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韓国ドラマ「火の女神ジョンイ」。



当時、テレビ放映で見ていたドラマの、切ない最終回に心動かされて、その後を妄想した話を突発的に書きました。



「火の女神ジョンイ」二次小説カテゴリ。

「火の女神ジョンイ」二次小説(リンク)

〇「永遠の器」 1話 2話 3話 4話


他の韓国ドラマでも、よく登場する「光海君」(歴史上実在した方)。

フィクションではあるのですが、「火の女神ジョンイ」で、陶工職人のヒロインと、身分違いの切ない恋に落ちる話です。

史実もあるので、二人が結ばれないだろうことは、薄々想像は出来ていて。
さらに、国が関わる描写があったので、当時は複雑な心境で視聴していました。

公式では、あのまま別れて、永遠に会えない二人という設定でしょう。

最終回のラストシーンが、あまりにも切なかったので、
浮かんだ妄想を、二次小説に書き起こしました。

全4回の短い二次小説。

ラスト話から年月がたった後。
現実なのか、夢オチなのか分からない物語になっています。

これで完結ではあったのですが、実は、二次小説は、おまけでもう1話ありました。

二人が夫婦となり、日本の陶器製造所で「陶工職人」として共に暮らしているという後日談です。

以下、幻となった、みつばの二次妄想世界。



【「永遠の器」おまけ話】

<未公開二次小説。あらすじ>

ユ・ジョン(二次小説の日本名は「千代」)を追いかけ、日本に来た「光海君」。

「光海君」も、日本名に改名し、陶工職人の集落の中で、職人として暮らし始める。

周囲には、千代(ジョン)とは、生き別れた夫婦という説明をしている。

改めて、夫婦の契りを結んだ、千代と光海君。

やがて、千代は、光海君の子を宿し、高齢ながら、初めての出産を迎えようとしていた。

臨月期のジョンと光海君が、夕暮れの丘の道を歩きながら、会話をしている。

子の名前を考えながら、光海君は、「生まれてくる子の為に作りたい器がある」という。

ジョンは、「私にもまだ作ってくれたことは無いのに」と言って、拗ねたそぶりをしながら嬉しそう。

「初めてする食事の入れ物が、お父さんが作ってくれる器とは。この子は幸せです」

そう言ったジョンに、光海君は、「私も幸せだ」と言って微笑む。

ジョンは、膨らんだお腹を両手で抱き、光海君は、ジョンの背に手をそえる。

そして、寄り添いながら、集落への帰路を歩いていく。


(終わり)


・・・という、内容でした。

ここまであらすじ書くなら、もう小説に起こしちゃってもいいくらい短編話だったのですけど(苦笑)

「火の女神ジョンイ」は、今、みつばの手元に何の資料も残っていないのです。

二次小説は、視聴した記憶とドラマの最終回だけを材料に書いていました。

唯一残していたドラマ最終回、録画の入っていたテレビは昨年、廃棄してしまい。

現在は、過去の「右脳くん」が見せてくれた妄想映像の記憶だけが頼りで、ドラマ設定も名称等も登場人物も忘れているので、小説には起こしずらくなっていました。

そんなわけもあって。
いつか、書こうと思いながら、書けずにいた「火の女神ジョンイ」最後の二次的妄想世界。

ジョンと光海君の二人は、もちろんですが、
ユクトとファリョンの二人にも、妄想の中で光に満ちた未来をあげたかった想いがあります。

ファリョンは、ドラマの中で主人公のジョンにとっては、あまりいい立ち位置でない女性でした。友のジョンに沢山意地悪もしたし、悪いこともしてきた。ファリョンが愛した人が、ジョンを愛していたという関係でもあったから。

ユクトは、ジョンの母違いの兄ですが、ジョンとは、陶器職人としてライバル関係でいろいろなこともありました。

あの二人の、その後も二次小説の中で描けて良かったです。

ドラマ内容の記憶は薄らいでいるのですが、ドラマを見ていた時の感動とときめきは、ずっと忘れることは無いでしょう。

「火の女神ジョンイ」を制作してくださった皆様。
脚本家さん。役者さん、スタッフさん。
「火の女神ジョンイ」を日本で放送するのに尽力してくださった皆様。
翻訳さん、声優さん、スタッフさん。

素晴らしいドラマを見せていただき、ありがとうございました!

ジョンと光海君。
妄想の世界で、これからも続く、二人の幸せと愛を祈って。

ひとまず。これにて。

「火の女神ジョンイ」の二次的妄想世界は、「みつばのたまて箱」の「蔵」の中で、封印させていただきます。

「火の女神ジョンイ」を視聴していて、
みつばと同じようにドラマと、ジョン&光海君が好きだった方。

このブログの二次小説を読んでくださっていた読者さま。

改めて、ありがとうございました!


「火の女神ジョンイ」封印箱の上に添える花。

みつばが撮った写真。
みつばが、一番好きな花の画像を置いておきます。
なんとなく、ジョンにも似合う花だと思っていました。
シャガという花です。


シャガ(著莪)
syaga.jpg

幼い時から好きだった花なのですが、これを機に調べて初めて花言葉を知りました。
二次小説でも、必ずといっていいほど花言葉を出すみつばには珍しい。

・・・うん!いい花言葉です!
みつばにぴったり!(?)(笑)


二次小説封印式、第二、第三・・・も予定しています。

みつばの中で、11年近く続けたブログのけじめというか、卒業の儀式みたいなものなので、生温かい目←(笑)で見守ってください。

封印式といっても、今までブログで更新したものを、すぐに全て取り下げるのではないのですが、そのジャンル内の未公開二次小説、プロットは無期限封印(未発表を決定)という形にする予定です。

最終決断。6月20日まで、まだ時間があるので、完結目指している二次創作活動を優先しつつ、完全封印するかは、もう少し考えます。

ブログへのご訪問ありがとうございました。

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韓国ドラマ「火の女神ジョンイ」の二次小説「永遠の器」の最終話です。
最終回のラストからの続き、としてお読みください。

このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。


「火の女神ジョンイ」最終回、ラストの方のあらすじ。

王の次男、光海君と、宮中の陶器製造施設「分院」の女陶工職人、ユ・ジョン。
身分違いでありながら、幼い頃に出会った時から惹かれあい、密かに想いあっていた二人。
倭国との戦の中、光海君は世子となり戦場に赴く。そこで初めて、光海君に自分の想いを伝えるジョンだったが、分院の仲間を救う為に倭国に行くことを決め、一人国を去っていった。ジョンを必死に追った光海君だったが、ジョンはすでに船出した後だった。



永遠の器(最終話)



「ああ…シム・ジョンスさん…」

グッピは、眠気眼を手で擦ると辺りを見渡した。

そこは、器を作る工房の外の作業場だった。
しかし、そこは分院ではなく、都から離れた山林の中の窯。
グッピとジョンス、他数名の職人達で作った共同の小さな作業場だった。

あれから・・・
倭国との戦の後も、宮廷の陶器製造所である分院はしばらく閉鎖されていた。

そして、ジョンのおかげで、倭の国に連れていかれる事のなかった分院の仲間達も
混乱の最中散り散りになっていた。
ある者は、家族と都を離れ、ある者は器作りを辞めて別の職についたようだった。

