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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説、「追憶の香り」後編です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。


この話はシリーズの最新作になります。

「夢桜」の続編。




追憶の香り(後編)




辞令には、ヘリが春川に異動になることが記されていた。

「そうですか」

ホン・ヨナンは、相槌を打ったあと、しばらく黙った。

そして、浅いため息をつくと、両手を組んで、ソファの背に体をもたれさせた。

「老婆心ながら、私で良ければ、ヘリさんのお悩みを聞かせてもらえますか?ヘリさんより長く生きているので、何かアドバイスできることもあるかもしれません」

「ええ。ありがとうございます」

ヘリは、ホン・ヨナンに微かにお辞儀した。

親やイヌに伝えることは、まだためらっていたが、誰かにこの想いを話したかったヘリだった。

人生でも職場でも、大勢の人達と関わってきたホン・ヨナンなら、この気持ちはわかるだろうか…。

そんな思いで、ヘリはぽつぽつと話し始めた。

「職場の異動先が、ソウルより遠い場所になりました。もし行くことになれば、私は両親と離れて暮らすことになります。もちろん、イヌともです。職業柄、ずっと覚悟をしてきたつもりです。でも、いざ、通知をもらったら、決意が揺らいでしまったのも事実です」

「ヘリさんは、一人娘でしたね。ご両親の反対がありましたか?」

そう聞くホン・ヨナンに、ヘリは首を横に振った。

「まだ、両親と話し合っていません。ただ、両親も私の職業柄、そういうことがあるというのは薄々分かっていますし、おそらく私の決断を尊重してくれると思っています」

ヘリの父親。マ・サンテは、一人娘を溺愛していた。
ヘリが仕事で遠い場所に住むとなれば、昔のサンテなら、大反対して、検事を辞めろと言っただろう。

だが、今なら、渋い顔をしたとしても、娘の意志を尊重してくれる。
そんな確信があった。

「では、ソ・イヌ君が反対をしましたか?」

「いいえ…」

ヘリは、握りしめた自分の両手に目を落とした。

「彼にはまだ伝えていません。ただ…。この辞令が出る前に少し話はしました」

あの桜が散った並木道で。

『僕の心はいつも君の側にある』

たとえ、離れてることになっても、心は変わらない。

イヌは、ヘリにそう言ってくれていた。

イヌも、ヘリがどんな決定をしても、受け入れてくれることだろう。

それが分かったから、余計に、ヘリの中に戸惑いのような感情が生まれていた。

・・・皆、私の答えを受け入れてくれる。
たとえ、すぐに会える距離にいられずに寂しいと感じてくれていても。

両親も。イヌも。親友のユナも。

だったら、私は・・・。

「…以前、イヌが、何かの選択に迷った時。『自分がどうしたいのか分かっていたら答えは出るはずだ。頭じゃなくて心で分かっていればの話だが』って話していたことがあります。私は今、自分の心が分かりません」

ヘリは、ホン・ヨナンに話しながら、自分の心にも問いかけていた。

2つに分かれた道のどちらを選ぶのか。

「その分岐点の先のことを考えると、どうしたら一番良いのか、分からなくなっています」

そう呟いて、無言になったヘリを、ホン・ヨナンはジッと見つめていた。

そして、小さく吐息をついた後、ゆっくりとした口調で言った。

「一番良い方向は分からなくとも、ヘリさんが一番何がしたいかは分かっているのではないですか?」

「・・・・・・」

「どの道に行くかを選んだ時、別の道に待っている未来は消えます。だから、人は迷ってしまうのです」

ホン・ヨナンが続けた。

「後悔の無い道を選ぶなど困難なことです。しかし、自分で選択した道を歩いていながら、自分の現状に不満を持ち、文句と愚痴を言い続けている人間は、たとえ、過去にどんな選択をしていようとも、必ず、同じように愚痴をこぼし続けますよ」

ホン・ヨナンの言っていることは、ある意味、手厳しかったが、最なことだった。

だが、それを強く言い切ることが出来るのは、やはりホン・ヨナンが今までの人生で、いろんな修羅場をくぐってきた経験があるからなのだろう、とヘリは考えた。

そんなヘリの思いが、またも表情に出ていたのだろう。

ホン・ヨナンを見つめ返すヘリの顔に、ホン・ヨナンが、ふっとやわらかな笑みを浮かべた。

「私も、さんざん後悔しましたよ」

ホン・ヨナンが言った。

そして、おもむろに店内を見回した後、再びヘリの顔に視線を戻した。

「ヘリさん。この店はね、私が昔の恋人に紹介してもらった店なんですよ」

…え?

いきなり深いプライベートにかかわった話題にヘリが驚いている間にもホン・ヨナンは話し続けた。

「まだ、今の妻と出会う前の話です。学生時代につきあっていた恋人です。とても気があっていて、結婚も考えていたほどです。彼女は紅茶好きで、この店の常連でした。彼女に連れてきてもらってから私も紅茶好きになり、この店にもよく通いました。あの頃、店の今のマスターも見習いでした」

ホン・ヨナンは、そう言って、懐かしそうな顔でカウンターにいるマスターの方に目をやった。

ちょうど、そこに、女性従業員が、ヘリとホン・ヨナンが注文した紅茶を運んできた。

ヘリの前にはロイヤルミルクティーが。ホン・ヨナンの前にはシャリマティーが置かれた。

甘いミルクと紅茶の香り、そして、オレンジと少量の洋酒のような香りが、周囲に漂った。

それは、ヘリの、黒々と絡まった思考を解きほぐしてくれるような効果をもたらした。

「とても、良い香りです」

ヘリが紅茶カップをのぞきこんで、うっとりと言った。

「さあ、どうぞ、召し上がってください」

ホン・ヨナンのすすめに、ヘリは、素直に「はい」と頷くと、紅茶カップを手にとって口に含んだ。

口の中で、濃厚なミルクと深みのある紅茶の味が広がった。

砂糖が少量すでに入っているようで、微かに甘い。
しかし、紅茶の味を邪魔しない程度に。むしろ引き立てるかのように加えられていた。

「美味しいです」

ヘリが感動して、思わず吐息をもらした。

ただ、初めて口にしたはずなのに、この味を知っている。
ヘリが、そう思った時、ヘリの心を読んだようにホン・ヨナンが言った。

「ソ・イヌ君も、この店に何回か連れてきています。その時に、イヌ君は、マスターが紅茶を淹れる姿を観察していました。もしかしたら、ヘリさんがイヌ君に淹れてもらっているロイヤルミルクティーの味に似ているのではないですか?」

「はい」

「彼は、おそらく、このシャリマティーの作り方もマスターしていることでしょう。彼もこのシャリマティーがお気にいりのようでした」

「そうだったのですね。でも、不思議。イヌは、一度も私にシャリマティーを作ってくれたことがありません」

「それは、きっと、イヌ君が自分の作る味にまだ納得していないからでしょう。彼は、自信のある物しか他人に披露しないでしょうから」

イヌをよく知っているようなホン・ヨナンの言葉に、同意したヘリは思わず噴き出した。

「確かに。彼には、そういうところがあります」

プライドの高いイヌは、完璧な物を目指し、不完全な味の紅茶をヘリに飲ませたりしないだろう。

「この店のシャリマティーは、素人には、なかなか真似できない奥深い味です。ですが、ソ・イヌ君なら、いつか再現してくれるかもしれません」

「ええ」

ふふふっと笑うヘリに、ホン・ヨナンも笑みを浮かべた。

「今度は、私もシャリマティーを頂きます」

そう言って、ロイヤルミルクティーを、大切そうに飲むヘリを、ホン・ヨナンは、目を細めて見守っていた。

「私のかつての恋人も、そうやってその場所に座って紅茶を飲んでいました。彼女は、この店のロイヤルミルクティーが一番のお気に入りでした。何度一緒に来ても、他の物は頼まず、いつもホットのロイヤルミルクティーだけ口にしてました」

そう語るホン・ヨナンの顔は、懐かしそうで、どこか寂し気な影もあった。

「結婚まで考えていらした、その彼女とは、その後、どうされたのですか?」

そう聞いてから、ヘリは、ハッと口をつぐんで、慌てて謝罪した。

「ごめんなさい」

興味にあることに、つい相手の気持ちを考えずに問いかけてしまう自分の癖を自覚してから、気をつけてはいたが、やはり、とっさに出てしまうことを反省したヘリだった。

「いえ、いいのですよ。この話題をふったのは私ですから」

ホン・ヨナンが首を振って言った。

「彼女とは、私が親の会社で働くようになって、しばらくしてから別れました。彼女には、海外でかなえたい夢があったのです。そして、私は会社の跡取りという選択をしました」

「・・・・・・」

「彼女に、私と結婚してから夢をかなえる道を探らないか?と提案したことがあります。
彼女から、親の会社では無く、自分で事業を起こさないの?と聞かれたことがあります。私たちには、共にいられる選択肢は他にもあったのです。でも、結局、別れる道を選びました」

「…それを後悔しているのですか?」

おずおずと、そう尋ねるヘリに、ホン・ヨナンは苦笑を浮かべた。

「その後、別の道を選んでいたら、どうなっていただろう?と考えたことは、何度もあります。この紅茶の香りは、過去の記憶を鮮明に蘇らせ、あの頃の気持ちをとても美しく感じさせます。彼女をとても愛おしいと思ったことも。でも、もし、あの時…は、存在しません。
あの時、別の道を選択していても、今歩いている道の可能性を考えることはあるでしょう。後悔しても、それでも、現状でより良い未来の道を探りながら歩いていく。おそらく人生の最後まで、その繰り返しでしょう」

後悔したとしても、その後にどうするかを考え、決めること。
正解は無いのだと、ホン・ヨナンは言っているようだった。

「人生、塞翁が馬ですから」

ホン・ヨナンが、ヘリの思いをまとめるように言うと、紅茶を口にした。

「…だから、自分が今一番したい、と思うことを。優先したいという道を選ぶということなのですね」

呟くように言ったヘリに、ホン・ヨナンが頷いた。

「後になって、自分の不遇を他人のせいにしたくなる事も出てくるでしょう。本当はこうしたかったのに、誰かのせいでその道をふさがれたと。そういうこともあります。ただ、ヘリさんの周囲の人は、皆ヘリさんの選択を応援してくれているようです。恋人も。ならば、ヘリさんは堂々と自分の人生を歩めばいい」

ホン・ヨナンが言った。

「あなたの決めた道を進めば良いのです」

ヘリは、無言でホン・ヨナンを見つめた後、ロイヤルミルクティーを口に含んだ。
それは、冷めていても、甘く優しい味だった。

ヘリは、紅茶を飲み干すと、カップをソーサーに置いた。

「はい」

ヘリの中では、もうすでに答えが出ていたこと。
それが、ホン・ヨナンの言葉で、迷いの霧が晴れたように思った。

そんなヘリの表情に、ホン・ヨナンもヘリの心を読んだように、微笑んでいた。


―――あの時から、年月が過ぎて。


ヘリは、あれから、自分の選択した道をまっすぐ歩いて、今ここにいる。

行く先々で、新しい悩みや選択肢が出てきていたが、ヘリはその都度、解決してきた。

変化したことも沢山あった。

でも、変わらずにあるものも、存在した。

リビングの扉が静かに開いた。

ヘリは、風呂上りの濡れた短髪をタオルで拭きながら、部屋着姿で入ってきたイヌを見やった。

イヌが、ヘリがキッチンカウンターの上に並べていた紅茶カップに気づいた。

「ホン・ヨナンさんが贈ってくれたカップよ。これを見ながら、私もホン・ヨナンさんを偲びながらイヌの晩酌につきあうわ」

「うん…」

イヌは、紅茶カップを手にとって、ジッと眺めると、ヘリのいるキッチンの内側に入って来た。

「イヌ?」

不思議そうなヘリの脇を通って、イヌが冷蔵庫を開けた。

「酒じゃなくて、紅茶を淹れよう。ロイヤルミルクティーとシャリマティーを。材料はあるかな?」

「ミルクとオレンジ、茶葉はあるけど、他の材料はどう?」

「うん…。あるな」

イヌが、シャリマティーの材料を確認して頷いた。

「ヘリ。少し待てるか?」

「ええ」

イヌは、キッチンの中で、ヘリと場所を交代すると、紅茶を淹れる準備を始めた。

ヘリは、キッチンカウンターの対面の椅子に座ると、黙ってイヌの作業を見守っていた。


やがて、キッチンに、甘いミルクティーとシャリマティーの香りが広がった。

イヌは、温めた紅茶カップの中に、それらを丁寧に注いだ。
そして、ヘリの方に、ロイヤルミルクティーの入ったカップを差し出した。


「ありがと。イヌ」

ヘリは、カップを受け取って微笑んだ。

香りは記憶を蘇せる。

イヌの入れた紅茶の香りは、あの時の店とホン・ヨナンを思い出させた。

ホン・ヨナンに連れていってもらった、紅茶専門店は、今はもうあの場所には無かった。

数年前、マスターが体調を崩し、そして、店の後継者もいなかった為だった。
惜しまれながら、店はたたまれ、店は紅茶の味を愛していた人達の間で、永遠の思い出となった。

そして、ホン・ヨナンももういない。


ヘリはイヌと一緒に、ホン・ヨナンを悼みながら、しばらく無言で紅茶を飲んだ。

「私、イヌの淹れた、このロイヤルミルクティーの味が好きよ」

ややあって、ヘリがぽつりと言った。

「ホン・ヨナンさんがお気にいりだった店のマスター直伝だからな」

「え?直伝って、見て覚えたんじゃなくて、教えてもらったことがあったの?」

「ああ。何度か通ったよ。マスターが、淹れ方を教えてくれた。あの頃、マスターは、自分の体調不良で店を続けられなくなることが分かっていたのかもしれない。ネットにはこれのレシピも公開して残してくれていた」

