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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「背馳」(4話)です。

二次小説を読む注意点、コメント記入、「陳情令」の他の二次小説も
「陳情令」二次小説INDEXページからお願いします。


「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

「陳情令」は現時点、日本語翻訳未公開のドラマです。(2020年3月より初放送予定)
原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は「邂逅」の続きになります。


背馳(4話)




姑蘇の街はずれから、裏街道に向かった魏無羨は、先ほど仙剣の上から見た、屍傀儡らしき姿を探していた。

…たしか、このあたりで見かけたが。

魏無羨は、裏街道につくと、注意深くあたりを見渡した。
先日助けた空師の親子が遭遇したという時刻も場所も似ている。

しかし、裏街道を歩く人影もなく、屍傀儡の気配も無かった。


…まだ、このあたりにいるのかもしれない。

魏無羨は、腰帯の陳情を取り出すと、口にあてて構えた。

そして、笛の音色に念と術を入れて奏でた。
旋律には、屍や幽鬼の類を惹きつける術が込められていた。
噂の屍傀儡が近くにいるのなら、陳情の音色に寄ってくるかもしれない。

魏無羨は、裏街道から林の中に入り、岩場の影に腰を下ろすと、陳情を吹き続けた。

周囲の風が変わっていく。

魏無羨は林の周辺にいた幽鬼たちが集まってくる気配を感じた。

今の時代ではなく、遠い昔に亡くなった者。
旅の途中で行き倒れた者。
戦いのような争いごとで命を落とした者。
中には、幼い姿の者もいた。

人に害を及ぼすまでの力も邪気も持ってはいなかったが、地上を彷徨い歩いている魂たちだった。

魏無羨の陳情の音色に惹かれ、魏無羨の周囲を取り巻くように近づいてくる。

魏無羨は陳情を吹きながら、幽鬼たちを観察したが、その中に、噂の屍傀儡らしき姿は無かった。


『…もっと、聴かせて』

もう外見の原型はとどめていないまでに魂も薄れていたが、何かの未練がこの世につなぎとめているらしい幼子の幽鬼が言った。

魏無羨は、曲名を“鎮魂”に変えた。

幽鬼たちは、目を閉じ、その音色に耳を傾けた。
次第に、魏無羨を取り巻いていた幽鬼たちの姿が消え始めた。

魏無羨の“鎮魂”の効果で、魂が浄化され、成仏していく。

魏無羨は、囁くような声が胸に響いていくのを感じた。

『ありがとう…』


どれくらい時間がたったのだろう。

魏無羨は、自分を取り巻く幽鬼の気配がすべて消えた事を察して、陳情を口から離した。

この周辺にいた幽鬼たちは、魏無羨の音色ですべて成仏したようだった。

すっかり夜更けになった林の中は、暗闇と静寂に覆われていた。
獣たちの寝息や息遣いすら聞こえない。

夜空を見上げると、星は瞬いていたが、月の姿は無い。

魏無羨は、まるで、この世に自分一人残されたような感覚に陥った。
それは、別段、怖いことでは無かった。

暗闇にも、一人でいることにも慣れていたはずだった。

それなのに、なぜか全身大きな寂寥感に蝕まれていた。
孤独という闇に耐えきれない自分がいる。

先日も野宿をしていた魏無羨だったが、その時は温寧が魏無羨のそばにいた。

…そうだ。前世でも、あの日までは温寧がいてくれた。
そして、献舎されて蘇った後、再会してからは藍湛がずっと俺のそばにいてくれた。

魏無羨は胸の内で大きく去来した藍忘機のことを考えた。

…藍湛は、今ごろ、どうしているだろう?

場合によれば、泊りになると言っていた。
どこかの仙家に泊まっているのだろうか。
それとも、どこかに闇狩りの視察に行っているのだろうか。

短い時間だったけど、朝会った時、いつもの覇気のような物が弱かった気がする。
無理をしていないだろうか。

もし、藍忘機が、沢蕪君の話していた理由で、飛び回っているのだったら、この屍傀儡の件は、俺が早く片をつけなくては。

藍湛は、今世で再会してから、ずっと俺を助けてくれた。
そんな藍湛に迷惑をかけたくない。


「藍湛…」


魏無羨は小さく藍忘機の名を呼ぶと、再び陳情を口にあてて、藍忘機が玄武洞で口ずさんでいた旋律を奏で始めた。

こうして、

魏無羨は夜通し、陳情を吹き続けたが、結局、日が昇る頃になっても、魏無羨の追っていた屍傀儡が現れることは無かった。


一方。

日が少し高く昇った頃の雲深不知処では。

前の日、魏無羨の通行玉礼を借りて、無事に結界門を通過出来た、姑蘇藍氏の弟子達が、静室を目指して歩いていた。

魏無羨に通行玉礼を返す為だった。

「含光君様も静室にいらっしゃるだろうか?」

「いや、この時間にはもう家にはいらっしゃらないはず」

時刻は巳の刻(9~11時)に入っていた。

「しかし、今朝、雲深不知処の中ではお見掛けしなかったぞ」

「昨日お出かけになられてから戻られていないか、また雲深不知処の外に出られたのでは無いか?」

弟子達は、ひそひそと声をひそめ、そんな会話をしながら、静室の門の前にたどり着いた。

「魏先輩。魏先輩いらっしゃいますか?」

先頭を歩いていた藍思追が静室の門を叩いて言った。

ややって、静室の方から人が出てくる気配がした。
そして、門が開き、中にいた人が現れた。

藍忘機だった。

「!!」

てっきり静室にいるのは魏無羨だと思いこんでいた弟子達は、驚きの表情で固まった。
しかし、すぐに一斉に背筋を伸ばし、慌てて藍忘機に揖礼をした。

「含光君様」

藍忘機は、姑蘇藍氏の若い弟子達を見渡すと、「何事?」と静かに問いかけた。


「あの、用事があって、魏先輩にお会いしたいです」

藍思追が答えた。

「先輩はいらっしゃいますか?」

「いない」

「もう、どこかにお出かけになられましたか?」

「昨夜から戻っていない」と瞬き一つせずに答えた藍忘機に、藍思追は思わず隣にいた藍景儀と顔を見合わせた。

「魏先輩、まだ、あれからあのまま。朝にも帰っていないのか」

戸惑いと動揺が弟子達の間に広がった。

そんな弟子達の様子を見渡し、藍忘機は眉をひそめた。

藍忘機のそんな表情を見逃した弟子達は、勝手にひそひそ話を始めた。

「また鬼将軍と一緒にいるのかな?」

「いや、姑蘇の街で降りたから、夜は宿に泊まったんじゃないか?」

「でも、魏先輩、まったく金を持っていなかったじゃないか。あれじゃ宿には泊まれないよ」

「そうだ。景儀。もしかしたら魏先輩、あの姑蘇の街で会った仙術使いの宿に泊まって、一緒にいるのかも。闇狩りで手助けしてもらったっていう、魏先輩とやけに親し気だった男の人」

