韓国ドラマ「検事プリンセス」の★みつば★の二次小説
第12作目「ここにいるから」の2話目です。
この二次小説を読むにあたっての注意点は
「
カップケーキ前編」のブログ記事を読んでください。
タイトル「ここにいるから」
原典「検事プリンセス」
登場人物
マ・ヘリ(マ検事)
ソ・イヌ(ソ弁護士)
パク・エジャ(ヘリの母親)
この話は、「交際宣言」の続きではなく、
時間的にはもっと先の二人が恋人関係が定着したあたりのお話です。
オリジナル要素が強いですが、ドラマのネタばれもありますので、
これからドラマを見る方はご注意下さい。
ここにいるから(2話)さきほどのイヌはやや蒼白な顔色に見えたが、別段いつもと変わらないように見えた。
自分の姿をみて、安心したように笑っていたし、話し方もエジャの前だったから固めだったが、
礼儀正しくて、冷静そのもので、普段と同じだった。
「イヌ、さっきはどうかしたの?」
「…ええ。それがね…」
話すのをためらっているようなエジャにヘリはわけもなく不安になった。
「ソ君ね…。あなたの事故のこと。病院についてすぐにうちの店に電話をくれたのよ。
私が電話に出たんだけどね。あの時もすごく冷静で、ヘリは今処置室にいるけど、どうかあわてず落ちついて病院に来てほしいって、私たちのこと気遣う余裕もあるくらいだったけど…」
「…けど?」
「サンテさんと私が病院についた時にはね、処置室の貴方は、ほとんど心配ないって医者が言える状態で、私たちも安心したのよ。でも、ソ君は……」
「イヌが何?」
「うまく言えないけど…すごく様子がおかしくて。ほら、さっきみたいに、一見全然何でもないように普通にふるまってたけど、話しかけるまで、何も語らなくて、ずっと気を失ったままのヘリのそばから離れなくて、ヘリしか見てなくて…私たちや看護師や医者が何を言っても聞こえてないみたいで…」
なんだかとても怖かったのよ。
そこにいるのに、まるで魂が抜けたみたいになっていて。
ヘリは、エジャの話に動揺していた。
イヌが?
「でもねえ、ほら。偶然とはいえ、目の前でヘリの事故を見てしまったわけでしょう。
きっとすごくショックだったのよね。私だって、もしヘリのそんな姿を見たら、取り乱してしまっていたわ。きっと。ソ君だって…」
取り乱してはいなかったが…。
病院につきそってついてからも、ヘリの状況などを落ち着いて医師や看護師
に話していたらしいし、その後病院にやってきた警察官などにも現場の様子を冷静に説明していた姿も思い出していた。
だけど、どうしても不可解な違和感をエジャとサンテはイヌに感じていた。
静かすぎるし、落ちつきすぎているのだ。
職業柄なのか、それとも性格的なものなのかは分からないが、
あまりにも冷静な態度に、これが目の前で恋人が事故にあった男の対応なのだろうか?とエジャは内心首をかしげた。
しかし、サンテはイヌの態度に何か感じることがあったらしく、
何も聞かず、イヌにヘリにつきそっていた礼を簡単に言った後、イヌの肩を軽く一つたたくと「あとを頼む」とエジャに言い残して、店の方に戻って行った。
「…男の人ってこういう時妙に冷静よね」
はあーっとエジャは溜息をついた。
…ママがちょっと感情的すぎると思うけど。
自分がエジャとそっくりな事を棚にあげてヘリはそう思った。
やがて、夜8時になり、面会時間も終わりになったので、
エジャはヘリに別れをつげて、家に帰って行った。
エジャのいなくなった病室で、一人になったヘリはとても心細い気持ちになった。
薬がきいているのか、足の痛みはほとんど感じなった。
体の他の部分もそっと衣服をほどいて見てみたが、左肩に打撲のようなあざが少しあったぐらいで、何もなっていないようだった。
ヘリが目を覚ましてからしばらくして警察の人も来たが、
事故の記憶があまりないヘリにあまり語ることは無かった。
警察もほとんどイヌや通行人から目撃証言をとっていたらしく
ヘリに事務的な質問だけすると、お見舞いの言葉を残して病室を去って行った。
車を運転していた人物は飲酒運転だったと、警察が話していた。
夕方で混雑した時間には珍しく、幸いケガ人はヘリだけだったらしい。
良かったわ。ほんとに。
ヘリは、心の底からそう思った。
私もこれくらいのケガですんだし、
向こう側にいたイヌにケガもなくて。
ヘリはベットの脇の棚に置かれた自分のカバンと書類の封筒を見た。
あの時仕事の用事を終えて、ヘリはそのまま直帰する予定だった。
封筒の中身を確認すると書類は全部あった。
通行人がすべて拾っておいてくれたらしい。
ほんとに良かったわ。
