韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「初めての夜」第4話です。
二次小説は、ドラマ最終回16話以降をみつばが、勝手に妄想したお話ですが、
ドラマのネタバレ等も含んでいますので、現在ドラマを見ている方、
これからドラマを見る方はご注意ください。
みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
「
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初めての夜(4話)「これからお店にも来てよ。ソ弁護士。歓迎するから」
イヌと一緒に車から降りた女性が、そう言って、
イヌに近づくとイヌの胸をそっと手で触った。
「-!!」
ヘリは目を丸くして、体を硬直させた。
ちょっと。ちょっと何しているのよ!?
イヌは、そんな女性にあいまいな微笑を返すと、すっと身をひいた。
「ヒジンさん、僕はこれで失礼するよ」
「え~?そうなの?」
「ああ、これから一緒に帰る連れもいるから」
つれ?まだ、誰かいるのかしら?
ヘリが、二人の様子をよく見ようと身を乗り出した時、
「ほら、あそこに」
イヌが、自分の方を指さしているのに、気づいて、身を固くした。
「彼女が待っている」
「彼女?」
女性が訝しげにこちらを見た。
…ばれた?
ヘリが、気まずそうに建物の影から出て、二人の方に近づいていった。
イヌが、フッと笑ってそんなヘリを見つめ、
女性が不審そうに、ヘリをジロジロと眺めた。
イヌと一緒にいた女性は、着飾っていて、
髪の毛も綺麗にセットされ化粧も入念にされていた。
暗がりで遠目では分からなかったが、若く、かなりの美人だ。
対するヘリは、夜のコンビニに行くから、とラフな格好に着替えていた。
…私も着替えなおしてくればよかったわ。ヘリは心の中で思った。
「こ、こんばんは」
ヘリは、おずおずと挨拶した。
「じゃあ、ヒジンさん、失礼するよ」
ヒジンと呼ばれた女性は不服そうに唇をとがらせて、ヘリとイヌを交互に見ていた。
「ええ、またね。ソ弁護士」
…また?ですって?
心の中で眉をひそめるヘリを車に促すと、イヌは運転席に乗り込んだ。
そして、コンビニの前でこちらを見て佇む女性を置いて、車を発進させた。
ヘリは、助手席の窓からそっと、背後に遠ざかる女性の姿を見送った後、
隣のイヌに目をやって戸惑い気味に声をかけた。
「あの…イヌ。どうして私があそこにいるって分かったの?」
「君は、尾行には向いてないな。すぐに気づいた」
イヌが面白そうに言った。
「さすが尾行のスペシャリストさんね」
ヘリは、頬を膨らませた。
「でも、尾行なんてしてないわよ。コンビニに行ったら偶然あなたたちが現れたんだもの。あなたこそ…」
言葉につまったヘリをイヌがチラリ横目で見た。
「…あなたこそ、どうしてあそこに?
今日、夕方からクライアントと会うって言ってたのに。
もしかして、クライアントってさっきのヒジンって人?」
「いや」ヘリの質問にイヌが否定した。
「彼女は、クライアントの姪御さんだ。あの近くの店で働いているらしい。ちょうど出勤時間だから送って欲しいと言われて、ついでだから車に乗せてきた」
「ふーん…」
ヘリは相槌を打ちながら、心の中にモヤがかかったような落ちつかない気分になっていた。
こうして座っている車の助手席に、
さっきの女性の香水のにおいがかすかに残っていた。
…別にイヌの車の助手席は私専用ってわけじゃないけど…。
「…仕事は終わったの?」窓の外を見ながらヘリが言った。
「ああ、ようやくひと段落ついた感じだな。ここしばらく忙しかったが…」
イヌが、車をマンションの駐車場にいれた。
「明日は、ひさしぶりに休めそうだ」
ヘリは、少し、やつれたようなイヌの横顔を見つめていた。
…本当に仕事が忙しかったのね。
久しぶりに韓国に戻ってきて、新しい事務所に入って仕事をしているから、
いろいろと大変なのかもしれない。
「送ってくれてありがと。イヌ。ゆっくり休んでね」
マンションのエレベーター前でヘリが言った。
「…ヘリ」
「ん?」
「良かったら、今からうちに来ないか?」
「え…?」
驚いて、イヌの顔を見ると、イヌがカバンを軽く掲げてみせた。
「本を借りたお礼ってわけでもないが、うちでワインを1杯でも飲んで行かないか?
養父がアメリカから美味しいワインを送ってきたんだ」
「ほんと?いいの?」
ヘリが言った。
「ああ、もちろん」
嬉しい!!