「ああ~…。あの、先輩が仲英って呼んでた、手首に黒数珠をつけた仙術使い」

藍景儀が頷いた。

「あの人、魏先輩に言ってたしな。『一緒に酒を飲もう。“また”俺のいる宿の部屋にも泊りで遊びに来いよ』って」

正確には、仲英はこう言っていた。
『また一緒に酒を飲もう。俺のいる宿の部屋にも泊りで遊びに来いよ』

藍景儀は、話の中で「また」の挿入位置を間違え、仲英が言った本来の文の前後が混ざっていたのだったが、とくに気にするところでは無いと思っていたようだった。

しかし、聞いた者には、そうでは無かった。

藍景儀の言葉の後、弟子達は、なぜか藍忘機の周囲の空気が一気に冷え込むのを感じて、無駄口を止めた。

「昨日、魏嬰と、どこで何をしていた?」

低く、静かな藍忘機の問いかけが逆に弟子達の顔を一斉にこわばらせた。



藍忘機と弟子達の間で、そんなやり取りが繰り広げられているとはつゆ知らず、
魏無羨は、その頃、裏街道脇の林の中で、ぐっすりと眠っていた。

夷陵近くで闇狩りを行い、夜はずっと屍傀儡を誘いだす為に陳情を奏でていた魏無羨。

その前日もあまり休んでいなかったため、さすがに夜が明けた頃には気絶するように入眠していた。

裏街道を通る旅人達が多くなってきた騒めきの気配で、ようやく魏無羨が目覚めたのは、日が真上よりもずっと下方に傾いていた頃だった。

…うーん…。どれくらい寝ていたんだ?俺は。

ぼさついた頭をかき、寝ぼけ眼で、林の中から突如、裏街道に出現した魏無羨に、旅人たちは、ぎょっとしたような顔をした。

「このあたりで怪しい屍を見なかったか?」

魏無羨は、歩いている旅商人たちを捕まえては聞いた。

「…見てねえな」

…屍傀儡とやらより、あんたの方がよっぽど怪しい。

旅商人たちは、皆、そんな不審そうな目で魏無羨を見た後、そそくさと去っていった。

よれよれした出で立ちだけでなく、魏無羨から仄かに悪臭が立ち込めていた。

…一度、雲深不知処に戻ろう。昨日街はずれで別れた、姑蘇藍氏の弟子達も無事に帰れたのか気になるし。

そう考えた魏無羨は、大きなあくびをしながら、フラフラと雲深不知処への帰路についた。



雲深不知処の静室に辿りつき、
門を開けて、敷地内に入った魏無羨は、周囲を見渡した。

藍忘機がいる気配はない。

…藍湛は、まだ帰ってないんだな。

そう思った魏無羨は、静室に入って天子笑の酒を思いっきり飲みたい気持ちを抑え、まず、体を清めることにした。

先日の魔物との闘いや、裏街道探索で、魏無羨の体は全身埃と汗まみれで据えた匂いになっていた。


風呂を準備しようと、風呂桶を納屋から出そうとした魏無羨は、その重さに顔をしかめた。

持ち上げられないことも無かったが、疲れた体には億劫だった。

…藍湛は、こんな重い風呂桶をいつも軽々と持ち上げてたな。

そんな事を、思い出しながら、魏無羨は、風呂湯を沸かすのも面倒になり、行水ですませることにした。

魏無羨は静室の裏手に、まわると、そこで衣服を脱いだ。そして井戸の水を手桶にくむと、頭からかぶった。

「うわっ。つめてーっ!」

思わず魏無羨が叫んで、身震いするほど、水は冷えていた。

…これじゃ、冷泉だ。やっぱり湯くらい沸かせば良かったな。

そんな後悔すらも我慢して魏無羨が井戸の冷水で体を洗っていた時。


「魏嬰」


低いが、静かな敷地内に響いて聞こえた呼び声に、
魏無羨は思わずびくっと体をこわばらせて、振り返った。

静室の家屋の角で、藍忘機が魏無羨を見つめて立っていた。

「藍湛。いつから、そこに?」

藍忘機の突然の出現に驚き、魏無羨は、全身から冷水の雫を滴らせた身体で突っ立った。

目をしばたたかせている魏無羨を見据えたまま藍忘機が言った。


「話がある」



(続く)


【拍手コメントレス的な話】

みつばも中国語分からないのに、パっと見した「陳情令」の映像に惹かれ、公式から配信されていた「陳情令」ドラマを見て、どっぷりとはまりました♪そして、やっぱり中国語も英語も堪能で無いのに、原作「魔道祖師」の小説を読むまでに。…雑記ではしゃいだ記事書いてましたが、おそらく解釈間違っている箇所多数。なのに、勢いで二次小説まで書いているという。萌えパワーがあれば、成せば成ります!(笑)

「魔道祖師」日本版のラジオドラマ、無料部分、ちょっとだけ聴きました♪
江澄、最高!!かっこいい!!ずっと聴いてたい♪(声)…今のところ、感想それだけですが、魔道祖師の内容や詳細を知るには、これを聴くのが一番早そうです。

みつばの二次小説では、江澄の登場はまだです。ある話では沢山登場予定ですが、みつばの「陳情令」二次小説は、最終回間近になります。
…昨年、来年の今頃(12月頃)は、二次小説最終回かも?とか雑記で書いてましたが、「陳情令」の日本語訳のドラマが最終話放送頃に、ようやく今の二次小説シリーズ話が完結していたら御の字かも(汗)←遅筆。

ピンク拍手コメントの方。

もう、大爆笑させて頂きました(笑)うらやましい!そのチャットにみつばも混ぜて欲しかったです。脳内でみつばも一人チャットします。yy×gg×dd妄想で♪♪♪
しかし、何て美しく麗しい3人なんでしょうね。現実の姿が美しすぎて、腐妄想の中でも、何やっても美しい(うっとり)…ちなみにyyも攻めなんですね?萌えすぎて、腹筋がよじれそうです♪

シリアスな雰囲気の二次小説の、あとがき拍手コメントレスで、はしゃいですみません。
今、リアルの世界では、必須業務にてんぱってまして(←そのわりに余裕そうに見える)

ブログへのご訪問ありがとうございます。
今後の二次小説更新は予約投稿が多くなるので、
コメント、拍手コメントのお返事には時間差が出ることがあります。ご了承ください。

みつばの二次小説を読んで頂きありがとうございました。
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背馳(3話)




魏無羨は、温寧に、所有者がいることを知らずに取ってしまった木の件の進捗状況を話すことにした。

「温寧、沢蕪君に木のことを話した。沢蕪君は、名前は伏せて、対処してくださるそうだ。もう、そのことで心配はいらない」

「ありがとうございます。魏公子」

「いや。礼なら、沢蕪君に。ただ、直接伝えられないなら、俺から伝えておく」

…藍啓仁先生が姑蘇藍氏の弟子達に温寧に近づくなと言っている以上、温寧が沢蕪君に直接会うことは難しいだろう。

そう考えた魏無羨が言った。

温寧がこくっと頷いた。

「お願いします。公子」

「うん」

魏無羨は温寧の肩をポンポンと優しく叩くと、温寧と一緒に伏魔洞を出た。

外では、今日は休みだと言っていた姑蘇藍氏の弟子達が、畑仕事に精を出していた。

「もしかして、夢トの栽培か?」

「はい」

鍬を握っていた姑蘇藍氏の弟子の一人が言った。

「もうすでに鬼将軍が栽培されて育っている物もありますが、畑をさらに開墾したいのです」

「お前達は、そんなに夢トが好きなのか?」

休みの日に遠くの夷陵まで来て畑仕事とは。

「そういうわけではありませんが、ただ、鬼将軍の手伝いをしたいのです」

他の弟子も口をはさんだ。

「思追から、鬼将軍がご親族の慰霊碑と祠堂の修復を試みていると聞いて、我々も何か出来ることが無いかと思ったのです」

「慰霊碑と祠堂の為の資材は不足していますが、畑は作れます。それに蓮池も」

「蓮池?」

魏無羨が温寧を振り返った。

「はい。以前、ここにあった蓮池を蘇らせたいです」

温寧が言った。

「…何も昔のままにしなくてもいいんだぞ?」

温寧は、魏無羨の言葉にかぶりを振った。

「蓮の花は美しいです。またここで咲けば、皆喜ぶことでしょう」

温寧の「皆」というのが、姉と祖母、一族の者達を指していることが分かった魏無羨は、「そうか」と呟くように言った。

そして、魏無羨は少し離れた場所で藍景儀と一緒に、朽ち果てた住処のガラクタを整理してる思追の方をチラリと見た。

…あいつにも又見せてやりたいんだな。

魏無羨は温寧の心情を察すると、頷いた。

「俺も手伝いをしていいか?」

魏無羨が温寧に聞いた。

これからは魏無羨の手助け無しでやっていきたい、と言っていた温寧だったが、これは、そういう手助けとは違う。

温寧は魏無羨の言葉に表情をやわらかくした。

「はい。公子」

魏無羨も微笑んだ。

今は、まだ荒れ地だった。
十数年前、初めて魏無羨がこの地を訪れた時のように。

でも、いつか、蓮の花が咲き乱れるような蓮池が出来るだろう。
そして、あの時のように、この地で収穫した蓮の実を温寧と共に食せる日が来るかもしれない。

汗を流しながら、でも、楽しそうに畑仕事や、片付け作業をしている姑蘇藍氏の弟子達を見て、魏無羨はそう思った。

その後、魏無羨も、思追達と一緒に、畑の土を改良する手立てを考えたり、街で聞いた資材の相場から、祠堂や慰霊碑建立の計画をたてたりした。

昼食時には、藍景儀と藍実暈が買ってきた弁当を、温寧も交えて皆で食べた。
魏無羨は闇狩りで会って、危ない所を手助けしてくれた仲英の事を弟子達に打ち明けた。
欧陽氏一門の闇狩りがらみの話は省略したが、弟子達は、魏無羨から聞いた仲英に関心を持ったようだった。