「そうだったのね」

「うん。シャリマティーも。ただ、どうしてかな。同じレシピなのに、マスターの味にはまだ叶わないって思うのは」

「きっと。師匠だからよ。私も先輩たちは、ずっと先輩だって今でも感じるもの」

「そうだな。ホン・ヨナンさんも。俺にはずっと尊敬する人だ。これからも」

「うん…」

イヌの瞳が潤んで見えるのは、紅茶の湯気のせいでは無い。

そんなイヌの顔を直視しないように、視線をそらせたヘリに、イヌが手を伸ばした。

そして、テーブルの上にあったヘリの手にイヌはそっと手を重ねた。

ヘリが顔を上げて、イヌを見た。
そして、イヌの頬に流れる涙を見ると、すぐに同調して、涙をあふれさせた。

仕事で沢山の事件に関わってきて、新人の時のように、職務中は泣くことがなくなったヘリだったが、涙もろい性格は変わってはいなかった。

テーブルの上で、手を握り合って、ヘリとイヌは、静かに泣いた。

ヘリの心の中で、あの時のホン・ヨナンの言葉が聞こえた。


『どんな道を選ぼうとも、私はあなたを応援していますよ。ヘリさん』


紅茶の香りと、彼がかけてくれた声の記憶は、これからもヘリの中で永遠に残るだろう。


…ホン・ヨナンさん、ありがとう。さようなら。


心の中で、自分たちを大切に想ってくれた人への感謝と追悼の意を込めて。
ヘリは、紅茶の香りに包まれながら、イヌの手の温もりを感じていた。




(終わり)



この小説のモデルになった実在していた紅茶のお店は、今でもみつばの中で、一番好きな店です。紅茶好きのみつばですが、この店のより美味しい紅茶をまだ飲んだことがありません。

今までの二次小説の中でもたびたび登場したオリジナルキャラクター。ホン・ヨナンのイメージでモデルにさせて頂いた人は、みつばがとてもお世話になった方でした。
「あなたの夢を応援していますよ」と最後にお会いした時にかけて下さった声を今でも覚えています。

小説の中でホン・ヨナンがヘリに言った言葉を、自分の中で何度も繰り返してますが、今でも割り切ることが出来ずにいることもあります。いつかホン・ヨナンのように言い切れるようになったら、後悔も全部受け止めて、自分という生き方をしているのだろうかって考えたりします。

「検事プリンセス」のドラマも、放送されてから10年の月日がたちました。
みつばの中では、あの時ときめいていた気持ちを、これからも忘れないと思います。

検事プリンセスファンの方も、そうでなくても、この小説を読んで頂いた方も、ありがとうございました。
検事プリンセスの二次小説シリーズは、次作品で、シーズン1の物語を終わらせて頂きますが、二次小説の次回更新は未定です。


【拍手コメントレス】

最終話の更新時、一人でも読者さんがいればいいな~…と、消極的な希望でしたが、時間がたっても、始めた物語をちゃんとまとめておきたい思いでした。イヌの番外編話「miss you」バレンタインの話「ゲレンデへいこう」が、数話未公開の状態になっているのですが、これらも、完結できたら、ひょっこり更新するかもです。読んで頂きありがとうございました。


(連絡)
「陳情令」記事への拍手コメント、拍手、送ってくださった方、ありがとうございます!
メールやメールフォームからのコメントもありがとうございます。お返事はゆっくりになりますが、少々お待ちくださいね。
拍手コメントの方は、深夜更新記事でさせて頂きます。ブログの記事への感想、応援、ありがとうございました。



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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説、「追憶の香り」前編です。

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この話はシリーズの最新作になります。

「夢桜」の続編。




追憶の香り(前編)





「ヘリ、ホン・ヨナンさんが他界した」

その日、家に帰ってきたイヌは、迎えに出たヘリを見ると真っ先に、そう口にした。

「え…?ホン・ヨナンさんが?」

ヘリは衝撃のあまり口元に手をあてた。

「ああ、ホン・ヨナンさんの奥様から連絡をもらった。
今朝方、入院先の病院で息を引き取られたらしい」

イヌが暗い顔で言った。

…体調を崩されていたとイヌから聞いていたけど、まさか、こんなことになるなんて。

ヘリは、呆然となって、イヌの前に佇んでいた。

しかし、目の前にいる夫の方がよほどショックが大きいことだろう。

ホン・ヨナンは、イヌにとって友人であり、恩人でもある人物だった。

国内でも指折りの大きな企業を率いてきた敏腕の実業家。
数年前から、会社は、後継者にゆずり、経営から退いてはいたが、慈善団体を支援したり、イヌが新しい事務所を立ちあげた時も力添えをしてくれた人だった。

ホン・ヨナンとイヌは、年こそ、親子以上離れていたが、武道仲間であり、気の合う友人としての付き合いをしていた。

以前、貸してくれた別荘と土地も、その後、イヌに安く売ってくれていた。

とてもイヌをかってくれていた人だったが、同様に、ホン・ヨナンは、イヌの恋人だったヘリにもよくしてくれていた。

イヌとヘリが結婚した時も。子を授かった時も。

ホン・ヨナンは、まるで父親か祖父のように喜んで祝ってくれた。

その人が、他界したというのだ。

「イヌ・・・」


ヘリは、意気消沈しながらも、気丈に立っているようなイヌを見守りながら、リビングの方に共に移動した。

「子どもたちは?」

イヌは、静かなリビングを見渡して聞いた。

「もう寝ているわ」

「そうか…」

「何か、食べる?」

「いや…」

イヌは、うつむいて、しかし、思い直したように頷いた。

「酒を少しだけ飲みたい」

「わかったわ」

ヘリが答えた。

「今、何かつまみになる物を用意するから。あなたは、その間、お風呂に入って、着替えてきて」

「ああ…」

イヌは、ヘリに礼を言うように微笑を浮かべた。
しかし、すぐに暗い表情に戻り、リビングを出ようとした。

…イヌ。

ヘリは、イヌの今の心情を考えると、たまらない気持ちになった。
そして思わず、駆け寄ると、イヌの背に両手をまわして抱きしめていた。

イヌの背中は、ひんやりと冷たく、そして固かった。
ヘリは、自分の体温をイヌに与え、温めるように、体を押し付けた。

「イヌ。泣いていいんだからね」

ヘリは、イヌの体をギュッと抱きしめたまま、目を閉じて言った。


子どもの頃、大切な人を次々と失ったイヌ。

その後、目的を果たすまでは、泣かない。
そう決め、涙を流すことを、自分に禁じたように生きてきた。

今、また、人生で自分を大事にしてくれた人を。大切に想っていた人を失った。

必死で、泣くまいとしているようなイヌの姿に、ヘリは胸がしめつけられていた。


「…ヘリ」

イヌが、前身にまわっているヘリの両手に手を添えた。
そして、ヘリの手をそっと握りしめた後、その腕をはずさせた。

そのまま振り向かず、ただ、微かにヘリに頷いて見せた後、
イヌは、リビングを後にして、クローゼットのある寝室に入っていった。

ヘリは、そんなイヌの後ろ姿を見送った後、晩酌の準備をする為にキッチンにむかった。

そして、イヌの好きなつまみの総菜を何品か料理した。

酒は、何がいいのかしら?
ワイン?それとも、ビール?焼酎?ブランデー?

そんなことを考えながら、総菜を盛る皿を取ろうと、ヘリはキッチン棚を開けた。

そして、カップボードをふと見やったヘリの目に、紅茶カップが映った。

それは、ホン・ヨナンが、ヘリとイヌにプレゼントしてくれたカップだった。

…ホン・ヨナンさんは、紅茶がお好きだった…。


ヘリは、カップを見ながら、そんなことを思い出した。

同時に、ホン・ヨナンに、昔、かけられた言葉が記憶の中で蘇っていた。


『あなたの決めた道を進めば良いのです』



―――それは、10年ほど前。


あれは、桜がすべて散って、しばらくたった時期のことだった。

ソウル中部地検で働いていたヘリに辞令がおりた。


“マ・ヘリ検事。異動部署。春川地検、刑事3部”

…春川地検。

ヘリは、その書類の文字を冷静な気持ちで受け止めていた。

覚悟は出来ていた。

ソウル中部地検に新人として入って2年。
今年、異動になることは、上司からも仄めかされていて、一応希望する場所を問われた書類も提出していた。

だが、ヘリには配偶者がいない。
両親も健在だった。異動先に考慮されるべき要素は無い。

今住んでいるソウル近隣の職場になる必要もなかった。

遠いといっても、ソウルから1日以上かかる距離では無い。
しかし、今住んでいるマンションから通勤するのは難しいだろう。

両親の家とも離れ、そして、同じマンションに住む恋人とも・・・。

イヌとは、同棲していなくても、何かあれば、すぐに行ける部屋に住んでいた。
だが、もし、春川に行けば、すぐに会えるというわけにはいかない。

ヘリは、その日の仕事を終えた後、検察庁を後にし、
人事異動を記した通知を入れたバッグを下げ、ボンヤリとした面持ちで歩いていた。

まっすぐにマンションに向かう気にならず、
気分を晴らすために、ヘリは街に出ていた。

昔のヘリだったら、こんな気分の時、甘い物を多量に摂取していただろう。
2年前のヘリだったら、ブランド物を大量に買っていたことだろう。

しかし、今のヘリは、ただ、ウインドウショッピングをしている体で、
歩く先、ガラス窓に映った自分の浮かない顔に、ただ吐息をついた。

両親に報告をしなければいけない。

しかし、今はまだ二人が営んでいるパン屋で最も忙しい時間だった。
こんな話を気軽に出来ないこともあったが、それよりも、まだ自分の中で気持ちが揺らいでいたヘリだった。

薄々想像していて、思っていたより冷静に受け止めは出来ていた。
ただ、この先に続く自分の道の選択は、不透明な未来をいずれ現実のものとする。


…これで、いいの?