ようやく分院が再開されるという知らせがあった時には、
もうグッピもジョンスも分院に戻る気を失くしていた。

分院でなくとも、器は作れる。
民の使う器を民のために。民の住む場所で。

あの、ユ・ジョンが一時期、そうして器を作っていたように。

そんな志を同じくする仲間が集まって、今、グッピとジョンスのいる窯が出来た。

分院で培った技で作った陶器は評判も上々だったが、
あくまで日常品として安価に売り、グッピもジョンスも器を作りながら、細々と生計を立てていた。


ジョンスに起こされたグッピだったが、
どうやら、昼食をとった後、作業台につっぷして眠っていたらしかった。

「ジョンスさん。今さっき、懐かしい名で呼びましたね」

「ああ。オ錬正。何度呼んでも返事が無かったからな」

「確かに、オ錬正の方が、長い間呼ばれていましたから。
それで、体の心配をして起こしてくださったのですか?」

「いや、それもあるのだが、今日は早く作業を終えて、家に帰りたいのだ。
それで、お願いしたいこともあってな。今夜は娘家族が家に来るんだ」

「そうですか。確か、先月三人目のお孫さんがお生まれになったんですよね。
娘さんと婿殿もお元気ですか?」

「ああ、可愛い孫たちもファリョンもユクト殿も元気だ」

そう言って、ジョンスは相好を崩した。

かつて、シム・ジョンスの娘、ファリョンは、自身の欲の為に、
親友、ジョンを裏切り、恩人である商団のソン行首を死に追いやっていた。

その結果、愛する男、キム・テドはいなくなり、商団の行首を追われた。

そんなファリョンをずっと支えていたのが、ジョンの母違いの兄、イ・ユクトだった。

ユクトは、ファリョンにずっと利用されていた事を知ってからも、
ファリョンを気にかけていた。

戦の混乱のさなか、ジョンスと共にようやく探し出したファリョンは、
すべてを失くし、自暴自棄になっていた。

父親であるジョンスの励ましも叱咤ももう耳に出来る状態で無かったファリョン。

そんなファリョンを見捨てず、側にいて見守り続けていたユクト。
ユクトも又、分院には戻らなかった。

『イ辺首(ピョンス)、今後の分院をお願いします』

最後のジョンの頼みでもあったが、ユクトはもう、自分が分院の辺首に立つ者で無いと自覚していた。

ユクトは、自ら窯をたちあげて、器を作り始めた。

そして、毎日、ファリョンの様子を見に行った。

何も責めず、何も願わない。
ただ、ファリョンが元気になってくれたら嬉しいと。

器の話や、その器を買いに来る人々。四季の移り変わり、街の様子。
そんな話を毎日しにくるユクトに、ファリョンにも少しずつ変化が現れた。

食事をとり、身の周りの事を出来るようになり、
そして、ジョンスとも話をするようになったファリョン。

ようやく笑顔が出る頃、ファリョンはユクトの仕事を手伝うようになっていた。

そこから、二人が夫婦になるまでには、ごく自然の流れだった。

今では、窯の近くに住まいを構え、3人の子供にも恵まれていた。

ジョンスは、娘夫婦と住まいは別にしていたが、
頻繁にお互いの家を出入りして、仲良く交流していた。


「あの頃の、分院にいたユクト殿を思い出すと、今のユクト殿とあまりにも違うので、
別人じゃないかと思ってしまいます」

グッピの言葉にジョンスが頷いた。

「確かに別人のようだ。だが、器を作る腕は今でも素晴らしい。
きっと国1番と言ってもいいだろう。それに、もともと誠実な男ではあったのだ。
父親や、あの場所の顕示欲が彼の性根を曇らせていただけなのかもしれない」

「そうですね」

「しかし、うむ。分院か。懐かしいな」

「懐かしいといえば…」

グッピはフフッと思い出し笑いをした。

「また、先ほど、眠っている時に夢を見ました」

「夢?もしかして、またジョンの夢か」

「はい。あの子の夢でした。それも昔の夢ではなくて、
今のあの子の夢です」

グッピは、よくジョンの夢を見たと言って、ジョンスに話して聞かせていた。

それは、ジョンが倭の国に行ってから、
そこで暮らす姿だった。

倭国に行った先人として、窯の集落の人々を導いていったジョン。

倭国の名をつけられ、
苦労と年月を重ねていったジョン。

「チヨという名は、どうやら、最初は、千の器を与える女、という意味でジョンにつけられた名らしいです。それが、『千年の器を作る人』、という千代になったようで」

遠い目をして、まるで、本当に見てきたかのように語るグッピ。


「ジョンらしい名じゃないか」

「ええ。他国に行っても、あの子はあの子です。
いい器を作る事を第一に考えて」

「それで、今日、見た夢ではジョンはどんな様子だったのだ?」

「それが…あの方と一緒に器を作っていました」

グッピの言う、あの方というのが誰のことがジョンスには分かった。

かつての光海君。

宮廷の分院の外とはいえ、その名を口にする事を控えなければならないほど、
情勢は昔と大きく変わっていた。


国の情勢を建て直す為に、世子となっていた光海君が奔走していた事は
噂でしか知らず、その後、王となってからは、庶民の中で暮らしていたグッピやジョンスにとって、ほとんど知らない世界の人となっていた。

元々が、高貴な身分の方ではあったものの、
分院で毎日のように、その姿を目にしていた時代が、それこそ夢のように思えた二人だった。

そんな光海君が、分院を訪れるたびに、真っ先に誰かの姿を探していたことに、
グッピもジョンスも気づいていた。

「あの方は、いつもジョンの姿を目で追っていらっしゃったな」

「ジョンもですよ。本人たちは必死で隠そうとしてましたけど、分院のほとんどの者は薄々知っていたんじゃないでしょうか」


密かに想い合いながら、仕事を隠れ蓑にするように、ひっそりと逢瀬を重ねていた事を。

沙器匠になるという目的を持っていたジョンだったが、
辛い日々の中、光海君の存在は、ジョンに光を与えていたのではないか。

そして、光海君も。

ジョンがいなくなってしまった後も。
ジョンをずっと想いつづけていたのではないか。

それは単なる邪推にしても、そう思わせるほど、
ジョンを見つめる光海君の眼差しには、腕を見込んだ職人以上の想いがあるように見えた。

そんな二人を、分院の仲間達は、噂通りに薄々感じとりながらも、
黙って見守っていたのではないだろうか。

はた目からでも、それは、淡く、純粋で、
不用意に触れれば壊れてしまいそうな儚い禁断の恋に見えた。


「一人の女を追って、危険を顧みずに国を渡って、一介の職人として生きていくのは大変なことだろう」

「あの方には、そんな事は大変では無いのでしょう」

グッピが言った。

ジョンのいない地で朽ちていくくらいなら、一目でいい。
最後に会って、話しをしたい。

抱きしめるどころか、
別れの言葉すらいえなかった後悔を背負って
残りの人生を生きていたくない。

出来る責務をすべて果たした後、
男が望んだことは、愛した女に会うこと。

それが叶うのなら、命も惜しくない。

そんな想いでジョンと再会して一緒にいられるのなら、
なんの障害もあの方の妨げにはならないだろう。

「夢の中で二人は幸せそうでした」

グッピは続けた。


「寝食を共にし、
日中は、器を作り、昼飯時には、集落の幼子を膝に抱いてご飯を食べさせながら、
仲間やジョンと談笑したり。すっかり生活になじんでいらっしゃって。
そして、1日の終わりに、ジョンはあの方の為に、汁飯をこしらえ、
あの方は、ジョンの疲れた腕を撫で労いながら、酒を酌み交わしていました」

グッピが語るジョンの話は、本当に夢で見たことなのか。

それにしても、毎回、あまりにも鮮明だった。

本当は、グッピの作り話なのかもしれない。それとも、
ジョンがこう生きていてくれたらという、願望なのかもしれない。

それでもいい、とジョンスは思っていた。

むしろ、グッピの話が現実であると信じ込もうとさえしていた。

分院の仲間達のために一人倭国に渡ったジョン。

ジョンのおかげで、今、自分は、こうして住み慣れた故郷で、
器を作り続けられ、娘家族と共にいられることになった。

感謝の言葉すら届かないところにいるジョンを想って、
ジョンスは切なげにスンっと鼻を鳴らした。

「ジョンが今、幸せに生きていてくれるなら私は嬉しいよ。
それに、ムン師も、喜んでいるだろう」

「ええ…」

ジョンの師匠のムン・サスンは、ジョンが倭国に去ってから間もなくして、
病を悪化させて亡くなっていた。

グッピとジョンスは、そんなサスンの最後を看取っていた。

「わしがもっと若かったなら…せめて健康であったなら、あいつと一緒に行ってやったのに。あいつなら大丈夫とわかっとるが、技以外、何もかもを、この国に置いていったあいつが不憫でならんのだ」