ヘリは、喜ぶ心を隠そうともせずに、満面の笑みでうなずいた。
「ぜひ、寄らせてもらうわ」
そんな素直なヘリの反応にイヌは、微笑した。
5階のイヌの部屋。
キッチンカウンターに座ったヘリは、イヌの養父が送ってくれたというワインをイヌに注いでもらっていた。
「このワインは、入手が難しいんだが、養父も僕も好きでね。養父が購入出来る機会があったらしくて、僕にわざわざ送ってきてくれたんだ」
「そうなの。本当にいいお義父さまね」
イヌがうなずいた。
ヘリは、グラスを手にとって、イヌに掲げた。
「お仕事、お疲れ様、ソ弁護士。ありがたく頂くわね。」
むかいあって座っていたイヌもグラスを掲げて、ヘリのグラスと合わせた。
ワインを一口飲んだヘリは、グラスを遠ざけると感動したように言った。
「んんーっ、美味しい!!」
「だろ?」
「ええ、すごく美味しい」
こんなおいしいワインを飲むのなんてひさしぶりだわ。
ヘリは、顔をほころばせて、ワインをゆっくり味わった。
この1年ほどはワインもほとんど飲んでいなかった。
「もっと飲むか?」
「…いいの?」
「どうぞ。本のお礼だ」
イヌがヘリのグラスに美しい琥珀色のワインをなみなみ注いだ。
「こんなに美味しいのに入手困難って、どこのかしら?」
ヘリは、ワインボトルのラベルを見ながら、そう聞いた。
「養父の友人が営んでるブドウ園で作られたワインなんだよ。
小規模のワイナリーでね、生産量が少ないから、市場に出回ることはないから、
このワインは知る人ぞ知るという存在らしい」
「ふーん」
ヘリは、アメリカと養父の話をするイヌを珍しそうに見て相槌をうった。
「僕も昔、養父にその友人のワイナリーに連れて行ってもらったことがあるんだが、
とてものどかで、景色が美しい町だった」
どこか懐かしそうに遠い目で語るイヌを
ヘリは、ほほ笑みながら見ていた。
…本当にいい養父さんに育ててもらったのね。
あんなに酷い事件があったのに、こんなに立派に成長した青年になったのだもの。
イヌの努力も並大抵じゃなかったのかもしれないけど、誰かが側でずっと支えて、見守っていてくれたからなのね。
「町の写真とかないの?」
「ああ、そういや、撮った気もするが、アメリカに置いてきたかな」
「そうなのね。…ちょっと見てみたかったな…」
イヌが見た美しいという風景を。自分もその目で見てみたかった。
そんなヘリをジッと見つめてイヌが言った。
「…見に行くか?」
「え?」
「いつか一緒に見に行こう。このワインが作られている町に」
優しい顔でそう続けるイヌに驚いたように目を見開いたヘリだったが、
すぐに嬉しそうにほほ笑むとコクリとうなずいた。
「ええ、行く」
頬笑みあって、もう1度グラスを重ねると、
ヘリとイヌはワインを口に運んだ。
ボトル1本のワインをあけて、
イヌが、他のワインをすすめようとするのをヘリは断った。
「どうして?君は酒豪だろ?これだけのワインじゃ足りないんじゃないか?」
そういうイヌに、ヘリは首を振った。
「貴重で美味しいワインを頂いちゃったんだもの。
今日は、口の中でこのワインの後味を堪能したいから、他のワインはいらないわ」
「そうか」
自分を温かく見守るイヌの視線に、
ヘリは、ちょっとソワソワしだした。
時計の針は9時を過ぎていた。
「…じゃあ、私、そろそろ帰るわね。ワインごちそうさまでした」
「あ、ああ」
立ちあがったヘリにイヌも椅子から腰をうかせた。
ヘリは、ちらりと、イヌの部屋の中に目を走らせた。
ヘリと同じワンルームの部屋は、広いが、ほとんど中を見渡せるつくりになっていた。
そして、窓側におかれたベッドに目をとめた。
そのヘリの視線の先に気づいて、イヌが言った。
「取り寄せていたベッドがようやく届いたんだ。
借りていた君のベッドは実家の方に送り返していいって言われてたからそうしたけど」
「そうなの」
ヘリはあたふたと目線をそらした。
「いいベッドよね。デザインもいいし、寝心地も良さそうだし」
「試してみたら?」イヌがいった。
「え?」
「いや、寝ころんでみたら?スプリングもきいてるし、君のベッドと同じくらい寝心地はいいよ」
「……」
そういえば、イヌは、部屋を交換するまで、以前私が今使っているベッドに少しの間だけど寝ていたんだったわ。
「じゃ、じゃあ、ちょっと試してみようかしら」
…ちょっと横になるだけなら。
1年前にこの部屋にあった同じデザインのベッドを見た時、ちょっと触ってみたい。そういう欲求にかられたのを思い出した。
ヘリは、イヌのベッドの端の方に遠慮がちに這いあがると、
体を倒した。
「ん。いいわね。とっても。女性にも好まれそうな硬さね」
「そうか。確かジェニーもそんなことを言っていたな」
つい、そう口にのせたイヌの言葉にヘリがガバっと体を起こした。
「ジェニーさん?」
動揺もあらわなヘリだったが、イヌは、淡々と話を続けていた。
「ああ、うちに泊まりにきて、以前使っていたこれと同じデザインのベッドに寝た時にそんなことを言ってたよ」
「……」
イヌは、目をこぼれんばかりに見開いて固まっているヘリのただならぬ様子にようやく気づいて苦笑した。
「寝たと言っても僕と一緒に寝たわけじゃない。泊まりに来た時にベッドを貸しただけだ」
「そ、そう…」
ヘリは1年前の夜中、テラスに出た時にイヌの部屋のテラスに、イヌの服を着て佇んでいたジェニーの姿を思い出していた。
…あの時も泊まっていたのね。
きっと、父親の無実の罪をはらすための計画をジェニーと練っていた時の事だろう。
あの日だけじゃなくて、今までも何度もあったのかしら?