ヘリは、そんな気持ちで、窓ガラスに映った自分の顔に問いかけた。

そんなヘリを我に返らせたのは、背後で「ヘリさん?」と呼ぶ男の声だった。

ヘリが、ハッとなって後ろを振り返ると、そこに知己の年配の男性がたっていた。

「ホン・ヨナンさん」

ヘリがそう呼ぶと、ホン・ヨナンは嬉しそうな顔で頷いた。

「ボクシングを始めるおつもりですか?」

「え?」

ヘリが、ホン・ヨナンの言葉に、今見ていた窓ガラスの中に目を凝らした。

ヘリが前に立っていた所はボクシングジムだった。

「あ、いえ」

ヘリは、慌てて、ボクシングジムの窓から離れた。

「お仕事帰りですかな。買い物で街にいらした?」

「はい。とくに買い物は無かったのですが、少し散歩してました」

「ソ・イヌ君とこれからデートですか?」

「いえ。イヌは、仕事中だと思います。私は、散歩を終えたら帰ります」

ヘリは、ホン・ヨナンにそう言いながら、イヌのことを考えた。

最近のイヌはとても忙しそうだった。
いつも会っていた週末の休日さえ、返上しているほどに。

それは、ヘリが、少し前、自分の事件にイヌを巻き込んでしまった為では無い、とイヌは言ってくれていた。

『この時期は事務所も忙しい。だから気にするな』と。

週末にゆっくり会えなくても、たとえ夜中でも、電話一本、メール1つすれば、
同じマンションのバルコニーごしに顔を合わせることが出来た。

しかし。

ヘリは、人事の用紙が入ったバッグのベルトを無意識にギュッと握った。

…春川に行けば、そんな風に会えなくなる。

ヘリの浮かない顔に気づいたホン・ヨナンは、ヘリが何か悩みを抱えていることをすぐに察したようだった。

「ヘリさん。紅茶はお好きですか?」

「え?あ、はい。好きです」

きょとんとしながらも、頷いたヘリに、ホン・ヨナンがにっこりと笑った。

「この近くに、私のお気に入りの紅茶専門店があるのですよ。ソ・イヌ君も誘ったことのある店です。良かったら、これから一緒にお茶を飲みに行きませんか?」

ヘリに断る理由は無かった。

ホン・ヨナンは、恋人のイヌが信頼している老紳士だった。

強面で、威厳のある鋭い目つきは、上空を油断無く飛ぶ鷹を思わせたが、気を許した者に対する態度は柔和だった。

大企業を築いてきた有名人。

イヌと3人で一緒に食事をしましょう。というホン・ヨナンの誘いはまだかなえられていなかったが、ヘリ自身、ホン・ヨナンという人物に関心があった。

「ええ、ご一緒させてください」

そう答えたヘリに、ホン・ヨナンが嬉しそうな笑みを浮かべた。


おもむろに、後方を見やったホン・ヨナンのそばに秘書らしき男性が佇んでいた。

後方の道の路肩に、ホン・ヨナンが乗っていたらしき高級車が停まっている。

ホン・ヨナンが男に言った。

「私は、お茶を飲んでから、タクシーで帰宅しますよ。
今日は、ここまでで良いです」

「かしこまりました」

黒いバッグを抱えた男性は、ホン・ヨナンにお辞儀した。
そして、そばにいたヘリにも軽く会釈すると、運転手が待つ車に戻っていった。

ホン・ヨナンと一緒にいた男の乗った車が去っていくと、「さて」とホン・ヨナンは言って、ヘリを促して歩き始めた。

「遠くはありません。ここを5分ほど歩いた所です」

ホン・ヨナンが言った。

「もしかして、ホン・ヨナンさんは、そのお店に行く為にここに寄られたのですか?」

ホン・ヨナンと並んで歩きながらヘリが質問した。

「いいえ。今日は、通りがかっただけですが、ヘリさんにお会いできたので嬉しいですよ」

ホン・ヨナンが朗らかに答えた。

並んでみると、ホン・ヨナンは長身のヘリと同じくらいの身長だった。
それにもかかわらず、大きく見えていたのは、ホン・ヨナンの威風堂々とした態度のせいかもしれない。

高級スーツに身を包んで、まっすぐに背筋を伸ばして歩いている男は、かつてのヘリの父親、マ・サンテがまだ大きな会社の社長だった時の雰囲気に似ていた。

だが、何かが違う。

情報として知っていたことだったが、ホン・ヨナンは、もともと、財閥の後継者として生まれ育った人物だった。

育ちの良さとでも言うのだろうか。
常に、ゆったりと構えた余裕のある空気を感じる。

それは、幼少より、何不自由ない贅沢な暮らしをさせてもらっていたヘリに、どこか通じるものがあった。

イヌのいないところで二人きりになったのは初めてだったが、ヘリは、居心地の良さを覚えながら、ホン・ヨナンと歩いていた。

やがて、喧騒の大通りから、1本裏通りの小路に入った先に、ホン・ヨナンが言っていた店が現れた。

『紅茶専門店』と書かれた看板は、古めかしく、店の外観はアンティークな雰囲気だった。

ホン・ヨナンとヘリが店の扉を開けて、中に入ると、その印象はますます深まった。

薄暗い店内を、橙色の白熱灯の光がやわらかく照らしている。
重厚なカーテン。アンティーク調のスタンドランプ。壁は天井まである作り付けの本棚に囲まれ、その棚の中には、洋書を含めた書物がびっしりと並べられていた。

座椅子には、ソファが配置され、客用のテーブルの上には、それぞれ、小さな花瓶の中に花が生けられている。

客層の年齢は様々だったが、お茶を飲みながらの会話も静かだった。

店内には、クラシック音楽とゆったりとした時間が流れている。

カウンターの中には、店のマスターらしき年配の男性と従業員らしき若い女性の姿があった。

マスターは、ホン・ヨナンを見ると、「いらっしゃいませ」と声をかけた。

常連だということを認識している顔のマスターに、ホン・ヨナンも、頷いて見せた。

「お好きな席にどうぞ」

そう声をかける女性従業員に、軽く手をあげた後、ホン・ヨナンは、本棚近くの奥まった席にヘリを誘導した。

「この席が空いている時は、私の定位置になっています」

ホン・ヨナンがそう言った。

女性従業員が、水とメニュー表を運んできた。

「いらっしゃいませ」

女性も、常連のホン・ヨナンと顔見知りのようだった。

「いつものになさいますか?」

「ええ。私は、いつものにしますよ。でも、注文は待ってください。連れが決まった後で、声をかけます」

「かしこまりました。ごゆっくり」

女性従業員は、ホン・ヨナンとヘリにニッコリと微笑むと、水と開いたメニュー表を置いて、カウンターに戻っていった。

カウンターの向こう側の棚には、さまざまな形の紅茶カップと茶葉の缶が並べられていた。

ヘリは、店の雰囲気がすぐに気にいった。

「良いお店ですね。私は好きです」

そう言うヘリに、ホン・ヨナンが嬉しそうに頷くとメニュー表を見せた。

「ここの紅茶を飲めば、もっと気にいりますよ。ヘリさんは、どんな紅茶がお好きですか?」

「私は、普段は、コーヒーを飲むことが多いのですが、イヌがよく作ってくれるロイヤルミルクティーが好きです」

「ソ・イヌ君が、あなたにロイヤルミルクティーを作るのですか」

ホン・ヨナンがふふっと笑った。

「では、この店のロイヤルミルクティーもいかがですかな?他にも種類はありますが、この店で、とくにおすすめなのは、ロイヤルミルクティーと、シャリマティーです」

「シャリマティーというと、オレンジが入っている紅茶ですか?」

「ええ、そうです。でも、ただ、オレンジが入っているだけではありません。私は、この店のシャリマティーを飲んでから、他の店のものは飲めなくなってしまいました。それくらい気にいっています」

女性従業員が言っていた、ホン・ヨナンの「いつもの」というのは、そのシャリマティーのことなのだろう。とヘリは理解した。


「シャリマティーにも惹かれますが…、私は、今日はロイヤルミルクティーにします」

そう決めたヘリにホン・ヨナンは頷くと、女性従業員を上げた手で呼び寄せ、紅茶を注文した。


女性従業員がカウンターに戻っていくと、ホン・ヨナンはテーブルの上の水を一口含んだ。
そして、スーツの上着の内ポケットから、何かの薬を取り出し口に含むと、水と一緒に呑み込んだ。

心配そうな表情がヘリの顔にでていたのだろう。

ホン・ヨナンは、ヘリの視線に気づくと、「体調を整える薬ですよ」と何でもない風に言った。

「年を取ると、体に不調が出るのは仕方ないことです。運動もして食事にも気をくばっていたつもりですが、若い頃に無茶したつけが出ているところもあります。ヘリさんもまだお若いですが、どうか体には重々気をつけて下さいよ」

「はい」

ヘリも、グラスの水を手にとって、口に含んだ。

共通の話題として、最初にホン・ヨナンからイヌの話を振られると思っていたヘリだったが、ホン・ヨナンは、違う事を口にした。

「何か悩み事でもありましたか?先ほど街でお見掛け時に、とても深刻そうな顔をしていました」

「え?」

ヘリは、驚いて、とっさに頬に手をあてた。

「私、そんな顔をしてました?」

「はい。あの建物のボクシングジムに入ろうか、どうしようか迷っている、というより、あの中に、追っている事件の犯人がいる、という顔でした」

ヘリの職業が検事だと知っているホン・ヨナンが面白そうに言った。

実際に見ていたのは、ボクシングジムの中では無く、ガラス窓に映った自分の顔だったヘリは、恥ずかしそうに、首筋を手でかいた。

「はい。考え事をしていました」

「考え事というのは、恋人のことですか?ぶしつけな質問ですが、イヌ君と何かありましたか?」

「いえ、イヌのことじゃありません」

ヘリは、慌てて、否定するように手を振った。

「少し職場の事で考えることがあったものですから」

「人事異動に関わることでしょうか?」

そう指摘するホン・ヨナンに、ヘリは驚いて、なぜ知ってるのです?という顔をした。

「あたりですかな?ただの直感です」

ホン・ヨナンが、落ち着いた顔で頷いた。

「この時期は、どこもそんな辞令が下ります。私も会社勤めをしていましたから、そのあたりのことは分かります」

大企業のトップに長くいたホン・ヨナンの方が、社会人2年のヘリより知っていることだろう。


「今日、正式に辞令がおりました」

ヘリは、そう言うと、うつむいてテーブルの下で両手を合わせた。



(後編へ続く)



登場人物

マ・ヘリ…ソウル中部地検の検事。
ソ・イヌ…敏腕弁護士、ヘリの恋人。

ホン・ヨナン…イヌの友人。老紳士。


「検事プリンセス」ファンの方、大変お待たせしました。
「追憶の香り」は、数年前に、イラスト付きで予告していた小説です。
その時のイラストと予告記事は、こちら
シーズン1の最終話の1つ前の話であり、未来の夫婦となっているヘリとイヌが出てくる話なので、シーズン3に公開しようかとも思っていました。

夢桜」で仄めかしていた、ヘリの職場異動の話です。

小説の中で登場するホン・ヨナンはオリジナルキャラクターですが、今まで公開した二次小説の中でたびたび登場しています。

刻印
素顔のあなた

ホン・ヨナンは、検事プリンセス二次小説シリーズ、シーズン2の中で、かなり重要人物として登場予定でした。(プロットだけでもシーズン3まであります)

シーズン2、シーズン3は、作品にみつばのオリジナル要素が強くなってきます。
・・・もう、読者さんが残り一人になるまで二次小説は書く、が現実のものになってきてますが、
ドラマ後の世界を濃く引きついで書かせていただいたシーズン1は、今度こそ完結させたいです。

【拍手コメントレス】

大丈夫です。みつばのブログを読む方が減っただけで、
検事プリンセスファンの方は減っていません。まだどこかにいらっしゃるはず。
イヌ×ヘリ好きの方も。ソビョン病も。
みつばは、ソビョン病と、今は陳情令熱に浮かされてますけど。
年を取ると、複数の病気を抱えるようになるものです(笑)←笑えない。


(連絡)
「陳情令」記事の方への拍手コメントを書いてくださった方、ありがとうございます!
初めて書いてくださった方も何人かいらしているので、「陳情令」記事の時にお返事させて頂きます。


ドラマを知らなくても小説を読んでくださった方、検事プリンセスファンです。という方も。
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「みつばのたまて箱」 ブログ開設9周年記念二次小説、第1弾。
共通テーマ「存分にイチャイチャ出来ない部屋に恋人達が泊ることになったら?」

韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説「差止請求」です。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。


ほのか~に、大人向けの話。



差止請求



イヌとヘリが、その日泊まったホテルの部屋は、
廊下を人が通る足音や、隣の部屋のシャワー音も聴こえるほど壁が薄いところだった。

普段だったら、このようなホテルに泊まる二人では無かったが、
今夜は、ここに泊まらなくてはいけない事情があった。

避けきれない事情に、ヘリは致し方ないという気持ちで現状を受け入れていたが、これから起こることに関しては、そうでは無かった。

「イヌ…」

ヘリは、ベッドの上で、自分に覆いかぶさっている男の名を小さく呼んだ。

…シングルサイズベッドが2つある部屋の中で、きっと朝まで1つしか使われない。

そんな確信をもって、そして、今夜は、それを阻止したい思いで、ヘリは恋人のイヌに言った。

「今夜はやめておきましょう」

なにをやめようと言っているのか分かっていて、イヌは惚けたような顔をした。

「どうしてだ?」

「だって…ほら。聞こえるでしょ?隣の部屋のテレビの音すら漏れてる。
廊下だって、人が歩く音すら聞こえるのよ。こんな部屋でしたくない」

「マ検事さんは、そういうところが意外に堅実だよな。人の思惑なんて気にしないって言動で、人を振り回すのがお得意なのに」

「しーっ。ここで検事なんて呼ばないで。誰に聞かれるか分からないのよ?ソ弁護士。
見張っている奴らに、ばれたら困るわ」

「張り込みでも、潜入捜査でも無く、君の趣味の尾行だろ?」

…僕には関係ないね。

我、関せず。

そんな態度で、事をすすめようとするイヌの体をヘリは下から必死に押し上げた。

「この隣の部屋にいるのは、私が担当している案件で追っている犯人グループの一味かもしれないの。偶然こんなところで会ったけど、これも縁よ。見逃せないわ。それに尾行はあなたのお得意分野じゃない。そうでしょ?元ストーカーさん?」