そんな風に、サスンは、最後まで一人で他国に渡った愛弟子の心配をしていた。

ジョンが、倭国でも素晴らしい器を作り続けることは信じながら、
ジョンが、幸せに暮らしていて欲しいと願い続けていたのだろう。

「きっとムン師匠はジョンの事を見守って下さっているでしょう」

「師匠は、ジョンとあの方のことを知っていたのかな?」

「どうでしょう。ジョンは、師匠にも誰にも話はしなかったと思います。
たぶん、自分の心すら偽って、分院にいたでしょうから」

偽るしかなかった。

光海君にも。
自分にも。

それが、二人それぞれの道を歩いていくためにしなければいけない試練だったから。

「あの戦の時。あの方の陣営に行ったまま、あの方の側にいることも、
そのまま逃げることも出来たのに…」

ため息をついたジョンスにグッピはかぶりを振った。

「あの子は逃げるためでも、あの方の陣営に、何とかして欲しいと、助けを求めに行ったわけでもないのです。あの方があの時点ではもう分院だけの為に動けない身分であることを知っていた。そして、もうあの時には、すでに覚悟していたんでしょう。
皆のために一人で倭国に行くことを。だからこそ、命をかけて、あの方に会いに行ったのです。最後に一目会いたいと」

「…ジョンは、あの方に想いを伝えたのかな?」

「そうだと思っています。だから、あの方もジョンに会いに行った…」


たった一言。想いを伝えるために。


グッピは、作業台の隅に積み上げていた器の一つを手にとった。
そして、それをしげしげと眺めた後、ぽつりと言った。

「きっと、あの方は、どんな優れた沙器匠でも作れない器を欲していたのでしょう」

「ジョンが作った器ということか?」

「器は、手荒く扱えば割れてしまい、その原型をとどめる事は出来ません。
形あるものは、いずれ土に戻ります。ジョンの作った器もです。
あの方は、ジョンの作った器を手に入れたかったわけでは無いはずです」

「そんなことは破器 匠だった私にも分かる。
なら、一体、あの方は何を求めていたと言うんだ?」


首をかしげたジョンスにグッピは微笑んだ。


たった一言。

二人が命をかけてまで伝えたかった想い。


たった一言。

相手から聞きたかった想い。


それを求めて、手に入れたのだと。



「…そうだといいな」

ジョンスの感慨深げな言葉に、グッピが朗らかに「そうですよ」と答えた。


「ああ、そうだな。」


グッピは、ジョンと光海君に祝福を送るかのように、
手にした器を空にむかって高く掲げた。

ジョンスも目を細め、器を見上げた。


その時、グッピとジョンスの脳裏に、
汗を流しながら、真剣に土をこねる、ジョンと光海君の姿がはっきりと見えた。

近くで作業しながら、時折、誰はばかることなく
顔を見合わせて微笑み合う二人の姿が。


二人は声に出さずに、相手に言った。


―――あなたを、愛しています。



生涯をかけて欲した、永遠の器。


人は、それを愛という。




(終わり)


火の女神ジョンイの二次小説「永遠の器」完結です。
続きを待っていて下さった方、ありがとうございました。

この小説に関しての思いや考えはのちに「あとがき雑記」で
述べるとしても、これで、「火の女神ジョンイ」の二次創作はおしまいです。

3話の小説、気になっていた箇所の修正しました。
誤字もあったのですが、ちょっと今は見落としてしまったので、
とり急ぎ、「ジョン」の呼び名を「千代」に統一。
「千代」イコール「ジョン」なのではあるのですが、
構成が不十分で、書き方がバラバラになっていた部分の修正なので、
文章は変わっていません。


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韓国ドラマ「火の女神ジョンイ」の二次小説「永遠の器」の3話です。
最終回のラストからの続き、としてお読みください。

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「火の女神ジョンイ」最終回、ラストの方のあらすじ。

王の次男、光海君と、宮中の陶器製造施設「分院」の女陶工職人、ユ・ジョン。
身分違いでありながら、幼い頃に出会った時から惹かれあい、密かに想いあっていた二人。
倭国との戦の中、光海君は世子となり戦場に赴く。そこで初めて、光海君に自分の想いを伝えるジョンだったが、分院の仲間を救う為に倭国に行くことを決め、一人国を去っていった。ジョンを必死に追った光海君だったが、ジョンはすでに船出した後だった。



永遠の器(3話)



千代は、自らを『光海君』と名乗る男を、ただ茫然と見つめて突っ立っていた。

そんなはずは、無い。
そんな事があるはずがない。

だって、あの方はあの国の王で…いや、もう王で無いと噂で聞いたけれど、
それでも、この国に来ることなど出来ないはず。

混乱した考えの中で、千代はおののきのあまり、じりっと後ずさった。

「ジョン」

青ざめた顔の千代を、男が再びそう呼んだ。

「どうした?私を忘れてしまったのか?いや、それもそうか。
もうずいぶん長い時間がたってしまったからな」

「いいえ」
千代は無意識にかぶりを振った。

…私があの方を忘れるわけない。

「ただ、信じられないのです。覚えている面影があっても、あの方がこんな場所にいるはずがないから。
私には貴方が本当にあの方なのか分からないのです」

「そうか…」

男は、少し首をかしげ、思案する素振りを見せた後、
自らの懐の中に手を差し入れると包を取り出した。

そして、それを千代の目の前で開いた。

…これは?

不思議そうに見つめていた千代の目が丸くなった。

布に包まれていたのは、小さな陶器の破片だった。

一見、なんの変哲もない陶器の破片のように見えた。

ただ、小さな刻み文字が見てとれた。

光海君の名が刻まれた破片。
その文字に見覚えがあった。

「これは、私が、光海君さまに差し上げた…」

「覚えていたか」

男は千代の言葉に嬉しそうな顔をした。

「そうだ。そなたが、昔私に作ってくれた初めての器だ」

「ずっと持っていて下さったのですか?」

「ああ」

男は、手の中の小さな陶器の破片を大切そうに指でなぞった。

「こんな形になっても手放すことは出来なかった」

戦の最中も。
世子になっても。
王になっても。

ただ一つのジョンの忘れ形見を、光海君は大事に持っていた。

しかし、激流のような世情の中で、まるで光海君の運命を表したかのように、
ある日、ジョンの器はくだけ散ってしまった。

「そなたからもらった器が砕けた時、私の中でも何かが壊れてしまった気がした」

そう言って、
男…光海君は、その当時を思い出したように、苦しげに吐息をつき目を伏せた。


「それから、そなたへの想いを封じこめ、感情を失くし、ただ、ひたすら国のために自分に出来ることをしてきた…もう何もかも戻らないのだと。欲するものは手に入ることは無いのだと、自分に言い聞かせながら」

瞳を閉じた光海君。

千代には、その顔に刻まれた皺と、髪に混じる白髪が、光海君の重ねた苦悩の年月の証のように見えた。

千代の知らない光海君の過ごした年月。
手の中の器の欠片が、そんな光海君を見ていたのだろうか。

あの器は、ジョンと光海君しか知らない絆で、
それを持っているということは、男が光海君であるという証だった。

男の正体が光海君だとようやく確信した千代は、
「光海君さま」と、小さく震える言葉を発した。

「そなたに、そう呼ばれるのも久しぶりだな」

千代の声に、光海君が微笑んだ。

「あれから、知らない土地にいきなり連れてこられ、辛い思いを沢山してきたのではないか?」

光海君は千代を労うように聞いた。

千代は首を振った。

「辛いことはありました。でも、器を作り続けることができました。
私には、それだけでも幸せでした」

光海君は、「そうか」と言うと、優しく目を細めた。

「そうであるなら、良かった」

「光海君様は…」

千代は、ちょっとためらった後続けた。

「辛い思いはなさいませんでしたか?お元気でいらっしゃいましたか?」

千代の問いに光海君はふいっと目を逸らした。

「私が一番辛かったのは、そなたが約束を破って行ってしまったことだ。
それで元気だったと思うか?」

その横顔は怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えた。
そして、光海君の拗ねたような声色の響きに、千代は返答につまった。

