャの言葉で、イヌはそれがヘリのトマト事件の時に自分が貸した服だということに気づいた。
「…あの子、ずっと大切にしていたのよ。時々、着ていたりもしたみたい。
私の手前、黙って耐えていたみたいだけど、あれからずっとあなたの事を想い続けていたわ」
「・・・・・・」
イヌは、ヘリが着ていたという、自分の服を手でなぞった。
もう、ヘリのぬくもりもそこには無かったのだったが…。
「…僕には、まだ信じられません」
そう、小さく呟くように言うイヌをエジャはジッと見つめた。
「あなたも、ヘリの事をずっと想ってくれてたのね」
「・・・・・・」
「つらかったわよね。…でも、もう忘れるのよ。ソ君。ヘリがこうなったのは、あなたのせいじゃない。それに、あなたは若いんだから、これからよ。
いい人を見つけて、恋をして、良い家庭をつくってちょうだい。私は本心からそう願っている。それに…ヘリもきっとあなたの幸せを望んでいるから」
イヌはエジャの言葉を聞きながら、頭の中の混乱は収まって、
かわりに、心の中が急激に冷えていくような気持ちになっていた。
…これが現実?
この現実から逃れるために、この頭のなかにある記憶は僕が勝手にねつ造したのか?
酒に酔って頭を打って…、朝目が覚めたら、
まるで、あの楽しかった記憶はすべて夢だったかのように現実に引き戻されて。
再会して、交際をはじめて…、ずっと一緒にいた。
デートをして、キスをして…喧嘩もしたけど、何度もお互いの愛を確かめ合った。
もう「ソ弁護士」じゃなくて、「イヌ」と呼ぶヘリの声の方が記憶に多いのに。
これがすべて自分のつくった夢幻だったなんて。
「…ヘリさんが今いる場所を教えて下さい」
尚も、そう言うイヌにエジャが、温かい笑みを向けてうなずいた。
「わかったわ。ソ君…あなたの気のすむように…」
エジャは、イヌにある場所の住所を教えた。
エジャの部屋を出たイヌはすぐにその場所に向かった。
(「さめない夢」後編に続く)
拍手、拍手コメントありがとうございます。
とくに雑記の「真夜中のつぶやき」の関して、
沢山の励ましや暖かいコメントを書いて頂いてありがとうございます。
いつも書いて下さる方も、初めて書いて下さった方も本当に嬉しかったです。
最初は、「検事プリンセス」にはまって突発的に始めたブログなのですが、
ここまでずっと二次創作を続けることが出来たのも、ブログを読みに来て下さっている方々のおかげだと思ってます。
一人で趣味で書いていたら、ここまでいろいろなネタは浮かばなかったと思うし、
途中でやめていたかもしれません。
あれもこれも、書きたいものはあるのですが、実際書いていると、妄想通りに書けない所は、まだまだ技術と経験不足だな~と実感です。
漫画の方も長年のブランクで、最初は唖然とする出来でしたが、おかげさまで少しずつリハビリ兼ねて楽しめるようになりました。
今もまだ書きたいものがいっぱいあるし、決めている検事プリンセスの二次小説のラストシーンまでは書き続けていきたいと思ってます。
でも、突発的に書けてしまう話とかもあって、
予定通りに話は更新出来ないかもしれませんが、書けたものからアップしていきますね。
創作物だけでなく、雑記やコメントまで読んで下さっていてありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
「さめない夢」は次回最終話です。
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