韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「刻印」第2話です。
二次小説は、ドラマ最終回16話以降の続きをみつばが、勝手に妄想したお話ですが、
ドラマのネタバレ等も含んでいますので、現在ドラマを見ている方、
これからドラマを見る方はご注意ください。
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「
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この話は、短編の
「
印ーホクロ-」「
印ーしるし-」「
印-しるし-(SIDEイヌ)」の完結編です。
刻印(2話)鍵をあけて、
キイ…っと鳴る家の扉を開けると、イヌは玄関横にあったスイッチに手を伸ばした。
パチリという音がして、家の中の照明がついて明るくなった。
「ブレーカーをいれておいてくれたようだな」
イヌのつぶやきをヘリは、どこかボンヤリとした頭で聞いていた。
「君はここにいて。車から荷物を取ってくる」
イヌがそう言って、うろたえるヘリを置いてさっさと車の所に戻って行った。
そして、すぐに2つ積み上げた段ボール箱と旅行バッグを運んできた。
「…大荷物ね。中に入っているのは、ロープとか工具とかシャベルかしら?」
ヘリの言葉にイヌが面白そうに笑った。
「職業病か、サスペンスドラマの見過ぎだ。ヘリ」
ヘリの頭の中の妄想をそう笑い飛ばした後、「ロープは使うかもな」と言って、
ヘリの体を硬直させた。
家に入って、部屋のドアを開けて中に入って行くイヌの後を、
ヘリが、おずおずとついて行った。
イヌが電気をつけた部屋は、全体が広いリビング兼寝室のようになっているようだった。
キッチンも暖炉もあった。木製のテーブルと椅子。それに大きなベッドが一つ。
ベッドには綺麗な清潔そうなシーツがしかれている。
キッチンシンクやカウンターも磨かれ、暖炉の横には薪も積み上げられていた。
部屋の中を見渡したヘリは、ここが普段住んではいないが、管理された家だという事を確信した。
「ここ、誰かの別荘なの?」
キョロキョロしながら聞くヘリに、キッチンの方に段ボールを置いたイヌがうなずいた。
「ああ。あまり焦らしていると、君の妄想がとんでもない方向に行きそうだから、言っておくけど」
イヌが苦笑しながら続けた。
「ここは、僕の知人の別荘だよ。事情を話したら快く貸してくれた。だから日曜日まで自由に使える」
「…事情って何かしら?恋人に仕返しをするために家を貸して欲しいって頼んだのかしら?」
嫌味っぽく言うヘリの言葉にもイヌが軽い笑みで受け流した。
「もう、この際その話は忘れないか?君を驚かせたくて内緒にしただけだ」
「十分、驚いたわ」…それに怯えさせてももらったわよ。
ヘリは、まだふくれっ面になったままだった。
そんなヘリをイヌが、暖炉の前のフカフカの絨毯の上に座らせた。
「少しの間寒いけど我慢して。今暖炉に火をおこすから」
…出来るの?
ヘリの眼差しに含まれた質問に、イヌも微笑みだけで応えた。
…出来るよ。
ヘリは毛布にくるまりながら、イヌが暖炉に火をおこすのを見つめていた。
やがて、暖炉の薪に火がつき、部屋の中が暖かくなってきた。
「ここまで来るまでにも何も無かったし、誰も住んでなかったみたいに見えたけど」
「この一帯は、この別荘の持ち主の私有地なんだよ」
「ふーん」…イヌの知人って人は、お金持ちなのね。
…一体どういう知り合いかしら?友達?仕事のクライアント?