…やっぱり、あの時の事をずっと許してくださらなかったのだわ。

本当は、少し意地悪と言いたかっただけの光海君だったが、
申し訳なさそうに、身を小さくしてしゅんとしている千代が可愛くて、
光海君は、千代に気付かれないようにこっそりと口の端を上げた。

「辛いことはいっぱいあった。思い出したくないほどな」

一瞬遠い目をした光海君だったが、目の前の千代の方に向き直ると、
うつむき加減だった千代の視線を自分に向けさせた。

「でも、そなたを思い出す時だけ、私は幸せな気持ちになれた。
そして、そなたがしてくれた事のために、私は元気であらねばならないと思っていた」

国のために出来ることを。
民のために出来ることを。

せいいっぱい自分に出来ることをして、
この地で生きることが、あなたを想うこと。

再会の約束をした頃の光海君と変わらない真摯な眼差しに、
千代の胸がドクンと高鳴った。

世子でも、王でもない。
もう、あの頃の光海君では無いというのに。

工抄軍でも沙器匠でもない。
もう、あの頃の分院のユ・ジョンでは無いというのに。

これだけ長い年月がたったというのに。

見つめ合う二人の間に流れる空気は、あの頃と同じもののように感じた。


「私の果たす役目はもう全て終わったのだ」

「では、流刑の島にいる方は誰なのですか?」

「私の影武者だ」

「影武者…」

「世子になって間もなくの頃だった。
私の暗殺を危惧した一部の側近しかその存在は知らない。
影武者になった男は、倭国との戦で私に恩があるから、と志願した者で、
その後、ずっと王を退くまで、政事以外は私につくしてくれた。今私の代わりとして存在しているのは、その者だ」


それでも、島を離れ、国を出ることは容易では無かった。

倭国と取引のある商団の権力者と懇意になり、
別人となって、職人の一人として渡航することが叶うまでには
長い時間を要した。

そんないきさつを、光海君はかいつまんで、千代に話した。

商団の権力者という者が、“光海君”に恩があると言っていたが、集落に光海君を連れてきた、あの長なのだろう。

簡単に話している光海君だったが、それこそ、どれほどの苦労があったのだろう。

「そんなに大変でしたのに…」

想像しただけで、思わずため息をもらした千代に光海君は続けた。

「そんなに大変だったが、この器を直すことが出来るたった一人の人物を追って、私はこの地に来たのだ」

光海君は言った。

「過ぎた時は戻らない。割れた器の破片はほとんど無く、
再び同じ姿に戻ることは出来ないだろう。どんなに素晴らしい腕をもった沙器匠でも。
ただ、もし、これを作った人物が今でも同じ心ざしと想いでいてくれるのなら、
私にもう一度器を作って欲しい。
その答えを聞きたくて、そのためならどんな苦労も惜しまない。そう思って生きてきたのだ。ジョン。そなたに」

王座を退いた日から。

ただ、もう一度、一目まみえて、その答えを聞くためだけに。

光海君の言葉に、千代は目を思わず身震いした。

もう光海君の顔を直視できなかった。

光海君の想いが、眼差しが、あまりにもまっすぐで、
あまりにも熱くて。まぶしくて。

若かったあの頃の時のように、千代の胸は高鳴り、
恍惚とした眩暈すら覚えていた。

「ジョン」

目をそらし、黙って突っ立っているだけのジョンに光海君がもう一度呼びかけた。

「返事を聞きたい。
私は、もう十分すぎるほど、この時を待っていたのだ。
答えて欲しい。そなたは、もう私をあの頃のようには想ってくれないだろうか?
もし、そなたに、もう伴侶がいるのなら、私は諦めて、この地を去ろう。
ただ、そうでないなら…」

…答えてくれ。ジョン。

「光海君様・・・」

千代は、震える唇で言葉をようやく紡いだ。

「光海君様は、さきほど、私を想う時が幸せの時だとおっしゃって下さいました」

「ああ」

光海君が頷いた。

「私は…」

千代はコクリと息を飲んで続けた。

「私は、この地で光海君様を思い出す時が辛かったです」

光海君は千代の言葉に驚き、そして悲しげに目を伏せた。

「そうか…」

それがジョンの答えだと解釈した光海君は肩を落とした。

「自分には、支えのような想いだったが、そなたには負担だったのだな」

「違います」

千代が勢いよく首を横に振った。

「辛かったのは、光海君様に会えなかったからです。
思い出すたびに光海君様に会いたくて、話したくて。
でも、会えないことが辛くて。それでも、光海君様を忘れることが出来なくて。
ずっと。ずっと。だから、ただ、一心に器を作っていることが、私の支えだったのです」

いつでも、何かあっても、悟ったように落ち着いていたように見えたジョン。

秘めた想いも、悩みも、全部自分の中で答えを導いてから、打ちあけていたように見えた。
そんなジョンを、光海君は、時に尊敬し、時に寂しく思っていた。

しかし、今目の前にいる千代は、声を震わせて感情を露わにしていた。

あの頃でさえ、こんな風に気持ちをぶつけるように話した事は無かった。

光海君への想いをどれだけ、器に注いで作ってきただろう。

この想いを証明することなど出来はしない。
言葉など、無意味のように感じるほど長い年月と離れてしまったお互いの道の先で。

ようやく再会できたというのに。

上手く伝えられないことが、もどかしくて、
千代は光海君を見つめながら、己の着物の袂をギュッと握りしめることしかできなかった。

「私と、同じ想いでいてくれたのだな?」

光海君の声も少し震えていた。

「はい。それは、あの時から変わりません」

「今も?」

「この瞬間も。光海君様にときめいています。
それに、私には、この地に伴侶はおりません」

ほっと安堵したような吐息が光海君から漏れた。

そして、遠い旅路の果てで、ようやく安息の地を見つけたような顔になった。

「ジョン。そなたに、積もる話が沢山ある」

「私もです。聞いて頂きたい話がいっぱいあります。帰路では語りつくせないほど」

「うむ。でも、もう時間はたっぷりある。
そなたと一緒にいられる時間が。これからはずっと」

「ずっと、ですか?もう、私はこれからも光海君様のお側にいられるのですか?」

「いや」

光海君は首を振った。

「私がそなたの側にいるんだ。私が私である限り。これからもずっと」

「もう、離れたりしませんか?」

「いつも勝手に離れていったのはそなたの方だろう」

光海君はようやく屈託のない笑顔を千代に見せた。

「私はもう自由だ。これからはそなたがどこに行こうが、必ずついて行く。
命をかけてこんな所まで追ってきたんだ。これから覚悟しておくことだな」

昔と変わらない、懐かしい光海君の口調に、千代の中のジョンが切なく、甘い気持ちに支配された。

「…夢なら醒めないで欲しいです。もうずっとこのまま夢を見ていたいです。
光海君様」

そう言って、今にも泣きだしそうに、震えている千代をしばらく見つめた後、
光海君はそっと手を伸ばした。

そして、千代の両手を取ると、己の手の中に包みこんだ。

「夢じゃない。ほら私はここにいる。…ジョン」

年を経た光海君の手は、大きく、固く、国を背負った年月の苦しみが皺となって刻まれていた。
光海君の握ったジョンの手も、土をこねてきた長い年月が刻まれ
節張り荒れて、かさついていた。