仲英を街で目にしていた藍景儀が、「やはり」と納得するように頷いていた。

「何か只者じゃない雰囲気を持っている方でした。僕の見識は正しかったな」

「…景儀は、身元不明の仙術使いは怪しいとか、そばで言ってなかった?」

呆れたように、藍実暈が横から突っ込んで、皆を笑わせた。


こうして、和やかな雰囲気のまま、時間は過ぎていった。

「そろそろ、雲深不知処に戻らないと…」

未の刻が終わる頃(15時頃)、思追が言った。

夷陵から雲深不知処までは仙剣でも少し時間がかかる。
門限に間に合うには、早めに出た方が良いだろう。

そう考えた思追の言葉に、皆も同意した。

「では、また…」

思追が温寧を見つめて言った。

温寧が黙ったまま頷いた。

「じゃあ、鬼将軍、また来ます」
「それまでお体お大事に」

体を大事に、は、鬼将軍には不要の気遣いかもしれなかったが、姑蘇藍氏の弟子達は礼儀正しかった。

皆は、温寧に丁寧に揖礼すると歩き出した。

魏無羨も無言のまま温寧に頷いてみせると、そっと手を上げた温寧に手を振り返した。
そして、姑蘇藍氏の弟子達と共に乱葬洞を後にした。

魏無羨は、雲深不知処への帰路は、藍思追の仙剣に乗った。

藍景儀の仙剣に乗った行きの時と違い、藍思追の仙剣は、揺れやぐらつきも無く、魏無羨を乗せたまま空を滑るように飛んだ。

…さすが、藍湛の弟子。

魏無羨が心の中で感心しながら、どこか誇らしい気持ちになっていた。
16年間、教育したのも、鍛えたのも藍忘機で、自分では無かったのだったが。

自分の足によくしがみついていた幼子が、今では頼もしい青年になり、自分を乗せて仙剣を操っている。
魏無羨にとっては、不思議な感覚でもあった。

「思追、昔、含光君の仙剣に二人で乗ったことを覚えているか?」

魏無羨が前方の藍思追に声をかけた。

「え?」

突然声をかけられた藍思追は驚いたように後方の魏無羨を見やった。

「私が幼い頃ですか?」

「ああ、含光君に街で会って、おもちゃを買ってもらったことは覚えていたな?それに、一緒に食事したことも。あの後の出来事だ」

「そういえば…、何となくですが、高いところを見下ろして飛んでいた記憶があります。あれは、含光君様の仙剣の上だったのですね?」

「そうだ。温寧に何かあったのを察知して、急いで向かった時のことだ」

「魏先輩が、含光君様に自分が食事をおごるとおっしゃっていたのに、結局、含光君様がお支払いになった後のことですね」

「うん…。お前、そういう余計な所は良く覚えてるな」

「余計な所ですか?」

「いや、別にいい」

魏無羨は、藍思追が藍忘機のいる前で、昔の自分の話を暴露したことを思い出した。
そして、少々気まずさを感じると口を閉じた。

『魏先輩に教えて頂いたことも覚えています。妖艶な女性が描かれた本を見る時の誤魔化し方や、綺麗な女性に会った時ナンパする方法を…』


…いや、余計なことばかり思追に教えていたのは、俺か。

うーん…と鼻の頭を指でかいて、魏無羨は自嘲を浮かべた。

その時。

「あれを見てください!」

前方を仙剣で飛んでいた弟子の一人が、下方を指さして振り返った。


皆が一斉にそこに注意を向け、魏無羨も、その方角に目を凝らした。

ひらけた山道の中で、逃げまどう人々が見えた。

その後ろには、魔物が2体、迫っている。

どちらも、人を襲い、その身体だけでなく魂も傷つける凶悪な魔物の一種だった。


「あれは…姑蘇藍氏の講義で教わったことがあります」

藍思追が言った。

「太古から存在した魔物ですが、でも多くは封印されていて、近年では滅多に現れないと言われている魔物です」

「ああ、俺も以前、古文書で見たことがある」

魏無羨が言った。

稀に古代から存在する魔物が出没することもあった。

しかし、2体とも凶悪な魔物に違いなかったが、種類は異なる物。
それが同時に出現するのは非常に稀有なことだった。


魏無羨の脳裏に、沢蕪君との会話が浮かんだ。

『今まで封じられていた魔性の封印が何者かに解かれたり、塚が壊されたという報告が増えています』

他の弟子達も、魏無羨と似たような事を考えたのだろう。

「なぜ、ここに、あのように珍しい魔物が2体も?」
「多くは封印されて、今はいないはずだぞ」

ざわつく弟子たちに魏無羨が言った。

「検証は後まわしだ。降りて、急ぎ、逃げている人達を助けるぞ」


魏無羨の言葉に思追が頷き、仙剣を急降下させた。

他の弟子達も藍思追の仙剣に続いた。


そこからは、魏無羨の指示に従って、姑蘇藍氏一門で闇狩りを行った。
人々を誘導して逃がす者。魔物に攻撃する者。結界を張る者など。

魏無羨は、陳情の笛の音の術で魔物たちの動きを縛り、弟子達の動きを援護した。

抜群の連携で、2体の魔物たちを封印ではなく、消滅出来たのは、半刻以上後のことだった。

離れた場所から姑蘇藍氏の魔物との戦闘を見守っていた人々が戻ってきて、
姑蘇藍氏一門の弟子達の功労を褒めたたえながら、礼を述べた。

姑蘇藍氏の弟子達は、経験がないほど強い魔物の闇狩りで、疲労困憊していた。
それにも関わらず、姑蘇藍氏一門であるという自尊心で気力を奮い立たせ、人々に何食わぬ顔を見せていた。


逃げていた人々の多くは、家路途中の街の商人たちだった。

「歩いていたら、いきなり、森から飛び出してきて」
「ここいらは、ずっと、魔性が出るという噂も無く平和だったのに」
「最近になって、今まで出なかった魔物がよくあらわれるようになったという話を聞いた」
「新しい仙督になると、世にそういう魔物が出ることがある、という噂は本当だったのだな」


人々の話に、姑蘇藍氏一門の弟子達は顔を見合わせた。

魏無羨と姑蘇藍氏の弟子達は、商人たちの持っていた飲み物をご馳走になった後、仙剣に乗って、再び雲深不知処を目指して飛び立った。

しばらく飛んで、なじみある姑蘇の領地に入った時には、もう雲深不知処の門限の時刻に迫っていた。


「…このままだと門限に間に合わない」

「夷陵に行っていたことが知られてしまう」

せいいっぱい速度を出しながらも、姑蘇藍氏の弟子達の顔は、そんな諦めの想いに支配されていた。

…大丈夫だ。俺が通行玉を持っている。

魏無羨が、皆の落ち込んだような表情に気づき、通行玉礼を見せようと腰帯に目を落とした時。

ふと、一瞬視界に映ったものに魏無羨は気をとられた。

ちょうど飛んでいたのは、姑蘇の裏街道の上だった。
薄暗い視界の中、道のはずれで、フラフラと歩く人影があった。

くすんだ着物の色ではあったが、その者がつけている髪飾りが日没の残り日の光を浴びてキラリと光った。

とりまく空気が生きている人間のそれでは無い。

…噂の屍傀儡!


「思追!止まってくれ!」

魏無羨の声に思追がすぐに仙剣を止めた。

「どうしました?魏先輩」

思追の停止に気づいた、他の弟子達も一斉に仙剣を空で止めた。

仙剣は凄い速度で飛んでいたため、裏街道はとっくに過ぎ去っており、
仙剣の真下は、すでに姑蘇の街近くだった。

「この下に降りてくれ」

魏無羨が言った。

思追は、魏無羨の言う通りに、仙剣を下降させた。

「魏先輩、どうしたんですか?なぜ、ここで降りるのです?」

弟子の一人が尋ねた。

「もう雲深不知処の門限には間に合いませんが、これ以上遅れると…」

…罰が加算される。

魏無羨は、心なしか切羽詰まったような顔の弟子達の顔を見回した。

覚悟していたとはいえ、藍啓仁の厳しい罰を想像すると気が重いのだろう。

魏無羨は、腰帯に下げていた通行玉礼を思追に手渡した。

「俺の通行玉礼だ。これで、お前達は、雲深不知処の結界門を通れる。藍啓仁先生にも夷陵に行っていたことはバレない」

「なぜ、先輩の通行玉礼を私に?一緒に雲深不知処に戻らないのですか?」

手の内の通行玉礼と魏無羨を見比べて藍思追が聞いた。

「俺は、ここで用事がある。さっきの闇狩りの話は、俺が雲深不知処に戻ってから沢蕪君に話しておく。通行玉礼は、明日の昼前にでも、静室に返しに来い」

「用事とは?」

藍思追の問いに、魏無羨は一瞬返答に詰まった。

…今は、こいつらを巻き込めない。
ただでさえ、先ほどの戦闘で体力と霊力を消耗している。
それに、犬の屍傀儡と同じ術がかかった者なら、俺で対処しないと。

「私用だから、気にするな」

魏無羨が答えて、早く行け、という風に、思追達を手で払った。

思追は、いぶかし気に見ている弟子達と顔を見合わせると、魏無羨に軽く礼をした。
そして、他の弟子達と一緒に再び仙剣で雲深不知処に向かって飛び立っていった。

後に残された魏無羨は、思追達の姿が見えなくなると、すぐに裏街道の方に走り出した。



それから、しばらく時が過ぎた雲深不知処では…。


雲深不知処の就寝時刻前、
静室の門を開け、帰宅した藍忘機の姿があった。

藍忘機は周囲を見回した。

静室どころか、敷地内にも灯はついていない。
人の気配も無かった。


真っ暗闇の静室の前で。
藍忘機は、一瞬、幼い頃の記憶を蘇らせた。

幼い藍忘機は、灯のついていない静室の前に座り、ずっと母を待ち続けていた。
母が静室の扉を開けて、自分を出迎えてくれるのを。

家は暗く、閉まったままの扉は、もう永遠に開くことは無いのだと。
この家で、自分を待っていてくれた人は二度と戻ってこないのだと。

藍忘機は、いつ、はっきりと気づけたのか覚えていなかった。


『藍湛、おかえり』

今にも、扉が開いて、中から笑顔の魏無羨が出て来そうだった。

時間がたつにつれ、
そんな幻を心に描いた藍忘機の胸の内が外界の空気より冷え込んでいく。

「…魏嬰」

藍忘機の小さな呼び声が、静まり返った空間で霧散した。



(続く)