しかし、ヘリは、ベット下の自分の靴をみて、ちょっと悲しそうな顔になった。
「お気に入りの靴はだめになったみたいだけど…」
ヘリが今給料の中で毎月積み立てしていた貯金でようやく買った
大好きな靴だった。
前のように父親のサンテのお金でブランド品を買いあさっていた頃と違って、
自分の働いたお金をためて、本当に好きになったものを少しずつ買うようになったヘリは、
手にいれたものを前よりとても大切にするようにしていた。
だからこそ、この壊れた靴がとても残念だった。
「私の身代わりになってくれたのかしら?ありがとね…」
そうつぶやいて、踵の折れた靴をヘリはやさしくなでた。
消灯時間になって、病室の電気が消えると、
ヘリはますます心細くなった。
もともと怖がりのヘリは病室でたった一人ですぐに寝ることなど、とても出来なかった。
ヘリはベッドから出るとそっと病室を出た。
真っ暗な廊下をビクビクしながら
病院で携帯電話が使用出来る部屋まで歩いていくと、さっそく携帯の短縮ボタンを押した。
何度かのコールの後、相手が出た。
「ヘリ」
「…イヌ?」
声を落としながら、心の中は安心感と声を聞けた嬉しさで弾んでいた。
「あの…今仕事中?」
「いや、さっきクライアントとの打ち合わせも終えて、これから事務所に戻るところだ」
「じゃあ、まだ帰れないのね」
イヌは、仕事がかなり忙しい時だったのだろう。それなのに、自分が目の前であんなことになってイヌは仕事を中断して自分につきそっていたのだ。
ヘリは申し訳ない気持ちで携帯電話を握りしめた。
「どうした?どこか痛むのか?それとも怖くて眠れないのか?」
イヌの優しく気遣う声がさらにヘリを泣きそうな気分にさせた。
「ううん。大丈夫。ただ、少しあなたの声が聞きたかったの…」
おさえていても、鼻声になっている自分に気づいて、あわててヘリは目にたまった涙を手でぬぐった。
「そうか」
イヌの声はどこまでも優しかった。
「今日は大変だったから疲れたろう。ヘリ。眠れなくてもベットに横になって目をとじておくんだ。それでも目が覚めるのだったら、医師に言って眠れる薬を処方してもらうんだ。事故の後だから言えばすぐもらえるはずだ」
「ええ、そうする」
ヘリは携帯電話のイヌのことばにうなずいた。
「ありがとうイヌ。今日、私につきそっていてくれて」
電話の向こうでやや沈黙があった。
「イヌ?」
「礼にはおよばない。…ヘリ。無事で本当によかった」
「ええ…。あなたにもケガがなくてよかったわ。お仕事あと少し頑張ってね。
私はあなたの声を聞いたから、もうすぐに眠れそうだわ。おやすみなさいイヌ」
「おやすみ。ヘリ。明日退院する時連絡を忘れないでくれよ」
「うん」
ヘリは、携帯電話をそっと切った。
…普通だったわ。優しかったし。
ヘリは先ほどエジャが言っていたことを思い出していた。
イヌのどこが変だったのかしら?おかしなママ。
まあ、私の事故のことでママも気が動転していたのかもしれないわね。
その時のヘリはエジャの言葉を深く考えることもなく、イヌの声で心も体も温かくなって、
足取りも軽く、自分の病室に戻って行った。
次の日―。
ヘリの体の一通りの検査も終わり、
頭にも体にもダメージは見当たらず、
どこも何の異常もないことが証明されると、医師から
「足だけは、包帯をしばらくしておくように。また経過を見せにきてください」と言われてヘリはその日の夕方に退院できることになった。
検察庁の方には、上司のナ部長に交通事故にあったという連絡をして休ませてもらっていた。
ヘリの電話にナ部長の「部署をあげて見舞いに行く」というはりきった申し出をヘリは丁寧に辞退した。
金曜日ということもあり、明日から続く休日はゆっくり出来そうだった。
退院の手続き前に、エジャ、サンテとイヌの携帯にメールをしておいた。
『どこも異常がなくて、退院することになったわ。これから手続きを終えたらタクシーでマンションの部屋に一度戻ってから実家に帰るわね』
ヘリは、手続きを終えると病院を出ようとした。
その時病院の出口にたたずむ人影に気づき目をみはった。
「イヌ!?」
イヌが、壁にもたれるように立ってヘリに手を振っていた。
駆け寄ろうとして―足をケガしていることを思い出して、ヘリはひょこひょことイヌの側まで歩いていった。イヌはそんなヘリを迎えにスタスタと歩み寄ってきた。
「どうしたの?仕事は?」
驚いたまま聞くヘリから、イヌは黙ったまま笑顔で、ヘリの荷物、カバンと封筒をととりあげると、ヘリに自分の腕にもられるようにジェスチャーで指示した。
「…」