それでも、触れた手から、離れていた年月の想いが伝わり合うように感じた二人だった。

そして、ずっと触れたくて、でも、触れられずにいた手を、光海君と千代は互いに愛おしむように、優しくなで合わせた。

「ようやく、触れられた」

感慨深げな吐息まじりの光海君の声にジョンは何度も頷いてみせた。

「もし、こうやって触れられたら、あなた様にして差し上げたいことが沢山あったのです」

それは、分院では、かなう事のない夢だった。

「たとえば?」

「たとえば、汁飯を作ってさしあげたり、衣服を洗ってさしあげたり…他にも…いろいろ」

千代は照れたような笑みを浮かべ、
光海君はわざとらしい咳払いを一つした。

「全部してもらおうかな。勝手に去って、私を悲しませた罰として」

「罰というより、褒美です。私の夢でしたから」

千代が言った。

「まずは、新しい器を作ってさしあげたいのです。
以前のように器に名をいれて…。」

光海君は、そっと千代の手を離すと、再び、割れた器の欠片を千代の前で手にとった。

器に刻んだ名はほとんど見えずにいた。
その欠片を二人でしげしげと眺めた後、光海君は言った。

「もう、あの国の名前の私はいない。そなたもジョンでは無い。
でも、私には、そなたがジョンであっても、千代であってもいい。
そなたが、そなたでいてくれればいいのだ。そなたはどうだ?
光海君でも、世子でも無い男で良いか?」

今度は千代が光海君の手に触れた。
そして、光海君の手の欠片ごと両手に包み込んだ。

「私も。私も、あなたが何者でも良いのです。
あなたがあなた様であってくれたら、それで」


千代の想いは光海君に伝わった。

光海君が千代の耳元に顔を近づけた。

そして、新しい名を囁いた。
光海君の言った名は、倭国の名だった。

「これが、これからの私の名だ。千代」

「…はい」

もう、光海君と呼ぶことは無いだろう。

光海君も千代をジョンと呼ぶことは無い。

お互いの中に、光海君とジョンを封じたまま、
新しい二人で生きていこう。

そう誓い合うように、
二人は、器の欠片を挟んで重ねた手を握りしめた。

そして、互いに、見つめ合い、頷き合った後、
欠片を持っていた手を高く掲げ、山の中腹の方に投げ入れた。

器の欠片は大きく弧を描くように飛び、
夕日の光を浴びて一瞬煌めいた後、草むらの影に消えていった。

後悔は無い。

今、ここにある互いの存在だけがすべてで、
これからの未来が、希望なのだから。

「さて…、では、今夜の夕餉はさっそく汁飯を作ってもらおうかな。
そなたの好物だったものだから、今でも作れるであろう?」

「汁飯はまた明日にでも。今夜は、あなたの歓迎の宴を開こうと、皆で今ごろ準備してるころです。」

「皆…。そういえば、私とそなたの関係を集落の皆にどう話したらいいか考えていたんだが、生き別れた夫ということでいいな」

「ええっ?」

「なんだ、その反応は?嫌なのか?」

「嫌じゃ…ないですけど。その、祝言もあげてないのに…」

「祝言は今夜あげればいい」

「そんなっ。もう。からかっていらっしゃるんですね。どこまで本気なんですか?」



戯言を言って、笑い合い、
手をつなぎ寄り添って、集落に向かって歩く二人。

その二人を追う美しい夕日。

夕日は、まるで器を焼く窯の火のようだった。

とろりとした情熱の残り火の中で、
二人の姿は長い影となって、はるか遠くまで伸び、
やがて、夜の帳の中に溶け込むように静かに消えていった。




―――そして、かの国から、つながった海と空のかなたの国で・・・。



「…オ・グッピ…オ錬正(ヨンジュ)」


自分の名を呼ぶ声で、グッピは微睡から目覚めた。

「こんなところでうたたねをしていると風邪をひくぞ」

目を開けたグッピをシム・ジョンスが心配そうな顔で見下ろしていた。


(最終話に続く)




お待たせしました。
「火の女神ジョンイ」二次小説の続きです。

現在、前回の記事への拍手コメント22件。
昔から覚えのある方も、初めてコメントを書いてくださった方も沢山いらっしゃって。
本当に沢山の方に今も読まれていて、創作を楽しみに待ってもらっているということを
改めて知りました。嬉しいです。非公開なのに、書いてくださってありがとう。
初めてコメントを送ってくださってありがとう。ずっと支えてくださってありがとう。
長い間読んでくださってありがとう。楽しみに待ってくださってありがとう。
励ましてくださってありがとう。

メッセージを送って下さった方もありがとうございます!
メールに長い間気づけず、お返事が遅くなってごめんなさい。

コメントを書いてない方も。訪問して読んで下さってありがとう。
おひとりずつに返事を書けませんが、とても感謝してます。

「火の女神ジョンイ」の続きを楽しみにしてくださっている方。
次回で最終話です。みつばのジョンの最後の話を見届けてください。

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韓国ドラマ「火の女神ジョンイ」の二次小説「永遠の器」の2話です。
最終回のラストからの続き、としてお読みください。

このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。


「火の女神ジョンイ」最終回、ラストの方のあらすじ。

王の次男、光海君と、宮中の陶器製造施設「分院」の女陶工職人、ユ・ジョン。
身分違いでありながら、幼い頃に出会った時から惹かれあい、密かに想いあっていた二人。
倭国との戦の中、光海君は世子となり戦場に赴く。そこで初めて、光海君に自分の想いを伝えるジョンだったが、分院の仲間を救う為に倭国に行くことを決め、一人国を去っていった。ジョンを必死に追った光海君だったが、ジョンはすでに船出した後だった。



永遠の器(2話)



「…なあ、千代さんの新顔を見る様子がおかしくねえか?」

「年はちっとくってるが、いい男だからじゃないか?」

「おい。千代さんが、いい男なんかに目を奪われるわけがねえだろ。
千代さんの心は全部美しい器を作ることだけに占められてるんだからよ。
今更いい男に心を奪われるんだったら、なんで俺じゃねえんだよ」

「お前は、器を作る腕も女を落す手もなまくらだからだよ」

ひそひそと話す職人達をよそに、役人達は男と商人たちを置いて先に集落の外に出て行った。

商人の一人が千代の前に立った。

商人と思しき者たちの行首(ヘンス)のようだった。
その風貌はいかつく、目つきは鷲のようにするどく、周囲を威圧する空気は、ともすれば海賊のようにも見える男だった。

「あなたが千代さんか?」

男が、千代には懐かしい国の言葉を発した。

「そうです」

「向こうの国の分院(プノン)で沙器匠(サギジャン)だった?」

さらに懐かしい響きに千代は目を細めた。

「はい。そうです」

どうして、会ったこともない商人が自分の素性を知っているのか分からなかったが、
国間で陶器を取引している商団の行首ともなれば情報を掴むのはたやすいことなのだろう、と千代は考えた。

商人はチラリと後方にいる男に目をやった。
男は小さく頷いたように見えた。

商人の男も何やら合図のように頷き返すと、千代の方に向き直った。

「あの男は、かの国では陶工では無かった」

「え?」

役人とは違う話に千代は驚いて目を見開いた。

「器を作る技術はほとんどない。
それでも、他のどの職人も持っていない経験や知識がある。
だからこそ、藩主と取引きして、ここに連れてきた。
この集落には必要な人間になるだろう。そう、きっと貴女にも」

…私にも?