誤字、脱字、気付いたらこっそり修正してます。

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コメント、拍手コメントのお返事には時間差が出ることがあります。ご了承ください。

みつばの二次小説を読んで頂きありがとうございました。
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※この話は「邂逅」の続きになります。


背馳(2話)




魏無羨の前にいた一人は、藍景儀。
もう一人は、闇狩りで藍景儀と隊を組むことが多い姑蘇藍氏の弟子の一人。藍実暈(ランシユン)だった。
しかし、藍景儀はいつも藍思追と一緒に行動している印象だったが、今、思追の姿は無い。

…珍しい組み合わせだな。と内心で想いながら魏無羨は二人を観察した。

「驚かさないでくださいよ」

藍景儀が言った。

「そんなに驚くとは、本当にやましいことでもしていたのか?」

「違います。僕たちは今日は非番なので、休みを満喫しているのです」

「そうか。それにしては、その弁当の量、二人で食うには多すぎないか?」

竹の皮で包んだ弁当。それを二人は両手いっぱいに抱えていた。

「これは、夷陵に先に行った他の者たちの分で…」

そこまで言った藍実暈は、しまったという風に口に手をあてた。

「夷陵?」

魏無羨がいぶかし気に眉を上げた。

「なぜ、夷陵に行った者たちがいる?」

「休みの日にどこに行こうと我々の自由です」

そう胸をはって答える藍景儀に「温寧に会いにだな」と魏無羨があっさりと言った。

…おそらく、思追もそこに先に行ったのだろう。

「…分かってるなら聞かないでくださいよ」

唇をとがらせた藍景儀と違って藍実暈は困惑しきった顔をしていた。

「あの、魏先輩。どうか夷陵に行っていることを含光君様にはご内密にしてください」

おずおずと、そう願い出る藍実暈に魏無羨は不思議そうな顔をした。

「なぜだ?確かにお前達が休みの日にどこに行こうか自由だ。雲深不知処の規則にも触れてない。含光君が知っても何の不都合も無いと思うが」

「藍啓仁先生に、厳しく言いつけられているからです」

藍実暈が消え入りそうな声で言った。

「闇狩りの理由以外で夷陵に近づいてはいけない。鬼将軍に会ってはいけない。言いつけを破った者は、厳罰に処すと、そう先生から言われているのです」

魏無羨は目を丸くした。

「あの、おっさん…いや、啓仁先生が、そんなことを?」

藍実暈だけでなく、藍景儀も一緒に頷いた。

「先生は、我々姑蘇藍氏一門の弟子が鬼将軍と交流を持つのを良く思っていらっしゃらないのです」

…そうか。誤解が解けたとはいえ、姑蘇藍氏の若い弟子達が俺の術で蘇った屍傀儡に接触するのは反対なのだろう。

魏無羨は鼻の頭を指で触りながら、そう考えた。


「わかった。先生にも含光君にも黙っておいてやる」

「魏先輩」

「そのかわり、俺も夷陵に連れていけ」

「え?」

「俺も温寧に会いたい。俺を仙剣に一緒に乗せて夷陵に行くくらい、姑蘇藍氏の弟子ならば、たやすいことだろう?」

「それは、まあ、出来ますが…」

「ついでに、俺の分の弁当も1つ追加な」

「後輩にたかるんですか?この前はご馳走してくれたのに」

「この前、おごったから、今の俺の懐は弁当1つ買えない状態なんだよ。金が入ったら代金はすぐ返す。うん、これがいい」

そう言って、魏無羨は店に陳列されていた弁当包みを一つ持つと、藍景儀に渡した。

闇狩りの翌日に、自分たちだけでなく、他の仙家の弟子達全員の食事代も魏無羨が出したことを知っている藍景儀は、しぶしぶ魏無羨の分の弁当も購入した。

「他の者たちがいるのは乱葬洞か?」

「はい」

「よし、じゃあ、夷陵に出発するか。最初は景儀の仙剣に乗っていく。
疲れたら、交代していいから」

「…あの、前から聞こうと思っていたんですが」

藍実暈がおずおずと言った。

「魏先輩は、なぜ、ご自分の仙剣を所持されていらっしゃらないのですか?」

「・・・・・・」

「魏先輩は強い術が使えるからですか?でも、それで仙剣を持てば、さらに鬼に金棒だと思うのですが…」

「実暈(シユン)」

いつもは、不用意な発言で藍思追につっこまれる事の多い藍景儀だったが、さすがに何かを感じ取ったのだろう。藍実暈を窘めるように名前を呼び質問をやめさせようとした。

「俺の仙剣は、今は他の者に預けている。だから所持していない」

魏無羨が答えた。


答えのようで、肝心なところは曖昧な返答だった。

しかし、他の者に預けている。という言葉で、それが魏無羨にとって、昔の因縁に関わることなのだろうと察した藍実暈はそれ以上聞くことをやめたようだった。

…物分かりがいいのは、さすが姑蘇藍氏一門。沢蕪君や先生がよく教育している。

魏無羨は、心の内で感心しながら、「弁当は俺が持つ」と言って、藍景儀と藍実暈から竹包の弁当の山を受け取った。

そして、人通りが少なく、仙剣がすぐに飛び立てる事が出来る場所に、二人の弟子達と一緒に移動しようとした時。


建物と建物の間に、魏無羨は、これまた見知った姿を発見した。

仲英だった。

「仲…」

思わず、声をかけようとした魏無羨は、仲英が一人では無いことに気づいた。

仲英の長身の影になって、はっきりとは見えなかったが、明らかに女人だった。
仲英と何か話をしている。

「魏先輩?どなたかお知り合いでもいましたか?」

足を止めて、仲英の方を注視している魏無羨に、藍景儀と藍実暈が不思議そうに声をかけた。

こちらに気づいていない仲英の邪魔をしないように、魏無羨が弟子達を促した。
そして、声をかけずに去ろうとした時、仲英がこちらの方に顔を向けた。

「よお、魏嬰」

魏無羨に気づいた仲英は、親し気に名を呼び手を上げた。

仲英の影にいた女性は、その声でチラリとこちらの方を気にする素振りを見せた。
そして、仲英に頭を下げると、そそくさとその場を去っていった。
その後ろ姿を一瞬見た魏無羨は、女性が仙剣を手にしていることに気づいた。

…仙女?

建物の影に入り、すぐに姿が見えなくなった女性にはお構い無しに、仲英が魏無羨に近づいてきた。

「また会ったな。俺に会いに来たのか?」

「いや、今日は、彼らとこれから別の所に行く用事がある」

魏無羨が後方に佇む弟子達二人に目をやって言った。

仲英は弟子達にニッと笑いかけると、二人は、自分たちより目上らしき仙術使いの仲英に慌てて揖礼した。

「そうか。じゃあ、今度また一緒に酒を飲もう。俺のいる宿の部屋にも泊りで遊びに来いよ」

「ああ。…それより、仲英。さっきの女性は良かったのか?もしかして俺、邪魔をしたか?」

「いや。かまわない。話も終わるところだったからな。それも大した話じゃない」

「もしかして、ナンパか?」

「どうかな」

魏無羨の問いに仲英がニヤリと笑った。

「姑蘇は綺麗な女性が多い。魏嬰、今度一緒に街でナンパしないか?」

仲英の軽いノリに、若い弟子達は目を丸くし、魏無羨は苦笑した。

「考えておく」

「前向きにな」

仲英は楽し気に笑うと、魏無羨に手を振って、往来の人込みの中に消えていった。

その後ろ姿を見つめて藍実暈が口を開いた。

「魏先輩のお知り合いの方ですよね?」

「ああ」

「仙術使いとお見受けしましたが、どちらの仙家の方なのですか?」

「属している仙家は無い流浪の仙術使いだそうだ」

「だそうだ、というのは?」

「俺もつい最近会って話したばかりだ」

「身元不明の仙術使いって…怪しくないですか?」

「そうか?」

…身元が分かっていても、怪しい仙術使いは沢山いるけどな。

魏無羨はそう思いながら、「彼は凄い術を会得してるし、剣術の腕も確かだ」と言った。

「手合わせでもしたのですか?」

「いや。実は、この前の闇狩りで手助けしてもらった」

「この前の闇狩りって、最近の、あの屍3体の闇狩りのことですか?でも、あの時、あの方をお見かけした覚えは無いのですが」

そう驚く藍景儀と藍実暈に、魏無羨は、「夷陵で他の者たちと合流したら話す」と言って、再び二人を促すと歩き始めた。


街から出た場所で、魏無羨は藍景儀の仙剣に乗って、夷陵まで飛んだ。

空の上で、何度も大きくぐらつきかけた藍景儀に魏無羨は、「大丈夫なのか?」と後ろから声をかけた。

「話しかけないで下さい。仙剣に他人を乗せて飛ぶなど滅多に無いので、集中しないと」

そう、切羽詰まった声で返す藍景儀。

仙剣を操るのに、全身に力が入っている様子の藍景儀に、魏無羨は内心“やれやれ”と思いながら、のんびりとした構えで藍景儀の仙剣の上に乗っていた。


近くで仙剣に乗って飛んでいた藍実暈が時折心配そうに様子を伺っていたが、魏無羨を乗せた藍景儀の仙剣は、何とか無事に夷陵の乱葬洞近くの荒れ地に到着した。

術より神経を使って疲労したのか、地面に降り立つと、藍景儀がぐったりと座り込んだ。

「お疲れ。ありがとな」

そう、労うように、藍景儀の肩をぽんぽんと叩いた魏無羨に、「不必要に他人の体に触れるのは雲深不知処の規則に反します」と藍景儀が言った。

「ここは雲深不知処じゃない。夷陵だ」

「魏先輩の昔のアジトですね」
「魏先輩が数々の魔道の術を研究されていた場所ですね」

…お前達は、一体どんな認識をしてるんだ?