お互いの部屋に泊まるってことが。
…親友だもの。男と女といっても、部屋をシェアするような感覚なのかもしれないわ。
それに二人はアメリカ育ちだし、そういうことにはドライなのかも…。でも…。
やっぱりいい気分じゃない…。
「…帰るわ」
ヘリは、そっとベッドから降りると、イヌの顔を見ずに、歩きだした。
「へり」
慌ててイヌが追い駆けてきた。
「どうしたんだ?もしかしてジェニーのことが気に障ったのか?」
「…べつに。違うわよ。もう帰るって言っただけでしょ」
ワインも飲んだし、用もすんだし。
そうモゴモゴ口の中でつぶやきながら、ヘリはうつむいたまま玄関の方にスタスタ歩きだした。
ジェニーさんが寝たのはあのベッドじゃない。
でも…これからだって、親友のためにベッドを明け渡すことはあるのかもしれないわ。
親友って言っても女性なのに…。
ジェニーとイヌが過去も今もそういう関係ではないと頭では分かっているのに、
ヘリは1年前そういう勘違いをしていた時の自分の切ない想いを思い出して、胸が苦しくなってきた。
「ヘリ?」
イヌが背後からヘリの腕をつかんだ。
「……」
イヌが後ろで短い溜息をつく気配がした。
「どうしたんだ?一体。…今もだが、最近少し変だぞ」
…変?私が?
ヘリは振り向きもしないで、イヌの言葉を聞いていた。
「最近僕も忙しくてあまりかまってやれなかったせいもあるかもしれないが、
会っても君の態度はどこかぎこちない。僕に言いたいことがあるなら聞くから言えよ」
「…かまってやれなかったって、別に私子供じゃないわ」
ヘリが拗ねたように言った。
「それに、言いたいこともないわ。ただ…私も仕事とかいろいろ忙しくて疲れがたまってイライラしているのかも。今日は早く寝たいの。ほんとうにこれで帰るわね。おやすみなさい」
ヘリは、自分の表情がイヌに見られないようにうつむいて、再び歩き出した。
イヌのヘリの腕を握っていた手がそっと外された。
「……おやすみ、ヘリ」
背中でイヌの声を聞きながら、
ヘリは、玄関から出ていった。
その姿を部屋の中でジッと見送ったイヌは深く長い溜息を一つついた。
次の日の日曜。
『今日、一緒にどこかに出かけないか?』
というイヌのメールの誘いを、ヘリは、メールで断った。
『今日は実家に帰る予定なの。ごめんね』
ほんとうは、実家に帰る予定など無いヘリだった。
母エジャも父サンテもパン屋の仕事場に行っていて留守だった。
せっかく、会いたかったイヌが側にいる休日なのに…。
何やっているのかしら?私。
『最近少し変だぞ』という昨夜のイヌの言葉を思い出して、
「…ほんとに変な私。らしくない」とつぶやいて、
誰もいない、用もない実家に帰って行った。
(初めての夜4終わり5につづく)
今日も2話更新です。
「検事プリンセス」の妄想話の他のプロットも
かなりたまってきたので、「初めて物語」(笑)は
更新早めで進めます。
夏が終わる前に更新したい話もあるので(笑)
ところで、10話、ヘリの引越パーティーの時、
イヌの部屋で計画ねりながら、泊まったらしいジェニー。
イヌの座ったベッドの横にゴロンと体を横たえて、
「あなたは床にマットレスひいて寝てね~ソファは疲れるから」と
イヌのベッド横取り宣言です。
ふっと笑って、立ち上がって行ってしまうイヌに、
ジェニー、ちょっと残念そう…。(テレビではカットされてた)
本当はちょっと色っぽく誘っていたのかしらん?
ジェニーって女性、私は好きなんですけど、
このシーンでは、
嫌だーーー!!イヌのベッドに寝ないでー!って、
今回の二次小説のヘリのように
心の中で叫んでました(笑)
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