千代には、商人の言う事があまり理解できなかった。

職人で無いものをわざわざ他国から、こんなところに連れてきたこと。
そして、どうやら藩主でなく、商人がこの男を何らかの策で引き入れたこと。

藩とどんな取引をしたのかは分からなかったが、
かなりの危険を伴った行為であることは間違いないだろう。
そこまでして、この男をここに連れてくることで、どんな益がこの商人にあるのだろうか。

黙ってはいたが、千代の不思議そうな眼差しに、商人がフッと笑みを浮かべた。


「わしにはあの男に大きな恩があるのだ。一生かけて返さねばならぬ恩がな。
ここに来ることが、そんな男の頼みだったから、わしは命をかけた。それだけの理由だ。
あとは、ゆっくりあの男に話を聞けばいい」

いかつい顔を少し和らげて話す商人の様子に、千代は態度こそ大きくとも男の方が商人より上の立場であることを察した。

命をかけてまで願いをきくほどの。

ますますいぶかりながらも、千代はコクリと頷いた。

そんな千代に商人がますます優しい表情を浮かべた。


「…千代さんは、話に聞いた通りの人のようだ。どうか、“あの方”をよろしく頼みます」


商人の男はそう言って、千代に深く頭を下げた後、振り返った。
そして、男と黙ったまま目で会話をした後、他の商人たちを伴って集落を出ていった。

やり取りを遠目から見守っていた職人達は、商人の頭が千代に頭を下げる様子に一様に驚いていた。

そして、一人残された男に興味深げな眼差しを向けながら取り囲みはじめた。

「ふーむ。おい、この国の言葉は話せるのか?」

問いかけに、男は「すこし」と答えた。

「名はなんていうんだ?」

「あの国の名前は捨てた」

「じゃあ、今の名は?」

男は、黙ったまま首をかしげて見せると、皆のやり取りを少し離れたところから見ていた千代に目をやった。

男と目のあった千代の胸がドクンっと音を立てた。

「先に、あの人と話がしたいのだが、いいか?」

男は千代をまっすぐに見て言った。

男は千代を。
千代も男の方を何やら複雑な面持ちで見つめていることに気付いた仲間達は自然に道を開けた。

「ありがとう。後でゆっくり話をさせてくれ」

「すこし」と言っていたが、男の言葉は流暢だった。

千代と男の間に漂う訳ありな空気に、日頃豪胆で荒っぽい職人達も何かを察して黙っていた。

男は、千代の前に立つと、「少し歩こう」と促すように歩き始めた。

男は集落を出て、林に通じる道に行くようだった。
前を行く男をあわてて追うように、千代がその後について行った。

男と千代が集落から出て行った後、職人達は、もう仕事が手につかない状態で肩を寄せ合って噂話を始めた。

「千代さんと、あいつ。あの雰囲気は、いったいなんだ?知り合いだったのか?」

「なにか、とてもとりつくしまが無かったな」

「あっちの人間だというが、言葉はずいぶん話せていたぞ」

「それに、男になにか品のようなものを感じたんだが、オレの気のせいか?」

「いや。ただの職人や農夫じゃねえな。あれは」

「千代さんと知り合いだったとして…もしかしてあっちの国で一緒に働いていた仲間とか?」

「それか…あの男が、千代さんと生き別れた、という噂の旦那か?」

「まさか・・・」


集落で、そんな会話がくりひろげられているとは知らない千代は
足早で行く男のあとを必死に追っていた。


男は、道をどんどん前に歩いていった。

徐々に集落は遠く離れていく。

千代はあせったように、何度も集落の方を振り返った。

見知らぬ土地に来たばかりのはずの男が、いったいどこまで行くのだろう?

もしかしたら、本来の目的は集落に住むことではなく、どこかに逃げることだったのではないだろうか?

陶工でも職人でも無い。
…自分と他人の命の危険をおかしてまで。
何をしに、何の目的で、この場所に来たがっていたのだろう。

そもそもこの男は一体何者なのか?

…あの人に似た面影を持って、どうして私の前に現れたの?

千代の脳裏に、ずっと心の中に秘めてきた想いが蘇った。

折しも、暮れてきた日が柔らかい光をおとし、
空を夕焼け色に染め、男と千代の影を長く伸ばし始めた。

…この景色は、あの方と見た、あの頃の光景に似ている。

千代がぼんやりとそう思った時、
目の前の男が、歩みをゆっくりと落とした。

男も空に目をやっていた。

そして、「懐かしいな」とポツリと呟くように言った。

「こんな景色を見たような気がする」

「どこで見たのですか?あなたの故郷の景色に似ていますか?」

千代の問いに男は黙ったまま歩みを止めた。
そして、千代が横に並ぶのを待った。

「昔、見たのだ。もうずっと昔のようだ。
見慣れた日常の景色だったのに、その時だけ、とても美しく感じたことがあった」

空を見る男の切なげな表情と、低いその声に、千代はなぜか胸が締め付けられるように感じた。

「私にもあります。そんな景色が。
ここではありませんが、すべてが鮮やかに色づいて、美しくて。
でも目を奪われていたのは、景色では無くて…奪われていたのは私の心だったのと、後になって知りましたが」

「…心が何に奪われていたと?」

男の問いに、千代は長く封じていた心の蓋を開けた。

この国に来て、誰にも話したことの無い想いだった。

「大切な方です」

千代が息を吐くように言った。

「私にはいつも手の届かないところにいる方でした。
手を伸ばせば届きそうな場所でも決して触れることの出来ない人。
そんな方と、一緒に景色を見ているふりをして歩きました。
私は、本当は景色ではなく、ずっとあの方を見ていたかった。
隣で、あの方の気配を感じながら、高鳴る胸の響きが、あの方に悟られないか、
動揺していることが伝わらないか、必死で平静を装って歩いて…。
…あんなに素晴らしい光景はもう二度と見られないかもしれない。
そんな景色でした」

千代の話を聞き終えた男は、しばらく黙ったままだった。

そして、静かにため息をつくと目を閉じた。

「…あの時に言ってくれれば良かったのに」

「え・・・?」

男の言葉に、千代がきょとんとなった。

「今の言葉を、あの頃に聞きたかったと言ったんだ。
どうして、そんな風に言ってくれなかったのだと。
もし、言ってくれていたら、私も同じ気持ちだと言えたのに」

「…?。何を言って?」

目をぱちくりさせて、心底分からないという表情の千代を見た
男が苦笑した。


「長い年月かかって、遠い他国の地で、ようやくそなたの本心が聞けるとはな」

「あの…?」

「まだ分からないか?私が誰か」

不敵な笑みを浮かべながらも、呆れたように男が言って千代に一歩近づいた。

「…誰?」

震える声で千代は思わず後ずさりした。

…そんなはずはない。そんな事があるはずはない。

千代は浮かんだ答えを必死に頭で否定した。
心はそのことを望んでいたとしても。

そんな千代を男は、また黙ってじっと見つめた後口を開いた。

「“千代”。それが、今のそなたの名か。私の知っているそなたの名は…」

男が名を紡いだ。

その言葉に、千代が思わず口元を手で押さえた。

「なんて…今、私のことを何と?」

「ジョン。ユ・ジョン」

再び男が名を呼んだ。

懐かしい真名に、千代の身が震えた。

「どうして、その名前を知っているの?あなたは誰なの?」

男が頭にかぶっていた笠を取った。

笠の陰影で隠れていた男の素顔が、夕暮れの光の中に浮かび上がり、
千代は、あっと声をあげた。


最後に見た時より年を経てはいたが、まぎれもない、あの人の姿だった。


「私のかつての名は、ホン…いや。光海君と言ったほうか良いかな?」


男が言った。



(3話に続く)

どうして、倭国(日本)に光海君が?
な、展開ですが…二次創作なので。
出来れば、ドラマラストをこんな感じで
終わって欲しかったという、みつばの最後の願望を
書いてます。

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韓国ドラマ「火の女神ジョンイ」の二次小説「永遠の器」です。
最終回のラストからの続き、としてお読みください。