魏無羨がいない間に人々や説法師の間で広まった夷陵老師の話は、半分伝説で、半分は空想で盛られた物が多かった。

世間の誤解はともかく、これから少しずつでも弟子達の勘違いは解いていこうと思った魏無羨だった。

大きなため息をついた後、魏無羨は、地面にまだへたり込んでいる藍景儀に手を貸して立たせた。
そして、藍実暈の手も借りて藍景儀を歩かせると、乱葬洞に向かった。

3人が乱葬洞につくと、そこに先に来ていた姑蘇藍氏の弟子達がガラクタを片したり、畑を耕したりしている姿が見えた。

若い弟子達ばかりが5人。全員、魏無羨と闇狩りで同行することが多い門下生たちだった。
5人は、3人の姿に気づくと、作業の手を止めた。
そして、そこに魏無羨がいることに驚いた顔をした。

「景儀、どうして、魏先輩を誘ってきたんだ?」

「姑蘇の街で弁当を買っていたら、偶然会ったんだよ。誘ったわけじゃない」

「どうして夷陵じゃなくて姑蘇の街で弁当を買ったんだよ?」

「景儀がどうしても、あの弁当屋がいいって言うから」

藍実暈が言い訳めいた説明をした。

「すごく美味しいんだ、あの店の弁当は。思追も好物だから。…あれ?思追は?」

藍景儀は、姿の見えない思追を探して、キョロキョロと辺りを見回した。


「思追は…」

誰かが言いかけた時、伏魔洞から思追が出てきた。
そして、魏無羨に気づくと、「魏先輩」と駆け寄ってきた。

「いらしたのですね」

「ああ。温寧は中か?」

「はい。今、中の片付けをしています。私も一緒に手伝いをしていて…木の話もお聞きしました」

「…そうか」

思追の魏無羨を見る眼差しで、温寧が思追にすべて打ち明けた事を知った魏無羨だった。

「その件は俺も今朝、沢蕪君と話した。沢蕪君が良い方向に取り計らってくれるだろう」

「そうですか。良かったです」

ほっと笑顔を見せた思追に、魏無羨も微笑んだ。

「思追!」

藍景儀の呼び声に思追は振り向いて藍景儀に手を振った。そして、魏無羨に頭を下げて、藍景儀の所に向かった。

魏無羨は一人、伏魔洞の中に入った。

つい、この前、多数の屍達との死闘を繰り広げ、逃げ込んだ場所ではあったが、それも何故か遠い昔のように感じられた魏無羨だった。

黒い影が岩の台座の前に佇んでいる。

「温寧」

魏無羨が呼びかけると、温寧が振り返った。

「魏公子」

「姑蘇藍氏の弟子達と一緒にアジト作りをしているのか?」

「アジト?」

キョトンとする温寧に魏無羨が苦笑して「冗談だ」と言った。

そして、温寧が見つめていた岩の台座の方に一緒に目を落とした。

「ここに魏公子が寝ていた時がありました。それに、食事をしたり、酒を飲んだり…」

「うん…そうだったな」

魏無羨が頷いた。

再び目にすれば、思い出して辛いだろうと思った。
この前来た時は、少なからず胸に来るものはあった。
しかし、今は、なぜか想像していたより穏やかな気持ちで、ここにいられる事が不思議な魏無羨だった。

「私の一族の者たちもここに眠っています」

温寧が言った。

魏無羨と温寧と共に、乱葬洞で暮らしていた人々。
金氏によって処刑された人達は、その後、この伏魔洞の血の池に沈められていた。
灰にされた温寧の姉、温情と、藍忘機によって助け出された思追以外は。

「祠堂の建て直しをするつもりです。そして、ここにも彼らが安らかに眠れるような場所と慰霊碑を作りたいと考えています」

「…辛くはないか?」

魏無羨の問いに温寧はかぶりを振った。

「思い出すと涙が出なくても、泣きたくなるような気持ちにはなります。でも…私には、この地に皆といた時間の記憶は辛くはありません。…殺されて、あのまま生を終えた記憶より、魏公子に蘇らせていただいたおかげで、再び姉や阿苑に会って、共に暮らせた。その記憶があることが救いでもあります」

それは、短い時間だった。

貧しく、つつましく、そして、世から隠れ住むように生きていたけれど、ここには、確かに人との絆と生活が存在していた。

温寧の姉、温情は、口調はきつくとも、医者という立場からだけではなく、本心から魏無羨の身体を気遣い、酒を少し控えるように進言してくれた。

共に暮らした温氏の一族たち。

『魏公子』

今は、なぜか、泣いている顔より、皆が笑っている顔が浮かぶ。

魏無羨は、生前の温情や温氏一族の者達のそんな顔を思い出し、自分が温寧と同じような気持ちでいることを感じた。

「それで…皆が生きていた時のように作物を育てたいのです。それから、夢ト(大根)も」

「夢ト(大根)?」

「はい。阿苑が考えてくれました。育てた作物を売って、祠堂や慰霊碑を建てる資金をためようと。私もいい考えだと思いました。魏公子は、どう思いますか?」

「ああ、俺もその案に賛成だ。ただ、夢トは…うん。いいんじゃないか」

…正直、夢トは見飽きた。

献舎されても、そんな記憶まで残っていたことに、心の中でため息をつきながらも、賛同を得られて嬉しそうに見える温寧に思わず笑みを浮かべた魏無羨だった。



(続く)


兄様、温寧の登場が藍湛より多いような感じですが、決して、みつばが二人押しだからではありません。←半分はそうだけど。
みつばの「陳情令」二次小説は、「忘羨」(藍湛×魏嬰)妄想小説です。ちょっと今のところ恋愛要素が足りないだけ。。。


【拍手コメントレス】

素敵な動画のご紹介ありがとうございます。
「陳情令」ファンの方のつぶやきや動画、日本でもこれから爆発的に増えそうですね♪

ブログへのご訪問ありがとうございます。
今後の二次小説更新は予約投稿が多くなるので、
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みつばの二次小説を読んで頂きありがとうございました。
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中国ドラマ「陳情令」、みつばの二次小説「背馳」(1話)です。

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「陳情令」の登場人物・名称紹介のページはこちらから(名称、説明、更新しました)

とくに初めてこのブログにいらした方は注意点を一読してから
二次小説をお読みください。

「陳情令」は現時点、日本語翻訳未公開のドラマです。(2020年3月より初放送予定)
原作「魔道祖師(作者):墨香銅臭」、アニメ「魔道祖師」をご存じない方。
これから見る予定の方は、ネタバレがありますのでご注意ください。

二次小説はドラマ50話最終回後の話になります。
また、この小説にはBL(男同士の恋愛)描写があります。
そのあたりが受け入れられる方のみお読みください。


※この話は「邂逅」の続きになります。


背馳(1話)




魏無羨は、考え事をしながら、雲深不知処の階段を下っていた。
頭の中では、「寒室」で藍曦臣とした話が繰り返されていた。


『忘機を仙督の座から廃しようとしている者たちが動き始めています』


藍曦臣も、藍忘機から特に口留めされていた話では無いのだろう。

しかし、藍忘機から仙督に関する話は聞かされていないと伝えた魏無羨に、伝えることを思案する素振りを見せていた。
藍忘機が伝えていないことを自分が話してよいのか?という風に。
藍忘機の意向を気にしていた。

しかし、話を聞いた以上、藍忘機の思惑や、藍曦臣の気遣いは、二の次になっていた魏無羨だった。

確実な筋からの情報ということは、動きにも確信と証拠があるのだろう。
もしかすると、もう相手の正体も分かっているのかもしれない。

「藍湛を仙督の座から廃しようとしている者たちというのは誰なのですが?それに、動いているとは、具体的に何をしているのですか?」


落ち着いた声ではあったが、全部教えて欲しい。という強い意志を持った魏無羨の問いかけに、藍曦臣も内情を打ち明けた。

「動いている者の正体は、今のところ判明していません。ただ、複数いる、または、組織的なものとも考えられます」

「根拠は?」

「姑蘇の中での報告は今のところありませんが、各地で、今まで封じられていた魔性の封印が何者かに解かれたり、塚が壊されたという報告が増えています。同一犯のように見えますが、離れた場所で同時期にそれは行われています。各領地の仙門の者が調査中ですが、一部では、藍忘機の仙督就任に反対する者が、声明をあげたという情報があります」

「ただ、どこの仙家の者か分からないということですか?」

「ええ。しかし、それは別段問題では無いのです」

「何故ですか?」

仙督就任の妨害活動でなくても、民の生活を脅かすようなことだった。
どこの仙術使いたちかは知らないが、稚拙な言い分の上での悪意ある行動に見えてしまう。
どうして、どこの者かは問題で無いのだろう?