チクリと嫌味を言うヘリにイヌは苦笑を浮かべた。

「袖振り合うも多生の縁、とは言うけど、僕は、今日、君の腕が通りすがりに奴らに偶然触れた縁なんていらなかったよ。とくにデートしている最中はね。一緒にいる女性が恋人より、被疑者候補に夢中になるのを愉快だと思えない僕の気持ちも察してくれ。ヘリ」

イヌの言うことは最もだったが、ヘリも後には引けなかった。

「向こうは私の顔も正体も知らない。それに、今日は貴方も一緒だった。
恋人として、ホテルに泊まるのは自然だったのよ。それに、あなたも協力してくれるって言ったじゃない」

「言ったよ。だから、君も、それなりの報酬を払ってくれ。僕の依頼料が高いこと。知ってるだろ?」

「悪徳弁護士」

ヘリが、小さい声で悪態をつくと、イヌを軽く睨んだ。
しかし、本気で嫌悪はしていなかった。

ヘリは憎まれ口の減らない恋人との応酬には慣れていた。

それに、なんだかんだ言って、ヘリは、イヌが自分を助けてくれることを知っていた。
ヘリを心配しているところもあったが、イヌも、こういう事態に胸を躍らせる性格だと思っていたからだった。

ただ、それは、半分以上ヘリの勝手な思い込みで、イヌからすれば、巻き込まれた感たっぷりの、はた迷惑極まりない結果に過ぎなかったのだったが。

…これくらいの報酬は受け取っていいだろ。

ベッドの上で、
そんな想いが、顔にありありと出ている恋人を、ヘリは何とか保っている理性で、辛抱強く押しとどめていた。

本当なら、今夜、もっと素敵なホテルの部屋で。
こんな声や音を気にせずに、甘い時間を共に過ごせていたのに。

報酬なんて名目じゃなくて・・・。

ヘリのそんな本心もイヌにはお見通しだった。

イヌが、ヘリの横顔に乱れた髪を、整った指先でかき上げ、
露わになった頬にキスを落としていく。

耳元に感じるイヌの熱い吐息に必至で抗うように、ヘリはギュッと目を閉じた。

イヌの手がヘリの上着の中に滑り込んだ時、
ヘリは、「卑怯よ」と小さく抗議した。

「今夜は、しないって言ったのに」

「それは、君が勝手に取り決めた約束だ。僕は承諾していない」

「でも・・・あっ!」

イヌから与えられた刺激に、思わず反射的に声を上げたヘリは、ハッと自分の手で口をおさえた。

「しーっ…」

イヌが、ニヤリと笑って、人差し指を唇に当てていた。

…仕掛けておいて。どこまでも意地悪な男。
人が必死で我慢している姿を見て悦んでる。

ヘリは、拗ねたように頬を膨らませた。

「イヌ。いい加減にしないと、私にも考えがあるんだからね」

「へえ?どんな考え?」

「今後、もう二度と、こんな事をさせないんだから」

「それ、すぐに、君が自ら棄却しそうな請求だな」

「イヌっ」

憎まれ口の応酬の間も、イヌから容赦なく、身体に与えられる甘い刺激にヘリは陥落しそうになっていた。

そんなヘリに、イヌはとどめを刺すように、顔を寄せた。


「…声を聞かれたくないっていうことには、協力するよ」


ヘリの耳元で、そう低く魅惑的な声で囁いたイヌは、口をふさいでいたヘリの手を脇に退けた。

そして、ヘリが次の言葉を発する前に、その口を唇で塞いだ。

…安心しろ。不逞の輩たちに、君のこの可愛い声を聞かせはしないよ。

イヌの、そんな心の声は、ヘリには聞こえなかった。
ただ、イヌの首に両手を巻くと、目を閉じた。

…もう。仕方ない人ね。
でも、仕方無いのは私の方。
結局、この男に抗えないんだもの。

そんな事を思いながらヘリは、
キスに応じ、イヌの愛撫にその身を委ねていった。




(終わり)




本当に、ただイチャついているだけのミニ話。


本来、「差止請求」って言葉は、こういう時には使いません。
この二次小説の二人の言葉遊びみたいなものです。

あいかわらず、一直線なヘリに振り回されるイヌの話。
それでも、最終的に、自分のペースにヘリをちゃんと誘導する。
さすがソ弁護士~というところで。
ベッドの上でもsっ気たっぷりですから。←みつば妄想の中で。

二人の会話は書いていると楽しいです。
弁論では、やはりイヌの方が上なので、普段は言い負かされちゃうかもしれませんが、ヘリだって、仕事でスキルを磨いてきています。プライベートではともかく、法廷に立ったら…。
二次小説では二人が同じ法廷に立つのを、回避させたのですが、俯瞰では見てみたい思いがあります。

これは、ブログ開設記念日の書き下ろし作品で、二次小説シリーズの新作ではありません。
新作の短編更新まで、しばらくお待ちください。


※ ブログ開設9周年記念小説、第2弾
「陳情令」の二次小説は、昼12時更新の予定です。


【拍手コメントレス】

今年も無事、この日をむかえることが出来ました。
「検事プリンセス」ファンの方、このブログへの応援も長い間ありがとうございます。

最初に書いた記事に、初めて拍手を1つ頂いた時、
どなたかは分からないけど、見てくださった方がいる~!という感動を今でも覚えています。
ただ、初期にアップしたブログ記事を、今は、直視出来ません(苦笑)

「陳情令」を視聴予定の「検事プリンセス」ファンの方。
原作はBLで、みつばの二次小説もBL設定ですが、ドラマは、そういう要素を抜いて視聴しても大丈夫です。
映像も音楽も美しく、美青年俳優、に美女優さん達が、これでもか!ってほど出演されているので、とっても目の保養になりますよ♪

「陳情令」ファンで、「検事プリンセス」の二次小説の方も読んでくださっている方、ありがとうございます!
ドラマの方は全部視聴されました?ドラマ後半、ヒロインに近づいた謎の男の正体が明らかになった後の、ドラマ展開の切なさといったら・・・(涙)ヒロインを愛してるのに、「愛してる」と言えない男と、二人の関係に萌え萌えします。
プチトマトの二次小説(笑)。今年も、みつば家のベランダでプチトマトが栽培されています♪


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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説
「バレンタイン記念日2020」です。

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検事プリンセスの書き下ろし短編です。

大人向け描写があります。
自分は精神的に大人だと思う方だけお読みください。





バレンタイン記念日2020



「ただいま」

夜遅くに仕事から帰宅したイヌは、
小さな声で言って、自宅のドアを静かに閉めた。

しかし、物音に気付いたらしい妻がリビングから出てきた。

「おかえりなさい。イヌ」

「すまない。遅くなった、ヘリ」

「いいの。寒かったでしょ。早くリビングに入って暖まって」

「ああ、その前にこれを。ハッピーバレンタイン」

そう言って、イヌは手に持っていた花束をヘリに差し出した。

ヘリは、嬉しそうにその花束を受け取った。

「ありがと」

花束の中に、イヌが好きな、そして、ヘリも好きなフリージアの花も入っていた。
いつもの花屋で、購入したのだろう。

「花瓶に飾るわね」

先に歩き始めたヘリがリビングに向かう扉の前で手招きした。

イヌがリビングに入ると、暖房で暖められた空気が体を取り巻いた。
イヌはほっと息をつくと鞄を椅子の上に置いて、周囲を見渡した。

外の空気が冷え込んでいる為だけでなく、部屋の中もやけに静かだった。

「子どもたちは実家に?」

「ええ。今日はあっちでお泊りするんだって。子ども達も喜んで行ったわ」

「そうか…」


バレンタインデーだから、と、ヘリの母親、エジャが気をきかせて、子ども達を預かってくれたのだろう。
それなのに、仕事の都合で帰りが遅くなり、申し訳ないことした、というような表情になったイヌをフォローするように、ヘリがキッチンから言った。

「ママ、今夜は孫たちと一緒に眠れるって、子ども達と同じくらいはしゃいでたわ」

「お母さんに喜んでもらえて良かった」

「ええ。待っていて、すぐに夕飯の用意をするから」

「君の食事もまだか?」

「うん。イヌと一緒に食べようと思って」

「お腹がすいただろう。僕が料理するよ」

「大丈夫。下ごしらえは終わってるの。ほら、海鮮鍋を準備してるわ」

ヘリが、花を生けた花瓶を手にダイニングテーブルの椅子に座っているイヌのところに戻ってきた。
そして、花瓶を置くと、またキッチンの方に戻り、冷蔵庫を開けて、中から下ごしらえした海鮮鍋の材料を取り出し始めた。

イヌは、ダイニングテーブルの上に置かれていた鍋の蓋を開けた。

中に、だし汁が入っている。

材料は食べやすい大きさに綺麗に切り添えられ、皿に盛りつけられていた。

「美味しそうだな」

「海鮮鍋に失敗した時の為にラーメンも用意してるの」

ヘリが悪戯ぽく笑ってラーメンの袋をひらつかせた。

それは、ヘリの冗談で、今のヘリの料理の腕では、海鮮鍋が失敗することなど無かった。

ただ、昔の思い出を含んだヘリの言葉に気づいたイヌも、口元を綻ばせた。

「その時は、僕がラーメンを作るよ」

「キムチも入れてね」

ヘリが言って、イヌが笑った。

そうして、
イヌとヘリは、二人で作った海鮮鍋を堪能した後、キッチンで一緒に片付けをした。

「しかし、静かに感じるな。寝ていても静かだけど、あの子たちが、家の中にいないという事が不思議に感じる」

イヌが言った。

「そうよね。家の中に本当に二人きりっていう感じが久しぶりよね」

「そういえば、君は、今日は酒を飲んでいないな」

「あら、本当だわ。バレンタインデーだからって、奮発して高いシャンパンも買っておいたのに」

「後片付けを終えたら一緒に飲むか?」

「ええ。でも、その前にイヌは風呂に入ってきたら?」

仕事疲れもあって、酒が入れば睡魔が襲うだろう。
ヘリは、そんな気遣いでイヌに風呂を進めた。

「そうだな。じゃあ…」

イヌは、軽くすすいだ最後の皿を食洗器に入れセットした後、ヘリを振り返った。

「一緒に入るか?」

「え?」

ダイニングテーブルを布巾で拭いていたヘリが、顔を上げた。

「久しぶりに。二人きりで風呂に」

微笑んではいるが、真面目な誘い顔のイヌにヘリは無償に照れくさくなった。

もう照れる年でも、付き合いでも、経験でも無いのだったが。

「…いいわよ」

周囲に誰もいない事が分かっていながら、ヘリは、頬を指でかきながら、目を泳がせた。

そんなヘリの顔にイヌが微笑を浮かべると、風呂の準備に向かった。

風呂に湯を入れた後、イヌとヘリは一緒にバスルームに入った。
イヌが先にシャワーを使用している間、ヘリは、花の香りのする泡風呂に入り、泡を手ですくったり、吹き付けたりして戯れていた。