ヘリの心の中の問いにイヌが答えるように言った。
「僕の昔のクライアントの友人という人だ。仕事上直接は関わってはいないけどね」
…でも、ずいぶん信頼されてるのね。
口約束で、こんな別荘を貸してくれるなんて。
ヘリはこうして付き合うようになってからも
時々イヌという人物の底知れなさに驚かされることがあった。
愛する男の何もかもを把握しておきたいわけじゃないけど、
少なくとも今知っておきたいことはある。
「日曜日まで借りて、それまでここで何をするつもり?」
自然豊かな土地の、人里離れた一軒家で。
そう聞くヘリに、イヌが今度こそ見まごう事なき、企むような笑みを浮かべた。
「二人っきりでのんびり過ごそう」
「・・・・・・」
イヌの言葉通りの事が実行出来そうだった。
まわりに民家も人影もない。私有地というなら、他人は入ってはこないだろう。
それに娯楽施設ももちろん近くには見当たらない。
のんびりと過ごす以外何もすることはなさそうに見える。
…だが。
「あなたの言う“のんびり過ごそう”っていうのは、言葉通りの意味?
のんびり、の中に何か他の意図が隠されているんじゃないかしら?」
イヌがヘリの胡散臭そうに見る目に溜息をついた。
「疑り深いな、君は。そういうところも検事の悪い癖だな。何でも疑ってかかる。
そういう女っていうのも男にもてないんだぞ」
「おあいにく様。私はと~っても、もてるんですからね」
「へえ…」
イヌが、ヘリの座っている絨毯の上に屈んで、ヘリの方に顔を近づけた。
「言い寄って来る男がいるのか?」
「そ、そうだったら、どうするの?」
めいっぱい虚勢をはって言うヘリに、イヌがフッと笑った。
「…許さない」
そして、ヘリの頬に手をおくと、
イヌは、永遠に続くかと思われた軽口の応酬にピリオドを打つようにヘリの唇に口づけた。
優しく、甘く、ゆっくりとヘリの唇をなぞるようなイヌのキス。
ヘリは、次第に、心の中のイヌへの腹立たしさや、疑惑が消えていくのを感じた。
「・・・・・・」
唇をはずすと、ヘリとイヌは見つめあった。
「…お腹がすいただろう?夕食にしよう。準備するから待ってて」
頬をイヌの指でなでられながら、ヘリはコクリとうなずいていた。
…そうよね。勝手に私が勘違いしてただけなんだわ。
きっとイヌは、私を喜ばせようと思って黙って準備してくれたのよね。
コテージで二人きりで過ごす休日。
考えたら、とってもロマンチックよね。
単純で純粋なヘリは、一気に機嫌を直すと、ニコニコと笑顔になっていた。
そのあまりにも如実に顔に出たヘリの心情にイヌが、心の中で噴き出していた。
…あいかわらず、分かりやすいな。だが…。
暖炉の火を物珍しげに見ていたヘリは、後ろに立つイヌの表情に気づいてはいなかった。
閉じ込めた兎を、どう料理しようか?、と考えている猟師のような目のイヌを…。
「作っていると時間がかかるから、今夜は買ってきた物で食事しよう」
イヌが、器にテイクアウトした食べ物を盛り付けた。
ヘリの主食で、しかもヘリのお気に入りの店のサラダもあった。
それに、軽いつまみと一緒に
ヘリの好きな酒もイヌは荷物の段ボールの中から取り出していた。
ヘリは目を輝かせて、木製のテーブルの上に並べられたそれらを眺めた。
マンションの部屋でもケータリングの料理やテイクアウトの物を一緒に食事したことはあったが、こういう風に、違う場所になっただけでいつもと違って新鮮に感じられた。
木の香りがするコテージ。
周囲はとても静かで、風の音と微かな木々の葉のすれる音が聞こえるだけ。
カーテンは開いているけど、見えるのは林の影と暗闇の空。
暖炉の火がついた暖かい部屋の中、テーブルの上で、揺らめくオイルランプのやわらかい灯りが料理や酒を美味しそうに照らしている。
側にいるのは、唯一、愛する恋人。
…悪くないシチュエーションね。
ヘリは、イヌにほとんど騙し討ちのように連れてこられた事もすっかり忘れて、