そんな気持ちで藍曦臣に尋ねた魏無羨に藍曦臣は「今までの仙督達の世でも就任後によくあったことなのです」とさらりと答えた。

少なからず驚いた様子の魏無羨に藍曦臣は説明を続けた。

「どこの仙門の方が仙督に就任しても、同じような事がありました。すべての仙家、仙術使いに納得して認められる長は今までいませんでした。何らかの思惑があり、反対する者は必ず出たのです。その意思は強制できません」

岐山温氏の仙督であれ、蘭陵金氏であれ、清河聶氏家であれ。
各仙家の宗主たちが就任式で認めたとしても、その実は違う。

反対する者はいて、それは、どこの仙門で誰なのか特定できないくらい、各地に潜んでいたということなのだろう。


魏無羨自身、そんな権力と欲の陰謀に巻き込まれた当事者だったのだったが、そんな争いや思惑はどうでもいいと思っていた。

だが、今は違う。

仙督となっているのは藍忘機なのだ。

「封印を破っている愚か者たちを捕らえる手伝いを、俺にさせてください」

政治的なことは分からなくても、暴挙は止めなくてはいけない。
それだけは分かる。

そんな思いで魏無羨が、藍曦臣に言った。

すでに見えない敵に挑むような目をしている魏無羨に藍曦臣が微笑んだ。

「各地を治めている宗主にはすでに伝達済みで、動いて頂いています。いずれ魏公子にもお力をお借りする時がくるかもしれません。その時はお願いします」


静かに熱くなっているような魏無羨に、落ち着いた藍曦臣の声が届いた。


藍曦臣は、魏無羨自身に動いてほしいという意味で、この話をしたのでは無い。

ただ、藍忘機の周りで起こっていることを知っていてほしい。本当にその思いだけで打ち明けたという意図を念押ししているような言葉だった。

むしろ、魏無羨には出来るだけ、この件から離れていてほしい。

まるで、そんな風にも取れる藍曦臣の雰囲気に魏無羨は、内心ハッとなって、押し黙った。

その顔で、聡い魏無羨が、自分の話を全て汲み取ったことを藍曦臣も分かったのだろう。


「今、魏公子に私がお願いしたいことは…」

藍曦臣が言った。

「どうか、忘機のそばにいてあげて下さい」

それが、私が魏公子に望むことです。

藍曦臣の言外の言葉も魏無羨に伝わった。

…はい。

しかし、そう思いながらも、何故か、そんな簡単な返事が出てこない。
魏無羨は、ただ、コクリと藍曦臣に頷いてみせた。

藍曦臣は、そんな魏無羨に、また柔らかな笑みを浮かべた。


そんな藍曦臣との対談を終え、「寒室」を後にした魏無羨は、静室への道ではなく、雲深不知処の出口に向かって歩いていた。

「静室」で休んでいたい気分では無かった。

藍曦臣が言っていたように、今までの仙督就任の時にも同じような事があったのなら、その対処法は分かっているのかもしれない。

そして、たとえ、どんな敵であろうと、相手はあの含光君。
それだけでなく、その兄の藍曦臣、さらに後ろ盾の藍啓仁。
守りの固い1枚岩のような、姑蘇藍氏の双璧と言われる兄弟とその師匠。

嫌がらせ程度の妨害をする反対勢力など恐れるに足りないということなのだろう。

藍曦臣も各仙門の宗主たちに連絡はしてあると言っていた。
藍忘機の命が狙われているという所までは危険も迫っていないと想定している。

それにもかかわらず、なぜ、藍曦臣は魏無羨に打ち明けたのか?

藍曦臣が魏無羨に話した真意が、大切な藍忘機を守る為ということと、
魏無羨の助力をやんわりと断る理由が今一つ魏無羨の中で結びつかない。

ただ、藍曦臣には、藍忘機の実兄としての想いと宗主としての立場からの考えがある。

それが分かった魏無羨は納得するしかなかった。

でも、不思議なのは、藍忘機だ。

…どうして、藍湛は、俺に話してくれなかった?

魏無羨は歩きながら腕組みをした。

藍曦臣の話は、藍忘機からは、1度も聞いたことの無い話だった。

…忙しいとはいえ、同じ家「静室」で一緒に暮らしているのだ。
雲深不知処に来てから、藍湛が俺に話す機会が今まで全く無かったわけではないはず。

藍曦臣の言う通り、藍湛は、精神も肉体も鍛え上げられた、比類無き強さを持った仙術使いではあるけど、今は仙界全体の長という重責がある身。

長い年月、あらゆる場所に現れて闇狩りをし、沢山の人達や仙家を助けてきたと聞く。
仙督となった今も、各地に飛び回っているのは、きっとその為だろう。

その上、慣れない執政は、想像以上に藍湛に負荷を与えているのでは無いだろうか?

魏無羨の脳裏に、清室を出て遠ざかっていく藍忘機の白い後ろ姿が浮かんだ。

疲れの色を隠した精悍な顔。
前を向いてまっすぐに歩いていく藍忘機の姿は凛々しく眩しかった。

…藍湛が俺に話さなかった理由はどうあれ、

藍湛が仙督である世を、これ以上混乱させたくない。
今は自分が出来ることをして、藍湛の負担にならないようにしたい。


魏無羨は、そんな気持ちで、思考を切り替えると、
今度は山で遭遇した犬の屍傀儡と、目撃された、老婆の屍傀儡の事を考えた。

自分が編み出した術が半端にほどこされた、犬の屍傀儡。

…もしかして、老婆の方も、誰かに術を施された屍傀儡?

仲英の話の中では、通常の屍と違う動きをしていたという。
空師の親子が会った屍傀儡と同じ可能性が高い。

魏無羨は、そこまで考えると、雲深不知処を出て、新たな情報を得るために姑蘇の街に向かった。

姑蘇の街に入った魏無羨は、ついでに知りたい情報を持っていそうな場所を訪ねた。

建造物の為の材木を扱い、職人たちも出入りしている場所。
それは姑蘇の雲深不知処近郊の街では川岸にある一番大きく、かつ昔からある問屋だった。

魏無羨は、そこで、温氏の祠堂を建て直したいという温寧の為に、建造物の材料になる物の相場の値段を聞いた。

「どこか、資材を安く譲ってくれるような所は無いか?」

魏無羨が問屋の店主に聞いた。

「うーん…端材なら譲ってくれるところはあるだろうが、姑蘇藍氏で扱っている資材の相場は昔から他より高い。姑蘇で仙府のある雲深不知処の施設を建て直す時も入手が難しかったくらいだ」

店主が言った。

「十数年前、雲深不知処の姑蘇藍氏が岐山温氏に襲撃されて、中の建屋がほとんど破壊された事があったんだが、その時、他の仙家からも援助を受けて建て直しをしたのを覚えている。わしも片付けの人足で襲撃後の雲深不知処に行ったが、目も当てられないありさまだった」

「・・・・・・」

昔、玄武洞で藍忘機が話していたことだろう。

「ああなっては、必要な物は資材だけでない。藍家は裕福だが、あの時期は、襲撃された時にほとんど略奪されていた。後に取り返したとは聞いたが、しばらくは、さすがの姑蘇藍氏も厳しかったようだ。その時、今の仙督様の婚姻相手と言われている玉家も多額の援助をしたと聞いたよ」

昔の温氏の襲撃の話から、藍忘機の噂話に出ていた玉家が出たことに、魏無羨は驚いた。

「玉家って…聶家の親戚とかいう仙家のか?」

「ああ、清河聶氏のある不浄世の中でも指折りの富豪の仙家だと聞いた。そういう繋がりもあって、姑蘇藍氏の仙督が玉家と婚姻関係を結ぼうとしているんじゃないかって、わしらの仲間うちは噂してるけどな」

「それは政略結婚ってやつか?」

「いや。そこまでは分からないが、大きな家に生まれた者は、婚姻相手も自分では選べないことも出てくるだろう?仙督ともなれば尚更じゃないのか?」

店主の問いかけに魏無羨は言葉につまった。

魏無羨の師姉、江厭離の婚姻も、親同士が勝手に決めたことではあった。
だからこそ、心の内で反対していた所もあったのだったが、後に当事者たちは、互いに愛し合っていたことも分かって婚姻した。

そんな話ならともかく、中には、金光瑤のような婚姻もあるのだろう。

本来ならば避けなければならない縁談。望まない婚姻。

姑蘇藍氏も、昔、他の仙家たちに援助されたからといって、おそらく、とっくに全額返済しているだろう。
義理や後ろ盾や聶家との親戚関係を結ぶ目的の為に、藍家が政略結婚を進めることはあるのだろうか?
しかし、もし、当人同士、合意の上の縁談だったら…?