そして、ヘリがシャワーを使用した後、
何とか二人一緒に入れる大きさの風呂の中に半身を沈めた。

「…狭い」

照れ隠しに小さく言ったヘリにイヌが笑った。

「体型も、マ・ヘリ節も変わらないな」

二人の子どもを出産していたが、ヘリの体型は10年前とほとんど変わっていなかった。

「あなたもね」

ヘリは、イヌの脇腹を手でつついた。

イヌの体型も、早朝や休日にジョギングやトレーニングを欠かさなかった成果が表れていた。

夜、ベッドの上で愛を交わしてはいたが、明るいバスルームの中で二人きりで互いの体をまじまじと観察するのは最近では珍しいことだった。


「…傷ももうほとんど目立たない」

ヘリはポツリと呟いて、自分の腹部に手を置いた。

ヘリは二人目の子どもを帝王切開で出産していた。

最初の頃は、ビキニを着ると隠せない手術痕ではあったが、
今では目を凝らさないと分からないくらいに消えかけていた。

泡風呂の中でそれは見えなかったが、イヌがそっとヘリの手に自分の手を重ねた。

傷痕が消えても、体調を崩した時に少し痛みを感じると言っていたヘリ。

命がけの出産で、あの時のことを思い出すたび、イヌは今でも、ここにいるヘリと子どもが無事だったことに感謝するのだった。

イヌは、労りと慈愛の気持ちを込めて、横にいるヘリにキスをした。

軽いキスのつもりだったが、唇を重ねた後、物足りない想いがイヌを支配した。

それは、ヘリも同じだった。

互いの腕を伸ばして、体を絡め合うと、イヌとヘリは抱き合って、今度は深い口づけを繰り返した。

湯で温まった身体が、別の意味で火照りだし、その熱の行き場を探し出した。

「熱いわ…」

ヘリは、囁くと立ち上がって風呂から出た。

その動きに合わせて、キスをしていたイヌも一緒に立ち上がった。
そして、抱き合ったまま、ヘリの体をゆっくり、バスルームの床に押し倒した。

「…こんなところで?」

今は、バスルームだけでなく、家の中に二人きり。
遠慮することなど無いのに、小さな声で囁くヘリにイヌが微笑を浮かべた。

「今しか出来ないところでしよう」

「じゃあ、この後、キッチンに行く?」

おどけて言うヘリに、「それもいいな」とイヌが笑って、ヘリに体をふせた。

床面に背中をつけたヘリが冷えないように、イヌがシャワー栓をひねって、熱い湯を降り注がせた。

「ん…っ」

イヌとヘリは、キスと愛撫を繰り返しながら、狭いバスルームで体を重ね、
ヘリが、ひときわ甘い嬌声を上げ全身を震わせると、イヌがそっと身を離した。

「…イヌ。あなたは、…まだでしょ?」

ヘリが、イヌの顔を手で撫でながら下から言った。

「君もまだ足りないだろ?」

イヌの問いかけに、ヘリが小さく頷いた。

「場所を変えよう」

…もっと思いっきり君を抱ける場所に。ここは狭い。

そう伝えるイヌに、ヘリが「本当にキッチン?」と今度は真面目に聞いて、イヌを笑わせた。

そして、バスローブを羽織り、床に横たわったヘリの身体をもう1つのバスローブで包み抱きかかえると、夫婦の寝室の方に向かった。



「今夜は思いっきり声を上げていいんだ。可愛い声を聞かせろよ」


行為の最中。

そう耳元で囁くイヌの甘い声に煽られて、ヘリはベッドの上で、何度も理性を手放した。


やがて・・・。

ベッドの上で布団にくるまり、くったりと脱力しているヘリの所に、
キッチンに行ったイヌが冷えたシャンパンとグラスを2つ持って戻ってきた。


そして、ベッドに腰掛け、シャンパンをグラスに注いで、1つをヘリに渡した。

ヘリは、身を起こし、ベッドのヘッドボードの枕に背を預けると、シャンパングラスをイヌの方に掲げた。

「私たちの何度目かのバレンタイン記念日に」

「おおざっぱだな。ちゃんと回数くらい覚えておけ。記憶力がいいんだから」

「あなたが今まで何をしてくれたかは、ちゃんと覚えてるわ」

そう言って、ヘリはイヌとグラスを合わせると、美味しそうにシャンパンを口に含んだ。

「あなたへのバレンタインの贈り物。さっき渡しそびれちゃったけど、リビングに置いてあるの。ジョギングする時に着るパーカー。私がデザインしたの。そして、私とお揃い」

「ピンク色じゃないよな?」

「それは、見てのお楽しみ」

そう、悪戯っぽく笑うヘリにつられて、イヌは苦笑を浮かべた。

「僕からは、君の欲しがっていたバッグを。注文していたが、今日に間に合わなかった」

「いいの。待ち遠しく思うわくわく時間が長くなるから。それに、そのバッグで仕事をするのも楽しみ」

「君の新しい相棒と、仕事を一緒に頑張ってくれ」

「ええ」

イヌとヘリは再び、シャンパングラスを合わせると、中身を飲み干した。


「…イヌ、私、もう、眠い…」

あくびをしたヘリは、トロンとなってきた瞼を必死に開けていた。

「眠ればいい」

「でも、シャンパン、まだ1杯しか飲んでない」

「明日、飲めばいい。残しておくから」

イヌより早く帰ってきてはいたが、最近のヘリも仕事が多忙だった。

疲れのたまった週末で、さらに平日の夜より、“ちょっと激しい運動”をしたせいで、
睡魔が早くに襲ってきたのだろう。


「明日は休日だ。ゆっくり休め」

「…イヌは?」

「僕は、少し仕事をしたら寝るよ」

「無理しないで」

「運動した後、体をクールダウンしてから寝る理由もある。そんなに時間はかからない」

「うん…」

「明日は、何時頃に子ども達を迎えに行けばいいのかな?」

「昼頃でいいって、ママが。そして、実家で一緒にランチを食べましょうって」

「お母さんの手作りのご飯か。楽しみだ」

「きっと、ママは、イヌの好物もいっぱい作るから覚悟しておいてね」

ヘリは、ニッコリと笑うと、また、あくびをした。


「…おやすみなさい…イヌ」

シーツの上に沈むように横たわったヘリに、イヌが布団をかけた。

そして、ベッド脇のサイドボードの上のランプの光を常夜灯にした。

ヘリの目はすでに閉じられていた。


「おやすみ。ヘリ」

イヌは、ヘリの額にキスを落とした。

そして、常夜灯の灯に照らされた、ヘリの寝顔を見つめ、優しい微笑みを浮かべた。



「今年も、君と一緒にバレンタインを過ごせて嬉しいよ」


イヌの囁きが夢路に入ったヘリに届いたかのように、ヘリがフフッと小さく笑った。



(終わり)



「検事プリンセス」ファンの読者さんへ。

「ゲレンデへいこう」間に合いませんでした。ごめんなさい。
代わりに、2020年のバレンタイン(リアルタイム)のイヌ×ヘリの物語を書き下ろしでお届けします。

もう、4コマ漫画バージョンやパラレル話でほのめかしていたので、未来の話の完全ネタバレになってます。

イヌとヘリは結婚していて、子どもは二人。(みつばの二次小説の世界の設定)
そして、これも、未来話でほのめかしていたので、もう書いてしまいますが、
みつばの二次小説の中で、イヌは仕事を独立しています。
でも、ドラマに出てきた法務法人「ハヌル」には戻っていません…という設定です。

ドラマ本編の16話で就職した事務所をどうして辞めたのか?や、どういうところで働いているかの理由は、二次小説を更新出来ていたら、「ゲレンデへいこう」の後の長編シリーズ3話の中で徐々に出てくる予定でした。

この「バレンタイン記念日2020年」の話は、みつばの「検事プリンセス」二次小説では、最終回直前あたりの話になります。

予定していた二次小説の最終回は、10年後の話だからです。

みつばの二次小説の世界では最終回と最終話があって。
今までに雑記でも書いてましたが、もう。本当にみつばが「検事プリンセス」の話を、これ以上書けません!ってなった時、最終手段で、この2話と結婚式の話は最後に更新したいです。

独身時代のラブラブなイヌ×ヘリとは違う雰囲気です。
10年後…結婚して父母になった中年のイヌ×ヘリではありますが、変わらず絆の強い美形カップルだと思っています。

このイヌ×ヘリになる前にいろんな事があるのですが(みつばの二次創作の世界では)
先に、未来の話のイヌ×ヘリを、ほんの少しお見せしました。

もうシリーズの流れに関係なく、イヌ×ヘリ話は、書けるものをアップするかもしれませんが、「検事プリンセス」、まだ好きな方がいれば読んでくださいね。

それでは、これを読んでいる皆さまも楽しいバレンタインデーをお過ごしください♪

さあ、みつばも今から、家族にばら撒くのと、自分が食べるチョコを買いに行こう(笑)


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「検事プリンセス」二次小説INDEX

・恋人としたい33のリスト2の3話(最終話)

「検事プリンセス」二次小説INDEX2

(シリーズより時間が経過した後の話に)

・旧正月

(短編・書き下ろし話に)

・運動は朝起きた後に 

それぞれ、リンクを更新しました。

旧正月は、番外編の「MISS YOU」を更新後、
他数話と共にシリーズの方に入れる予定です。
(ようやく未来の話に時間が追いついてきた(涙))

あとは、「ゲレンデへ行こう」を完結させて、
短編を更新したら、他話も結構シリーズの方に以降できそうです。

そうしたら、後は、長編3部作…予定。

その後もプロット続いてますが、
とりあえず、この3部作が完成したら、自分で自分を褒めてあげたい。
そんな気持ちで、これからも完成目指します♪

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「恋人としたい33のリストの3話(最終話)です。

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↓どんな話か忘れたという方に。

「恋人としたい33のリスト2」 1話 2話



恋人としたい33のリスト2(3話)




遊園地についたヘリとイヌ。

「イヌ、イヌっ!今度はあっちよ」

遊園地のパンフレットを片手に、もう片方の手でイヌの手を引きながら、
ヘリは遊園地の中を駆け巡っていた。

ともすれば、親子連れで来ている子ども達よりはしゃいだ姿に、イヌが苦笑した。

「ヘリ、君は酔いやすい体質じゃなかったか?こんな乗り物に乗って大丈夫か?」

「私、ジェットコースターは子どもの頃から大好きなの」

ヘリは言った。

「イヌは駄目?もしかして怖いとか?」

「全然。よし、乗ろう」

「うん!」

こうして、順番に並び、意気揚々とジェットコースターに乗り込んだヘリとイヌだったが…。

数十分後、ベンチにぐったりと座り、ハンカチを口にあてているヘリに、イヌが冷たい飲み物を差し出していた。

「平気か?興奮しすぎて気持ち悪くなったか?」

「…昔は平気だったのよ。おかしいわ。体質が変わったのかしら」

ジェットコースターで酔ったらしい。

休んでいて、気持ち悪さは薄まってきてはいたが、
まだ頭の中がぐるぐるする感覚にヘリはうつむき加減で目を閉じていた。

「もっと、他の乗り物もいっぱい乗りたいのに」

「日頃の疲れもあるのかもしれない。無理するな。それに、今日だけじゃない。また来ればいい」

イヌの労わりの言葉に、ヘリは「ええ」と答えると目を開けた。
そして、イヌが買ってきてくれた飲み物を口にすると、軽い吐息をつき、
チラリと別の乗り物の方を目にした。

「あれ、なんて、もっと駄目よね?」

コーヒーカップ型の乗り物がグルグルと回り、乗っている人々の楽しげな笑い声や悲鳴が聞こえる。

「今日は止めておけ」

イヌがきっぱりと言った。

「アトラクションでも、回らないものにしよう。あれなんてどうだ?
回らない上に涼しくなれそうだ」

イヌが指さした方向を見て、ヘリは青ざめた顔で勢いよくかぶりを振った。

それは、お化け屋敷だった。
ヘリが怖がりだと知っていて、からかっているらしいイヌをヘリはジットリと睨み付けた。

「嫌よ。あの中に入るくらいなら、ジェットコースターにもう一回乗るわ」

ハハハ、と楽しげに笑った後、イヌはヘリの持っていた飲み物を受け取り、自分の口に運んだ。

「とにかく、無理して楽しむことは無い。他に乗りたいものがなければ遊園地を出て、他のリストを消化しに行こう」

「…じつは、まだどうしても乗りたいものが1つあるのだけど、いい?」

もじもじしながら、ヘリがイヌの顔を窺うように見た。

「いいけど、何だ?」

急に低姿勢になった、らしくないヘリの態度を訝しがりながら、イヌは首をかしげた。

答えはすぐに分かった。

ヘリの乗りたがった乗り物の順番に並んでいる途中、前後でイヌをじっと見つめる幼い少女たちの視線に苦笑で応えながら、イヌはこの時間が早送りにならないかと心の中で念じた。

それは、全体がピンク色で可愛くコーディネートされたメリーゴーランドだった。

子どもにつきそっている父親もいたが、カップルで乗っている人は、イヌとヘリよりずっと若いカップルだけだった。

「イヌは馬に乗ってね。私は馬車に乗るから♪」

ヘリは、もうイヌの思惑などお構いなしの様子で、嬉々としてメリーゴーランドの中に入った。
そして、「相席良いですか?」と伺ってきた親子と一緒に馬車型の乗り物に乗り込んだヘリは、近くの馬型の上に座るイヌに手を振った。