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「火の女神ジョンイ」最終回、ラストの方のあらすじ。

王の次男、光海君と、宮中の陶器製造施設「分院」の女陶工職人、ユ・ジョン。
身分違いでありながら、幼い頃に出会った時から惹かれあい、密かに想いあっていた二人。
倭国との戦の中、光海君は世子となり戦場に赴く。そこで初めて、光海君に自分の想いを伝えるジョンだったが、分院の仲間を救う為に倭国に行くことを決め、一人国を去っていった。ジョンを必死に追った光海君だったが、ジョンはすでに船出した後だった。



永遠の器(1話)


「分院で私を待っていると…会おうと約束したのに」

…ジョン、お前は私を置いて行ってしまうのだな。

遠ざかっていく祖国の地。

その岸辺に立ち、今にも海に飛び込んで自分を追ってきそうな人物の影を
ジョンは細めた瞳で悲しげに見つめ続けた。

…光海君様。

出来ることなら、今すぐに私が海に飛び込んで、
あなたの所に戻りたいです。
たとえ、あなたの側にいられなくても、
分院で、あなたに差し上げる器を作りたいです。

でも、出来ないのです。

敵が大勢いる場所にまで私を追ってきてくれた。
それがどんなに嬉しかったか。

もうその気持ちを伝えることすら叶いません。

せめて、あなたへの気持ちと共に過ごした思い出を心に抱いて、
私は去ります。
この想いが、これから過ごす遠い異国の地への不安を
和らげてくれることを感謝します。

光海君様。

ありがとうございます。
ごめんなさい。許して下さい。
…愛しています。

遠ざかる人物の表情までは見えなかった。
それでも、最後の最後まで、愛しい人の姿を目に焼きつけておきたい。

「さようなら…」

ジョンは小さく呟くと、
必死に涙をこらえた目で、光海君が見えなくなるまで岸を見つめ続けた。



「世子様。そろそろここを発たないとと敵に見つかってしまいます」

そう護衛が緊迫した面持ちで声をかけても、
光海君も、ジョンの乗った船が見えなくなるまで目を逸らすことは無かった。



そして
ジョンが倭国に連れて行かれた日から
数年がたち・・・。


倭国との戦で、国は守られたが、その傷痕はまだ深かった。
そんな中、光海君は王となった。

孤独な王座に座り、
光海君は寂しげな目を空に向けた。

…元気でいるか?ジョン…。

その想いは、倭国につながる空に駆けて
ゆっくりと流れる時の中に消えていった。


そして、それから、また年月が過ぎた、
倭国の、とある土地の集落。

その集落は、腕の良い陶工職人達が多く住み、
陶磁器は藩の御用達にもなっている、大きな窯の一つだった。

「千代様」

その声に、
窯の前で、焼けた器の出来を調べていた女陶工が振り向いた。

「どうしました?」

「藩の役人から、千代様宛に文が届いています」

集落の外から戻って来た作業人が千代に手紙を渡した。

「なんでしょう?」

「分かりません。でも、急いで中を読めとのことですよ」

「おおかた、先日命じた器は出来たのか?という催促の文だろうな」

千代の側で窯の薪を並べていた男が横から口をはさんだ。

「窯神様に愛されている千代さんなら1日で器が出来るって思われているからねえ」

「そう思われても違いないからな」

窯で働く陶工や作業人達がどっと笑った。
千代も一緒にはにかむような笑みを見せた。


千代は窯の中で1、2を争うほど腕の良い陶工だった。
その昔、異国から連れてこられてから、千代は集落で陶器を作る先駆者の一人となった。
まだ、寄せ集めばかりだった職人たちを集落でまとめていったのも千代だった。

そんな千代は、藩主だけでなく、窯の仲間達からの信望も厚く、皆から尊敬され慕われていた。

陶器にかける情熱は人一倍だということは誰しも分かってはいたが、
ただ1点、謎なことがあった。


創る器だけでなく、容姿も性根も美しい千代が、なぜこの年になってまで独り身でいるのか?ということだった。

千代がこの地に来てからこれまで、幾人も求婚する男がいた。

すべて、千代が断った理由は、国に結婚した夫がいるからだという話。
または、窯神様に、一生独身を貫くという誓いをたてたからだという話。

どれも噂ばかりで、実のところ、誰もその真相を知らなかった。


陶工とはいえ、女性が一人身でいるのは、不都合が多い時代と土地。
それでも千代の作る神秘的なまでに美しい器が、人々を魅了し、惹きつけ、そのようなことは些細な事だと思わせていた。

「千代さん。手紙にはなんて書いてあるんだい?
もし、器の催促なら協力は惜しまないよ」

「そうですね。もし、そうだったらお手伝いをお願いします」

千代は、そう答え、仲間の視線を浴びながら文を開いて目を通した。

千代の少なからず驚いている表情に、皆が興味を示した。

「千代さん?」

「文によると、この窯の集落に新しく外から来た人が住むことになる、とのことです」

「外からというと…千代さんと同じ国の人かい?」

千代がコクリと頷いた。

仲間達は顔を各々見合わせると、不思議そうに首をかしげた。

「珍しいな。よほど腕のいい職人でも見つけてきたんだろうか?」

集落に新しく人が住むことは珍しいことでは無かった。
ただ、それは藩から許された職人たちだった。

窯の職人たちは、技術を他の藩に漏らさないために、
単独で土地を離れることは許されず、また、別の窯の集落に移ることも無かった。
そのため、外から入ってくる人間に対しても厳しい審査があった。

そんな環境の中で、異国からの職人を新たに集落に加えるとは…。

「この文によると、藩が取引している商団の口利きからの紹介とあります。
私に今後の世話を頼むと。早くて今日、明日には着くから、とも」

千代は困惑した面持ちで、文に何度も目を通した。

…窯の代表の一人とはいえ、なぜ、私を名指しで後見人にするのかしら?
同じ国から来た職人は他にも沢山いるのに。

千代の考えを見透かしたように、仲間達が口ぐちに物言いを始めた。

「何も忙しい千代さんを世話役に命じることは無いのにな」

「同じ国の出身ってだけにしては、なんだか上の人も気をつかってるように感じるが」

「どういう経歴の持ち主なんだろうね。もしかしたら、向こうの国の『将軍様』付の職人だったとか」

「それは、千代さんのような?」

その意見に、皆がハッとなって千代の方に顔を向けた。

千代がこの国に連れて来られた経緯を、集落のほとんどの者は知ってはいたが、
改めて口にすることは暗黙の了解で禁忌とされていた。

口に出した者はしまった、という青ざめた顔で千代の様子を窺っていたが、
千代は別段気にしてはいないようだった。

「とにかく、その人が来たらせいいっぱい歓迎してあげましょう。
きっと遠く国を離れて、心細い思いをしているかもしれないから」

千代の言葉に、皆、あわてて頷きあった。

「そ、そうだな。仕事を早く終わらせて、宴の準備を進めておくか」

「酒はあったかな…」

そう言いながら、めいめい自分の持ち場にあたふたと帰っていく様子を千代は微笑ましい様子で見ていた。

この国の職人と、かの国から来る職人との間で摩擦や衝突が起こることは日常茶飯事だった。文化の違いだけでなく、技術の面に置いてもぶつかることは仕方のないことだった。

だからこそ、長い時間がかかったが、
この窯の集落の職人達がここまで連帯感を持つようになったことは、千代にとって喜ばしいことだった。


ただ、ひたすらに、良い器を作ること。
そして、その環境を作ること。

そんな風に過ぎた日々。

「一体、今度はどんな人が来るのかしら?」

千代は、故郷を懐かしみながら、
新しく出来た器を手に取ると、愛おしげにそっと撫でた。



それから。

集落に新しい住人が現れたのは、その日の夕方のことだった。

商人と思われる男数人と、上級役人の男が二人。
皆上質の着物を着ていた。

そして、農夫のような着物を着、笠をかぶった中年の男が一人。

集落では明らかに目立つ集団に、職人達はそれぞれ作業の手を止めて、
その動向を見守った。

男たちは、集落に入ると、職人達の好奇の眼差しを受けながら、
まっすぐに中央を目指して歩いてきた。

「千代殿はどこにいる?誰かここに呼んでこい」

役人の言葉に、作業人の一人があわてて、小屋で土を検品していた千代を呼びに行った。

「はい。わたくしが千代ですが」

千代は、土で汚れた両手を腰に巻いた布にぬぐいながら小屋から出てきた。

役人の一人は、集落にも時々顔を出す千代のよく知る者だった。

「文は受け取っているか?」

「はい。確かに、拝読いたしました」

「では、話は分かるな?ここにいる者がこの集落にこれから住む男だ。
藩主様もお認めになった腕の立つ職人ということだ。まだこの国に来たばかりだから、
何かと分からないことも多い。いろいろ手を貸してやれとの御命令だ」