「…いや、分かった。ありがとう」

魏無羨は、「今度、また来い。端材を安く譲ってくれる所を聞いとくよ」と、気さくに声をかける店主に別れをつげて、問屋を後にした。

魏無羨は、しばしの間、他の店に立ち寄って話を聞くことも忘れ、ぼんやりとしながら街の往来を歩いていた。

考えていたのは、温寧の為の資材の事ではなく、藍忘機の婚姻話。

他の仙家の者や姑蘇藍氏の弟子達、温寧からも、藍忘機の婚姻の噂話を聞いてはいたが、直接聞くのは初めての魏無羨だった。

しかも、藍家と玉家に、姑蘇藍氏の仙女修行以外につながりがあったことも知った。

…あの襲撃の時、そんなことがあったんだな。

魏無羨は、玄武洞で、目を閉じている藍忘機が見せた涙を思い出した。

…生まれ育った場所が燃えるのを見るのは辛かっただろう。
雲深不知処の中でも、施設から離れた場所にあった藍忘機の母親が住んでいた「静室」は無事で良かったが…。

そこまで考えた魏無羨は、ハッとなった。

肝心なことを問屋の店主から聞きそびれたことを思い出した。

…そうだ。裏街道に出たという老婆の屍傀儡の話を聞くんだった。

魏無羨は、慌てて、裏街道を通る旅商人が立ち寄りそうな店を探した。

「ん?」


周囲を見渡した魏無羨は、弁当屋の露店の前に、見知った者たちがいることに気づいた。

二人とも白装束に銀色の仙剣。頭の抹額。姑蘇藍氏一門の弟子達だった。

しかも…。

魏無羨はこっそりと、二人の背後に近づいた。


「これこれ、これが食べたかったんだ」

「景儀。そんなのあっちの街でも買えたよ」

「いや。姑蘇のこの店が僕は一番美味しいと思う」

「じゃあ、後は、先に行った彼らの分まで買って…」


「ごほん。お前達、雲深不知処の規則を忘れたのか?街での買い食いは禁止されておる」

低い藍啓仁の声に、姑蘇藍氏の弟子達は、ビクっと体を硬直させると、
おそるおそる後ろを振り返った。

「罰として、逆立ちして規則100条まで書写しなさい」

弟子達の後ろに、藍啓仁の声色をまねて話す魏無羨が立っていた。

「魏先輩」

二人の弟子達は、ほっと胸をなでおろすと同時に、楽し気に笑っている魏無羨を恨めしそうに見た。


(続く)



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「陳情令」みつばの二次小説シリーズの次作品。
明日、1話を先行更新します。というお知らせです。

もう書き上げているので、先行と書いておいて、続きの更新がかなり空くということはありませんが、連日更新出来るかは分かりません。
更新まで、もうしばらくお待ちください♪



【拍手コメント的な雑記】

白い拍手からのコメントレス。そうです。もう周囲の人は二人のただならぬ関係に気づいているのです。
たとえ、BL要素を抜いたドラマ制作をされていようとBLアンテナを持った乙女だけでなく、一般人でも気づくほどです(笑)

ピンクの拍手でコメントを送ってくださった方、ありがとうございます。

みつばもビリ…見てました♪視聴者の熱いコメントが沢山流れて、面白いのですが、時々、流れ過ぎて画面が見えないので(汗)、「弾」をオフにしてます。
博君一肖の動画も爆発的に増えていて、もう追えません。←追っていると1日それで終わる。
どれも素晴らしいですね♪
コメントで気づきました。楊洋さん!!楊洋さんですね!
あの星光…で、博君一肖の横にいた人!うわっ。勘違い。ブログ記事でも間違って書いてましたね。
あのイケメンさん、どなたですか?って聞いた時、「三生三世」の人だよって教えてもらったから、てっきり「三生三世枕上書」の方かと思ったら、映画版の「三生三世十里桃花」の夜華役。つまり、みつばの好きな楊洋(ヤンヤン)さんだった!!←日本では、映画のタイトル変えられてます。
なぜ、気づかなかったみつば(汗)
ショートカットにされているせいもあったけど、たぶん博君一肖の方にばかり意識をとられて、みつばが中国俳優さんの中で、いや、今までで、一番理想のタイプの美形さんだと思っていた俳優さんを見逃すなんて。(過去記事「四大名捕」参照)

ああ、そうだったんだ。王一博さん。肖戦さん。そして、楊洋さん。みつばの中で奇跡のトリプルショットだったんですね。あの映像。
楊洋さんのドラマを見ていると物語とか、台詞が全く入ってこないんです。楊洋さんに見惚れるあまり(苦笑)「旋風少女」もちゃんと見たいな~と思っていたところだったのですが。

…博君一肖と何かありました?もうこの3人なら妄想だろうと、何だろうと、かまいません。
妄想の中でも、みつばは一番が誰か選べません。

はっ。萌えるあまり、拍手コメントレスから脱線してみつば妄想が駄々洩れました。

それでは、次は「陳情令」の二次小説更新で♪

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中国ドラマ「陳情令」、全50話。

これを、特別編集した、特別編20話。

ネタバレ部分あるので、未視聴の方はご注意ください。


ざっと、全部見られました。
新たに加えられたシーン、主に藍忘機が魏無羨を長く見つめたりしているシーンや冷泉の水浴びシーン等は、目を皿のようにして見ましたが(笑)

個人の感想としては、やっぱり、「忘羨」編集でした。

本編の肝心エピソードや物語の流れが切られているところ多すぎて、
話の流れが途中分からなくなっているところもありました。

本編を全部視聴した人向けですね。

「特別編」だけ視聴すると、藍忘機と魏無羨が絆を深めていく所は分かりやすいですけど。


ざっくり感想2つ。(注)みつば視点で。

やっぱり、藍忘機は、酔っていても意識あるみたいな(笑)

あの、他人の家に不法侵入&その家の鶏を魏無羨にプレゼント♪のエピソード。

「藍湛、どうしたんだよ?何やってるんだよ?」と、勝手に他人の家に入っていった藍忘機に魏無羨がうろたえながら話しかけているシーン。

藍忘機が、唇に指をあてて、「静かに」というジェスチャーをします。

あれ、本編ではカットされてました。
そうですよね。
だって、あのシーン、藍忘機が完全に他人の家だと分かって入っていると自覚しているということになりますから。
なのに、さらに、鶏を取り出して、魏無羨に「あげる♪」と渡す。おいおい。藍湛っ!

「静かに」というシーンが無かったら、まだ泥酔していて、魏無羨にあげたい鶏しか見てなかったことになるけど。


それから、一番気になっていた、ドラマのラストシーン。

こちらも編集されてました。
20話の冒頭で「藍湛、行かないの?(一緒に旅に)」と魏無羨が立ち止っている藍忘機に聞くシーンはありました。

でも、あの、みつばが「ちょっと、待て、まてーいっ」ってなった高原での別離シーンはカット。

それで、二人で、雲深不知処の滝のそばに並んでいるシーンで終わったので。
一緒に旅には出なかったけど、これからも二人で一緒にいる。って、解釈も出来そうに終わっています。

やっぱり、「忘羨」編集でした♪


さて、3月1日の「陳情令」先行日本初放送、1話(おそらく日本語字幕かな?)は、見られないけど、それまでに、みつばの「陳情令」二次小説次作は更新したいところ。

近日中には、次作の1話だけでも先行でアップしたい♪という願望をもちつつ。

…現実の会議で脳みそがウニ状態だけど、しなければいけない事があるので、妄想小説構成は落ち着いたらしたいな。みつばには、ブログの世界の方が現実的なんだけどな。←こらこら。

ちょっと、鬼ヶ島に出張に行ってきます。
戻ってきて、二次小説更新目途がついたら、またお知らせします。
ブログへのご訪問、拍手、拍手コメントありがとうございます♪

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以前ブログで画像をアップしたラテアートとは違うカフェのお店。

そこは、マスターが、お客さんのイメージで、ラテアートを作成してくれるそうです。
なので、お任せで、どんなアートが出てくるのかお楽しみ♪

それで、みつばが作って頂いたのが・・・


画像を見る方は「続きを読む」からどうぞ。

続きを読む

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中国ドラマ「陳情令」みつばの二次創作、4コマ漫画です。

この記事でも書きましたが、

「陳情令」の原作「魔道祖師」(作者:墨香銅臭)」の番外編で道侶(恋人関係)の藍忘機×魏無羨、同棲カップル。

・ 一緒に風呂に入っていて、よく風呂を壊す。
・ 時々(よく?)、雲深不知処の森の中で愛を交わす。

という設定を「陳情令」の藍忘機×魏無羨で妄想してみました♪

みつばの二次小説では、寝台の上でも愛を交わしてますが、風呂を壊すくらいだから、ドラマで見えてる木製の寝台も、大の男カップルが激しい事をしたら壊れるんじゃないの?という疑惑が。