「あのお兄ちゃん、お姉ちゃんの恋人?」

「そうよ」

同席した小さな少女が臆面もなくそう聞くのを照れもせずにヘリが答えた。

「王子様みたいでしょ?」

「うん、じゃあ、お姉ちゃんと私はお姫様だね」

「そうよ。これから舞踏会に行くの」

「シンデレラ!」

馬車の中で、少女ときゃっきゃっとはしゃぐヘリは、少女と同年代に見えた。

ヘリは、こんな少女時代から憧れていたのだろう。
未来の恋人と一緒にメリーゴーランドに乗ることを。

イヌは、ヘリの顔をずっと見つめ、メリーゴーランドに乗っているという羞恥心を忘れることに集中した。


「ありがと。楽しかった」

メリーゴーランドから降りた、ヘリはしごく満足そうに言うとイヌの腕に手をからめた。

「次はどうする?」

「ランチを食べたら遊園地を出ましょう。次のところに行きたいの」

「次は…」

イヌはリストを見た。

「この場所は…僕も行ったことが無いな。近くにあるか探してみよう」

「最近出来たの。私が案内するわ」

ヘリとイヌは遊園地内のフードコートで軽食をとると、ヘリのナビで水族館に向かった。

そこはまだ新設されたばかりの水族館のようだった。
イヌが昨年韓国にいた時には無かった。

「今年の冬にオープンしたの。私は1度一人で来たことがあって…」

水族館の中に入ったイヌとヘリは、手をつないで館内を見てまわった。

薄暗い館内で、青く光る水槽の中を悠々と魚たちが泳いでいる。
ヘリは、それらを見ながら、水槽のガラスに映る自分と手をつなぐイヌの姿を目で追った。

「恋人としたいリストをつくった時に、将来、恋人になった誰かと来たいと思っていたの。
ただ、この水族館に来た時、あなたのことを思いだしてた。
もし、あなたに会えたら、そして、一緒にいられるなら、ここに来たいって思ったの」

水槽の前で、視線を前に向けながらヘリが言った。

「素敵な水族館でしょ?どう?」

「ああ、気にいったよ」

「ここにも又一緒に来ましょうね」

ヘリの言葉に、イヌは、横にいるヘリの方に目をやった。
ヘリもイヌの方に顔を向けた。

臆面もなく、微笑んでいるヘリの顔に、イヌは愛しさを募らせて、
思わずキスを落したい気分になった。

だが、人目の多い中、イヌはその想いをつないでいるヘリの手に込めて、握りしめた。



ヘリとイヌが水族館を見終わり、
外に出ると、もう薄暗い夕暮れ時になっていた。

「次は…」

イヌがリストの紙を眺めるのを、ヘリは恥らった顔で上目使いに見ていた。

「…行くの?」

「行くよ」

イヌがきっぱりと言った。

「君の望んだリストだ。この後におよんで行かないとか言い出さないよな?」

「行かないとは言ってないわ。でも…」

「あそこに行きたいんだろ?城みたいな外観の」

顔を赤らめて無言になるヘリの手をとって、イヌは車に乗せた。

そして、車のナビ通りに運転をして、目的地についた。

美しい城のような外観のホテル。
そこが、ただの“モーテル”では無いことは、ヘリには分かっていた。

イヌと一緒にホテルに入ることも初めてだったが、
このようなモーテルに入るのも初めてだったヘリだった。

「…リストの中で、これを見られるのがすごく恥ずかしかったわ。他にもあったけど…」

「高級ホテルじゃなくて、こんなホテルに恋人と行きたいって思うことがか?」

部屋に入り、意外にも、ヘリが想像していたより落ち着いた造りの広いベッドに腰を下ろしたイヌが面白そうに聞いた。

「だって、高級ホテルなら子どもの頃からいっぱい行ったことがあるんですもの」

他人が聞けば唖然とするような言葉をヘリが口にした。
今は違うが、ヘリは金持ちの社長令嬢として優雅な生活を送っていた。
父親のサンテは一人娘のヘリを上流階級の女性として育てたかったようで、子どもの時から、一流のものに触れさせていた。

「でも、学生時代、周りの人達が、こんなホテルに行ったとか口にしていたのを聞いて、ちょっと羨ましかったの。なんだか楽しそうで。一度ね、ユナを誘った時があったのだけど、きっぱり断られちゃった。ハハハ」

「当然だな」

ユナに同情しながら、イヌも苦笑した。

「それで、どうだ?楽しめそうか?」

イヌの問いに、ヘリは、「ん~…」と顎に指をあてながら、部屋の中を見渡した。

期待と夢を膨らませていた少女時代ではあったが、実際に来てみると、特に感慨がわかなかった。
恋人と一緒に来たのに。夢はかなったのに。


…どうしてかしら?

ヘリは不思議に思いながら、立ち上がり、部屋の中を見てまわった。

風呂やキャビネットの上に、ボトルや、小さなグッズが並べられている。
ヘリは、それらが何をするものかよく分からなかったが、何となく直視することが出来ない気持ちで目をそらした。

もちろん、イヌに聞くことも出来ない。

ヘリはクローゼットの扉を開けた。
そして、その中に入っていた物にヘリは興味をしめした。

「ねえ、イヌ、面白い物を見つけたわ。ちょっと待ってね」

そう言って、しばらくイヌが待っていたところに、ヘリが戻ってきた。

「ねえ、見て。こんなコスチュームが置いてあったわ」

イヌが顔を上げると、そこに白いフリルが沢山ついた黒いドレスに着替えたヘリが立っていた。
スカートの丈は短く、袖は無く、胸元は大きく空いている。

いわゆるセクシーなコスプレというもので、ヘリのそういう姿を過去に見ていたイヌでも、可愛さに目を惹くものではあった。

だが、そのコスチュームより、イヌが注視したのはヘリの頭の上だった。

ヘリの頭に、可愛いヘアバンドがついていた。

それを見た時に、イヌは、…そういうことか。と心の中で思った。

今日1日、ヘリの「恋人としたい33のリスト」につきあってデートしていたイヌだったが、何かがずっとひっかかっていた。

もちろん、恋人のヘリと一緒にしているデートは楽しかったが、なぜか初めてのことばかりなのに、懐かしい気持ちになっていたのだった。

その正体が今分かったとイヌは思った。

「昔、君はこんなヘアバンドをつけていたな」

そう言うイヌにヘリが驚いた顔をした。ややあって、思い出したようなヘリが聞いた。

「カチューシャと言って。でも、それって…私達が初めて会った時のこと?」

イヌが頷いた。

初めてヘリとイヌが、ヘリの自宅の前で会った時。
少女のヘリは少年イヌの前でこんな姿で現れた。
手には母の作ったカップケーキとバナナジュースを持って。

イヌは、今日のデートのヘリを、少女時代のヘリと重ねて見ていたのだった。
おそらく、あの頃のヘリが憧れて、恋人としたいと望んでいたことを、今大人のヘリが実現している。でも、はしゃいでいたヘリは、少女の心のヘリに見えていた。

そして、イヌも、あの頃の少年時代のイヌのようだった。

ヘリは、イヌの隣に腰かけた。

「よく覚えていたわね。そんな服装まで覚えてるなんて、当時の私、そんなに可愛かった?」

「可愛いかどうかは、よく覚えてない」

イヌが素っ気なくうそぶき、ヘリは頬をふくらませた。

「ただ、今日、あの頃の君と一緒にいるような気分だった」

「そうなの?」

「ん…」

イヌが頷き、微笑した。

「だからかな、今の僕だと恥ずかしいことも大丈夫だった」

「やっぱり、恥ずかしかったのね」

「ペアルックはね」

イヌが言って、自分の服の裾をひっぱると、ヘリは楽しげに笑った。

「昔のあなたでも着てくれたかしら?今のあなただから、つきあってくれたって思ってるけど」

「たしかに」

昔の自分だったら、ペアルックでデートなど絶対に断っていただろう。

んー…、とヘリがちょっと考えた素振りをすると言った。
「私のリストは、昔の私達のデートみたいだったってことね」

「君が昔に考えたものだからだろ?」

「じゃあ、今は?」

悪戯っぽい目でヘリはイヌの顔を覗き込んだ。

「今の私達のデートは?」

「・・・・・・」

何かを期待しているヘリのキラキラしている瞳に、イヌが苦笑すると、
その唇にそっと軽いキスを落した。

「ふふっ…」

恥らって笑うヘリの顔は少女のものではなく、大人のそれだった。

イヌは、ヘリの両肩に手を置くと、後方のベッドにヘリの身体をゆっくり押し倒した。
そして、黙ったまま見上げているヘリに身を伏せると、その頬に口づけを落した。
そのまま、愛撫を続けようとしたイヌだったが、ヘリの手がそれを遮った。

「待って」

「…まだ気分がのらない?」

「ううん。違うの。そうじゃなくて」

ヘリが気まずそうに言った。

「私、ここじゃない方がいい」

「え?」

「マンションの部屋の…ベッドがいい」

後半、ヘリの声が小さくなったが、イヌにははっきり聞こえた。

「今日、イヌとリストを達成したから、最後はイヌの部屋で過ごしたいの。
ここに来るのは昔の私の夢だったけど、今の私はそれを望んでる。それが分かったの」

ヘリが続けた。

「この続きは、この部屋じゃなくて、あの部屋の、あのベッドがいい。…だめ?」

「いいよ」

イヌは頷くと、立ち上がり、ヘリの手を取ると、その体を引き起こした。

「君のリストの続きはまた今度。今は俺のしたいリストにつきあってもらおうか」

「あなたのしたいリストって何かしら?何だか教えてもらうのもためらっちゃいそう」

ヘリが朗らかに笑って、イヌもつられて笑った。

そして、目が合うと、もう一度顏を寄せ合って唇を重ねた。

キスの最中、薄目を開けたヘリの目前に、開いた部屋の窓から夜景が見え、
先ほど行った遊園地の観覧車もネオンで小さく光っていた。

…あ、あれ、乗り忘れていたわ。

ヘリは、遊園地でメインに乗りたかった物をすっかり忘れていた。

でも、あせることは無い。
これから先、恋人と一緒に行く機会はまだまだあるのだから。


「…帰るか」

「うん…」

キスを終え、先ほどより甘く聞こえるイヌの声に、ヘリはときめきながら、コクリと頷いていた。


こうして、

「恋人としたい33のリスト」を終えたヘリとイヌだったが、この夜、二人のデートはまだまだ続くのだった。


(終わり)



ようやく「恋人としたい33のリスト2」完結です!
短編なのに、長い年月かけてます。大変お待たせしました(忘れられてる?)
2話なんて、ガラケーで書いていたものですし。

このイメージイラストはこちら
裏箱ちっくな絵なので、ご覧になる時は周囲の視線にご注意ください!

この時点での当初のプロットでは、ラブホテルで二人は途中まで“して”いた話でした。
なので、イラストもセクシーな感じで。←表現やわらかく!
でも次の話が「プールへいこう」だったので、数年前からプロットでその部分をカットしてます。
ヘリの少女時代からの夢「恋人としたい33のリスト」をイヌと達成しながら、出会った頃の二人が一緒にデートしているみたい…という純愛話でした♪

もう、二次小説の話を忘れちゃったよ。という方も、リアルで年とりましたが、検事プリンセス好きは変わりませんよ。という方も、記事が気にいって頂けたら、拍手ボタンか、ランキングボタンを押してお知らせください♪

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ご連絡。

ここしばらく、みつばのたまて箱内の「みつばの裏箱」の更新をしてなかったので、
管理画面を見てませんでした。

他記事や、白い拍手ボタンの拍手コメントの管理と違って、
ピンク(赤)の拍手ボタンの「裏箱」入口は、別の管理の場所になっています。

なので、ここ数年、拍手コメントが来ていることに気づかずにいました。
ごめんなさい!