ヘリは、不思議そうにイヌを見上げて、イヌの腕に自分の腕をからめて、歩きだした。
「今日の仕事はない」
「ほんとに?」
「ああ、昨日、その分全部終わらせたからね」
イヌは、ヘリの歩調にあわせながらゆっくりと足を進めていた。
「でも…」
ヘリがまだ何か聞こうとするのをイヌの横顔が無言のまま拒否しているようで、
ヘリは言葉をのみこんだ。
私を気遣って休みをとって迎えにきてくれたんだわー…
そう気づいて、ヘリは、嬉しい半面、申し訳ない気持ちになって
イヌの横顔を見つめていた。
病院の駐車場にイヌの車が停めてあった。
「さ、乗って」
「ありがと」
ヘリはイヌの車の助手席に乗り込んだ。
「あの、まずはマンションに寄って、それから実家に帰るつもりなんだけど、
送ってくれる?」
ヘリが言った。
イヌは車のエンジンをかけた。
「…いや。実家には送らないよ」
「え?」
「ヘリのご両親とは話がついている。今日はマンションで、僕がヘリの世話をすると言ってある」
「ええ?」
ヘリが驚いて、イヌの横顔を見つめた。
「二人とそんな話をしたの?それで、ママ、パパはなんて?」
まさか、ママとパパが、イヌにそんなことを頼んだはずはないと思うけど―。
「わかった。まかせるって言ってくれたよ」
うそ…。
昨日交通事故にあってケガをした娘を、心配しているはずだ。
今日くらい実家で過ごさせようと思っていたはず。
ヘリは何を考えているのか分からないイヌの横顔を見つめたまま
カバンから携帯電話を取り出して、サンテとエジャのパン屋の電話番号にかけた。
「はい」エジャが出た。
「あ、ママ?私、ヘリよ。今退院したのだけど、イヌが迎えに来てくれていて…それであの…」
「ええ、ソ君が迎えに行くことは彼から聞いているわ。
今日、マンションの部屋でソ君があなたの面倒を見てくれるってことも」
「えええ?」
ヘリはあわてて受話器に口を寄せて、横のイヌを気にしながら声を落として
―落しても聞こえているだろうが―あせりながら言った。
「ちょっと、ママ。それで、はい、お願いしますって言ったの?…パパも?」
「ええ。そう言ったわ。パパもソ君によろしく頼むって」
「…しんじられない」
不信感をつい言葉に出してしまったヘリだった。
いくら恋人といっても、親がそんなあっさりと―。
「ソ君にお願いするんだから、あなたのことは安心してるわ。でも、くれぐれも無理のないようにね。」
遠くで、「エジャ」と呼ぶサンテの声が聞こえた。
「あ、お客さんが混んできたからもう切るわね。ヘリ。ソ君によろしくね」
そう言って、エジャの電話は向こうから切れた。
ヘリは、携帯電話のボタンを切って、茫然とした。
ママもパパまで、そんなにソ弁護士を信頼するようになったの?
交通事故でケガをした娘を任せちゃうくらい。
それとも何?パン屋が忙しくて、大したケガをしていない娘の面倒をみる暇もないのかしら?
ヘリは、むっつりと携帯電話をカバンにしまった。
「…ソ弁護士によろしくだって」
「ああ、確かにそう言われたよ。何?ヘリは不満?僕に面倒を見られることが」
「…そうじゃないけど…」
なんだか腑に落ちないという顔でヘリは黙った。
イヌが明るい声で言った。
「まあ、僕にまかせておけよ。ご飯も着替えも風呂も、全部ばっちり面倒みるから」
ご飯の世話はいつものことかー。
イヌのからかうようないつもの笑いに、ヘリが苦笑した。
「よろしくお願いいたしますわね」
足のケガだけなので、さして生活に支障が出るとは思わないけど、
たしかにちょっと不便な時もあるわね。
それに、イヌの手作りご飯も楽しみ。
最近、お互い仕事が忙しくて、ゆっくり一緒に食事することも出来なかったからー。
「明日からの休みも一緒にいよう」
ヘリと同じように考えていたのか、そうイヌが言った。
「…ええ」
ヘリは、さっきまでのモヤモヤした気分はさっぱり無くなって、
嬉しくなってほほ笑んだ。
(2終わり、3に続く)
更新が早い理由は、
実は、今週27日から3週間ほど旅行に行ってきます。
なので、これまでのように毎日は更新できないかも…と。。。
ネット環境にもよるのですが、
もしかしたら、出来たら携帯更新でも
何かショートストーリーをアップできたら…とは考えていますが、
もしかしたら「検事プリンセス」以外のネタの感想等を
アップするかもしれません。「検プリ」目当ての方には申し訳ないです。
とりあえず「ここにいるから」は全部アップしておきますね(ぺこり)
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