しかし、実は、こんな秘密がありました~、な、おバカなみつば妄想漫画です。


二次創作の4コマ漫画を見る注意点は、二次小説の注意点と同じです。「陳情令」二次小説INDEX参照。
また、初めていらした方は、ブログを読む注意点を一読してからお願いします。(ジャンルは違っても内容は同じです)

【警告】今回の漫画はBLの大人向け描写あります。


なので、4コマ漫画を見る方は、そのあたりを了承してから、
「続きを読む」からどうぞ。

裏箱系(大人向け)漫画なので、周囲に人がいないことを確かめてから、お願いします。



続きを読む

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ちょっと、大人話考察雑記です。
なので、精神的に大人の方だけお読みください。
また、「魔道祖師」のネタバレも含まれます。



「陳情令」の原作「魔道祖師」の番外編では、恋人(道侶)関係の藍忘機と魏無羨のラブラブ生活が描かれています♪
詳しい描写は無くても、会話の中にも、その模様がちりばめられてますが。

みつばは、ちょっと疑問に思ったところがいくつか。

まず、風呂のこと。

二人で一緒に入ると、イチャイチャしている内に、藍忘機が風呂を壊してしまうっていう話。
しかも何回も。普通2回くらい同じことしたら(本編中に宿屋の風呂でやらかした時は酔っていたから覚えてないにしても)学習しそうな感じです。
しかも、藍忘機って頭がとてもいいってキャラ設定のはず。
13年間(魔道祖師)、魏無羨がいない時期に、体を鍛え続けて、脳筋になったわけじゃなく、おそらく溺愛する魏無羨に誘われたら理性が効かなくなっちゃうのでしょう。
そう考えると、納得します。
魏無羨は天才って(?)キャラ設定だと思っていたけど、やりたい事を素直に行動する人みたいなので、風呂が壊れようがどうしようが気にしないのかも。

それと、愛の営み場所。

二人の会話か魏無羨の心の声だったか分かりませんが、結構、外で“している“ような事。
外…雲深不知処の森の中とかでこっそりと。
二人の初体験場所も外でしたが。小説でこの部分を読んだ時。

さすが、


大陸の漢(おとこ)カップルは、愛の交わし方もダイナミック!


…って思いました。
BL物がそうなのか?それとも、藍忘機×魏無羨のカップルがそうなのか、分かりません。

壮大な自然の中で営むと解放感なのかな?

原作の別の部分で、「静室」でいちゃつこうとした魏無羨に、
「叔父さんが帰ってきているから」とか言っている藍忘機のシーンがあった気がします。
藍忘機の叔父の藍啓仁の私邸は、どうやら「静室」の近くにあるらしいです。
だから、叔父さんが家にいる時は、気を使って、愛を交わさないといけないみたい。

でも、どれだけ普段、大暴れしてるんだろうこの二人。
…いえ、大暴れしているのは藍忘機で、魏無羨は大声出しているのかな?(笑)

しかし、ドラマ「陳情令」では、藍啓仁の部屋と「静室」はかなり離れているような感じです。心おきなく出来るね♪←あからさま。


「魔道祖師」では、そういう意味もあって、
思いっきりするために雲深不知処の森の中で“してるの”かな?ってことで考えたみつばなのですが。

「陳情令」で藍忘機と魏無羨が恋人になった後を妄想した時。

「魔道祖師」でみつばが不思議に思ったところを、考察して勝手に妄想した話があります。

でも、あまりにもおバカな妄想なので、これは4コマ漫画行きネタで。

コメディが強い妄想創作物は、みつばの場合4コマ漫画にいきます。

そして、4コマ漫画のキャラは二次小説のキャラとは違い、若干、崩壊気味。
とくに藍忘機が。

みつばの二次小説では、普段クールだけど、内心、嫉妬深かったり、激しかったり、ドS的な事もする。でも、魏無羨を溺愛し大切にしている藍忘機♪ってキャラクターなのですが、4コマ漫画では、藍忘機は、おぼっちゃま育ちゆえの大天然ボケがさく裂するネタばかりの予定です。
4コマ漫画の魏無羨は、そんな藍忘機を優しくつっこみ、ときには、大きな包容力で見守るキャラになってます。

二次小説の次作も少しずつ書き進めてますが、長編に時間がかかっている時。
構成に手間取り、このままだとしばらく小説はアップ出来ないなって時は、ブログに4コマ漫画創作物が入るみつばです。←今まさに。

でも、漫画更新も間に合わなかったので、また次回。



【拍手コメントレス】

初めてコメント頂いた魔道祖師ファンの方へ。
コメントありがとうございます。原作と役者さん達の昔からのファンという強者さんに二次小説を読んで頂けて、恐縮です。

原作好きだと、実写化と聞くとドキドキしますよね。まず、自分のイメージと離れてしまうって怖さがあります。でも主役さん達のファンだったら許せるかも。

みつばも、実は、そうなんです!あの紹介して頂いた画像!もう、妄想の中、そのものの藍忘機で感動しました。
ブログでは語ったか忘れましたが、中国の陳情令イベントの中で王一博さんと肖戦さんが逆の役で演じましたことありましたよね?あの抹額のエピソードを。肖戦さんが藍忘機で、王一博さんが魏無羨の役を演じてました。

みつばは、ドラマ見てから原作小説読んだのですが、原作読んだ後、主役のお二人が逆を演じても良かったのかな?って思ったことがありました。藍忘機役の王一博さんのリアルの現代版の姿が、みつばが魔道祖師を読んだ時の魏無羨のイメージにぴったりだったからです。

運動神経良くて、スポーツ何でもできて、色気があって、笑い方もキュートで。やんちゃな美青年。魏無羨がそんなイメージだったからです。

対して、リアルだと背が少し高めの肖戦さんは、可愛い♪面とかっこいい!面がある方だったので、藍忘機を演じても不思議で無い気もしたのです。

ただ…どっちにしても、wyさんが攻めに見えているみつばには、友情物なら良いのですが、この二人をカップル妄想するなら、やっぱり藍忘機はwy、魏無羨はxzさんかもしれません。←ここにきてイニシャルに。

ドラマから入ったみつばは、ドラマ「陳情令」と原作の「魔道祖師」と設定やキャラがちょっと違っても、どっちの藍忘機×魏無羨も好きですが、もし、原作から入っていたら、主役のお二人も知らない状態だったので、違う役者さん達で妄想したかもしれません。やっぱり攻めの方が少し背が高い方がいいかな…な気持ちで。
二次小説、妄想の世界では、身長に関して、同じくらいか藍忘機の方は魔道祖師設定で考えてます(笑)

いつもコメント送ってくださっている方も、ありがとうございます!
みつばは、「魔道祖師」の公式漫画版が好きです!どこまでラブシーンを描いて頂けるか分かりませんが(規制あるかな)これからも楽しみにしています。アニメ版のシーズン3もいつ公開かな~…。

検事プリンセスファンの方へ

コメントありがとうございます!
二次小説更新。本当に長い間お待たせしてすみません。
検事プリンセスの二次小説、今でも読者の方が2名(みつばを含む)は、いるということが分かったので、最後の1人になるまで続ける、公約をまだ継続させられそうです♪
もう、中の役者さん達の情報や出演されている新ドラマの話も全く知らない(←元々)状態のみつばなのですが、きっと10年たった今でも素敵なのでしょうね。
あの頃、10代(中・高生)だったブログの読者さん達も結婚してお母さんの方もいるかしら?
年を取りましたね、私たちも(しんみり)←でも、心はいつまでも乙女ですよね!

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「陳情令」二次小説と4コマ漫画のINDEXを更新しました。

「陳情令」二次小説INDEX

・「藍湛生日快乐」
・「邂逅」1~5話

「陳情令」イラストINDEX

・4コマ漫画「陳情香炉」



それから、この場で、「陳情令」記事内で、思いっきり誤字ってたところをご報告。

藍忘機の私邸。みつばは最初の方の記事ではちゃんと「静室」って書いていたのですが、
途中から「清室」になっています。
二次小説の「闇香炉」のあたりは、「静室」になっているのですが、その後、二次小説だけでなく、雑記も全部「清室」になってます。

みつばが「せいしつ」って打っていたから、いつのまにか誤字って、思いこみでそのままに。
これは、中国語漢字が日本語漢字になっても「静室」が正しいです。

ざっと見直しただけでも、相当量、手直ししないとダメみたい(涙)
一括変換すると、文章内で名称以外のところも変換されてしまうかな…。

今までの二次小説読む方は「清室」は「静室」のことねって、温かい目で見てください。
余裕がある時に、少しずつ直す…かもです。

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