「裏箱」の他の作品を見られなかったという方。
もう今ごろは見られているでしょうか?(汗)

ガラケー以外の端末は全部の「裏箱」作品が見られるはずです。

みつばもスマホになったので、動作確認をしてみましたが、
「PCに画面をきりかえる」にして、下にあるピンクの拍手ボタンを押し、
作品の最後の方に「もっと送る」ボタンを押すと、他の作品が見られます。

みつばは、ピンクの拍手ボタンを「御礼ページ(裏作品)」の格納庫にしているので、
「もっと拍手を送る」というより「他の作品をもっと見る」です。

こちらの拍手コメントも今は非公開になっています。

もしかしたら、ここ数年で、ブログ内で「メールフォーム」から
コメントを送ってくださった方もいるでしょうか?
メールフォームの方の受け皿のメールもこの数年
管理しきれずにいて、もしかしたら、見逃していたかもしれません。
ごめんなさい。

「検事プリンセス」二次小説INDEXページ。
または「陳情令」闇香炉3話ページにコメント欄があります。
(カテゴリ、最新記事参照)

こちらは、記入しても承認されるまで公開されません。
完全に非公開にしたい場合は、非公開のところをチェックしてください。

ここ数年、竜宮城と鬼が島出張に行っていた浦島太郎(みつば)からの取り急ぎのご連絡でした。

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韓国ドラマ「検事プリンセス」の二次小説「旧正月」です。

おまたせしました。
検事プリンセス、みつばの二次小説の新作短編です。
「聖夜の祈り」の2か月ほど後の話になります。

みつばの「検事プリンセス」の他の二次小説のお話、コメント記入は、
検事プリンセス二次小説INDEX2」ページからどうぞ。
このブログに初めていらした方、このブログを読む時の注意点は「お願い」を一読してください。



旧正月


「旧正月の休みだというのに、お前は朝から慌ただしすぎるぞ。エジャ」

ここ最近はずっと尻に敷かれていたようなサンテがつい妻にそう言ってしまったのも無理はない。
旧正月の祝日で、サンテ、エジャの経営しているパン屋も今日は休みになっていた。

一人暮らしのヘリも実家に戻っていて、親子3人水入らずで家でゆっくり過ごそうと思っていたサンテだったのだが、妻のエジャは、何故か朝から家の中を忙しそうに動き回っていた。

座卓の前に座り、茶を飲みながら黙って新聞を眺めていたサンテだったが、エジャがヘリにも昼食の手伝いを頼むのを聞いて、さすがに声をあげた。

「おい、せっかく休日に家にいるヘリに手伝わせることは無いだろう。
普段、検察庁で夜まで働きづめで疲れているんだ。実家でくらい休ませてやったらどうだ?」

「いいのよ。パパ。私、普段の休日はちゃんと休んでいるし、それにママの手伝いをしたいの」

台所で、エジャの料理の手伝いをしていたエプロン姿のヘリが、菜箸を片手に顔をのぞかせて言った。

「特別な物を作らなくても酒のつまみがあればいいんだ。
料理を作ると言っても普段通りでいいし、台所にはママがいれば十分だ。それより、ヘリ、ここに来て私と一緒に酒を飲まないか?」

「…パパは、あなたと一緒にいたいだけなのよ」

台所で、こっそりとエジャがヘリに耳打ちした。

「ちょっと待っていてね。パパ。この盛り付けが終わったら、そっちに行くわ」

ヘリとエジャは顔を見合わせ、こっそり笑って互いにウインクを交わすと、作業を続けた。

「そうか。じゃあ、酒とグラスを用意するか。祝い用グラスはどこに置いたかな?」

そう立ち上がり、いそいそと食器棚に向かうサンテの後ろ姿にヘリが声をかけた。

「パパ、グラスは4つね」

「4つ?」

棚の扉を開けた手を止めて、サンテが振り向いて不思議そうに聞いた。

「どうして4つ必要なんだ?」

サンテ、エジャ、ヘリ。家族は3人しかいないのに。

「だって…」

ヘリが何か言いかけたその時、家のチャイムが鳴った。

「ん?宅配か?こんな祝日に誰だ?」

そう言って、インターフォン画面を確認しようとしたサンテを凄い勢いで台所から出てきたエジャが止めた。

「はいはい。私が出ます」

「ん?」

エジャはヘリの前を通過するとき、「いらしたわよ」とサンテに聞えない声で言った。

そして、訝しげなサンテの眼差しを浴びながら、エジャは何食わぬ顔で玄関を出て、
家の門を開けに行った。

しばらくして、エジャが「お客様よ」と言ってリビングに戻ってきた。

サンテは、エジャの後ろからついてきた人物を見て、呆気にとられた。

そこにいたのはソ・イヌだった。

ヘリと交際中で、さらに一人暮らしのヘリと同じマンションに住んでいる男。
職業弁護士。長身で美形な上、仕事もやり手だと評判だった。
サンテ自身、自分の事件で弁護を引き受けてもらったこともあったのだが…。

驚きのあまり、自分の頭の中でイヌに関する情報を引き出していたサンテだったが、
すぐに、意識を戻すとヘリの方を勢いよく振り返った。

「ヘリ、なぜ彼がここに来ることを私に言わなかった?」

「言ったわ」

サンテの動揺と焦りの眼差しを物ともせず、ヘリがケロリとした顔で言った。

「パパが残業で遅かった時に、ママに伝えたわ。そうしたらママがパパに伝えておくわって言っていたけど」

…エジャめ。わざと私に伝えなかったな?

今度はエジャに向けられたサンテの批難の眼差しに、エジャはとぼけたように首を傾げた。

「あら?ちゃんと伝えたと思いますけど」

「聞いてない」

「おかしいわね。最近、物忘れが増えてきてるから。年をとると嫌ね。
まあ、今日はあなたも用事が無かったのだからいいじゃありませんか。
ソ・イヌ君がせっかくの休みに、旧正月の御挨拶に来てくださったんですから、さ、イヌ君入って、入って」

リビングのドア近くに突っ立っていたサンテを、ホコリのような扱いであしらった後、
エジャは後ろのイヌに部屋の中に入るようにすすめた。

「お邪魔します」

イヌは、固い表情で、佇むサンテに丁寧にお辞儀した後、台所から顔を出しているヘリの方に顔を向けた。

「いらっしゃい」

満面の笑みで小さく手を振っているヘリに、イヌは柔らかい笑みを見せた。

「・・・・・・」

もう夫の存在を無視して動いている妻と、恋人に会えて嬉しそうな娘の姿を見比べたサンテは、小さくため息を漏らした。

そして諦めの境地で黙ってリビングの定位置に腰をおろした。

今から、外出すると言い出しても不自然だった。
事前に知っていれば、何かしら理由を作って、イヌと顔を合わさずに済んだかもしれない。
しかし、サンテがそうするだろうことを見越して、エジャがわざとイヌの来訪を教えなかったのだろう。

これは完全にエジャに嵌めらえたと分かったサンテだった。

だが、イヌの方も実のところサンテには会いたくないはずだった。

恋人の父親というだけでも緊張する存在なのに、亡くなった父親の事件に関わりのある男なのだ。

自分がソ・イヌの立場だったら、旧正月といえども家に挨拶に来なかっただろう。

「イヌ君は立派ね。旧正月にちゃんと交際相手の親にも挨拶に来てくれるなんて。
ご両親と養父さんのしつけが良かったのね」

エジャがまるでサンテの心を読んだかのように話しだした。

「そういえば、あちらのお父様はお元気?クリスマスにはヘリが大変お世話になって。
アメリカから帰ったヘリからとても良い方だ、とお聞きしたわ。それに、かなりのイケメンとも。私も機会があればぜひお会いしたいわ」

「はい。元気です。友人達と一緒にウインタースポーツを盛んにしていると近況を聞いています。父もお母さんにお会いしたいと申していました」

イヌの返事に、エジャが両手を握りしめると満足そうに何度も頷いてみせた。

「そう、頻繁に連絡を取り合っているのね。いい親子だわ」

「エジャ、エジャ」

サンテが、仏頂面で下から声をかけた。

「まず、お茶か酒を持ってきなさい。挨拶や話はそれからだ。
いつまで客人をリビング前に立たせておく気だ?あ~、ヘリ。お前も、もうエプロンを取ってこちらに来なさい。お前の客だろう」

せめて、リビングに二人きりで座っていたくはない。
イヌもそう思っていることだろう。

そんな考えでサンテは、台所のヘリを手招きした。

ヘリとエジャはまた顔を見合すと黙ったまま笑って、サンテの言う通りに動いた。

座卓上に酒と、つまみと、エジャが料理した豪華な料理が並んだ。
そして、その前にエジャ、サンテ。対面にイヌ、ヘリが並んで座った。

イヌは、立ちあがると、再び膝をつき、「ご家族の繁栄とご健康をお祈りします」と言って、
サンテ、エジャの方に深くおじきをした。

エジャは、家で娘以外にこのような挨拶をされることに慣れていなかったため、
くすぐったそうな表情で、イヌの方を見ていた。
サンテは、渋い顔で、しかし、どこかまんざらでも無い表情をつくっていた。

「さあ、顔を上げて。まあ、まず1杯飲みなさい」

一家の長の威厳を見せながら、サンテはイヌの前のグラスに酒を注いだ。

「はい。頂きます」

イヌは、サンテからなみなみと注がれた焼酎を、サンテとエジャの目線から離れて飲み干した。

いい飲みっぷりではあったが、イヌの酒の許容量を知っているヘリは、やや心配そうにイヌの横顔を見つめている。

「…無理しなくていいから」

ボソっと囁くヘリの小声は、娘の恋人来訪で臨戦態勢に入って感覚が研ぎ澄まされたサンテの耳に届いていた。

しかし、聞こえないそぶりで、サンテはまたイヌのグラスに酒を注いだ。

そんなサンテの横暴を止めるようにエジャがわざとらしく明るい声で口をはさんだ。

「そうそう。あなた、イヌ君がお土産を持ってきてくださったのよ。
美味しそうなケーキなの。食べるのは食事の後にする?それとも今少し味見で出しましょうか?」

「ケーキ?」

サンテが怪訝そうな顔をつくった。

「いつもパン屋で似たようなものを沢山作っているから、ケーキは飽きた。
せっかくだが私は食べるのを遠慮する。餅だったら喜んで食べるのだが」

そう言ったサンテに、エジャはイヌから受け取っていた箱を目の前で開けた。

「あら、ちょうど良かった。餅ケーキよ。あなたも食べられそうね。
今、小皿を持ってくるから、いただきましょう」

…何?餅ケーキ?

慌てたサンテが箱の中を覗き込むと、色とりどりに美しく細工された餅のケーキが並べられていた。

「おいしそう。最近繁華街に出来た新しい餅ケーキのお店ね。デザインが素敵で低カロリーで、若い人にも大人気だって聞いたわ。一度食べてみたかったの。イヌ、ありがとう」

うっとりとした顔で隣の恋人に話す娘に、サンテは気まずさを誤魔化すように咳払いをして見せた。

「うむ。餅ケーキの飾りは、菓子パンの参考になるな」

誰も聞いていないような独り言を呟いて、サンテは自らのグラスに酒を注ぐと、それを飲み干した。

イヌが黙って、焼酎の器を手に取ると、サンテのグラスに注いだ。

「・・・・・・」

「さあ、一緒に食べましょう。イヌ君、たくさん作ってあるから、遠慮しないで召し上がれ」

エジャの声に、皆箸を取った。

黙々と料理を食べている間は十分に間が持つようだった。

エジャは、雰囲気を和ませようとしているのか、天然なのか、
べらべらと賑やかにおしゃべりを続け、ヘリもあいずちを打ったり、時々、イヌの取り皿に料理をとりわけて、料理の説明をしたりしていた。

「私も手伝ったのよ。これなんかママに教わって私が一人で作ったの。味はどう?」

「ん。美味しいよ」

イヌのお墨付きに、ヘリは嬉しそうに頷いた。

「今度、部屋でも作ってあげるわね」

ゴホンっ。

盛大な咳払いがサンテの方から聞こえた。

同じマンションで暮らしている年頃の男女なのだ。
そういう関係だと分かっていても、まだ結婚はしていない。
あからさまに親の前で話されるとどう対処して良いのか分からなくなるサンテだった。

サンテの咳払いに、ヘリは、悪びれもせずにちょっと首をすくめて見せた後、
いそいそとイヌの取り皿にさらに料理をもりつけた。

こうして、エジャの美味しい祝日料理をあらかた、一通り食べた一同は、満足げに寛いだ表情になっていた。

珍しくヘリは酒を最初に1杯だけ飲んだだけでほとんど口にしていなかった。

代わりに、サンテと目の前のイヌは、さしつ、さされつ、お互いに酒を酌み交わしては飲んでいた。

ヘリは、イヌの土産の餅ケーキをつつきながら、その様子を横から眺め、エジャの方に意味ありげな視線を向けた。

エジャは、ヘリの意図していることが分かっている様子で、肩をすくめてみせた。

恋人と妻から見れば、一目瞭然だった。

二人の男たちの酒の許容量はとっくに超えているようだった。
全く飲めないわけでは無いが、飲むペースが早すぎることと、1回で飲み干す量が多すぎるのだ。

しかし、まるで意地になって飲み比べしているかのような男たちを止める事もしなかったヘリとエジャだった。

焼酎の瓶が何本か空いた後、真っ赤な顔になっていたサンテがおもむろに眼鏡を外した。
イヌも眉間に指をあてて、酔いを覚ますように頭を軽くふっていた。

「もう少し飲むかね。私の秘蔵の酒があるのだが」

「いただきます」

ヘリとエジャは、悟ったように目配せして同時に立ちあがると、片づけをするために台所に連れだって行ってしまった。

リビングに残ったサンテとイヌは、しばらく無言で黙々と酒を飲んでいた。

「…アメリカのお父上はおかわりないかね?」

イヌが到着してすぐにエジャが聞いたことを再度口にしたサンテだったが、イヌは、「かわりません」と答えていた。

「ヘリから聞いたよ。とても行動的な方だと。さぞお仕事も出来る男なのだろう」

「はい。仕事は出来ます。それ以外にも特技を沢山もっています。アメリカの父も私が尊敬し目標とする人です」

「そうか…」

サンテが頷いて、残っていた酒を飲み干すとグラスを置いた。

「君の父上も…この国の父だ…。彼も、仕事が出来た。それに特技をいろいろ持っていた。
私に将棋を教えてくれたのも彼だった…」

サンテの口から実の父親の話が出てきたことに驚いたように、イヌがグラスを口に運ぶ手を止めていた。

「君は将棋が出来るか?」

「少し…。子どもの時に父から教わったきりですが。父がいた時、よく相手をさせられました」

「では、私と同じくらいのレベルかもしれない。私も彼とくらいしか将棋をしたことが無かった。負けてばかりだったが。この負けず嫌いの私が。結局1度も彼に勝てないままだった」