浮かれながら、イヌと一緒に食事を始めた。
しかし、食事をしている最中に、窓の外の微かな物音にもヘリはビクリとして顔を向けていた。
濃い闇の中、木々の影が風で大きく揺れていて、
はきだし窓の外のバルコニーの上を雨粒がたたいている。
「いつのまにか雨が降ってるわ」
怖がりのヘリは、明るい家の中にいて、そして、側にイヌがいても、
全く人気のない山中にいるという心細さで、内心はまだ怯えているようだった。
「山の中の天気は変わりやすいからな」
イヌが全く気にしてないような口ぶりで言った。
「・・・・・」
時折、ひゅうひゅうと聞こえる風の音に、ヘリは身をすくめた。
「怖いのか?」
イヌが聞いた。
…聞くまでもなく分かるが。
「こ、怖くなんか、ないわよ。だって、あなたがいるじゃない。
こういう自然いっぱいの所にお泊まりするのも悪くないわよね」
ヘリがせいいっぱい元気な声を出して言った。
「あなたは、こういう所好き?」
普段、洗練されたシティボーイの印象のイヌだけど。
ヘリの問いに、イヌが、意外にも力強くうなずいた。
「ああ、こういう穏やかで自然の多い所は好きだな」
「ふーん」
「山や湖や緑豊かな田園風景を見るのが好きなんだよ。僕の養父もそうらしい。
よく野外キャンプにも連れて行ってくれた」
「そうなの?」
…だから、アウトドアな事にも慣れているのね。
また一つ、イヌの事を知ってヘリは嬉しくなった。
「…野外キャンプにいつか連れて行ってくれない?」
ヘリの申し出に今度はイヌの方が嬉しそうな顔になった。
「いいよ。一緒に行こう」
フフフ…。
イヌとの楽しい約束が増えたことをヘリは素直に喜んだ。
食事後、
リビングに隣接されたバスルームを先に使わせてもらったヘリは、
イヌの用意してくれていた旅行用のシャンプーや石鹸で体を洗った。
食事中、今更のように着替えを持ってきてない、という事に気づいて慌てたヘリだったが、
その点も抜かりのないイヌが用意をしてくれていた。
ヘリはバスルームを出て、脱衣所の籠の中に入っている自分の着替えを覗き込んで、フッと息をついた。
衣服も下着もイヌが準備したもの。
イヌの部屋にヘリが常備して置いていたもの、とばかり思っていたが、
よく見ると、衣服も下着も新品のようだった。
…いつ買ったのかしら?それにイヌが買ったのよね。
服はともかく…ランジェリーまで買うなんて。
抜かりのない、を通り越して、あまりにも用意周到すぎる男の行動に、
ヘリは呆れると同時に恥ずかしくなってきた。
…今さら恥ずかしがる必要もないけど。
それにしても、イヌの選んだランジェリー…こういうのが好みなのかしら?
ヘリは、照れ隠しのように新品のショーツとキャミソールを指にひっかけてブンブンとふりまわした。
着替え終えたヘリが脱衣所から出た。
イヌが、ちょうどヘリ用のコーヒーを入れ終えたようだった。
「カフェオレにしたかったら、ミルクは冷蔵庫にある」
熱いコーヒーのはいったカップをイヌはヘリに手渡した。
「…ありがと」
…こういうイヌの気のきくところは好き。でも、ききすぎるのも困るけど…。
「服と下着もありがと。サイズぴったりね」
「サイズだけじゃなくて、君に似合うと思って買ったよ。気にいった?」
服も…ランジェリーも。
何気なく聞いてくるイヌにヘリはますます照れくさくなった。
「…バスルーム空いたわよ。どうぞ」
イヌの問いには答えずに目を逸らして、そそくさと椅子に座って、
コーヒーカップに口をつけるヘリ。
イヌは、その後ろ姿に薄く笑みを浮かべると、着替えを持ってバスルームに入って行った。
イヌの姿が見えなくなると、ヘリは、そおっと、背後の窓の方に目をやった。
風が強くなって窓枠がカタカタと小さく音をたてていた。
雨も激しくなってきているらしい。
「・・・・・・」
バスルームの中にイヌがいると分かっていても、心細さが増してきたヘリだった。
…イヌ、早く部屋に戻ってこないかしら?