「はい」

千代は頭を下げると、役人の横にいる笠をかぶった男に目をやった。
そして、その顔をじっと見たあと、信じられないように瞬きをした。

…似ている…。

確かにどこかで見た面影だった。
それでも、自分の中で覚えている人は、こんな場所にいるはずが無かった。

そう思いながらも、やや混乱した面持ちで、男を凝視したまま千代は突っ立っていた。

男も千代の方をじっと見つめていた.

笠の影の下、その表情は硬く、作ったまま長い年月放置された陶器のように頑なに見えた。

精悍ながらも疲弊したような面持ちが、人生の辛酸を舐めた男の生き様を彷彿とさせた。

…ただの職人じゃない。
この人は、今までただならぬ道を歩いてきた人だ。

そう感じた千代は、それでも男から目を離せずにいた。



(「永遠の器」2話に続く)



予告通り。
「火の女神ジョンイ」の突発二次小説を更新しました。
短編のつもりが、ちょっと続きの中編です。
でも、「キング」と違って、今度こそこれっきりの予定です。

みつばの妄想した「火の女神ジョンイ」のその後。
倭国に連れていかれたジョンと、残され、王となった光海君は…?な
お話です。

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「常連さん」へのお願い。
リアルのみつばは現在毎日が戦争に近い状態で、
精神的にも肉体的にも疲労困憊してます。
雑記も手を鈍らせないために、日常を少しでも楽しむために書いてます。
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見たい、と雑記でも書いていた韓国ドラマ「火の女神ジョンイ」をテレビ放送録画で見られました。

以下、この記事でドラマのネタバレしてるので、未視聴のかた、これから見る方は注意です。




みつばの今のリアル世界での少ない楽しみと癒しの時間でしたが、
終わっちゃいました。

内容は、大まかなあらすじで知っていて覚悟してたのですが、
やはり切ない恋の終わり方でした。

史劇もので、王子と女陶工を志した女性との切ない恋の物語。

王子は、よくドラマや映画などでもモデルとされる光海君様。
女性陶工は、日本に渡ったといわれた実在した名匠をモデルに。

フィクションなんですが、それでも王子と陶芸家とは、
はじめから身分違いで結ばれない…という設定で。

お互い会った時から惹かれあっていたのに、
口に出来ず、それでも中盤、光海君は想いをジョンに打ち明けるも
ジョンは応えることが出来ない。

だけど、最後の最後に。
永遠の別れを決意したジョンが、光海君に
ずっと、ときめいていた。と告白するシーンに思わず感涙。。。

ノーカットで見てないのだけど、全編とおして、
二人のラブシーンはほとんど無かった気がする。

分院《王室の器を作る場所》で、
お互いの存在を感じながら、密かに想い合う二人の日常。
その純愛が美しすぎて。
重ねた日々が思い出となったまま、
そして、想ったまま、別れてしまった二人が切なすぎて、
ドラマのラストを知った瞬間に、


…続編の物語を妄想してしまったみつばです(苦笑)

ドラマ感想ももっと細かく語りたいのだけど、
頭の中で勝手に二次創作した物語は3パターン。

2つはボツにした設定なので、書いちゃいます。

一つ目は、

ジョンが倭国に連れていかれたラストより。

実は、テド兄さんが生きていて、ジョンと共に倭国に行く話。
ずっとジョンを愛し守っていたテド。
生きていたら、絶対にジョンについていったでしょう。

みつばはテド兄さんが好きでした。
キム・ボムさんが好きtれこともあったのですが、
キャラクター的にも、ビジュアル的にも。
(黒髪長髪の美青年)←笑
なので、ジョンとテドが結ばれてもいいな、と思ったんです。

知らない土地倭国(日本)に来ても、
テドがジョンの側にいて愛し、守ってくれて。

フィクションとはいえ、史実に近くするなら、
テドがジョンの夫として一緒に倭国に行くという創作なら
自然のような気がしたんです。

…みつばが、光海君好きにならなかったら。

あらすじの知識ではテド×ジョン優勢な妄想が、
ドラマ見て、無理な創作でも光海君寄りになったんです。

元々、「火の女神ジョンイ」の光海君の吹き替え声優さんが、
みつばが病気になってる(笑)「検事プリンセス」のイヌの吹き替え声優さんと
同じだからって、気になって見たドラマだったんですが。

だもんで、3倍速以上で見てた録画、光海君様が出てくるシーンだけ
定速に戻して聴くという(笑)

吹き替えはもちろん素敵だったんですが、役者さんの演技も素晴らしく、
このドラマの光海君様のツンデレ純情なキャラクターにもはまった次第。

なので、

妄想2つ目。

やっぱり、ジョンと光海君様を再会させる物語。

ラスト、陣営の光海君に会いに行ったジョン。
お互いの想いを確認して、別れるまでの「間」に何かあったんでは?
的な妄想(笑)←相変わらず。

それで、そのまま再会出来ずに別れた二人だったけど、
倭国に渡ったジョンのお腹には光海君の子供がいた…という話。

なぜ、こんな妄想も出たかというと、
想いを確認したのに、なんのラブシーンも無かったから。
ずっと好きあってたのに、逆に不自然とか思って。

それにラスト。
光海君が、ジョンに陶器を献上される白昼夢を見たあと、
王座の上で切なげにジョンを案じている…というシーンで終わり。

ジョンのその後は映らないまま、モデルとなった女性の紹介文がチラリ。

妄想とはいえ、倭国で密かに光海君の子を産み、
陶器を作りながら、子供と一緒に生きていくジョンが浮かんだんです。


…ただ、この物語はみつばの中で2番目。

いかにもみつばっぽい創作妄想なんですけど(みつばっぽいって(笑))

ドラマ全体を見ていて、光海君とジョンがあまりにもずっと純愛だったから。
触れ合わなくても精神的に強く想いあってたのが分かったから。

それに陣営のテントの中で、再会を約束した二人。
その時、ジョンの中では、薄々再会出来ないことはわかってたはず。
でも、光海君は、戦に勝って絶対にジョンと再会すると誓ってたはずだから。

…何も無かったんじゃないかな。

というわけで。
この妄想物語も、みつばのたまて箱も奥深くに眠ってもらいました。

じゃあ、結局、みつばが考えた光海君とジョンの
その後の話はどんなかというと…


余力のある時にいつか勝手に更新します。
読み切り短編で、光海君とジョンの話を。

みつばは、はまった物語が悲恋で終わるのが
嫌で、せめて妄想の中も結ばれてほしいって思っちゃうんですよね。

(例)「デュエリスト」「キング」

ただ、…「火の女神ジョンイ」

このラストはラストで好きでした。
王子は王として生きていくさだめ。
ジョンは、陶工として生きていく道を選ぶ。

たとえ、分院で再会していても
現実的に考えたら結ばれない関係でしたから。

ドラマ。
細かく見ると、
諸々、これはどうなん?ー…っていう設定や流れもありましたが、
(後半の流れが強引(汗)

面白かったです。


みつば妄想の続編は置いといて、
ドラマは普通におすすめです。

















テーマ:韓国ドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

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