遠い目で思い出したように話をしているサンテをイヌはじっと見つめていたが、

「僕もです」と答えた。

イヌと目のあったサンテはうっすらとほほ笑んだ。イヌも口角を上げて目をふせた。

「…今度…」

サンテが言った。

「今度、よかったら一緒に将棋をさしてみないか。酔っていない時に・・・」

場の空気を持たせるための口約束だろうか。
それとも本心でそう望んでいるのだろうか。

サンテの真意は、もうかなり酔っていたイヌの頭では測りきれずにいた。
ただ、体や頭は酔っていて、ほとんど機能しない状態になっていたが、
心の中が、ほんの少し温かい想いで満たされるのを感じたイヌだった。

「はい…」

そう答えて、頷くイヌにサンテは満足そうな笑みを浮かべると、
イヌと同じく酔いでぐらつき始めた頭を手で支えてうつむいた。

やがて・・・。


「あらあら」

台所の片づけを終え、二人の様子を見に戻ったエジャとヘリは、座卓を挟んで対角線で
酔いつぶれて眠っているサンテとイヌを発見した。

エジャは寝室から持って来た掛け布団をサンテとイヌの上にそれぞれかけると、
「起きるまで寝かせておきましょう」とヘリに言って、自分は風呂に入りに行った。

ヘリはそっとイヌの側に座るとイヌの顔を覗き込んだ。

「…ヘリ…」

気配でうっすらと目をあけたイヌが、ボンヤリとした顔でヘリを見つめた。

「イヌ、後でマンションに車で送ってあげるからしばらく眠っていていいわよ」

ヘリが小さな声で言った。

「マ・サンテさんは…?」

「あっちで眠っているわ。パパもそんなに酒に強くないから。きっとこのまま朝まで起きてこないわね。イヌも飲みすぎたでしょ?パパにつきあってくれてありがと」

それに…、とヘリが続けた。

「今日、来てくれたこともありがとう。あなたが旧正月の挨拶に来たいと言ってくれた時はびっくりしたけど、私、本当は来て欲しかったの」

「ああ…わかってた」

旧正月の挨拶の話を持ちかけたのはイヌからだった。

クリスマスが終わって、西暦の年が明け、この国で旧正月を迎えるイヌにも
生まれて初めての事だった。

「新年に、恋人のご両親に挨拶するのは当たり前だ」

「…そう言ってくれて、本当に嬉しい」

うっとりとしたヘリの小声が静まりかえったリビングに響いた。

二人に背を向けて、目を閉じていたサンテだったが、その会話が聞こえていた。

少しの間、会話が止み、ヘリのクスクスと小さく抑えた笑い声が聞こえた。

「…パパの秘蔵のお酒の味がする」

その言葉ですでに酔いで真っ赤になっていたサンテの顔がさらに赤くなったが、
それを見る者は誰もいない。

ヘリが足音を忍ばせて、リビングから去った気配を感じた後、サンテは今度こそ意識を失うように眠ってしまった。

サンテが、次に目覚めた時。
リビングは明るい光で満ちていた。

「…うん…?エジャ。今何時だ?」

まだ酒酔いが残っている頭を押さえながらサンテが起き上がって、エジャの姿を探した。
エジャが台所から出てきた。

「サンテさん。起きました?今は9時ですよ」

「9時って夜のか?」

「何を言ってるんです。朝の9時ですよ。覚えてません?サンテさんは昨日の昼過ぎから飲んでいて、夕方に酔い潰れてここでそのまま寝ていたんです」

「そうか…ん?…おい。彼はどうした?」

サンテはあわてて、テーブルの反対方向に目をやった。
そこには一緒に飲んでいて、一緒に酔い潰れて横になっていたイヌの姿があるはずだったが、今は見えない。

「ああ、ソ・イヌ君なら帰りましたよ。夜中にヘリが車でマンションまで送って行きました」

「そうか…」

リビングにはヘリの姿も無い。

おそらく、イヌを送っていき、そのままマンションの部屋に戻ったのだろう。
または、今ごろ、イヌと一緒にいるか…。

サンテは眠ってしまう前に、聞いたヘリとイヌの会話を思い出していた。

この上なく幸せそうな娘の声だった。
あの声が聞けるのなら、私は父親としてどんなことも我慢できるし、どんなこともしてやりたい。
ソ・イヌの来訪は、歓迎すべきことだった。

そう思いながらも、どこか寂しい気持ちも持て余していたサンテだった。

「結局、娘とは一緒に飲めなかったな」

つい、そう呟いてしまったサンテの言葉に「どうして?」というヘリの声が聞こえた。

驚き、声のする台所に目をやると、そこにエプロン姿のヘリが立っていた。

「パパ。今日も一緒に飲む時間はあるわよ?朝から迎え酒でもする?」

「ヘリ!お前…ソ・イヌと一緒にマンションに帰ったんじゃなかったのか?」

目をしばたたかせて、幻か?という目で娘を見つめるサンテに、
ヘリが朝ごはんをのせたトレーを運んできた。

「夜にイヌを部屋まで送って行ったけど、すぐに帰って来たわ。
だって、今日もパパとママは仕事お休みでしょ?祝日を一緒に祝いたいわ」

「まあ、なんて、親孝行な娘を持ったのかしら。良かったわね。サンテさん」

エジャが言って、ウインクして見せた。

「う…うむ…」

サンテは、気まずそうな顔で座りなおすと、ヘリの持って来た朝食を見下ろした。

皿の上にイヌの土産の餅ケーキが置いてあった。

「将棋か…」

「え?」

餅ケーキを見ながらポツリとつぶやいたサンテに、ヘリとエジャが不思議そうな顔をした。

「いや、後で台を出して久しぶりに打ってみようかと。ヘリ、つきあわないか?」

「ルールくらいしか分からないけど、パパ、いいわよ」

「ヘリは天才だもの。ルールさえ覚えていればパパに勝てるわ」

エジャが言った。

…そういえば、帰りの車の中で、イヌも将棋がどうこう言っていたような…。

ヘリは、そう思い出してクスリと笑った。


冬晴れの美しい祝日だった。

―――いい1年になりますように。

ヘリは、二日酔いでマンションでまだ寝ているだろうイヌを思い、目の前で餅ケーキを美味しそうに頬張る両親を見て、そんな事を心の中で祈りながら、朝食に手をつけたのだった。


(終わり)


「聖夜の祈り」(12月話)より後の2月頃のお話です。
これの前にいくつか話があるのですが、短編のこちらを先に更新しました。

久しぶりの検事プリンセス二次小説更新なのに、ほぼサンテ目線語り(苦笑)
ただ、この話もずーっと、ずーっと、(7年?)プロットが眠っていて、書く予定だった話でした。
ようやく、竜宮城ならぬ、鬼が島に行っていたみつばが戻ってきた感じですが、
勢いあるうちに、「検事プリンセス」でも、「陳情令」でも、「キング」でも、持っているプロットとあらすじだけでも形で残せたらいいな~と思ってます。

それで妄想の中で主人公たちがハッピーエンドになれば♪

検事プリンセスの二次小説は、「聖夜の祈り」の番外編の更新がまだなので、
そちらを完結、構成してからアップになります。
…シリアス過ぎて、手が動かないけど頑張る(汗)
さて、明日は、誰をよぼうかな~。みつば大奥に(笑)
イヌかな?藍忘機かな?「検事プリンセス」はイヌだけだけど、「陳情令」はイケメン君が沢山いて選びきれなくて困ります。←創作の話じゃないの?

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9月、誰かの誕生日だったような。
誰だった?と何度もカレンダーを確かめたみつばなのですが、書いてなく。

ん~。気にせいかな?と思っていたのですが、
ふと、何かの拍子に9月24日は私の誕生日と書かれたものを見つけ。

あ!!ソビョンの誕生日!!24日だった!!(汗)となってしまいました。

韓国ドラマ「検事プリンセス」のソ・イヌ。

今彼に夢中になっていて、元彼の誕生日忘れるなんて最低!←違う。

忘れてないし、元彼じゃないし、まだ別れてないし。←まだ当然ソビョン病末期患者。

でも、ちょっと若い美青年(藍忘機くん)と浮気中のみつばを許してね。←誰かこの妄想女の思い込みを止めてください。

…あれ?でも、待って。藍忘機って、ソ・イヌより年齢的に上じゃない?(汗)見た目とか中の人はすっごく若いけど。(←「中の人」発言はやめましょう)たしか…ドラマでも30代なかば設定のはず。
20歳頃に魏無羨が亡くなって、それから16年たってるから…。

イヌはドラマでは(二次小説現段階)まだ20代後半でしたね。
みつばの中でもう37歳くらいのイメージでした。あはは。←みつばが年をとっただけ。

でも、リアルで年ととっていたら、28歳くらいのイヌもそうなってましたね。

間に合いませんでしたが、イヌの誕生日プレゼントに、近々イヌ×ヘリ短編仕上げます。←公約発言大丈夫?

脳内花畑にいる人たちの誕生日をお祝いするのも楽しいです♪

ちなみに…

中国ドラマ「陳情令」魏無羨の誕生日は10月30日で、藍忘機の誕生日は1月23日だそうです♪ちょっとこの誕生日も調べてみたら、驚くべき事実が!?
その話はまたいつかじっくりと(笑)

話を戻して、

イヌの誕生日もですが、
創作物の中で、公式で誕生日が設定で出ている方は、ストーリーに関係なくても、
何かしら作者さんの意図があって決められていることが多いと思われます

ドラマでも漫画でも小説でも。

どうやって決めているのかは、作者さん達の思惑があると思うのですが、
みつばがオリジナル作品でキャラクターをつくっていたときは、だいたい、星占いか、誕生日占いで決めてました。キャラクターにあわせた性格になるような月日。
それと、相方、恋人になる人はそれに合わせて、相性が良い人とか意味あるものにします。

そういう意味で、イヌの誕生日は分かっているので、ヘリの誕生日はオリジナルで設定したみつば。

ヘリの誕生日話もまだ未公開でした(汗)
年内に「聖夜の祈り」の番外編、更新できるかな~。←しないと次にすすめません。

イヌと藍忘機…今、妄想内でも二人の男の間で揺れているみつばは、リアルでは絶対に二股かけられないタイプです♪←そろそろ目を覚まそうか。

ちなみに、

日本でも、ちょっとぐらつきかけたドラマのイケメンキャラクターがいたのですが、中の人(役者さん)が、リアルに息子の先輩だったことを知り、脳内花畑には入れませんでした。
自分の子どものように見えてしまって…(汗)

妄想は、あくまで、キャラクターで見てないと萌えきれないみつばなのです。


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こんにちは。

みつばです。
亀からもらったたまて箱でタイムスリップしていたみたいです。

ブログ開設記念日も過ぎてました(汗)

拍手コメントを送ってくださった方、ありがとうございます!!

ブログをずっと読んでくださって、
長くおつきあいして頂きありがとうございます!

そうですよね。検事プリンセス放送(韓国)から10年?
みつばのたまて箱のブログ開設も9年目に突入しました。

私も今でも検事プリンセス好きですよ~。もちろんですよ~。
時々、ドラマや動画見てます。
イヌには今でもときめきますし、ソビョン病です♪

ただ、イヌがとっても若くなったように見えるのは気のせいかな?(汗)

みつばも脳内は若いつもりですよ♪
…この前命に別状ない腫瘍は見つかったけど(苦笑)

ちょっとリアルがバタついていて、なかなか妄想の花畑に行けませんが、
イヌ×ヘリの物語を完結したいので、ブログは続きます。

今後もよろしくお願いします♪

みつば


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