ヘリがそう思った時、
部屋の中に一瞬閃光が走った。
…雷?
そうヘリが思った矢先、激しい落雷の音がして、次の瞬間。
「きゃあっ」
部屋の明かりがパっと消えた。
暖炉の火と、テーブルのオイルランプの灯りで、部屋の中が真っ暗闇になることは
避けられたようだったが、それでも、ヘリの平常心をかき乱すには十分な演出だった。
「イヌ!…イヌ!!」
ヘリは、とっさに立ちあがると、イヌの名前を呼びながら、
バスルームのドアを開けて中に駆け込んだ。
ちょうどバスルームから出て脱衣所にいたイヌは、
停電よりも飛び込んできたヘリに驚いたような目を向けた。
イヌは、全身裸で、バスタオルで体の水気をふいている最中だった。
そんな事はおかまいなしに、ヘリはイヌの体にほとんどしがみつくような形で手をまわしていた。
「真っ暗になったわ」
「落雷でブレーカーが落ちたのかもしれないな」
説明されなくても分かる状況なのだが、動揺が激しいヘリを安心させる
落ちついたイヌの声だった。
「大丈夫だ。オイルランプもあるし、懐中電灯も非常用発電機もあるはずだ。
暖炉だから、部屋の暖房も気にすることはない。冷蔵庫の中の物もすぐに悪くなるものはないよ」
「そう…よね」
ヘリは、次第に落ちつきを取り戻して、それと同時に、自分のしでかしてしまった事に
ハッと我にかえって、イヌから手を離した。
「ごめんなさい。ちょっと動揺しちゃったものだから。…ごゆっくり」
「いいさ。もうシャワーは浴び終えたから」
イヌが微笑んだ。
そして、脱衣所から出ていこうとするヘリの腕を掴んで引き寄せると言った。
「…それに、服を脱ぐ手間もはぶけた」
シャワーをあびたばかりのイヌの熱い体がヘリの身体を包んだ。
息を止めて、イヌの腕の中でどぎまぎするヘリを抱きしめて、
イヌがからかうような声色で続けた。
「“印”をつけるだけじゃ飽き足らず、バスルームの中まで押しかけるなんて、
君は、思ってた以上に情熱的な女性だったんだな」
「ちがっ…」
あわてて否定しようとするヘリの唇をイヌが塞いだ。
そして、強引に深く口づけした後、顔を離すと、
もう完全に誘惑するような眼差しでヘリを見降ろして言った。
「約束通り、“お礼”をさせてもらうよ。…たっぷりとね」
…こんな約束はいらない。
イヌの力強い腕の中にとらえられたヘリは、
心までは全部イヌに支配されまい、と必死に足掻こうとしていた。
たとえ、それが無駄な努力だとしても…。
外は嵐。人里離れた山の中。
まるで悪い魔王に捕らえられ、山奥に監禁されたプリンセスのようなヘリの
長い夜が始まろうとしていた。
(刻印2終わり 3に続く)
イヌ役のパク・シフさんのインタビュー動画で、
「のどかな田園風景のある所が好き」というコメントを見たことがあったので、
もちろんイヌも♪という感じで(笑)
次回(明日更新予定)の話ですが、想像はつくと思いますが(警告)つきです。
…ということで、どういう事か分かる方は、PCまたは携帯でブログを開く時は
周囲の環境と目に気をつけて下さい。ということでお願いします。
拍手、拍手コメントをいつもありがとうございます♪
「印」の一応(?)完結編「刻印」もう少し続きます。
(お知らせ)「刻印1」のチャ検事と書いていた間違いをチャ捜査官に修正。
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